特許第5979318号(P5979318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5979318試薬容器、試薬入り試薬容器、反応ユニット、および分析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979318
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】試薬容器、試薬入り試薬容器、反応ユニット、および分析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/75 20060101AFI20160817BHJP
   G01N 21/76 20060101ALI20160817BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   G01N21/75 D
   G01N21/76
   G01N1/00 101H
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-535636(P2015-535636)
(86)(22)【出願日】2014年12月24日
(86)【国際出願番号】JP2014084151
(87)【国際公開番号】WO2015098967
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2015年7月30日
(31)【優先権主張番号】特願2013-265683(P2013-265683)
(32)【優先日】2013年12月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】荒川 智
(72)【発明者】
【氏名】八幡 悟史
(72)【発明者】
【氏名】長峯 秀和
【審査官】 ▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−535476(JP,A)
【文献】 特表2010−518393(JP,A)
【文献】 特開2003−88398(JP,A)
【文献】 特表2008−506930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 − G01N 37/00
C12M 1/00 − C12M 3/10
C12Q 1/00 − C12Q 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端が第一の開口端とされ、他端が第二の開口端とされているシリンジと、該シリンジ内を摺動可能なプランジャを備え、
前記プランジャは、前記シリンジの内面に摺接する摺接部と、前記シリンジの内面に摺接せず、かつ前記摺接部に囲まれている試薬保持部とを有し、
前記試薬保持部は、前記シリンジの内部から、前記シリンジの第一の開口端の外部まで移動可能とされていることを特徴とする試薬容器。
【請求項2】
前記シリンジの側面に試薬供給孔が形成され、該試薬供給孔は、前記試薬保持部が前記シリンジの内部に位置する状態で、前記試薬保持部と連通可能とされている請求項1に記載の試薬容器。
【請求項3】
前記シリンジは、軸方向の中間部に内側に突出する突出部を有する請求項1または2に記載の試薬容器。
【請求項4】
さらに、弾性部材を備え、
前記試薬保持部を前記シリンジの第一の開口端の外部に移動させたとき、
前記弾性部材は、前記プランジャに、前記第二の開口端側に移動させる付勢力を与える請求項1〜3のいずれか一項に記載の試薬容器。
【請求項5】
前記シリンジは、第二の開口端またはその近傍に、外側に突出する鍔部を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の試薬容器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の試薬容器と、前記試薬保持部に保持された試薬を備えることを特徴とする試薬入り試薬容器。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の試薬容器と、上端が開口端とされている有底筒状の反応容器とを備え、
前記試薬容器は、前記シリンジの第一の開口端が前記反応容器の軸方向中間部に達するように、前記第一の開口端側から前記反応容器に挿入可能とされていることを特徴とする反応ユニット。
【請求項8】
前記試薬容器の前記試薬保持部に試薬が保持されている請求項7に記載の反応ユニット。
【請求項9】
前記反応容器内に第一試薬が、前記試薬容器の試薬保持部内に第二試薬が、各々保持されている請求項7に記載の反応ユニット。
【請求項10】
請求項8に記載の反応ユニットと、前記反応容器内の試料液を光学的に測定する光学測定手段を備え、
前記試薬容器を前記反応容器に挿入した状態で、前記試薬保持部を前記シリンジの第一の開口端の外部に移動させて予め前記反応容器に導入された試料液に接触させ、前記試薬を反応させる工程と、
前記試薬と反応後の試料液を、前記光学測定手段により測定する工程とを順次行うように構成されたことを特徴とする試料液の分析システム。
【請求項11】
請求項9に記載の反応ユニットと、前記反応容器内の試料液を光学的に測定する光学測定手段を備え、
前記反応容器に導入された試料液と、前記第一試薬を反応させる工程と、
前記試薬容器を前記反応容器に挿入した状態で、前記試薬保持部を前記シリンジの第一の開口端の外部に移動させて前記第一試薬と反応後の試料液に接触させ、前記第二試薬を反応させる工程と、
