特許第5979162号(P5979162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979162
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】パワーオンリセット回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/22 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
   H03K17/22 E
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-5822(P2014-5822)
(22)【出願日】2014年1月16日
(65)【公開番号】特開2015-136003(P2015-136003A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2015年8月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 良守
【審査官】 及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−310718(JP,A)
【文献】 特開2011−114754(JP,A)
【文献】 特開平10−255464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00−17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップに集積化されたパワーオンリセット回路であって、
電源ノードに接続される一方端を有する第1の抵抗と、
前記第1の抵抗の他方端に接続される第1の容量と、
前記電源ノードに接続される一方端を有する第2の抵抗と、
前記第2の抵抗の他方端に接続される第2の容量と、
前記第1の抵抗の他方端に接続される電源端子、前記第2の抵抗の前記他方端に接続される入力端子、および出力端子を有する第1のインバータと、
前記第1の抵抗の前記他方端に接続される電源端子、前記第1のインバータの前記出力端子に接続される入力端子、および、リセット信号出力端子に電気的に接続される出力端子を有する第2のインバータと、
前記第2のインバータの前記出力端子に接続される一方端、および、前記リセット信号出力端子に接続される他方端を有する第3の抵抗と、
前記第3の抵抗の他方端に接続される第3の容量と、
前記第3の容量に接続されて、前記第3の容量を放電させるトランジスタとを備え、
前記トランジスタの制御端子は、前記第2のインバータの前記出力端子に接続される、パワーオンリセット回路。
【請求項2】
前記第1の抵抗および前記第1の容量によって定められる時定数は、前記第2の抵抗および前記第2の容量によって定められる時定数より大きい、請求項1に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項3】
前記第1のインバータおよび前記第2のインバータの各々は、カスコード接続された複数のP型FETと、前記複数のP型FETに接続されるN型FETとを有する、請求項1または2に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項4】
半導体チップに集積化されたパワーオンリセット回路であって、
電源ノードに接続される一方端を有する第1の抵抗と、
前記第1の抵抗の他方端に接続される第1の容量と、
前記電源ノードに接続される一方端を有する第2の抵抗と、
前記第2の抵抗の他方端に接続される第2の容量と、
前記第1の抵抗の他方端に接続される電源端子、前記第2の抵抗の前記他方端に接続される入力端子、および出力端子を有する第1のインバータと、
前記第1の抵抗の前記他方端に接続される電源端子、前記第1のインバータの前記出力端子に接続される入力端子、および、リセット信号出力端子に電気的に接続される出力端子を有する第2のインバータと、
前記第2のインバータの前記出力端子に接続される一方端、および、前記リセット信号出力端子に接続される他方端を有する第3の抵抗と、
前記第3の抵抗の他方端に接続される第3の容量と、
前記第3の容量に接続されて、前記第3の容量を放電させるトランジスタを備え、
前記第1のインバータおよび前記第2のインバータの各々は、カスコード接続された複数のP型FETと、前記複数のP型FETに接続されるN型FETとを有し、
前記複数のP型FETの各々の駆動能力は、前記N型FETの駆動能力と異な
前記トランジスタの制御端子は、前記第2のインバータの前記出力端子に接続される、パワーオンリセット回路。
【請求項5】
前記第1の抵抗および前記第1の容量によって定められる時定数は、前記第2の抵抗および前記第2の容量によって定められる時定数より大きい、請求項4に記載のパワーオンリセット回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーオンリセット回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル集積回路(以下、単に「IC」と言う場合もある)などには、リセット端子が設けられる。リセット端子には、ローレベルおよびハイレベルのリセット信号(電圧)が供給される。
【0003】
たとえば、リセット端子にハイレベルの電圧が供給されている間、ICは動作する。一方、リセット端子にローレベルの電圧が供給されると、ICはリセットされる。リセット端子にローレベルの電圧が供給されている間、ICはリセット状態となる。
【0004】
リセット端子にローレベルまたはハイレベルのいずれの電圧を供給するかは、たとえばICの電源電圧に基づいて設計される。電源電圧が低い場合、ICが正常に動作しない可能性がある。このため、リセット端子にローレベルのリセット信号を供給してICをリセット状態とすることが好ましい。電源電圧が低くない場合は、ハイレベルのリセット信号を供給してICを動作させることが好ましい。なお、電源電圧の供給が開始されてICが起動されるときは、リセット信号によってICをリセットすることが好ましい。
