(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に開示された方法では、糸切れ錘においてロボットによる糸継ぎ作業が1回失敗されるまでは糸切れ錘に対する粗糸供給の停止が行われない。そのため、糸切れ発生時におけるロボットの位置と糸切れ錘との距離によっては、ロボットが糸切れ錘まで到達するまでに時間がかかり、糸切れ状態で粗糸がドラフト装置に供給され続けることによって粗糸が無駄に供給されるだけでなく、粗糸(繊維束)のローラ巻き上がりが発生するという問題がある。
【0007】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、糸切れ発生時に、その糸切れ錘に対して繊維束が無駄に供給されるのを抑制し、かつ糸継ぎの作業効率悪化を防止することができる精紡機の繊維束供給停止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する精紡機の繊維束供給停止装置は、ドラフト装置に供給される繊維束の供給を停止可能な繊維束供給停止部を錘毎に備えた精紡機の繊維束供給停止装置である。そして、前記錘毎に設けられ
、前記ドラフト装置から前記錘に送出される糸の切断を検知する糸切れ検知部と、
前記糸切れ検知部により糸切れが検知された糸切れ錘において糸継ぎ作業を行う作業者又は作業機の位置を検出する位置検出部と、前記位置検出部により検出された糸継ぎ作業を行う作業者又は作業機の位置に基づいて前記作業者又は前記作業機が
前記糸切れ
錘に到達するまでの所要時間を推定し、前記所要時間が予め設定された設定値以下のときには
前記糸切れ錘への繊維束供給を継続し、前記所要時間が前記設定値より大きいときには
前記糸切れ錘への繊維束の供給を停止するように前記繊維束供給停止部を制御する制御部とを備える。
【0009】
この構成によれば、制御部は、位置検出部の検出信号に基づいて、作業者又は作業機の位置を認識する。また、糸切れが発生すると、制御部は、糸切れ検知部の検知信号に基づいて糸切れ錘の位置を確認し、位置検出部により
糸切れが検出された
糸切れ錘において糸継ぎ作業を行う作業者又は作業機の位置に基づいて作業者又は作業機が糸切れ
錘に到達するまでの所要時間を推定する。制御部は、推定された所要時間が予め設定された設定値以下か否かを判断し、設定値以下のときには糸切れ錘への繊維束供給を継続する。そのため、糸切れ錘まで到達するための所要時間が短い場合は、糸継ぎ開始まで繊維束の供給を停止せず、糸継ぎの作業効率悪化を防止することができる。また、推定された所要時間が長い場合は、繊維束の供給が停止され、糸継ぎ作業に支障を来す程繊維束がドラフトローラに巻き付くことが回避される。したがって、糸切れ発生時に、その糸切れ錘に対して繊維束が無駄に供給されるのを抑制し、かつ糸継ぎの作業効率悪化を防止することができる。
【0011】
前記位置検出部は、光学センサであることが好ましい。位置検出部として、例えば、ICタグを使用することもできるが、光学センサの場合は、作業者が位置検出のために特別な機器を持ち歩く必要がない。
【0012】
前記位置検出部は、ICタグとICタグリーダとの組み合わせあるいはICカードとICカードリーダとの組み合わせであり、前記制御部は、前記作業者が
糸継ぎ作業者であるかどうかを前記作業者が携帯する前記ICタグまたは前記ICカードから確認し、
前記糸継ぎ作業者が前記糸切れ錘まで移動するために要する時間を推定することが好ましい。紡績工場においては、作業者として精紡機の糸継ぎ作業以外の作業、例えば、保全作業を行う作業者もいる。制御部が作業者が
糸継ぎ作業者であるかどうかを作業者が携帯するICタグまたはICカードから確認して、作業者が糸切れ
錘まで移動するために要する時間を推定すれば、その所要時間が適切なものとなり、糸継ぎ作業者が糸切れ錘の近くにいるにも拘わらず、制御部が繊維束供給停止指令を出力することを回避することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、糸切れ発生時に、その糸切れ錘に対して繊維束が無駄に供給されるのを抑制し、かつ糸継ぎの作業効率悪化を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1(a)に示すように、精紡機としてのリング精紡機11は複数台並設されており、
