(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の吸放湿性重合体は塩型カルボキシル基を1〜7mmol/g、好ましくは3〜7mmol/g含有するものである。塩型のカルボキシル基は、吸湿性を発現させるための親水性の高い極性基であり、高い吸湿性能を得ようとする場合、できるだけ多くの該基を含有することが好ましい。しかし、後述する水酸基、架橋構造との割合において適当なバランスをとることが必要で、特に該極性基量が7mmol/gを超える場合、導入できる架橋構造の割合が少なくなりすぎ、高吸水性樹脂に近いものとなり、粘着性がでる、水膨潤による体積変化が激しくなるなどといった問題が生じてくる。
【0011】
一方、該極性基量が少なくなるほど、吸湿性能は低下してゆき、特に1mmol/gより少ない場合では、十分な吸湿性能を得られない場合が多い。したがって、該極性基量は1mmol/g以上とし、3mmol/g以上とすることが吸湿性能上より好ましい。
【0012】
かかる塩型カルボキシル基の塩の型、すなわちカウンターカチオンとしては、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属、Be、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属、Cu、Zn、Al、Mn、Ag、Fe、Co、Ni等のその他の金属、NH4、アミン等が挙げられる。なお、Hをカウンターカチオンとするカルボキシル基がこれらの塩型カルボキシル基と共存することは本発明を何ら逸脱するものではない。また、この場合の全カルボキシル基における塩型カルボキシル基との比率は特に限定はないが、吸放湿速度という観点より塩型カルボキシル基の割合が高いほうがよい。
【0013】
また、本発明の吸放湿性重合体は水酸基を0.01〜10mmol/g、より好ましくは0.01〜9mmol/g、さらに好ましくは0.05〜1mmol/g含有するものである。本発明の最大のポイントである優れた耐水性が発現する鍵は、吸放湿性重合体が水酸基を有している点である。塩型カルボキシル基を持った吸放湿性能を有する重合体はこれまでの技術の中においても見られたが、水酸基を有しているものの報告は無く、ましてイソシアネート基等の求電子官能基との反応による共有結合の形成ができる吸放湿性重合体は知られていなかった。また、水酸基を導入した吸放湿性重合体をウレタン樹脂等に添加して得られた成形体等の耐水性が著しく向上することはこれまで知られていなかった。
【0014】
本発明者は、水酸基を吸放湿性重合体に導入することで、かかる重合体をウレタン樹脂など、イソシアネート基等の求電子官能基を有する構成成分からなる樹脂等に添加した場合、優れた耐水性を有する樹脂成形体が得られることを見出した。これには樹脂の構成成分等に含まれるイソシアネート基等の求電子官能基との反応による共有結合の形成、さらには水酸基そのものによる水素結合の形成やイオン結合の形成が寄与していると考えられる。耐水性の発現メカニズムはあきらかで無いが、本発明の重合体と樹脂等の界面の親和性が、これらの結合により向上するためと考えられる。すなわち、界面の親和性が高まることにより、吸水乾燥に伴う体積変化があっても界面が解離せず、白化や変形が抑制されると考えられる。また、このメカニズムによれば、本発明の吸放湿性重合体を樹脂、バインダー、マトリックス等に配合した際にはその強度、耐磨耗性等の向上も期待できる。
【0015】
水酸基は上述したとおり、耐水性を発現させる官能基であるので、高い耐水性を得ようとする場合、できるだけ多くの該基を含有することが好ましい。しかし、前述したように吸湿性能を発現させるための塩型カルボキシル基、架橋構造との割合において適当なバランスをとることが必要で、具体的には水酸基量が10mmol/gを超える場合、導入できる塩型カルボキシル基、架橋構造の割合が少なくなりすぎ、吸湿性能が低下したり、水膨潤が激しくなったりするなどの問題が生じてくる。一方、水酸基量が0.01mmol/gより少ない場合は耐水性を十分に得ることができなくなる。また、実用上は、水酸基量は1mmol/g以下というわずかな量でも耐水性の効果が十分に得られる場合が多く、この場合、塩型カルボキシル基量の選択幅が広くなるので、より好ましい。
【0016】
