特許第5979235号(P5979235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979235
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】充電制御装置及び充電時間演算方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20160817BHJP
【FI】
   H02J7/02 U
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-536931(P2014-536931)
(86)(22)【出願日】2013年9月20日
(86)【国際出願番号】JP2013075450
(87)【国際公開番号】WO2014046234
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2014年10月31日
(31)【優先権主張番号】特願2012-208703(P2012-208703)
(32)【優先日】2012年9月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 敦史
(72)【発明者】
【氏名】曽我 力
【審査官】 吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−115004(JP,A)
【文献】 特開2000−123884(JP,A)
【文献】 特開2011−091879(JP,A)
【文献】 特開2002−209339(JP,A)
【文献】 特開平11−089105(JP,A)
【文献】 特開2006−262605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/42−10/48
H02J7/00−7/12
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電器から出力される充電電力によりバッテリを充電する充電制御装置において、
前記バッテリの電流及び電圧を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出値を用いて前記バッテリの充電状態を演算する充電状態演算手段と、
前記充電状態演算手段により演算された充電状態に基づいて、前記バッテリの充電状態が所定の充電状態に達するまでの前記バッテリの残充電時間を演算する充電時間演算手段とを備え、
前記充電時間演算手段は、
前記バッテリの充電電流が所定の電流閾値以上から当該電流閾値未満となった場合には、前記充電電流が前記電流閾値未満となる時点で、前記充電電流が前記電流閾値以上の場合における前記充電時間演算手段により演算された前記残充電時間を、前記充電電流が前記電流閾値未満となった時点からの経過時間に応じて減算して前記残充電時間を演算する
ことを特徴とする充電制御装置。
【請求項2】
前記検出手段により検出された前記充電電流が所定の電流閾値未満となった場合に、前記充電器から所定時間毎に間欠的に電力を出力させて、前記バッテリを充電する充電器制御手段をさらに備え、
前記充電時間演算手段は、
前記充電器から電力を出力する回数に応じて減算することにより、前記充電電流が前記電流閾値未満となる時点で演算された前記残充電時間を、前記充電電流が前記電流閾値未満となった時点からの経過時間に応じて減少させる
ことを特徴とする請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項3】
前記充電電流が所定の電流閾値以上である場合に、前記バッテリの充電状態の増加に応じて、前記充電器から出力される電圧を一定にしつつ、前記充電器から出力される電流を減少させる定電圧制御を行う充電器制御手段をさらに備え、
記充電時間演算手段は、
前記定電圧制御中に演算した前記残充電時間を、経過時間に応じて減算する
ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の充電制御装置。
【請求項4】
前記バッテリの温度を検出するバッテリ温度検出手段をさらに備え、
前記充電時間演算手段は、
前記バッテリ温度が低くなるほど、経過時間に応じて減算する値を小さくする
ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の充電制御装置。
【請求項5】
前記検出値を用いて前記バッテリを充電可能な電力の最大値である充電可能電力を演算する充電可能電力演算手段をさらに備え、
前記充電時間演算手段は、
前記検出手段により検出された前記充電電流が所定の電流閾値以上である場合には、前記充電状態及び前記充電電力に対する前記バッテリの充電時間の関係を示すマップを参照し、前記充電状態演算手段により演算された前記充電状態及び前記充電電力に基づいて、前記残充電時間を演算する
ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の充電制御装置。
【請求項6】
前記バッテリの温度を検出するバッテリ温度検出手段をさらに備え、
前記マップは、前記バッテリの温度を含めた対応関係を示すマップであり、
前記充電時間演算手段は
前記マップを参照し、前記充電状態演算手段により演算された前記充電状態及び前記充電電力、及び、前記バッテリ温度検出手段により検出された前記バッテリの温度に基づいて、前記残充電時間を演算する
ことを特徴とする請求項5に記載の充電制御装置。
【請求項7】
前記充電時間演算手段によって演算した残充電時間を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の充電制御装置。
【請求項8】
充電器から出力される電力によって充電されるバッテリの充電時間を演算する充電時間演算方法において、
前記バッテリの電流及び電圧を検出し、
検出された前記電流及び前記電圧の検出値を用いて、前記バッテリの充電状態を演算し、
演算された前記充電状態に基づいて、前記バッテリの充電状態が所定の充電状態に達するまでの前記バッテリの残充電時間を演算する演算制御を実行すると共に、前記バッテリの充電電流が所定の電流閾値以上から未満となった場合には、前記充電電流が前記電流閾値未満となる時点で、前記充電電流が前記電流閾値以上の場合における前記演算制御により演算された前記残充電時間を、前記充電時間が前記電流閾値未満となった時点からの経過時間に応じて減算して前記残充電時間を演算する
ことを特徴とする充電時間演算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電制御装置及び充電時間演算方法に関するものである。
【0002】
