(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、実施形態に係る排ガス処理装置100の構造例を示す図である。排ガス処理装置100は、船舶のエンジン等である1以上の排ガス源110から排出される排ガスに含まれる、硫黄成分等の有害物質を除去する。本例の排ガス処理装置100は、反応塔10、1以上の排ガス導入管20、1以上のバルブ22、開口制御部26、ガス流量測定部24、1以上の液体導入管30、1以上のバルブ32、液体流量測定部34およびポンプ36を備える。
【0010】
1以上の排ガス導入管20は、排ガス源110が排出した排ガスを反応塔10に搬送する。反応塔10は、側面に1以上の開口12を有する。それぞれの排ガス導入管20の端部は、対応する開口12に接続される。それぞれの排ガス導入管20は、導入する排ガスが反応塔10の内部で螺旋状に旋回するように、反応塔10に接続される。
【0011】
反応塔10は、高さ方向に延伸する内部空間を有する。高さ方向は、例えば地面または水面と垂直な方向である。反応塔10の高さ方向における底部側から排ガスが導入され、高さ方向における上部側から排ガスが排出される。本例の反応塔10の内部空間には、液体を噴射するための幹管14が設けられる。
【0012】
幹管14は、反応塔10の内部において高さ方向に延伸して設けられ、噴射用の液体を高さ方向に搬送する。幹管14は、複数の高さ位置において液体を噴射する。幹管14には、高さ方向と直交する水平方向に延伸して液体を噴射する枝管を有してもよい。バルブ22は、それぞれの排ガス導入管20に設けられ、対応する排ガス導入管20を閉じるか否かを選択する選択部として機能する。
【0013】
1以上の開口12は、排ガスを反応塔10に導入するのに寄与する総開口面積が可変なように設けられる。例えば
図1の例では、反応塔10には3つの開口12が設けられており、バルブ22により排ガスを導入するのに寄与する開口12が選択可能である。これにより、排ガスを反応塔10に導入するのに寄与する総開口面積が可変となる。
【0014】
他の例では、反応塔10には、開口面積が可変な開口12が1つ以上設けられてもよい。例えば開口12は、シャッター等の機構により、反応塔10の側面における開口を可変にできる。
【0015】
1以上の排ガス源110は、要求される負荷等に応じて、排出する排ガス量が変動する。本明細書において特に定義がない場合、排ガス量は単位時間当たりの値を指す。また、後述する液体の流量も、特に定義がない場合、単位時間当たりの値を指す。これに対し、本例の反応塔10は、開口面積が可変なので、排ガス量に応じた開口面積を選択できる。
【0016】
一般に、開口面積(または排ガス導入管20の断面積)を小さくすることで、当該開口から導入される排ガスの速度は向上する。このため、排ガス量が少ない場合であっても、開口面積を小さく制御することで、反応塔10に導入される排ガスの流速を所定値以上に維持することができる。このため、反応塔10において排ガスを十分に旋回させることができ、排ガスに含まれる有害物質を効率よく除去することができる。従って、装置規模を小さくすることができる。
【0017】
船舶等において有害物質の排出規制が強化された場合、既存の船舶等の設備に排ガス処理装置を新たに搭載し、または、排ガス処理装置を交換することが考えられる。本例の排ガス処理装置100は小型化が容易なので、船舶等の既存設備に排ガス処理装置を設置することが容易である。
【0018】
開口制御部26は、反応塔10に導入する排ガスの流量に応じて、開口面積を制御する。本例の開口制御部26は、それぞれの排ガス導入管20に設けたバルブ22を制御することで、反応塔10に排ガスを導入するのに寄与する開口面積を制御する。開口制御部26は、排ガスの流量が少ないほど、開口面積を小さく制御してよい。開口制御部26は、排ガス流量測定部24により排ガス流量を直接測定してよく、それぞれの排ガス源110の動作制御情報等に基づいて排ガス流量を推定してもよい。動作制御情報とは、例えば排ガス源110を、定格に対してどの程度の負荷で動作させるかを制御する駆動率等を含む。
【0019】
