特許第5979179号(P5979179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979179
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】偏光光照射装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20160817BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20160817BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   G02F1/1337
   G02F1/13 101
   G03F7/20 501
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-120451(P2014-120451)
(22)【出願日】2014年6月11日
(65)【公開番号】特開2016-1220(P2016-1220A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2014年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】吉原 啓太
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−122789(JP,A)
【文献】 特開2013−037158(JP,A)
【文献】 特開2008−052078(JP,A)
【文献】 特開2013−225069(JP,A)
【文献】 特開2002−098969(JP,A)
【文献】 特開2008−107594(JP,A)
【文献】 特開2012−098313(JP,A)
【文献】 特開平09−015601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/13 101
G02F 1/1335
G02F 1/1333
G02B 5/30
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配向膜に偏光光を照射して光配向を行う偏光光照射装置であって、
光源からの光を偏光子によって偏光し、光出射口から偏光光を照射する光照射部と、
前記光照射部の光出射口の光出射側に配置され、前記光出射口から出射する偏光光を遮断して当該偏光光の前記配向膜への照射を阻止する遮断位置と、当該遮断位置から退避して前記偏光光の前記配向膜への照射を許容する退避位置との間を移動可能なシャッタ部材と、を備え、
前記光照射部は、前記光源を覆い、前記光出射口を形成した外壁を備え、
前記退避位置は、前記外壁が前記シャッタ部材への前記偏光光の照射を遮断し、前記シャッタ部材に前記偏光光が照射されない位置であることを特徴とする偏光光照射装置。
【請求項2】
前記シャッタ部材は、前記遮断位置において前記偏光光が入射される光入射面側に、当該偏光光を反射する反射部材を備えることを特徴とする請求項に記載の偏光光照射装置。
【請求項3】
前記シャッタ部材の前記光入射面と前記反射部材との間に空気層が形成されていることを特徴とする請求項に記載の偏光光照射装置。
【請求項4】
前記シャッタ部材は、前記退避位置での前記偏光光の出射方向に直交する方向における前記光源側端部に、前記偏光光の出射方向に向かうにつれて当該シャッタ部材の内側に傾斜する傾斜部を備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の偏光光照射装置。
【請求項5】
前記光源は線状光源であって、
前記シャッタ部材は、前記線状光源の長手方向に直交する方向に移動することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の偏光光照射装置。
【請求項6】
前記光源は線状光源であって、
前記シャッタ部材は、前記線状光源の長手方向に沿って延びる長尺状の平板部材により構成されており、長手方向に直交する方向の端部に屈曲部を備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の偏光光照射装置。