本出願は、2012年9月21日に出願された日本国特許出願の特願2012―208703号に基づく優先権を主張するものであり、文献の参照による組み込みが認められる指定国については、上記の出願に記載された内容を参照により本出願に組み込み、本出願の記載の一部とする。
【背景技術】
【0003】
電池に蓄電される電池容量と電池の端子電圧との関係を示すマップを用いて、端子電圧から現時点において充電される電池容量(SOC)を特定し、予め登録されているSOCと残充電時間との関係を示すマップを充電電流の量に対応して複数記録し、当該マップを参照して、SOCと充電電流量に対応する残充電時間を取得し、当該残充電時間を表示するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−91879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電池の端子電圧は充電電流の大きさ等によって異なり、SOCと端子電圧との関係を示すマップからは正確な残充電時間を演算することは難しく、残充電時間を正確に表示できない、という問題があった。
【0006】
本発明は、正確な残充電時間を演算することができる充電制御装置及び充電時間演算方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、充電電流が所定の電流閾値以上から未満となった場合には、当該充電電流が当該電流閾値未満となる時点で演算された残充電時間を、充電電流が電流閾値未満となった時点からの経過時間に応じて減算して残充電時間を演算することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、バッテリのSOCが大きく変化しない状態において、経過時間に応じた残充電時間の演算を行うことで、正確な残充電時間を演算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る充電システムのブロック図である。
図2図1のバッテリの充電電流に対する、最高電圧セルの電圧特性を示すグラフである。
図3図1のメモリに記録されるマップの概要図である。
図4図1のメモリに記録されるマップの概要図である。
図5】(a)は充電電力特性を示すグラフであり、(b)は残充電時間演算用電力を示すグラフであり、(c)はSOC特性を示すグラフであり、(d)は残充電時間の特性を示すグラフである。
図6】(a)は充電電力特性を示すグラフであり、(b)はSOC特性を示すグラフであり、(c)は追い充電カウンタの特性を示すグラフであり、(d)は残充電時間の特性を示すグラフである。
図7】(a)はSOC特性を示すグラフであり、(b)は指定電力特性を示すグラフであり、(c)は追い充電カウンタの特性を示すグラフであり、(d)は満充電フラグを示す特性であり、(e)は残充電時間の特性を示すグラフである。
図8図1のLBCの制御手順を示すフローチャートである。
図9図8の定電圧制御を示すフローチャートである。
図10図8の追い充電制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る充電制御装置の充電システムのブロック図である。本例の充電システムは、電気自動車、プラグインハイブリッド車両の車両等に搭載バッテリを充電するシステムである。充電制御装置は、充電システムの構成の一部であり、当該車両等に搭載されている。
【0012】
本例の充電システムは、充電器10と、バッテリ20と、表示部30と、メモリ40と、LBC50とを備えている。バッテリ20、表示部30、メモリ40及びLBC50は、車両側に搭載される。なお、図1では図示を省略しているが、充電装置を搭載する車両は、バッテリ20等の構成の他に、モータ等の構成を備えている。
【0013】
充電器10は、バッテリ20を充電する充電器であり、車両の外部に設けられている。充電器10は、LBC50の制御に基づいて、交流電源100から入力される電力をバッテリ20の充電に適した電力に変換して、バッテリ20に出力する充電回路である。充電器16は、インバータ、DC/DCコンバータ及びコントローラ等を有している。充電器10は、ケーブル等によりバッテリ20に接続される。
【0014】
バッテリ20は、リチウムイオン電池等の二次電池(以下、セルとも称す。)を複数接続することで構成される電池であって、車両の動力源である。バッテリ20は、インバータ(図示しない)を介して、モータ(図示しない)に接続されている。バッテリ20は、当該モータの回生により充電され、また車両外の充電器10により充電される。
【0015】
表示部30は、バッテリ20を充電する際の残充電時間を表示するディスプレイである。残充電時間は、バッテリ20の現在の充電状態(SOC:State of Charge、又は充電率)を目標SOCに達するまでの残りの充電時間を示す。表示部30の表示は、LBC50により制御される。なお、表示部30は、車両に限らず、例えばユーザが所有する携帯電話等に設けられてもよく、あるいは、充電器10を含む充電装置に搭載されてもよい。
【0016】
メモリ40は、バッテリ20の状態に関する情報を記録する記録媒体である。メモリ40に記録されている情報は、LBC50により管理されている。なお、メモリ40に記録されている情報は後述する。
【0017】
LBC(リチウムイオンバッテリコントローラ)50は、バッテリ20に接続されている電圧、電流のセンサ及びバッテリ20の温度を検出するセンサの検出値により、バッテリ20のSOC等を測定し、バッテリ20に充電されている電池容量等のバッテリ20の状態を管理するコントローラである。またLBC50は、充電器10と制御信号の送受信を行い、充電器10を制御することで、バッテリ20の充電を制御するコントローラでもある。
【0018】
LBC50は、電流検出部51、電圧検出部52、温度検出部53、SOC演算部54、充電可能電力演算部55、実充電演算部56、充電器制御部57及び残充電時間、及び、演算部58を有している。
【0019】
電流検出部51は、バッテリ20に接続され、バッテリ20の電流を検出するセンサである。電流検出部51の検出値は、SOC演算部54、充電可能電力演算部55、実電力演算部56及び充電器制御部57に出力される。
【0020】
電圧検出部52は、バッテリ20に接続され、バッテリ20の電圧を検出するセンサである。電圧検出部52は、バッテリ20に含まれる複数の電池の各電圧、及び、当該複数の電池の総電圧を検出する。電流検出部52の検出値は、充電可能電力演算部55及び実電力演算部56に出力される。
【0021】
温度検出部53は、バッテリ20に設けられ、バッテリ20の温度を検出するセンサである。温度検出部51の検出値は、充電可能電力演算部55、実電力演算部56及び充電器制御部57に出力される。