ポンプ36は、反応塔10の内部に供給するための液体を取得する。排ガス処理装置100が船舶に設けられる場合、ポンプ36は海水、湖水または川水等を汲み上げてよい。1以上の液体導入管30は、ポンプ36が汲み上げた液体を搬送して、反応塔10内部の幹管14に供給する。バルブ32は、それぞれの液体導入管30に設けられ、対応する液体導入管30を閉じるか否かを制御する。液体流量測定部34は、ポンプ36が出力する液体の流量を測定する。
【0020】
図2(a)は、反応塔10の側面における開口12の一例を示す図である。
図2(b)は、反応塔10の上部方向から見た、反応塔10および排ガス導入管20の一例を示す図である。本例において複数の開口12は、高さ方向において異なる位置に設けられる。開口12の高さ方向における間隔は同一であってよい。開口12の間隔とは、開口12の中心点の間隔であってよい。
【0021】
また、それぞれの開口12の面積は異なっていてよい。本例の開口12は、反応塔10から排ガスが排出される上部側に近いほど面積が小さくてよい。隣接する開口12の面積は、2倍から10倍程度異なっていてよく、10倍以上異なっていてもよい。本例において最も底部側の開口12−3に対して、隣接する開口12−2の面積は10〜20%程度であってよい。また、最も底部側の開口12−3に対して、最も上部側の開口12−1の面積は1〜10%程度であってよい。開口制御部26は、排ガス量に応じて1つの排ガス導入管20を選択してよく、2以上の排ガス導入管20を選択してもよい。
【0022】
また、開口制御部26は、排ガス流量の異なる排ガス源110に対して、対応する開口12および排ガス導入管20を予め選択してよい。例えば、開口制御部26は、排ガス流量の大きい船舶の推進用メインエンジンである排ガス源110に対して、最も底部側の開口12−3を選択し、排ガス処理装置100は排ガス流量定格(100%)から20%程度までを処理してよい。また、開口制御部26は、排ガス流量の比較的少ない発電用補機エンジンである排ガス源110に対して開口12−2を選択し、排ガス処理装置100は排ガス流量20%から10%程度までを処理してよい。また、開口制御部26は、排ガス流量が発電用補機エンジンよりも更に少ないボイラである排ガス源110に対して最も上部側の開口12−1を選択し、排ガス処理装置100は排ガス流量10%から1%程度を処理してよい。
【0023】
また、
図2(b)に示すように、排ガス導入管20は、反応塔10と接続する接続部分近傍において直線状に設けられる。ただし、排ガス導入管20の外側の側壁が、反応塔10の外形の接線方向に延伸する。また、排ガス導入管20の内側の側壁が、反応塔10の外形と交差する方向に延伸するように設けられる。これにより、排ガスを反応塔10の内壁に沿って導入して、排ガスを螺旋状に旋回させることができる。
【0024】
それぞれの排ガス導入管20は、
図2(b)に示した上面図において重なるように設けられてよい。これにより、排ガス導入管20が放射状に広がることを防ぐことができる。本例の排ガス処理装置100は、排ガス処理装置100を設置する船舶等において、水平方向の設置領域に余裕がない場合に適している。
【0025】
図3A(a)は、反応塔10の側面における開口12の他の例を示す図である。
図3A(b)は、反応塔10の上部方向から見た、反応塔10および排ガス導入管20の他の例を示す図である。本例において複数の開口12は、同一の高さ位置における反応塔10の側面の周方向において所定の間隔で設けられる。複数の開口12は、反応塔10の底部側に設けられる。開口12の周方向における間隔は同一であってよい。開口12の間隔とは、開口12の中心点の間隔であってよい。
【0026】
また、それぞれの開口12の面積は異なっていてよい。それぞれの開口12の面積は、2倍から10倍程度異なっていてよく、10倍以上異なっていてもよい。本例において最も大きい開口12−3に対して、次に大きい開口12−2の面積は10%程度であってよい。また、最も大きい開口12−3に対して、最も小さい開口12−1の面積は1%程度であってよい。
【0027】
また、
図3A(b)に示すように、それぞれの排ガス導入管20は、反応塔10と接続する接続部分近傍において直線状に設けられる。ただし、排ガス導入管20の外側の側壁が、反応塔10の外形の接線方向に延伸する。また、排ガス導入管20の内側の側壁が、反応塔10の外形と交差する方向に延伸するように設けられる。これにより、排ガスを反応塔10の内壁に沿って導入して、排ガスを螺旋状に旋回させることができる。
