(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記磁石に対する前記ヨークの対向面と、前記ヨークに対する前記磁石の対向面とは平行であり、この二つの対向面の間であって前記媒体の搬送方向での中央となる位置に前記磁気抵抗素子が配置されている、請求項1に記載の磁気センサ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図14に示されるような磁気センサ装置においては、対向ヨーク20は媒体16の搬送方向での分解能を高めるために設けられている。そのため、対向ヨーク20は媒体16の搬送方向に狭く細長い形状である。また、2つの磁気抵抗素子MR1,MR2が、磁石10の中央に対して均等な位置に配置されている。そのため、対向ヨーク20により磁束の発散が抑制され、分解能は向上する。
【0006】
ところで、磁性インクなどで印刷されてなる磁気パターンが設けられている紙幣や証券などの媒体の鑑別を行う磁気センサ装置に要求される特性の一つとして、所謂出力GAP特性というものがある。通常、検知対象である媒体が搬送される際、磁気抵抗素子の感磁部と媒体との間隔によって磁気センサの出力が変動する。この磁気抵抗素子の感磁部と媒体との間隔変化に対する磁気センサの出力の変動の関係が出力GAP特性である。磁気抵抗素子の感磁部と媒体との間隔が変化しても磁気センサの出力の変動が少なければ出力GAP特性は良い、ということになる。
【0007】
従来の一般的な磁気センサでは、磁石が開磁路を構成するため、磁束が発散し、磁石から離れる程、磁束密度は急速に低下する。したがって、磁気抵抗素子の感磁部と媒体との間隔が広くなる程、磁気抵抗素子の感磁部上の磁束密度変化が小さくなって、磁気センサの出力は急激に低下しやすい。したがって、従来の一般的な磁気センサでは良好な出力GAP特性が得られない。
【0008】
また、
図14に示されるような磁気センサ装置においても、対向ヨーク20が細く、磁石10から出る磁束の拡散抑制作用が不十分であるので、出力GAP特性の大幅な向上は見込めない。
【0009】
磁気センサ装置において、出力GAP特性の悪い磁気センサを用いて磁気センサの出力の低下を抑制するためには、磁気抵抗素子の感磁部と媒体との間隔を狭め、且つその間隔を一定に保って媒体が搬送される構造とすればよい。例えば、磁気センサのカバーに対して媒体搬送ローラーを当接させ、媒体が磁気センサのカバーを摺動しながら搬送ローラーで搬送されるような構造を備えることが考えられる。しかし、このような磁気センサ装置では、媒体を搬送する構造が複雑化し、大量の媒体を高速で搬送する用途には向かない。またカバーが摩耗するという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、磁気抵抗素子の感磁部と媒体との間隔変化に対する磁気センサの出力の変動を抑制した磁気センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る磁気センサ装置は、磁気抵抗素子と、磁石と、磁気抵抗素子を載置し、磁気抵抗素子へ磁界を印加する位置に磁石を保持するホルダーとを備え、媒体が有する磁性体を検知する磁気センサと、媒体の搬送部および磁気抵抗素子を間にして磁石に対向する位置に配置されたヨークと、を備え
、媒体の搬送部は磁気抵抗素子とヨークとの間に位置することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る磁気センサ装置は、ヨークの幅方向の寸法及び磁石の幅方向の寸法を前記媒体の搬送方向の寸法としたとき、ヨークの幅方向の寸法は磁石の幅方向の寸法より大きいことが好ましい。
【0013】
本発明に係る磁気センサ装置は、磁石に対するヨークの対向面と、ヨークに対する磁石の対向面とは平行であり、この二つの対向面の間であって媒体の搬送方向での中央となる位置に磁気抵抗素子が配置されていることが好ましい。
【0014】
本発明に係る磁気センサ装置は、ホルダーは、ヨークを保持することが好ましい。
