(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1電源端子は前記グラウンドを基準とする正電圧を有し、前記第2電源端子は前記グラウンドと同じ電圧を有し、前記第3電源端子は前記負電圧を有する、請求項2に記載の増幅器。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る増幅器10の概略構成を説明するための図である。
【0018】
増幅器10は、第1FETであるトランジスタM1と、第2FETであるトランジスタM2と、第3FETであるトランジスタM3とを含む。トランジスタM1,トランジスタM2およびトランジスタM3は、複数の増幅用トランジスタを構成する。すなわち、増幅器10は、複数の増幅用トランジスタを備える増幅器である。
【0019】
なお、増幅器が複数の増幅段で構成される場合、複数の増幅用トランジスタ(トランジスタM1からM3)は、入力段、段間、および出力段のいずれの増幅段に用いられてもよい。
【0020】
トランジスタM1からM3は、たとえばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。
【0021】
トランジスタM1のゲート端G1と、トランジスタM2のゲート端G2と、トランジスタM3のゲート端G3とは共通に接続される。トランジスタM1のソース端S1と、トランジスタM2のソース端S2と、トランジスタM3のソース端S3とは共通に接続される。トランジスタM1のドレイン端D1と、トランジスタM2のドレイン端D2と、トランジスタM3のドレイン端D3とは共通に接続される。共通に接続されるとは、電気的、たとえばDC的に接続されて共通のDC電圧が与えられることを包含する意味である。
【0022】
トランジスタM1,トランジスタM2およびトランジスタM3の各々は、バックゲート端をそれぞれ含む。具体的に、トランジスタM1はバックゲート端(第1バックゲート端)B1を含む。トランジスタM2はバックゲート端(第2バックゲート端)B2を含む。トランジスタM3はバックゲート端(第3バックゲート端)B3を含む。なお、「バックゲート」については、後に
図4を参照して説明する。
【0023】
増幅器10は、電源端子PT1と、電源端子PT2と、電源端子PT3とをさらに含む。電源端子PT1は、バックゲート端B1に電圧を印加するための第1電源端子である。電源端子PT2は、バックゲート端B2に電圧を印加するための第2電源端子である。電源端子PT3は、バックゲート端B3に電圧を印加するための第3電源端子である。
【0024】
電源端子PT1からPT3は、たとえば半導体チップにおいて別配線とされることにより、電気的に良好に分離される。これにより、電源端子PT1と、電源端子PT2と、電源端子PT3とは、異なる電圧が設定されるように構成される。たとえば、電源端子PT1は電圧Vb1に設定され、電源端子PT2は電圧Vb2に設定され、電源端子PT3は電圧Vb3に設定される。なお、電源端子PT1からPT3が電気的に良好に分離されなくとも、それぞれ異なる電圧が設定可能であればよい。
【0025】
ソース端S1,S2およびS3は、共通に接続されて、インダクタンスLSを介してグラウンド(GND)に接続される。すなわち、ソース端S1からS3は、DC的にグラウンドに接続される。インダクタンスLSは、たとえば、トランジスタM1からM3を適切に動作させるためのインピーダンスを与える。
【0026】
増幅器10は、共通に接続されたゲート端G1,G2およびG3にゲートバイアス電圧を供給するための電源端子GT1をさらに含む。電源端子GT1は、たとえば電圧Vboを有する。
【0027】
ゲート端G1からG3と、電源端子GT1との間には、抵抗Rgbが設けられる。抵抗Rgbを適切に選択することで、ゲート端G1,G2およびG3に適切なゲートバイアス電圧が供給される。適切なゲートバイアス電圧により、トランジスタM1,トランジスタM2およびトランジスタM3は、所望のバイアス状態で動作される。
【0028】
増幅器10は、トランジスタMCをさらに含む。トランジスタMCは、複数の増幅用トランジスタ(トランジスタM1,トランジスタM2およびトランジスタM3)の全体にカスコード接続されるFET(カスコード接続用FET)である。トランジスタMCも、トランジスタM1からM3同様、たとえばMOSFETで構成される。
【0029】
