(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記選択手段が前記複数の制御方法のうち、いずれか1つの制御方法を選択した場合、前記信号制御手段は、所定時間以上、前記選択手段が選択した制御方法に基づいて制御するように構成されている、
請求項1に記載の交通信号制御システム。
前記制御指令作成手段は、前記選択手段が前記第1速度制御を選択した場合、前記第1の速度に基づくオフセットを設定し、前記選択手段が前記第2速度制御を選択した場合、前記第2の速度に基づくオフセットを設定し、設定したオフセットを含む信号制御パラメータに基づく信号制御指令情報を作成する、
請求項4に記載の交通信号制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの電気自動車の特徴を活かした交通信号制御はこれまで行われていなかった。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、電気自動車の特徴を活かした適切な交通信号制御を行うことができる交通信号制御システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る交通信号制御システムは、信号灯器が設置された交差点を複数含む道路区間における交通を制御する交通信号制御システムであって、前記道路区間を走行する、電動機を動力源とする車両の台数に基づく値を含む交通情報を取得する交通情報取得手段と、前記交通情報取得手段が取得した交通情報に基づいて、前記道路区間を車両が第1の速度で走行するように交通を制御する第1速度制御と、前記道路区間を車両が第1の速度よりも大きい第2の速度で走行するように交通を制御する第2速度制御とを含む複数の制御方法のうち、いずれか1つの制御方法を選択する選択手段と、前記複数の交差点に設置された信号灯器を制御する信号制御手段とを備え、前記信号制御手段は、前記選択手段により選択した制御方法に基づいて制御するように構成されているものである。
【0010】
この交通信号制御システムによれば、電動機を動力源とする車両である電気自動車(上述のように、電動機のみを動力源とする狭義の意味での電気自動車(EV)、電動機とガソリンエンジンなどのように、電動機を含む複数の動力源を備える車両であるハイブリッド電気自動車(HEV)を含む)の台数に基づく値を含む交通情報に応じて、車両が第1の速度で走行するように交通を制御する第1速度制御、車両が第1の速度よりも大きい第2の速度で走行するように交通を制御する第2速度制御とを含む複数の制御方法のうち、いずれか1つの制御方法を選択する。例えば、次のように選択することができる。
電気自動車は騒音が小さく、NOxやCO
2などの大気汚染物質の排出量が少ないことから、電気自動車の割合が大きい場合は、道路区間を走行する車両の走行速度が大きくなっても、周辺に与える騒音や大気汚染物質排出の影響が小さい。従って、電気自動車の割合が大きい場合は、前記第2速度制御を選択する。
一方、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを動力源とする車両など、電気自動車以外の車両(以下、「非電気自動車」という)は騒音が大きく、NOxやCO
2などの大気汚染物質の排出量が多いことから、非電気自動車の割合が大きい場合、すなわち、電気自動車の割合が小さい場合には、車両の走行速度が大きくなると、周辺に与える騒音や大気汚染物質排出の影響が大きい。従って、電気自動車の割合が小さい場合は、前記第1速度制御を選択する。
このように、電気自動車の特徴を活かした適切な交通信号制御を行うことができる。
【0011】
前記交通情報には、前記道路区間を走行する全車両の台数に対する、前記電動機を動力源とする車両の台数の割合が含まれ、前記選択手段は、前記割合が所定の閾値を超える場合には、前記第2速度制御を選択するように構成されていることが好ましい。この場合、電気自動車の割合に応じて、電気自動車の特徴を活かした適切な交通信号制御を行うことができる。
【0012】
また、前記選択手段が前記複数の制御方法のうち、いずれか1つの制御方法を選択した場合、前記信号制御手段は、所定時間以上、前記選択手段が選択した制御方法に基づいて制御するように構成されていることが好ましい。
