(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明支持基板上に陽極、有機化合物層および陰極を積層して、その積層体を透明封止部材により封止した複数の有機ELパネルを、前後方向に沿って階段状に積層して有機ELパネル群とし、複数の前記有機ELパネル群を左右方向に沿ってさらに階段状に積層した発光パネルであって、
前記有機ELパネルは、前記積層体の陽極の一部および陰極の一部が、前記透明支持基板の左右方向の一方の側において前記透明封止部材から露出して形成された給電部を有し、
前記各有機ELパネルの給電部は、左右方向の一方の側において一致した状態で前後方向に沿って配列され、かつ、これに隣り合う有機ELパネル群の前記各有機ELパネルの前記積層体と重複する位置に配置されていることを特徴とする発光パネル。
複数の有機ELパネルを前後方向に沿って階段状に積層して有機ELパネル群とし、複数の前記有機ELパネル群を左右方向に沿ってさらに階段状に積層した発光パネルの製造方法であって、
透明支持基板上に陽極、有機化合物層および陰極を積層し、その積層体の陽極の一部および陰極の一部を露出させた状態で透明封止部材により封止し、前記有機ELパネルを製造する工程と、
前記有機ELパネルの前記陽極の露出部および前記陰極の露出部を給電部として、複数の前記各有機ELパネルの給電部を左右方向の一方の側において一致させた状態で、複数の前記有機ELパネルを前後方向と左右方向に沿ってマトリクス状に配置する工程と、
を備えることを特徴とする発光パネルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0010】
《発光パネルの構成》
図1に示すように、発光パネル1は、複数の有機ELパネル群10,11を有している。
図1には、その一例として、2群の有機ELパネル群10,11で構成された発光パネル1を示している。
発光パネル1では、有機ELパネル群10の左右方向Aにおける左側と、有機ELパネル群11の左右方向Aにおける右側とが重複して、積層されている。
有機ELパネル群10,11は、接着剤・粘着剤を介して、接合されている。
接着剤・粘着剤としては、特に限定されるものではないが、発光パネル1の強度の点から、シリコン系接着剤が好適に用いられる。また、ガラスと屈折率の差が小さいものが好ましい。具体的には、屈折率差が0.3以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.05以下が最も好ましい。
【0011】
《有機ELパネルの構成》
図2A,Bに示すとおり、有機ELパネル20は、支持基板30上に、陽極31、有機化合物層32、陰極33が順次積層され、かかる積層体が封止部材34によって封止されている。
支持基板30の側面(切断面)は面取りをする必要はなく、切断されたままの状態、または透明度を損なわない処理がなされている。
支持基板30と封止部材34とは、透明部材により形成されている。
陽極31と有機化合物層32と陰極33とは互いに重複しており、その重複する部分が発光部35となっている。
支持基板30の左右方向Aにおける左側では、有機ELパネル20を外部電源(図示略)や有機ELパネル21と接続するため、陽極31と陰極33との一部が封止部材34から露出し、それぞれ給電部31a,33aとなっている。
有機ELパネル20は、支持基板30側から光取り出し可能となっている。
有機ELパネル21〜25も、有機ELパネル20と同様の構成となっている。
【0012】
《有機ELパネル群の構成》
有機ELパネル群10は、
図3に示すように、複数の有機ELパネル20〜22で構成されている。有機ELパネル20〜22は、前後方向Bに沿って階段状に積層されている。具体的には、有機ELパネル20の前後方向Bにおける前側と、有機ELパネル21の前後方向Bにおける後側とが重複して積層されるとともに、有機ELパネル21の前後方向Bにおける前側と、有機ELパネル22の前後方向Bにおける後側とが重複して積層されている。
有機ELパネル20〜22同士は、接着剤を介して、接合されている。
有機ELパネル群11も、有機ELパネル群10と同様の構成となっている。
【0013】
図4に示すように、有機ELパネル群10において、隣接する有機ELパネル20〜22はそれぞれの給電部31a、33aを介して、電気的に接続されている。有機ELパネル20〜22間の接続に使用されない給電部31a、33aは、外部電源(図示略)に接続されている。
有機ELパネル群10の接続配線は、支持基板30の左側で前後方向Bに沿って配線されている。
すなわち、有機ELパネル群10の給電部31a、33aは、
