【実施例】
【0142】
以下に、本発明の各実施例および各比較例に用いた材料を示す。なお、文中で「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。また、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0143】
(I)実施の形態I:感熱転写記録媒体Iに対応する実施例とその比較例
<耐熱滑性層付き基材の作製>
基材として、厚さ4.5μmの片面易接着処理済ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その非易接着処理面に、下記組成の耐熱滑性層形成用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.5g/m
2になるように塗布し、100℃で1分間乾燥することで耐熱滑性層付き基材を得た。
【0144】
<耐熱滑性層形成用塗布液>
シリコン変性アクリル樹脂(東亜合成(株)製US−350)50.0部
メチルエチルケトン 50.0部
【0145】
<ポリビニルアルコールの調製>
攪拌機、温度計、窒素導入菅、還流冷却器を備えた反応容器中に、酢酸ビニル100部およびメタノール10部を仕込み、窒素ガスをバブリング、脱気し、還流状態になるまで昇温した後、20分間還流させてから、対酢酸ビニルでアゾビスイソブチロニトリルを0.3モル%添加した。次いで、20時間重合させた後、冷却して重合を停止し、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を得た。重合率は95%であった。次いで、連続脱モノマー塔で該メタノール溶液中の残存モノマー量が0.06%になるまでモノマーを追い出し、メタノールを添加してポリ酢酸ビニル濃度を50%に調整してから、対酢酸ビニルモノマー単位で5ミリモルの水酸化ナトリウムをメタノール溶液で加えて、40℃で90分間ケン化を行った。析出したケン化物を酢酸により中和した後、生成したポリビニルアルコール系樹脂組成物を濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的のポリビニルアルコールを得た。得られたポリビニルアルコールは、ケン化度94モル%、平均重合度2200であった。また、ケン化の途中で溶液を抜き取ることにより、ケン化度88モル%、平均重合度2200のポリビニルアルコールを得た。
【0146】
<ポリビニルアルコールフィルムの抗張力測定>
得られた各ポリビニルアルコール15.0部を90℃の熱水85.0部中に溶解させ、ガラスシャーレ上に流延し、室温にて24時間乾燥後の厚さが0.06mmのフィルムを得た。得られた各フィルムをJIS K 7113に基づいて2号ダンベル形状に切り抜き、引張速度200mm/分で引張試験を行い、抗張力を測定した。その結果、ケン化度94モル%、平均重合度2200のポリビニルアルコールが8.2kg/mm
2、また、ケン化度88モル%、平均重合度2200のポリビニルアルコールが6.8kg/mm
2の値を示した。さらに、市販品であるクラレポバールPVA−117((株)クラレ製)を用いて上記と同様にフィルムを作製し、抗張力を測定したところ、7.4kg/mm
2であった。
【0147】
(実施例I−1)
耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下記組成の下引き層形成用塗布液I−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.20g/m
2になるように塗布し、100℃で2分間乾燥することで、下引き層を形成した。引き続き、その下引き層の上に、下記組成の染料層形成用塗布液I−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.70g/m
2になるように塗布し、90℃で1分間乾燥することで、染料層を形成し、実施例I−1の感熱転写記録媒体を得た。
【0148】
<下引き層形成用塗布液I−1>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 3.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
2.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0149】
<染料層形成用塗布液I−1>
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
【0150】
(実施例I−2)
実施例I−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液I−2にて形成した以外は、実施例I−1と同様にして、実施例I−2の感熱転写記録媒体を得た。
【0151】
<下引き層形成用塗布液I−2>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 4.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
1.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0152】
(実施例I−3)
実施例I−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液I−3にて形成した以外は、実施例I−1と同様にして、実施例I−3の感熱転写記録媒体を得た。
【0153】
<下引き層形成用塗布液I−3>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 1.5部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
3.5部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0154】
(実施例I−4)
実施例I−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層の乾燥後の塗布量が0.03g/m
2になるようにした以外は、実施例I−1と同様にして、実施例I−4の感熱転写記録媒体を得た。
【0155】
(実施例I−5)
実施例I−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層の乾燥後の塗布量が0.40g/m
2になるようにした以外は、実施例I−1と同様にして、実施例I−5の感熱転写記録媒体を得た。
【0156】
(比較例I−1)
実施例I−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を形成しない以外は、実施例I−1と同様にして、比較例I−1の感熱転写記録媒体を得た。
【0157】
(比較例I−2)
実施例I−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液I−4にて形成した以外は、実施例I−1と同様にして、比較例I−2の感熱転写記録媒体を得た。
【0158】
<下引き層形成用塗布液I−4>
ポリビニルアルコール(抗張力6.8kg/mm
2) 3.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
2.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0159】
(比較例I−3)
実施例I−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液I−2にて形成した以外は、実施例I−1と同様にして、比較例I−3の感熱転写記録媒体を得た。
【0160】
<染料層形成用塗布液I−2>
C.I.ソルベントブルー266(アゾ系染料) 3.0部
ポリビニルアセタール 2.0部
トルエン 47.5部
メチルエチルケトン 47.5部
【0161】
(比較例I−4)
実施例I−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を上述した下引き層形成用塗布液I−4にて形成し、染料層を上述した染料層形成用塗布液I−2にて形成した以外は、実施例I−1と同様にして、比較例I−4の感熱転写記録媒体を得た。
【0162】
(比較例I−5)
実施例I−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液I−5にて形成した以外は、実施例I−1と同様にして、比較例I−5の感熱転写記録媒体を得た。
【0163】
<下引き層形成用塗布液I−5>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 5.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0164】
(比較例I−6)
実施例I−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液I−6にて形成した以外は、実施例I−1と同様にして、比較例I−6の感熱転写記録媒体を得た。
【0165】
<下引き層形成用塗布液I−6>
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
5.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0166】
(比較例I−7)
実施例I−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液I−7にて形成した以外は、実施例I−1と同様にして、比較例I−7の感熱転写記録媒体を得た。
【0167】
<下引き層形成用塗布液I−7>
ポリビニルアルコール
((株)クラレ製PVA−117、抗張力7.4kg/mm
2) 4.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
1.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0168】
<被転写体の作製>
基材として、厚さ188μmの白色発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その一方の面に下記組成の受像層形成用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が5.0g/m
2になるように塗布し、乾燥することで、感熱転写用の被転写体を作製した。
【0169】
<受像層形成用塗布液>
塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 19.5部
アミノ変性シリコーンオイル 0.5部
トルエン 40.0部
メチルエチルケトン 40.0部
【0170】
<染料層の密着性評価>
実施例I−1〜I−5、比較例I−1〜I−7の感熱転写記録媒体について、感熱転写記録媒体の染料層の上に、幅24mm、長さ150mmのセロハンテープを貼り、その後すぐに剥がしたときの、セロハンテープ側への染料層の付着の有無を調べることにより、染料層の密着性を評価した。その結果を表1に示す。
【0171】
染料層の密着性評価は、以下の基準にて行った。
○:染料層の付着が、認められない
△:染料層の付着が、ごく僅かに認められる
×:染料層の付着が、全面で認められる
なお、△以上であれば実用上問題ないレベルである。
【0172】
<印画評価>
実施例I−1〜I−5、比較例I−1〜I−7の感熱転写記録媒体を使用し、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、最高反射濃度を測定して印画評価を行った。その結果を表1に示す。なお、最高反射濃度はX−Rite社製の分光濃度計「X−Rite528」にて測定した値である。
【0173】
なお、印画条件は以下の通りである。
印画環境:23℃、50%RH
印加電圧:29V
ライン周期:0.7msec
印画密度:主走査300dpi、副走査300dpi
【0174】
<異常転写>
実施例I−1〜I−5、比較例I−1〜I−7の感熱転写記録媒体について、以下の基準にて異常転写を評価した。その結果を表1に示す。
○:被転写体への異常転写が、認められない
△:被転写体への異常転写が、ごく僅かに認められる
×:被転写体への異常転写が、全面で認められる
なお、△以上であれば実用上問題ないレベルである。
【0175】
【表1】
【0176】
表1に示す結果から、実施例I−1〜I−5の感熱転写記録媒体は、下引き層が設けられていない比較例I−1の感熱転写記録媒体と比較して、明らかに高速印画時における転写感度が高く、染料層に使用する染料を低減することができ、コストダウンの効果が大きいことがわかった。また、染料層との密着性、および印画における異常転写も実用上問題ないことがわかった。
【0177】
実施例I−2の感熱転写記録媒体は、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの質量基準での含有比率が、ポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドン=8/2であり、ポリビニルピロリドン比率が低いためか、実施例I−1の感熱転写記録媒体と比較して染料層との密着性が若干低下していることがわかる。
【0178】
実施例I−3の感熱転写記録媒体は、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの質量基準での含有比率が、ポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドン=3/7であり、ポリビニルアルコール比率が低いためか、実施例I−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度(最高反射濃度)が若干低下していることがわかる。