【請求項7】
配向膜に偏光光を照射して光配向を行う偏光光照射装置であって、
光源からの光を偏光子によって偏光し、光出射口から偏光光を照射する光照射部と、
前記光照射部の光出射口の光出射側に配置され、前記光出射口から出射する偏光光を遮断して当該偏光光の前記配向膜への照射を阻止する遮断位置と、当該遮断位置から退避して前記偏光光の前記配向膜への照射を許容する退避位置との間を移動可能なシャッタ部材と、を備え、
前記退避位置は、前記シャッタ部材に前記偏光光が照射されない位置であり、
前記シャッタ部材は、前記退避位置での前記偏光光の出射方向に直交する方向における前記光源側端部に、前記偏光光の出射方向に向かうにつれて当該シャッタ部材の内側に傾斜する傾斜部を備えることを特徴とする偏光光照射装置。
【請求項8】
配向膜に偏光光を照射して光配向を行う偏光光照射装置であって、
線状光源からの光を偏光子によって偏光し、光出射口から偏光光を照射する光照射部と、
前記光照射部の光出射口の光出射側に配置され、前記光出射口から出射する偏光光を遮断して当該偏光光の前記配向膜への照射を阻止する遮断位置と、当該遮断位置から退避して前記偏光光の前記配向膜への照射を許容する退避位置との間を移動可能なシャッタ部材と、を備え、
前記退避位置は、前記シャッタ部材に前記偏光光が照射されない位置であり、
前記シャッタ部材は、前記線状光源の長手方向に沿って延びる長尺状の平板部材により構成されており、長手方向に直交する方向の端部に屈曲部を備えることを特徴とする偏光光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光光を照射して光配向処理を行う偏光光照射装置に関し、特にワークへの偏光光の照射の許容と阻止とを切り替え可能なシャッタ機構を有する偏光光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルをはじめとする液晶表示素子の配向膜や、視野角補償フィルムの配向層などの配向処理に関し、所定の波長の偏光光を照射して配向を行う、光配向と呼ばれる技術が採用されている。光配向に用いる照射装置は、紫外線領域の波長を有する光を照射する。
紫外線領域の波長を有する光を照射する照射装置としては、例えば特許文献1,2に記載のように、インクの硬化乾燥処置を行う紫外線照射装置がある。これらの技術は、ワーク側に光を照射する必要のないとき(ワークを処理していないとき)、光照射部の光出射口から光が出射するのを阻止するシャッタ機構を備えるものである。ここでは、シャッタ機構を構成するシャッタ部材(シャッタ板)を、ランプや反射ミラーからなる光源部と光照射部の光出射口との間に配置し、当該シャッタ板を、光出射口を開閉するように退避位置と遮光位置との間で移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/128351号
【特許文献2】特許第5467523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載の技術にあっては、シャッタ板を光照射部の筐体内に配置しているため、シャッタ板は、遮光位置にあるときだけでなく、退避位置にあるときにも光源部からの光や光照射部内で反射する迷光を受けやすい構造になる。すなわち、ランプ点灯中、シャッタ板は常に光が照射される状態となり、高温になりやすい。
光配向に用いる照射装置は、液晶パネルの大型化に伴い大型化しており、光配向用の照射装置の光照射部に上記のようなシャッタ機構を設ける場合、比較的大きなシャッタ板が必要となる。そのため、シャッタ機構を軽量化するためには、シャッタ板をできるだけ薄くする必要がある。ところが、シャッタ板を薄くすると熱による変形が生じ易くなるため、これを防ぐために、シャッタ板には、場合によっては水冷などの冷却機構が必要となる。すると、シャッタ機構の構造が複雑化大型化してしまう。
【0005】
また、光源部と光出射口との間にシャッタ板を配置すると、シャッタ板をシャッタ移動機構により退避位置と遮光位置との間で移動させた際に、シャッタ移動機構から生じた微細なゴミが光出射口に落ちる。