【0005】
電源電圧に基づいてリセット端子にリセット信号を供給するための回路として、パワーオンリセット回路が知られている。たとえば特開2003−8426号公報は、電源電圧が印加された際にリセット信号を生成し、このリセット信号によってICに含まれるフリップフロップ回路をリセットする、パワーオンリセット回路を開示する。そのようなパワーオンリセット回路は、インバータなどの能動素子を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−8426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パワーオンリセット回路はインバータなどの能動素子を作動させるための電源電圧を必要とする。小型化、低コスト化などの対策の一つとして、パワーオンリセット回路に電源電圧を供給する電圧源と、ICに電源電圧を供給する電圧源とを共通化する構成が考えられる。特開2003−8426号公報は、そのような構成について教示しない。
【0008】
パワーオンリセット回路の電圧源と、ICの電圧源とを共通化する場合、電圧源の電圧(電源電圧)が低下すると、たとえばパワーオンリセット回路に含まれるインバータの動作に必要な電圧が得られない。その結果、パワーオンリセット回路が正常に動作しなくなるおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、パワーオンリセット回路の電圧源と、ICの電圧源とを共通化する場合でも、パワーオンリセット回路を安定して動作させることを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ある局面において、半導体チップに集積化されたパワーオンリセット回路であって、電源ノードに接続される一方端を有する第1の抵抗と、前記第1の抵抗の他方端に接続される第1の容量と、前記電源ノードに接続される一方端を有する第2の抵抗と、前記第2の抵抗の他方端に接続される第2の容量と、前記第1の抵抗の他方端に接続される電源端子、および、前記第2の抵抗の他方端に接続される入力端子を有する第1のインバータと、前記第1の抵抗の他方端に接続される電源端子、前記第1のインバータの出力端子に接続される入力端子、および、リセット信号出力端子に電気的に接続される出力端子を有する第2のインバータとを備える。
【0011】
上記構成のパワーオンリセット回路は、能動素子である第1のインバータおよび第2のインバータの2つのインバータを備える。
【0012】
上記構成のパワーオンリセット回路では、ICなどの電圧源からの電圧が電源ノードに供給されるようにすることで、パワーオンリセット回路の電圧源とICなどの電圧源とを共通化できる。
【0013】
上記構成のパワーオンリセット回路では、電源ノードから、第1の抵抗および第1の容量を介して、第1のインバータの電源端子および第2のインバータの電源端子に電圧が供給される。第1の抵抗および第1の容量は、第1のインバータの電源端子および第2のインバータの電源端子に電圧を供給するための補助電圧源を構成する。
【0014】
したがって、電圧源の電圧、すなわち電源ノードの電圧が低下しても、補助電圧源によって第1のインバータの電源端子および第2のインバータの電源端子に電圧が短時間供給される。そのため、パワーオンリセット回路は安定して動作する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、パワーオンリセット回路の電圧源と、ICの電圧源とを共通化する場合でも、パワーオンリセット回路を安定して動作させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係るパワーオンリセット(POR)回路の用途の一例を説明するための図である。
図2】POR回路の構成を説明するための図である。
図3】POR回路の変形例を説明するための図である。
図4】POR回路のパラメータの一例を説明するための図である。
図5】POR回路のパラメータの一例を説明するための図である。
図6】抵抗R1および容量C1の効果を説明するための図である。
図7】抵抗R1および容量C1の効果を説明するための図である。
図8】抵抗R1および容量C1の効果を説明するための図である。
図9】抵抗R2および容量C2の効果を説明するための図である。
図10】抵抗R3および容量C3の効果を説明するための図である。
図11】トランジスタMP1の効果を説明するための図である。
図12】インバータの構成の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係るパワーオンリセット(POR)回路の用途の一例を説明するための図である。
【0019】
図1に示すように、POR回路100は、IC200にリセット信号Voutを供給するために用いられる。POR回路100は、半導体チップ1に集積化される。好ましくは、POR回路100は、SOI(Silicon On Insulator)チップに集積化される。IC200は、ディジタル回路を含む集積回路であり、種々の用途に用いられる。
【0020】
図1を参照して、POR回路100は、電源入力端子110と、リセット信号出力端子120とを含む。電源入力端子110は、POR回路100の動作に必要な電圧および電流(動作電流IPOR)を受ける。リセット信号出力端子120は、リセット信号Voutを出力する。POR回路100は、リセット信号Voutの電圧を適切なレベル、たとえばハイレベルおよびローレベルのいずれかの電圧に制御する。ローレベルは、たとえば、0Vまたは0Vに近い電圧である。ハイレベルは、ローレベルよりも高い電圧である。ハイレベルおよびローレベルは、POR回路100およびIC200が区別できる程度に異なっていればよい。