図1(b)に示すように、各リング精紡機11には錘12毎に糸切れ検知部としての糸切れセンサ13が設けられている。また、リング精紡機11には、図示しないドラフト装置に供給される繊維束(粗糸)の供給を停止可能な繊維束供給停止部14が錘12毎に設けられている。繊維束供給停止部14には公知の装置が使用されている。
【0016】
図1(a)に示すように、隣り合って配置された各リング精紡機11の両端部には、互いに対向する位置に、作業者Wの位置を検出する位置検出部としての光学センサ15,16が2組ずつ設けられている。各光学センサ15,16は、投光部15a,16aと受光部15b,16bとで構成され、リング精紡機11の長手方向における端部寄りに第1の光学センサ15が配置され、第1の光学センサ15よりリング精紡機11の長手方向の内側に第2の光学センサ16が配置されている。
【0017】
また、機台の片側にのみ隣り合うリング精紡機11が存在するリング精紡機11、すなわち複数台並設されたリング精紡機11の配列方向の両端に配置されたリング精紡機11の、隣り合うリング精紡機11と対向する側と反対側には工場壁30が設けられている。工場壁30にはリング精紡機11の両端部と対向する位置に、光学センサ15,16の投光部15a,16aが設けられている。工場壁30と対向するリング精紡機11の両端部には、工場壁30に設けられた投光部15a,16aに対応する受光部15b,16bがそれぞれ設けられている。そのため、リング精紡機11の機台間通路だけでなく、リング精紡機11の機台と工場壁30との間の通路においても作業者Wの位置検出は可能である。
【0018】
なお、一般に紡績工場においては、リング精紡機11に沿って巡回移動する図示しない清掃装置(所謂トラベリングクリーナ)が設けられている。そのため、光学センサ15,16がトラベリングクリーナを誤検出しないように、光学センサ15,16は床面近くに配置されている。
【0019】
各リング精紡機11の一端には制御部としての制御装置17が設けられている。制御装置17はCPU18及びメモリ19を備えている。制御装置17はローカルエリアネットワーク(LAN)20を介してホストコンピュータ21と接続されている。ホストコンピュータ21は、CPU22及びメモリ23を備えている。
【0020】
制御装置17は、図示しない信号線を介して糸切れセンサ13に接続され、糸切れセンサ13の検知信号に基づいて糸切れが発生した錘12、すなわち糸切れ錘12a,12b(
図1(a)に×印で図示)の位置を検知する。制御装置17は、図示しない信号線を介して繊維束供給停止部14と接続され、繊維束供給停止が必要な糸切れ錘12a,12bの繊維束供給停止部14に対して繊維束供給停止指令を出力する。制御装置17は、糸切れが発生したときに、糸切れ錘12aの近くに作業者Wがいて、作業者Wが糸切れ錘12aに到達するまでの所要時間が短いと推定される場合には、粗糸の供給停止タイミングを遅らせる制御を行う。詳述すると、作業者Wが隣り合うリング精紡機11間の通路に進入した状態においてその通路に対向する糸切れ錘12aが発生すると、制御装置17は当該糸切れ錘12aの繊維束供給停止部14に対して、粗糸の供給停止タイミングを予め設定された時間だけ遅らせて繊維束供給停止指令を出力する。
【0021】
制御装置17は、図示しない信号線を介して光学センサ15,16の受光部15b,16bに接続され、受光部15b,16bからの検出信号に基づいて作業者Wが隣り合うリング精紡機11間又はリング精紡機11と工場壁30との間に進入したか、あるいは作業者Wが隣り合うリング精紡機11間又はリング精紡機11と工場壁30との間から退出したか否かを判断する。詳述すると、制御装置17は、機台端部側に配置された受光部15bからの検出信号に続いて、受光部15bより内側に配置された受光部16bからの検出信号を入力した場合は、作業者Wが隣り合うリング精紡機11間又はリング精紡機11と工場壁30との間に進入したと判断する。また、制御装置17は、受光部16bからの検出信号に続いて受光部15bからの検出信号を入力した場合は、作業者Wが隣り合うリング精紡機11間又はリング精紡機11と工場壁30との間から退出したと判断する。
【0022】
なお、この実施形態では、
図1(a)において、もっとも下側の位置に配置されたリング精紡機11を除いて、受光部15b,16bはリング精紡機11の機台の長手方向から見て片側(
図1では上側)にのみ設けられているため、隣り合うリング精紡機11との間に作業者Wが進入したか、あるいは作業者Wが隣り合うリング精紡機11間から退出したか否かの判断は、機台の片側(