トランジスタMCは、ソース端S1からS3に電圧および電流を供給するためのソース端SCを有する。ソース端SCは、ソース端S1からS3に接続される。
【0030】
トランジスタMCのゲート端GCには、電源端子GT2から電圧が供給される。電源端子GT2はたとえば電圧VCASを有する。
【0031】
トランジスタMCのドレイン端DCは、インダクタンスLDを介して電源VDDに接続される。電源端子GT2からゲート端GCに適切な電圧が供給される。電源VDDからトランジスタMCに適切な電圧および電流が供給され、さらに、トランジスタM1からトランジスタM3に適切な電圧および電流が供給される。したがって、トランジスタMCおよびトランジスタM1からM3は増幅器として機能する。インダクタンスLDは、ドレイン端DCと電源VDDとを高周波的(RF的)に分離する。
【0032】
増幅器10は、入力端子11と、出力端子12とをさらに含む。入力端子11は、増幅器10が増幅するための信号を受けるための端子である。入力端子11には高周波信号(RF信号)が入力される。出力端子12は、増幅器10が増幅した信号を出力するための端子である。出力端子12からは、RF信号が出力される。すなわち、増幅器10は、RF信号を増幅する高周波電力増幅器である。
【0033】
入力端子11と、トランジスタM1からM3のゲート端G1からG3との間には、キャパシタCinが設けられる。出力端子12と、トランジスタMCのドレイン端DCとの間には、キャパシタCoutが設けられる。CinおよびCoutは、DCカット用のキャパシタである。CinおよびCoutは、整合回路に用いられてもよい。
【0034】
以上の構成により、増幅器10では、入力端子11が受けた高周波電力(RF信号)がトランジスタM1からM3のゲート端G1からG3に共通に入力される。また、増幅器10は、高周波電力を増幅して、増幅された高周波電力をトランジスタMCのドレイン端DCから出力する。すなわち、増幅器10は、複数の増幅用トランジスタ(トランジスタM1からM3)を利用した増幅器であって、かつ、トランジスタMCを利用したカスコード接続型の増幅器である。
【0035】
実施の形態1に係る増幅器10では、トランジスタM1からM3のバックゲート端B1からB3に電圧を印加するための電源端子PT1からPT3は、異なる電圧を設定可能に構成される。電源端子PT1からPT3が異なる電圧を有することにより、バックゲート端B1からB3に異なる電圧が供給され、増幅器10の特性が制御される。
【0036】
たとえば、増幅器10を無線通信を行なう通信装置に利用する場合、増幅器10は変調信号(変調波)の増幅に用いられる。変調信号を増幅する増幅器に対しては、高い線形特性が求められる場合が少なくない。線形特性を示す指標として、たとえば3次相互変調歪特性(IMD3:Third Order Intermodulation Distortion)および3次入力インターセプトポイント(IIP3:Third Order Input Intercept Point)が知られている。
【0037】
シミュレーションによる検討の結果、実施の形態1に係る増幅器10において、バックゲート端B1からB3が適切な電圧を有することで、増幅器10の線形特性が改善されることが確認された。
【0038】
増幅器10の線形特性の改善のためには、バックゲート端B1からB3が有する電圧は、とくに、グラウンドを基準とした正電圧と、グラウンドと同じ電圧と、グラウンドを基準とした負電圧との3通りの電圧であることが好ましい。
【0039】
図2および
図3は、
図1に示す増幅器10の構成を有する増幅器(以下、この増幅器も単に「増幅器10」という場合もある)の線形特性の改善を示すシミュレーション結果を説明するための図である。
【0040】
図2は、増幅器の3次相互変調歪特性(IMD3)を示すグラフである。横軸は増幅器の出力電力(dBm)を、縦軸はIMD3(dBc)をそれぞれ示す。
【0041】
図2には、線Aと線Bの2通りの3次相互変調歪特性が示される。線Aは実施の形態1の特性であり、線Bは比較例である。
【0042】
線Aは、
図1に示す増幅器10において、バックゲート端B1からB3をいずれも異なる電圧に設定した場合の、増幅器10の3次相互変調歪特性を示す。具体的に、バックゲート端B1をグラウンドと同じ電圧に設定し、バックゲート端B2をグラウンドを基準とした正電圧に設定し、バックゲート端B3をグラウンドを基準とした負電圧に設定した。