【0021】
IC200は、電源入力端子210と、リセット入力端子220とを含む。電源入力端子210には、IC200の動作に必要な電圧および電流が供給される。リセット入力端子220は、リセット信号Voutを受ける。たとえば、リセット信号Voutの電圧がハイレベルの場合、IC200は動作を維持する。一方、リセット信号Voutの電圧が、IC200のリセットに必要な所定時間以上ローレベルの場合、IC200はリセット状態となる。IC200がリセットされると、たとえばIC200に含まれるフリップフロップ回路など(図示しない)が初期化される。
【0022】
図1において、POR回路100の電源入力端子110に供給される電圧と、IC200の電源入力端子210に供給される電圧とは、いずれも電源電圧Vddである。すなわち、POR回路100の電圧源と、IC200の電圧源とは共通化される。電源電圧Vddは、IC200を適切に動作させるための電圧レベルに設計される。
【0023】
POR回路100は、電源電圧Vddおよび動作電流(消費電流)IPORによって動作する。
【0024】
電源電圧Vddが適切なレベルにありIC200が正常に動作するとき、POR回路100は、リセット信号Voutをハイレベルに設定する。これにより、IC200は動作を維持する。電源電圧Vddが適切なレベルにあるか否かは、たとえば電源電圧Vddに対するしきい値VPORを用いて判断される。しきい値VPORは、たとえば、IC200の設計データや実験データを参考に定められる。
【0025】
電源電圧Vddが低下してしきい値VPORを下回ると、IC200は正常に動作しなくなる。電源電圧Vddがしきい値VPORを下回ると、POR回路100は、リセット信号Voutをローレベルに設定する。これにより、IC200がリセット状態となる。
【0026】
POR回路100の詳細については、図2以降を参照して説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係るPOR回路100Aの構成を説明するための図である。
【0027】
図2を参照して、POR回路100Aは、電源入力端子110と、リセット信号出力端子120と、電源ノードN1と、抵抗R1,R2と、容量C1,C2と、インバータINV1,INV2とを含む。
【0028】
電源ノードN1には、電源電圧Vddが供給される。先に図1を参照して説明したように、電源電圧Vddは、POR回路100Aからリセット信号を受けるIC(図2には図示しない)にも供給される。
【0029】
抵抗R1は、電源ノードN1に接続される一方端(R1−L)を有する。容量C1は、抵抗R1の他方端(R1−R)に接続される一方端を有する。容量C1の他方端は、グラウンドGNDに接続される。グラウンドGNDは、基準電圧(たとえば0V)を与える。抵抗R2は、電源ノードN1に接続される一方端(R2−L)を有する。容量C2の一方端は、抵抗R2の他方端(R2−R)に接続される。容量C2の他方端は、グラウンドGNDに接続される。
【0030】
インバータINV1は、入力端子T11と、出力端子T12と、電源端子T13とを有する。入力端子T11は、抵抗R2の他方端(R2−R)に接続される。出力端子T12は、インバータINV2の入力端子T21に接続される。電源端子T23は、抵抗R1の他方端(R1−R)に接続される。
【0031】
インバータINV2は、入力端子T21と、出力端子T22と、電源端子T23とを有する。入力端子T21は、インバータINV1の出力端子T12に接続される。出力端子T22は、リセット信号出力端子120に電気的に接続される。出力端子T22と、リセット信号出力端子120との間には、たとえば抵抗などの受動素子およびトランジスタなどの能動素子が介在していてもよい。電源端子T23は、抵抗R1の他方端(R1−R)に接続される。
[動作]
図2に示すPOR回路100Aの動作について説明する。
【0032】
電源電圧Vddは、抵抗R1を介して、インバータINV1の電源端子T13およびインバータINV2の電源端子T23に、電圧VddINVとして供給される。インバータINV1およびINV2は、電圧VddINVを受けて動作する。
【0033】
また、電源電圧Vddは、抵抗R2を介して、インバータINV1の入力端子T11に供給される。インバータINV1は、入力端子T11に供給された電源電圧Vddの電圧を反転して、出力端子T12に出力する。
【0034】
具体的に、電源電圧Vddがしきい値VPOR以上の場合、インバータINV1は、ローレベルの電圧を出力端子T12に出力する。つまり、しきい値VPOR以上の電源電圧Vddが、ローレベルの電圧に反転される。一方、電源電圧Vddがしきい値VPORを下回る場合、インバータINV1は、ハイレベルの電圧を出力端子T12に出力する。つまり、しきい値VPOR電圧未満の電源電圧が、ハイレベルの電圧に反転される。
【0035】
インバータINV2は、インバータINV1と同様の機能を有するように構成される。インバータINV2は、インバータINV1の出力端子T12の電圧を、入力端子T21で受ける。インバータINV2は、入力端子T21の電圧を反転して、出力端子T22に出力する。たとえば、入力端子T21の電圧がローレベルの場合、出力端子T22の電圧はハイレベルとなる。逆に、入力端子T21の電圧がハイレベルの場合、出力端子T22の電圧はローレベルとなる。
【0036】
これにより、電源電圧Vddがしきい値VPOR以上の場合、インバータINV2は、ハイレベルの電圧を出力端子T22に出力する。一方、電源電圧Vddがしきい値VPORを下回る場合、インバータINV2は、ローレベルの電圧を出力端子T22に出力する。
【0037】
リセット信号出力端子120は、インバータINV2の出力端子T22からの電圧を受けて、その電圧にされる。
【0038】
抵抗R1および容量C1は、インバータINV1およびINV2の電源端子T13およびT23に電圧VddINVを供給するための補助電源を構成する。