図1では上側)に関してのみ可能となる。その結果、各制御装置17は、自身が設けられたリング精紡機11の受光部15b,16bからの検出信号だけでは、
図1において下側のリング精紡機11との間に作業者Wが進入したか、あるいは作業者Wが隣り合うリング精紡機11間から退出したか否かの判断はできない。
【0023】
この問題を解消するため、各制御装置17は、自身が設けられたリング精紡機11と隣り合うリング精紡機11との間に作業者Wが進入したか、あるいは作業者Wが隣り合うリング精紡機11間から退出したか否かの問いをホストコンピュータ21に出力する。ホストコンピュータ21は、隣り合うリング精紡機11間への作業者Wの進入情報あるいは隣り合うリング精紡機11間からの作業者Wの退出情報を、メモリ23に記憶するとともに該当するリング精紡機11の制御装置17に送信する。
【0024】
次に前記のように構成された装置の作用を説明する。
リング精紡機11が運転されると、制御装置17のCPU18は、各糸切れセンサ13からの検知信号に基づいて、各錘12の糸切れの有無を判断し、糸切れが発生した錘12、すなわち糸切れ錘12aの位置をメモリ19に記憶させる。
【0025】
また、制御装置17のCPU18は、光学センサ15,16の受光部15b,16bからの検出信号に基づいて、作業者Wが隣り合うリング精紡機11間又はリング精紡機11と工場壁30との間に進入しているか否かの判断を行う。詳述すると、CPU18は、機台端部側に配置された受光部15bからの検出信号に続いて、受光部15bより内側に配置された受光部16bからの検出信号を受信した場合は、作業者Wが隣り合うリング精紡機11間又はリング精紡機11と工場壁30との間に進入したと判断する。また、CPU18は、受光部16bからの検出信号に続いて受光部15bからの検出信号を受信した場合は、作業者Wが隣り合うリング精紡機11間又はリング精紡機11と工場壁30との間から退出したと判断する。
【0026】
なお、複数並設されたリング精紡機11の配列方向の両端に配置されたリング精紡機11と対向する工場壁30には光学センサ15,16の投光部15a,16aが設けられており、リング精紡機11には投光部15a,16aに対応した受光部15b,16bが設けられている。そのため、工場壁30との間に作業者Wがいるか否かの判断を、工場壁30と対向する側に設けられた受光部15b,16bからの検出信号に基づいて判断することができる。
【0027】
CPU18は、光学センサ15,16により検出された糸継ぎ作業を行う作業者Wの位置に基づいて作業者Wが糸切れ位置に到達するまでの所要時間を推定し、所要時間が予め設定された設定値以下のときは糸切れ錘12aへの繊維束供給を継続し、所要時間が設定値より大きいときには糸切れ錘12aへの繊維束の供給を停止するように繊維束供給停止部14を制御する。
【0028】
制御装置17は、位置検出部(光学センサ15,16)の検出信号に基づいて、作業者Wの位置を演算する。また、糸切れが発生すると、制御装置17は、糸切れ検知部(糸切れセンサ13)の検知信号に基づいて糸切れ錘12aの位置を確認し、作業者Wが糸切れ位置に到達するまでの所要時間が予め設定された設定値より大きいか否かを判断し、設定値より大きい場合はその錘への繊維束供給を停止する。
【0029】
CPU18は、糸切れセンサ13から糸切れ検知信号を入力した状態において、作業者Wが隣り合うリング精紡機11間から退出した状態であれば、直ちに糸切れ錘12aの繊維束供給停止部14に対して繊維束供給停止指令を出力する。その結果、繊維束供給停止部14が作動して、当該糸切れ錘に対する繊維束(粗糸)の供給が停止される。作業者Wが隣り合うリング精紡機11間又はリング精紡機11と工場壁30との間から退出した状態では、作業者Wが糸切れ位置に到達するまでの所要時間は設定値より大きくなるため、その糸切れ錘12aの繊維束供給停止部14に対して繊維束供給停止指令が出力される。
【0030】
CPU18は、糸切れセンサ13から糸切れ検知信号を入力した状態において、作業者Wが糸切れ錘12aが対向する機台間通路又はリング精紡機11と工場壁30との間に進入した状態であれば、その糸切れ錘12aに対する繊維束の供給を継続し、予め設定された遅延時間が経過した後に、糸切れ錘の繊維束供給停止部14に対して繊維束供給停止指令を出力する。遅延時間が経過する前に糸継ぎが完了すれば、当該糸切れ錘の繊維束供給停止部14に対して繊維束供給停止指令を出力しない。遅延時間は、リング精紡機11の回転数や紡出繊維の太さ(番手)によって適正値が異なり、細番手であれば糸切れ状態で粗糸供給が継続されてもローラ巻き上がりまでに時間が掛かるので、遅延時間を長く設定できる。しかし、遅くとも、糸切れ検出から数十秒で粗糸供給を停止する。