光配向に用いる照射装置は、光源とグリッド偏光素子とを備え、光源の光をグリッド偏光素子に通して得られる偏光光を照射する。グリッド偏光素子は、光照射部の光出射口に設置されるため、光配向用の照射装置の光照射部内に上記のシャッタ機構を設けた場合、シャッタ移動機構から生じた微小なゴミがグリッド偏光素子の上に付着し、偏光性能が低下してしまう。
そこで、本発明は、シャッタ機構を有する偏光光照射装置において、シャッタ部材の温度上昇の抑制と偏光性能の低下防止とを実現することができる偏光光照射装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る偏光光照射装置の一態様は、配向膜に偏光光を照射して光配向を行う偏光光照射装置であって、光源からの光を偏光子によって偏光し、光出射口から偏光光を照射する光照射部と、前記光照射部の光出射口の光出射側に配置され、前記光出射口から出射する偏光光を遮断して当該偏光光の前記配向膜への照射を阻止する遮断位置と、当該遮断位置から退避して前記偏光光の前記配向膜への照射を許容する退避位置との間を移動可能なシャッタ部材と、を備え、前記光照射部は、前記光源を覆い、前記光出射口を形成した外壁を備え、前記退避位置は、前記外壁が前記シャッタ部材への前記偏光光の照射を遮断し、前記シャッタ部材に前記偏光光が照射されない位置である。
このように、退避位置ではシャッタ部材に光照射部からの光が照射されない構造であるため、シャッタ部材の温度上昇を防止し、シャッタ部材の熱による変形を防止することができる。そのため、シャッタ部材の冷却機構等を別途設ける必要がなく、シャッタ機構の小型化を実現できる。
【0007】
さらに、シャッタ部材を光照射部の光出射口の光出射側、すなわちグリッド偏光素子等の偏光子の下側に配置するので、シャッタ部材を移動した際に偏光子の上にゴミが付着するのを防止することができる。そのため、偏光性能を確保することができる。
さらに、退避位置では、光照射部の外壁がシャッタ部材への偏光光の照射を遮断する構造であるため、偏光光の照射を遮断するために別途遮光部材等を設置する必要がなく、その分の部品点数を削減することができる。
【0008】
また、上記の偏光光照射装置において、前記シャッタ部材は、前記遮断位置において前記偏光光が入射される光入射面側に、当該偏光光を反射する反射部材を備えてもよい。
これにより、シャッタ部材が遮断位置にあるとき、光照射部から照射される光を反射させることができ、シャッタ部材の温度上昇を抑制することができる。
さらに、上記の偏光光照射装置において、前記シャッタ部材の前記光入射面と前記反射部材との間に空気層が形成されていてもよい。
これにより、シャッタ部材が遮断位置にあるとき、光照射部から照射される光によって反射部材の温度が上昇したとしても、その熱をシャッタ部材に伝わりにくくすることができる。
【0009】
また、上記の偏光光照射装置において、前記シャッタ部材は、前記退避位置での前記偏光光の出射方向に直交する方向における前記光源側端部に、前記偏光光の出射方向に向かうにつれて当該シャッタ部材の内側に傾斜する傾斜部を備えてもよい。
これにより、シャッタ部材の遮断位置と退避位置との移動距離を極力短くしつつ、退避位置ではシャッタ部材に光照射部からの光が照射されない構造とすることができる。
さらにまた、上記の偏光光照射装置において、前記光源は線状光源であって、前記シャッタ部材は、前記線状光源の長手方向に直交する方向に移動してもよい。
これにより、シャッタ部材の遮断位置と退避位置との移動距離を短くすることができ、シャッタ機構の小型化を実現できる。
【0010】
また、上記の偏光光照射装置において、前記光源は線状光源であって、前記シャッタ部材は、前記線状光源の長手方向に沿って延びる長尺状の平板部材により構成されており、長手方向に直交する方向の端部に屈曲部を備えてもよい。
これにより、シャッタ部材の剛性を上げることができるので、シャッタ部材を薄板で形成しても自重による撓みを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の偏光光照射装置では、冷却機構等を別途設けることなくシャッタ部材の温度上昇を防止することができる。また、シャッタ部材を光照射部の光出射口の光出射側に配置するので、シャッタ部材を移動した際に光出射口に設置している偏光子の上にゴミが落ちるのを防止することができる。したがって、装置の大型化や偏光性能の低下を伴うことなくシャッタ機構を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の偏光光照射装置を示す概略構成図である。