【0022】
SOC演算部54は、電流検出部51により検出された検出値を積算することで、充電電流を積分して、バッテリ20のSOCを演算する。SOC演算部54は、演算したSOCを充電器制御部57及び残充電時間演算部58に出力する。
【0023】
なお、SOC演算部54は、電圧検出部52の検出電圧からバッテリ20のSOCを演算してもよい。バッテリ20の電圧とSOCとの間には相関性があるため、当該相関性を示すマップがメモリ40に記録され、SOC演算部54は、メモリ40の当該マップを参照して、電圧検出部52の検出電圧に対応するSOCを、バッテリ20のSOCとして演算する。
【0024】
なお、バッテリ20とSOCとの相関性は、バッテリ20の劣化度に応じて変わるため、マップは、バッテリ20の劣化度に応じたマップにしてもよい。バッテリ20の劣化度は、例えば、バッテリ20の内部抵抗から演算すればよい。
【0025】
充電可能電力演算部55は、電流検出部51の検出電流、電圧検出部52の検出電圧及び温度検出部53の検出温度から、バッテリ20の充電可能電力を演算する。充電可能電力は、バッテリ20の充電の際、バッテリ20の劣化の促進を抑制しながら充電できる最大の電力であって、充電器10からバッテリ20に入力可能な最大の入力電力である。なお充電可能電力は一般的に、入力可能電力あるいは最大充電可能電力や最大入力可能電力とも言われ、本実施形態においては充電可能電力と記載する。充電可能電力演算部55は、以下の要領で、充電可能電力を演算する。
【0026】
バッテリ20には、バッテリ20の性能に応じて、充電上限電圧が各セル毎に設定されている。充電上限電圧は、バッテリ20の劣化を防止するために、バッテリ20を充電する際の、上限となる予め定められた電圧である。充電上限電圧は、バッテリ20を構成する電池(セル)の内部で、リチウムの析出が開始する電圧、または、リチウムの析出が開始する電圧よりも低い電圧が設定される。
【0027】
充電上限電圧は、バッテリ20へ入力される充電電流、バッテリ温度、及び、バッテリ20の内部抵抗に応じて、演算される。例えば、充電上限電圧は、バッテリ20の充電電流が大きいほど低く演算され、バッテリ20の充電電流が小さいほど高く演算される。
【0028】
バッテリ20が複数の電池により構成されている場合には、複数の電池の中で最も電圧が高い電池の電圧を、充電上限電圧に抑えなければならない。充電可能電力演算部55は、電圧検出部52により検出される各セルの電圧から、最も電圧が高いセルを特定する。充電可能電力演算部55は、特定されたセルの電圧、当該セルの内部抵抗、セルの充電電流及び充電上限電圧に基づき、バッテリに入力可能な入力可能電流を演算する。
【0029】
入力可能電流は、最も高い端子電圧を有するセルの内部抵抗と、当該セルの充電上限電圧から算出される。セルの内部抵抗は、電圧検出部52により検出される、当該セルの端子電圧と、当該セルの充電電流から演算される。
【0030】
図2は、入力可能電流(IMAX)の演算方法を説明する図である。充電可能電力演算部55は、最も高い端子電圧を有するセルの内部抵抗から、図2に示すように、当該セルの内部抵抗線Lを演算する。
【0031】
内部抵抗線Lは、最も高い端子電圧を有するセルについて、当該セルの充電電流と、当該セルの電圧との関係を示す直線である。なお、内部抵抗線Lは、例えばバッテリ20の総内部抵抗及びバッテリ20の開放電圧から算出することができる。バッテリ20の総内部抵抗は、バッテリ20に含まれる複数のセルの全体の抵抗値である。
【0032】
充電上限電圧線LV_LIMは、バッテリ20の充電電流と相関性を有している。そのため、充電上限電圧とバッテリ20の充電電流との相関性をもつマップが、予めメモリ40に記録され、充電可能電力演算部55は、当該マップを参照し、電流検出部51の検出電流を用いることで、充電上限電圧(充電上限電圧線LV_LIMに相当)を演算すればよい。
【0033】
図2に示す特性において、充電上限電圧線LV_LIMと内部抵抗線Lとの交点における電流が、最も高い端子電圧を有するセルへの入力可能電流となる。これにより、入力可能電流が、充電可能電力演算部55により演算される。
【0034】
そして、充電可能電力演算部55は、バッテリ20の総内部抵抗に入力可能電流(IMAX)の2乗を乗じることで、充電可能電力を演算することができる。なお、充電可能電力の演算方法は、上記以外の方法であってもよい。
【0035】
充電可能電力演算部55は、演算した充電可能電力を充電器制御部57に出力する。
【0036】
図1に戻り、実電力演算部56は、バッテリ20の充電中に、充電器10からバッテリ20に実際に供給されている充電電力である。充電器10側で設定された充電器10の出力電力に対して、バッテリ20に実際に供給される充電電力は、バッテリ20の内部抵抗等により、充電器10の出力電力より低い電力になる。実電力演算部56は、電流検出部51の検出電流と電圧検出部52の検出電圧から、演算される。実電力演算部56は、演算した充電電力を充電器制御部57に出力する。
【0037】
充電器制御部57は、電流検出部51により検出される検出電流、充電可能電力演算部55により演算される充電可能電力、実電力演算部56により演算されるバッテリ20の充電電力、及び、充電器10の出力可能電力に基づいて、充電器10を制御する。
【0038】
充電器10の出力可能電力は、充電器10の定格出力電力に相当し、充電器が出力できる電力の最大値である。すなわち、出力可能電力は充電器10の充電能力に応じて予め設定されている値であり、充電器10の出力電力はこの出力可能電力以下に制限されている。充電器10の出力可能電力は、充電器10に応じて異なる。そのため、充電器10とバッテリ20とがケーブル等により接続されると、充電器制御部57は、充電器10と通信を行い、充電器10の出力可能電力の情報を取得する。なお、充電器10と充電器制御部57との間の通信は、充電器10とバッテリ20とを接続するケーブル内の通信線を利用して行えばよい。
【0039】
残充電時間演算部58は、温度検出部53により検出される検出温度、SOC演算部54により演算されるSOC、実電力演算部56により演算される充電電力に基づき、バッテリ20の残充電時間を演算する。残充電時間演算部58は、演算した残充電時間を表示部30に表示する。
【0040】
次に、本例の充電システムの制御について説明する。まず、バッテリ20を充電する際の充電制御について説明する。
【0041】
LBC50は、ユーザ等の操作に基づき、充電器10によりバッテリ20の充電を開始する旨の信号を受信すると、バッテリ20の目標充電率を設定し、充電器10とバッテリ20との間の接続を確認して、充電制御を開始する。
【0042】