【0043】
線Bは、
図1に示す増幅器10において、バックゲート端B1からB3をいずれもグラウンドと同じ電圧に設定した場合の、増幅器10の3次相互変調歪特性を示す。
【0044】
なお、その他シミュレーションに必要な条件、各トランジスタへのゲートバイアス電圧および、増幅される電力(信号)の周波数などは、線Aと線Bとで同じ条件とした。周波数は、数百MHzから数GHz程度の範囲から選択した。
【0045】
図2に示すように、比較例(線B)よりも実施の形態1(線A)の方が、IMD3が改善していることがわかる。改善の量は、増幅器の出力電力によっても変化するが、比較的広い出力電力範囲において、10dB以上のIMD3の改善が確認された。
【0046】
このように増幅器の線形特性が改善される理由は、以下のように説明される。
図1に示すトランジスタM1のようなFETの特性を示すパラメータの一つに、相互コンダクタンスgmがある。3次相互変調歪(IMD3)特性に関しては、トランジスタM1の入力、ここではゲートG1とソースS1との間の電圧(Vgs)のレベルに対する相互コンダクタンスgmの変化量が影響する。具体的に、相互コンダクタンスgmをVgsで2階微分したgm''のVgsに対する大きさ(以下、「gm''−Vgs特性」という)が一定であれば3次相互変調歪特性は良くなる。逆に、gm''−Vgs特性が一定でなければ、3次相互変調歪特性は悪くなる。
【0047】
トランジスタM1において、gm''−Vgs特性がほぼ一定となるVgsの範囲と、gm''−Vgs特性が一定とならない(変化が大きい)Vgsの範囲とが存在する。たとえば、トランジスタM1のバックゲートB1に電圧を印加すると、gm''−Vgs特性が一定となる(あるいは一定に近づく)Vgsの範囲がシフトする。このシフトの態様は、バックゲートB1に印加する電圧によって制御され得る。トランジスタM2,M3についても同様である。
【0048】
実施の形態1によれば、トランジスタM1からM3の各バックゲートB1からB3に異なる電圧が印加される。そのため、トランジスタM1からM3のgm''−Vgs特性は、個別にシフトされる。バックゲートB1からB3に適切に電圧が印加されれば、トランジスタM1からM3のgm''−Vgs特性が打ち消しあい、gm''−Vgs特性が一定となるVgsの範囲が拡大され得る。その結果、トランジスタM1からM3で構成される複数の増幅用トランジスタは、全体として良好なgm''−Vgs特性、すなわちgm'’がVgsに対してフラットな特性を有し、良い3次相互変調歪が得られる。
【0049】
図3は、増幅器の利得特性を示すグラフである。横軸は増幅器の出力電力(dBm)を、縦軸は利得(dB)をそれぞれ示す。
【0050】
図3に示すように、比較例(線B)よりも実施の形態1(線A)の方が、わずかに利得が低下するが、その低下量はせいぜい約0.2dB程度であり、問題ないレベルであると言える。
【0051】
すなわち、
図2および
図3に示すシミュレーション結果によれば、実施の形態1では、増幅器の線形特性、つまりIMD3が改善される。また、その他の増幅器の基本特性(たとえば利得特性)はほとんど損なわれない。
【0052】
再び
図1を参照し、実施の形態1に係る増幅器10では、複数の増幅用トランジスタを構成するトランジスタM1からM3のゲート端が共通に接続される。そのため、たとえば、各ゲート端をDC的に分離するためのDCカット用キャパシタなどは不要である。また、バックゲート端B1からB3への電圧印加によって増幅器10の特性を制御できる。この制御は、トランジスタM1からM3のサイズ(セルサイズ)などに依存しない。そのため、トランジスタM1からM3のサイズ(セルサイズなど)を、消費電流が少なくなるように最適化することも可能になる。
【0053】
したがって、実施の形態1に係る増幅器10によれば、小型化および低消費電力化を実現するとともに、線形特性、たとえば3次相互変調歪特性が改善された増幅器を提供することが可能になる。
【0054】
増幅器10のような増幅器は、さまざまな用途に利用される。増幅器は、一例として、GPS(Global Positioning System)において衛星から受信した信号を増幅するために用いられる。また、後に説明する各実施の形態に係る増幅器は、無線LAN(WLAN:Wireless Local Area Network)における信号や、および周波数分割多元接続(FDMA:Frequency Division Multiple Access)における信号の増幅にも用いられる。