これにより、複数の制御方法が頻繁に切り替わることに起因した運転者の混乱を防止することができる。
【0013】
また、前記道路区間を走行する車両に対して規制速度を表示するための表示手段を備え、前記選択手段が前記第1速度制御を選択した場合、前記表示手段は規制速度として第1速度に基づく速度を表示し、前記選択手段が前記第2速度制御を選択した場合、前記表示手段は規制速度として第2速度に基づく速度を表示するように構成されていることが好ましい。
【0014】
第1速度制御が選択されている場合には、第1速度に基づく速度が規制速度として表示され、第2速度制御が選択されている場合には、第2速度に基づく速度が規制速度として表示されるので、運転者は第1速度制御と第2速度制御のいずれが選択されているかを認識することができ、選択されている制御方法に応じた運転が可能となる。
【0015】
また、前記選択手段を備えた交通信号制御装置であって、前記選択手段により選択した制御方法に基づいて、前記複数の交差点に設置された信号灯器を制御する複数の交通信号制御機のそれぞれに対する信号制御指令情報を作成する制御指令作成手段を備える交通信号制御装置は、交通信号制御システムにとって有用である。なお、複数の交通信号制御機は、交通信号制御システムの信号制御手段に該当する。
【0016】
また、前記制御指令作成手段は、前記選択手段が前記第1速度制御を選択した場合、前記第1の速度に基づくオフセットを設定し、前記選択手段が前記第2速度制御を選択した場合、前記第2の速度に基づくオフセットを設定し、設定したオフセットを含む信号制御パラメータに基づく信号制御指令情報を作成することが好ましい。
これにより、前記第1速度制御及び前記第2速度制御を有効に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電気自動車の特徴を活かした適切な交通信号制御を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る交通信号制御システムの概要を示す模式図である。交通信号制御システムは、交通信号制御装置1、交通信号制御機2、路側通信装置3、速度制限標識4などを含む。
交通信号制御装置1は、交通管制センター内に設置されており、各交差点IS(
図1では、交差点ISA、ISB、ISC、ISD、ISE、ISF)に設置された交通信号制御機2(
図1では、交通信号制御機2A、2B、2C、2D、2E、2F)と電話回線などの通信回線で接続されている。なお、交通信号制御装置1は、交通管制センター内に設置されず、道路上に設置されていても良い。
また、交通信号制御装置1は、道路R1の下り方向(交差点ISAから交差点ISFに向かう方向)の各交差点間と、道路R1の上り方向(交差点ISFから交差点ISAに向かう方向)の各交差点間に設置された路側通信装置3(
図1では、路側通信装置3AB、3BC、3CD、3DE、3EF、3FE、3ED、3DC、3CB、3BA)と電話回線などの通信回線で接続されている。
また、交通信号制御装置1は、道路R1の下り方向の各交差点間と、道路R1の上り方向の各交差点間の道路脇に設置された速度制限標識4(
図1では、速度制限標識4AB、4BC、4CD、4DE、4EF、4FE、4ED、4DC、4CB、4BA)と電話回線などの通信回線で接続されている。
【0021】
ここで、道路R1のうち交差点ISAから交差点ISFまでの区間を、以下、道路区間RSEC1と呼ぶことにする。
道路区間RSEC1に含まれる交差点ISA乃至ISFのうち、交差点ISA、交差点ISDは重要交差点であり、交差点ISB、交差点ISC、交差点ISE、交差点ISFは一般交差点である。
重要交差点、一般交差点の各用語の定義は下記の通りである。
・ 重要交差点:普段から負荷率が大きくボトルネックになることが多い交差点のことを重要交差点といい、一般に、幹線・準幹線道路相互の交差点がこれに該当する。
・ 一般交差点:重要交差点に比べて従道路の交通需要が少なく、例えば単に横断歩行者の青時間を確保すればよいような交差点のことを一般交差点という。
【0022】
〔交通信号制御機2〕
交通信号制御機2は、交通信号制御装置1から後述する信号制御指令情報を受信し、この信号制御指令情報に基づいて交差点に設置された信号灯器(不図示)の各信号灯の点灯、消灯及び点滅を制御する。
【0023】
〔路側通信装置3〕
