(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(A)成分のポリテトラフルオロエチレン樹脂〔PTFE〕エマルジョンを形成するPTFEとしては、テトラフルオロエチレン〔TFE〕の単独重合体のみならず、TFEと少量(数モル%以下)のパーフルオロアルキルビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン、エチレン等との共重合体であって、数平均分子量Mn(J. of Applied Polymer Science 第17巻、第3253〜7頁、1973 記載の方法で測定)が好ましくは2×10
4〜1×10
7、より好ましくは2×10
5〜8×10
6のものが用いられる。Mnがこれ未満のものを用いると、耐摩耗性、耐衝撃性、非粘着性が悪化する傾向がみられ、一方これ以上のものを用いると、コーティング剤の柔軟性(屈曲性)やウレタンバインダーとの接着性を悪化させる傾向がみられる。
【0014】
また、その平均粒子径(光散乱法により測定)は、約200〜500nm、好ましくは約200〜400nmのPTFEが用いられる。平均粒子径が200nm未満では粒子同士が凝集し易くなって塗布面にザラツキが発生し、一方、500nmを超えると、粒子が沈降し易くなり、水性エマルジョンの安定性が低下するようになる。PTFEは、一般に乳化重合法により得られ、得られた水性分散液に、必要に応じて安定化のために必要な界面活性剤を加え、濃縮・安定化させたものが用いられる。
【0015】
PTFEは粒子状であり、それの非粘着特性、低摩擦特性のため、またPTFEの分子量が大きく、粒子が小さいため、加硫ゴム表面でのブルームの遮蔽やブルームの形成を遅らせることができるので、PTFEエマルジョンは、低摩擦性、シール相手材への粘着の低減、加硫ゴム表面にみられるブルームの抑制などを達成せしめる。
【0016】
このようなPTFEおよびそのエマルジョンの性状を考慮し、PTFEは全固形分中約20〜80重量%、好ましくは約30〜70重量%を占めるような割合で用いられる。PTFE固形分の割合がこれよりも低い場合には、摩擦係数が高くなって粘着し易くなり、また加硫ゴムからのブルームを遮蔽することができなくなる。一方、これよりもPTFE固形分の割合が高い場合には、ゴムとの接着性や柔軟性が悪化するばかりではなく、塗布表面にPTFEの凝集塊が発生して表面粗さが大きくなり、シール部品の場合にはシール性が低下する。また、その凝集塊が脱落し、不純物となる。
【0017】
実際には、PTFEエマルジョンとしては市販品、例えばダイキン製品ポリフロンディスパージョンD-1 E、旭硝子製品フルオンPTFE AD911E等をそのままあるいは適度に希釈して用いることができる。
【0018】
(B)成分のウレタン樹脂エマルジョンとしては、2個以上の活性水素原子を有する化合物と有機ポリイソシアネートとの反応により得られるウレタンプレポリマーを水に分散させた一液性のエマルジョン、例えば特許文献1記載のものが用いられる。
【0019】
上述の2個以上の活性水素原子を有する化合物は、分子末端または分子内に2個以上のヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基またはメルカプト基等を有するポリエーテル、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリチオエーテル、ポリアセタール、ポリブタジエン、ポリシロキサン等であり、好ましくは、分子末端に2個以上のヒドロキシル基を有するポリエーテルまたはポリエステルである。また、2個以上の活性水素原子を有する化合物には、必要に応じて鎖延長剤を配合してもよい。
【0020】
分子内に水酸基を2個以上有するポリエステルポリオールの具体例としては、アジピン酸、セバシン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸等のジカルボン酸類とエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール)、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタジオール、トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等のポリオール化合物とから得られるポリエステルポリオール類;ポリカプロラクトンポリオール、ポリβ-メチル-δ-バレロラクトン等のポリラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0021】