【0039】
定常状態において、電圧VddINVは、電源電圧Vddと等しい電圧で一定になる。定常状態でなくなり電源電圧Vddが低下する(たとえば0Vになる)と、電圧VddINVは徐々に低下して0Vになる。この電圧VddINVの低下に要する時間は、抵抗R1および容量C1によって定められる時定数τ1に依存する。時定数τ1が存在する(τ1がゼロでない)ことによって、電源電圧Vddが失われても、一定期間、インバータINV1の電源端子T13およびインバータINV2の電源端子T23には、ある程度の大きさの電圧VddINVが供給される。その一定期間中、インバータINV1およびINV2は正常に動作し得る。
【0040】
一方、電源電圧Vddが低下すると、インバータINV1の入力端子T11に供給される電圧も、徐々に低下し、0Vになる。この電圧低下に要する時間は、抵抗R2および容量C2によって定められる時定数τ2に依存する。時定数τ2が存在することによって、電源電圧Vddが失われても、インバータINV1の入力端子T11に供給される電圧は、ただちにしきい値VPOR以下にはならない。
【0041】
すなわち、電源電圧Vddが失われた時から、インバータINV1の入力端子T11に供給される電圧がしきい値VPOR以下になるまでの間にはタイムラグがある。このタイムラグの間、インバータINV1およびINV2は、電源端子T13およびT23で適切な電圧を受けて、正常に動作する必要がある。
【0042】
抵抗R1および容量C1によって定められる時定数τ1は、抵抗R2および容量C2によって定められる時定数τ2よりも大きく設定される。これにより、インバータINV1の入力端子T11に供給される電圧がしきい値VPORを下回った後もしばらくの間(短時間)、電圧VddINVは、インバータINV1およびINV2が正常に動作することが可能なレベルとなる。したがって、電源電圧Vddが低下した場合でも、POR回路100Aは正常に動作する。
【0043】
図2に示す構成によれば、POR回路の電圧源を、ICなどの電圧源と共通化する場合でも、POR回路を安定して動作することが可能になる。
[変形例]
図3は、図2に示すPOR回路100Aの変形例であるPOR回路100Bの構成を説明するための図である。
【0044】
POR回路100Bは、図2に示すPOR回路100Aと比較して、抵抗R3と、容量C3と、トランジスタMP1とをさらに含む。
【0045】
抵抗R3の一方端(R3−L)は、インバータINV2の出力端子T22に接続される。抵抗R3の他方端(R3−R)は、リセット信号出力端子120に接続される。容量C3の一方端は、抵抗R3の他方端(R3−R)に接続される。容量C3の他方端は、グラウンドGNDに接続される。トランジスタMP1は、容量C3に接続され、容量C3を放電させる。トランジスタMP1のゲート端MP1−Gは、インバータINV2の出力端子T22に接続される。ゲート端MP1−Gは、トランジスタMP1の制御端子である。
【0046】
POR回路100Bでは、インバータINV2の出力端子T22と、リセット信号出力端子120との間に、抵抗R3および容量C3が介在する。そのため、リセット信号出力端子120の電圧が、出力端子T22の電圧に追従するための遅延時間が生じる。この遅延時間は、抵抗R3および容量C3で定められる時定数τ3に依存する。抵抗R3および容量C3の設計値を変えることで、出力端子T22の電圧と、リセット信号出力端子120の電圧との間の遅延時間を調節することが可能になる。
【0047】
トランジスタMP1は、たとえばP型のFET(Field Effect Transistor)である。トランジスタMP1は、制御端子であるゲート端MP1−Gと、ソース端MP1−Sと、ドレイン端MP1−Dとを有する。ゲート端MP1−Gは、インバータINV2の出力端子T22と接続されているため、出力端子T22の電圧がローレベルになると、ゲート端MP1−Gの電圧もローレベルになる。トランジスタMP1は、ゲート端MP1−Gの電圧がローレベルになると、ソース端MP1−Sと、ドレイン端MP1−Dとが導通するように設計される。
【0048】
ソース端MP1−Sは、抵抗R3の他方端(R3−R)に接続される。ドレイン端MP1−Dは、グラウンドGNDに接続される。そのため、インバータINV2の出力端子T22の電圧がローレベルになると、ソース端MP1−Sとドレイン端MP1−Dとが導通し、容量C3に蓄えられた電荷が、トランジスタMP1を介してグラウンドGNDに放電される。これにより、短期間で容量C3を放電させることが可能になる。そのため、出力端子T22の電圧がハイレベルからローレベルに切替わるとすぐに、リセット信号出力端子120の電圧も短期間でハイレベルからローレベルに切替わる。
【0049】
POR回路100Bの構成によれば、出力端子T22の電圧がローレベルからハイレベルに切替る場合、出力端子T22の電圧と、リセット信号出力端子120の電圧との間の遅延時間を調節することが可能になる。また、リセット信号出力端子120の電圧がハイレベルからローレベルに切替る場合、比較的短期間でハイレベルからローレベルに切替わり、POR回路100Bの応答性が向上する。
[POR回路のパラメータ]
ここで、POR回路の性能を示す幾つかのパラメータについて説明する。図4および図5は、POR回路のパラメータの一例を説明するための図である。
【0050】
図4は、図1などに示す電源電圧Vddの変化の一例を示すグラフである。図4の横軸は時間を示し、縦軸は電源電圧Vddを示す。
【0051】
図4を参照して、時刻t10において、電源電圧Vddは一定である。このときの電源電圧Vddは、IC(図1のIC200など)を正常に動作させることが可能な電圧である。
【0052】
時刻t20において、電源電圧Vddが低下し(立下がり)始める。
時刻t30において、電源電圧Vddがしきい値VPORを下回る。
【0053】
時刻t40において、電源電圧Vddの低下が止まり、一定となる。