また、本発明の吸放湿性重合体は架橋構造を有するものである。本発明の吸放湿性重合体のように水との親和性の高い塩型カルボキシル基や水酸基を多量に含有する重合体は、水に接することで、粘着性を帯びたり、水に激しく膨潤したり、場合によっては水に溶解したりする可能性があり、このような重合体を樹脂等に配合した場合、特性に悪影響を与える場合がある。本発明の吸放湿性重合体においては架橋構造を導入することにより、かかる不具合が起こらないようにしている。
【0017】
かかる本発明に採用する架橋構造は、吸湿、放湿に伴い物理的、化学的に変性をうけない限りにおいては特に限定はなく、共有結合による架橋、イオン架橋、ポリマー分子間相互作用または結晶構造による架橋等いずれの構造のものでもよい。中でも、強固で安定という観点から共有結合による架橋構造がもっとも好ましい。
【0018】
また、本発明の吸放湿性重合体は、ビニル系重合体からなるものである。ビニル系重合体は主鎖が炭素−炭素結合からなっているため、主鎖に炭素−窒素結合を含むポリアミド系重合体や炭素−酸素結合を有するポリエステル系重合体などに比べて、化学的な影響を受けにくく、塩型カルボキシル基、水酸基を導入するに当たり、加水分解処理や中和処理などを行いやすいという利点を有している。
【0019】
本発明における吸放湿性重合体自体の形態としては制限されるものでないが、エマルジョンや粉体等の粒子状の場合、各種の用途に、各種の素材の添加剤として使用することができるため、その適応範囲が広く有用である。かかる粒子状の場合、粒子の大きさとしては、用途に応じて適宜選定することができ、特に限定はないが、平均粒子径が好ましくは1000μm以下、より好ましくは100μm以下の場合、各種添加剤としての適応範囲が広がるため実用的価値の大きなものとなる。また、下限についても、特に限定はない。エマルジョン状のものであれば、製造のしやすさの観点から好ましくは0.03μm以上、より好ましくは0.05μm以上である。また、懸濁重合で製造する場合は、小さくても1〜5μm程度の平均粒子径となる。
【0020】
本発明の吸放湿性重合体の吸湿性能に関しては、20℃、相対湿度65%の雰囲気下における飽和吸湿率が好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上であることが望ましい。飽和吸湿率が10重量%未満であれば一般的な吸湿素材、例えばレーヨン、羊毛にも劣るため、実用上の価値が半減してしまう。一方、上限については特に制限されないが、飽和吸湿率が高くなるほど、より大きく水膨潤しうる特性を有することになるので、かかる観点から20℃、相対湿度65%の飽和吸湿率は好ましくは70重量%以下、より好ましくは65重量%以下にすることが望ましい。
【0021】
次に、上述してきた本発明の吸放湿性重合体の製造方法について述べる。本発明の吸放湿性重合体は塩型カルボキシル基、水酸基および架橋構造を必須構造とするビニル系重合体であり、これらの必須構造を導入する方法としては、大きく分けて重合反応時に導入する方法と重合反応後に導入する方法がある。以下に各構造別に導入方法を詳述する。これらの導入方法はそれぞれの構造を逐次導入するように実施してもよいが、実際にはこれら各構造別の導入方法を適宜組み合わせ、並行して各構造が導入されるように製造を行うのがより望ましい。
【0022】
まず、ビニル系重合体への塩型カルボキシル基の導入の方法としては、特に限定は無く、例えば、塩型カルボキシル基を有する単量体を共重合成分に用いて重合体を得る方法、カルボキシル基を有する単量体を共重合成分に用いて重合体を得た後に塩型に変える方法、化学変性によりカルボキシル基に変換可能な構造を有する単量体を共重合成分に用いて得られた重合体に、化学変性によりカルボキシル基を導入し、必要に応じ塩型に変える方法、あるいはグラフト重合により前記3法を実施する方法等が挙げられる。
【0023】
塩型カルボキシル基を有する単量体を共重合成分に用いて重合体を得る方法としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルプロピオン酸等のカルボキシル基を含有するビニル及び/又はビニリデン系の塩型単量体を共重合成分に用いる方法が挙げられる。
【0024】