【0028】
それぞれの排ガス導入管20は、
図3A(a)に示したように、同一の高さ位置に設けられる。本例の排ガス処理装置100は、排ガス処理装置100を設置する船舶等において、反応塔10の上部側において設置領域に余裕がない場合に適している。
【0029】
図3B(a)は、反応塔10の側面における開口12の他の例を示す図である。
図3B(b)は、反応塔10の上部方向から見た、反応塔10および排ガス導入管20の他の例を示す図である。本例の反応塔10は、それぞれの開口12の面積が同一であり、且つ、それぞれの排ガス導入管20の断面積が同一である点で、
図3Aに示した反応塔10と異なる。他の構成は、
図3Aに示した反応塔10と同一であってよい。
【0030】
本例においては、排ガスの流量が多いときは、排ガスを3つの開口12に分散して反応塔10へ導入することにより、排ガスの導入効率を上げることができる。排ガスの流量が少ないときは、排ガスの導入に用いる開口12の数を少なくすること(例えば一つの開口12のみを用いること)により、反応塔10に導入される排ガスの流速を所定値以上に維持することができる。
【0031】
図4は、開口面積が可変な排ガス導入管20の一例を示す図である。本例の排ガス導入管20は、可動部28を有する。可動部28は、反応塔10の近傍の排ガス導入管20内において、ガスが流れる流路の断面積を可変する。例えば可動部28は、排ガス導入管20におけるガス流路の一部分を遮断することで、ガス流路の断面積を制御する。排ガス処理装置100は、断面積が可変な排ガス導入管20を1以上備えてよい。
【0032】
図5は、排ガス処理装置100の他の構成例を示す図である。本例の排ガス処理装置100は、
図1に示した排ガス処理装置100に対して、ポンプ36および液体流量測定部34をそれぞれ複数備える点で相違する。他の構成は、
図1に関連して説明した排ガス処理装置100と同一であってよい。
【0033】
ポンプ36および液体流量測定部34は、液体導入管30毎に設けられる。それぞれのポンプ36は、取水口から汲み上げた液体を、対応する液体導入管30に供給する。それぞれの液体流量測定部34は、対応するポンプ36が排出する液体の流量を測定する。ポンプ36は、対応する液体流量測定部34が測定した流量が所定の流量となるように動作してよい。
【0034】
図6は、排ガス処理装置100の他の構成例を示す図である。本例の排ガス処理装置100は、
図1から
図5に関連して説明したそれぞれの排ガス処理装置100に対して、主ガス源遮断部29を更に備える点で相違する。他の構成は、
図1から
図5に関連して説明したいずれかの排ガス処理装置100と同一であってよい。
図6では、
図5に示した排ガス処理装置100に、主ガス源遮断部29を追加した構成を示している。
【0035】
主ガス源遮断部29は、複数の排ガス源110のうち、最も排ガス量が大きい排ガス源110−1に対応して設けられる。ここで最も排ガス量が大きいとは、定格動作時の排ガス量が最も大きいことを指してよい。主ガス源遮断部29は、船舶の推進用のエンジンに対して設けられてよい。
【0036】
複数の排ガス源110の排ガスは、一旦共通の排ガス導入管にまとめられる。つまり、複数の排ガス源110に接続された複数の排ガス導入管20は、一旦共通の排ガス導入管にまとめられた後に下流側で再度分岐して、対応する開口12に接続する。主ガス源遮断部29は、排ガス源110−1を、当該共通の排ガス導入管に接続するか否かを切り替える。本例の主ガス源遮断部29は、排ガス源110−1と、当該共通の排ガス導入管とを接続する排ガス導入管20−1に設けられる。つまり、主ガス源遮断部29は、排ガス導入管20−1において、共通の排ガス導入管よりも上流側に設けられる。
【0037】
主ガス源遮断部29は、例えば排ガス源110−1が動作していない場合に、排ガス源110−1を共通の排ガス導入管から遮断する。これにより、他の排ガス源110の排ガスが、重要な排ガス源110−1に流れることを防ぐ。なお、それぞれの排ガス源110に対して遮断部を設けてもよい。
【0038】