前記第二試薬と反応後の試料液を、前記光学測定手段により測定する工程とを順次行うように構成されたことを特徴とする試料液の分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬容器、試薬入り試薬容器、反応ユニット、および分析システムに関する。
本発明は、2013年12月24日に日本国に出願された、特願2013−265683号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
エンドトキシン、βグルカン等の微生物夾雑物を高感度で検出する方法として、試料液に、微生物夾雑物によって活性化する試薬、および活性化された試薬により発光基質を遊離する合成基質、を反応させる工程と、発光試薬を作用させて発光基質が遊離したか否かを検出する工程を順次行う技術が提案されている(特許文献1、2)。
この技術では、少なくとも発光基質を遊離させる工程と発光試薬の添加工程の各工程を順次行う二段反応とすることが求められ、少なくとも2〜3回のピペット操作が必要である。そのため、試料液に外部の微生物夾雑物の混入が起こるおそれがあり、高感度測定には不向きであると共に、操作も煩雑であった。また、発光試薬等は、時間経過と共に失活するため用時調製が必要であり、特許文献1、2のような測定方法は自動化も困難であった。
【0003】
そこで、特許文献3では、容器内に試薬を固定し、導入した試料液で試薬を溶解して反応させる技術が提案されている。特許文献3では、発光基質を遊離させる工程と発光試薬の添加工程を順次行うため、隔膜で仕切られた複数の反応室を有する容器を用いることが提案されている(特許文献3の図8等)。そして、まず、発光基質を遊離させるために必要な試薬を固定した反応室に試料液を導入して反応させた後、隔膜に針等で孔を空け、この孔を通して試料液を発光試薬が固定された反応室に落下させて発光試薬と反応させることが記載されている。
【0004】
特許文献3には、また、内部に微生物夾雑物によって活性化する試薬を固定した試薬収容カップを配置すると共に、天井部分に合成基質を、底部に発光試薬を各々固定した容器を用いることが提案されている(特許文献3の図10等)。そして、まず、試薬収容カップに試料液を導入して反応させた後、天地を逆転させて、合成基質が固定された天井部分に試料液を移動させ、その後再度天地を逆転させて、発光試薬が固定された容器底部に試料液を移動させ、順次反応を進めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第09/063840号
【特許文献2】特開2010−187634号公報
【特許文献3】特開2012−132878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献3の隔膜を使用する方法では、特に数100μL程度の少量の試料液を用いる場合、隔膜に孔を空けても試料液が隔膜に付着等して孔から抜けきらない液量が無視できず、高感度な検出が困難であった。
また、特許文献3の図10等の容器は、内部に試薬収容カップを設けるため、構造が複雑となる上、反応を進めるために転倒動作が必要であるため、自動化も困難であった。さらに、数100μL程度の少量の試料液を用いる場合、容器を転倒させても試料液が試薬収容カップに付着等して移動しきれない液量が無視できず、高感度な検出が困難であった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、液状では不安定な試薬を試料液との反応直前まで密閉状態で保持できる試薬容器と、当該試薬容器に試薬が保持された試薬入り試薬容器を提供することを課題とする。
また、前記試薬容器を用い、安定に保持された試薬を試料液のほぼ全量と反応させることができ、かつ、二段反応も簡便に行うことができる反応ユニットを提供することを課題とする。
また、前記反応ユニットを用い、試料液を高感度かつ簡便に分析することが可能で、かつ、二段反応による分析も簡便に行うことができる分析システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]軸方向の一端が第一の開口端とされ、他端が第二の開口端とされているシリンジと、該シリンジ内を摺動可能なプランジャを備え、
前記プランジャは、前記シリンジの内面に摺接する摺接部と、前記シリンジの内面に摺接せず、かつ前記摺接部に囲まれている試薬保持部とを有し、
前記試薬保持部は、前記シリンジの内部から、前記シリンジの第一の開口端の外部まで移動可能とされていることを特徴とする試薬容器。
[2]前記シリンジの側面に試薬供給孔が形成され、該試薬供給孔は、前記試薬保持部が前記シリンジの内部に位置する状態で、前記試薬保持部と連通可能とされている[1]に記載の試薬容器。
[3]前記シリンジは、軸方向の中間部に内側に突出する突出部を有する[1]または[2]に記載の試薬容器。
[4]さらに、弾性部材を備え、
前記試薬保持部を前記シリンジの第一の開口端の外部に移動させたとき、
前記弾性部材は、前記プランジャに、前記第二の開口端側に移動させる付勢力を与える[1]〜[3]のいずれか一項に記載の試薬容器。
[5]前記シリンジは、第二の開口端またはその近傍に、外側に突出する鍔部を有する[1]〜[4]のいずれか一項に記載の試薬容器。
[6][1]〜[5]のいずれか一項に記載の試薬容器と、前記試薬保持部に保持された試薬を備えることを特徴とする試薬入り試薬容器。
[7][1]〜[5]のいずれか一項に記載の試薬容器と、上端が開口端とされている有底筒状の反応容器とを備え、
前記試薬容器は、前記シリンジの第一の開口端が前記反応容器の軸方向中間部に達するように、前記第一の開口端側から前記反応容器に挿入可能とされていることを特徴とする反応ユニット。