【0031】
例えば、
図1(a)に示すように、作業者Wが隣り合うリング精紡機11間に進入している状態で、一方のリング精紡機11の作業者Wが進入した通路に面した位置で糸切れ錘12aが存在する場合は、作業者Wが糸切れ錘12aまで移動する移動距離は矢印d1で示すように短い。CPU18は、糸切れセンサ13から糸切れ検知信号を入力した状態で、作業者Wが糸切れ錘12aに到達するまでの所要時間が設定値以下と判断する。そして、糸切れ錘12aへの繊維束供給を継続する。そのため、作業者Wが糸切れ錘12aに到着して糸継ぎ作業を開始する状態では、繊維束の供給が継続されているため、作業者Wは糸継ぎ作業の準備のため、ローラに巻き付いている糸の除去や、手動操作で繊維束供給停止部14の停止状態の解除などを行う必要はなく、糸継ぎ作業を開始することができる。
【0032】
また、
図1(a)に示すように、作業者Wが隣り合うリング精紡機11間に進入している状態で、リング精紡機11と工場壁30との間の通路に面した位置で糸切れ錘12bが存在する場合は、作業者Wが糸切れ錘12bまで移動する移動距離は矢印d2で示すように長くなる。CPU18は、糸切れセンサ13から糸切れ検知信号を入力した状態で、作業者Wが糸切れ錘12bに到達するまでの所要時間が設定値より大きいと判断する。そのため、直ちに糸切れ錘12bの繊維束供給停止部14に対して繊維束供給停止指令が出力される。
【0033】
作業者Wが糸切れ錘に到達するまで、繊維束供給停止部14が作動されていなければ、作業者Wは直ちに糸継ぎ作業を開始することができ、糸切れから紡出再開までの時間を短くできる。すなわち、糸継ぎの作業効率悪化を防止することができる。また、予め設定された時間が経過しても作業者Wによる糸継ぎ作業が開始されない場合は、糸切れ錘12aに対する繊維束供給停止部14に停止指令が出力される。例えば、作業者Wが糸切れ錘12aまで移動する間に、新たな糸切れ錘12aが発生し、作業者Wがその糸切れ錘12aの糸継ぎ作業を行った場合は、最初に糸切れが発生していた糸切れ錘12aに到達するまでの所要時間が設定時間より大きくなる場合がある。
【0034】
作業者Wが糸切れ錘に到達するまでに繊維束供給停止部14が作動されて、糸切れ錘に対する繊維束(粗糸)の供給が停止されている場合は、作業者Wは糸継ぎ作業の準備のため、ローラに巻き付いている糸の除去や、手動操作で繊維束供給停止部14の停止状態の解除などを行った後、糸継ぎ作業を行う。
【0035】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)繊維束供給停止装置は、ドラフト装置に供給される繊維束(粗糸)の供給を停止可能な繊維束供給停止部を錘12毎に備えたリング精紡機11の繊維束供給停止装置である。そして、錘12毎に設けられた糸切れセンサ13(糸切れ検知部)と、糸継ぎ作業を行う作業者Wの位置を検出する位置検出部(光学センサ15,16)と、位置検出部により検出された糸継ぎ作業を行う作業者Wの位置に基づいて作業者Wが糸切れ位置に到達するまでの所要時間を推定し、所要時間が予め設定された設定値以下のときには糸切れ錘12aへの繊維束供給を継続し、所要時間が設定値より大きいときには糸切れ錘12aへの繊維束の供給を停止するように繊維束供給停止部14を制御する制御装置17(制御部)とを備える。
【0036】
この構成によれば、制御装置17は、位置検出部の検出信号に基づいて、作業者Wの位置を認識する。また、糸切れが発生すると、制御装置17は、糸切れセンサ13の検知信号に基づいて糸切れ錘12a,12bの位置を確認し、位置検出部により検出された糸継ぎ作業を行う作業者Wの位置に基づいて作業者Wが糸切れ位置に到達するまでの所要時間を推定する。制御装置17は、推定された所要時間が予め設定された設定値以下か否かを判断し、設定値以下のときには糸切れ錘への繊維束供給を継続する。そのため、糸切れ錘まで到達するための所要時間が短い場合は、糸継ぎ開始まで繊維束の供給を停止せず、糸継ぎの作業効率悪化を防止することができる。また、推定された所要時間が長い場合は、繊維束の供給が停止され、糸継ぎ作業に支障を来す程繊維束がドラフトローラに巻き付くことが回避される。したがって、糸切れ発生時に、その糸切れ錘に対して繊維束が無駄に供給されるのを抑制し、かつ糸継ぎの作業効率悪化を防止することができる。