図7は、排ガス処理装置100の他の構成例を示す図である。本例の排ガス処理装置100は、
図1から
図6に関連して説明したそれぞれの排ガス処理装置100に対して、流量制御部38を更に備える点で相違する。他の構成は、
図1から
図6に関連して説明したいずれかの排ガス処理装置100と同一であってよい。なお
図7では、液体流量測定部34を省略しているが、本例の排ガス処理装置100も液体流量測定部34を有してよい。
【0039】
流量制御部38は、排ガスを処理するために反応塔10の内部に供給する液体の供給量を、排ガスを反応塔10に導入するのに寄与する開口面積に応じて制御する。本例の流量制御部38は、開口制御部26が開口面積を制御するために出力する制御信号に基づいて、液体の供給量を制御する。他の例では、流量制御部38は、複数の排ガス源110の排ガス量に基づいて、液体の供給量を制御してもよい。
【0040】
具体的には、流量制御部38は、排ガス中の有害物質濃度が一定の場合、開口面積が小さくなるほど(すなわち、排ガス量が少なくなるほど)、反応塔10に供給する液体の量を減少させる。排ガス量が少ないほど有害物質の量は少なくなるので、有害物質を吸収するための液体量も少なくてよい。液体量を適切に制御することで、ポンプ36等において消費するエネルギーを低減することができる。排ガス中の有害物質濃度は主に燃料中に含まれる有害物質濃度と燃料消費量、燃料燃焼時の空気比によって決まる。
【0041】
本例の流量制御部38は、複数の液体導入管30のうち、反応塔10に液体を供給する液体導入管30を選択することで、液体の供給量を制御する。流量制御部38は、開口制御部26が選択した開口12に対応するバルブ32と、当該バルブ32よりも上部側にあるバルブ32を選択してよい。
【0042】
例えば、流量制御部38は、開口12−3のみから排ガスを反応塔10に導入する場合には、バルブ32−1、32−2および32−3を選択し、液体導入管30−1、30−2および30−3に液体を供給する。開口12−2からのみ排ガスを反応塔10に導入する場合には、バルブ32−1および32−2を選択し、液体導入管30−1および30−2に液体を供給する。開口12−1からのみ排ガスを反応塔10に導入する場合には、バルブ32−1を選択し、液体導入管30−1に液体を供給する。また、それぞれの液体導入管30は、内部の液体流路の断面積が異なってよい。例えば反応塔10の上部側に接続される液体導入管30−1は、より底部側に接続される液体導入管30−2および液体導入管30−3よりも液体流路の断面積が小さくてよい。また、反応塔10の底部側に接続される液体導入管30−3は、より上部側に接続される液体導入管30−2よりも液体流路の断面積が大きくてよい。
【0043】
流量制御部38は、開口12の面積(すなわち排ガス量)によらず、最上部側の液体導入管30−1を常に選択してよい。そして、排ガス量が増加するほど、より底部側の液体導入管30を追加選択してよい。他の例では、流量制御部38は、それぞれのポンプ36が排出する液体の流量を制御してもよい。
【0044】
図8は、反応塔10、液体導入管30および排ガス導入管20の構成例を示す図である。反応塔10は、高さ方向に複数に分割された幹管14を有する。本例では、反応塔10の上部側から順番に配置された上部幹管14−1、中間幹管14−2および底部幹管14−3を有する。それぞれの幹管14は、対応する液体導入管30から導入された液体を、反応塔の高さ方向に搬送する。
【0045】
それぞれの幹管14には、1以上の枝管16が設けられる。それぞれの枝管16は、幹管14の外側側面から、反応塔10の内側側面に向けて延伸して設けられる。枝管16は、例えば反応塔10の高さ方向とは垂直な方向に延伸して設けられる。
【0046】
それぞれの枝管16の内部には、幹管14から分岐して液体が流れる流路が形成される。また、それぞれの枝管16は、当該流路から液体を受け取り、反応塔10の内部空間に液体を噴射する噴射部18を有する。噴射部18は、液体を霧状にして噴出してよい。また、それぞれの枝管16は、複数の噴射部18を有してよい。
【0047】
また、噴射部18は、反応塔10の高さ方向とは垂直な方向に向けて液体を噴出してよい。
図8において、×印を付した噴射部18の面に噴射口が設けられてよい。なお本例では、幹管14を挟んで対向して枝管16が延伸する。対向する枝管16に設けられた各噴射部18は、逆向きに液体を噴射する。