図1に示すように、これに隣り合う有機ELパネル群11の各有機ELパネル23〜25の積層体と重複する位置に配置されている。
【0014】
《発光パネルの特性等》
図1に示すとおり、発光パネル1は有機ELパネル群10,11が左右方向Aに沿って積層されている。
発光パネル1の有機ELパネル群10,11間には、
図5に示すように、空間部2,2,4が形成されている。
空間部2は、有機ELパネル20,22間、有機ELパネル23,25間に形成され、その厚さは有機ELパネル20と同一の厚さ程度となっている。
空間部4は、有機ELパネル群10,11間の内側で、有機ELパネル21〜24が取り囲むようにして形成され、その空間の大きさは適宜変更可能となっている。
空間部2には、ガラス基板等を挿入してもよい。
空間部4には、接着剤等の充填剤を充填してもよい。この場合、充填剤は空間部4を充填するとともに、接着剤としても機能するから、より発光パネル1の強度を高くすることができる。
【0015】
図1に示すように、有機ELパネル群10,11間の左右方向Aの重ね合わせ幅W1と有機ELパネル20〜22,23〜25間の前後方向Bの重ね合わせ幅W2は、支持基板30と封止部材34とを合わせた厚みの3倍以上であることが好ましい。より好ましくは7倍以上、特に好ましくは10倍以上である。重ね合わせ幅W1,2が小さいと、重ね合わせ部分でガラスの破損等が生じる可能性がある。
また、重ね合わせ幅W1は左右方向Aに沿った支持基板30の幅の半分以下、重ね合わせ幅W2は前後方向Bに沿った支持基板30の幅の半分以下であることが好ましい。重ね合わせ幅W1,W2が支持基板30の幅の半分を超えると、さらに多くの有機ELパネル20を階段状に積層した際に、有機ELパネル20が6枚以上重複する部分が生じてしまう。そのような場所が生じると、厚みが厚くなるだけでなく、その部分を起点にガラスの破損などが生じる恐れがあるからである。
【0016】
また、有機ELパネル20〜25の発光部35間に隙間がなく、かつ、発光部35同士が重複しないように積層するのがよい。しかし、発光部35間に隙間がなく、かつ、発光部35同士が重複しないように積層することは困難であるから、
図6に示すように、発光部35はわずかに重複してもよい。
具体的には、発光部35の重ね合わせ幅W3は、3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1mm以下が最も好ましい。発光部35間の隙間に暗線ができるよりも、重ね合わされることで輝線ができた方が見た目としてはよい。
【0017】
図7に示すように、有機ELパネル20,21を積層した際に、有機ELパネル21の支持基板30や封止部材34と有機ELパネル20の発光部35とが重複する。そのため、有機ELパネル20の発光部35と重複している、光取り出し側の有機ELパネル21の支持基板30や封止部材34の重複部37は透過率が高いことが好ましく、電極等を設けないのがよい。
【0018】
また、複数の有機ELパネル20を積層する場合、有機ELパネル20の4辺のうち2辺は透過率が高く、反射物等が設けられていないことが好ましい。
そのため、不透明電極を用いる場合、少なくとも発光部35の2辺は不透明電極の端部で規定されていることが好ましい。不透明電極の端部で発光部35を規定すれば、発光部35の周囲に不透明電極がはみ出すことがないからである。
具体的には、
図8に示すように、有機ELパネル20の発光部35においては、接する3辺35a,35b,35cが不透明電極である有機ELパネル20の陰極33により規定されている。有機ELパネル20の発光部35の辺35dは、有機ELパネル23の不透明電極である陰極33により規定されている。
すなわち、少なくとも有機ELパネル20〜25の発光部35の接する2辺35a,35bは、常に不透明電極である陰極33によって規定されることになるから、階段状に積層しても発光部35間に暗線が生じることはない。
【0019】
また、積層された発光パネル1の給電部31a、33aへの給電という点から、給電部31a、33aが1辺に集まっていることが好ましい。さらに、積層した際に、他の有機ELパネル20と重複しない部分に、給電部31a、33aが形成されていることが好ましい。
【0020】
また、ITO等の透明電極はその特性から金属に比べて抵抗値が高く、有機ELパネル20を駆動しようとすると、給電中の電圧ロスや電圧ロスによる輝度分布が問題となる。
そのため、本発明の有機ELパネル20では、矩形状、特に長方形状の発光部35を有する有機ELパネル20を用いる場合、発光部35における給電距離の長い方向を抵抗の低い電極で形成することが好ましい。