[8]前記試薬容器の前記試薬保持部に試薬が保持されている[7]に記載の反応ユニット。
[9]前記反応容器内に第一試薬が、前記試薬容器の試薬保持部内に第二試薬が、各々保持されている[7]に記載の反応ユニット。
[10][8]に記載の反応ユニットと、前記反応容器内の試料液を光学的に測定する光学測定手段を備え、
前記試薬容器を前記反応容器に挿入した状態で、前記試薬保持部を前記シリンジの第一の開口端の外部に移動させて予め前記反応容器に導入された試料液に接触させ、前記試薬を反応させる工程と、
前記試薬と反応後の試料液を、前記光学測定手段により測定する工程とを順次行うように構成されたことを特徴とする試料液の分析システム。
[11][9]に記載の反応ユニットと、前記反応容器内の試料液を光学的に測定する光学測定手段を備え、
前記反応容器に導入された試料液と、前記第一試薬を反応させる工程と、
前記試薬容器を前記反応容器に挿入した状態で、前記試薬保持部を前記シリンジの第一の開口端の外部に移動させて前記第一試薬と反応後の試料液に接触させ、前記第二試薬を反応させる工程と、
前記第二試薬と反応後の試料液を、前記光学測定手段により測定する工程とを順次行うように構成されたことを特徴とする試料液の分析システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の試薬容器及び試薬入り試薬容器によれば、液状では不安定な試薬を試料液との反応直前まで密閉状態で保持できる。
また、本発明の反応ユニットによれば、安定に保持された試薬を試料液のほぼ全量と反応させることができ、かつ、二段反応も簡便に行うことができる。
また、本発明の分析システムによれば、試料液を高感度かつ簡便に分析することが可能で、かつ、二段反応による分析も簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る反応ユニットを示す縦断面図であり、図1(a)が試薬容器、図1(b)が反応容器の一態様を示す。
図2図1(a)のプランジャを示す図で、図2(a)が斜視図、図2(b)が側面図、図2(c)が図2(b)のII−II断面図である。
図3図1の反応ユニットに試薬を保持させる方法を説明する図で、図3(a)が試薬容器10に第二試薬R2を保持させる方法を、図3(b)が反応容器50に第一試薬R1を保持させる方法を、各々示す。
図4図1の反応ユニットを用いた分析システムと、この分析システムを用いて、二段反応後の試料液を光学的に測定する方法を示す図で、図4(a)が第一反応工程を、図4(b)が第二反応工程を、図4(c)が測定工程を、各々示す。
図5】プランジャの変形例を示す図で、図5(a)が斜視図、図5(b)が側面図、図5(c)が図5(b)と異なる方向から見た側面図、図5(d)が図5(b)のV−V断面図である。
図6】プランジャの別の変形例を示す図で、図6(a)が斜視図、図6(b)が側面図、図6(c)が図6(b)と異なる方向から見た側面図である。
図7】プランジャの別の変形例を示す図で、図7(a)が斜視図、図7(b)が側面図、図7(c)が図7(b)のVII−VII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[反応ユニット]
図1は、本発明の一実施形態に係る反応ユニットで、図1(a)が試薬容器の一態様、図1(b)が反応容器の一態様を示す。
図1(a)に示す試薬容器10は、シリンジ20とプランジャ30と、バネ40(弾性部材)とから概略構成されている。
【0012】
シリンジ20は、軸方向の一端が第一の開口端20aとされ、他端が第二の開口端20bとされ、第一の開口端20aには開口21aを、第二の開口端20bには開口21bを、各々有している。
また、第二の開口端20bには、周方向全体にわたって径方向外側に突出する鍔部22が設けられている。また、シリンジ20の内面20cには、径方向内側に周方向全体にわたって突出する突出部23が設けられている。突出部23は、シリンジ20の軸方向の中間部であって、軸方向の中心よりもやや第一の開口端20aに近い部分の内面20cに設けられている。
【0013】
突出部23の径方向内側には、シール材24が取り付けられている。シール材24は管状部24aと、管状部24aの一端側において径方向外側に突出する鍔部24bとから構成されている。管状部24aは突出部23とプランジャ30のプランジャ軸31との間に介在し、プランジャ30との摺面を構成している。また、鍔部24bは突出部23の第二の開口端20b側に密着し、バネ40と突出部23との間の緩衝体となっている。
また、シリンジ20の側面には、試薬供給孔25が形成されている。試薬供給孔25は、シリンジ20の軸方向の中間部であって、突出部23が設けられている部分よりも第一の開口端20aに近い部分に形成されている。
【0014】
プランジャ30は、プランジャ軸31と、プランジャ軸31の先端に螺合されたガスケット32とから構成されている。
図2を用いて詳述するように、プランジャ軸31は、円柱状の軸本体31aと、軸本体31aの一方の端部に設けられ、軸本体31aよりも大径の略円盤状の押し板31bと、軸本体31aの他方の端部に設けられ、ガスケット32内に挿入される雄ねじ部31cとを有している。
軸本体31aと、押し板31bと、雄ねじ部31cは、剛性の材質、例えばポリプロピレン等の樹脂、ガラス、金属により一体成形されている。
【0015】
ガスケット32は、プランジャ軸31が挿入される側から、円錐台部32a、第一大径部32b、小径部32c、第二大径部32d、先端部32eを有し、これらが一体に形成されている。
第一大径部32bと第二大径部32dの外径は、シリンジ20の突出部23が設けられていない部分の内径と略同一で、これらの側面は、各々シリンジ20の内面と摺接する第一摺接部32Aと第二摺接部32Bとなっている。