図2】光照射部の長手方向の断面図である。
図3】シャッタ部材が遮断位置にあるときのシャッタ機構を示す図である。
図4】シャッタ部材が退避位置にあるときのシャッタ機構を示す図である。
図5】シャッタ機構の構成を示す斜視図である。
図6】反射部材の固定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の偏光光照射装置を示す概略構成図である。
偏光光照射装置100は、光照射部10と、ワークWを搬送する搬送部20とを備える。ここで、ワークWは、光配向膜が形成された、例えば液晶パネルの大きさに整形された矩形状の基板である。光配向膜は、液晶パネルの大型化と共に大面積化しており、例えば一辺が2000mm〜3000mm以上の四角形である。
【0014】
偏光光照射装置100は、光照射部10から所定の波長の偏光光(偏光した光)を照射しながら、搬送部20によってワークWを直線移動させ、ワークWの光配向膜に上記偏光光を照射して光配向処理をするものである。
光照射部10は、線状の光源であるランプ11と、ランプ11の光を反射するミラー12と、ランプ11及びミラー12からなる光源部の光出射側に配置された偏光子ユニット13とを備える。さらに、光照射部10は、ランプハウス(外壁)14を備える。ランプ11、ミラー12及び偏光子ユニット13は、ランプハウス14に収容されている。
【0015】
光照射部10は、ランプ11の長手方向をワークWの搬送方向(X方向)に直交する方法(Y方向)に一致させた状態で設置されている。
ランプ11は、図2に光照射部10の長手方向の断面図を示すように、長尺状のランプであり、その発光部が、ワークWの搬送方向に直交する方向の幅に対応する長さを有する。当該ランプ11は、例えば、高圧水銀ランプや水銀に他の金属を加えたメタルハライドランプ等であり、波長200nm〜400nmの紫外光を照射する。
【0016】
光配向膜の材料としては、波長254nmの光で配向されるもの、波長313nmの光で配向されるもの、波長365nmの光で配向されるものなどが知られており、光源の種類は必要とされる波長に応じて適宜選択する。
なお、光源としては、紫外光を放射するLEDやLDを直線状に並べて配置した線状光源を用いることもできる。その場合、LEDやLDを並べる方向がランプの長手方向に相当する。
【0017】
ミラー12は、ランプ11からの放射光を所定の方向に反射するものであり、図3に光照射部10の長手方向に直交する方向の断面図を示すように、断面が楕円形または放物線状の樋状集光鏡である。ミラー12は、その長手方向がランプ11の長手方向と一致するように配置されている。
ランプハウス14は、その底面に、光源部からの光が通過する光出射口14aを有する。光出射口14aには、ここを通過する光を偏光するための偏光子を有する偏光子ユニット13が取り付けられている。
偏光子ユニット13は、特に図示しないが、複数の偏光子をフレーム内に並べて配置して構成されている。当該偏光子は、ワイヤーグリッド型偏光素子であり、当該偏光子の個数は、偏光光を照射する領域の大きさに合わせて適宜選択する。また、各偏光子は、それぞれ透過軸が同一方向を向くように配置されている。
【0018】
図1に戻って、搬送部20は、真空吸着等の方法によりワークWを吸着保持する平板状のワークステージ21と、ワークステージ21の移動方向に沿って延びる2本のガイド22と、ワークステージ21の移動機構を一例として構成する電磁石23とを備える。
ここでは、上記移動機構として、例えば、リニアモータステージを採用する。リニアモータステージは、碁盤目状に強磁性体の凸極が設けられた平面状のプラテンの上に移動体(ワークステージ)をエアーにより浮上させ、移動体に磁力を印加して、移動体とプラテンの凸極との間の磁力を変化させることにより移動体(ワークステージ)を移動する機構である。
【0019】