【0048】
噴射部18から噴射された液体は、反応塔10の内部を通過する排ガスと接触して、排ガスに含まれる有害物質を吸収する。有害物質の吸収に用いた液体は、反応塔10の底部にたまり、外部に排出される。
【0049】
本例の反応塔10には、高さ方向において異なる位置に複数の開口12が設けられる。最も上部側の開口12−1は最も面積が小さく、最も底部側の開口12−3は最も開口面積が大きい。そして、開口制御部26は、排ガス量に応じて一つの開口12を選択する。従って、排ガス量がより少ないほど、反応塔10の上部側から排ガスが導入される。
【0050】
それぞれの幹管14は、それぞれの開口12に対応して設けられる。それぞれの幹管14から延伸する枝管16は、対応する開口12に対して、高さ方向において同一の位置またはより高い位置に設けられる。
【0051】
反応塔10の上部側ほど、排ガスに含まれる不純物の量が少なくなるので、上部側の幹管14ほど、搬送する液体の流量は小さくてよい。これにより、過剰な液体の使用を防ぐことができる。また、上部側の幹管14ほど、液体流路の断面積が小さくてよい。これにより、液体流量の低下に伴う液体圧力の低下を小さくして、液体の噴出速度の低下を防ぐことができる。
【0052】
また、反応塔10の底部側に設けられる噴射部18が噴射する液体の粒径は、上部側に配置される噴射部18が噴射する液体の粒径よりも大きいことが好ましい。つまり、反応塔10の上部側ほど、液体の粒径が小さくなる。なお、単位体積当たりに噴射される液体の粒数は、反応塔10の上部側のほうが、反応塔10の底部側よりも多くてよい。
【0053】
反応塔10の上部では、単位体積当たりに含まれる有害物質の濃度が低くなっているので、粒径の大きい液体をまばらに配置するよりも、粒径の小さい液体を多数分散して配置するほうが、効率よく有害物質を吸収することができる。液体は、その液体の近傍の有害物質を吸収する。
【0054】
有害物質の濃度が高い場合には、粒径の大きい液体をまばらに配置しても、その液体の近傍の有害物質を吸収して、液体の飽和状態近くまで有害物質を吸収できる。一方、有害物質の濃度が低い場合には、粒径の大きい液体をまばらに配置しても、その液体の飽和状態近くまで有害物質を吸収できず、液体を効率よく使用することができない。これに対し、粒径の小さい液体を高密度に配置することで、有害物質の濃度が低い場合であっても、その液体の飽和状態近くまで有害物質を吸収でき、液体を効率よく使用することができる。
【0055】
図9は、反応塔10の他の構成例を示す図である。本例の反応塔10は、第1部分10−1、第2部分10−2および第3部分10−3を有する。第1部分10−1は、最も上部側に設けられる。第3部分10−3は、最も底部側に設けられる。また、第2部分10−2は、第1部分10−1と第3部分10−3の間に設けられる。第1部分10−1の水平方向における断面積は、第2部分10−2および第3部分10−3のいずれの断面積よりも大きい。また、第3部分10−3の断面積は、第2部分10−2の断面積よりも大きい。
【0056】
第1部分10−1には、上部幹管14−1および開口12−1が設けられる。また、第2部分10−2には、中間幹管14−2および開口12−2が設けられる。また、第3部分10−3には、底部幹管14−3および開口12−3が設けられる。つまり、反応塔10の各部分の断面積は、対応する開口12の面積が小さいほど小さい。なおそれぞれの開口12は、反応塔10の各部分の底部側に設けられる。
【0057】
開口12の面積が小さいと、導入される排ガス量は小さくなる。この場合、反応塔10の断面積が大きいと、排ガスが拡散しやすくなり、排ガスが旋回しづらくなる。これに対し、本例の反応塔10の各部分は、開口12の面積に応じた断面積を有するので、排ガス量が少ない場合であっても、排ガスの旋回を維持することができる。このため、排ガスに含まれる有害物質を効率よく除去することができ、また、液体が反応塔10の上部から排出されることを妨げることができる。なお、反応塔10のそれぞれの部分における枝管16は、当該部分における反応塔10の半径に応じた長さを有してよい。
【0058】