充電器制御部57は、充電器10から、充電器10の出力可能電力を取得する。また、充電器制御部57は、充電可能電力演算部55により演算された充電可能電力を取得する。そして、充電器制御部57は、出力可能電力と、充電可能電力とを比較し、その比較結果と、バッテリ20のSOCから、充電器10からバッテリ20に供給される供給電力を設定する。
【0043】
本例のバッテリ20は車両等に搭載される二次電池であり、バッテリ20の電池容量は大きい。充電器10は、交流電源100の定格電力、充電器10のコンバータの昇圧等により、出力可能電力を上げるにも限界がある。そのため、バッテリ20のSOCが低い場合には、充電器10の出力可能電力が、バッテリ20の充電可能電力よりも低くなる。
【0044】
バッテリ20のSOCが高い場合には、バッテリ20へ入力可能な電力が低くなる。そのため、バッテリ20の充電可能電力が、充電器10の出力可能電力よりも低くなる。
【0045】
バッテリ20の充電可能電力が充電器10の出力可能電力以上である場合には、充電器制御部57は、充電器10からバッテリ20に供給される供給電力を、充電器10の出力可能電力に設定し、指令電力を示す信号を充電器10に送信する。充電器10は、当該信号に基づき、出力可能電力でバッテリ20を充電開始する。これにより、バッテリ20は定電力充電制御で充電される。
【0046】
一方、バッテリ20の充電可能電力が充電器10の出力可能電力未満である場合には、充電器制御部57は、充電器10からバッテリ20に供給される供給電力を、バッテリの充電可能電力に設定し、指令電力を示す信号を充電器10に送信する。充電器10は、当該信号に基づき、出力可能電力より低い電力になるよう、充電器10からの出力電流を下げて、バッテリ20を充電する。
【0047】
充電可能電力演算部55は、バッテリ20の充電中、電流検出部51等の検出値により、バッテリ20の充電可能電力を演算し、充電器制御部57に送信している。バッテリ20の充電可能電力が、充電器10の出力可能電力より高い状態で、充電を開始した場合には、充電器制御部57は、バッテリ20の充電中、バッテリ20の充電可能電力と充電器10の出力可能電力とを比較している。そして、充電可能電力が出力可能電力未満になると、充電器制御部57は、充電器10からバッテリ20への供給電力を、充電器10の出力可能電力未満になるように、充電器10を制御する。充電器10は、充電器制御部57からの制御信号に基づき、充電器10からの出力電流を下げて、バッテリ20への供給電力を絞る。また、バッテリ20のSOCの上昇に伴い、充電器制御部57は、バッテリ20への供給電力を徐々に小さくなるよう、充電器10を制御する。充電器10は、出力電圧を一定にしつつ、バッテリ20のSOCの上昇に伴い徐々に出力電流を低下させる。これにより、バッテリ20は、定電圧制御で充電される。
【0048】
充電器制御部57は、定電圧制御中、電流検出部51の検出値により、バッテリ20の充電電流を管理している。充電器制御部57には、定電圧制御から追い充電制御に切り替えるための電流閾値(I)が予め設定されている。
【0049】
定電圧制御が継続されて、バッテリ20の電圧が高くなり、バッテリ20が満充電に近づくと、バッテリ20の分極作用により、充電器10からの電流が、バッテリ20に流れ難くなる。そのため、充電器制御部57は、バッテリ20への充電電流が電流閾値(I)より小さくなった場合には、追い充電制御に切り替えて、バッテリ20の充電を継続し、バッテリ20を満充電まで充電させる。
【0050】
バッテリ20の充電電流が電流閾値(I)未満になると、充電器制御部57は、追い充電制御のシーケンスを含む信号を充電器10に送信する。充電器10は、当該シーケンスを含む信号を受信すると、定電圧制御から追い充電制御に切り替わる。シーケンスは、充電器10からの出力タイミング及び出力値を含み、充電器10はシーケンスに基づいて出力を制御する。
【0051】
なおここで、バッテリ20の充電電流が電流閾値(I)未満になったことを、SOC演算部54により演算されるSOCの変化率(変化速度)が所定の変化率未満となったことによって検出しても良い。すなわち、バッテリ20の充電電流が小さくなると、バッテリに充電される電力が小さくなるため、バッテリのSOCの変化率に基づいて充電電流が電流閾値(I)未満となったことを検出することもできる。
【0052】
追い充電制御は、一定の期間、充電器10からバッテリの出力を止めて、当該一定期間の経過後に、充電器10からバッテリ20に対して電流を出力して再充電を行なう制御である。そして、充電器10からの出力を停止する停止期間と電流の出力期間(再充電)がセットになっている。1回の追い充電は、1回のセットの制御を行うことになる。また、追い充電の回数が多くなるについて、停止期間が徐々に短くなり、再充電における電流のピーク値は徐々に小さくなる。
【0053】
追い充電の回数は、満充電の電池容量等のバッテリ20の仕様等により予め決まっている。また、同様に、1回の追い充電の停止期間及びピーク電流値も、バッテリ20の仕様等により予め決まっている。
【0054】
追い充電制御のシーケンスは、1セットの追い充電を複数回行うことで、充電器10から間欠的に電流出力させるように、設定されている。
【0055】
充電器10は、シーケンスにより決まっている追い充電の回数分、電流を出力することで、電力を間欠的に出力する。充電器制御部57は、定電圧制御から追い充電制御に切り替える時から、追い充電の回数を管理している。また、充電器制御部57は、追い充電制御への切り替え時から、追い充電のカウンタにより追い充電の回数をカウントしている。従って、追い充電のカウント値は、追い充電を継続している期間(追い充電を繰り返し行っている期間)においては、時間の経過と共に増大する。そして、追い充電のカウンタが、シーケンスで決まっている追い充電の回数閾値以上を数えると、満充電のフラグを立てて、バッテリ20の充電を終了する。
【0056】
次に、バッテリ20の残充電時間の演算制御について説明する。
【0057】
メモリ40には、図3に示す複数のマップが予め記録されている。図3は、バッテリ20の充電電力、電池温度及びSOCに対する充電時間の関係を示すマップの概要図である。
【0058】
図3に示すように、バッテリ20の残充電時間は、バッテリ20の充電電力、電池温度及びSOCと相関性をもっている。すなわち、バッテリ20の温度が低いほど充電時間は長くなり、SOCが低いほど充電時間が長くなる。また、バッテリ20への充電電力が低いほど、充電時間が長くなる。充電時間は、バッテリ20の充電状態が目標SOCに達するまでの、バッテリ20の残りの充電時間(残充電時間)を示している。そのため、目標SOCが満充電時のSOCに設定された場合には、充電時間は、現在のバッテリ20に充電されている充電容量が、満充電時の電池容量に達するための時間を示す。