ワークステージ21は、その一辺の方向がステージ移動方向(X方向)を向くように配置されると共に、ガイド22によって真直度を補償した状態で往復移動可能に支持されている。
本明細書において、ワークステージ21の移動方向がX方向であり、X方向に垂直な水平方向がY方向、鉛直方向がZ方向である。また、ワークWは矩形状であり、一辺の方向がX方向に向き、他方の辺がY方向を向いた姿勢でワークステージ21上に保持されているものとする。
ワークステージ21の移動経路は、光照射部10の真下を通るように設計されている。そして、搬送部20は、ワークWを光照射部10による偏光光の照射位置に搬送し、且つその照射位置を通過させるように構成されている。この通過の過程で、ワークWの光配向膜が光配向処理される。
【0020】
また、偏光光照射装置100は、図3に示すように、ランプハウス14の光出射口14aの光出射側にシャッタ機構30を備える。シャッタ機構30は、光照射部10から照射される光がワークWに照射するのを許容する状態と、光照射部10から照射される光がワークWに照射するのを阻止する状態とを切り替え可能に構成されている。
シャッタ機構30は、シャッタ部材31と、当該シャッタ部材31を移動するシャッタ移動機構としてのエアシリンダ32とを備える。
シャッタ部材31は、エアシリンダ32によって、光照射部10から照射される光を遮断してワークWに照射するのを阻止する位置(遮断位置)と、遮断位置から退避して光照射部10から照射される光をワークWに照射するのを許容する位置(退避位置)との間を移動可能となっている。
【0021】
以下、シャッタ機構30の具体的構成について、図3図5を参照しながら説明する。
図3は、シャッタ部材31が遮断位置にある状態を示す図であり、図4は、シャッタ部材31が退避位置にある状態を示す図である。また、図5は、シャッタ機構30の主要部の斜視図である。なお、図5では、シャッタ部材31の長手方向における一方の端部のみを示しているが、他方の端部も同様の構成を有するものとする。
【0022】
シャッタ部材31は、ランプ長手方向(Y方向)に沿って伸びる長尺状の平板部材からなり、上面部を水平な平面としてX方向両端部をU字状に折り曲げた形状を有する。なお、X方向両端部の屈曲部の形状は、U字状に限定されるものではなく、例えばL字状であってもよい。
シャッタ部材31は、板厚が5mm以下(例えば1.5mm程度)のアルミニウム板等の薄い板で形成する。シャッタ部材31の長手方向の長さはランプ11の長さに相当し、水平な上面部で光照射部10から照射される光を遮るようになっている。すなわち、当該上面部は、光照射部10の光照射領域Aよりも大きく形成されている。
【0023】
エアシリンダ32は、ランプハウス14の底壁の直下に位置するように固定されている。すなわち、エアシリンダ32は、シャッタ部材31が開状態(退避位置にある状態)であっても閉状態(遮断位置にある状態)であっても、光照射部10からの光が照射されない位置にある。
エアシリンダ32は、X方向に延在するピストンロッド32aと、ピストンロッド32aの先端に固定された固定部材32bとを備える。固定部材32bは、シャッタ部材31の裏面にねじ止めされる。具体的には、図5に示すように、シャッタ部材31の長手方向両端部における光照射領域A外に、孔31aが形成されており、固定部材32bは、この孔31aにねじ32cにより固定される。
【0024】
このような構成により、シャッタ部材31のY方向両端部に配置された一対のエアシリンダ32が図示しないエアシリンダ駆動部によって同期して駆動されると、エアシリンダ32のピストンロッド32aがX方向に進退し、シャッタ部材31が退避位置と遮断位置との間をX方向にスライド移動する。
ここで、孔31aは長穴であり、シャッタ部材31と固定部材32bとはX方向に自由度を持って係合されている。これにより、一対のエアシリンダ32が完全に同期して作動しない場合にも、シャッタ部材31は適切にスライド移動する。
【0025】
本実施形態では、図3に示すように、ピストンロッド32aが縮んだ状態のときシャッタ部材31が遮断位置に配置され、図4に示すように、ピストンロッド32aが伸びた状態のときシャッタ部材31が退避位置に配置されるように構成されている。