たとえば、
図9に示すように、左右方向Aに沿って給電距離が長くなっている電極38の抵抗値を低くすることが好ましい。発光パネル1においては、陰極33が抵抗値の低い金属で形成されている。
【0021】
《補助電極》
図10Aに示すように、陽極31の前後方向Bにおける後側には、抵抗値の低い金属で形成された矩形状(長方形型)の補助電極36を形成してもよい。
補助電極36は、陽極31として機能する。この場合、給電部31aに代えて、補助電極36上の左右方向Aにおける左側が給電部36aとなる。
補助電極36としては、陰極33と同様の抵抗値の低い金属を用いることができる。補助電極36としては、具体的には、クロムおよびその合金、銀およびその合金(銀−パラジウム、銀−パラジウム−銅など)、アルミおよびその合金、銅およびその合金、金およびその合金、モリブデンおよびその合金等を用いることができる。陰極33と異なる金属を積層して用いても構わない。
補助電極36は、陽極31の製膜前後に、スパッタ等により形成することができる。また、陰極33の製膜と同時あるいは前後に、金属を蒸着等で製膜することによっても形成することができるが、工程を短縮することができることから、陰極33の製膜と同時に製膜することが好ましい。
【0022】
《封止》
封止方法としては、缶封止、固体密着封止、フリット封止等、特に限定されるものではないが、透明均一性の点から、固体密着封止が好ましい。
【0023】
《発光パネルの製造方法》
有機EL素子として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極からなる有機EL素子を用いた発光パネル1の製造方法について説明する。
【0024】
まず、
図11に示すように、透明支持基板30上に所望の電極物質、例えば、陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10nm〜300nmの膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陽極31を作製する。
【0025】
次に、
図12に示すように、この上に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層からなる有機化合物層32を作製する。
この有機化合物層32の薄膜化の方法としては、蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)、スプレー法、印刷法、スロット型コータ法)等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法、スロット型コータ法が特に好ましい。さらに層ごとに異なる製膜法を適用してもよい。
【0026】
これらの層を形成後、
図13Aに示すように、その上に陰極用物質を、たとえば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極33を形成する。
なお、
図13Bに示すように、補助電極36を陰極33と同時に形成してもよい。
【0027】
次に、透明封止部材34に接着剤を塗布し、準備された有機EL素子の陰極33側から貼合することにより、有機ELパネル20が得られる。
【0028】
次に、
図14に示すように、複数の有機ELパネル20〜25を、各有機ELパネル群10,11において給電部31a,33aが左右方向Aの左側で一致するように、階段状の溝を有する治具40に左右方向Aと前後方向Bに沿って載置する。この際、有機ELパネル20〜25を吸引しながら固定し、有機ELパネル20〜25の重複部分には接着剤を充填し、治具40に保持したまま接着剤を硬化させる。
なお、治具40の段差42は、有機ELパネル20の支持基板30と封止部材34の厚みを合わせたもの程度とし、段差44は段差42の約2倍として、それぞれ接着剤の厚み等により適宜微調整する。
【0029】
次に、接合された複数の有機ELパネル20〜25を治具40から取り外す。このとき、有機ELパネル20〜22と有機ELパネル23〜25は、
図15に示すように、それぞれの給電部31aと給電部33aとが交互に配置された状態となっている。
なお、治具40を透明材料で作製し、有機ELパネル20〜25を治具40から取り外すことなく、そのまま保護板として用いてもよい。
【0030】
最後に、
図16に示すように、有機ELパネル20〜22の給電部31aと給電部33a、有機ELパネル23〜25の給電部31aと給電部33aとを、銅箔テープ46等により電気的に接続することにより、発光パネル1が得られる。