【0059】
残充電時間演算部58は、バッテリ20の充電可能電力が充電器10の出力可能電力以上である場合、言い換えると、バッテリ20を定電力制御で充電している場合には、図3のマップを参照し、実電力演算部56により演算されたバッテリ20の充電電力、バッテリ20のSOC及び温度に基づいて、バッテリ20の残充電時間を演算する。
【0060】
具体的には、残充電時間演算部58は、実電力演算部56により演算された充電電力に対するマップを、メモリ40に記録された複数のマップから抽出する。定電力性制御において、バッテリ20は充電器10の出力可能電力で充電されるため、バッテリ20の充電電力は、充電器10の出力電力を出力可能電力に設定した場合に、バッテリ20に実際に供給される電力となる。そのため、出力可能電力が高い充電器10に充電される場合には、残充電時間演算部58は、充電電力の高いマップを抽出することになる。
【0061】
残充電時間演算部58は、抽出されたマップを参照し、温度検出部53で検出された温度及びSOC演算部54で演算されたSOCに対応する充電時間を抽出することで、バッテリ20の残充電時間を演算する。そして、残充電時間演算部58は演算した残充電時間を表示部30に表示させる。
【0062】
残充電時間演算部58は、所定の周期で上記の演算を行い、演算毎に、表示部30に残充電時間を表示する。定電力制御では、バッテリ20の充電電力は一定のままである。そのため、残充電時間演算部58は、定電力制御中、抽出した同一のマップ上で、残充電時間を演算するため、表示部30に表示される残充電時間は、SOCの増加に伴い徐々に短くなる。
【0063】
そして、バッテリ20のSOCが増加し、バッテリ20の充電可能電力が充電器10の出力可能電力未満になると、上記のとおり、バッテリ20の充電制御は、定電力制御から定電圧制御に遷移する。
【0064】
次に、定電圧制御の残充電時間について説明する。まず、定電圧制御において、残充電時間がバッテリ20の充電電力に基づいてメモリ40のマップを参照して演算される場合(以下、比較例1と称する)について、図4を用いて説明する。図4は、図3のマップから、電池温度を0度に固定した場合に、SOCと充電電力の関係を示すマップである。比較例1において、定電圧制御では、充電器10から出力される電力は絞られ、バッテリ20の充電電力は徐々に低くなる。残充電時間演算部58は、バッテリ20の充電電力に基づいてメモリ40のマップを抽出するため、電力の低下と共に、充電電力が低いマップを選択することになる。
【0065】
定電圧制御中、充電器10から出力される電流は、離散的に下がるため、バッテリ20の充電電力も離散的に下がる。例えば、充電器10による出力電力の絞りによって、バッテリ20の充電電力が、3.3kW(定電力制御から定電圧制御に遷る直前の電力)から1.2kWに下がり、所定時間の経過後、1.2kWから0.6kWに下がったとする。充電電力が3.3kWから1.2kWに下がる前後の、バッテリ20のSOCは60%、1.2kWから0.6kWに下がる前後の、バッテリ20のSOCは80%とする。
【0066】
なお、ここでは、説明を容易にするために、図4に示すように例示的な数値を挙げた上で、3.3kWから1.2kWに、1.2kWから0.6kWに電力を下げているが、本例においては、定電圧制御中における電力の変化量は、任意の値に設定される。
【0067】
3.3kW(SOC:60%)で、マップにより演算されるバッテリ20の残充電時間は、165分であるが、3.3kWから1.2kWに下がると、残充電時間は165分から428分に上昇する。また、1.2kW(SOC:80%)で、マップにより演算されるバッテリ20の残充電時間は、175分であるが、1.2kWから0.6kWに下がると、残充電時間は175分から342分に上昇する。
【0068】
すなわち、比較例1では、出力電力の低下の前後で、バッテリ20のSOCが同一で、電池温度が同一であれば、バッテリ20の充電電力が低くなると、バッテリ20の残充電時間は大きくなる。定電圧制御中、バッテリ20の出力電力は徐々に下げられるため、出力電力が下がる度に、残充電時間が長くなることになる。比較例1では、バッテリ20の充電中にも関わらず、表示部30に表示される残充電時間が増加するため、表示部30の残充電時間を見ているユーザに違和感を与えるという問題があった。
【0069】
本発明において、残充電時間演算部58は、定電力制御における残充電時間の演算制御と、定電圧制御における残充電時間の演算制御を異なる方法で行っている。充電器制御部57からの信号に基づき、定電力制御から定電圧制御に遷ると、残充電時間演算部58は、定電力制御から定電圧制御に遷る直前に、その時点の充電電力に基づいて抽出したマップを固定する。そして、残充電時間演算部58は、定電圧制御により電力が低下しても、マップの切り替えを行わずに、固定したマップ上で、残充電時間を演算する。
【0070】
残充電時間演算部58は、SOC演算部54から定電圧制御中のバッテリ20のSOCを、温度検出部53からバッテリ20の温度を取得する。そして、残充電時間演算部58は、固定されたマップを参照して、SOC及び温度に対応する充電時間を、残充電時間として演算する。
【0071】
例えば、比較例1と同様に、本発明のLBC50による定電圧制御が、3.3kW(定電力制御から定電圧制御に遷る直前の電力)から1.2kWに下がり、所定時間の経過後、1.2kWから0.6kWに下がったとする。電池温度は0度とする。定電力制御から定電圧制御に遷る時のSOCは60%とし、充電電力が1.2kWから0.6kWに下がる時のSOCは80%とする。
【0072】
残充電時間演算部58は、定電力制御で参照していたマップ(3.3kWのマップ)を固定する。そして、定電圧制御により、バッテリ20の充電電力は1.2kWに下がるが、残充電時間演算部58は、固定したマップを用いて、残充電時間を演算する。バッテリ20の充電電力が1.2kWに下がった後に、所定の時間の充電中、バッテリ20のSOCは時間の経過と共に60%から上昇する。残充電時間演算部58は、3.3kWのマップ(図4を参照)上で、定電力制御から定電圧制御へ切替時には、SOC(60%)と対応させて、残充電時間(165分)を演算する。そして、定電圧制御中(1.2kWで充電中)、SOCが70%になると、残充電時間演算部58は、3.3kWのマップ(図4を参照)上で、SOC(70%)と対応させて、残充電時間(119分)を演算する。
【0073】
バッテリ20の充電電力が1.2kWから0.6kWに下がる時に、SOCは80%まで上昇しており、残充電時間演算部58は、固定した3.3kWのマップ(図4を参照)上で、SOC(80%)と対応させて、残充電時間(73分)を演算する。これにより、定電圧制御中における残充電時間は、165分から、119分、73分へと、SOCの上昇に伴って減算された時間となる。