【0015】
本発明に係る磁気センサ装置は、磁石に対するヨークの対向面から搬送部までの間隔は、搬送部の間隙より狭いことが好ましい。
【0016】
本発明に係る磁気センサ装置は、磁石はフェライト磁石であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る磁気センサ装置は、磁気抵抗素子の感磁部での磁束密度は150〜450mTの範囲内であることが好ましい。
【0018】
本発明に係る磁気センサ装置は、ヨークは磁石と互いに吸着する方向に着磁されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、磁石とヨークの間で磁束は発散しないので、磁石からの距離に対する磁束密度の変化が小さく、磁気抵抗素子の感磁部と媒体との間隔変化に対する磁気センサの出力の低下が抑えられる。そのため、媒体の搬送路の隙間を広くとることができ、媒体を搬送する構造が複雑化せず、大量の媒体を高速で搬送する用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る磁気センサ装置の主要部の断面図である。
【
図2】
図2(A)は、本発明の実施の形態に係る磁気センサ装置が備える磁気センサの斜視図である。
図2(B)は、磁気センサとヨークとの位置関係を示す、本発明の実施の形態に係る磁気センサ装置の透視斜視図である。
図2(C)は、磁気センサ装置101の斜視図である。
図2(D)は、媒体の搬送構造を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る磁気センサ装置が備える磁気センサの部分切欠斜視図である。
【
図4】
図4(A)は、本発明の実施の形態に係る磁気センサ装置が備える磁気センサを構成する磁気抵抗素子の平面図である。
図4(B)は、本発明の実施の形態に係る磁気センサ装置が備える磁気センサの回路図である。
図4(C)は、媒体16が搬送された際の、本発明の実施の形態に係る磁気センサ装置磁気センサの出力電圧の波形図である。
【
図5】
図5(A)は、本発明の実施の形態に係る磁気抵抗素子を構成する素子MR1の構成を示す平面図である。
図5(B)は、素子MR1が有する磁気抵抗部およびショートバーのピッチをL、幅をWで表した際の、W/Lに対する素子MR1の抵抗値の変化比RB/R0の特性図である。
【
図6】
図6(A)は、比較例に係る磁気センサを構成する磁気抵抗素子の平面図である。
図6(B)は、比較例に係る磁気センサの回路図である。
図6(C)は、媒体が搬送された際の、比較例に係る磁気センサの出力電圧の波形図である。
【
図7】
図7(A)は、本発明の実施の形態に係る磁気センサ装置が備えるヨークの寸法を示す図である。
図7(B)は、本発明の実施の形態に係る磁気センサ装置が備える磁気センサを構成する磁気抵抗素子およびカバーの各部の寸法および位置関係を示す図である。
【
図8】
図8(A)は、本発明の実施形態に係る磁気センサ装置において、磁界の強度分布を磁力線で表した図である。
図8(B)は、第1の比較例に係る磁気センサ装置において、磁界の強度分布を磁力線で表した図である。
図8(C)は、第2の比較例に係る磁気センサ装置において、磁界の強度分布を磁力線で表した図である。
【
図9】
図9(A)は、本発明の実施形態に係る磁気センサ装置において媒体が搬送された際の、磁気センサの出力電圧の波形図である。
図9(B)は、第1の比較例に係る磁気センサ装置において媒体が搬送された際の、磁気センサの出力電圧の波形図である。
図9(C)は、第2の比較例に係る磁気センサ装置において媒体が搬送された際の、磁気センサの出力電圧の波形図である。
【
図10】
図10(A),
図10(B)は、GAPに対する磁気センサの出力電圧のピーク値の変化を示す図である。
【
図11】
図11(A)は、磁気抵抗素子の磁束密度に対する抵抗値の特性を示す図である。
図11(B)は、磁石によって磁気抵抗素子に印加されるバイアス磁界と磁気センサの出力電圧との関係を示す図である。