なお、外側の有機ELパネル20,23の給電部31aと有機ELパネル22,25の給電部33aとには、給電用の配線をはんだ付けした銅箔テープ46等を貼合し、外部電源と接続させる。
【0031】
上記の複数の有機ELパネル20〜25を接合する工程では、治具40を用いずに、接着剤で位置決めをすることもできる。具体的には、
図17A,17Bに示すように、重ね合わせ幅W1,W2を確保できるように、支持基板30の封止部材34とは反対側に接着剤47をL字状に塗布して、硬化させ、その位置を基準として有機ELパネル20〜25を重ね合わせ、接合させる。
接着剤47としては、有機ELパネル20〜25同士を接合する接着剤と同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一の接着剤であることが好ましい。
【0032】
また、
図18A,18Bに示すように、あらかじめ支持基板30の封止部材34とは反対側の面に、左右方向Aに沿って段差48を設けて、その位置を基準として有機ELパネル20〜25を重ね合わせ、接合することもできる。
段差48は、支持基板30をエッチング等することにより形成することができる。また、サイズの異なる2枚の支持基板30を貼り合わせることにより、段差48を設けてもよい。
【0033】
以上の本実施形態によれば、有機ELパネル20間の接合部分には接着剤が塗布されているから、外部応力に対する強度が高く、特許文献1のような保持板を用いることなく、大面積で、かつ強度の高い発光パネル1を作製することができる。支持基板30と封止部材34とを透明部材とすることで、上記のようなタイリングと、さらには高い封止性能を可能としている。
また、有機ELパネル群10,11間には空間部2,4が形成され、この空間部2,4にガラス板や充填剤を挿入することができるから、さらに発光パネル1の強度を高くすることができる。
また、長方形型の補助電極36を設けた場合には、補助電極36が抵抗値の低い金属で形成されているから、補助電極36のない場合と比較して、より輝度ムラを抑制することができる。
また、有機ELパネル20の給電部31a(36a),33aが一辺に集約されて設けられているから、有機ELパネル20を階段状に積層した際に、支持基板30の左側で前後方向Bに沿って配線することができ、たとえば、従来のように封止部材35の有機化合物層32とは対向する側に給電部等を設ける必要がない。
また、発光パネル1は矩形状になっているから、建材等へ嵌め込みやすく、見栄えもよい。
【0034】
さらに、補助電極36の形状は、
図19A〜21のような形状としてもよい(変形例1−1〜1−3参照)。
【0035】
[変形例1−1]
補助電極36の他の形状としては、左右方向Aに沿ってスリットを設けたものを用いてもよい。
スリットの形状は特に限定されるものではないが、たとえば、
図19Aに示すように、矩形状のスリットを有する補助電極50が好適に用いられる。
スリット型の補助電極50は、補助電極36と同様の材料、作製方法で製造される。
【0036】
以上の本変形例によれば、給電中の電圧降下による輝度ムラを効果的に防止することができる。
すなわち、長方形型の補助電極36を用いた場合、
図10Bに示すように、6段階の輝度分布が観測された。これは、給電部36aにより近い部分が明るく、給電部36aから遠い部分が暗くなっていることを示している。理由として、補助電極36は抵抗値の低い金属で形成されてはいるが、左右方向Aに同一幅で形成されているため、給電部36aから遠くなるにつれ電流が流れにくくなることが挙げられる。
これに対し、スリット型の補助電極50を用いた場合には、
図19Bに示すように、5段階の輝度分布が観測された。理由として、補助電極50にスリットが入っていることで、あたかも補助電極50の左右方向Aにおける中央の分岐部51から給電されているような状態になったためと考えられる。
【0037】
[変形例1−2]
補助電極36の他の形状としては、発光部35からの距離が左右方向Aの左側から右側に向かって連続的に小さくなるような形状としてもよい。
たとえば、その一例として、
図20Aに示すように、台形型の補助電極52が挙げられる。
補助電極52は、補助電極36と同様の材料、作製方法で製造される。
補助電極52から発光部35までの距離(陽極31のみの場所の幅)は、陽極31と補助電極52とのシート抵抗の比、発光面積の幅等を計算することで最適化することが好ましい。
【0038】
以上の本変形例によれば、給電中の電圧降下による輝度ムラを効果的に防止することができる。
すなわち、台形型の補助電極52を用いた場合には、