【0055】
ここで、
図1に示すトランジスタM1からM3が有するバックゲート端(B1からB3)について、簡単に説明しておく。バックゲート端は、要約すると、FETのボディを形成するバックゲートの端部である。
【0056】
図4は、実施の形態1に係るFETの断面構造を模式的に示す図である。
FET70は、
図4に示すように、ボディ71と、ソース72と、ドレイン73と、ゲート74と、絶縁膜75とを含む。
【0057】
一例としてボディ71は、P型半導体基板で形成される。ソース72およびドレイン73は、N
+型の半導体で形成される。ゲート74は、金属電極である。絶縁膜75は、たとえば酸化膜であり、ゲート74を、ボディ71、ソース72およびドレイン73から絶縁する。
【0058】
ボディ71、ソース72、ドレイン73およびゲート74は、電気的にアクセス可能である。具体的に、ボディ71は、ボディ71に電圧供給可能なバックゲート端Bを有する。ボディ71に電圧を印加するためには、バックゲート端Bに電圧が供給される。同様に、ソース72はソース端Sを、ドレイン73はドレイン端Dを、ゲート74はゲート端Gをそれぞれ有する。
【0059】
図4に示すバックゲート端B、ゲート端G、ソース端Sおよびドレイン端Dの各々は、たとえば
図1に示すトランジスタM1のバックゲート端B1、ゲート端G1、ソース端S1およびドレイン端D1にそれぞれ対応すると理解してよい。
【0060】
以上説明したFET70の構成に基づいて、バックゲート端B1に印加される電圧について説明する。説明の便宜上、ソース端Sはグラウンドに接続されているとする。つまり、ソース端Sはグランドと同じ電圧(電位)である。
【0061】
図4に示すように、ボディ71とソース72との間には、PN接合が形成される。したがって、バックゲート端Bには、ボディ71からソース72に向けて不所望な電流(リーク電流)が流れない範囲で、バックゲート端Bに電圧を印加することができる。たとえば、FET70がシリコン材料を利用するものであれば、PN接合の(ダイオードの)順方向バイアスの閾値電圧である約0.7Vを上回らない範囲で、バックゲート端Bの電圧を設定することができる。また、PN接合の(ダイオードの)逆方向バイアスの降伏電圧を下回らない範囲で、バックゲート端Bの電圧を設定することができる。
【0062】
つまり、バックゲート端Bに印加される電圧(
図1のVb1からVb3)としては、降伏電圧(マイナス値)よりも高く、約0.7Vよりも低い値が好ましい。
【0063】
図4は、一例としてボディ71がP型半導体基板で形成される場合を示す。しかし、ボディ71は、P型半導体基板でなく、N型半導体基板で形成されてもよい。ボディ71がN型半導体で形成される場合、ソース71およびドレイン73は、P
+型の半導体半導体で形成される。これにより、ソース72とボディ71との間にPN接合が形成される。そのため、PN接合の(ダイオードの)順方向バイアスの閾値電圧および逆方向バイアスの降伏電圧を考慮して、バックゲート端の電圧を設定することができる。
【0064】
先に述べたように、
図1に示す増幅器10では、バックゲート端B1からB3に異なる電圧が供給される。これについて、次に
図5を参照して説明する。
【0065】
図5は、トランジスタM1からM3のバックゲート端B1からB3に異なる電圧を供給するための構成を説明するための図である。
【0066】
図1に示す増幅器10と比較して、
図5に示す増幅器10Aは、正電圧生成回路13と、負電圧生成回路14とを含む。なお、増幅器10Aは、インダクタンスLinをさらに含む。
【0067】
正電圧生成回路13は、グラウンド(GND)を基準とした正電圧を生成可能に構成される。負電圧生成回路14は、グラウンドを基準とした負電圧を生成可能に構成される。正電圧生成回路13や、負電圧生成回路14には、周知の技術が適用されたさまざまな回路を用いることができる。負電圧生成回路14の構成の一例については、後に
図9を参照して説明する。
【0068】
インダクタンスLinは、必要に応じて、キャパシタンスCinとともに、増幅器10Aの入力整合回路を構成する。
【0069】