【
図12】
図12は、媒体の違いによる、バイアス磁界の磁束密度の変化に対する磁気センサの出力電圧の特性を示す図である。
【
図13】
図13(A)は、本発明の第2の実施形態に係る磁気センサ装置の主要部の断面図である。
図13(B)は、本発明の第2の実施形態に係る磁気センサ装置のヨークを取り除いた状態を示す平面図である。
【
図14】
図14は特許文献1に示されている磁気センサ装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態である磁気センサ装置101について各図を順に参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る磁気センサ装置101の主要部の断面図である。
図2(A)〜(D)は、本実施形態に係る磁気センサ装置101に関する斜視図である。磁気センサ装置101は、磁性体である磁気インクが印刷されてなる磁気パターン16Mを備える媒体16が搬送される際に、磁気パターン16Mを検知する。
【0023】
図1において、磁気センサ装置101は、磁気センサ100と、外部ホルダー18Eと、ヨーク20と、を備えている。ヨーク20は、純鉄系軟磁性材料からなるブロック状の部材であり、磁気センサ100の上方に配置されている。外部ホルダー18Eは、磁気センサ100とヨーク20とを保持している。外部ホルダー18Eは、ヨーク20の外周面を覆うように設けられている。
【0024】
磁気センサ100は、複数の磁気抵抗素子30と、複数の磁石10と、内部ホルダー18Cと、カバー19と、により構成されている。磁石10は、磁気抵抗素子30へ磁界を印加する。内部ホルダー18Cは、磁石10を保持しており、上部に磁気抵抗素子30が載置される。カバー19は、ステンレススチール等の非磁性金属からなり、磁気抵抗素子30を覆うように設けられている。磁気センサ100は、カバー19の上面が露出するとともに、カバー19の側面の一部と内部ホルダー18Cの側面とが外部ホルダー18Eによって覆われるようにして、外部ホルダー18Eによって保持されている。
【0025】
磁気センサ装置101では、ヨーク20とカバー19の上面との間に、媒体16が搬送される搬送部(スリット)18Sが形成されている。ここで、ヨーク20の外周面は外部ホルダー18Eによって覆われているため、磁石10に対するヨーク20の対向面であるヨーク20の下面は外部ホルダー18Eによって覆われている。そのため、搬送部(スリット)18Sは、外部ホルダー18Eのヨーク20の下面を覆っている部分とカバー19の上面との間に形成されている。すなわち、磁石10とヨーク20との間に、搬送部18Sおよび磁気抵抗素子30が配置されている。磁気センサ装置101では、ヨーク20の幅方向の寸法及び磁石10の幅方向の寸法を媒体16の搬送方向の寸法としたとき、ヨーク20の幅方向の寸法は磁石10の幅方向の寸法より大きい。磁気センサ装置101では、磁石10に対するヨーク20の対向面と、ヨーク20に対する磁石10の対向面とは平行であり、この二つの対向面の間であって媒体16の搬送方向での中央となる位置に磁気抵抗素子30、より詳細には磁気抵抗素子30の感磁部が配置されている。磁気センサ装置101では、磁石10に対するヨーク20の対向面であるヨーク20の下面から搬送部18Sまでの間隔G2は、媒体搬送部18Sの間隙G1より狭い。ここで、間隔G2は、外部ホルダー18Eのヨーク20の下面を覆っている部分の厚みと等しい。
【0026】
図2(A)は、磁気センサ100の斜視図である。
図2(B)は、磁気センサ100とヨーク20との位置関係を示す、磁気センサ装置101の透視斜視図である。
図2(B)では、外部ホルダー18Eを破線で示している。
図2(C)は、磁気センサ装置101の斜視図である。
図2(D)は、媒体16の搬送構造を示す図である。
【0027】
図2(A),(B)に示すように、磁気センサ100およびヨーク20は長尺状である。媒体16は例えば紙幣であり、
図2(D)に示すように、上下のローラー40間に挟持されつつ搬送される。