また、カルボキシル基を有する単量体を共重合成分に用いて重合体を得た後に塩型に変える方法としては、例えば、先に述べたようなカルボキシル基を含有するビニル及び/又はビニリデン系単量体を共重合成分として得られた共重合体を塩型に変える方法である。カルボキシル基を塩型にする方法としても特に限定はなく、得られた共重合体にLi、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属イオン、Be、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属イオン、Cu、Zn、Al、Mn、Ag、Fe、Co、Ni等の他の金属イオン、NH4、アミン等の有機の陽イオン等を大量に含む溶液を作用させてイオン交換を行う等の方法により行うことができる。
【0025】
化学変性によりカルボキシル基を導入する方法としては、例えば、加水分解処理すればカルボキシル基を得られる構造を有する単量体を共重合成分に用いて得られた重合体に、加水分解処理を施してカルボキシル基を導入し、塩型でない場合は上記のような方法で塩型にする方法が挙げられる。加水分解処理すればカルボキシル基を得られる構造を有する単量体としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基を有する単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルプロピオン酸等の無水物およびその誘導体であり、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ノルマルプロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ノルマルブチル、(メタ)アクリル酸ノルマルオクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート等のエステル化合物、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、モノエチル(メタ)アクリルアミド、ノルマル−t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド等が例示できる。化学変性によりカルボキシル基を導入する他の方法として、アルケン、ハロゲン化アルキル、アルコール、アルデヒド等の酸化等も例示できる。
【0026】
次に、ビニル系重合体への水酸基の導入の方法としては、特に限定は無く、例えば、水酸基を持つ単量体を共重合成分に用いて重合体を得る方法、化学変性により水酸基に変換可能な構造を有する単量体を共重合成分に用いて得られた重合体に、化学変性により水酸基を導入する方法、あるいはグラフト重合により前記2法を実施する方法等が挙げられる。
【0027】
水酸基を持つ単量体を共重合成分に用いて重合体を得る方法としては、例えば、4−ヒドロキシルブチルアクリレート、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基を含有するビニル及び/又はビニリデン系の単量体を共重合成分に用いる方法が挙げられる。
【0028】
化学変性により水酸基を導入する方法としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、t−ブタン酸ビニル、ビニロキシトリメチルシラン等を共重合成分に用いて得られた共重合体に加水分解処理を施して水酸基を導入する方法、エチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、t−ペンチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル2,2,2−トリフルオロエチルビニルエーテル等を共重合成分に用いて得られた共重合体にハロゲン化水素やルイス酸による処理を施して水酸基を導入する方法が挙げられる。
【0029】
また、ビニル系重合体への架橋構造の導入の方法としては、特に限定はなく、重合段階での架橋性ビニル系単量体を共重合成分として加えて重合する方法、あるいは重合後での反応性化合物による後架橋や物理的なエネルギーによる架橋構造の導入など一般に用いられる方法によることができる。特に、重合段階で架橋性単量体を用いる方法、および重合体を得た後の反応性化合物を用いた後架橋による方法では、共有結合による強固な架橋を導入することが可能であり好ましい。
【0030】
架橋性ビニル系単量体を用いる方法において用いられる単量体としては、複数のビニル基を有する単量体を用いることができる。例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン等を挙げることができる。