図5において、電源端子PT1はグラウンドに接続される。これにより、電源端子PT1はグラウンドと同じ電圧を有する。電源端子PT2は、正電圧生成回路13に接続される。これにより、電源端子PT2は、グラウンドを基準とした正電圧を有する。電源端子PT3は、負電圧生成回路14に接続される。これにより、電源端子PT3は、グランドを基準とした負電圧を有する。
【0070】
図5に示す増幅器10Aは、正電圧生成回路13や負電圧生成回路14を内蔵する。これにより、増幅器10Aの使用に際して、増幅器10Aの外部に負電源を設ける必要がなくなる。
【0071】
図5には示されないが、正電圧生成回路13と電源端子PT2との間には、抵抗が挿入されてもよい。これにより、バックゲート端B2に供給される電圧が安定する。また、正電圧生成回路13と電源端子PT2との間に、インダクタンスが挿入されてもよい。これにより、バックゲート端B2と電源端子PT2との間を高周波的に分離され、バックゲート端B2に供給される電圧が安定する。同様に、負電圧生成回路14と電源端子PT3との間にも、抵抗および/またはインダクタンスが挿入されてもよい。
【0072】
[実施の形態2]
先に述べたように、
図1に示す増幅器10および
図5に示す増幅器10Aは、通信装置に利用される。その場合、増幅器は、たとえばスイッチと組合わされて使用される。
【0073】
図6は、増幅器とスイッチとの組合わせについて説明するための図である。
図6を参照して、通信装置100は、増幅器10Aと、スイッチ20と、パワーアンプ(PA:Power Amplifier)30とを含む。
【0074】
図6には、一例としてSPDT(Single Pole Double Throw)スイッチであるスイッチ20が示される。スイッチ20は、端子21と、端子22および端子23とを含む。
【0075】
端子21は、たとえばアンテナ(図示しない)に接続される。アンテナは高周波(RF)の電磁波を送信および受信する。したがって、端子21から高周波電力(送信波)が出力され、また、端子21に高周波電力(受信波)が入力される。送信波および受信波は、変調波である。端子22は、増幅器10Aの端子11に接続される。端子23は、パワーアンプ30の出力に接続される。
【0076】
図6を参照して、スイッチ20は、トランジスタT1からT8と、抵抗R1からR16と、制御端子CT1およびCT2とを含む。
【0077】
トランジスタT1からT4は、端子21と端子22との接続状態を切替える。複数のトランジスタT1からT4が端子21と端子22との間に配置されることにより、各トランジスタに加わる高周波信号が分圧され、スイッチ20の耐圧が向上する。
【0078】
抵抗R1からR4の各々は、トランジスタT1からT4のゲート端と制御端子CT1とをそれぞれ接続する。これにより、制御端子CT1に印加された電圧(たとえばVCNT1)が、抵抗R1からR4を介して、トランジスタT1からT4のゲートに印加される。トランジスタT1からT4のゲートに電圧が印加されると、トランジスタT1からT4がオン状態となり、端子21と端子22との間が導通する。
【0079】
抵抗R5からR8の各々は、トランジスタT1からT4のドレイン端とトランジスタT1からT4のソース端とをそれぞれ接続する。すなわち、抵抗R5からR8によって、トランジスタT1からT4のドレイン端とソース端とをバイパスする経路が構成される。これにより、たとえば、トランジスタT1からT4がOFF時には、高周波信号が必ず抵抗R1からR4を経由して分圧されるため、スイッチ20の耐圧が向上する。
【0080】
トランジスタT5からT8は、端子21と端子23との接続状態を切替える。複数のトランジスタT5からT8が端子21と端子23との間に配置されることにより、各トランジスタに加わる高周波信号が分圧され、スイッチ20の耐圧が向上する。
【0081】
抵抗R9からR12の各々は、トランジスタT5からT8のゲート端と制御端子CT2とをそれぞれ接続する。これにより、制御端子CT2に印加された電圧(たとえばVCNT2)が、抵抗R9からR12を介して、トランジスタT5からT8のゲートに印加される。トランジスタT5からT8のゲートに電圧が印加されると、トランジスタT1からT4がオン状態となり、端子21と端子23との間が導通する。
【0082】
また、抵抗R13からR16によって、トランジスタT5からT8のドレイン端とソース端とをバイパスする経路が構成される。これにより、たとえば、トランジスタT5からT8がOFF時には、高周波信号が必ず抵抗R13からR16を経由して分圧されるため、スイッチ20の耐圧が向上する。