時刻t50において、電源電圧Vddが上昇(回復)し始める。
【0054】
時刻t60において、電源電圧Vddがしきい値VPOR以上になる。
時刻t70において、電源電圧Vddの上昇が止まり、一定となる。電源電圧Vddは、時刻t20以前の状態に、完全に回復する。
【0055】
図5は、電源電圧Vddを受けて動作するPOR回路の動作の一例を示すグラフである。図5の横軸は時間を示し、縦軸は、POR回路が出力するリセット信号Voutを示す。
【0056】
図4および図5を参照して、時刻t10において、リセット信号Voutは一定である。このときのリセット信号Voutはハイレベルであり、ICはリセットされない状態(リセット解除状態)にある。
【0057】
時刻t30において電源電圧Vddがしきい値VPORを下回るため、リセット信号Voutは低下し始める。
【0058】
時刻t35において、リセット信号Voutはローレベルになる。そのため、ICはリセット状態になる。つまり、ICは、初期化されるとともに停止状態となる。
【0059】
時刻t30から時刻t60の間(遅延時間TPOR)、リセット信号Voutは、電源電圧Vddに依らずローレベルとされる。遅延時間TPORにより、POR回路の動作が安定する。たとえば、時刻t30において電源電圧Vddがしきい値VPORを下回る。その直後の短期間のみ電源電圧Vddがしきい値VPOR以上になった場合でも、リセット信号Voutは安定してローレベルとされる。
【0060】
さらに、時刻t60から時刻t70の間(遅延時間T)、リセット信号Voutはローレベルに維持される。遅延時間Tにより、POR回路の動作が安定する。
【0061】
時刻t70から時刻t90までの間(遅延時間TDELAY)リセット信号Voutはローレベルに維持される。つまり、時刻t70において電源電圧Vddが完全に回復した後、リセット信号Voutは、時刻t80において上昇し始め、時刻t90においてハイレベルになる。遅延時間TDELAYにより、POR回路の動作が安定する。すなわち、遅延時間TDELAYによって、ICがリセットされるのに充分な期間(先に図1を参照して説明した、IC200のリセットに必要な所定時間)、リセット信号Voutはローレベルとされる。
【0062】
図4および図5に示す遅延時間TPOR、遅延時間T、遅延時間TDELAYなどは、POR回路の性能を示すパラメータである。また、図3などに示す動作電流IPORも、POR回路の性能を示すパラメータである。なお、図4などに示す電源電圧Vddおよびしきい値VPORも、POR回路の性能を示すパラメータである。
[POR回路の構成要素の効果]
図3に示すPOR回路100Bの構成要素によってもたらされる効果の一例について、次に説明する。
[R1,C1の効果]
図6から図8は、図3に示す抵抗R1および容量C1の効果を説明するための図である。
【0063】
図6は、図3に示すPOR回路100Bにおいて、電源電圧Vddの変化に対するリセット信号Voutのシミュレーション結果を示すグラフである。グラフの横軸は時間(ms)を、縦軸は電圧(V)をそれぞれて示す。横軸および縦軸には、参考として、シミュレーション結果の数値が記載されている。なお、このグラフでは、電源電圧Vddは、比較的急峻に低下した後、比較的緩やかに上昇する。
【0064】
図6に示す線A1は、図3に示すPOR回路100B、すなわち抵抗R1および容量C1を有するPOR回路のリセット信号Voutを示す。線B1は、比較例として、抵抗R1および容量C1を有さないPOR回路のリセット信号Voutを示す。抵抗R1および容量C1を有さないPOR回路は、たとえば、図3において、電源電圧Vddと、電源端子T13およびT23とが直接接続された構成である。なお、図6のシミュレーションにおいて、POR回路には、図3の抵抗R2,R3および容量C2,C3が含まれる。図7および図8についても同様である。
【0065】
図6に示すように、電源電圧Vddが比較的高い場合、線A1および線B1はハイレベルを示す。電源電圧Vddが比較的高い場合とは、電源電圧Vddがしきい値VPOR図6には図示しない)以上の場合である。
【0066】
電源電圧Vddが低下すると、線A1および線B1の示す電圧はいずれも低下する。このとき、線A1に表されるように、抵抗R1および容量C1を有するPOR回路では、リセット信号Voutの電圧は、低い電圧(0V付近)まで低下する。これは、インバータINV1およびINV2は正常に動作していることを意味する。一方、線B1に表されるように、抵抗R1および容量C1を有さないPOR回路では、リセット信号Voutの電圧は、0V付近まで降下しない。これは、インバータINV1およびINV2が正常に動作していないことを意味する。線B1において、インバータINV1およびINV2が正常に動作しない理由は、電源電圧Vddが低下すると、インバータINV1およびINV2の電源端子T13およびT23への電圧供給が失われるためである。
【0067】
すなわち、電源電圧Vddが低下した場合にも、抵抗R1および容量C1によってインバータINV1およびINV2が正常に動作して、リセット信号Voutが充分低い電圧に設定される。
【0068】
抵抗R1および容量C1を適切に設計することで、リセット信号Voutをローレベルとしなければならないタイミング、たとえば、POR回路の性能を示すパラメータである遅延時間TPOR図5参照)が調節され得る。
【0069】
図7は、電源電圧Vddが図6と同様に変化した場合の、図3に示すPOR回路100BにおけるインバータINV2の入力電圧Vin2のシミュレーション結果を示すグラフである。
【0070】
図7に示す線A2は、図3に示すPOR回路100BのインバータINV2の入力電圧Vin2を示す。線B2は、比較例として、抵抗R1および容量C1を有さないPOR回路のインバータINV2の入力電圧Vin2を示す。
【0071】