路側通信装置3は、光ビーコン、無線LAN、DSRC(Dedicated Short Range Communication)等の狭域通信を行う装置であって、通信エリア(不図示)内を通過する車両に搭載された車載装置と通信し、その車両の種別(電気自動車か否か)を取得するとともに、通信した車両の台数(交通量)を測定し、その結果を交通信号制御装置1に送信する。
なお、電気自動車とは、電動機を動力源とする車両のことをいい、電動機のみを動力源とする狭義の意味での電気自動車(EV)、電動機とガソリンエンジンなどのように、電動機を含む複数の動力源を備える車両であるハイブリッド電気自動車(HEV)を含む概念である。
【0024】
〔速度制限標識4〕
速度制限標識4は、LEDにより制限速度を可変に表示することができる標識であり、交通信号制御装置1から後述する表示制限速度の情報を受信して、その表示制限速度を表示する。
【0025】
〔交通信号制御装置1〕
図2は交通信号制御装置の構成を示すブロック図である。交通信号制御装置1は、演算部101、記憶部102、送受信部103、時計部104などを備える。
演算部101は、1又は複数のコンピュータから構成されており、装置全体の制御を行う。また、演算部101は、後述する制御方法選択処理などの各種の演算処理を行う。これらの各種の演算処理は、CD−ROMやハードディスクなどの所定の記憶媒体に記録されたコンピュータプログラムを、演算部101のコンピュータが実行することにより行われる。
【0026】
記憶部102は、演算部101による各種の演算処理の結果や、送受信部103が受信した各種情報を記憶する。
送受信部103は、路側通信装置3から各車両の種別の情報及び交通量の情報などを受信する。
また、送受信部103は、信号制御パラメータを含む信号制御指令情報を交通信号制御機2に送信し、表示制限速度の情報を速度制限標識4に送信する。
時計部104は、時刻情報を取得する。
【0027】
演算部101は、送受信部103が受信した路側通信装置3の各車両の種別の情報及び交通量の情報と、時計部104が取得した時刻情報に基づいて、後述する制御方法選択処理を実行し、道路区間RSEC1を車両が第1の速度(例えば、45km/h)で走行するように交通を制御する第1速度制御か、同道路区間を車両が第1の速度よりも大きい第2の速度(例えば、55km/h)で走行するように交通を制御する第2速度制御のうちの、いずれか一方の制御方法を選択する。
【0028】
演算部101は、第1速度制御を選択した場合には、第1の速度に基づく系統制御が行えるように、第1信号制御パラメータSPM1を設定する。系統制御とは、幹線道路に沿って設置された幾つかの交通信号制御機を信号制御の単位として扱い、互いに一定の時間関係をもたせて制御する方式である。
一方、演算部101は、第2速度制御を選択した場合には、第2の速度に基づく系統制御が行えるように、第2信号制御パラメータSPM2を設定する。
【0029】
第1信号制御パラメータSPM1、第2信号制御パラメータSPM2のいずれにも、サイクル長、スプリット、オフセット等が含まれている。サイクル長、スプリット、オフセットの各用語の定義は下記の通りである。
・ サイクル長:信号灯色の表示が一巡することを1サイクルといい、1サイクルの所要時間をサイクル長という。
・ スプリット:交差点の各流入路に対して与えられる通行権を現示といい、1サイクルに占める各現示の時間比率をスプリットという。
・ オフセット:系統制御において、各交通信号機制御機の1サイクルの開始時点にもたせるずれをオフセットという。
【0030】
図3は第1信号制御パラメータSPM1に基づいて、各交差点の青信号時間と赤信号時間を記載したオフセット図であり、
図4は第2信号制御パラメータSPM2に基づいて、各交差点の青信号時間と赤信号時間を記載したオフセット図である。
【0031】
図3、
図4では、横軸に、道路R1上の交差点ISAよりも西へ(交差点ISFから交差点ISAへの向き)所定距離の地点を原点としたときの道路R1上に沿って東へ(交差点ISAから交差点ISFへの向き)移動した距離[m]をとり、縦軸に、任意の時刻を原点としたときの時間[s]をとっており、横軸には、交差点間の距離に応じて交通信号制御機2A乃至2Fを配置している。