【0179】
実施例I−4の感熱転写記録媒体は、下引き層の塗布量が0.05g/m
2未満であるためか、実施例I−1の感熱転写記録媒体と比較して染料層との密着性が若干低下していることがわかる。
【0180】
実施例I−5の感熱転写記録媒体は、下引き層の塗布量が0.30g/m
2超であるためか、実施例I−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度が若干低下していることがわかる。
【0181】
これに対して、比較例I−2の感熱転写記録媒体は、JIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2未満であるポリビニルアルコールを用いた結果、実施例I−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度が著しく低下していることがわかる。
【0182】
染料層がアントラキノン系化合物を含まない染料から成る比較例I−3の感熱転写記録媒体も、実施例I−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度が著しく低下していることがわかる。
【0183】
JIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2未満であるポリビニルアルコールを用い、かつ、染料層がアントラキノン系化合物を含まない染料から成る比較例I−4の感熱転写記録媒体は、比較例I−2やI−3の感熱転写記録媒体と比較してさらに転写感度が低下していることがわかる。ここで、JIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2以上のポリビニルアルコールを用いている比較例I−3と、抗張力が8kg/mm
2未満のポリビニルアルコールを用いている比較例I−4とで、転写感度を比較すると、その差は僅かであり、染料層がアントラキノン系化合物を含まない染料から成る場合は、ポリビニルアルコールの抗張力が転写感度に与える効果は小さいことがわかる。このことから、JIS K 7113に基づいて測定したポリビニルアルコールの抗張力が8kg/mm
2以上であり、かつ、染料層にアントラキノン系化合物を含む熱移行性染料を用いることで、飛躍的に高い転写感度が得られることがわかる。
【0184】
比較例I−5の感熱転写記録媒体では、ポリビニルアルコールのみを含む下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥して下引き層を形成させた結果、実施例I−1の感熱転写記録媒体と比較して、染料層との密着性が低下し、異常転写が全面で認められた。
【0185】
比較例I−6の感熱転写記録媒体では、ポリビニルピロリドンのみを含む下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥して下引き層を形成させた結果、実施例I−1の感熱転写記録媒体と比較して、染料層との密着性は問題ないものの、転写感度は著しく低下することがわかる。
【0186】
比較例I−7の感熱転写記録媒体は、下引き層用のポリビニルアルコールとして市販品であるPVA−117((株)クラレ製)を用いたが、このPVA−117はJIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2未満であるため、抗張力が8kg/mm
2以上のポリビニルアルコールを用いた実施例I−1〜I−5の感熱転写記録媒体と比較すると、転写感度が低く、十分に満足できるものではなかった。
【0187】
(II)実施の形態II:感熱転写記録媒体IIに対応する実施例とその比較例
<ポリビニルアルコールの調製>
上記(I)実施の形態Iに対応する実施例とその比較例における方法と同様の方法で、ケン化度94モル%、平均重合度2200のポリビニルアルコールと、ケン化度88モル%、平均重合度2200のポリビニルアルコールとを得た。
【0188】
<ポリビニルアルコールフィルムの抗張力測定>
上記(I)実施の形態Iに対応する実施例とその比較例における方法と同様の方法で、抗張力を測定した。その結果、ケン化度94モル%、平均重合度2200のポリビニルアルコールが8.2kg/mm
2、ケン化度88モル%、平均重合度2200のポリビニルアルコールが6.8kg/mm
2、クラレポバールPVA−117が7.4kg/mm
2であった。
【0189】
(実施例II−1)
基材として、厚さ4.5μmの片面易接着処理済ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その非易接着処理面に、下記組成の耐熱滑性層形成用塗布液II−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が1.0g/m
2になるように塗布し、100℃で1分間乾燥することで耐熱滑性層付き基材を得た。
【0190】
耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下記組成の下引き層形成用塗布液II−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.20g/m
2になるように塗布し、100℃で2分間乾燥することで、下引き層を形成した。引き続き、その下引き層の上に、下記組成の染料層形成用塗布液II−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.70g/m
2になるように塗布し、90℃で1分間乾燥することで、染料層を形成し、実施例II−1の感熱転写記録媒体を得た。
【0191】
<耐熱滑性層形成用塗布液II−1>
アクリルポリオール(固形分50%) 20.0部
リン酸エステル(融点15℃) 2.0部
リン酸エステル(融点70℃) 2.0部
ステアリン酸亜鉛(融点115〜125℃) 2.0部
タルク(平均粒子径1.0μm) 1.0部
タルク(平均粒子径2.5μm) 4.0部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 5.0部
トルエン 49.5部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
【0192】
<下引き層形成用塗布液II−1>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 3.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
2.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0193】
<染料層形成用塗布液II−1>
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
【0194】
(実施例II−2)
実施例II−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液II−2にて形成した以外は、実施例II−1と同様にして、実施例II−2の感熱転写記録媒体を得た。
【0195】
<下引き層形成用塗布液II−2>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 4.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
1.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0196】
(実施例II−3)
実施例II−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液II−3にて形成した以外は、実施例II−1と同様にして、実施例II−3の感熱転写記録媒体を得た。
【0197】
<下引き層形成用塗布液II−3>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 1.5部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
3.5部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0198】
(実施例II−4)
実施例II−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層の乾燥後の塗布量が0.03g/m
2になるようにした以外は、実施例II−1と同様にして、実施例II−4の感熱転写記録媒体を得た。
【0199】
(実施例II−5)
実施例II−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層の乾燥後の塗布量が0.40g/m
2になるようにした以外は、実施例II−1と同様にして、実施例II−5の感熱転写記録媒体を得た。
【0200】
(実施例II−6)
実施例II−1で作製した感熱転写記録媒体において、耐熱滑性層を下記組成の耐熱滑性層形成用塗布液II−2にて形成した以外は、実施例II−1と同様にして、実施例II−6の感熱転写記録媒体を得た。
【0201】
<耐熱滑性層形成用塗布液II−2>
アクリルポリオール(固形分50%) 20.0部
リン酸エステル(融点15℃) 2.0部
リン酸エステル(融点70℃) 2.0部
ステアリン酸亜鉛(融点115〜125℃) 2.0部
タルク(平均粒子径2.5μm) 5.0部
タルク(平均粒子径3.5μm) 1.0部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 5.0部
トルエン 46.0部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
【0202】
(実施例II−7)
実施例II−1で作製した感熱転写記録媒体において、耐熱滑性層を下記組成の耐熱滑性層形成用塗布液II−3にて形成した以外は、実施例II−1と同様にして、実施例II−7の感熱転写記録媒体を得た。
【0203】
<耐熱滑性層形成用塗布液II−3>
アクリルポリオール(固形分50%) 20.0部
リン酸エステル(融点15℃) 2.0部
リン酸エステル(融点70℃) 2.0部
ステアリン酸亜鉛(融点115〜125℃) 2.0部
タルク(平均粒子径2.5μm) 1.0部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 5.0部
トルエン 47.5部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
【0204】
(比較例II−1)
実施例II−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を形成しない以外は、実施例II−1と同様にして、比較例II−1の感熱転写記録媒体を得た。
【0205】
(比較例II−2)
実施例II−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液II−4にて形成した以外は、実施例II−1と同様にして、比較例II−2の感熱転写記録媒体を得た。
【0206】
<下引き層形成用塗布液II−4>
ポリビニルアルコール(抗張力6.8kg/mm
2) 3.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
2.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0207】
(比較例II−3)
実施例II−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液II−2にて形成した以外は、実施例II−1と同様にして、比較例II−3の感熱転写記録媒体を得た。
【0208】
<染料層形成用塗布液II−2>
C.I.ソルベントブルー266(アゾ系染料) 3.0部
ポリビニルアセタール 2.0部
トルエン 47.5部
メチルエチルケトン 47.5部
【0209】
(比較例II−4)
実施例II−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を上述した下引き層形成用塗布液II−4にて形成し、染料層を上述した染料層形成用塗布液II−2にて形成した以外は、実施例II−1と同様にして、比較例II−4の感熱転写記録媒体を得た。
【0210】
(比較例II−5)
実施例II−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液II−5にて形成した以外は、実施例II−1と同様にして、比較例II−5の感熱転写記録媒体を得た。
【0211】
<下引き層形成用塗布液II−5>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 5.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0212】
(比較例II−6)
実施例II−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液II−6にて形成した以外は、実施例II−1と同様にして、比較例II−6の感熱転写記録媒体を得た。
【0213】
<下引き層形成用塗布液II−6>
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
5.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0214】