図20Bに示すように、5段階の輝度分布が観測された。理由として、補助電極52の前後方向Bの前側の辺が傾斜していることにより、補助電極52の給電部52aに近い部分ではITO(陽極31)の抵抗が大きく発光部35へ電流が流れにくくなっているのに対し、給電部52aから遠くなると次第に抵抗の高いITOの幅が狭くなり、発光部35への電流が流れやすくなるためであると考えられる。
【0039】
[変形例1−3]
補助電極36の他の形状としては、発光部35からの距離が左右方向Aの左側から右側に向かって連続的に小さくなるような形状としてもよい。
たとえば、その一例として、
図21に示すように、傾斜型の補助電極54が挙げられる。
補助電極54は、補助電極36と同様の材料、作製方法で製造される。
傾斜型の補助電極54を用いる場合には、補助電極54の幅を補助電極54の材料の比抵抗、膜厚等により適宜変更する。補助電極54の抵抗が高くなると、駆動電圧の上昇を招くので、細すぎないことが好ましい。
また、補助電極54から発光部35までの距離(陽極31のみの場所の幅)は、陽極31と補助電極54とのシート抵抗の比、発光面積の幅等を計算することで最適化することが好ましい。
以上の本変形例によっても、変形例1−2と同様の効果を得ることができる。
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明の具体的な効果を示すが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
(1)発光パネル1−1の作製
透明支持基板として、厚さ0.7mm、面積66mm×175mmの透明ガラス基板(コーニング社製EAGLE XG(無アルカリガラス))を用意し、この基板上に陽極としてITOを膜厚150nmで成膜した。
成膜したITO付き基板を、フォトリソグラフィーのプロセスを用いてパターニングした後、イソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
【0042】
次に、市販のスピンコーターを用いて、基板上に正孔注入層として、Heraeus Clevios社製CLEVIOS P VP AI 4083を、乾燥後の膜厚が30nmになるように塗布した。
その後、大気下で200℃、1時間基板を加熱した。
次に、正孔注入層まで形成された透明基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定するとともに、透明基板における陽極の形成面側に蒸着マスクを対向配置した。また真空蒸着装置内の蒸着用ボートの各々に、有機発光機能層および陰極を構成する各材料を、それぞれの層の成膜に最適な量で充填した。なお、蒸着用ボートはモリブデン製またはタングステン製抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
その後、真空蒸着装置の蒸着室内を真空度4×10
−4Paまで減圧した後、各材料が入った蒸着用ボートに順次通電して加熱することにより、以下のように各層を成膜した。
【0043】
まず、下記構造式に示すα−NPDを正孔輸送材料とし、正孔注入層上に蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、膜厚25nmの正孔輸送層を設けた。
【化1】
【0044】
次いで、下記構造式D−Bに示す化合物を緑色ゲスト材料、下記構造式D−Cに示す化合物を赤色ゲスト材料、下記構造式H−Aに示す化合物をホスト材料とし、青色発光層上に合計の蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、D−Bを10質量%、D−Cを2質量%とした膜厚10nmの黄色発光層を設けた。
次いで、下記構造式D−Aに示す化合物を青色ゲスト材料、下記構造式H−Aに示す化合物をホスト材料とし、正孔輸送層上に合計の蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、D−Aを10質量%とした膜厚15nmの青色発光層を設けた。
【化2】
【0045】
次いで、正孔阻止材料として下記の化合物を蒸着速度0.05nm/秒で蒸着し、膜厚5nmの正孔阻止層を設けた。
【化3】
【0046】
次いで、電子輸送材料として下記の化合物を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、膜厚45nmの電子輸送材料を設けた。
【化4】
【0047】
さらに、フッ化リチウム(LiF)を電子注入材料とし、電子輸送層上に蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、膜厚1nmの電子注入層を設けた。