図7に示すように、電源電圧Vddが低下すると、線A2に表されるように、抵抗R1および容量C1を有するPOR回路では、入力電圧Vin2は、上昇した後に徐々に低下する。すなわち、Vin2が、ハイレベルである時間が存在する。これは、その時間には、インバータINV1が正常に動作して、電源電圧Vddを反転した電圧を出力することを意味する。一方、線B2に表されるように、抵抗R1および容量C1を有さないPOR回路では、入力電圧Vin2は、上昇することなく、たとえばマイナス電圧となる。これは、インバータINV1が正常に動作しないことを意味する。
【0072】
すなわち、電源電圧Vddが低下した場合にも、抵抗R1および容量C1によってインバータINV1は正常に動作する。インバータINV2についても同様である。
【0073】
図8は、電源電圧Vddが図6に示す変化と同様に変化した場合に、図3に示すPOR回路100BにおけるインバータINV1およびINV2の電源端子T13およびT23に供給される電圧VddINVのシミュレーション結果を示すグラフである。
【0074】
図8に示す線A2および線B2は、図6に示す線A2および線B2に対応する。すなわち、線A2は、抵抗R1および容量C1を有するPOR回路のリセット信号Voutを示し、線B2は、抵抗R1および容量C1を有さないPOR回路のリセット信号Voutを示す。線Cは、図3に示すPOR回路100B、すなわち抵抗R1および容量C1を有するPOR回路における電圧VddINVを示す。
【0075】
図8に示すように、電源電圧Vddが低下すると、線Cに表されるように、VddINVは電源電圧Vddに遅れて低下する。そのため、電源電圧Vddが低下しても、電圧VddINVは、一定期間、ゼロよりも大きいある程度の電圧を有する。したがって、インバータINV1およびINV2の電源端子T13およびT23には、電圧が供給されて、インバータINV1およびINV2は正常に動作する。
【0076】
すなわち、電源電圧Vddが低下した場合にも、抵抗R1および容量C1によってインバータINV1およびINV2は正常に動作する。
【0077】
以上、図6から図8を参照して抵抗R1および容量C2の効果を説明した。この効果は、図2に示すPOR回路100Aにおいても得られる。
[R2,C2の効果]
図9は、図3に示す抵抗R2および容量C2の効果を説明するための図である。図9は、図3に示すPOR回路100Bにおいて、電源電圧Vddの変化に対するリセット信号Voutのシミュレーション結果を示すグラフである。グラフの横軸は時間(μs)を、縦軸は電圧(V)をそれぞれ示す。このグラフでは、電源電圧Vddは、比較的急峻に低下する。なお、図9のシミュレーションにおいて、POR回路には、図3の抵抗R1および容量C1が含まれる。
【0078】
図9に示す線A3は図3に示すPOR回路100B、すなわち抵抗R2および容量C2を有するPOR回路のリセット信号Voutを示す。線B3は、比較例として、抵抗R2および容量C2を有さないPOR回路のリセット信号Voutを示す。抵抗R2および容量C2を有さないPOR回路は、たとえば、図3において、電源電圧Vddと、入力端子T11とが直接接続された構成である。
【0079】
図9に示すグラフの時間軸(μs)は、図6から図8に示すグラフの時間軸(ms)とは、レンジが異なることに注意すべきである。すなわち、図9に示すグラフは、図6から図8に示すグラフよりも時間軸が拡大されている。
【0080】
図9に示すように、電源電圧Vddが比較的高い場合、線A3および線B3に表されるように、リセット信号Voutの電圧もハイレベルになる。
【0081】
電源電圧Vddが低下すると、線A3および線B3に表されるように、リセット信号Voutの電圧はいずれも低下する。このとき、線B3に表されるように、抵抗R2および容量C2を有さないPOR回路では、リセット信号Voutの電圧は、電源電圧Vddの低下に対してほとんど遅れることなく低下する。これに対し、線A3に表されるように、抵抗R2および容量C2を有する回路では、電源電圧Vddの低下に対して遅れて低下する。
【0082】
線B3に表されるように、電源電圧Vddの低下に対してほとんど遅れることなくリセット信号Voutが低下するとすると、次のような問題が起こり得る。すなわち、電源電圧Vddが一瞬だけ低下する瞬停(瞬時停電)が生じた場合に、リセット信号Voutの電圧も低下する。その結果、ICがリセットされ得る。ICは、瞬停に対して問題なく動作するように設計されている場合もある。瞬停が生じた場合にPOR回路がそのようなローレベルであるリセット信号Voutを供給すると、ICがリセットされる。このようなPOR回路の動作は、結果的には誤動作となる。
【0083】
一方、線A3に表されるように、電源電圧Vddの低下に対して一定の遅延を持ってリセット信号Voutが低下すれば、瞬停による誤動作が抑止される。
【0084】
なお、電源電圧Vddの瞬停時間はさまざまに考えられる。一例として、POR回路は、10μs程度の瞬停時間に対して誤動作を生じないように設計される。その場合、電源電圧Vddの低下に対してリセット信号Voutが10μs以上の遅延時間を有して低下するように、POR回路が設計される。10μs以上の遅延時間は、図3に示す抵抗R2および容量C2で定められる時定数τ2を適切に設計することで実現される。抵抗R2および容量C2の具体的な設計値については、後に説明する。
【0085】
すなわち、抵抗R2および容量C2によって、電源電圧Vddに瞬停が生じた場合でも、誤ってICをリセットする誤動作が発生するのを抑止することが可能になる。
【0086】
以上、抵抗R2および容量C2の効果を説明したが、この効果は、図2に示すPOR回路100Aにおいても得られる。
[R3,C3の効果]
図10は、図3に示す抵抗R3および容量C3の効果を説明するための図である。図10は、図3に示すPOR回路100Bにおいて、電源電圧Vddの変化に対するリセット信号Voutのシミュレーション結果を示すグラフである。グラフの横軸は時間(ms)を、縦軸は電圧(V)をそれぞれ示す。なお、このグラフでは、電源電圧は、比較的緩やかに低下した後、比較的緩やかに上昇する。