図4に示すように、シャッタ部材31は、退避位置においてランプハウス14の底壁の直下に位置する。シャッタ部材31がこの退避位置にあるときには、光照射部10からの光はランプハウス14の底壁により遮られ、シャッタ部材31には照射されない。
【0026】
また、シャッタ部材31は、X方向両端部に、下方内側に向けて傾斜する傾斜部31bを備える。この傾斜部31bは、退避位置での偏光光の出射方向に直交する方向における光源側端部に、偏光光の出射方向に向かうにつれてシャッタ部材31の内側に傾斜する部分である。
光照射部10は、樋状のミラー12によってランプ11の光を反射し、ミラー12の下端開口の直下の領域が偏光光照射領域となるようにしている。しかしながら、光照射部10内で反射する迷光は、図4の二点鎖線Lに示すように、ミラー12の端部で反射され光出射口14aからX方向外側に向かって出射する場合がある。本実施形態では、シャッタ部材31に傾斜部31bを設けることで、図4に示すように、退避位置では上記のような光Lがシャッタ部材31に照射されないようにすることができる。
【0027】
さらに、シャッタ部材31の上面(光入射側の面)側には、反射部材33が設置されている。この反射部材33は、例えば高輝アルミ板であり、光が入射する側の面を反射面として設置する。
反射部材33は、シャッタ部材31に対してねじ止めにより固定する。このとき、図6に示すように、反射部材33とシャッタ部材31との間に平ワッシャ34を挿入し、反射部材33とシャッタ部材31との間に隙間(空気層)を形成した状態で、ボルト33aとナット33bとで固定する。
【0028】
以上のように、偏光光照射装置100は、ワークWを光配向処理しているとき、シャッタ部材31を開状態として光照射部10からワークWに対して光を照射し、ワークWを光配向処理しておらず、ワークW側に光を照射する必要のないときには、シャッタ部材31を閉状態として光照射部10から外に光が照射されないようにする。
ここで、シャッタ機構30を構成するエアシリンダ32は、シャッタ部材31をランプ長手方向に直交する方向(ランプ11を横切る方向)へスライド移動させるように構成されている。そのため、比較的短い移動距離で、光の出射と遮光の制御が可能である。したがって、シャッタ機構30の小型化を実現することができる。
【0029】
ところで、上述したように、偏光光照射装置100は液晶パネル等に形成された大きな光配向膜の光配向処理に用いる。そのため、ランプ11の長手方向の長さは、ワークWの搬送方向に直交する方向の幅に相当する長さを有し、その光を遮断するシャッタ部材31もランプ11に相当する長さを有する必要がある。
このように、シャッタ部材31は比較的大きな形状を有するため、シャッタ部材31は、ランプ長手方向に沿って延びる長尺状の平板部材とし、シャッタ機構30を軽量化する。また、シャッタ部材31のランプ長手方向に直交する方向の両端を、光照射領域A外の部分で折り曲げた構造とする。これにより、シャッタ部材31の剛性を上げ、ランプ11の長さに相当する長尺のシャッタ部材31が、自重による撓むのを防ぐあるいは抑制することができる。
【0030】
また、シャッタ部材31の退避位置は、ランプハウス14の外壁が光源部からシャッタ部材31に照射される光を遮る位置に設定する。そのため、シャッタ部材31は、光出射口14aの真下に設定された遮断位置でワークW側へ出射する光を遮光しているときには、光源部からの光が照射されて加熱されるが、退避位置に移動すると光源部からの光が照射されることがなく、放熱によりシャッタ部材31の温度を下げることができる。このように、シャッタ部材31に熱が蓄積されるのを防止し、シャッタ部材31が高温になるのを防止することができる。
【0031】
また、シャッタ部材31をX方向にスライド移動して退避位置と遮断位置との間を移動させる構成とし、シャッタ部材31のX方向両端部に下方内側に傾斜する傾斜部31bを設ける。そのため、遮断位置から退避位置までの移動距離を極力短くしつつ、退避位置では確実に光照射部10からの光が照射されない構造とすることができる。したがって、シャッタ機構30の小型化と、シャッタ部材31の温度上昇の抑制とを実現することができる。
【0032】