最後にアルミニウム(Al)を陰極材料とし、電子注入層上に蒸着し、膜厚110nmの陰極を形成し、有機EL素子を作製した。
【0048】
次に、封止部材として、厚さ1.1mmの無アルカリガラス(コーニング社製EAGLE XG)を66×167mmに裁断し、エッチングにより深さ0.4mm、奥行き60mm、幅161mmの掘りこみ部分を設けた。
封止部材の周囲の凸部に紫外線硬化型の接着剤を塗布し、さらに凹部にジャパンゴアテックス株式会社製の有機EL用デシカントを貼合した。
上記封止部材と準備した有機EL素子とを貼合し、高圧水銀ランプにより紫外線を照射して、接着剤を硬化させて、有機ELパネルを作製した。
【0049】
次に、有機ELパネルを階段状の治具に載置し、パネルを吸引し、固定しながら、シリコン系接着剤(信越化学工業株式会社製一液型RTVゴムKE−347T)を有機ELパネルの間に充填し、計12枚の有機ELパネルを重ねた。この12枚の有機ELパネルを治具に30分間保持し、接着剤を硬化させた。治具の段差42は1.8mm、段差44は3.6mmとし、接着剤の厚み等により適宜調整した。
なお、重ね合わせ幅W1を33mm、重ね合わせ幅W2を40.5mm、重ね合わせ幅W3を0.5mmとなるように設計した。
【0050】
12枚のパネルを接着した、パネル接着体を治具から取り出し、隣接する有機ELネルの陰極給電部と陽極給電部とに銅箔テープ(住友スリーエム製 銅箔逆エンボステープNo.3245)を調合し、接続した。
さらに、隣接パネルのない外側の4枚の有機ELパネルの給電部には、給電用の配線をはんだ付けした銅箔テープ(住友スリーエム製 銅箔逆エンボステープNo.3245)を貼合し、発光パネル1−1を作製した。
【0051】
(2)発光パネル1−2の作製
発光パネル1−1において、透明支持基板の封止部材とは反対側に、シリコン系接着剤(信越化学工業株式会社製一液型RTVゴムKE−347T)をL字状に塗布し、硬化させ、そのL字状の硬化した接着剤をガイドにして、有機ELパネルを相互に貼り合わせた以外は同様にして、発光パネル1−2を作製した。
【0052】
(3)発光パネル1−3の作製
発光パネル1−1において、透明支持基板として、封止部材とは反対側となる面にエッチングにより段差を設けたものを用いて有機ELパネルを作製し、この段差を基準として有機ELパネルを相互に貼り合わせた以外は同様にして、発光パネル1−3を作製した。
【0053】
(4)発光パネル1−4の作製(比較例)
特許文献2(特開2009−139463)を参考にして、発光パネル1−4を作製した。
有機ELパネルとしては、発光パネル1−1と同様の有機ELパネルを用いた。
【0054】
市販のガラスエポキシ基板60(厚さ1.6mm)をパターニングして、コネクタ62として、ヒロセ電機製FPCコネクタ(FH12A−10S−0.5SH)を12個実装し、各コネクタ62を配線64により電気的に接続した(
図22参照)。
次に、ベースポリイミド(12.5μm)に、圧延銅箔(18μm)を熱硬化性樹脂で貼り付けたベース部材をパターニングし、カバーレイ部材としてポリイミドフィルム(18μm)を熱硬化性樹脂にて貼り付けた。金属部分には、電解NiAuめっきを施した。コネクタ接続部68は、ヒロセ電機製F12A−10S−SH対応の形状とした。裏面からポリイミドフィルムを張り付け、ベース部材と補強部材との厚みを300μmとして、FPC66を作製した(
図23参照)。
次に、準備したFPC66の貼り付け部70を有機ELパネルの陰極と補助電極との給電部を接続するように接着した(
図24参照)。接着には、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製 ACF(CP5720GT)を用いた。続いて、市販の圧着機を用いて、80度、1MPa、2秒の条件下で仮圧着し、180℃、3MPa、8秒の条件下で本圧着した。
【0055】
次に、FPC66を取り付けた有機ELパネルを保持板のコネクタ部に接続して、発光パネル1−2を作製した(
図25A参照)。
【0056】
発光パネル1−1〜1−3は、厚さ約7mmであった。また、横置き、縦置き、天井に貼りつけるような置き方をしても特に問題はなかった。
これに対し、発光パネル1−4は、厚さ約10mmとなった。また、テーブルの上などに横置きにした場合は仕様上問題なかったが、縦置きや天井に貼り付け等を行おうとしたところ、保持板からパネルが浮いてきてしまい、面状発光体として機能させることができなかった(
図25B参照)。
以上から、本発明の発光パネル1−1〜1−3が薄型で、取り付け方向に関係なく使用できることが分かる。
【実施例2】
【0057】
(1)発光パネル2−1の作製