また、有機ポリイソシアネートとしては、従来より慣用されている鎖状あるいは脂環式の脂肪族または芳香族の有機ポリイソシアネートを使用でき、例えば1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4′-ジイソシアネート、メチルシクロヘキシル-2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキシル-2,6-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネート)メチルシクロヘキサン、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート類等の脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,4-トルイレンジイソシアネート、2,6-トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、1,5′-ナフテンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-ジベンジルジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;リジンエステルトリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-イソシアネート-4,4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロへプタントリイソシアネート、トリメチロールプロパンとトルイレンジイソシアネートとのアダクト体、トリメチロールプロパンと1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートとのアダクト体等のトリイソシアネート類などが、好ましくはトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートまたはこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
これらの各モノマーは、例えばアセトン、メチルエチルケトン等の親水性の揮発性溶剤の存在下で反応させてポリウレタン樹脂を合成し、次いでアセトン法、プレポリマーミキシング法、ケチミン法、ホットメルトディスパージョン法等の公知の方法でウレタン樹脂エマルジョンに転化することができる。
【0023】
この際、必要に応じて、リン酸、ベンゾイルクロライド等の反応制御剤、ジブチルスズジラウレート、スタナスオクトエート、トリエチルアミン等の反応触媒、さらにはイソシアネート基と反応しない有機溶媒を反応に際しまたは反応終了後に添加してもよい。上記有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、トルエン、キシレン等が挙げられる。さらに上記付加反応法では、必要であれば、反応に際しまたは反応終了後に酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤を添加することもできる。
【0024】
水中に分散する方法についても特に限定はされず、従来より公知の方法により行うことができる。例えば、ホモミキサー、ディスパー等の高速分散機によって機械的なせん断力を付与しつつ、有機相に水を添加しながら分散させる方法、水相中に有機相を添加する方法等を採用することができる。このような機械的分散法を適用することにより、分散のバラツキを解消させることができる。
【0025】
水中に分散させる際には、バッチ式で行ってもよく、ロータ・ステータ式、ラインミル式、スタティクミキサ式、振動式、超音波式、高圧式等の連続式で行ってもよい。また、バッチ式あるいは連続式の分散方法の何れにおいても、2種以上の設備を接続して分散を行ってもよい。また、分散装置としては、被分散物を水中に分散するための分散部を1個有するものが用いられるが、分散部を2個以上有するものであってもよい。
【0026】
ウレタン樹脂エマルジョンの添加は、滑り性や粘着性の点での難点はみられるものの、ウレタン樹脂の粘着力により、加硫ゴムとの接着性や柔軟性を増加させる。
【0027】
そのため、エマルジョンの形で用いられるウレタン樹脂は、全固形分中約10〜50重量%
、好ましくは約15〜40重量%の割合で用いられる。これよりも多い割合でウレタン樹脂が用いられると、摩擦係数が高くなり、また粘着し易くなる。一方、これよりも少ない割合でウレタン樹脂が用いられると、加硫ゴムとの接着性や柔軟性が低下するようになる。
【0028】
実際には、ウレタン樹脂エマルジョンとしては、市販品、例えば宇部興産製品UW-1005E、三洋化成製品ユーコートUWS-145等をそのままあるいは適度に希釈して用いることができる。
【0029】