(比較例II−7)
実施例II−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液II−7にて形成した以外は、実施例II−1と同様にして、比較例II−7の感熱転写記録媒体を得た。
【0215】
<下引き層形成用塗布液II−7>
ポリビニルアルコール
((株)クラレ製PVA−117、抗張力7.4kg/mm
2) 4.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
1.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0216】
(比較例II−8)
実施例II−1で作製した感熱転写記録媒体において、耐熱滑性層を下記組成の耐熱滑性層形成用塗布液II−4にて形成した以外は、実施例II−1と同様にして、比較例II−8の感熱転写記録媒体を得た。
【0217】
<耐熱滑性層形成用塗布液II−4>
アクリルポリオール(固形分50%) 20.0部
ステアリン酸亜鉛(融点115〜125℃) 2.0部
タルク(平均粒子径0.6μm) 4.0部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 5.0部
トルエン 49.5部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
【0218】
(比較例II−9)
実施例II−1で作製した感熱転写記録媒体において、耐熱滑性層を下記組成の耐熱滑性層形成用塗布液II−5にて形成した以外は、実施例II−1と同様にして、比較例II−9の感熱転写記録媒体を得た。
【0219】
<耐熱滑性層形成用塗布液II−5>
アクリルポリオール(固形分50%) 20.0部
リン酸エステル(融点15℃) 2.0部
リン酸エステル(融点70℃) 2.0部
ステアリン酸亜鉛(融点115〜125℃) 2.0部
タルク(平均粒子径2.5μm) 5.0部
タルク(平均粒子径3.5μm) 2.0部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 5.0部
トルエン 46.0部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
【0220】
(比較例II−10)
実施例II−1で作製した感熱転写記録媒体において、耐熱滑性層を下記組成の耐熱滑性層形成用塗布液II−6にて形成した以外は、実施例II−1と同様にして、比較例II−10の感熱転写記録媒体を得た。
【0221】
<耐熱滑性層形成用塗布液II−6>
アクリルポリオール(固形分50%) 20.0部
リン酸エステル(融点15℃) 1.0部
リン酸エステル(融点70℃) 4.0部
ステアリン酸亜鉛(融点115〜125℃) 2.0部
タルク(平均粒子径1.0μm) 1.0部
タルク(平均粒子径2.5μm) 4.0部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 5.0部
トルエン 49.5部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
【0222】
<被転写体の作製>
上記(I)実施の形態Iに対応する実施例とその比較例における方法と同様の方法で、感熱転写用の被転写体を作製した。
【0223】
<表面粗さRaの測定>
非接触式の測定方法であるレーザ顕微鏡による測定方法を採用し、測定装置としてオリンパス(株)製の走査型共焦点レーザ顕微鏡「OLS1100」を用いた。100倍の対物レンズを選択し、測定した画像をY軸方向に11分割して、分割した境界となる位置で、X軸方向におけるカットオフ値1/3の時のRa値の計測をそれぞれ行った。得られた10点のRa値を平均し、耐熱滑性層のRa値とした。平均値αは、150℃、10分間の条件で静置する前の値で、平均値βは、該条件で静置した後の値である。また、平均値αと平均値βとの差も算出した。その結果を表2に示す。
【0224】
<染料層の密着性評価>
実施例II−1〜II−7、比較例II−1〜II−10の感熱転写記録媒体について、感熱転写記録媒体の染料層の上に、幅24mm、長さ150mmのセロハンテープを貼り、その後すぐに剥がしたときの、セロハンテープ側への染料層の付着の有無を調べることにより、染料層の密着性を評価した。その結果を表2に示す。
【0225】
染料層の密着性評価は、以下の基準にて行った。
○:染料層の付着が、認められない
△:染料層の付着が、ごく僅かに認められる
×:染料層の付着が、全面で認められる
なお、△以上であれば実用上問題ないレベルである。
【0226】
<印画評価>
実施例II−1〜II−7、比較例II−1〜II−10の感熱転写記録媒体について、染料層面と被転写体とをそれぞれ重ね、サーマルヘッドを用いて染料を転写させて画像形成を行い、最高反射濃度を測定して印画評価を行った。その結果を表2に示す。なお、最高反射濃度はX−Rite社製の分光濃度計「X−Rite528」にて測定した値である。
【0227】
<異常転写>
実施例II−1〜II−7、比較例II−1〜II−10の感熱転写記録媒体について、以下の基準にて異常転写を評価した。その結果を表2に示す。
○:被転写体への異常転写が、認められない
△:被転写体への異常転写が、ごく僅かに認められる
×:被転写体への異常転写が、全面で認められる
なお、△以上であれば実用上問題ないレベルである。
【0228】
<印画シワ>
実施例II−1〜II−7、比較例II−1〜II−10の感熱転写記録媒体について、以下の基準にて印画シワを評価した。その結果を表2に示す。
○:印画シワが、認められない
△:印画シワが、ごく僅かに認められる
×:印画シワが、全面で認められる
なお、△以上であれば実用上問題ないレベルである。
【0229】
<印画物の画質>
実施例II−1〜II−7、比較例II−1〜II−10の感熱転写記録媒体について、以下の基準にて印画物の画質を評価した。その結果を表2に示す。
○:濃度ムラがなく、画質に問題がない
×:濃度ムラが生じ、画質に問題がある
【0230】
【表2】
【0231】
表2に示す結果から、実施例II−1〜II−7の感熱転写記録媒体は、下引き層が設けられていない比較例II−1の感熱転写記録媒体と比較して、明らかに高速印画時における転写感度(最高反射濃度)が高く、染料層に使用する染料を低減することができ、コストダウンの効果が大きいことがわかった。また、染料層との密着性、印画における異常転写、印画シワおよび印画物の画質も実用上問題ないことがわかった。
【0232】
実施例II−2の感熱転写記録媒体は、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの質量基準での含有比率が、ポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドン=8/2であり、ポリビニルピロリドン比率が低いためか、実施例II−1の感熱転写記録媒体と比較して染料層との密着性が若干低下し、実用上問題ないレベルではあるが、異常転写がごく僅かに認められていることがわかる。
【0233】
実施例II−3の感熱転写記録媒体は、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの質量基準での含有比率が、ポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドン=3/7であり、ポリビニルアルコール比率が低いためか、実施例II−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度が若干低下していることがわかる。
【0234】
実施例II−4の感熱転写記録媒体は、下引き層の塗布量が0.05g/m
2未満であるためか、実施例II-1の感熱転写記録媒体と比較して染料層との密着性が若干低下し、実用上問題ないレベルではあるが、異常転写がごく僅かに認められていることがわかる。
【0235】
実施例II−5の感熱転写記録媒体は、下引き層の塗布量が0.30g/m
2超であるためか、実施例II−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度が若干低下していることがわかる。
【0236】
実施例II−7の感熱転写記録媒体は、耐熱滑性層の表面粗さRaの平均値αが0.07μmと少し小さいためか、実用上問題ないレベルではあるが、印画シワがごく僅かに認められていることがわかる。
【0237】
これに対して、比較例II−2の感熱転写記録媒体は、JIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2未満であるポリビニルアルコールを用いた結果、実施例II−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度が著しく低下していることがわかる。
【0238】
染料層がアントラキノン系化合物を含まない染料から成る比較例II−3の感熱転写記録媒体は、実施例II−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度が著しく低下していることがわかる。
【0239】
JIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2未満であるポリビニルアルコールを用い、かつ、染料層がアントラキノン系化合物を含まない染料から成る比較例II−4の感熱転写記録媒体は、比較例II−2やII−3の感熱転写記録媒体と比較してさらに転写感度が低下していることがわかる。ここで、JIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2以上のポリビニルアルコールを用いている比較例II−3と、抗張力が8kg/mm
2未満のポリビニルアルコールを用いている比較例II−4とで、転写感度を比較すると、その差は僅かであり、染料層がアントラキノン系化合物を含まない染料から成る場合は、ポリビニルアルコールの抗張力が転写感度に与える効果は小さいことがわかる。このことから、JIS K 7113に基づいて測定したポリビニルアルコールの抗張力が8kg/mm
2以上であり、かつ、染料層にアントラキノン系化合物を含む熱移行性染料を用いることで、飛躍的に高い転写感度が得られることがわかる。
【0240】
比較例II−5の感熱転写記録媒体では、ポリビニルアルコールのみを含む下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥して下引き層を形成させた結果、実施例II−1の感熱転写記録媒体と比較して、染料層との密着性が低下し、異常転写が全面で認められた。
【0241】
比較例II−6の感熱転写記録媒体では、ポリビニルピロリドンのみを含む下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥して下引き層を形成させた結果、実施例II−1の感熱転写記録媒体と比較して、染料層との密着性は問題ないものの、転写感度は著しく低下することがわかる。
【0242】
比較例II−7の感熱転写記録媒体は、下引き層用のポリビニルアルコールとして市販品であるPVA−117((株)クラレ製)を用いたが、このPVA−117はJIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2未満であるため、抗張力が8kg/mm
2以上のポリビニルアルコールを用いた実施例II−1〜II−7の感熱転写記録媒体と比較すると、転写感度が低く、十分に満足できるものではなかった。
【0243】
比較例II−8の感熱転写記録媒体では、耐熱滑性層の表面粗さRaの平均値αが0.05μm未満であるため、印画シワが全面で認められていることがわかる。
【0244】
比較例II−9の感熱転写記録媒体では、比較例II−8とは逆に耐熱滑性層の表面粗さRaの平均値αが0.50μm超であるため、印画物に濃度ムラが生じ、画質に問題があることがわかる。
【0245】
比較例II−10の感熱転写記録媒体では、耐熱滑性層の表面粗さRaの平均値αと150℃、10分間の条件で静置した後の該耐熱滑性層の表面粗さRaの平均値βとの差が0.30μm超であるため、印画シワが全面で認められていることがわかる。
【0246】
(III)実施の形態III:感熱転写記録媒体IIIに対応する実施例とその比較例
<耐熱滑性層付き基材の作製>
上記(I)実施の形態Iに対応する実施例とその比較例における方法と同様の方法で、耐熱滑性層付き基材を得た。
【0247】
<ポリビニルアルコールの調製>
上記(I)実施の形態Iに対応する実施例とその比較例における方法と同様の方法で、ケン化度94モル%、平均重合度2200のポリビニルアルコールと、ケン化度88モル%、平均重合度2200のポリビニルアルコールとを得た。
【0248】
<ポリビニルアルコールフィルムの抗張力測定>
上記(I)実施の形態Iに対応する実施例とその比較例における方法と同様の方法で、抗張力を測定した。その結果、ケン化度94モル%、平均重合度2200のポリビニルアルコールが8.2kg/mm
2、ケン化度88モル%、平均重合度2200のポリビニルアルコールが6.8kg/mm
2、クラレポバールPVA−117が7.4kg/mm
2であった。
【0249】
(実施例III−1)
耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下記組成の下引き層形成用塗布液III−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.20g/m
2になるように塗布し、100℃で2分間乾燥することで、下引き層を形成した。引き続き、その下引き層の上に、下記組成の染料層形成用塗布液III−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.70g/m