【0031】
なお、架橋性ビニル系単量体の選定にあたっては、上述した塩型カルボキシル基や水酸基の導入方法を勘案して選択することが望ましい。例えば、カルボキシル基を含有するビニル系単量体を用いる場合にはかかる単量体による酸性雰囲気に耐えうるものを選択することが望ましく、また、加水分解反応により水酸基やカルボキシル基を導入する場合には加水分解しないものを選択することが望ましい。このような酸性雰囲気や加水分解に耐えうるという観点においては、上述した例示の中でもジビニルベンゼンによる架橋構造が好適である。
【0032】
また、反応性化合物を用いた後架橋による架橋構造の導入方法としても特に限定はなく、例えば、ニトリル基を有するビニルモノマーから得られるニトリル系重合体の含有するニトリル基に対して、ヒドラジン系化合物またはホルムアルデヒドを反応させ、架橋構造を導入する方法等を挙げることができる。なかでもヒドラジン系化合物を用いる方法は酸、アルカリに対して安定で、しかも得られる架橋構造自体が親水性であるので吸湿性の向上に寄与できるという点で望ましい。なお、ニトリル基とヒドラジン系化合物の反応により得られる架橋構造に関しては、その詳細は同定されていないが、トリアゾール環あるいはテトラゾール環構造に基づくものと推定されている。
【0033】
本発明の吸放湿性重合体の製造において塩型カルボキシル基、水酸基および架橋構造を導入する方法は以上のとおりであるが、言うまでもなく、重合にあたって、これらの必須構造の導入に関係しないビニル系単量体を適宜選択して共重合成分として用いることも可能である。
【0034】
このような共重合成分として選択可能なビニル系単量体としては特に限定はなく、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物;塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のビニリデン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびこれらの塩類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸エステル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メチルイソブテニルケトン、メチルイソプロペニルケトン等の不飽和ケトン類;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ジクロロ酢酸ビニル、トリクロロ酢酸ビニル、モノフルオロ酢酸ビニル、ジフルオロ酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリルアミドおよびそのアルキル置換体;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピルメタクリレート、ビニルステアリン酸、ビニルスルフィン酸等のビニル基含有酸化合物、またはその塩、その無水物、その誘導体等;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレンおよびそのアルキルまたはハロゲン置換体;アリルアルコールおよびそのエステルまたはエーテル類;N−ビニルフタルイミド、N−ビニルサクシノイミド等のビニルイミド類;ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、ビニルピリジン類等の塩基性ビニル化合物;アクロレイン、メタクリロレイン等の不飽和アルデヒド類などを例示することができる。
【0035】
上述してきた本発明に採用する吸放湿性重合体の好ましい例としては、ジビニルベンゼンによる架橋構造および塩型カルボキシル基及び水酸基を有するビニル系重合体粒子が挙げられる。この場合、ジビニルベンゼンの使用量としては、特に限定はなく、目的の機能が果たせるように設定すればよいが、通常使用する全単量体に対して、3〜40重量%となるようにするのが好ましい。3重量%以下では得られた粒子の水膨潤が激しくなり、著しく粘着性がでることがある。一方、40重量%以上では塩型カルボキシル基量が少なくなるため、十分な吸湿性能が得られないことがある。
【0036】