【0016】
また、小径部32cの外径は、第一大径部32bと第二大径部32dの外径より小さくシリンジ20の内面と摺接しない。この小径部32cの側面が、第一大径部32bと第二大径部32dの各々の小径部32c側の面と共に、第一摺接部32Aと第二摺接部32Bに囲まれた凹状の試薬保持部32Cを構成している。なお、小径部32cの両端は、漸次拡径し、第一大径部32bとの境界と第二大径部32dとの境界の各々において、曲面が形成されている。
試薬供給孔25は、プランジャ30をガスケット32がシリンジ20の突出部23に当接するまで第二の開口端20b側に引いた際に、この試薬保持部32Cと連通する位置に形成されている。
【0017】
円錐台部32aは第一大径部32bより小径で、かつ第一大径部32b側の方の径が大きい円錐台状となっている。
先端部32eは、球体を、中心を通らない面で切り取った際の体積の小さい方の形状とされている。この切断面は、第二大径部32dと同径の円形とされ、先端部32eは、この切断面側で第二大径部32dに接続している。
また、円錐台部32aから小径部32cの中程にかけて、プランジャ軸31の雄ねじ部31cが螺合される雌ねじ32Dが形成されている。
ガスケット32は、弾性ゴムのようなエラストマーで構成されている。ガスケット32の材質は、耐薬品性、耐寒性を備え、ガス透過性が低いものが好ましい。具体的には、ブチルゴム、テトラフルオロエチレン等のフッ素ゴムが挙げられる。
【0018】
バネ40は、内側にプランジャ軸31を挿通するように配置されている。バネ40は、試薬保持部32Cを第一の開口端20aの外部に移動させた際、突出部23と押し板31bとの間で圧縮され、プランジャ30に対して、第二の開口端20b側に移動させる付勢力を与えるようになっている。
【0019】
図1(b)に示す反応容器50は、上端が開口端51aとされた有底筒状の反応容器本体51と、開口端51aの周方向全体にわたって径方向外側に突出する鍔部52とを有している。
図1(b)では、反応容器50の開口端51aの開口53を、蓋体54で閉塞した状態を示している。蓋体54は、鍔部52と略同一の外径の蓋部54aと、反応容器50の開口53に、液密かつ気密に挿入される挿入部54bと、挿入部54bの先端に設けられた複数本(2本)の脚部54cを有し、これらが一体に形成されている。脚部54cの内側は、略円柱状の凹部54dとなっており、脚部54cが凹部54d側に変形可能であることにより、反応容器50の開口53への脚部54cと挿入部54bの挿入が容易となっている。
【0020】
試薬容器10は、図4(a)に示すように、第一の開口端20a側から反応容器50に挿入可能とされている。また、シリンジ20の鍔部22が反応容器50の鍔部52に当接することにより、シリンジ20の第一の開口端20aは、反応容器50の軸方向中間部の位置に留まり、反応容器50の底部まで到達しないようになっている。
また、図4(b)に示すように、試薬容器10を反応容器50に挿入した状態で、プランジャ30のガスケット32を、第一の開口端20aの外部まで移動させ、ガスケット32を反応容器50の底部または底部近傍まで到達させられるようになっている。
【0021】
[試薬の保持]
図3図1の反応ユニットに試薬を保持させる方法を説明する図で、図3(a)が試薬容器10に第二試薬R2を保持させる方法を、図3(b)が反応容器50に第一試薬R1を保持させる方法を、各々示す。
【0022】
図3(a)に示すように、第二試薬R2の保持作業は、試薬容器10を、試薬供給孔25を上側とした横置きの状態として行う。また、プランジャ30を、ガスケット32がシリンジ20の突出部23に当接するまで第二の開口端20b側に引いた位置とし、試薬供給孔25が、試薬保持部32Cと連通する状態として行う。
第二試薬R2の保持作業としては、まず、試薬供給孔25から試薬保持部32Cに向けて、第二試薬R2を適当な溶媒(例えば水)に溶解した溶液を充填する。その後、試薬供給孔25を試薬保持部32Cに連通させたままの状態で凍結乾燥することにより、第二試薬R2を乾燥状態で試薬保持部32Cに保持させることができる。
【0023】
その後、プランジャ30を図1(a)に示す位置まで移動させると、試薬保持部32Cは、試薬保持部32Cを囲む第一摺接部32Aと第二摺接部32B、及びシリンジ20の内面20cで密閉された空間内に収容されるので、保持された第二試薬R2を、密閉状態で保管することができる。
なお、凍結乾燥後、第二試薬R2は、試薬保持部32Cだけでなく、シリンジ20の内面20cにも付着しうる。しかし、プランジャ30を図1(a)に示す位置まで移動させると、シリンジ20の内面20cにも付着した第二試薬R2は、第一摺接部32Aによって擦り取られる。そして、移動後の試薬保持部32Cと、移動後の試薬保持部32Cに対向するシリンジ20の内面20cに囲まれた領域まで移動するので、ほぼ全量を試薬保持部32Cとその近傍に保持しておくことができる。
第二試薬R2を保持させる上記作業は、真空又は不活性ガス雰囲気内で行うことが好ましい。
【0024】
図3(b)に示すように、第一試薬R1の保持作業は、反応容器50を、開口端51aを上側とした縦置きの状態として行う。
第一試薬R1の保持作業としては、まず、蓋体54を外し、開口53から第一試薬R1を適当な溶媒(例えば水)に溶解した溶液を充填する。その後、開口53が外部と連通した状態を保つように、脚部54cの一部が開口端51aの外側に露出する程度に蓋体54を開口53に挿入した状態で凍結乾燥することにより、第一試薬R1を乾燥状態で反応容器50内に保持することができる。