【0037】
(2)制御装置17は、糸切れセンサ13から糸切れ検知信号を入力した状態において、作業者Wが隣り合うリング精紡機11間又はリング精紡機11と工場壁30との間から退出した状態であれば、直ちに糸切れ錘の繊維束供給停止部14に対して繊維束供給停止指令を出力する。即ち、制御装置17は、作業者Wが隣り合うリング精紡機11間又はリング精紡機11と工場壁30との間から退出した状態であれば、当該リング精紡機11の糸切れ位置に作業者Wが到達するための所要時間が予め設定された設定値より大きいと判断するため、作業者Wが糸切れ位置に到達するまでの所要時間を演算する必要がない。
【0038】
(3)CPU18は、糸切れセンサ13から糸切れ検知信号を入力した状態において、作業者Wが隣り合うリング精紡機11間又はリング精紡機11と工場壁30との間に進入した状態であれば、予め設定された遅延時間が経過した後に、糸切れ錘の繊維束供給停止部14に対して繊維束供給停止指令を出力する。しかし、遅延時間が経過する前に糸継ぎが完了すれば、当該糸切れ錘の繊維束供給停止部14に対して繊維束供給停止指令を出力しない。したがって、糸継ぎ完了後に、繊維束供給停止部14に対して繊維束供給停止指令を出力することが防止される。また、所要時間が設定値以下と推定して、繊維束の供給を継続した場合でも、遅延時間が経過すると繊維束供給停止部14に停止指令が出力されて繊維束の供給が停止される。したがって、繊維束の供給が無駄に継続されることは回避される。
【0039】
(4)位置検出部は、光学センサ15,16である。位置検出部として、例えば、ICタグを使用することもできるが、光学センサの場合は、作業者Wが位置検出のために特別な機器を持ち歩く必要がない。
【0040】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態を説明する。この実施形態では、制御装置17は、作業者Wの糸切れ錘12aまでの移動距離、糸切れ錘12aの数及び作業者Wの移動速度に基づいて、作業者Wが糸切れ位置に到達するまでの所要時間を推定する。
【0041】
作業者Wの現在位置から糸切れ錘の位置までの作業者Wの移動距離が同じであっても糸切れ錘の数や作業者Wの移動速度の違いによって、作業者Wが糸継ぎ作業を行う位置に到達するまでの所要時間が異なる。
【0042】
しかし、この第2の実施形態においては、移動距離、糸切れ錘の数及び作業者Wの移動速度に基づいて所要時間を推定することで、より正確に所要時間を推定することができる。
【0043】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○
図2に示すように、隣り合うリング精紡機11間のスペース及び図示しないが、リング精紡機11と工場壁30との間のスペースをリング精紡機11の機台の長手方向において複数のエリア(ブロック)に分ける。そして、リング精紡機11の長手方向の両端部だけでなく、各エリアの境界にも光学センサ15,16の組を設ける。そして、作業者Wがいないエリアに属する糸切れセンサ13が糸切れを検知した場合は、その糸切れ錘の繊維束供給停止部14に対して直ちに繊維束供給停止指令を出力し、作業者Wがいるエリアに属する糸切れセンサ13が糸切れを検知した場合は、その糸切れ錘の繊維束供給停止部14に対して予め設定された時間が経過した後に、繊維束供給停止指令を出力するようにしてもよい。
【0044】
○
図2に示すように、隣り合うリング精紡機11間のスペース及び図示しないが、リング精紡機11と工場壁30との間のスペースをリング精紡機11の機台の長手方向において複数のエリア(ブロック)に分ける。そして、リング精紡機11の長手方向の両端部だけでなく、各エリアの境界にも光学センサ15,16の組を設ける。そして、作業者Wの進路(移動方向)を見込んで、作業者Wの進行方向後側のエリアに属する糸切れセンサ13が糸切れを検知した場合は、その糸切れ錘の繊維束供給停止部14に対して直ちに繊維束供給停止指令を出力し、作業者Wの進行方向前側のエリアに属する糸切れセンサ13が糸切れを検知した場合は、その糸切れ錘の繊維束供給停止部14に対して予め設定された時間が経過した後に、繊維束供給停止指令を出力するようにしてもよい。