【0087】
図10に示す線A4は図3に示すPOR回路100B、すなわち抵抗R3および容量C3を有するPOR回路のリセット信号Voutを示す。線B4は、比較例として、抵抗R3および容量C3を有さないPOR回路のリセット信号Voutを示す。抵抗R3および容量C3を有さないPOR回路は、たとえば、図1に示すPOR回路100Aの構成である。
【0088】
図10に示すように、電源電圧Vddが上昇する(立上がる)と、線A4および線B4に表されるように、リセット信号Voutの電圧はいずれも上昇する。線B4に表されるように、抵抗R3および容量C3を有さないPOR回路では、リセット信号Voutの電圧は、比較的良好に電源電圧Vddに追従して上昇する。これに対し、線A4に表されるように、抵抗R3および容量C3を有するPOR回路は、リセット信号Voutの電圧は、電源電圧Vddよりもある程度遅れて上昇する。
【0089】
線B4に表されるように、リセット信号Voutの電圧が電源電圧Vddに良好に追従して上昇すると、リセット信号Voutがローレベルである時間が充分確保されない。したがって、ICをリセットできない可能性がある。
【0090】
これに対し、線A4に表されるように、リセット信号Voutの電圧がある程度の遅延時間を持って電源電圧Vddに追従する場合、リセット信号Voutがローレベルである時間が充分に確保され、ICをリセットできる。
【0091】
すなわち、抵抗R3および容量C3によって、電源電圧Vddの立上がりに対して適切な遅延時間が設定され、ICをリセットすることが可能になる。
【0092】
抵抗R3および容量C3を適切に設計することで、リセット信号Voutの電源電圧Vddの立上がりに対する遅延時間、たとえば、POR回路の性能を示すパラメータである遅延時間TDELAY図5参照)が調節される。
[MP1の効果]
図11は、図3に示すトランジスタMP1の効果を説明するための図である。
【0093】
図11は、図3に示すPOR回路100Bにおいて、電源電圧Vddの変化に対するリセット信号Voutのシミュレーション結果を示すグラフである。グラフの横軸は時間(ms)を、縦軸は電圧(V)をそれぞれ示す。なお、このグラフでは、電源電圧は、比較的急峻に低下する。
【0094】
図11に示す線A5は、図3のPOR回路100B、すなわちトランジスタMP1を有するPOR回路のリセット信号Voutを示す。線B5は、比較例として、トランジスタMP1を有さないPOR回路のリセット信号Voutを示す。トランジスタMP1を有さないPOR回路は、たとえば、図3において、トランジスタMP1を省略した構成である。
【0095】
図11に示すように、電源電圧Vddが低下すると、リセット信号Voutの電圧は、トランジスタMP1の有無によらず低下する。ここで、線B5に表されるように、トランジスタMP1を有さないPOR回路では、リセット信号Voutの電圧は電源電圧Vddに対してかなり遅れて低下する。一方、線A5に表されるように、トランジスタMP1を有するPOR回路では、リセット信号Voutの電圧は電源電圧Vddに良好に追従して低下する。これは、トランジスタMP1によって、容量C3に充電された電荷が短期間で放電されるためである。
【0096】
すなわち、トランジスタMP1によって、電源電圧Vddの立下がりに対して、リセット信号Voutを良好に追従させることが可能になる。
【0097】
トランジスタMP1によってリセット信号Voutの立下がりを制御することで、たとえば、遅延時間TPOR中のリセット信号Voutがローレベルである時間が調節される。
[設計値]
再び図3を参照して、POR回路100Bは、半導体チップに集積化されて形成される。すなわち、POR回路100Bに含まれる素子、たとえば抵抗R1〜R3,容量C1〜C3などの素子も、半導体チップに形成される。
【0098】
先に述べたように、抵抗R2および容量C2は、時定数τ2を与える。たとえば、電源電圧Vddの低下に対してリセット信号Voutが10μs以上の遅延時間を有するように時定数τ2を設定する一例を考える。その場合、時定数τ2は10μsよりも大きな値に設定されることが好ましい。たとえば、抵抗R2を16.6MΩ程度に設計し、容量C2を0.66pFに設計することで、10μs以上の適切な時定数τ2が得られる。
【0099】
また、先に述べたように、抵抗R1および容量C1は、時定数τ1を与える。時定数τ1は、抵抗R2および容量C2が与える時定数τ2よりも大きく設定される。一例として、抵抗R1を66MΩ程度に設計し、容量C1を2.4pFに設計することで、時定数τ2よりも大きな時定数τ1が得られる。
【0100】
上記の例では、抵抗R1およびR2が、MΩオーダーの大きな抵抗値に設計され、容量C1およびC2が、pFオーダーの小さな容量値に設計される。これにより、以下のようなメリットが得られる。
【0101】
すなわち、半導体チップにおいて、容量値の大きな容量を形成すると、半導体チップにおいて容量が占める面積が大きくなる。これに対し、半導体チップにおいて、材料などのパラメータを適切に選択すれば、抵抗値の大きな抵抗を形成しても、半導体チップにおいて抵抗が占める面積はそれほど大きくない。したがって、抵抗および容量によって所定の時定数を実現する場合、抵抗値を大きくし、容量値を小さくすることで、半導体チップの面積が低減される。
【0102】
なお、抵抗R3および容量C3についても同様に、抵抗R3の抵抗値を大きくし(たとえばMΩオーダー)、容量R3の容量値を小さくする(たとえばpFオーダー)とよい。
[インバータの構成]
図12は、図2などに示すインバータINV1および/またはINV2の構成の一例を説明するための図である。つまり、図12に示される構成は、図2などに示すインバータINV1,INV2のいずれか一方のインバータにのみ適用されてもよく、インバータINV1およびINV2の両方のインバータに適用されてもよい。