また、(C)成分の水素化NBRエマルジョンとしては、例えばNBRの水性エマルジョンをエマルジョン状態を保持しながら、Pd化合物水素化触媒の存在下でガス状または溶存水素と接触させ、C=C 結合の50〜99.95%水素化させる方法(特許文献4〜5)などによって得られるエマルジョンが用いられる。
【0030】
水素化NBRエマルジョンは、摩擦係数を増大させ、シール相手材への粘着性を増大せしめるなどの要素も認められるが、ウレタン樹脂の耐水性、柔軟性、加硫ゴムとの接着性などをそれぞれ向上させる。
【0031】
そのため、エマルジョンの形で用いられる水素化NBRは、全固形分中約3〜
40重量%、好ましくは約5〜40重量%の割合で用いられる。水素化NBRがこれよりも少ない割合で用いられると、加硫ゴム成形品との接着性、柔軟性、耐水性などが悪化する傾向がみられ、一方これよりも多い割合で用いられると、摩擦係数が高く、粘着し易くなるばかりではなく、塗布時に基材同士が接触した場合に粘着し易くなる。
【0032】
水素化しないNBRエマルジョンを用いた場合には、耐水性は向上するが、水素化NBRエマルジョンを用いた場合と比較して粘着性が高くなり、また被膜強度が不足するため、粘着時に被膜の剥離が生ずるようになる。
【0033】
水素化NBRエマルジョンとしては、実際には市販品、例えば日本ゼオン製品ZLxB、ZLxA等をそのままあるいは適度に希釈して用いることができる。
【0034】
以上の(A)成分 PTFEエマルジョン、(B)成分 ウレタン樹脂エマルジョンおよび(C)成分 水素化NBRエマルジョンに加えて、(D)成分としてアクリル樹脂エマルジョンおよびエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂〔EVA〕エマルジョンの少くとも一方、好ましくはこれら両者をさらに追加して用いた場合には、高温加湿試験による加硫ゴムからのブルームによるゴムとの接着性評価をさらに一段と改善することができる。
【0035】
(D)成分のアクリル樹脂エマルジョンを形成するアクリル樹脂としては、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルの単独重合体または共重合体であって、その単独重合体のガラス転移温度が-20℃以下のものが用いられ、例えばガラス転移温度が-30℃以下のものは、特許文献6に記載されている。ガラス転移温度が低い程、粘着がなくなり、硬くなって低摩擦となる。一方、ガラス転移温度がこれよりも高いものを用いると、逆に粘着があり、強度が下がり、摩擦係数が高くなる。好ましくは、メタクリル酸のアルキルエステルの重合体が用いられる。(メタ)アクリル酸エステルのアルキル基としては、C
2〜C
16、好ましくはC
2〜C
12の直鎖もしくは分岐アルキル基が挙げられる。
【0036】
エマルジョンの形で用いられるアクリル樹脂は、全固形分中0〜50重量%、好ましくは約5〜30重量%の割合で用いられる。アクリル樹脂エマルジョンの添加は、摩擦係数を低下させ、シール相手材に粘着し難くなるが、アクリル樹脂がこれ以上の割合で用いられると、加硫ゴムとの接着性や柔軟性が低下するようになる。
【0037】
実際には、アクリル樹脂エマルジョンとしては、市販品、例えば日本カーバイト製品ニカゾールFX-329、RX-66E等をそのままあるいは適度に希釈して用いることができる。
【0038】
また、エマルジョンの形で用いられるEVAは、全固形分中0〜50重量%、好ましくは約5〜40重量%の割合で用いられる。EVAエマルジョンの添加は、加硫ゴムとの接着性を向上させ、また柔軟性を向上させる。ただし、これ以上の割合でEVAが用いられると、摩擦係数を増大させ、シール相手材への粘着を増大させ、また塗布時に基材同士が接触した場合に粘着し易くなる。
【0039】
実際には、EVAエマルジョンとしては、市販品、例えば日本カーバイト製品ニカゾールME-702XT、電気化学工業製品デンカEVAテックス80等をそのままあるいは適度に希釈して用いることができる。
【0040】
コーティング剤組成物の調製は、以上の各エマルジョンを混合することにより行われるが、好ましくは次の順番で各配合成分を容器中に投入し、固形分濃度約5〜50重量%、好ましくは約10〜40重量%のコーティング剤として調製される。
(i) エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂〔EVA〕エマルジョン
(ii) 水
(iii) 水素化NBRエマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン
(iv) ウレタン樹脂エマルジョン
(v) PTFEエマルジョン
【0041】
加硫ゴム成形品へのコーティング剤組成物のコーティングは、スプレー法、ディッピング法等一般に用いられているコーティング方法によって行われる。コーティングされる加硫ゴム成形品のゴムの種類は特に限定されず、例えばNBR、水素化NBR、アクリルゴム、フッ素ゴム等の加硫成形品に適用可能である。