図26に示すように、空間部4,4にスペーサーとして厚さ0.7mmの無アルカリガラス板72を2枚重ねて挿入し、接着させた以外は、発光パネル1−1と同様にして、発光パネル2−1を作製した。
【0058】
(2)発光パネル2−2の作製
発光パネル2−1において、封止部材(方法)、スペーサーを下記のように変更した以外は同様にして、発光パネル2−2を作製した。
【0059】
封止部材として、厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製EAGLE XG)を66×167mmに裁断し、イソプロピルアルコールで超音波洗浄を実施し、その後、乾燥窒素ガスで乾燥し、さらに、UVオゾン洗浄を5分間行った。
次いで、洗浄した封止部材の片面に、熱硬化性接着剤(シール材)をディスペンサーを使用して均一に塗布し、封止部材を作製した。熱硬化接着剤としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)、ジシアンジアミド(DICY)及びエポキシアダクト系硬化促進剤(エポキシ系接着剤)を用い、熱硬化性接着剤の厚さは20μmとした。
次に、陰極と封止部材とを重ね合わせ、市販の真空ラミネーターへセットした。真空ラミネーターで90℃に加熱しながら、5分間真空圧着した。このときの差圧は約1MPaとした。圧着したのち、110℃のホットプレートで30分加熱し、樹脂を硬化させ、有機ELパネルを作製した。
スペーサーとして、厚さ1.1mmの無アルカリガラス基板を挿入した。
治具の段差42は1.4mm、段差44は2.8mmとした。
【0060】
(3)発光パネル2−3の作製
発光パネル2−2において、封止部材(方法)を下記のように変更した以外は同様にして、発光パネル2−3を作製した。
【0061】
封止部材として、厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製EAGLE XG)を66×167mmに裁断し、イソプロピルアルコールで超音波洗浄を実施し、その後、乾燥窒素ガスで乾燥し、さらに、UVオゾン洗浄を5分間行った。
次いで、スクリーン印刷機を用いて、ガラスフリットをガラス基板の周囲に塗布し、130℃、5分で乾燥させた。さらに、430℃10分で焼成し、封止部材とした。
次いで、陰極と封止部材とを重ね合わせ、封止部材側から波長940nm、出力65Wのレーザ光(半導体レーザ)を10mm/sの走査速度で照射し、接着剤(焼成されたガラスフリット)を溶融並びに急冷固化することによって、基板と封止部材とを封着し、有機ELパネルを作製した。
【0062】
発光パネル2−1は、発光パネル1−1と比較して、曲げ耐性等が向上し、端部のガラスが割れる確率が低下した。より強度を求められる場合はこのような形態が好ましい。
また、発光パネル2−2は、発光パネル2−1と比較して、発光状態が均一になり、また、薄型化することができた。
また、発光パネル2−3は、発光パネル2−1と比較して、薄型化することができた。
また、発光パネル2−1〜2−3を85℃、85%の恒温槽に500時間保管しても、ダークスポットやシュリンクの発生はなく、発光素子として良好な状態を保っていた。
【実施例3】
【0063】
(1)発光パネル3−1の作製
発光パネル2−1において、支持基板、封止部材(方法)、スペーサーを下記のように変更した以外は同様にして、発光パネル3−1を作製した。
【0064】
透明基板として、厚さ0.2mm、66mm×175mmの透明ガラス基板(無アルカリガラス・日本電気硝子製)を用いた。
封止部材として、厚さ125μm、66mm×167mmのポリエチレンナフタレート基板(PEN基板)(帝人デュポンフィルム製テオネックスQ83)を用意した。PEN基板上に、特開2004−68143号に記載の構成からなる大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、SiO
xからなる無機物のガスバリア膜(厚み500nm)を形成し、酸素透過度0.001cm
3/(m
2・24h・atm)以下、水蒸気透過度0.001g/(m
2・24h)以下のガスバリア性のポリエチレンナフタレートフィルムを作製した。
次いで、ポリエチレンナフタレートフィルムの片面に、熱硬化性接着剤(シール材)をディスペンサーを使用して均一に塗布し、封止部材を作製した。熱硬化接着剤としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)、ジシアンジアミド(DICY)及びエポキシアダクト系硬化促進剤(エポキシ系接着剤)を用い、熱硬化性接着剤の厚さは20μmとした。