かかるビニル系重合体粒子の製造方法としては、上述した方法を採用すればよいが、例えば、ビニル系重合体にジビニルベンゼンおよびカルボキシル基及び水酸基を有するビニル系単量体をグラフト重合させる方法や、ジビニルベンゼン、カルボキシル基を有するビニル系単量体及び水酸基を有するビニル系単量体を共重合させる方法などが挙げられるが、製造しやすく、架橋密度、塩型カルボキシル基量および水酸基量を容易に制御できるという点から、ジビニルベンゼン、加水分解により塩型カルボキシル基を生成しうる構造を有するビニル系単量体、および加水分解により水酸基を生成しうる構造を有するビニル系単量体、さらに必要に応じその他のビニル系単量体を共重合させて得られた共重合体を加水分解する方法が利用しやすい。
【0037】
以上に説明してきた本発明の吸放湿性重合体は、各種素材の吸放湿性能や透湿性能を高める添加剤として有用なものである。ここで、本発明の吸放湿性重合体を適用できる素材としては、特に制限されないが、例えば、繊維、紙、不織布、糸、織物、編み物、皮革、塗膜、フィルム、シート、発泡体、ゴムなどを例示することができる。このうち、紙、不織布、糸、織物、編み物、発泡体などの素材に適用した場合、気体との接触面積が大きく、かつ形態保持性が優れていることより、吸放湿量や透湿量の多い素材を得ることができる。
【0038】
これらの素材に本発明の吸放湿性重合体を含有させる方法としては、本発明の吸放湿性重合体を使用する限りにおいては特に限定はなく、素材中に練り込む、素材に直接固着させる、あるいは、バインダー樹脂によって素材に固着させる方法などを採ることができる。また、本発明の吸放湿性重合体が繊維状の形態を有する場合、繊維状の吸放湿性重合体を構成繊維に用いて紙や不織布などを得る方法なども採用することができる。
【0039】
素材中に練り込む方法については、主に、繊維、塗膜、フィルム、シート、発泡体、ゴムなどの樹脂成形体に適用することができる。具体的な方法としては、本発明の吸放湿性重合体を混合した樹脂を用いた、射出成形、押出成形、溶融紡糸、溶液紡糸、塗工などを挙げることができる。
【0040】
また、かかる方法を適用できる樹脂成形体を構成する樹脂の種類としては、特に限定はなく、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミドなどの熱硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、環状ポリオレフィンなどのエンジニアリングプラスチックなどの合成樹脂や天然樹脂などを例示することができる。
【0041】
また、樹脂成形体を構成する樹脂としては水蒸気の透過性が高いものが望ましい。樹脂成形体中においては、本発明の吸放湿性重合体と水蒸気との接触を制限されるため、本発明の吸放湿性重合体が本来有する吸放湿性能を十分に発揮できなくなる場合がある。しかし、樹脂として水蒸気の透過性が高いものを採用することにより、本発明の吸放湿性重合体が水蒸気と接触しやすくなり、吸放湿性能がより発揮されやすくすることが可能である。また、この場合、樹脂が本来有する水蒸気透過性に、本発明の吸放湿性重合体の吸放湿性が加わることで、より優れた透湿性能を有する樹脂成形体とすることができる。
【0042】
加えて、樹脂の構成成分が、水酸基と反応して共有結合を形成したり、水酸基と水素結合またはイオン結合を形成したりできる官能基や構造を有するものである場合、上述したように、通常、吸放湿性重合体の添加によって低下してしまう耐水性についても、低下を抑制することが可能となるので望ましい。かかる効果を得られる官能基や構造の具体的な例としては、イソシアネート基、エステル基、アミド基、ハロゲン基、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、チオール基等が挙げられる。このうち、イソシアネート基、エステル基、アミド基、ハロゲン基、エポキシ基等の求電子性を有する官能基は、水酸基と反応して共有結合を形成し、樹脂成形体と強固に結びつき、樹脂成形体との親和性が高まるため、耐水性の低下を抑制する効果も大きくなる。
【0043】
以上に説明した、水蒸気透過性と耐水性の低下抑制の観点から、好適な樹脂としては、ウレタン結合などの親水性の構造を多く形成し、イソシアネート基を有する構成成分を含むウレタン樹脂を挙げることができる。
【0044】