その後、蓋体54を図1(b)に示す位置まで押し込むと、反応容器50内に保持された第一試薬R1を、密閉状態で保管することができる。
第一試薬R1を保持させる上記作業は、真空又は不活性ガス雰囲気内で行うことが好ましい。
【0025】
[分析システム]
図4図1の反応ユニットを用いた分析システムと、この分析システムを用いて、二段反応後の試料液を光学的に測定する方法を示す図である。
図4の分析システムは、図1の反応ユニットと光学測定手段55から構成されている。
光学測定手段55としては、反応ユニットの反応容器50内から発せられる光(蛍光や生物発光を含む)を検出する光検出装置、光源と、反応容器50を透過した光を検出する受光装置とからなる吸光度検出装置、光源と、反応容器50内で散乱された光を検出する受光装置とからなる散乱光検出装置等を適宜採用できる。
図4の分析システムは、反応の進行を促進するため、反応容器50を適宜加温する加温手段を備えていてもよい。
【0026】
図4の分析システムは、図示を省略する制御装置により、その動作が制御され、反応ユニットに対して、以下の工程を順次行うようになっている。
(i)反応容器50に導入された試料液Sと、第一試薬R1を反応させる工程(以下「第一反応工程」という。)。
(ii)試薬容器10を反応容器50に挿入した状態で、試薬保持部32Cをシリンジ20の第一の開口端20aの外部に移動させて第一試薬R1と反応後の試料液Sに接触させ、第二試薬R2を反応させる工程(以下「第二反応工程」という。)。
(iii)第二試薬R2と反応後の試料液Sを、光学測定手段55により測定する工程(以下「測定工程」という。)。
【0027】
図4の分析システムで上記各工程を行って二段反応を利用した分析を行うためには、第一反応工程に先立ち、以下の準備が必要である。まず、第一試薬R1が保持され、蓋体54により密閉された反応容器50、並びに第二試薬R2が試薬保持部32Cに保持され、図1(a)に示す状態で試薬保持部32Cが密閉された空間に収容された試薬容器10(試薬入り試薬容器)を用意する。
次に、第一試薬R1が保持された反応容器50から蓋体54を外し、試料液Sを入れる。その後、図4(a)に示すように、反応容器50に試薬容器10を挿入した状態で、分析システムにセッティングする。
ここまでの作業は人手により行うことが好ましいが、分析システムにサンプリング機構を追加して自動化してもよい。反応容器50に試料液Sを導入すると、導入した試料液Sによって第一試薬R1が溶解され、試料液Sと第一試薬R1とが反応可能となる。
【0028】
第一反応工程は、反応ユニットを分析システムにセッティングしてから、次の第二反応工程を開始するまでの間の工程である。
第一反応工程の時間は、反応容器50に導入された試料液Sと第一試薬R1とを反応させるために必要な反応時間を考慮して適宜設定する。試料液Sと第一試薬R1との反応が速い場合は、システムの動作上物理的に必要な時間のみをとって、次の第二反応工程に移行すればよい。第一反応工程では、反応を促進するため反応容器50を適宜加温することができる。
【0029】
第二反応工程では、図示を省略する押棒により、プランジャ30の押し板31bを押してプランジャ30を押し下げる。これにより、ガスケット32をシリンジ20の内部から第一の開口端20aの外部まで移動させ、図4(b)に示すように、ガスケット32の先端を反応容器50の底部まで到達させる。このようにして、試薬保持部32C全体を第一試薬R1と反応後の試料液S内に浸漬させる。
【0030】
試薬保持部32Cが第一試薬R1と反応後の試料液S内に浸漬されると、試料液Sによって第二試薬R2が溶解され、試料液Sと第二試薬R2とが反応可能となる。なお、第二試薬R2は、試薬保持部32Cに直接固定されるだけでなく、試薬保持部32Cと試薬保持部32Cに対向するシリンジ20の内面20cに囲まれた領域にも保持されうる。しかし、この領域内の第二試薬R2は、第一摺接部32Aによって押し出すことができ、ほぼ全量を第一試薬R1と反応後の試料液S内に入れ、反応させることができる。
【0031】
プランジャ30を図4(b)に示す状態に留めておく時間は、第二試薬R2が溶解されるのに充分であればよく、第二試薬R2の溶解性が高ければ、プランジャ30を押し下げた後、直ちに測定工程に移行することができる。
たとえば、蛍光測定や生物発光測定のように、試料液Sと第二試薬R2の反応開始後、検出すべき光の発生が短時間で終了するような反応系の場合、プランジャ30を図4(b)に示す状態に押し下げた後、直ちに測定工程に移行することが好ましい。
試料液Sへの第二試薬R2の溶解や、試料液Sと第二試薬R2との反応に時間を要する場合は、適宜の待機時間経過後、測定工程に移行する。
【0032】
測定工程では、図示を省略する押棒によるプランジャ30の押し板31bの押圧を解除する。すると、図4(c)に示すように、図4(b)で圧縮されていたバネ40の付勢力により押し板31bが第二の開口端20b側に押し上げられる。これにより、光路を妨げるガスケット32が反応容器50の底部から離れ、第二試薬R2と反応後の試料液Sを光学測定手段55により測定可能となる。
測定工程では、光学測定手段55により、第二試薬R2と反応後の試料液Sを光学的に測定する。
光学的な測定の種類に特に限定はなく、蛍光検出、生物発光検出、吸光度検出、散乱光検出等を適宜採用できる。
【0033】
反応ユニットが複数ある場合、以上の操作を、各反応ユニットに対して順次行う。
本実施形態によれば、各反応ユニットに導入した試料液について、所定のタイムテーブルに従って分析を行うことにより、光学的測定の条件を容易に均一化できる。そのため、測定条件の変動による検出誤差を排除しやすい。