【0083】
以上の構成により、スイッチ20は、たとえば、端子21から受けた受信波を端子22から出力できる。また、スイッチ20は、端子23から受けた送信波を端子21に出力できる。スイッチ20は、通信装置100の送信動作と受信動作とを、たとえば時間的に切替えるために用いられる。
【0084】
増幅器10Aの入力端子11は、スイッチ20の端子22に接続される。これにより、アンテナが受信した受信信号が、スイッチ20の端子21,22を介して増幅器10Aの入力端子11に出力される。増幅器10Aは、その受信信号を増幅して、出力端子12に出力する。一般に、通信装置では、受信した高周波電力を増幅する増幅器には、ローノイズアンプ(LNA:Low Noise Amplifier)が用いられる。つまり、通信装置100において、増幅器10Aは、ローノイズアンプとして用いられる。
【0085】
パワーアンプ30の出力は、スイッチ20の端子23に接続される。これにより、パワーアンプ30によって増幅された送信信号が、スイッチ20の端子23,21を介して出力される。パワーアンプ30は、増幅器10Aと同様の構成であってもよい。つまり、通信装置100において、増幅器10Aを、パワーアンプとして用いてもよい。
【0086】
図6に示す通信装置100は、スイッチ20によって送信と受信を切替える。このような通信装置は、たとえば時分割複信(TDD)方式を用いた通信に好適に用いられる。TDD方式を用いるものとして、たとえば、無線LANがある。すなわち、増幅器10Aは、無線LANのための通信装置に好適に利用される。
【0087】
[実施の形態3]
図6では、スイッチ20によって送信および受信がたとえば時間的に切替えられるタイプの通信装置100が示される。一方、通信装置には、送信および受信が同時に行なわれるタイプのものもある。その場合、通信装置では、スイッチに代えて、たとえばデュプレクサ(DUP)が用いられる。
【0088】
図7は、デュプレクサを利用した通信装置100Aを説明するための図である。
図7を参照して、通信装置100Aは、デュプレクサ20Aと、増幅器10Aと、パワーアンプ30と、アンテナ200とを含む。
【0089】
デュプレクサ20Aは、送信周波数帯域の信号(送信信号)と受信周波数帯域の信号(受信信号)とを分離する。具体的に、デュプレクサ20Aは、アンテナ200と増幅器10Aとの間で受信信号を通過させる。また、デュプレクサ20Aは、パワーアンプ30とアンテナ200と間で送信信号を通過させる。
【0090】
通信装置100Aは、ミキサ40と、電圧制御型可変利得増幅器(VGA:Voltage Controlled Variable Gain Amplifier)41と、フィルタ42と、アナログ−ディジタル変換器(ADC:Analog to Digital Converter)43と、ディジタル信号処理プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)60とを含む。
【0091】
受信信号は、増幅器10Aによって増幅される。増幅された受信信号は、ミキサ40によって周波数変換(たとえばダウンコンバート)される。ダウンコンバートされた受信信号は、VGA41によって適切な信号レベルに調節される。適切な信号レベルに調節された受信信号は、フィルタ42によって不要な成分が除去される。不要な成分が除去された受信信号は、ADC43によってディジタル信号に変換される。ディジタル信号に変換された受信信号は、DSP60によって処理される。
【0092】
また、通信装置100Aは、ミキサ50と、VGA51と、フィルタ52と、DAC53とをさらに含む。
【0093】
DSP60によって生成されたディジタル形の送信信号は、ディジタル−アナログ変換器(DAC:Digital to Analog Converter)53によってアナログ信号に変換される。アナログ信号に変換された送信信号は、フィルタ52によって不要な成分が除去される。不要な成分が除去された送信信号は、VGA51によって適切な信号レベルに調節される。適切な信号レベルに調節された送信信号は、ミキサ50によって周波数変換(たとえばアップコンバート)される。アップコンバートされた送信信号は、パワーアンプ30に入力される。
【0094】
通信装置100Aは、発信器45をさらに含む。発信器45は、ミキサ40およびミキサ50に、所定周波数の信号を与える。