次に、素材に直接固着させる方法については、素材からの吸放湿性重合体の脱落を抑制する観点などから、当該素材表面に、水酸基と反応して共有結合を形成できる官能基や水酸基と水素結合またはイオン結合を形成できる官能基を有する素材に好適に適用できる。このうち、共有結合を形成できるイソシアネート基、エステル基、アミド基、ハロゲン基、エポキシ基等の求電子性を有する官能基を有する素材が適しており、イソシアネート基を有する素材が特に適している。
【0045】
具体的な方法としては、紙、不織布、糸、織物、編み物、シート、発泡体等に粒子状の吸放湿性重合体のスラリーやエマルジョンを含浸、あるいは塗布する方法が挙げられる。また、紙の場合には、その製造工程において、粒子状あるいは繊維状の吸放湿性重合体を漉き込む方法や、不織布の場合には、その製造工程において添加し、不織布を構成する熱接着性繊維などに固着させる方法も採用しうる。
【0046】
また、バインダー樹脂によって本発明の吸放湿性重合体を素材に固着させる方法については、上記に例示した素材を含む様々な素材に対して適用することができる。ここで、使用するバインダー樹脂としては、素材に対応して適宜選定すればよく、上述した熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を例示することができる。また、上述した樹脂成形体の場合と同様に、バインダー樹脂として用いる樹脂については水蒸気透過性が高くなるものが好ましい。さらに、耐水性の低下を抑制する観点や脱落をより抑制する観点などからは、水酸基と反応して共有結合を形成できる官能基や水酸基と水素結合またはイオン結合を形成できる官能基を有するものが好ましく、このうち、共有結合を形成できるイソシアネート基、エステル基、アミド基、ハロゲン基、エポキシ基等の求電子性を有する官能基を有するバインダー樹脂が好適である。そして、これらの好ましい態様をいずれも満たすバインダー樹脂としてウレタン樹脂を好適に用いることができる。
【0047】
具体的な方法としては、本発明の吸放湿性重合体を含有するバインダー樹脂溶液を、繊維、紙、不織布、糸、織物、編み物、皮革、塗膜、フィルム、シート、発泡体、ゴムなどの素材に塗布あるいはスプレーする方法や、かかるバインダー樹脂溶液にこれらの素材を浸漬する方法などを挙げることができる。
【0048】
また、本発明の吸放湿性重合体の素材への添加量としては、求められる吸放湿性能に応じて適宜設定すればよいが、通常の場合、素材に対して1〜80重量%の範囲内で設定することが適当である。80重量%を超えると吸放湿性重合体が脱落しやすくなったり、水膨潤による変形が大きくなったりする場合が多くなり、特に樹脂成形体に練りこむ場合においては成形することが困難となってくる。また、1重量%に満たない場合には吸放湿性能の向上効果が顕在化しない場合が多くなる。
【0049】
また、本発明の吸放湿性重合体は素材との間に多数の化学的結合を形成して、結果的に素材成分同士を架橋した状態とするため、素材の力学的強度を向上させるような効果も期待できる。
【実施例】
【0050】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び百分率は、断りのない限り重量基準で示す。まず、各特性の評価方法について説明する。
【0051】
<飽和吸湿率>
試料粒子約1.0gを熱風乾燥機で105℃、16時間乾燥して重量を測定する(Wds[g])、次に試料粒子を温度20℃で相対湿度65%RHに調整された恒温恒湿器に24時間放置し、吸湿した試料粒子の重量を測定する(Wws[g])、以上の結果をもとに、次式により算出した。
飽和吸湿率[%]={(Wws−Wds)/Wds}×100
【0052】
<平均粒子径>
粒子の平均粒子径は、島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置「SALD2000」を使用し、水を分散媒として測定した結果を、体積基準で表し、そのメディアン径をもって平均粒子径とした。
【0053】
<水酸基量>
実施例6以外の水酸基量は、まず重合後加水分解前のサンプルの元素分析を行い、酸素原子重量比及び窒素含有量を測定することで、酢酸ビニルユニット含有量(A[mmol/g])及びアクリロニトリルユニット含有量(B[mmol/g])を求めた。その後、加水分解後のサンプルの赤外分光測定により、完全に酢酸ビニルユニット及びアクリロニトリルユニットが加水分解されていることを確認し、水酸基(ビニルアルコールユニット)と塩型カルボキシル基(アクリル酸ナトリウムユニット)に完全に変換されたものとして重量変化を求め、これらの数値より算出したものである。