【0028】
図3は、磁気センサ100の部分切欠斜視図である。
図3では、カバー19の一部が切り欠かれた状態を示している。
図3に示すように、内部ホルダー18Cは、内部ホルダー18Cの上面に、内部ホルダー18Cの長手方向に沿って直線状に設けられた複数の凹部を有する。各凹部には、磁気抵抗素子30(磁気抵抗素子30a,30b,30c,30d・・・)が収納されている。また、内部ホルダー18Cは、内部ホルダー18Cの下面に、内部ホルダー18Cの長手方向に沿って直線状に設けられた複数の凹部を有する。各凹部には、磁石10が収納されている。
【0029】
内部ホルダー18Cの下部には、複数の磁気抵抗素子30a,30b,30c,30d・・・に電気的に接続された端子ピンが引き出されている。
【0030】
図4(A)は、磁気抵抗素子30の平面図である。但し、表面の絶縁保護膜を被覆する前の状態である。
図4(B)は、磁気センサ100の回路図である。
図4(C)は、媒体16が搬送された際の磁気センサ100の出力電圧の波形図である。
図4(A)に示すように、磁気抵抗素子30は、入力端子Vinと、出力端子Voutと、接地端子GNDと、磁気抵抗部のパターン形状の異なる2種の素子部MR1,MR2を備えている。
図4(B)に示すように、磁気抵抗素子30は、素子MR1,MR2による抵抗分圧回路を構成している。
図4(A)に示すように、媒体16の磁気パターン16Mが磁気抵抗素子30の感磁部上を通過すると、出力端子Voutの電圧(抵抗分圧回路の出力電圧)は
図4(C)に示すように山型に変化する。
【0031】
図5(A)は、素子MR1の構成を示す平面図である。
図5(A)に示すように、素子MR1は、磁気抵抗部31とショートバー32とを有する。ここで、磁気抵抗部31およびショートバー32のピッチをL、幅をWで表すと、W/Lに対する素子MR1の抵抗値の変化比RB/R0、すなわち素子MR1の感度は
図5(B)のような特性を示す。ここで、抵抗値RBは磁石10による磁界を印加した状態での値、抵抗値R0は磁石10による磁界を印加しない状態での値である。磁気センサ100では、素子MR2はW/Lが小さくなるので素子感度は低くなるため、
図4(A)に示した構成の磁気抵抗素子30を用い、
図4(B)に示した回路構成とし、媒体16の磁気パターン16Mが磁気抵抗素子30の感磁部上を通過する際に、
図4(C)に示したような出力が得られる。
【0032】
ここで、
図6(A)〜
図6(C)に示すような比較例に係る磁気センサを用意する。比較例に係る磁気センサは、
図6(A)に平面図で示す磁気抵抗素子などにより構成される。比較例に係る磁気センサは、磁気抵抗素子の構成以外は、本実施形態の磁気センサ100と同じ構成である。
図6(B)は、比較例に係る磁気センサの回路図である。
図6(C)は、媒体16が搬送された際の、比較例に係る磁気センサの出力電圧の波形図である。
図6(A),(B)に示すように、この磁気抵抗素子は、所謂ACタイプの磁気抵抗素子であり、入力端子Vinと、出力端子Voutと、接地端子GNDと、磁気抵抗部のパターン形状が同じである2つの素子部MR1,MR2を備えており、素子MR1,MR2による抵抗分圧回路を構成している。媒体16の磁気パターン16Mがこの磁気抵抗素子の感磁部上を通過すると、出力端子Voutの電圧(抵抗分圧回路の出力電圧)は
図6(C)に示すように変化方向が逆の二つの山型に変化する。
【0033】
次に、本実施形態および比較例の磁気センサ装置の特性を比較するために、定量的な一つの具体例を示す。
【0034】
図7(A)は、ヨーク20の寸法を示す図である。
図7(B)は、磁気抵抗素子30とカバー19の各部の寸法および位置関係を示す図である。
図8(A)は、本実施形態の磁気センサ装置101において、磁界の強度分布を磁力線で表した図である。
図8(B)は、本実施形態の磁気センサ装置101と同様に磁気センサ100を備えるがヨーク20を備えていない、第1の比較例に係る磁気センサ装置において、磁界の強度分布を磁力線で表した図である。