縦軸に沿った実線が各交通信号制御機2A乃至2Fにおける道路R1の車両に対する赤時間を示しており、この実線と隣接する縦軸に沿った実線の間の空白部分が各交通信号制御機2A乃至2Fにおける道路R1の車両に対する青時間を示している。
【0032】
図3における斜めの実線SBD1−1と斜めの実線SBD2−1の間の領域、
図4における斜めの実線SBD1−2と斜めの実線SBD2−2の間の領域は、それぞれ下り方向のスルーバンドであり、下り方向に進行する車両が交差点ISA乃至交差点ISFを信号待ち時間なしで通過できる時間帯である。
また、
図3における斜めの実線SBU1−1と斜めの実線SBU2−1の間の領域、
図4における斜めの実線SBU1−2と斜めの実線SBU2−2の間の領域は、それぞれ上り方向のスルーバンドであり、上り方向に進行する車両が交差点ISF乃至交差点ISAを信号待ち時間なしで通過できる時間帯である。
【0033】
図3における実線SBD1−1、SBD2−1、SBU1−1、SBU2−1、
図4における実線SBD1−2、SBD2−2、SBU1−2、SBU2−2のそれぞれの傾きは速度を表しており、
図3における実線SBD1−1、SBD2−1、SBU1−1、SBU2−1はいずれも第1の速度(本例では、45km/h)、
図4における実線SBD1−2、SBD2−2、SBU1−2、SBU2−2はいずれも第2の速度(本例では、55km/h)である。
従って、
図3では、道路区間RSEC1を下り方向に走行する車両は、第1の速度で走行すると、交差点ISA乃至交差点ISFのすべてを青信号で通過することができ、同道路区間を上り方向に走行する車両は、第1の速度で走行すると、交差点ISF乃至交差点ISAのすべてを青信号で通過することができる。
一方、
図4では、道路区間RSEC1を下り方向に走行する車両は、第2の速度で走行すると、交差点ISA乃至交差点ISFのすべてを青信号で通過することができ、同道路区間を上り方向に走行する車両は、第2の速度で走行すると、交差点ISF乃至交差点ISAのすべてを青信号で通過することができる。
【0034】
このように、演算部101は、第1速度制御を選択した場合には、第1の速度に基づくオフセットを含む第1信号制御パラメータSPM1を設定し、第2速度制御を選択した場合には、第2の速度に基づくオフセットを含む第2信号制御パラメータSPM2を設定する。
そして、演算部101は、第1信号制御パラメータSPM1又は第2信号制御パラメータSPM2を含む信号制御指令情報を道路区間RSEC1の各交差点ISA乃至ISFに設置された各交通信号制御機2A乃至2Fに、送受信部103を介して送信する。
【0035】
以下、交通信号制御装置1の演算部101が行う制御方法選択処理について説明する。
図5は、制御方法選択処理の手順を示すフローチャートである。演算部101は、制御選択処理を所定の周期(例えば、5分間)毎に実行する。
【0036】
まず、交通信号制御装置1の演算部101は、交通信号制御装置1の時計部104が示す時刻が所定の時間帯(例えば、夜間の22:00から翌日の5:00までの時間帯)に含まれているか否かを判定する(ステップS01)。
所定の時間帯に含まれていないと判定した場合には(ステップS01においてNO)、演算部101はステップS11以降の処理を実行する。
【0037】
一方、所定の時間帯に含まれていると判定した場合には(ステップS01においてYES)、演算部101は、直近の1周期の期間(本例では、5分間)における各路側通信装置3からの車両ごとの種別(電気自動車か否か)の情報と交通量の情報を解析し、道路区間RSEC1の各交差点間の下り方向及び上り方向において、電気自動車の割合(混入率)を算出する(ステップS02)。
例えば、交差点ISAと交差点ISBの下り方向においては、路側通信装置3ABから収集した車両ごとの種別(電気自動車か否か)の情報から電気自動車の台数を算出し、これを路側通信装置3ABから収集した交通量で除することで、電気自動車の割合を算出する。
【0038】
次に、演算部101は、直近の所定数(例えば、6)の周期の期間すべてにおいて、道路区間RSEC1の各交差点間の下り方向及び上り方向についてステップS02で算出した割合のうち、少なくとも1つが予め設定した割合閾値(例えば、20%)を超えているか否かを判定する(ステップS03)。
直近の所定数の周期の期間すべてにおいて、少なくとも1つが上記割合閾値を超えていると判定した場合には(ステップS03においてYES)、演算部101はステップS11以降の処理を実行する。