原料ポリマー1gに対する酢酸ビニルユニット分の重量変化[g]
= 0.044A−0.086A = −0.042A
原料ポリマー1gに対するアクリロニトリルユニット分の重量変化[g]
= 0.094B−0.053B = 0.041B}
水酸基量[mmol/g] = A/(1−0.042A+0.041B)
【0054】
<塩型カルボキシル基量>
塩型カルボキシル基量は、全カルボキシル基量からH型カルボキシル基量を差し引くことによって求めた。まず、十分乾燥した試料1gを精秤し(X[g])、これに200mlの水を加えた後、50℃に加温しながら1N塩酸水溶液を添加してpH2とすることで、試料に含まれるカルボキシル基を全てH型カルボキシル基とし、次いで0.1N水酸化ナトリウム水溶液で常法に従って滴定曲線を求めた。該滴定曲線からH型カルボキシル基に消費された水酸化ナトリウム水溶液消費量(Y[ml])を求め、次式によって試料中に含まれる全カルボキシル基量を算出した。
全カルボキシル基量[mmol/g]=0.1Y/X
別途、上述の全カルボキシル基量測定操作中の1N塩酸水溶液添加によるpH2への調整をすることなく同様に滴定曲線を求め、試料中に含まれるH型カルボキシル基量を求めた。これらの結果から次式により塩型カルボキシル基量を算出した。
塩型カルボキシル基量[mmol/g]=(全カルボキシル基量)−(H型カルボキシル基量)
【0055】
<耐水性>
耐水性評価用サンプルは、ポリイソシアネート(バーノックDN−980K、DIC社製)6.5g、試料粒子5g、ポリオール(アクリディックA−801−P、DIC社製)23.5gを混合しPETフィルムにバーコーター#50で塗工した後に、130℃で30分乾燥させたものを用いた。耐水性評価は上記サンプルを水に10分間浸漬させた後に表面の水分を拭き取り、塗工部分に白化が見られるかどうかを目視で判断し、白化が見られた場合を×、白化が見られなかった場合を○とした。
【0056】
<吸湿性発現率>
吸湿性発現率は、上記の飽和吸湿率(A[%])、上記の耐水性評価サンプルにおける試料粒子の含有量(B[g/m
2])及び吸湿量(C[g/m
2])、耐水性評価サンプルと試料粒子を添加しないこと以外は同様にして塗工して得られたブランクサンプルの吸湿量(D[g/m
2])を測定し、次式により算出したものである。なお、吸湿量CおよびDについては、上記の飽和吸湿率の項と同様の方法で測定した。
吸湿性発現率(%)=[(C−D)/B×100]/A×100
【0057】
<透湿性>
試料粒子40部およびウレタン樹脂(スーパーフレックス(登録商標)E−4800、第一工業製薬社製)100部を混合し、ナイロンメッシュ(200メッシュ)上にガラス棒を用いて50μmの厚さで塗工し、室温で乾燥する。得られた塗工布について、JIS L 1099(A−1法)に基づき透湿度を測定する。
【0058】
[実施例1]
アクリロニトリル74部、酢酸ビニル1部、ジビニルベンゼン25部からなるモノマー混合液を、0.5部の過硫酸アンモニウムを含む水溶液300部に添加し、次いでピロ亜硫酸ナトリウム0.6部を加え、攪拌機つきの重合槽で65℃、2時間重合する。得られたポリマーをろ過して水洗する。次に該ポリマー100部を10%水酸化ナトリウム水溶液567部に添加し、95℃で48時間加水分解反応を行った。次いで、得られたポリマーをろ過、水洗して吸湿性微粒子1を得た。該粒子の評価結果は表1のとおりであり、耐水性は良好であった。また、耐水性評価で用いたサンプルについて吸湿性発現率を測定したところ90.7%以上であった。
【0059】
また、吸湿性微粒子1を粉砕して平均粒子径を5μmにしたものを試料に用いて、透湿度を上記方法にて測定したところ、91.0g/m
2・hであった。これは、吸湿性微粒子1を添加しないこと以外は同様にして測定した透湿度45.8g/m
2・hよりも高いものであり、本発明の吸放湿性重合体の透湿性の向上効果を示すものである。
【0060】
[比較例1]
実施例1において、モノマー混合液として、アクリロニトリル75部、ジビニルベンゼン25部からなるものを用いた以外は実施例1と同様に操作して吸湿性微粒子2を得た。該粒子の評価結果は表1のとおりであり、水に浸漬することにより白化した。
【0061】
[実施例2]