【実施例】
【0042】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0043】
実施例1〜5、比較例1〜5
(1) ロータやプロペラ等の攪拌装置を備えた容器中に、
(i) エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂〔EVA〕エマルジョン
(ii) 水
(iii) 水素化NBRエマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン
(iv) ウレタン樹脂エマルジョン
(v) PTFEエマルジョン
の順番で各配合成分を投入し、均一になる迄攪拌し、固形分濃度30重量%のコーティング剤を調製した。
ここでは、次のよう市販品が各配合成分として用いられた。
PTFEエマルジョン:ダイキン製品ポリフロンディスパージョンD-1 E
固形分濃度61重量%、Mn6,000,000、平均粒子径220
nm
ウレタン樹脂エマルジョン:宇部興産製品 UW-1005E
固形分濃度27.4重量%
水素化NBRエマルジョン:日本ゼオン製品ZLxB
固形分濃度40.5重量%
アクリル樹脂エマルジョン:日本カーバイド製品ニカゾールFX-329
固形分濃度45重量%
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン
〔EVAエマルジョン〕:日本カーバイド製品ニカゾールME-702XT
固形分濃度56重量%
NBRエマルジョン:日本ゼオン製品Nipol 1562
固形分濃度41重量%
【0044】
(2) NBR(JSR製品JSR N220S) 100重量部
カーボンブラック(新日化カーボン製品HTC#S・S) 40 〃
亜鉛華3号(正同化学工業製品) 5 〃
ステアリン酸(ミヨシ油脂製品) 2 〃
老化防止剤(精工化学製品サンタイトR) 3 〃
老化防止剤(大内新興化学工業製品6C) 2 〃
可塑剤(ADEKA製品RS-107) 15 〃
硫黄(細井化学製品) 1.2 〃
加硫促進剤(大内新興化学工業製品ノクセラーTT) 2 〃
加硫促進剤(大内新興化学工業製品ノクセラーCZ) 2.5 〃
以上の各成分をロールを用いて混練した後、180℃、6分間のプレス加硫を行い、厚さ2mmのシートおよびOリングを加硫成形した。
【0045】
(3) プレス加硫物の表面をキムワイプに付けたメチルエチルケトンで拭き取り、そこにコーティング剤を塗布厚5〜10μmでスプレーコーティングした後、140℃で30分間の加熱処理を行った。コーティング処理された加硫物について、次の各項目の測定が行われた。
動摩擦係数:ASTM D-1894(-11el)、JIS K7125(1999年)、JIS P8147
(2010年)、ISO 8295(1995年)準拠
新東化学製表面性試験機ヘイドン・トライボギア使用
コーティングしたゴムシート表面の動摩擦係数を次の試
験条件下で測定
相手材:直径10mmのSUS304鋼球
移動速度:50mm/分
荷重:0.49N
振幅:50mm
屈曲試験:JIS K5600-5-1(1999年)、ISO 1519(1973年)準拠
コーティング処理したゴムシートを直径6mmのマンドレル
に屈曲させ、屈曲した状態でゴバン目試験と同様のテープ
剥離を行い、次の評価基準に従って、コーティング剤が剥
離したか否か、換言すればコーティング剤の柔軟性を評価
した
○:屈曲部の剥がれやテープへの転写なし
×:屈曲部の剥がれやテープへの転写あり
粘着試験:コーティング処理したゴムシートを直径13mmの円板状に打
ち抜き、室温条件下に1週間放置した後、相手材SUS430、
圧縮率33.3%でコーティング層同士が対向するように挟み
込み、100℃で60分間加熱した後室温条件下に1時間放置し
てから、圧縮型から解放し、コーティング剤がSUS430に粘
着することによるコーティング剤の金属への転写の有無を
次の評価基準に従い、金属との粘着試験として評価した
○:SUS430に対してコーティング剤の転写がない
△:SUS430に対してコーティング剤が一部転写
×:離型後コーティング剤がSUS430に圧縮面全面が
転写
注)加硫ゴムとコーティング剤との接着が弱い場合、加
硫ゴムからのブルームにより接着性が低下した場合
、コーティング剤が粘着する場合などには、相手材
金属側にコーティング剤が転写する
高温加湿試験:ASTM D395に対応するJIS K6262(2006年)準拠した加硫
ゴムとの粘着試験および耐水試験
加硫成形したOリング(内径34.7mm、太さ3.5mm)に、上
記と同様にしてコーティングを施し、Oリング2個を重
ねて、圧縮率20%、温度60℃、湿度90%RH、時間70時