また、第一試薬R1と第二試薬R2は、ほぼ全量が反応容器50内での反応に使用される。また、試料液Sは、反応容器50に入れた後、他の場所に移動させる必要がない。そのため、試料液Sが少量であっても、高い精度でかつ再現性よく分析できる。
【0034】
[プランジャの変形例]
上記実施形態では、試薬容器に用いるプランジャを図2に記載した構造としたが、プランジャの具体的構造に特に限定はなく、図2のプランジャ30に代えて、例えば、図5〜7に示すプランジャ60、70、80を用いてもよい。
【0035】
図5のプランジャ60は、プランジャ軸61と、プランジャ軸61の先端に螺合されたガスケット62とから構成されている。
プランジャ軸61は、円柱状の軸本体61aと、軸本体61aの一方の端部に設けられ、軸本体61aよりも大径の略円盤状の押し板61bと、軸本体61aの他方の端部に設けられ、ガスケット62内に挿入される雄ねじ部61cとを有している。
軸本体61aと、押し板61bと、雄ねじ部61cは一体成形されており、図2の軸本体31a、押し板31b、雄ねじ部31cと同様の材質のものを使用できる。
【0036】
ガスケット62は、プランジャ軸61が挿入される側から、円錐台部62a、第一大径部62b、側壁部62c、第二大径部62d、先端部62eを有し、これらが一体に形成されている。
第一大径部62bと第二大径部62dの外径は、シリンジ20の突出部23が設けられていない部分の内径と略同一で、これらの側面は、各々シリンジ20の内面と摺接する第一摺接部62Aと第二摺接部62Bとなっている。
【0037】
側壁部62cは、第一大径部62b及び第二大径部62dと同径の円柱を、底面の中心を通らない縦方向の面で切断した際の体積の小さい方の形状とされている。残された円柱の側面に該当する部分は、シリンジ20の内面と摺接する第三摺接部62Cとなっている。また、円柱の切断面に該当する側面は、シリンジ20の内面と摺接しない。この側面が、第一大径部62bと第二大径部62dの各々の側壁部62c側の面と共に、第一摺接部62Aと第二摺接部62Bと第三摺接部62Cに囲まれた凹状の試薬保持部62Dを構成している。
試薬供給孔25は、プランジャ60をガスケット62がシリンジ20の突出部23に当接するまで第二の開口端20b側に引いた際に、この試薬保持部62Dと連通する位置とされている。
【0038】
円錐台部62aは第一大径部62bより小径で、かつ第一大径部62b側の方の径が大きい円錐台状となっている。
先端部62eは、球体を、中心を通らない面で切り取った際の体積の小さい方の形状とされている。この切断面は、第二大径部62dと同径の円形とされ、先端部62eは、この切断面側で第二大径部62dに接続している。
また、円錐台部62a内に、プランジャ軸61の雄ねじ部61cが螺合される雌ねじ62Eが形成されている。
ガスケット62は、図2のガスケット32と同様のエラストマーで構成することができる。
【0039】
図6のプランジャ70は、プランジャ軸71と、プランジャ軸71の先端に螺合されたガスケット72とから構成されている。
プランジャ軸71は、円柱状の軸本体71aと、軸本体71aの一方の端部に設けられ、軸本体71aよりも大径の略円盤状の押し板71bと、軸本体71aの他方の端部に設けられ、ガスケット72内に挿入される雄ねじ部71cとを有している。
軸本体71aと、押し板71bと、雄ねじ部71cは一体成形されており、図2の軸本体31a、押し板31b、雄ねじ部31cと同様の材質のものを使用できる。
【0040】
ガスケット72は、プランジャ軸71が挿入される側から、円錐台部72a、貫通孔形成部72b、先端部72cを有し、これらが一体に形成されている。
貫通孔形成部72bは、外径がシリンジ20の突出部23が設けられていない部分の内径と略同一の円柱に、円柱状の貫通孔72dが径方向に形成された構造とされている。
貫通孔形成部72bの貫通孔72dが形成されている以外の部分の側面は、シリンジ20の内面と摺接する摺接部72Aとなっている。貫通孔形成部72bの貫通孔72dが形成された内面は、シリンジ20の内面と摺接しない試薬保持部72Bとされており、摺接部72Aに囲まれている。
【0041】
プランジャ30に代えてプランジャ70を用いる場合、試薬供給孔25は、プランジャ70をガスケット72がシリンジ20の突出部23に当接するまで第二の開口端20b側に引いた際に、この試薬保持部72B(貫通孔72d)と連通する位置に形成されている。
なお、プランジャ70を用いる場合、シリンジ20の径方向の対向する2カ所に、試薬保持部72B(貫通孔72d)と連通する試薬供給孔を各々形成してもよい。
【0042】
円錐台部72aは貫通孔形成部72bより小径で、かつ貫通孔形成部72b側の方の径が大きい円錐台状となっている。
先端部72cは、球体を、中心を通らない切断面で切り取った際の体積の小さい方の形状とされている。この切断面は、貫通孔形成部72bと同径の円形とされ、先端部72cは、この切断面側で貫通孔形成部72bに接続している。
また、円錐台部72a内に、プランジャ軸71の雄ねじ部71cが螺合される雌ねじ72Dが形成されている。
ガスケット72は、図2のガスケット32と同様のエラストマーで構成することができる。
【0043】
図7のプランジャ80は、プランジャ軸81と、プランジャ軸81の一方の端部側に取り付けられたOリング82a、82bと、プランジャ軸81の他方の端部に螺合された押し板83とから構成されている。
プランジャ軸81は、円柱状の軸本体81aと、軸本体81aの一方の端部近傍に設けられたOリング取り付け板81cと、軸本体81aの一方の端部に設けられたOリング取り付け板81dとを有している。Oリング取り付け板81cとOリング取り付け板81dは、各々軸本体81aの軸方向と垂直な面を有する略円盤状で、その周面にOリングを取り付けるための溝が形成されている。