一方、直近の所定数の周期の期間すべてにおいて、少なくとも1つが上記割合閾値を超えないと判定した場合、すなわち、直近の所定数の周期の期間すべてにおいて、道路区間RSEC1の各交差点間の下り方向及び上り方向についてステップS02で算出した割合のすべてが上記割合閾値未満になると判定した場合には(ステップS03においてNO)、演算部101はステップS04以降の処理を実行する。
【0039】
演算部101は、ステップS11において、これまでの制御方法が第1速度制御であるか否かを判定する。
これまでの制御方法が第1速度制御であると判定した場合には(ステップS11においてYES)、ステップS12以降の処理を実行する。
一方、これまでの制御方法が第1速度制御でないと判定した場合には(ステップS11においてNO)、演算部101は、道路区間RSEC1の交通の制御方法として、第2速度制御を選択する(ステップS13)。電気自動車は騒音が小さく、NOxやCO
2などの大気汚染物質の排出量が少ないことから、電気自動車の割合が大きい場合は、道路区間を走行する車両の走行速度が大きくなっても、周辺に与える騒音や大気汚染物質排出の影響が小さい。従って、電気自動車の割合が大きい場合は、第2速度制御を選択する。
【0040】
演算部101は、ステップS12において、第1速度制御を時間閾値(例えば、30分)以上継続しているか否かを判定する。
第1速度制御を時間閾値以上継続していると判定した場合には(ステップS12においてYES)、演算部101は、道路区間RSEC1の交通の制御方法として、第2速度制御を選択する(ステップS13)。
一方、第1速度制御を時間閾値以上継続していないと判定した場合には(ステップS12においてNO)、演算部101は、道路区間RSEC1の交通の制御方法として、第1速度制御を選択する(ステップS06)。
このように、第1速度制御を選択すると、その後に電気自動車の割合が大きくなっても、第1速度制御を所定時間以上継続してからしか、第2速度制御を選択しないようにしているので、第1速度制御と第2速度制御とが頻繁に切り替わることに起因した運転者の混乱を防止することができる。
【0041】
演算部101は、ステップS04において、これまでの制御方法が第2速度制御であるか否かを判定する。
これまでの制御方法が第2速度制御であると判定した場合には(ステップS04においてYES)、ステップS05以降の処理を実行する。
一方、これまでの制御方法が第2速度制御でないと判定した場合には(ステップS04においてNO)、演算部101は、道路区間RSEC1の交通の制御方法として、第1速度制御を選択する(ステップS06)。ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを動力源とする車両などの非電気自動車は騒音が大きく、NOxやCO
2などの大気汚染物質の排出量が多いことから、非電気自動車の割合が大きい場合、すなわち、電気自動車の割合が小さい場合には、車両の走行速度が大きくなると、周辺に与える騒音や大気汚染物質排出の影響が大きい。従って、電気自動車の割合が小さい場合は、第1速度制御を選択する。
【0042】
演算部101は、ステップS05において、第2速度制御を時間閾値(例えば、30分)以上継続しているか否かを判定する。
第2速度制御を時間閾値以上継続していると判定した場合には(ステップS05においてYES)、演算部101は、道路区間RSEC1の交通の制御方法として、第1速度制御を選択する(ステップS06)。
一方、第2速度制御を時間閾値以上継続していないと判定した場合には(ステップS05においてNO)、演算部101は、道路区間RSEC1の交通の制御方法として、第2速度制御を選択する(ステップS13)。
このように、第2速度制御を選択すると、その後に電気自動車の割合が小さくなっても、第2速度制御を所定時間以上継続してからしか、第1速度制御を選択しないようにしているので、第1速度制御と第2速度制御とが頻繁に切り替わることに起因した運転者の混乱を防止することができる。
【0043】
以上のように、交通信号制御装置1は、道路区間RSEC1における電気自動車の割合(混入率)を算出し、この割合に応じて、道路区間RSEC1を車両が第1の速度で走行するように交通を制御する第1速度制御と、前記道路区間を車両が第1の速度よりも大きい第2の速度で走行するように交通を制御する第2速度制御のうち、いずれか一方の制御方法を選択する。