間の条件下で圧縮し、圧縮試験後にOリング間のコー
ティング剤の剥がれ状態を、次の基準によって評価し
た
○:コーティング剤の剥がれがない
△:Oリング圧縮面のコーティング剤に一部の剥
がれが発生
×:Oリング圧縮面のコーティング剤のほぼ全面
に剥がれが発生
注)Oリング同士の圧縮面端部に水が存在したり、Oリン
グ同士の粘着、ウレタン樹脂の加水分解、ウレタン
樹脂と加硫ゴムとの接着性の低下などにより剥がれ
が発生する
ブリーディング評価:シートについて70℃、30日間の加熱試験を行い
、コーティング表面に加硫ゴムからのブルーム
成分が析出しているかどうかを目視によって観
察し、次の基準によって評価した
○:表面への固形物の析出が判断できない
×:表面への固形物の析出が判断できる
Oリングの搬送特性評価:加硫成形したOリング(内径7.8mm、太さ1.9
mm;呼び番号ASTM D2240およびD1414に対応
するJIS B2401-4種D P8)に上記と同様にし
てコーティングを施し、パーツフィーダに
よるOリングの搬送特性を、次の基準によっ
て評価した
○:Oリング同士が重なった状態での搬
送は起こらず、コーティング処理を
せずにシリコーンオイルを塗布した
ものよりも搬送速度が速い
△:コーティング処理をせずにシリコー
ンオイルを塗布したものよりも搬送
速度は速いが、Oリング同士が2個以
上重なった状態で搬送しているOリ
ングが存在する
×:コーティング処理をせずにシリコー
ンオイルを塗布したものと同等また
はそれよりも遅い
注)コーティングしない加硫ゴムにシリ
コーンオイルを塗布して搬送すると
、シリコーンオイルのベトツキで搬
送が遅くなり、またブロッキングし
たOリングはパーツフィーダ上に残
る
粘着せず、動摩擦係数が低い程、搬
送速度は速くなる
Oリングのリーク試験:加硫成形したOリング(内径119.6mm、太さ7mm
;呼び番号P120)に、上記と同様にコーティン
グを施し、Oリングを5%圧縮し、ヘリウムリ
ークディテクタを用いて、Heガス投入3分後の
漏れ量を測定し、次の基準によって評価した
○:漏れが少ない
×:漏れが多い
【0046】
(4) 以上の各実施例および比較例で得られた測定・評価結果は、用いられたコーティング剤各成分量(単位:重量部、カッコ内の数値は全固形分中の当該成分の重量百分率)と共に、次に表1(実施例)および表2(比較例)に示される。
表1(実施例)
1 2 3 4 5
〔コーティング剤成分〕
PTFEエマルジョン 98.3 108.2 108.2 98.4 65.6
(60
.0%) (66
.0%) (66
.0%) (60
.0%) (40
.0%)
ウレタン樹脂エマルジョン 87.6 73.0 73.0 69.3 109.5
(24
.0%) (20
.0%) (20
.0%) (19
.0%) (30
.0%)
水素化NBRエマルジョン 39.5 17.3 17.1 17.3 29.6
(16
.0%) ( 7
.0%) ( 7
.0%) ( 7
.0%) (12
.0%)
アクリル樹脂エマルジョン − 15.6 − 15.5 40.0
( 7
.0%) ( 7
.0%) (18
.0%)
EVAエマルジョン − − 12.5 12.5 −
( 7
.0%) ( 7
.0%)
蒸留水 101.1 119.3 119.6 117.5 88.6
〔測定・評価結果〕
動摩擦係数 0.5 0.3 0.3 0.3 0.5
屈曲試験 ○ ○ ○ ○ ○
粘着試験 △ ○ △ ○ △
高温加湿試験 △ △ ○ ○ ○
ブリーディング評価 ○ ○ ○ ○ ○
Oリング搬送特性評価 △ ○ ○ ○ ○
Oリングリーク試験 ○ ○ ○ ○ ○
表2(比較例)
1 2 3 4 5
〔コーティング剤成分〕
PTFEエマルジョン 108.2 108.2 − − 98.3
(
66.0%) (
62.3%) (
51.6%)
ウレタン樹脂エマルジョン − 146.0 273.7 182.5 87.6
(
37.7%) (75
.0%) (50
.0%) (
20.7%)
水素化NBRエマルジョン − − 61.7 − 39.5
(25
.0%) (
13.8%)
NBRエマルジョン − − − − 39.5
(
13.9%)
アクリル樹脂エマルジョン 37.8 − − 111.1 −
(17
.0%) (50
.0%)
EVAエマルジョン 30.3 − − − −
(17
.0%)
蒸留水 150.4 99.1 − 39.7 101.1
〔測定・評価結果〕
動摩擦係数 0.5 0.4 1.0 0.5 0.7
屈曲試験 ○ ○ ○ × ○
粘着試験 × △ × △ ×
高温加湿試験 × × × × ×
ブリーディング評価 ○ ○ × × ○
Oリング搬送特性評価 ○ ○ × ○ ○
Oリングリーク試験 ○ ○ ○ ○ ○