2になるように塗布し、90℃で1分間乾燥することで、染料層を形成し、実施例III−1の感熱転写記録媒体を得た。
【0250】
<下引き層形成用塗布液III−1>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 3.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
2.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0251】
<染料層形成用塗布液III−1>
シリコーンフィラー粒子(体積平均粒子径2.0μm) 0.2部
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 44.9部
メチルエチルケトン 44.9部
【0252】
(実施例III−2)
実施例III−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液III−2にて形成した以外は、実施例III−1と同様にして、実施例III−2の感熱転写記録媒体を得た。
【0253】
<下引き層形成用塗布液III−2>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 4.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
1.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0254】
(実施例III−3)
実施例III−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液III−3にて形成した以外は、実施例III−1と同様にして、実施例III−3の感熱転写記録媒体を得た。
【0255】
<下引き層形成用塗布液III−3>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 1.5部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
3.5部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0256】
(実施例III−4)
実施例III−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層の乾燥後の塗布量が0.03g/m
2になるようにした以外は、実施例III−1と同様にして、実施例III−4の感熱転写記録媒体を得た。
【0257】
(実施例III−5)
実施例III−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層の乾燥後の塗布量が0.40g/m
2になるようにした以外は、実施例III−1と同様にして、実施例III−5の感熱転写記録媒体を得た。
【0258】
(実施例III−6)
実施例III−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液III−2にて形成した以外は、実施例III−1と同様にして、実施例III−6の感熱転写記録媒体を得た。
【0259】
<染料層形成用塗布液III−2>
シリコーンフィラー粒子(体積平均粒子径0.7μm) 0.04部
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 44.98部
メチルエチルケトン 44.98部
【0260】
(実施例III−7)
実施例III−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液III−3にて形成した以外は、実施例III−1と同様にして、実施例III−7の感熱転写記録媒体を得た。
【0261】
<染料層形成用塗布液III−3>
シリコーンフィラー粒子(体積平均粒子径2.0μm) 0.3部
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 44.85部
メチルエチルケトン 44.85部
【0262】
(比較例III−1)
実施例III−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を形成しない以外は、実施例III−1と同様にして、比較例III−1の感熱転写記録媒体を得た。
【0263】
(比較例III−2)
実施例III−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液III−4にて形成した以外は、実施例III−1と同様にして、比較例III−2の感熱転写記録媒体を得た。
【0264】
<下引き層形成用塗布液III−4>
ポリビニルアルコール(抗張力6.8kg/mm
2) 3.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
2.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0265】
(比較例III−3)
実施例III−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液III−4にて形成した以外は、実施例III−1と同様にして、比較例III−3の感熱転写記録媒体を得た。
【0266】
<染料層形成用塗布液III−4>
シリコーンフィラー粒子(体積平均粒子径2.0μm) 0.2部
C.I.ソルベントブルー266(アゾ系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 44.9部
メチルエチルケトン 44.9部
【0267】
(比較例III−4)
実施例III−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を上述した下引き層形成用塗布液III−4にて形成し、染料層を上述した染料層形成用塗布液III−4にて形成した以外は、実施例III−1と同様にして、比較例III−4の感熱転写記録媒体を得た。
【0268】
(比較例III−5)
実施例III−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液III−5にて形成した以外は、実施例III−1と同様にして、比較例III−5の感熱転写記録媒体を得た。
【0269】
<下引き層形成用塗布液III−5>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 5.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0270】
(比較例III−6)
実施例III−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液III−6にて形成した以外は、実施例III−1と同様にして、比較例III−6の感熱転写記録媒体を得た。
【0271】
<下引き層形成用塗布液III−6>
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
5.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0272】
(比較例III−7)
実施例III−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液III−7にて形成した以外は、実施例III−1と同様にして、比較例III−7の感熱転写記録媒体を得た。
【0273】
<下引き層形成用塗布液III−7>
ポリビニルアルコール
((株)クラレ製PVA−117、抗張力7.4kg/mm
2) 4.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
1.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0274】
(比較例III−8)
実施例III−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液III−5にて形成した以外は、実施例III−1と同様にして、比較例III−8の感熱転写記録媒体を得た。
【0275】
<染料層形成用塗布液III−5>
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
【0276】
(比較例III−9)
実施例III−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液III−6にて形成した以外は、実施例III−1と同様にして、比較例III−9の感熱転写記録媒体を得た。
【0277】
<染料層形成用塗布液III−6>
シリコーンフィラー粒子(体積平均粒子径0.7μm) 0.02部
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 44.99部
メチルエチルケトン 44.99部
【0278】
(比較例III−10)
実施例III−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液III−7にて形成した以外は、実施例III−1と同様にして、比較例III−10の感熱転写記録媒体を得た。
【0279】
<染料層形成用塗布液III−7>
シリコーンフィラー粒子(体積平均粒子径2.0μm) 0.4部
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 44.8部
メチルエチルケトン 44.8部
【0280】
(比較例III−11)
実施例III−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液III−8にて形成した以外は、実施例III−1と同様にして、比較例III−11の感熱転写記録媒体を得た。
【0281】
<染料層形成用塗布液III−8>
シリコーンフィラー粒子(体積平均粒子径0.02μm) 0.2部
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 44.9部
メチルエチルケトン 44.9部
【0282】
(比較例III−12)
実施例III−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液III−9にて形成した以外は、実施例III−1と同様にして、比較例III−12の感熱転写記録媒体を得た。
【0283】
<染料層形成用塗布液III−9>
シリコーンフィラー粒子(体積平均粒子径5.0μm) 0.2部
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 44.9部
メチルエチルケトン 44.9部
【0284】
なお、シリコーンフィラー粒子の体積平均粒子径は、(株)島津製作所製のナノ粒子径分布測定装置「SALD7100」を用いて、レーザ回折・散乱方式にて測定した。
【0285】
<熱転写受像シートの作製>
基材として坪量180g/m
2のアート紙を用い、該基材に下記組成の水系中空粒子層形成用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が10g/m
2になるように塗布し、乾燥した後に、40℃の環境下で1週間エージングすることで、水系中空粒子層付き基材を得た。
【0286】
<水系中空粒子層形成用塗布液>
アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルを主成分とする共重合体からなる
既発泡中空粒子(体積平均粒子径3.2μm、体積中空率85%)
45.0部
ポリビニルアルコール 10.0部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体分散物
(塩化ビニル/酢酸ビニル(質量比)=70/30、ガラス転移温度64℃)
45.0部
水 200.0部
【0287】
前記水系中空粒子層上に、下記組成の水系受容層形成用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が4g/m
2になるように塗布し、乾燥した後に、40℃の環境下で1週間エージングすることで、水系受容層を形成し、熱転写受像シートを得た。
【0288】
<水系受容層形成用塗布液>
ウレタン樹脂(ガラス転移温度−20℃) 96.0部
会合型ウレタン系増粘剤 1.0部
スルホン酸系界面活性剤 2.0部
シリコーンオイル 1.0部
水 200.0部
【0289】
<染料層の密着性評価>
実施例III−1〜III−7、比較例III−1〜III−12の感熱転写記録媒体について、感熱転写記録媒体の染料層の上に、幅24mm、長さ150mmのセロハンテープを貼り、その後すぐに剥がしたときの、セロハンテープ側への染料層の付着の有無を調べることにより、染料層の密着性を評価した。その結果を表3に示す。
【0290】
染料層の密着性評価は、以下の基準にて行った。
○:染料層の付着が、認められない
△:染料層の付着が、ごく僅かに認められる
×:染料層の付着が、全面で認められる
なお、△以上であれば実用上問題ないレベルである。
【0291】
<染料層の3次元表面粗さ(SRa)測定>
実施例III−1〜III−7、比較例III−1〜III−12の感熱転写記録媒体について、感熱転写記録媒体の染料層の3次元表面粗さ(SRa)を、オリンパス(株)製の走査型共焦点レーザ顕微鏡「OLS1100」を用いて下記の条件で測定した。その結果を表3に示す。なお、測定および解析条件は以下の通りである。