図10は、反応塔10、幹管14および排ガス導入管20の他の構成例を示す図である。本例では枝管16を省略しているが、それぞれの幹管14の側面には枝管16が設けられてよい。本例の反応塔10は、第1部分10−1、第2部分10−2および第3部分10−3を有する。
【0059】
第1部分10−1は、側面に開口12−1が設けられる。第2部分10−2は、第1部分10−1の外側に設けられ、側面に開口12−2が設けられる。第3部分10−3は、第2部分10−2の外側に設けられ、側面に開口12−3が設けられる。つまり、第3部分10−3は、第1部分10−1および第2部分10−2を内包する。また、第2部分10−2は、第1部分10−1を内包する。
【0060】
なお、第1部分10−1および第2部分10−2の上部端は開放されている。つまり、第3部分10−3、第2部分10−2および第1部分10−1の内部空間は接続されている。第3部分10−3の水平方向における直径は、第2部分10−2および第1部分10−1のいずれの直径よりも大きい。また、開口12−3は、開口12−2および開口12−1のいずれよりも大きい。また、第2部分10−2の直径は、第1部分10−1の直径よりも大きく、開口12−2は、開口12−1よりも大きい。
【0061】
なお、第2部分10−2は、第3部分10−3の底部側に設けられてよい。第2部分10−2は、第3部分10−3の底面に接して設けられてもよい。また、第1部分10−1は、第2部分10−2の底部側に設けられてよい。第1部分10−1は、第2部分10−2の底面に接して設けられてもよい。
【0062】
開口12−1は、第1部分10−1の底部側に形成される。開口12−2は、第2部分10−2の側面において、第1部分10−1の先端とほぼ同一の高さ位置に設けられてよい。また、開口12−3は、第3部分10−3の側面において、第2部分10−2の先端とほぼ同一の高さ位置に設けられてよい。また、それぞれの開口12は、反応塔10のそれぞれの部分の底部側に形成されてもよい。また、開口12−1に接続する排ガス導入管20−1は、第2部分10−2および第3部分10−3を貫通して設けられる。また、開口12−2に接続する排ガス導入管20−2は、第3部分10−3を貫通して設けられる。
【0063】
本例の構成によれば、反応塔10の各部分の断面積は、対応する開口12の面積が小さいほど小さい。従って、排ガス量が少ない場合であっても、排ガスの旋回を維持することができる。
【0064】
図11は、船舶に設置された排ガス処理装置100の反応塔10の一例を示す図である。本例の排ガス処理装置100は、船舶の動力源からの排ガスを処理する。船舶は高さ方向に複数の階層112を有する。階層112は、床板111で区切られる。本例において、反応塔10の構造は、
図9に示した例と同一である。また本例では、排ガス導入管20および液体導入管30を省略しているが、
図9の例と同様に反応塔10に接続されてよい。
【0065】
反応塔10は、船舶の2以上の階層112に渡って設けられる。床板111には、反応塔10が通過する開口が設けられる。高さ方向に対して垂直な平面における反応塔10の内部空間の断面積は、船舶の階層112毎に異なってよい。また、反応塔10の外形も、断面積に応じて変化する。本例では、より上層の階層112ほど、反応塔10の内部空間の断面積および外形が小さくなっている。反応塔10の断面積を上部側ほど小さくすることで、排ガスの回転半径が小さくなり、回転数の低下を防ぐことができる。また、反応塔10の外形を小さくできるので、設置空間が制限される船舶においても容易に設置することができる。
【0066】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0067】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【解決手段】排ガスが導入される1以上の開口を有する反応塔と、1以上の開口に対応して設けられ、排ガスを搬送する1以上の排ガス導入管とを備え、1以上の開口において、排ガスを反応塔に導入するのに寄与する開口面積が可変である排ガス処理装置を提供する。反応塔は面積が異なる2以上の開口を有し、面積が異なる2以上の開口に対応するそれぞれの排ガス導入管は、反応塔に排ガスを導入するか否かを選択する選択部を有してよい。