軸本体81aと、Oリング取り付け板81cと、Oリング取り付け板81dは一体成形されており、図2の軸本体31a、押し板31b、雄ねじ部31cと同様の材質のものを使用できる。軸本体81aの他方の端部には、雌ねじ81bが形成されている。
また、押し板83は、軸本体81aよりも大径の略円盤状の押し板本体83aと、押し板本体83aに垂設され、雌ねじ81bと螺合する雄ねじ部83bを有している。
押し板本体83aと雄ねじ部83bは一体成形されており、図2の軸本体31a、押し板31b、雄ねじ部31cと同様の材質のものを使用できる。
Oリング82a、82bは、図2のガスケット32cと同様の材質のものを使用できる。
【0044】
Oリング82a、82bは、各々Oリング取り付け板81c、81dに取り付けられている。Oリング82a、82bは、Oリング取り付け板81c、81dに取り付けられた状態において、その外径が、シリンジ20の突出部23が設けられていない部分の内径と略同一となるように構成されている。Oリング82aの外周は、シリンジ20の内面と摺接する第一摺接部82Aとなり、Oリング82bの外周は、シリンジ20の内面と摺接する第二摺接部82Bとなっている。
また、第一摺接部82Aと第二摺接部82Bに挟まれた部分(囲まれた部分)は、試薬保持部82Cとされている。試薬保持部82Cはシリンジ20の内面と摺接しない。
【0045】
プランジャ30に代えてプランジャ80を用いる場合、試薬供給孔25は、プランジャ80をOリング取り付け板81cがシリンジ20の突出部23に当接するまで第二の開口端20b側に引いた際に、この試薬保持部82Cと連通する位置に形成されている。
プランジャ80をシリンジ20内に配置するためには、押し板83をプランジャ軸81から外した状態でプランジャ軸81をシリンジ20の第一の開口端20a側から挿入し、その後、押し板83をプランジャ軸81に螺合すればよい。
【0046】
プランジャ30とプランジャ80では、周方向全体にわたる試薬保持部が形成されているが、プランジャ60とプランジャ70の例から理解できるように、試薬保持部は、周方向全体にわたっていなくともよい。
また、上記各プランジャでは、摺接部の一部または全部が、試薬保持部を軸方向において挟む二カ所にあり、各々が、周方向全体にわたって連続している。
しかし、試薬保持部と摺接部との関係は、そのような態様には限定されず、試薬保持部が摺接部に囲まれており、試薬保持部とシリンジ20の内壁との間に、密閉空間を形成できるようになっていればよい。例えばプランジャ60の側壁部62cの側面に、試薬保持部62Dから離間した位置において、縦方向の溝が形成されていても差し支えない。また、プランジャ70の貫通孔形成部72bの側面に、貫通孔72dから離間した位置において、縦方向の溝が形成されていても差し支えない。
また、プランジャ30、プランジャ60、プランジャ70では、ガスケットが螺合によりプランジャ軸に取り付けられた構成としたが、例えば嵌め合いにより取り付けられていてもよい。同様に、プランジャ80では、押し板83が螺合によりプランジャ軸81に取り付けられた構成としたが、例えば嵌め合いにより取り付けられていてもよい。
【0047】
[その他の態様]
上記実施形態では、シリンジに試薬供給孔が形成された構成としたが、試薬供給孔は必須ではない。試薬供給孔を形成しない場合、試薬保持部の一部または全部を、シリンジの第一の開口端の外部に移動させた状態で試薬の溶液を試薬保持部に向けて供給し、凍結乾燥等により保持させればよい。
【0048】
また、上記実施形態では、シリンジの中間部において内側に突出する突出部を周方向全体にわたって連続的に設ける構成としたが、周方向の一部に断続的に設ける構成としてもよい。例えば、周方向の4カ所に90゜間隔で、凸部を設ける構成が考えられる。シリンジの中間部において内側に突出する突出部を連続的又は断続的に周方向に設けることにより、試薬保持部に試薬を保持させる際、試薬供給孔との位置合わせが容易となる。また、試薬保持部を第一の開口端の外部に移動させたとき、バネの一端側の位置を固定することによりバネを圧縮することができる。
シリンジの中間部において内側に突出する突出部は必須ではない。これを設けない場合は、試薬供給孔との位置合わせは目視により行えばよい。また、以下に説明するように、内側にプランジャ軸31を挿通するように配置したバネを圧縮することは必須でない。
【0049】
試薬保持部をシリンジの第一の開口端の外部に移動させたとき、プランジャに、第二の開口端側に移動させる付勢力を与える弾性部材は、内側にプランジャ軸31を挿通するように配置したバネ40に限定されない。例えば、押し板31bを上方から引き上げるように配置されたバネやゴム等の弾性部材を用いることができる。この場合、これらの弾性部材が伸張することにより、プランジャに、第二の開口端側に移動させる付勢力を与えることができる。
【0050】
また、試薬保持部をシリンジの第一の開口端の外部に移動させたとき、プランジャに、第二の開口端側に移動させる付勢力を与える弾性部材は必須ではない。例えば、押し板31bを押し下げる押棒の先端を押し板31bに固定し、この押棒を引き上げることにより、ガスケット32を待避させ、第二反応工程から測定工程に移行することができる。
【0051】
さらに、プランジャを押し下げたままでも測定工程に支障が生じなければ、測定工程を行うためにプランジャを上に戻す必要もない。例えば、図7のプランジャ80のプランジャ軸81を透明材料で形成した場合、光の透過を妨げるのはOリング82a、82bのみとなるので、試薬保持部82C近傍で発生する蛍光や生物発光等の検出を実質的に妨げない。この場合、プランジャ80を上に戻さなくとも、支障なく測定工程を行える。