走査方向:サンプルのMD方向
測定長さ:X方向128μm、Y方向128μm
カットオフ値:1/3
【0292】
<印画評価>
実施例III−1〜III−7、比較例III−1〜III−12の感熱転写記録媒体を使用し、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、最高反射濃度を測定して印画評価を行った。その結果を表3に示す。なお、最高反射濃度はX−Rite社製の分光濃度計「X−Rite528」にて測定した値である。
【0293】
なお、印画条件は以下の通りである。
印画環境:23℃、50%RH
印加電圧:29V
ライン周期:0.7msec
印画密度:主走査300dpi、副走査300dpi
【0294】
<異常転写>
実施例III−1〜III−7、比較例III−1〜III−12の感熱転写記録媒体について、以下の基準にて異常転写を評価した。その結果を表3に示す。
○:被転写体への異常転写が、認められない
△:被転写体への異常転写が、ごく僅かに認められる
×:被転写体への異常転写が、全面で認められる
なお、△以上であれば実用上問題ないレベルである。
【0295】
<高濃度部で発生する濃淡ムラ>
実施例III−1〜III−7、比較例III−1〜III−12の感熱転写記録媒体について、以下の基準にて高濃度部で発生する濃淡ムラを評価した。その結果を表3に示す。
○:高濃度部で濃淡ムラが、認められない
△:高濃度部で濃淡ムラが、僅かに認められる
×:高濃度部で濃淡ムラが、はっきりと認められる
なお、△以上であれば実用上問題ないレベルである。
【0296】
【表3】
【0297】
表3に示す結果から、実施例III−1〜III−7の感熱転写記録媒体は、下引き層が設けられていない比較例III−1の感熱転写記録媒体と比較して、明らかに高速印画時における転写感度が高く、染料層に使用する染料を低減することができ、コストダウンの効果が大きいことがわかった。また、染料層との密着性、および印画における異常転写、さらに高濃度部で発生する濃淡ムラも実用上問題ないことがわかった。
【0298】
実施例III−2の感熱転写記録媒体は、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの質量基準での含有比率が、ポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドン=8/2であり、ポリビニルピロリドン比率が低いためか、実施例III−1の感熱転写記録媒体と比較して染料層との密着性が若干低下していることがわかる。
【0299】
実施例III−3の感熱転写記録媒体は、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの質量基準での含有比率が、ポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドン=3/7であり、ポリビニルアルコール比率が低いためか、実施例III−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度(最高反射濃度)が若干低下していることがわかる。
【0300】
実施例III−4の感熱転写記録媒体は、下引き層の塗布量が0.05g/m
2未満であるためか、実施例III−1の感熱転写記録媒体と比較して染料層との密着性が若干低下していることがわかる。
【0301】
実施例III−5の感熱転写記録媒体は、下引き層の塗布量が0.30g/m
2超であるためか、実施例III−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度が若干低下していることがわかる。
【0302】
実施例III−6の感熱転写記録媒体は、染料層の3次元表面粗さ(SRa)が小さいためか、実施例III−1〜III−5、III−7の感熱転写記録媒体と比較して高濃度部での濃淡ムラの発生が僅かに認められていることがわかる。
【0303】
実施例III−7の感熱転写記録媒体は、染料層のSRaが大きいためか、高濃度部で発生する濃淡ムラは抑えられているものの、実施例III−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度がやや低下していることがわかる。
【0304】
これに対して、比較例III−2の感熱転写記録媒体は、JIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2未満であるポリビニルアルコールを用いた結果、実施例III−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度が著しく低下していることがわかる。
【0305】
染料層がアントラキノン系化合物を含まない染料から成る比較例III−3の感熱転写記録媒体は、実施例III−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度が著しく低下していることがわかる。
【0306】
JIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2未満であるポリビニルアルコールを用い、かつ、染料層がアントラキノン系化合物を含まない染料から成る比較例III−4の感熱転写記録媒体は、比較例III−2やIII−3の感熱転写記録媒体と比較してさらに転写感度が低下していることがわかる。ここで、JIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2以上のポリビニルアルコールを用いている比較例III−3と、抗張力が8kg/mm
2未満のポリビニルアルコールを用いている比較例III−4とで、転写感度を比較すると、その差は僅かであり、染料層がアントラキノン系化合物を含まない染料から成る場合は、ポリビニルアルコールの抗張力が転写感度に与える効果は小さいことがわかる。このことから、JIS K 7113に基づいて測定したポリビニルアルコールの抗張力が8kg/mm
2以上であり、かつ、染料層にアントラキノン系化合物を含む熱移行性染料を用いることで、飛躍的に高い転写感度が得られることがわかる。
【0307】
比較例III−5の感熱転写記録媒体では、ポリビニルアルコールのみを含む下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥して下引き層を形成させた結果、実施例III−1の感熱転写記録媒体と比較して、染料層との密着性が低下し、異常転写が全面で認められた。
【0308】
比較例III−6の感熱転写記録媒体では、ポリビニルピロリドンのみを含む下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥して下引き層を形成させた結果、実施例III−1の感熱転写記録媒体と比較して、染料層との密着性は問題ないものの、転写感度は著しく低下することがわかる。
【0309】
比較例III−7の感熱転写記録媒体は、下引き層用のポリビニルアルコールとして市販品であるPVA−117((株)クラレ製)を用いたが、このPVA−117はJIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2未満であるため、抗張力が8kg/mm
2以上のポリビニルアルコールを用いた実施例III−1〜III−7の感熱転写記録媒体と比較すると、転写感度が低く、十分に満足できるものではなかった。
【0310】
比較例III−8の感熱転写記録媒体では、染料層にフィラー粒子が含まれていないため、SRaが0.10μmと染料層表面が極めて平坦であり、印画時に熱融着が起こり、高濃度部での濃淡ムラがはっきりと確認された。
【0311】
比較例III−9の感熱転写記録媒体では、染料層にフィラー粒子が含まれているものの、SRaが0.15μm未満で染料層表面が平坦過ぎるため、高濃度部での濃淡ムラの発生を十分に抑えることができていないことがわかる。
【0312】
比較例III−10の感熱転写記録媒体は、染料層中のフィラー粒子の量が多過ぎ、SRaが0.7μmよりも大きいため、転写感度の低下および異常転写を引き起こしていることがわかる。
【0313】
比較例III−11の感熱転写記録媒体は、染料層中のフィラー粒子の体積平均粒子径が0.02μmと小さく、SRaが0.15μm未満であるため、高濃度部での濃淡ムラの発生を十分に抑えることができていないことがわかる。
【0314】
比較例III−12の感熱転写記録媒体は、染料層中のフィラー粒子の体積平均粒子径が5.0μmと大きく、SRaが0.70μmよりも大きいため、転写感度が低下していることがわかる。また、印画後の感熱転写記録媒体を光学顕微鏡で観察したところ、染料層からフィラー粒子が滑落していることがわかった。
【0315】
(IV)実施の形態IV:感熱転写記録媒体IVに対応する実施例とその比較例
<耐熱滑性層付き基材の作製>
上記(I)実施の形態Iに対応する実施例とその比較例における方法と同様の方法で、耐熱滑性層付き基材を得た。
【0316】
<ポリビニルアルコールの調製>
上記(I)実施の形態Iに対応する実施例とその比較例における方法と同様の方法で、ケン化度94モル%、平均重合度2200のポリビニルアルコールと、ケン化度88モル%、平均重合度2200のポリビニルアルコールとを得た。
【0317】
<ポリビニルアルコールフィルムの抗張力測定>
上記(I)実施の形態Iに対応する実施例とその比較例における方法と同様の方法で、抗張力を測定した。その結果、ケン化度94モル%、平均重合度2200のポリビニルアルコールが8.2kg/mm
2、ケン化度88モル%、平均重合度2200のポリビニルアルコールが6.8kg/mm
2、クラレポバールPVA−117が7.4kg/mm
2であった。
【0318】
(実施例IV−1)
耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下記組成の下引き層形成用塗布液IV−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.20g/m
2になるように塗布し、100℃で2分間乾燥することで、下引き層を形成した。引き続き、その下引き層の上に、下記組成の染料層形成用塗布液IV−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.70g/m
2になるように塗布し、90℃で1分間乾燥することで、染料層を形成し、実施例IV−1の感熱転写記録媒体を得た。
【0319】
<下引き層形成用塗布液IV−1>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 3.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
2.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0320】
<染料層形成用塗布液IV−1>
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール
(電気化学工業(株)製デンカブチラール#5000−D、
ガラス転移温度110℃) 3.6部
ポリビニルブチラール
(電気化学工業(株)製デンカブチラール#3000−1、
ガラス転移温度68℃) 0.4部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
【0321】
(実施例IV−2)
実施例IV−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液IV−2にて形成した以外は、実施例IV−1と同様にして、実施例IV−2の感熱転写記録媒体を得た。
【0322】
<下引き層形成用塗布液IV−2>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 4.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
1.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0323】
(実施例IV−3)
実施例IV−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液IV−3にて形成した以外は、実施例IV−1と同様にして、実施例IV−3の感熱転写記録媒体を得た。
【0324】
<下引き層形成用塗布液IV−3>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 1.5部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
3.5部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0325】
(実施例IV−4)
実施例IV−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層の乾燥後の塗布量が0.03g/m
2になるようにした以外は、実施例IV−1と同様にして、実施例IV−4の感熱転写記録媒体を得た。
【0326】
(実施例IV−5)
実施例IV−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層の乾燥後の塗布量が0.40g/m
2になるようにした以外は、実施例IV−1と同様にして、実施例IV−5の感熱転写記録媒体を得た。
【0327】
(実施例IV−6)
実施例IV−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液IV−2にて形成した以外は、実施例IV−1と同様にして、実施例IV−6の感熱転写記録媒体を得た。
【0328】