さらに、シャッタ部材31の光入射側に、光が入射する側の面を反射面にした反射部材33を設ける。そのため、シャッタ部材31が閉状態となって光源部からの光が照射されたとき、その光を反射部材33によって反射することができ、シャッタ部材31の温度上昇を防ぐことができる。
また、反射部材33とシャッタ部材31との間に隙間(空気層)を形成するため、仮に反射部材33の温度が光源部からの光の照射によって上がったとしても、その熱がシャッタ部材31に伝わりにくい。そのため、シャッタ部材31の温度が上がるのを効果的に抑制することができる。
【0033】
上述したように、シャッタ部材31は比較的大きな形状を有するため、移動させやすくするためには、できるだけ薄い板で構成し軽量化することが好ましい。しかしながら、板厚が薄いと熱の影響を受け易く、熱による変形が起き易いという問題がある。
本実施形態では、シャッタ部材31の退避位置を光照射部10からの光が照射されない位置として、シャッタ部材31の放熱効果を高めると共に、シャッタ部材31に反射部材33を設置して、遮断位置におけるシャッタ部材31の温度上昇を抑制する。そのため、シャッタ部材31を薄い板で形成したとしても、シャッタ部材31の熱による変形を防ぐことができる。また、水冷などの複雑な冷却機構も不要となるため、シャッタ機構30を小型化することができる。
【0034】
さらに、シャッタ機構30は、光照射部10の光出射口14aの光出射側に配置する。このように、偏光子ユニット13の下方にシャッタ機構30を設けるため、シャッタ部材31を移動したときに、偏光子ユニット13を構成するグリッド偏光素子上にゴミが落ちるのを防止することができる。
グリッド偏光素子は、グリッドの形成に微細な加工技術が必要であり、半導体製造に使われるリソグラフィ技術やエッチング技術が利用されるため、非常に高価なものである。このようなグリッド偏光子にゴミが付着すると、その偏光性能が低下する原因となり、場合によっては交換の必要が生じる。
【0035】
本実施形態では、シャッタ機構30の作動によるゴミの付着を防止することができるため、グリッド偏光素子13の偏光性能を確保することができる。
また、シャッタ部材31の退避位置をランプハウス14の底壁の真下に設定するため、退避位置において当該底壁がシャッタ部材31のカバーの役割を担うことができる。そのため、装置内を浮遊する微小なゴミがシャッタ部材31の上に堆積するのを防ぐことができる。その結果、シャッタ部材31が移動した際にシャッタ部材31上のゴミがワークW上に落ちることを防止することができ、ワークWの品質を確保することができる。
【0036】
(変形例)
なお、上記実施形態においては、エアシリンダ32のピストンロッド32aを伸ばしたときにシャッタ部材31を開状態とし、ピストンロッド32aを縮めたときにシャッタ部材31を閉状態とする場合について説明したが、エアシリンダ32のピストンロッド32aを伸ばしたときにシャッタ部材31を閉状態とし、ピストンロッド32aを縮めたときにシャッタ部材31を開状態とするようにしてもよい。
【0037】
さらに、上記実施形態においては、退避位置にて、光照射部10の外壁であるランプハウス14が、光源部からシャッタ部材31に向かう光を遮る構造とする場合について説明したが、退避位置にてシャッタ部材31への偏光光の照射が遮断される構造であれば、光照射部10の外壁以外の部材で偏光光の照射を遮断する等、別の構造を適用することもできる。
また、上記実施形態においては、ワークWとして光配向膜が形成された液晶パネルを用いる場合について説明したが、例えば、視野角補償フィルムのような、ロールに巻かれた長尺帯状のワークであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
10…光照射部、11…ランプ、12…ミラー、13…偏光子ユニット、14…ランプハウス、20…搬送部、21…ワークステージ、22…ガイド、23…電磁石、30…シャッタ機構、31…シャッタ部材、31a…孔、31b…傾斜部、32…エアシリンダ、32a…ピストンロッド、32b…固定部材、32c…ねじ、33…反射部材、33a…ボルト、33b…ナット、34…平ワッシャ、100…偏光光照射装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6