【0052】
また、上記実施形態では、シリンジ20の第二の開口端20bに鍔部22を設けたが、鍔部22を設ける位置は、第二の開口端20bに限定されず、例えば、第二の開口端20bの近傍(第二の開口端20bから、やや第一の開口端20a側)に設けてもよい。
また、鍔部22の形状にも特に限定はなく、例えば、円盤の周縁に、下方に垂下する鍵状部を設け、反応容器50の上端と勘合するようにしてもよい。この場合、反応容器50に鍔部52がなくとも、安定的に試薬容器10を支持することができる。
さらに、シリンジ20の鍔部22は必須ではない。鍔部22がない場合は、別途の支持手段で、試薬容器10の第一の開口端20aが反応容器50の底部に達しないよう、支持すればよい。
【0053】
また、上記実施形態では、反応容器50に第一試薬R1を保持させ、二段反応を行わせる態様としたが、反応容器50に試薬を保持させることは必須でない。反応容器50に試薬を保持しない場合、試料液Sと第二試薬R2との一段反応をさせることができる。また、試料液Sは、予め、第一試薬R1と反応させたものであってもよい。また、試料液Sと第一試薬R1を、共に手作業で反応容器50に導入してもよい。これらの場合、反応容器50に試薬を保持させなくとも、二段反応が可能となる。
【0054】
[エンドトキシンの測定]
本発明の試薬容器、試薬入り試薬容器、反応ユニット、および分析システムを、エンドトキシンの測定に適用する場合、反応容器に保持する第一試薬R1としては、エンドトキシンとの結合により活性化されるC因子と、ペプチドに発光基質が結合してなる発光合成基質を含有する試薬を用いる。また、試薬容器に保持する第二試薬R2としては、発光酵素および発光反応に必要な他の化合物を含有する試薬を用いる。
あるいは、エンドトキシンとの結合により活性化されるC因子を、反応容器に保持する第一試薬R1として用い、ペプチドに発光基質が結合してなる発光合成基質を含有する試薬と発光酵素および発光反応に必要な他の化合物を含有する試薬とを、試薬容器に保持する第二試薬R2として用いてもよい。
【0055】
エンドトキシンとの結合により活性化されるC因子を含有する試薬としては、カブトガニ血球抽出成分(リムルス試薬)を好適に使用できる。
ペプチドに発光基質が結合してなる発光合成基質は、活性型C因子、活性型B因子、および凝固酵素の少なくともいずれか1種の作用(プロテアーゼ活性)により、発光基質とペプチドとの結合が切断される構造を有するものである。活性型C因子は、C因子が活性化されることにより生成される。活性型B因子は、活性型C因子の作用によりB因子が活性化されて生成される。凝固酵素は、活性型B因子や活性型C因子の作用により前凝固酵素が活性化されて生成される。
発光基質としては、アミノルシフェリンが好適に使用できる。発光基質と結合するペプチドとしては、該ペプチドのC末端におけるアミノルシフェリンとのアミド結合が、活性型C因子、活性型B因子および凝固酵素の少なくともいずれか1種のプロテアーゼ活性により切断されるアミノ酸配列からなるものであればよい。
なお、試料液中の塩分濃度に起因する誤差を解消するため、第一試薬R1中に、NaClを添加しておいてもよい。
発光酵素は、発光合成基質から遊離される発光基質の生物発光を触媒とし、光を発生させる酵素である。発光基質がアミノルシフェリンである場合の発光酵素はルシフェラーゼであり、発光反応に必要な他の化合物は、ATPおよび2価金属イオンである。
【0056】
具体的な試薬容器及び反応ユニットの構造、および分析システムの具体的手順は、上記で説明したものを、好適に適用できる。
エンドトキシンの測定のように、発光を利用する測定では、第二試薬R2を保持した試薬保持部を試料液に浸漬してから、発光反応を光学的に検出するまでの時間は短い方が好ましい。そのため、第二反応工程でプランジャ30を押し下げてから、押し下げを解除して測定工程に移行する動作は、できるだけ速やかに行うことが好ましい。また、光学測定手段により発光反応の検出が可能な位置に容器ユニットを配置してから、プランジャ30の押し下げを行うことが好ましい。
【0057】
第一試薬R1がカブトガニ血球抽出成分(リムルス試薬)とペプチドにアミノルシフェリンが結合している合成基質との混合試薬であり、第二試薬R2がルシフェラーゼとATPおよび2価金属イオンを含む混合試薬である場合、第一試薬R1を保持した反応容器に試料液を最初に導入した後、37℃で15〜30分間程度インキュベートすることが好ましい。
その後、プランジャ30を押し下げて第二試薬R2を保持した試薬保持部を試料液に浸漬し、ルシフェリンとルシフェラーゼの発光反応(生物発光反応)を行わせる。発光反応の際の温度は、たとえば室温(25℃)とすることができる。また、発光反応の反応時間、すなわち、プランジャ30を押し下げてから、押し下げを解除して、発光反応を光学的に検出するまでの時間は、0秒から10秒とすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、エンドトキシン、βグルカン等の微生物夾雑物の検出等、液状では不安定な試薬を用いる分析に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0059】
10…試薬容器、20…シリンジ、30…プランジャ、40…バネ、50…反応容器、32A…第一摺接部、32B…第二摺接部、32C…試薬保持部、55…光学測定手段、R1…第一試薬、R2…第二試薬
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7