<染料層形成用塗布液IV−2>
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール
(電気化学工業(株)製デンカブチラール#5000−D、
ガラス転移温度110℃) 3.8部
ポリビニルブチラール
(電気化学工業(株)製デンカブチラール#3000−1、
ガラス転移温度68℃) 0.2部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
【0329】
(実施例IV−7)
実施例IV−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液IV−3にて形成した以外は、実施例IV−1と同様にして、実施例IV−7の感熱転写記録媒体を得た。
【0330】
<染料層形成用塗布液IV−3>
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール
(電気化学工業(株)製デンカブチラール#5000−D、
ガラス転移温度110℃) 3.92部
ポリビニルブチラール
(電気化学工業(株)製デンカブチラール#3000−1、
ガラス転移温度68℃) 0.08部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
【0331】
(実施例IV−8)
実施例IV−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液IV−4にて形成した以外は、実施例IV−1と同様にして、実施例IV−8の感熱転写記録媒体を得た。
【0332】
<染料層形成用塗布液IV−4>
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール
(電気化学工業(株)製デンカブチラール#5000−D、
ガラス転移温度110℃) 2.0部
ポリビニルブチラール
(電気化学工業(株)製デンカブチラール#3000−1、
ガラス転移温度68℃) 2.0部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
【0333】
(実施例IV−9)
実施例IV−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液IV−5にて形成した以外は、実施例IV−1と同様にして、実施例IV−9の感熱転写記録媒体を得た。
【0334】
<染料層形成用塗布液IV−5>
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール
(電気化学工業(株)製デンカブチラール#5000−D、
ガラス転移温度110℃) 1.6部
ポリビニルブチラール
(電気化学工業(株)製デンカブチラール#3000−1、
ガラス転移温度68℃) 2.4部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
【0335】
(比較例IV−1)
実施例IV−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を形成しない以外は、実施例IV−1と同様にして、比較例IV−1の感熱転写記録媒体を得た。
【0336】
(比較例IV−2)
実施例IV−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液IV−4にて形成した以外は、実施例IV−1と同様にして、比較例IV−2の感熱転写記録媒体を得た。
【0337】
<下引き層形成用塗布液IV−4>
ポリビニルアルコール(抗張力6.8kg/mm
2) 3.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
2.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0338】
(比較例IV−3)
実施例IV−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液IV−6にて形成した以外は、実施例IV−1と同様にして、比較例IV−3の感熱転写記録媒体を得た。
【0339】
<染料層形成用塗布液IV−6>
C.I.ソルベントブルー266(アゾ系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール
(電気化学工業(株)製デンカブチラール#5000−D、
ガラス転移温度110℃) 3.6部
ポリビニルブチラール
(電気化学工業(株)製デンカブチラール#3000−1、
ガラス転移温度68℃) 0.4部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
【0340】
(比較例IV−4)
実施例IV−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を上述した下引き層形成用塗布液IV−4にて形成し、染料層を上述した染料層形成用塗布液IV−6にて形成した以外は、実施例IV−1と同様にして、比較例IV−4の感熱転写記録媒体を得た。
【0341】
(比較例IV−5)
実施例IV−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液IV−5にて形成した以外は、実施例IV−1と同様にして、比較例IV−5の感熱転写記録媒体を得た。
【0342】
<下引き層形成用塗布液IV−5>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 5.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0343】
(比較例IV−6)
実施例IV−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液IV−6にて形成した以外は、実施例IV−1と同様にして、比較例IV−6の感熱転写記録媒体を得た。
【0344】
<下引き層形成用塗布液IV−6>
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
5.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0345】
(比較例IV−7)
実施例IV−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液IV−7にて形成した以外は、実施例IV−1と同様にして、比較例IV−7の感熱転写記録媒体を得た。
【0346】
<下引き層形成用塗布液IV−7>
ポリビニルアルコール
((株)クラレ製PVA−117、抗張力7.4kg/mm
2) 4.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
1.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0347】
(比較例IV−8)
実施例IV−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液IV−7にて形成した以外は、実施例IV−1と同様にして、比較例IV−8の感熱転写記録媒体を得た。
【0348】
<染料層形成用塗布液IV−7>
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルブチラール
(電気化学工業(株)製デンカブチラール#3000−1、
ガラス転移温度68℃) 4.0部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
【0349】
(比較例IV−9)
実施例IV−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液IV−8にて形成した以外は、実施例IV−1と同様にして、比較例IV−9の感熱転写記録媒体を得た。
【0350】
<染料層形成用塗布液IV−8>
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール
(電気化学工業(株)製デンカブチラール#5000−D、
ガラス転移温度110℃) 4.0部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
【0351】
<被転写体の作製>
上記(I)実施の形態Iに対応する実施例とその比較例における方法と同様の方法で、感熱転写用の被転写体を作製した。
【0352】
<染料層の密着性評価>
実施例IV−1〜IV−9、比較例IV−1〜IV−9の感熱転写記録媒体について、感熱転写記録媒体の染料層の上に、幅24mm、長さ150mmのセロハンテープを貼り、その後すぐに剥がしたときの、セロハンテープ側への染料層の付着の有無を調べることにより、染料層の密着性を評価した。その結果を表4に示す。
【0353】
染料層の密着性評価は、以下の基準にて行った。
○:染料層の付着が、認められない
△:染料層の付着が、ごく僅かに認められる
×:染料層の付着が、全面で認められる
なお、△以上であれば実用上問題ないレベルである。
【0354】
<印画評価>
実施例IV−1〜IV−9、比較例IV−1〜IV−9の感熱転写記録媒体を使用し、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、最高反射濃度である255階調を11分割した各階調の反射濃度を評価した。その結果を表5に示す。なお、低濃度部における転写感度は23〜46階調における反射濃度にて、高濃度部における転写感度は255階調における反射濃度にて評価した。また、反射濃度はX−Rite社製の分光濃度計「X−Rite528」にて測定した値である。
【0355】
なお、印画条件は以下の通りである。
印画環境:23℃、50%RH
印加電圧:29V
ライン周期:0.7msec
印画密度:主走査300dpi、副走査300dpi
【0356】
<異常転写>
実施例IV−1〜IV−9、比較例IV−1〜IV−9の感熱転写記録媒体について、以下の基準にて異常転写を評価した。その結果を表4に示す。
○:被転写体への異常転写が、認められない
△:被転写体への異常転写が、ごく僅かに認められる
×:被転写体への異常転写が、全面で認められる
なお、△以上であれば実用上問題ないレベルである。
【0357】
<シワ>
実施例IV−1〜IV−9、比較例IV−1〜IV−9の感熱転写記録媒体について、以下の基準にてシワを評価した。その結果を表4に示す。
○:被転写体のシワが、認められない
△:被転写体のシワは殆ど認められないが、感熱転写記録媒体の変形や伸びが僅かに認められる
×:被転写体のシワが、全面で認められる
なお、△以上であれば実用上問題ないレベルである。
【0358】
【表4】
【表5】
【0359】
表4、5に示す結果から、実施例IV−1〜IV−9の感熱転写記録媒体は、下引き層が設けられていない比較例IV−1の感熱転写記録媒体と比較して、明らかに高速印画時における高濃度部の転写感度が高く、染料層に使用する染料を低減することができ、コストダウンの効果が大きいことがわかった。また、染料層との密着性、および印画における異常転写も実用上問題ないことがわかった。
【0360】
実施例IV−2の感熱転写記録媒体は、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの質量基準での含有比率が、ポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドン=8/2であり、ポリビニルピロリドン比率が低いためか、実施例IV−1の感熱転写記録媒体と比較して染料層との密着性が若干低下していることがわかる。
【0361】
実施例IV−3の感熱転写記録媒体は、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの質量基準での含有比率が、ポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドン=3/7であり、ポリビニルアルコール比率が低いためか、実施例IV−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度が若干低下していることがわかる。
【0362】
実施例IV−4の感熱転写記録媒体は、下引き層の塗布量が0.05g/m
2未満であるためか、実施例IV−1の感熱転写記録媒体と比較して染料層との密着性が若干低下していることがわかる。
【0363】
実施例IV−5の感熱転写記録媒体は、下引き層の塗布量が0.30g/m
2超であるためか、実施例IV−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度が若干低下していることがわかる。
【0364】
実施例IV−6の感熱転写記録媒体は、染料層に含まれるガラス転移温度が100℃以上のポリビニルアセタールとガラス転移温度が75℃以下のポリビニルブチラールとの質量基準での含有比率が、ポリビニルアセタール/ポリビニルブチラール=95/5であり、ポリビニルブチラール比率が若干低いためか、実施例IV−1の感熱転写記録媒体と比較して低濃度部の転写感度が若干低下していることがわかる。また実施例IV−7の感熱転写記録媒体は、ポリビニルアセタール/ポリビニルブチラール=98/2であり、ポリビニルブチラール比率が実施例IV−6の感熱転写記録媒体よりも低いためか、実施例IV−6の感熱転写記録媒体と比較して低濃度部の転写感度が若干低下していることがわかる。
【0365】