【0045】
○ 各制御装置17は、投光部15a,16aが設けられた側で隣り合うリング精紡機11の制御装置17から作業者Wの位置情報、即ち、投光部15a,16aが設けられた側で隣り合うリング精紡機11との間に作業者Wが進入した状態にあるか否かの情報を通信で入手するようにしてもよい。
【0046】
○ 作業者Wの位置を検出する位置検出部は、投光部15a,16aと受光部15b,16bとからなる光学センサ15,16ではなく、作業者W(人)を選択的に検知できる人感センサを使用してもよい。人感センサとして赤外線センサや静電容量センサが挙げられる。位置検出部として人感センサを設けた場合は、センサの設置位置を床面近くにしなくても、センサがトラベリングクリーナを作業者Wと誤検出することを回避することができる。また、センサは、投光部と受光部との組み合わせを必要とせず、隣り合うリング精紡機11が存在するか否かに拘らず作業者Wを検出することができる。
【0047】
○
図3に示すように、並列配置された全てのリング精紡機11の機台の両側に、位置検出部として第1の赤外線センサ24及び第2の赤外線センサ25を設けてもよい。この場合、並列配置された配列方向の両端に位置するリング精紡機11のように隣り合うリング精紡機11が片側にしか存在しないリング精紡機11であっても、作業者Wが隣り合うリング精紡機11と対向しない側を移動する際に、制御装置17は赤外線センサ24,25の検出信号に基づいて作業者Wの移動方向を検出することが可能になる。即ち、制御装置17は、自身が設けられたリング精紡機11の錘12と対応する位置に作業者Wがいるか否かを赤外線センサ24,25の検出信号に基づいて判断することが可能になる。したがって、ホストコンピュータ21あるいは隣り合うリング精紡機11の制御装置17から、作業者Wの位置情報を入手する必要がない。赤外線センサ24,25ではなく他の人感センサを用いても同様の効果を得ることができる。
【0048】
○ 位置検出部としてICタグとICタグリーダとの組み合わせあるいはICカードとICカードのリーダとの組み合わせを用いてもよい。即ち、作業者WがICタグや非接触式のICカードを携帯し、リング精紡機11側にICタグリーダやICカードのリーダを設けてもよい。これらの場合、トラベリングクリーナが作業者Wと誤検出されることが回避されるだけでなく、作業者Wが糸継ぎ作業者Wであるか他の作業者Wであるかを識別することが可能となる。また、隣り合うリング精紡機11と対向しない側にもICタグリーダやICカードのリーダを設けて、作業者Wが隣り合うリング精紡機11と対向しない側を移動する際にそれを検出することが可能になる。したがって、ホストコンピュータ21あるいは隣り合うリング精紡機11の制御装置17から、作業者Wの位置情報を入手する必要がない。
【0049】
○ 制御装置17は、糸切れセンサ13により検知された糸切れ錘の位置と、位置検出部により検出された作業者Wの位置とに基づいて、作業者Wが糸切れ位置に到達するまでの所要時間を推定し、所要時間が予め設定された設定値より大きいときにその錘の繊維束供給停止部14に対して繊維束供給停止指令を出力するようにしてもよい。
【0050】
○ リング精紡機11の機台の片側において糸切れ錘が複数錘の場合、制御装置17は、少なくとも作業者Wから遠い側の錘12の繊維束供給停止部14に対しては直ちに繊維束供給停止指令を出力するようにしてもよい。
【0051】
○ 繊維束は粗糸に限らず、スライバであってもよい。例えば、リング精紡機であっても、ドラフト装置として通常の3線式のドラフト装置よりはるかに大きなドラフト比で繊維束をドラフトするドラフト装置を使用してスライバから糸を紡出するリング精紡機に繊維束供給停止装置を使用してもよい。
【0052】
○ 精紡機はリング精紡機に限らず、例えば、結束紡績装置やフリクション紡績装置であってもよい。
○ 糸継ぎ作業を作業機で行う場合に適用してもよい。
【0053】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項1に記載の発明において、前記制御部は、前記糸切れ検知部により検知された糸切れ錘の位置と、前記位置検出部により検出された前記作業者又は前記作業機の位置とに基づいて、前記作業者又は前記作業機が糸切れ位置に到達するまでの所要時間を推定し、所要時間が予め設定された設定値より大きいときにその錘の繊維束供給停止装置に対して繊維束供給停止指令を出力する。