【0044】
次いで、交通信号制御装置1は、選択した制御方法に対応する信号制御パラメータを設定する。すなわち、第1速度制御を選択した場合には、第1信号制御パラメータSPM1を設定し、第2速度制御を選択した場合には、第2信号制御パラメータSPM2を設定する。
次いで、交通信号制御装置1は、設定した信号制御パラメータに基づく信号制御指令情報を作成し、道路区間RSEC1に設置された交通信号制御機2A乃至2Fに送信する。
【0045】
次いで、交通信号制御装置1は、選択した制御方法に対応する表示制限速度を設定する。すなわち、第1速度制御を選択した場合には、表示制限速度を第1の速度に基づく速度(本例では、第1の速度45km/hにマージン5km/hを加えた50km/h)に設定し、第2速度制御を選択した場合には、表示制限速度を第2の速度に基づく速度(本例では、第2の速度55km/hにマージン5km/hを加えた60km/h)に設定する。
次いで、交通信号制御装置1は、設定した表示制限速度の情報を道路区間RSEC1に設置された速度制限標識4に送信する。
【0046】
このように、本実施形態によれば、電気自動車の割合が小さい場合は、周辺に与える騒音や大気汚染物質排出の影響が大きいため、車両が低速の第1の速度で走行するように交通を制御し、電気自動車の割合が大きい場合は、周辺に与える騒音や大気汚染物質排出の影響が小さいため、車両が高速の第2の速度で走行するように交通を制御することができるので、電気自動車の割合に応じて、電気自動車の特徴を活かした適切な交通信号制御を行うことができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、特に車両の騒音の影響が大きい夜間などの所定の時間帯においては、電気自動車の割合に応じて、第1速度制御と第2速度制御のうちのいずれか一方の制御方法を選択することにより、騒音の発生を抑制し、前記所定の時間帯以外の通常時においては、第2速度制御を選択することにより、交通渋滞の発生を低減するので、周辺に与える車両の騒音の影響と交通状況とを考慮した最適な交通の制御を行うことができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、交通信号制御装置1は、第1速度制御を選択すると、その後に電気自動車の割合が大きくなっても、第1速度制御を所定時間以上継続してからしか、第2速度制御を選択しないようにしており、一方、第2速度制御を選択すると、その後に電気自動車の割合が小さくなっても、第2速度制御を所定以上継続してからしか、第1速度制御を選択しないようにしているので、第1速度制御と第2速度制御とが頻繁に切り替わることに起因した運転者の混乱を防止することができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、第1速度制御が選択されている場合には、速度制限標識4は第1速度に基づく速度を規制速度として表示し、第2速度制御が選択されている場合には、速度制限標識4は第2速度に基づく速度を規制速度として表示するので、運転者は第1速度制御と第2速度制御のいずれが選択されているかを認識することができ、選択されている制御方法に応じた運転が可能となる。
【0050】
上述の実施形態においては、夜間などの所定の時間帯において、電気自動車の割合が割合閾値以下となった場合には、第1速度制御を選択する構成であったが、これに限定されない。例えば、前記所定の時間帯において、電気自動車の割合が割合閾値以下となっても、道路区間RSEC1を走行する車両の交通量が交通量閾値(例えば、1車線当たりの15分間の交通量が150台)以上であれば、第1速度制御を選択せず、第2速度制御を選択する構成としても良い。交通渋滞が発生すれば、車両が停止と発進を繰り返すようになり、かえって騒音の発生を助長してしまうおそれがあるからである。これにより、周辺に与える車両の騒音の影響と交通状況とをより一層考慮した最適な交通の制御を行うことができる。なお、道路区間RSEC1を走行する車両の交通量が交通量閾値以上か否かを判定する代わりに、道路区間RSEC1の渋滞度が混雑以上か否か(すなわち、平均速度が10km/h以下か否か)を判定しても良いし、道路区間RSEC1を走行する車両の旅行時間の代表値(例えば、平均値、中央値など)が旅行時間閾値(例えば、10分)以上か否かを判定しても良いし、これらを組み合わせて判定する構成であっても良い。