実施例IV−8の感熱転写記録媒体は、染料層に含まれるガラス転移温度が100℃以上のポリビニルアセタールとガラス転移温度が75℃以下のポリビニルブチラールとの質量基準での含有比率が、ポリビニルアセタール/ポリビニルブチラール=50/50であり、ポリビニルブチラール比率が若干高いためか、実施例IV−1の感熱転写記録媒体と比較して低濃度部の転写感度が若干高いことがわかる。また実施例IV−9の感熱転写記録媒体は、ポリビニルアセタール/ポリビニルブチラール=40/60であり、ポリビニルブチラール比率が実施例IV−8の感熱転写記録媒体よりも高いためか、実施例IV−1の感熱転写記録媒体と比較して低濃度部の転写感度は若干高いが、感熱転写記録媒体の変形や伸びが僅かに認められることがわかる。
【0366】
これに対して、比較例IV−2の感熱転写記録媒体は、JIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2未満であるポリビニルアルコールを用いた結果、実施例IV−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度が著しく低下していることがわかる。
【0367】
染料層がアントラキノン系化合物を含まない染料から成る比較例IV−3の感熱転写記録媒体は、実施例IV−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度が著しく低下していることがわかる。
【0368】
JIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2未満であるポリビニルアルコールを用い、かつ、染料層がアントラキノン系化合物を含まない染料から成る比較例IV−4の感熱転写記録媒体は、比較例IV−2やIV−3の感熱転写記録媒体と比較してさらに転写感度が低下していることがわかる。ここで、JIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2以上のポリビニルアルコールを用いている比較例IV−3と、抗張力が8kg/mm
2未満のポリビニルアルコールを用いている比較例IV−4とで、転写感度を比較すると、その差は僅かであり、染料層がアントラキノン系化合物を含まない染料から成る場合は、ポリビニルアルコールの抗張力が転写感度に与える効果は小さいことがわかる。このことから、JIS K 7113に基づいて測定したポリビニルアルコールの抗張力が8kg/mm
2以上であり、かつ、染料層にアントラキノン系化合物を含む熱移行性染料を用いることで、飛躍的に高い転写感度が得られることがわかる。
【0369】
比較例IV−5の感熱転写記録媒体では、ポリビニルアルコールのみを含む下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥して下引き層を形成させた結果、実施例IV−1の感熱転写記録媒体と比較して、染料層との密着性が低下し、異常転写が全面で認められた。
【0370】
比較例IV−6の感熱転写記録媒体では、ポリビニルピロリドンのみを含む下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥して下引き層を形成させた結果、実施例IV−1の感熱転写記録媒体と比較して、染料層との密着性は問題ないものの、転写感度は著しく低下することがわかる。
【0371】
比較例IV−7の感熱転写記録媒体は、下引き層用のポリビニルアルコールとして市販品であるPVA−117((株)クラレ製)を用いたが、このPVA−117はJIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2未満であるため、抗張力が8kg/mm
2以上のポリビニルアルコールを用いた実施例IV−1〜IV−9の感熱転写記録媒体と比較すると、転写感度が低く、十分に満足できるものではなかった。
【0372】
比較例IV−8の感熱転写記録媒体では、ガラス転移温度が75℃以下のポリビニルブチラールのみを樹脂バインダーとして含む染料層形成用塗布液を塗布し、乾燥して染料層を形成させた結果、実施例IV−1の感熱転写記録媒体と比較して、低濃度部の転写感度は高くなるものの、被転写体のシワが全面で認められることがわかる。
【0373】
比較例IV−9の感熱転写記録媒体では、ガラス転移温度が100℃以上のポリビニルアセタールのみを樹脂バインダーとして含む染料層形成用塗布液を塗布し、乾燥して染料層を形成させた結果、実施例IV−1の感熱転写記録媒体と比較して、低濃度部の転写感度が著しく低下することがわかる。
【0374】
(V)実施の形態V:感熱転写記録媒体Vに対応する実施例とその比較例
<耐熱滑性層付き基材の作製>
上記(I)実施の形態Iに対応する実施例とその比較例における方法と同様の方法で、耐熱滑性層付き基材を得た。
【0375】
<ポリビニルアルコールの調製>
上記(I)実施の形態Iに対応する実施例とその比較例における方法と同様の方法で、ケン化度94モル%、平均重合度2200のポリビニルアルコールと、ケン化度88モル%、平均重合度2200のポリビニルアルコールとを得た。
【0376】
<ポリビニルアルコールフィルムの抗張力測定>
上記(I)実施の形態Iに対応する実施例とその比較例における方法と同様の方法で、抗張力を測定した。その結果、ケン化度94モル%、平均重合度2200のポリビニルアルコールが8.2kg/mm
2、ケン化度88モル%、平均重合度2200のポリビニルアルコールが6.8kg/mm
2、クラレポバールPVA−117が7.4kg/mm
2であった。
【0377】
(実施例V−1)
耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下記組成の下引き層形成用塗布液V−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.20g/m
2になるように塗布し、100℃で2分間乾燥することで、下引き層を形成した。引き続き、その下引き層の上に、下記組成の染料層形成用塗布液V−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.70g/m
2になるように塗布し、90℃で1分間乾燥することで、染料層を形成し、実施例V−1の感熱転写記録媒体を得た。
【0378】
<下引き層形成用塗布液V−1>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 3.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
2.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0379】
<染料層形成用塗布液V−1>
非反応性シリコーンオイル
(数平均分子量8000、側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイル)
0.1部
反応性シリコーンオイル
(数平均分子量3000、側鎖型ジアミン変性シリコーンオイル)
0.1部
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 44.9部
メチルエチルケトン 44.9部
【0380】
(実施例V−2)
実施例V−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液V−2にて形成した以外は、実施例V−1と同様にして、実施例V−2の感熱転写記録媒体を得た。
【0381】
<下引き層形成用塗布液V−2>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 4.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
1.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0382】
(実施例V−3)
実施例V−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液V−3にて形成した以外は、実施例V−1と同様にして、実施例V−3の感熱転写記録媒体を得た。
【0383】
<下引き層形成用塗布液V−3>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 1.5部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
3.5部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0384】
(実施例V−4)
実施例V−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層の乾燥後の塗布量が0.03g/m
2になるようにした以外は、実施例V−1と同様にして、実施例V−4の感熱転写記録媒体を得た。
【0385】
(実施例V−5)
実施例V−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層の乾燥後の塗布量が0.40g/m
2になるようにした以外は、実施例V−1と同様にして、実施例V−5の感熱転写記録媒体を得た。
【0386】
(実施例V−6)
実施例V−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液V−2にて形成した以外は、実施例V−1と同様にして、実施例V−6の感熱転写記録媒体を得た。
【0387】
<染料層形成用塗布液V−2>
非反応性シリコーンオイル
(数平均分子量8000、両末端型長鎖アルキル変性シリコーンオイル)
0.1部
反応性シリコーンオイル
(数平均分子量3000、側鎖型ジアミン変性シリコーンオイル)
0.1部
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 44.9部
メチルエチルケトン 44.9部
【0388】
(実施例V−7)
実施例V−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液V−3にて形成した以外は、実施例V−1と同様にして、実施例V−7の感熱転写記録媒体を得た。
【0389】
<染料層形成用塗布液V−3>
非反応性シリコーンオイル
(数平均分子量8000、側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイル)
0.1部
反応性シリコーンオイル
(数平均分子量3000、両末端型アミノ変性シリコーンオイル)
0.1部
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 44.9部
メチルエチルケトン 44.9部
【0390】
(比較例V−1)
実施例V−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を形成しない以外は、実施例V−1と同様にして、比較例V−1の感熱転写記録媒体を得た。
【0391】
(比較例V−2)
実施例V−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液V−4にて形成した以外は、実施例V−1と同様にして、比較例V−2の感熱転写記録媒体を得た。
【0392】
<下引き層形成用塗布液V−4>
ポリビニルアルコール(抗張力6.8kg/mm
2) 3.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
2.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0393】
(比較例V−3)
実施例V−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液V−4にて形成した以外は、実施例V−1と同様にして、比較例V−3の感熱転写記録媒体を得た。
【0394】
<染料層形成用塗布液V−4>
非反応性シリコーンオイル
(数平均分子量8000、側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイル)
0.1部
反応性シリコーンオイル
(数平均分子量3000、側鎖型ジアミン変性シリコーンオイル)
0.1部
C.I.ソルベントブルー266(アゾ系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 44.9部
メチルエチルケトン 44.9部
【0395】
(比較例V−4)
実施例V−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を上述した下引き層形成用塗布液V−4にて形成し、染料層を上述した染料層形成用塗布液V−4にて形成した以外は、実施例V−1と同様にして、比較例V−4の感熱転写記録媒体を得た。
【0396】
(比較例V−5)
実施例V−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液V−5にて形成した以外は、実施例V−1と同様にして、比較例V−5の感熱転写記録媒体を得た。
【0397】
<下引き層形成用塗布液V−5>
ポリビニルアルコール(抗張力8.2kg/mm
2) 5.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0398】
(比較例V−6)
実施例V−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液V−6にて形成した以外は、実施例V−1と同様にして、比較例V−6の感熱転写記録媒体を得た。
【0399】
<下引き層形成用塗布液V−6>
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
5.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0400】
(比較例V−7)