【0074】
そして、残充電時間演算部58は、SOCに応じて減算された残充電時間を表示部30に表示させる。
【0075】
すなわち、本例において、残充電制御演算部58は、バッテリ20の充電可能電力が充電器10の出力可能電力未満になり、定電力制御から定電圧制御に遷る場合には、定電力制御で用いたマップにより演算された残充電時間から、SOCに応じて時間を減算することで、定電圧制御中の残充電時間を演算する。そのため、本例は、定電圧制御により、バッテリ20の充電電力が低下した場合でも、比較例1のように、マップの切替により残充電時間が増えることがない。その結果として、バッテリ20の充電中にも関わらず、表示部30に表示される残充電時間が増して、表示部30の残充電時間を見ているユーザに対し違和感を与えるという問題が解消される。
【0076】
図5を用いて、比較例1及び本発明において、定電力制御中及び定電圧制御中の残充電時間の変化について説明する。図5(a)は時間に対する充電電力の特性を、(b)は残充電時間の演算用の電力特性を、(c)は時間に対するSOCの特性を、(d)は時間に対する残充電時間の特性を示すグラフである。各グラフで、実線が本発明の特性を、点線が比較例1の特性を示している。時間(t)は、バッテリ20の充電電力が充電器10の出力可能電力になった時点を示している。
【0077】
残充電時間演算用電力は、残充電時間演算部58で、マップを参照する際に用いる、バッテリ20の充電電力である。図5(a)に示すように、時間(t)より前は、定電力制御が行われるため、バッテリ20の充電電力は一定である。時間(t)以降は、定電圧制御が行われるため、バッテリ20の充電電力は時間の経過と共に、低くなる。
【0078】
定電力制御中において、図5(b)に示すように、バッテリ20の充電電力が一定であるため、残充電時間演算部58により、メモリ40のマップの選択に用いられる電力(残充電時間演算用電力)は一定である。図(c)に示すように、SOCは時間の経過と共に上昇する。残充電時間の演算用の電力は一定であるため、残充電時間の演算用のマップは固定されたままとなる。そのため、図(d)に示すように、残充電時間は、SOCの増加に伴って、減少する。
【0079】
時間(t)以降の定電圧制御について、比較例1は、定電圧制御中も、バッテリ20の充電電力に基づいてマップを選択し、残充電時間を演算する。そのため、図(b)に示すように、比較例1では、残充電時間の演算用の電力が、バッテリ20の充電電力の特性と同じ軌跡で低下する。そして、図(d)に示すように、比較例1では、残充電時間の演算用の電力の低下に伴い、マップの切替が行われるため、充電中にもかからず、残充電時間が増加する。
【0080】
一方、本発明において、時間(t)以降、バッテリ20の充電電力は下がるが、残充電時間演算部58は、時間(t)時点の充電電力を、残充電時間の演算用の電力に固定する(図5(b)を参照)。そして、残充電時間演算部58は、時間(t)の時点でメモリ40のマップで参照して演算された残充電時間から、SOCに応じて時間を減算することで、残充電時間を演算している。そのため、本発明では、図(d)に示すように、残充電時間は、時点(t)の時点でマップを参照して演算された残充電時間(Ts)からSOCの増加と共に減少して推移する。
【0081】
次に、追い充電制御の残充電時間について説明する。充電器制御部57からの信号に基づき、定電圧制御から追い充電制御に遷ると、残充電時間演算部58は、追い充電制御に遷る直前に演算した残充電時間(言い換えると、バッテリ20の充電電流が電流閾値(I)になった時点で、残充電時間演算部58により演算されていた残充電時間)を、時間の経過と共に増加する追い充電の回数に応じて減算し、追い充電制御中の残充電時間を演算する。追い充電の回数は、シーケンスにより予め決まっているため、追い充電の回数がシーケンスで定めた回数に達し、最終回の追い充電を終了した時に、残充電時間がゼロになるように、残充電時間演算部58は時間を減算する。また、追い充電1回あたりに減算する時間の幅は、一定値にしてもよいし、またシーケンスで定める1回の追い充電の時間と対応させてもよい。
【0082】
充電器制御部57は、追い充電の回数を管理しており、追い充電のカウンタを増加させる度に、残充電時間演算部58に対して信号を送信する。残充電時間演算部58は、当該信号に基づいて、同様に、追い充電の回数を管理している。そして、残充電時間演算部58は、追い充電回数のカウンタを増加させるタイミングで、残充電時間を減算し、表示部30に表示されている時間を更新する。そして、残受電時間演算部58は、追い充電のカウンタがシーケンスで決まっている追い充電の回数を数え、満充電フラグが立ったことを確認すると、残充電時間をゼロとする。
【0083】
図6を用いて、比較例2及び本発明において、充電制御中の残充電時間の変化について説明する。図6(a)は時間に対する充電電力の特性を、(b)は時間に対するSOCの特性を、(c)は時間に対する追い充電カウンタの特性を、(d)は時間に対する残充電時間の特性を示すグラフである。各グラフで、実線が本発明の特性を、破線が比較例2の特性を示している。時間(t)は、バッテリ20の充電電力が充電器10の出力可能電力になった時点を示し、時間(t)は、バッテリ20の充電電流が電流閾値(I)になった時点を示している。比較例2では、時間(t)以降、SOCの演算値に応じて残充電時間を演算し、SOCの演算値の上昇により残充電時間を減らすように演算している。
【0084】
追い充電制御中において、図6(a)に示すように、バッテリ20には、電流が間欠的に供給されるため、バッテリ20の充電電力はゼロに近い値で近似的に示される。また、図6(b)に示すように、バッテリ20のSOCは既に満充電時のSOCに近い状態であり、バッテリ20に供給される充電電力が低いため、時間(t)以降のSOCは、高い値でほぼ一定になる。
【0085】
比較例2は、SOCの演算値に応じて時間(t)以降の残充電時間を演算しており、時間(t)以降のSOCの変化量が小さいため、残充電時間も一定値となる。すなわち、追い充電による充電中にも関わらず、残充電時間が減少せず、一定の時間となる。
【0086】
一方、本例は、追い充電の回数に応じて(すなわち時間の経過に応じて)残充電時間を減算することで、時間(t)以降の残充電時間を演算している。図6(c)に示すように、追い充電のカウンタは、時間(t)以降、時間の経過と共に増加している。そのため、図6(d)に示すように、残充電時間は、追い充電のカウンタの増加(すなわち経過時間)に伴って、減少する。
【0087】