【0051】
また、上述の実施形態においては、道路区間RSEC1の下り方向と上り方向の両方について、第1速度制御と第2速度制御のうちのいずれか一方の制御方法を選択する構成であったが、これに限定されず、道路区間RSEC1の下り方向と上り方向のうちのいずれか一方についてのみ、第1速度制御と第2速度制御のうちのいずれか一方の制御方法を選択する構成であっても良い。
【0052】
また、上述の実施形態においては、交通信号制御装置1は、第1速度制御と第2速度制御のうちのいずれか一方の制御方法を選択する構成であったが、これに限定されず、この2つの制御方法とさらに他の制御方法とを含む3つ以上の制御方法のうち、いずれか1つの制御方法を選択する構成であっても良い。
【0053】
また、上述の実施形態においては、道路区間RSEC1の全ての交差点間の下り方向及び上り方向に路側通信装置3が設置される構成であったが、これに限定されず、道路区間RSEC1の上り方向の各交差点間のうちの1又は複数に路側通信装置3が設置され、道路区間RSEC1の下り方向の各交差点間のうちの1又は複数に路側通信装置3が設置される構成であっても良い。また、道路R1上の上り方向の道路区間RSEC1の上流側の地点、すなわち、交差点ISAの西側の地点に路側通信装置3が設置され、道路R1上の下り方向の道路区間RSEC1の上流側の地点、すなわち、交差点ISFの東側の地点に路側通信装置3が設置される構成であっても良い。
【0054】
また、上述の実施形態においては、道路区間RSEC1の各交差点間の下り方向及び上り方向についての電気自動車の割合のうち、少なくとも1つが上記割合閾値を超えると判定した場合に、第2速度制御を選択する構成であったが、これに限定されず、所定数(例えば、3つ)以上が上記割合閾値を超えると判定した場合に、第2速度制御を選択する構成であっても良いし、全てが上記割合閾値を超えると判定した場合に、第2速度制御を選択する構成であっても良い。
【0055】
また、上述の実施形態においては、交通信号制御装置1が路側通信装置3から収集した車両ごとの種別(電気自動車か否か)の情報と交通量の情報に基づいて、第1速度制御と第2速度制御のうちのいずれか一方の制御方法を選択する構成であったが、これに限定されず、道路区間RSEC1に設置された交通信号制御機2A乃至2Fが連携して、路側通信装置3から収集した車両ごとの種別(電気自動車か否か)の情報と交通量の情報に基づいて、第1速度制御と第2速度制御のうちのいずれか一方の制御方法を選択する構成であっても良い。これにより、交通信号制御装置1によらず、交通信号制御機2だけで電気自動車の特徴を活かした適切な交通信号制御を行うことができる。
【0056】
また、上述の実施形態においては、第1速度制御を選択した場合には、表示制限速度を第1の速度に基づく速度に設定し、第2速度制御を選択した場合には、表示制限速度を第2の速度に基づく速度に設定し、設定した表示制限速度の情報を道路区間RSEC1に設置された速度制限標識4に送信する構成であったが、これに限定されず、設定した表示制限速度を道路区間RSEC1に設置された交通情報板を通じて運転者に報知する構成であってもよい。
【0057】
また、上述の実施形態においては、路側通信装置3は光ビーコン等の狭域通信を行う装置であったが、これに限定されず、広域通信を行うもの(例えば、ITS無線機)であってもよい。
【0058】
また、電気自動車は、従来の車両と比較して著しく環境負荷の低減を実現した車両である環境対策車の1種である。環境対策車には、電気自動車のほか、天然ガス自動車(天然ガスを燃料とするエンジンで駆動する自動車)や、排気ガス等に関する所定の環境基準を大きく下回るガソリンエンジン・ディーゼルエンジンで駆動する車両などが含まれる。上述の実施形態においては、電気自動車の割合に応じて、第1速度制御と第2速度制御のうちのいずれか一方の制御方法を選択する構成であったが、これに限られず、環境対策車の割合に応じて、第1速度制御と第2速度制御のうちのいずれか一方の制御方法を選択する構成であっても良い。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。