実施例V−1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液V−7にて形成した以外は、実施例V−1と同様にして、比較例V−7の感熱転写記録媒体を得た。
【0401】
<下引き層形成用塗布液V−7>
ポリビニルアルコール
((株)クラレ製PVA−117、抗張力7.4kg/mm
2) 4.0部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
1.0部
純水 57.0部
イソプロピルアルコール 38.0部
【0402】
(比較例V−8)
実施例V−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液V−5にて形成した以外は、実施例V−1と同様にして、比較例V−8の感熱転写記録媒体を得た。
【0403】
<染料層形成用塗布液V−5>
非反応性シリコーンオイル
(数平均分子量8000、側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイル)
0.2部
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 44.9部
メチルエチルケトン 44.9部
【0404】
(比較例V−9)
実施例V−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液V−6にて形成した以外は、実施例V−1と同様にして、比較例V−9の感熱転写記録媒体を得た。
【0405】
<染料層形成用塗布液V−6>
反応性シリコーンオイル
(数平均分子量3000、側鎖型ジアミン変性シリコーンオイル)
0.2部
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 44.9部
メチルエチルケトン 44.9部
【0406】
(比較例V−10)
実施例V−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液V−7にて形成した以外は、実施例V−1と同様にして、比較例V−10の感熱転写記録媒体を得た。
【0407】
<染料層形成用塗布液V−7>
非反応性シリコーンオイル
(数平均分子量8000、側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイル)
0.1部
非反応性シリコーンオイル
(数平均分子量3000、側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイル)
0.1部
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 44.9部
メチルエチルケトン 44.9部
【0408】
(比較例V−11)
実施例V−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液V−8にて形成した以外は、実施例V−1と同様にして、比較例V−11の感熱転写記録媒体を得た。
【0409】
<染料層形成用塗布液V−8>
反応性シリコーンオイル
(数平均分子量8000、側鎖型ジアミン変性シリコーンオイル)
0.1部
反応性シリコーンオイル
(数平均分子量3000、側鎖型ジアミン変性シリコーンオイル)
0.1部
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 44.9部
メチルエチルケトン 44.9部
【0410】
(比較例V−12)
実施例V−1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液V−9にて形成した以外は、実施例V−1と同様にして、比較例V−12の感熱転写記録媒体を得た。
【0411】
<染料層形成用塗布液V−9>
非反応性シリコーンオイル
(数平均分子量7000、側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイル)
0.1部
反応性シリコーンオイル
(数平均分子量4000、側鎖型ジアミン変性シリコーンオイル)
0.1部
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 44.9部
メチルエチルケトン 44.9部
【0412】
<熱転写受像シートの作製>
上記(III)実施の形態IIIに対応する実施例とその比較例における方法と同様の方法で、熱転写受像シートを得た。
【0413】
<染料層の密着性評価>
実施例V−1〜V−7、比較例V−1〜V−12の感熱転写記録媒体について、感熱転写記録媒体の染料層の上に、幅24mm、長さ150mmのセロハンテープを貼り、その後すぐに剥がしたときの、セロハンテープ側への染料層の付着の有無を調べることにより、染料層の密着性を評価した。その結果を表6に示す。
【0414】
染料層の密着性評価は、以下の基準にて行った。
○:染料層の付着が、認められない
△:染料層の付着が、ごく僅かに認められる
×:染料層の付着が、全面で認められる
なお、△以上であれば実用上問題ないレベルである。
【0415】
<印画評価>
実施例V−1〜V−7、比較例V−1〜V−12の感熱転写記録媒体を使用し、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、最高反射濃度を測定して印画評価を行った。その結果を表6に示す。なお、最高反射濃度はX−Rite社製の分光濃度計「X−Rite528」にて測定した値である。
【0416】
なお、印画条件は以下の通りである。
印画環境:23℃、50%RH
印加電圧:29V
ライン周期:0.7msec
印画密度:主走査300dpi、副走査300dpi
【0417】
<中濃度部で発生する異常転写>
実施例V−1〜V−7、比較例V−1〜V−12の感熱転写記録媒体について、以下の基準にて中濃度部で発生する異常転写を評価した。その結果を表6に示す。
○:被転写体への異常転写が、認められない
△:被転写体への異常転写が、ごく僅かに認められる
×:被転写体への異常転写が、全面で認められる
なお、△以上であれば実用上問題ないレベルである。
【0418】
<高濃度部乃至中濃度部で発生する水系受容層と染料層との貼り付き>
実施例V−1〜V−7、比較例V−1〜V−12の感熱転写記録媒体について、以下の基準にて高濃度部乃至中濃度部で発生する水系受容層と染料層との貼り付きを評価した。その結果を表6に示す。
○:高濃度部乃至中濃度部で貼り付きの痕跡が、認められない
△:高濃度部乃至中濃度部で貼り付きの痕跡が、僅かに認められる
×:高濃度部乃至中濃度部で貼り付きの痕跡が、はっきりと認められる
なお、△以上であれば実用上問題ないレベルである。
【0419】
【表6】
【0420】
表6に示す結果から、実施例V−1〜V−7の感熱転写記録媒体は、下引き層が設けられていない比較例V−1の感熱転写記録媒体と比較して、明らかに高速印画時における転写感度が高く、染料層に使用する染料を低減することができ、コストダウンの効果が大きいことがわかった。また、染料層との密着性、および印画時に中濃度部で発生する異常転写、さらに高濃度部乃至中濃度部で発生する水系受容層と染料層との貼り付きも実用上問題ないことがわかった。
【0421】
実施例V−2の感熱転写記録媒体は、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの質量基準での含有比率が、ポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドン=8/2であり、ポリビニルピロリドン比率が低いためか、実施例V−1の感熱転写記録媒体と比較して染料層との密着性が若干低下していることがわかる。
【0422】
実施例V−3の感熱転写記録媒体は、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの質量基準での含有比率が、ポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドン=3/7であり、ポリビニルアルコール比率が低いためか、実施例V−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度(最高反射濃度)が若干低下していることがわかる。
【0423】
実施例V−4の感熱転写記録媒体は、下引き層の塗布量が0.05g/m
2未満であるためか、実施例V−1の感熱転写記録媒体と比較して染料層との密着性が若干低下していることがわかる。
【0424】
実施例V−5の感熱転写記録媒体は、下引き層の塗布量が0.30g/m
2超であるためか、実施例V−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度が若干低下していることがわかる。
【0425】
実施例V−6の感熱転写記録媒体は、非反応性シリコーンオイルとして側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイルではなく両末端型長鎖アルキル変性シリコーンオイルを用いたためか、実施例V−1の感熱転写記録媒体と比較して高濃度部乃至中濃度部で水系受容層と染料層との貼り付きの発生が僅かに認められていることがわかる。
【0426】
実施例V−7の感熱転写記録媒体は、反応性シリコーンオイルとして側鎖型ジアミン変性シリコーンオイルではなく両末端型アミノ変性シリコーンオイルを用いたためか、高濃度部乃至中濃度部での水系受容層と染料層との貼り付きの発生は抑えられているものの、実施例V−1の感熱転写記録媒体と比較して中濃度部で異常転写の発生が僅かに認められていることがわかる。
【0427】
これに対して、比較例V−2の感熱転写記録媒体は、JIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2未満であるポリビニルアルコールを用いた結果、実施例V−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度が著しく低下していることがわかる。
【0428】
染料層がアントラキノン系化合物を含まない染料から成る比較例V−3の感熱転写記録媒体は、実施例V−1の感熱転写記録媒体と比較して転写感度が著しく低下していることがわかる。
【0429】
JIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2未満であるポリビニルアルコールを用い、かつ、染料層がアントラキノン系化合物を含まない染料から成る比較例V−4の感熱転写記録媒体は、比較例V−2やV−3の感熱転写記録媒体と比較してさらに転写感度が低下していることがわかる。ここで、JIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2以上のポリビニルアルコールを用いている比較例V−3と、抗張力が8kg/mm
2未満のポリビニルアルコールを用いている比較例V−4とで、転写感度を比較すると、その差は僅かであり、染料層がアントラキノン系化合物を含まない染料から成る場合は、ポリビニルアルコールの抗張力が転写感度に与える効果は小さいことがわかる。このことから、JIS K 7113に基づいて測定したポリビニルアルコールの抗張力が8kg/mm
2以上であり、かつ、染料層にアントラキノン系化合物を含む熱移行性染料を用いることで、飛躍的に高い転写感度が得られることがわかる。
【0430】
比較例V−5の感熱転写記録媒体では、ポリビニルアルコールのみを含む下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥して下引き層を形成させた結果、実施例V−1の感熱転写記録媒体と比較して、染料層との密着性が低下し、中濃度部での異常転写が全面で認められた。
【0431】
比較例V−6の感熱転写記録媒体では、ポリビニルピロリドンのみを含む下引き層形成用塗布液を塗布し、乾燥して下引き層を形成させた結果、実施例V−1の感熱転写記録媒体と比較して、染料層との密着性は問題ないものの、転写感度は著しく低下することがわかる。
【0432】
比較例V−7の感熱転写記録媒体は、下引き層用のポリビニルアルコールとして市販品であるPVA−117((株)クラレ製)を用いたが、このPVA−117はJIS K 7113に基づいて測定した抗張力が8kg/mm
2未満であるため、抗張力が8kg/mm
2以上のポリビニルアルコールを用いた実施例V−1〜V−7の感熱転写記録媒体と比較すると、転写感度が低く、十分に満足できるものではなかった。
【0433】
比較例V−8の感熱転写記録媒体では、染料層に反応性シリコーンオイルが含まれていないため、中濃度部での異常転写の発生を十分に抑えることができていないことがわかる。
【0434】
比較例V−9の感熱転写記録媒体では、染料層に非反応性シリコーンオイルが含まれていないため、高濃度部乃至中濃度部での水系受容層と染料層との貼り付きの発生を十分に抑えることができていないことがわかる。
【0435】
比較例V−10の感熱転写記録媒体では、数平均分子量は3000であるが、反応性ではなく非反応性シリコーンオイルが染料層に含まれているため、中濃度部での異常転写の発生を十分に抑えることができていないことがわかる。
【0436】
比較例V−11の感熱転写記録媒体では、数平均分子量は8000であるが、非反応性ではなく反応性シリコーンオイルが染料層に含まれているため、高濃度部乃至中濃度部での水系受容層と染料層との貼り付きの発生を十分に抑えることができていないことがわかる。
【0437】
比較例V−12の感熱転写記録媒体では、数平均分子量が8000未満の非反応性シリコーンオイルと数平均分子量が3000を超える反応性シリコーンオイルとが染料層に含まれているため、高濃度部乃至中濃度部での水系受容層と染料層との貼り付きの発生および中濃度部での異常転写の発生を十分に抑えることができていないことがわかる。