図8(C)は、
図6に示す比較例に係る磁気センサと、本実施形態の磁気センサ装置101と同様にヨークとを備える、第2の比較例に係る磁気センサ装置において、磁界の強度分布を磁力線で表した図である。
【0035】
図8(A)から明らかなように、磁気センサ装置101では、磁気抵抗素子30とヨーク20との間隔は、磁気抵抗素子30と磁石10との間隔より広いが、ヨーク20の幅方向の寸法及び磁石10の幅方向の寸法を媒体16の搬送方向の寸法としたとき、ヨーク20の幅方向の寸法は磁石10の幅方向の寸法より大きいので、磁石10とヨーク20との間に媒体16の搬送方向の一定区間に亘って、且つ磁石10とヨーク20との間隙方向に均一な磁束密度の磁界が形成される。また、磁気センサ装置101では、磁石10に対するヨーク20の対向面であるヨーク20の下面から搬送部18Sまでの間隔G2は、搬送部18Sの間隙G1より狭い(
図1参照)ので、カバー19の表面から磁気パターン16MまでのGAPを確保しつつ、磁気抵抗素子30の感磁部とヨーク20との間隔を狭くできる。そのため、GAPの変動に対する搬送部18Sの磁束密度の変化は小さく抑えられる。
【0036】
図9(A)は、本実施形態の磁気センサ装置101において媒体16が搬送された際の、磁気センサ100の出力電圧の波形図である。
図9(B)は、第1の比較例に係る磁気センサ装置において媒体が搬送された際の、磁気センサの出力電圧の波形図である。
図9(C)は、第2の比較例に係る磁気センサ装置において媒体が搬送された際の、磁気センサの出力電圧の波形図である。
図9(A)〜(C)において、出力波形WP0は、カバー19の表面から媒体16の磁気パターン16MまでのGAP(
図1参照)が0のときの波形、出力波形WP1は、GAPが1mmのときの波形である。
【0037】
図9(A)と
図9(B)とを対比すると明らかなように、GAP=0のときもGAP=1mmのときも、本実施形態の磁気センサ装置101のようにヨーク20を設けることで磁気センサ100の出力電圧のピーク値が大きくなる。
【0038】
図10(A)、
図10(B)はGAPに対する磁気センサ100の出力電圧のピーク値の変化を示す図である。C0は、第1の比較例に係る磁気センサ装置の特性を示す。C1は、本実施形態の磁気センサ装置101において、カバー19の表面からヨーク20までの間隔G0(
図1参照)が3mmである場合の特性を示す。C2は、本実施形態の磁気センサ装置101において、G0が2mmである場合の特性を示す。C3は、本実施形態の磁気センサ装置101において、G0が1.1mmである場合の特性を示す。C4は、
図6に示す比較例に係る磁気センサを備えるがヨークを備えていない、第3の比較例に係る磁気センサ装置の特性を示す。C5は、第2の比較例に係る磁気センサ装置の特性を示す。
図10(A)の縦軸は出力電圧値、
図10(B)の縦軸はGAP=0を基準にした比率である。
【0040】
[磁石]
材料:フェライト磁石
寸法:5.5×4×5mm
磁気抵抗素子との間隔:0.5mm
素子の検知幅:0.5mm
素子とカバー表面までの間隔:0.4mm
[ヨーク]
材料:鉄(純鉄系軟磁性材料)
寸法:40×20×10mm
G0:1.1mm,2mm,3mm
図10(B)から明らかなように、本実施形態の磁気センサ装置101のようにヨーク20を設けることによって、GAPの変化に対する出力電圧のピーク値の変動は小さく抑えられることが分かる。また、
図6に示す比較例に係る磁気センサを備える磁気センサ装置では、ヨークを設けることによる改善効果があまりないことが分かる。これは、ACタイプの磁気抵抗素子が、磁石とヨークとの対向面の間での媒体の搬送方向の中央となる位置から媒体の搬送方向の前後にずれた位置に素子MR1,MR2が配置されていることに起因している。すなわち、この二つの素子MR1,MR2の位置での磁束密度は、GAPの変化に応じて大きく変動するからである。
【0041】
図11(A)は、磁気抵抗素子の磁束密度に対する抵抗値の特性を示す図である。