スペーサーとして、0.2mmの無アルカリガラス基板を挿入した。
治具の段差42は約0.3mm、段差44は0.6mmとした。
【0065】
(2)発光パネル3−2の作製
発光パネル3−1において、支持基板、スペーサーを下記のように変更した以外は同様にして、発光パネル3−2を作製した。
【0066】
支持基材として、厚さ125μm、66mm×175mmのポリエチレンナフタレート基板(PEN基板)(帝人デュポンフィルム製テオネックスQ83)を用意した。
PEN基板上に、特開2004−68143号に記載の構成からなる大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、SiO
xからなる無機物のガスバリア膜(厚み500nm)を形成し、酸素透過度0.001cm
3/(m
2・24h・atm)以下、水蒸気透過度0.001g/(m
2・24h)以下のガスバリア性のポリエチレンナフタレートフィルムを作製した。
スペーサーとして125μmのPENフィルム(帝人デュポンフィルム製テオネックスQ83)を挿入した。
治具の段差42は約0.25mm、段差44は0.5mmとした。
【0067】
発光パネル2−2と発光パネル3−1と発光パネル3−2とを比較すると、発光パネル2−2、3−1、3−2の順で、薄型化、軽量化することができた。
【実施例4】
【0068】
(1)発光パネル4の作製
発光パネル2−2の発光面側に透明アクリル樹脂でできた部材を、信越シリコン製KE−1031−A/Bを用いて貼合し、80℃で2時間硬化させた。
さらに、透明アクリルの外側に、株式会社きもと製拡散フィルム(ライトアップ100PBU)を貼合した。
【0069】
発光パネル2−2と発光パネル4との各有機ELパネルに2.5mA/cm
2で電流を流し、コニカミノルタセンシング製CA−2000で面輝度を測定した。なお、周囲1cmを除く発光エリアの平均輝度を測定値とした。
【0070】
発光パネル2−2と発光パネル4との輝度を比較すると、発光パネル4の輝度は約1.4倍となり、アクリル板と拡散板を取り付けることで輝度が向上していることがわかる。
【実施例5】
【0071】
(1)発光パネル5−1の作製
発光パネル2−2において、
図19Aに示すように、陽極(ITO)、陰極(アルミニウム)の形状を変更した以外は同様にして、発光パネル5−1を作製した。なお、アルミニウムのスリットの入っている部分は陽極の補助電極として作用する。アルミニウムの蒸着膜厚は300nmとした。
【0072】
(2)発光パネル5−2の作製
発光パネル2−2において、
図20Aに示すように、陽極(ITO)、陰極(アルミニウム)の形状を変更した以外は同様にして、発光パネル5−2を作製した。なお、アルミニウムの台形状の部分は陽極の補助電極として作用する。アルミニウムの蒸着膜厚は300nmとした。
【0073】
(3)発光パネル5−3の作製
発光パネル1−1において、支持基板、陰極(アルミニウム)、封止部材の形状、使用する有機ELパネルの枚数を下記のように変更した以外は同様にして、発光パネル5−3を作製した。
【0074】
支持基板として、厚さ0.7mm、60×60mmの無アルカリガラス(コーニング社製EAGLE XG)を用い、
図10Aに示すように、陰極(アルミニウム)の形状を変更した。発光部は40×40mmとした。なお、アルミニウムの前後方向Bの後側の長方形状の部分は陽極の補助電極として作用する。
封止部材として、無アルカリガラス(コーニング社製EAGLE XG)を厚さ0.7mm、60×57mmに裁断した。
【0075】
準備された有機ELパネルを42枚(=6×7)使用して、発光パネル5−3を作製した(
図27参照)。重ね合わせ幅W1,W2は21mm、重ね合わせ幅W3は1mmとした。
なお、治具の段差42,44は、発光パネル5−3の形状に合わせたもの用いた。
【0076】
発光パネル2−2、発光パネル5−1〜5−3の各パネルに25A/m
2の電流を流しコニカミノルタセンシング社製CA−2000を用いて面内輝度の測定を行った。
図27に示すように、1cm間隔で輝度のデータを集め、(輝度の最小値/輝度の最大値)×100を輝度分布の数値とした。
その結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
発光パネル5−3と発光パネル2−2とを比較すると、発光パネル5−3は陽極の補助電極として抵抗値の小さいアルミニウムを用いているから、輝度ムラが抑制されていることがわかる。
発光パネル5−1,5−2と発光パネル5−3とを比較すると、発光パネル5−1,5−2はさらに輝度ムラの発生を防止していることがわかる。