実施例1において、モノマー混合液として、アクリロニトリル64部、酢酸ビニル1部、ジビニルベンゼン35部からなるものを用いた以外は実施例1と同様に操作して吸湿性微粒子3を得た。該粒子の評価結果は表1のとおりであり、耐水性は良好であった。
【0062】
[比較例2]
実施例1において、モノマー混合液して、アクリロニトリル65部、ジビニルベンゼン35部からなるものを用いた以外は実施例1と同様に操作して吸湿性微粒子4を得た。該粒子の評価結果は表1のとおりであり、水に浸漬することにより白化した。
【0063】
[実施例3]
実施例1において、モノマー混合液として、アクリロニトリル56.7部、酢酸ビニル8.3部、ジビニルベンゼン35部からなるものを用いた以外は実施例1と同様に操作して吸湿性微粒子5を得た。該粒子の評価結果は表1のとおりであり、耐水性は良好であった。
【0064】
[
参考例1]
実施例1において、モノマー混合液として、アクリロニトリル5部、酢酸ビニル60部、ジビニルベンゼン35部からなるものを用いた以外は実施例1と同様に操作して吸湿性微粒子6を得た。該粒子の評価結果は表1のとおりであり、耐水性は良好であった。
【0065】
[
参考例2]
実施例1において、モノマー混合液として、アクリロニトリル10部、酢酸ビニル65部、ジビニルベンゼン25部からなるものを用いた以外は実施例1と同様に操作して吸湿性微粒子7を得た。該粒子の評価結果は表1のとおりであり、耐水性は良好であった。
【0066】
[
実施例4]
メタクリル酸10部、4−ヒドロキシルブチルアクリレート3部、アクリロニトリル62部、ジビニルベンゼン25部からなるモノマー混合液を、0.5部の過硫酸アンモニウムを含む水溶液300部に添加し、次いでピロ亜硫酸ナトリウム0.6部を加え、攪拌機つきの重合槽で65℃、2時間重合する。得られたポリマーをろ過して水洗する。洗浄液をガスクロマトグラフィーで分析することで、ポリマー中のメタクリル酸、4−ヒドロキシルブチルアクリレートの導入量を求めた。次にポリマー100部を2%炭酸ナトリウム水溶液567部に添加し、30℃で4時間カルボキシル基の中和反応を行った。次いで、得られたポリマーをろ過、水洗して吸湿性微粒子8を得た。該粒子の評価結果は表1のとおりであり、耐水性は良好であった。なお、このときの水酸基量に関しては、上記ガスクロマトグラフィー分析で求めたメタクリル酸ユニット(A[mmol/g])の理論的な中和反応による重量変化と、上記ガスクロマトグラフィー分析で求めた4−ヒドロキシルブチルアクリレートユニットの導入量(B[mmol/g])から算出したものである。
原料ポリマー1gあたりのメタクリル酸ユニット分の重量変化[g]
= 0.108A−0.086A = 0.022A
水酸基量[mmol/g] = B/(1+0.022A)
【0067】
【表1】
【0068】
[実施例7]
5gの吸湿性微粒子1、ビスフェノールAジグリシジルエーテル27.8g、ジシアンジアミド2.2g、ジメチル尿素0.8gを混合しPETフィルムにバーコーターで塗工した後に、120℃で30分乾燥させることによって、エポキシ樹脂に吸湿性微粒子1に添加したサンプルを作成する。かかる測定サンプルを用い、上記と同様にして耐水性と吸湿性発現率を評価した。該サンプルは水に浸漬した後も白化せず、良好な耐水性を示した。また、吸湿性発現率も85.1%と良好であった。
【0069】
[参考例1]
またp−シアノイソシアン酸フェニル(和光純薬製)1部を50部のメチルエチルケトンに溶解し、吸湿性微粒子1を2部加えて80℃で12時間攪拌させた後、粒子をろ過、アセトンで3回洗浄し、50℃で12時間乾燥させた微粒子9を得た。該粒子の赤外吸収スペクトルを
図2、吸湿性微粒子1の赤外吸収スペクトルを
図1に示す。
図2には
図1に見られないシアノ基に由来する2241cm
−1、ウレタン結合を示す1739cm
−1に吸収が確認される。すなわち、吸湿性微粒子1とp−シアノイソシアン酸フェニルを反応させて得られた微粒子9にはウレタン結合とシアノ基が導入されており、このことより、吸湿性微粒子1の水酸基がイソシアネート基と反応して共有結合が形成されることが理解される。
【0070】
[参考例2]
参考例1において、吸湿性微粒子1の代わりに吸湿性微粒子2を用いたこと以外は同様にして操作を行ない、微粒子10を得た。該粒子の赤外吸収スペクトルを
図4、吸湿性微粒子2の赤外吸収スペクトルを
図3に示す。
図3、
図4はほぼ同様のスペクトルであり、水酸基を持たない吸湿性微粒子2はイソシアネート基と反応しないことが理解される。