ここで、車両の駆動用モータ(図示しない)に電力を供給するバッテリ20の充電電流及びバッテリ20の残充電時間について説明する。充電器10によりバッテリ20を充電する際の充電電流は、0.3mA〜1.0A程度の広い範囲(レンジ)の電流値となる。そのため、このような範囲の電流値を検出する電流センサ(電流検出部51)では、広い範囲の電流値を検出する分、小さな電流変化を検出する際の検出精度が悪い(センサの分解能が低い)。そして、比較例2のように、このような電流センサの検出値からSOCを演算して、演算したSOCに応じて残充電時間を演算すると、電流センサの検出誤差によって、充電中にも関わらず、残充電時間が増加する可能性がある。
【0088】
本例では、バッテリ20の充電電流が電流閾値(I)になった時点で、定電圧制御中に演算した残充電時間を、経過時間(本例においては追い充電回数の増加)に応じて減算することで、残充電間を演算する。そのため、本例は、バッテリ20が満充電に近づき、SOCの変化量が小さい状態でも、比較例2のように、追い充電中に、残充電時間が一定値になったり、電流センサの誤差により残充電時間が増加したりすることもない。その結果として、バッテリ20の充電中にも関わらず、表示部30に表示される残充電時間が増し、あるいは、時間が経過しても残充電時間が減らずに、表示部30の残充電時間を見ているユーザに対し違和感を与えるという問題が解消される。
【0089】
図7を用いて、本例の充電制御における、バッテリ20の状態及び残充電時間について説明する。図7(a)は時間に対するSOCの特性を、(b)は時間に対する指令電力の特性を、(c)は時間に対する追い充電カウンタの特性を、(d)は時間に対する満充電フラグの特性を、(e)は時間に対する残充電時間の特性を示すグラフである。指令電力は、充電器制御部57から充電器58に対して出力される指令値である。追い充電制御では、シーケンスで示される電力値に相当する。
【0090】
時間(t)はバッテリ20の充電可能電力が充電器10の出力可能電力に達した時点を示し、時間(t)はバッテリ20の充電電流が電流閾値(I)に達した時点を示す。時間(tb1)は1回目の追い充電を終える時点を示し、時間(tb2)は1回目の追い充電を終える時点を示し、時間(t)は満充電の地点を示す。なお、時間(t)及び時間(t)は、図5の時間(t)及び図6の時間(t)にそれぞれ対応している。
【0091】
定電力制御では、指令電力は一定に推移しつつ、バッテリ20のSOCは上昇し、残充電時間は減少する。時間(t)で、定電圧制御により、指令電力は徐々に低下する。指令電力は低下しているが、バッテリ20には電力が供給されている。そのため、バッテリ20のSOCは、定電力制御のSOCの変化量と比較して、低い変化量で、上昇する。残充電時間は、SOCの増加に応じて減少する。
【0092】
時間(t)で、追い充電制御により、指令電力は、追い充電制御のシーケンスに基づいて推移する。時間(t)の時点で、充電器制御部57により、追い充電を1回行うことで、追い充電カウンタは、1回目をカウントアップする。そして、1回目の追い充電を終える際(時間(tb1))に、残充電時間演算部58は、残充電時間を所定の時間分、減算する。
【0093】
充電器制御部57により、2回目の追い充電が行われ、追い充電カウンタは、2回目をカウントアップする。そして、2回目の追い充電を終える際(時間(tb2))に、残充電時間演算部58は、残充電時間を、所定の時間分減算する。時間(t)の時点で、満充電フラグが立ち、LBC50は充電制御を終了する。
【0094】
次に、図8図10を用いて、LBC50による充電制御のフローを説明する。図8はLBC50の充電制御の制御手順を示すフローチャートである。図9は定電圧制御の制御手順を示すフローチャートである。図10は追い充電制御の制御手順を示すフローチャートである。
【0095】
ステップS1にて、充電器制御部57は、バッテリ20と充電器10との接続を確認すると、充電器10からの信号に基づき、充電器10の出力可能電力を検出し、充電を開始する。
【0096】
ステップS2にて、電流検出部51はバッテリ20の電流を検出し、電圧検出部52はバッテリ20の電圧を検出し、温度検出部53はバッテリ20の温度を検出する。ステップS3にて、充電可能電力演算部55は、ステップS2で検出された検出値を用いて、バッテリ20の充電可能電力を演算する。
【0097】
ステップS4にて、充電器制御部57は、充電可能電力と出力可能電力とを比較する。バッテリ20の充電可能電力が、充電器10の出力可能電力以上である場合には、ステップS5にて、充電器制御部57は、充電器10から出力可能電力を出力させて、バッテリ20を充電させる。
【0098】
ステップS6にて、出力可能電力で充電中に、電流検出部51等により、バッテリ20の電流、電圧及び温度が検出される。ステップS7にて、SOC演算部54は、ステップS6で検出された検出電流を用いて、バッテリ20のSOCを演算する。
【0099】
ステップS8にて、実電力演算部56は、ステップS6で検出された検出電圧及び検出電流を用いて、バッテリ20の充電電力を演算する。ステップS9にて、残充電時間演算部58は、メモリ40に記録されている複数のマップから、S7で演算した充電電力に対応するマップを選択する。
【0100】
そして、残充電時間演算部58は、当該マップを参照して、ステップS6で検出した電池温度及びステップS7で演算したSOCと対応する充電時間を、残充電時間として演算する(ステップS10)。ステップS11にて、残充電時間演算部58は、ステップS10で演算した残充電時間を表示部30に表示し、ステップS3に戻る。なお、ステップS3では、ステップS6で検出された検出値を用いて、バッテリ20の充電可能電力が演算される。
【0101】
ステップS4で、バッテリ20の充電可能電力が、充電器10の出力可能電力未満である場合には、ステップS20にてLBC50は、以下のとおり、定電圧制御を行う。
【0102】
図9に示すように、ステップS21にて、充電器制御部57は、充電器10を制御して、充電器10の出力電力を出力可能電力より低い電力に下げる。ステップS22にて、定電圧制御で充電中に、電流検出部51等により、バッテリ20の電流、電圧及び温度が検出される。ステップS23にて、SOC演算部54は、ステップS22の検出電流を用いて、バッテリ20のSOCを演算する。
【0103】
ステップS24にて、残充電時間演算部58は、定電圧制御する直前に選択したマップ(ステップS9で選択したマップ)上で、ステップS23で演算したSOCに対応する充電時間を抽出することで、SOCに応じて時間を減算して、残充電時間を演算する。ステップS26にて、充電器制御部57は、ステップS22で検出したバッテリ20の充電電流と電流閾値(I)とを比較する。
【0104】