【0103】
図12を参照して、インバータ300(図2に示すインバータINV1および/またはINV2に相当)は、入力端子T11と、出力端子T12と、電源端子T13と、トランジスタ311〜315とを備える。
【0104】
入力端子T11と、出力端子T12と、電源端子T13とは、たとえば図2に示すインバータINV1の入力端子T11と、出力端子12と、電源端子T13とにそれぞれ対応すると理解してよい。
【0105】
トランジスタ311〜315はMOS(Metal Oxide Semiconductor)FETであり、インバータ回路を構成する。トランジスタ311〜314は、いずれもP型のMOSFETである。トランジスタ311〜314はカスコード接続されて、全体で一つのトランジスタ310(P型MOSFET)を構成する。トランジスタ35は、N型のMOSFETである。インバータ300は、P型MOSFETであるトランジスタ310と、N型MOSFETであるトランジスタ35とが接続されることで構成される論理回路である。
【0106】
電源端子T13は、トランジスタ311のソース端Sと電気的に接続される。
トランジスタ311のドレイン端D1は、トランジスタ312のソース端S2と電気的に接続される。トランジスタ312のドレイン端D2は、トランジスタ313のソース端S2と電気的に接続される。トランジスタ313のドレイン端D3は、トランジスタ314のソース端S4と電気的に接続される。トランジスタ314のドレイン端D4は、トランジスタ315のドレイン端D5と電気的に接続される。トランジスタ315のソース端S5は、グラウンドGNDと電気的に接続される。
【0107】
入力端子T11は、トランジスタ311〜315のゲート端G1〜G5と電気的に接続される。
【0108】
出力端子T12は、トランジスタ314のドレイン端D4と、トランジスタ315のドレイン端D5とに電気的に接続される。
【0109】
P型MOSFETであるトランジスタ310は、チャネル長Lおよびチャネル幅Wの比率(W/L)によって電気的特性が変化する。チャネル幅Wが同じ場合、(W/L)が小さくなると、トランジスタ310の駆動能力は小さくなる。逆に、(W/L)が大きくなると、トランジスタ310の駆動能力は大きくなる。N型MOSFETであるトランジスタ315も同様である。
【0110】
インバータ300において、トランジスタ311〜315の(W/L)はいずれも同じ大きさに設計される。これにより、トランジスタ311〜315は、同一の半導体プロセス(たとえば(W/L)=(W/L)で一定のプロセス)を用いて同一の半導体チップ内に容易に製造できる。
【0111】
一般に、トランジスタ311〜314の(W/L)と、トランジスタ315の(W/L)とがいずれも(W/L)で同じ大きさの場合、P型MOSFETであるトランジスタ311〜314の各々の駆動能力は、N型MOSFETであるトランジスタ315の駆動能力よりも小さいことが知られている。
【0112】
そこで、P型MOSFETの駆動能力と、N型MOSFETとの駆動能力との違いに着目し、P型MOSFETをカスコード接続することで、駆動能力を調整できることに注目した。すなわち、トランジスタ310は、トランジスタ311〜314がカスコード接続されて構成されるため、トランジスタ311〜314の各々の駆動能力とは異なる駆動能力を有する。
【0113】
このように複数のトランジスタ311〜314を用いることで、各トランジスタ311〜314のトランジスタ310の駆動能力が調節される。トランジスタ310を構成するトランジスタの数は、トランジスタ311〜314の4つに限定されない。トランジスタ310を構成するトランジスタの数を適切に選択することで、P型MOSFETであるトランジスタ310の駆動能力が適切に設計される。これにより、P型MOSFETであるトランジスタ310の駆動能力と、N型MOSFETであるトランジスタ315の駆動能力とのバランスを調節することができる。
【0114】
インバータ300の出力端子T12の電圧が、ローレベルからハイレベルに切替る際の時間(立上り時間)は、トランジスタ310の駆動能力に依存する。また、インバータ300の出力端子T12の電圧が、ハイレベルからローレベルに切替る際の時間(立下がり時間)は、トランジスタ315の駆動能力に依存する。
【0115】
そのため、たとえば、トランジスタ310の駆動能力と、トランジスタ315の駆動能力とをほぼ同じに設計することで、インバータ300の立上がり時間と立下がり時間とを揃えることが可能になる。
【0116】
一方、トランジスタ310の駆動能力を、トランジスタ315の駆動能力よりも小さく設計してもよい。これにより、インバータ300の立上がり時間は、立下がり時間よりも長くなる。換言すれば、インバータ300の立上がりに遅延時間が与えられる。この遅延時間は、図3に示す抵抗R3および容量C3によって得られる遅延時間(たとえば図5に示す遅延時間TDELAY)と同様の効果を奏する。トランジスタ310の駆動能力を調節することにより、所望の遅延時間TDELYを実現しつつ、抵抗R3および容量C3を小さくする、または不要とすることが可能になる。
【0117】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0118】
1 半導体チップ、100,100A,100B POR回路、110,210 電源入力端子、120 リセット信号出力端子、220 リセット入力端子、300,INV1,INV2 インバータ、311〜315,MP1 トランジスタ、N1 電源ノード、T11,T21 入力端子、T12,T22 出力端子、T13,T23 電源端子、R1〜R3 抵抗、C1〜C3 容量、G1〜G5,MP1−G ゲート端、S1〜S5,MP1−S ソース端、D1〜D5,MP1−D ドレイン端。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12