図11(B)は、磁石によって磁気抵抗素子に印加されるバイアス磁界と磁気センサの出力電圧との関係を示す図である。
【0042】
ここで、媒体上の磁気パターンの通過による抵抗の変化分をΔMR、磁気パターンの通過による磁束密度の変化分をΔBで表すと、ΔMR/ΔBが磁気抵抗素子の感度である。MR1が磁気パターンの通過で、抵抗がMR1+ΔMR1に変化したとすると、磁気センサの出力電圧は、
ΔVout=Vin*{(MR1+ΔMR1)/(MR1+MR2)−MR1/(MR1+MR2)}
=Vin*ΔMR1/(MR1+MR2)
だけ変化する。
図11(B)の縦軸はこの出力電圧変化ΔVoutである。
【0043】
図11(B)に表れているように、バイアス磁界の磁束密度の変化に対する出力電圧の変動にピークが生じる。このピークとなる磁束密度150[mT] よりバイアス磁界の磁束密度が低い範囲では(MR1+MR2)の増加分はΔMR1の増加分より小さく、高い範囲では(MR1+MR2)の増加分はΔMR1の増加分より大きい。
【0044】
図12は、媒体の違いによる、バイアス磁界の磁束密度の変化に対する出力電圧の磁気センサの特性を示している。
図12(A)は縦軸に出力電圧、
図12(B)は縦軸に出力電圧比をとっている。“S”は媒体が磁気スレッドである場合の特性、“K”は媒体が紙幣に用いられている磁気インクが印刷されてなる磁気パターンを備える場合の特性である。
図12(B)では、バイアス磁界が150[mT] であるときの出力電圧を基準として出力電圧比をとっている。
【0045】
このように、バイアス磁界による磁気センサの出力電圧の傾向は媒体によって異なる。
図12(A)に示すとおり、紙幣に用いられている磁気インクが印刷されてなる磁気パターンを備える媒体では100[mT] では十分な出力が得られない。また、
図12(B)に示すとおり、バイアス磁界の磁束密度は450[mT] を超えると、バイアス磁界の磁束密度が150[mT] (バイアス磁界の磁束密度の変化に対する磁気センサの出力電圧の変動がピークになる値)であるときの磁気センサの出力電圧を下回るので、バイアス磁界の磁束密度は150[mT] から450[mT] の範囲であることが好ましい。
【0046】
フェライト磁石では、最大でも100[mT] 程度の磁束密度しか得られないが、本実施形態の磁気センサ装置101のようにヨーク20を設けることで、磁気抵抗素子30の感磁部におけるバイアス磁界の磁束密度は150[mT] 以上となるので、磁石10としてフェライト磁石を用いても、ヨーク20を設けることで、バイアス磁界の磁束密度を150[mT] から450[mT] の範囲に定めることができる。そのため、ネオジムなどのレアアースを含む磁石のような高コストの磁石を用いる必要がなく、低コストなフェライト磁石を用いることができる。
【0047】
《第2の実施形態》
図13(A)は、本発明の第2の実施形態に係る磁気センサ装置102の主要部の断面図である。
図13(B)は、本実施形態に係る磁気センサ装置102のヨーク20を取り除いた状態を示す平面図である。本実施形態に係る磁気センサ装置102は、第1の実施形態の磁気センサ装置101と異なり、ホルダー18に磁石10、磁気抵抗素子30およびカバー19が設けられ、ヨーク20はホルダー18とは分離している。また、ヨーク20は磁石10と互いに吸着する方向に着磁されている。
【0048】
このように、ヨーク20は磁石10や磁気抵抗素子30とは分離されていてもよい。そのことにより、磁気センサ100の配置の自由度が高まる。また、ヨーク20は磁石10と互いに吸着する方向に着磁されていれば、磁石10とヨーク20との間に媒体16の搬送方向の広い範囲について、磁石10とヨーク20との間隙にこの間隙方向に均一な磁束密度の磁界が形成される。しかも、磁石10による磁荷とヨーク20による磁荷とが加算されて、磁石10とヨーク20との間隙の磁束密度が高まる。その分、磁石10とヨーク20との間隙を大きくできるので、媒体16を搬送する構造の設計上の自由度が高まり、大量16の媒体を高速で搬送することも容易となる。