充電電流が電流閾値(I)以上である場合には、ステップS21に戻り、定電圧制御のフローを繰り返す。一方、充電電流が電流閾値(I)未満である場合には、LBC50は定電圧制御を終了し、ステップS30の追い充電制御に遷る。
【0105】
図10に示すように、ステップS31にて、充電器制御部57は、追い充電制御のシーケンスを示す信号を送信し、充電器10を制御する。ステップS32にて、残充電時間演算部58は、追い充電の回数をカウントアップする。ステップS33にて、残充電時間演算部58は、追い充電の回数に応じて、時間を減算して、残充電時間を演算する。ステップS34に残充電時間演算部58は、充電時間を表示する。
【0106】
ステップS35にて、充電器制御部57は、ステップS32でカウントした追い充電回数と、充電終了を示す回数閾値とを比較する。追い充電回数が回数閾値以下である場合には、ステップS31に戻り、LBC50は追い充電制御を継続する。追い充電回数が回数閾値より多くなると、充電器制御部57は満充電フラグを立てて、残充電時間演算部58は充電時間をゼロとし、本例の制御を終了する。
【0107】
なお、上述のステップS33における、追い充電の回数1回あたりに減算する時間は、追い充電制御に遷った時点の残充電時間を、(追い充電回数の)回数閾値で除算した時間としても良い。図7に記載の例であれば、回数閾値は2であるので、追い充電制御に遷った時点の残充電時間を2で除算した値を、1セットの追い充電終了タイミング毎に減算する。これにより、1セットの追い充電終了タイミング毎に減算される時間を均一とし、より違和感の少ない残充電時間を表示することができる。
【0108】
上記のように、本例は、バッテリ20の充電電流が電流閾値(Ib)以上から電流閾値(Ib)未満となった場合には、充電電流が電流閾値(Ib)未満となる時点で演算された残充電時間を、充電電流が電流閾値(Ib)未満となった時点からの経過時間に応じて(時間の経過に伴って増加する追い充電のカウント値に応じて)減算して、残充電時間を演算する。これにより、充電中、バッテリ20のSOCが大きく変化しない状態でも、正確な残充電時間を演算することができる。また、電流検出部51等のセンサの誤差により、充電中にも関わらず演算した残充電時間が増加することを防止する。
【0109】
なおここで、本例においては追い充電のカウント値を、充電電流が電流閾値(Ib)未満となった時点からの経過時間として用いている。すなわち、本例においては追い充電の回数を計数するカウンタを、充電電流が電流閾値(Ib)未満となった時点からの経過時間を計時する手段として用いている。しかしながら、例えば充電電流が電流閾値(Ib)未満となった時点からの経過時間を計時するタイマを設け、タイマの計時時間に応じて残充電時間を減算しても良い。本例においては、追い充電の回数を計数するカウンタを、充電電流が電流閾値(Ib)未満となった時点からの経過時間を計時する手段として用いることによって、新たにタイマ等の構成を追加することなく実現し、コストの上昇を抑えている。
【0110】
また本例は、追い充電制御において、充電器10からバッテリ20へ電力を出力する回数に応じて減算することにより、充電電流が電流閾値(Ib)未満となる時点で演算された残充電時間を、充電電流が電流閾値(Ib)未満となった時点からの経過時間に応じて減少させる。これにより、本例は、正確な残充電時間を演算することができる。
【0111】
また本例は、定電圧制御中に演算した残充電時間を経過時間に応じて減算する。これにより、正確な残充電時間を演算することができる。
【0112】
また本例は、バッテリ20の充電電流が電流閾値(I)以上である場合には、SOC及びバッテリ20の充電電力に対する充電時間の関係を示すマップを参照し、演算されたSOC及び演算された充電電力に基づいて、バッテリ20の残充電時間を演算する。これにより、定電力制御及び定電圧制御においては、マップを利用することで、正確な残充電時間を演算することができる。
【0113】
また本例は、メモリ40のマップを参照し、バッテリ20のSOC、バッテリ20の充電電力、及び、バッテリ20の温度に基づいて、残充電時間を演算する。これにより、バッテリ20の温度に応じた残充電時間を演算することができる。
【0114】
なお、本例は、追い充電制御において、残充電時間を演算する際に、温度に応じて減算する値(時間)を設定し、残充電時間演算部58は、バッテリ温度が低くなるほど、減算する値を小さくしてもよい。追い充電制御において、バッテリ20の特性上、バッテリ温度が低いほど、充電時間が長くなる。そのため、残充電時間演算部58は、温度検出部53の検出温度により、追い充電制御中のバッテリ20の温度を管理し、バッテリ温度が低いほど、経過時間に応じて減算させる値を小さくして、残充電時間が長くなるように、演算する。これにより、バッテリ温度に応じた残充電時間を正確に演算することができる。また、充電制御部58は、バッテリ温度に応じて、追い充電のシーケンスを設定してもよい。
【0115】
また、本例において、追い充電制御に切り替えるための電流閾値(I)は、バッテリ20のSOCが所定の変化量閾値より小さくなる場合の、バッテリ20の充電電流に基づいて設定してもよい。上記のとおり、追い充電制御は、バッテリ20の分極作用により、定電力制御又は定電圧制御では効率よく充電できない場合に行う制御であって、バッテリ20が満充電に近い状態で行う充電制御である。
【0116】
バッテリ20のSOC特性として、バッテリ20が満充電に近づくと、SOCの変化量が極端に小さくなる。そのため、バッテリ20のSOCが満充電に近い状態を示す閾値として、変化量閾値を予め設定し、当該変化領域値に基づいて、電流閾値(I)を設定する。これにより、充電電流を検出することで、SOCの変化量が小さくなり、バッテリ20が満充電に近い状態を把握することができ、本例は、追い充電制御を行うタイミングを検出することができる。
【0117】
上記の電流検出部51及び電圧検出部52が本発明の「検出手段」に相当し、温度検出部53が本発明の「温度検出手段」に、SOC演算部54が本発明の「充電状態演算手段」に、充電可能電力演算部55が本発明の「充電可能電力演算部」に、充電器制御部57が本発明の「充電器制御手段」に、充電時間演算部58が本発明の「充電時間演算手段」に、表示部30が本発明の「表示手段」に相当する。
【符号の説明】
【0118】
10…充電器
20…バッテリ
30…表示部
40…メモリ
50…LBC
51…電流検出部
52…電圧検出部
53…温度検出部
54…SOC演算部
55…充電可能電力演算部
56…実電力演算部
57…充電器制御部
58…残充電時間演算部
100…交流電源
図1
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