【0095】
図7に示す通信装置100Aは、デュプレクサ20Aによって送信信号と受信信号が分離される。このような通信装置は、たとえば周波数分割多元接続(FDMA)方式を用いた通信に好適に用いられる。FDMA方式を用いるものとして、たとえば、CDMA(Code Division Multiple Access)方式を利用した携帯通信端末がある。すなわち、増幅器10Aは、CDMA方式を利用した携帯通信端末に好適に利用される。
【0096】
[変形例]
再び
図1を参照して、
図1に示す増幅器10では、トランジスタM1からM3の3つのトランジスタによって、複数の増幅用トランジスタが構成されている。しかし、複数の増幅用トランジスタを構成するトランジスタの数は、3つに限られない。すなわち、複数の増幅用トランジスタを構成するトランジスタの数はさまざまな値をとり得る。
【0097】
図8は、変形例としての増幅器10Dを説明するための図である。
図8に示すように、増幅器10Dは、複数の増幅用トランジスタを構成するトランジスタとして、4つ以上のトランジスタを含む。具体的に、増幅器10Dでは、トランジスタM1からMnのn個のトランジスタによって、複数の増幅用トランジスタが構成される。
【0098】
トランジスタMnのゲート端Gnは、他のトランジスタ(M1からM3など)のゲート端(G1からG3など)と共通に接続される。トランジスタMnのソース端Snは、他のトランジスタ(M1からM3など)のソース端(S1からS3など)と共通に接続される。トランジスタMnのドレイン端Dnは、他のトランジスタ(M1からM3)のドレイン端(D1からD3)と共通に接続される。
【0099】
トランジスタMnは、バックゲート端Bnを含む。増幅器10Dは、バックゲート端Bnに電圧を印加するための電源端子PTnを含む。電源端子PT1からPTnは、異なる電圧が設定されるように構成される。たとえば、電源端子PTnは、電圧Vbnを有する。
【0100】
増幅器10Dにおいて、電源端子PT1からPTnの電圧を適切に設定することで、増幅器10Dの特性、たとえば線形特性が向上される。
【0101】
図1に示す増幅器10と比較して、
図8に示す増幅器10Dは、複数の増幅用トランジスタを構成するトランジスタの数が多い。そのため、増幅器10Dでは、各トランジスタM1からMnのバックゲート端B1からBnへ印加する電圧について、多くの組み合わせが可能になる。その結果、増幅器10Dの特性を細かく制御することができる。
【0102】
[負電圧生成回路の構成]
図9は、
図5などに示す負電圧生成回路14のような負電圧生成回路の構成の一例を説明するための図である。
【0103】
図9を参照して、負電圧生成回路14Aは、交流電源300と、NOTゲート(インバータ)301と、キャパシタ302,305と、トランジスタ303,304と、出力端子306とを含む。
【0104】
交流電源300は、グラウンド(GND)を基準とした交流電力(たとえばサイン波)を生成する。交流電源300が生成した交流電力は、インバータ301に入力される。インバータ301は、入力された交流電力の周期に合わせて、グラウンドを基準として、正および負の電圧を有する矩形波電力を生成する。インバータ301が生成した矩形波電力は、キャパシタ302に向けて出力される。
【0105】
キャパシタ302,305は、インバータ301からの電力を受けて充放電される。
トランジスタ303,304は、FETである。トランジスタ303,304のゲート端とドレイン端は電気的にショートされる。すなわち、トランジスタ303および304は、ドレイン端からゲート端に向かう方向を正方向とするダイオードとして機能する。
【0106】
インバータ301からの矩形波電力の電圧が正の間は、インバータ301と、トランジスタ303のソース端(すなわちグラウンド)との間に印加される電圧によって、キャパシタ302が、インバータ301側がプラスとなるように充電される。
【0107】
一方、インバータ301からの矩形波電力の電圧が負の間は、インバータ301に向けてキャパシタ302が放電される。このとき、トランジスタ304を介してキャパシタ305は、トランジスタ304側がマイナスとなるように充電される。したがって、出力端子306には、マイナスの電圧Vssが発生する。
【0108】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。