(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5979332
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】含フッ素アルキルシラン化合物およびその製造法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20160817BHJP
C09K 3/18 20060101ALI20160817BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20160817BHJP
【FI】
C07F7/18 ECSP
C09K3/18 104
!C07B61/00 300
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-502539(P2016-502539)
(86)(22)【出願日】2015年9月18日
(86)【国際出願番号】JP2015076699
【審査請求日】2016年1月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-200044(P2014-200044)
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066005
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】福島 剛史
【審査官】
水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−040373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
CF3(CF2)n(CH2CF2)a(CF2CF2)b(CH2)3SiR3-dXd 〔I〕
(ここで、nは3の整数であり、aは1または2、bは2の整数であり、Rは炭素数1〜3のアルコキシ基、含フッ素アルコキシ基またはアルケニル基であり、Xはハロゲンであり、dは0〜3の整数である)で表される含フッ素アルキルシラン化合物。
【請求項2】
一般式
CF3(CF2)n(CH2CF2)a(CF2CF2)bCH2CH=CH2 〔II〕
(ここで、nは3の整数であり、aは1または2、bは2の整数である)で表されるポリフルオロアルキルアリル化合物を、遷移金属触媒の存在下で、炭素数1〜3の低級アルキル基を有するアルコキシシランと反応させることを特徴とする請求項1記載の含フッ素アルキルシラン化合物の製造法。
【請求項3】
一般式
CF3(CF2)n(CH2CF2)a(CF2CF2)bCH2CH=CH2 〔II〕
(ここで、nは3の整数であり、aは1または2、bは2の整数である)で表されるポリフルオロアルキルアリル化合物を、遷移金属触媒の存在下で、クロロシランと反応させた後、炭素数1〜3の低級アルコールまたは金属アルケニルと反応させることを特徴とする請求項1記載の含フッ素アルキルシラン化合物の製造法。
【請求項4】
遷移金属触媒がPt系またはRh系触媒である請求項2または3記載の含フッ素アルキルシラン化合物の製造法。
【請求項5】
請求項1記載の含フッ素アルキルシラン化合物を有効成分とする表面処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素アルキルシラン化合物およびその製造法に関する。さらに詳しくは、水との接触角の大きい含フッ素アルキルシラン化合物およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パーフルオロアルキル基を構造単位として有する化合物は、繊維、金属、ガラス、ゴム、樹脂等の各種基材の表面を化学処理することによって、表面改質性、撥水撥油性、離型性、防汚性、レベリング性などを向上させることが知られている。
【0003】
その中でも、パーフルオロアルキル基の炭素数が8〜12のテロマー化合物において、これらの性能が最も発現し易く、炭素数8のテロマー化合物が好んで使用されている。
【0004】
しかるに、近年炭素数8のパーフルオロオクタン酸あるいは炭素数が8を超えるパーフルオロカルボン酸は難分解性で、生体蓄積性が高く、生体毒性が疑われるなど環境に問題がみられるとの報告がなされている。これらの化合物の内、炭素数が8を超えるパーフルオロアルキル基を有する化合物は、環境中での生物的分解または化学的分解によって、パーフルオロオクタン酸または炭素数が8を超えるパーフルオロカルボン酸に変化する可能性が示唆されており、今後はその製造や使用が困難になることが懸念されている。ただし、パーフルオロアルキル基の炭素数が6以下の化合物にあっては、生体蓄積性が低いといわれている。
【0005】
パーフルオロアルキル基の炭素数が6以下であって、水との接触角の大きい含フッ素アルキルシラン化合物も知られている。
【0006】
特許文献1には、R
F(CH
2CH
2)
a(CH
2CF
2)
b(CF
2CF
2)
cIとCH
2=CHSi(R
1)
3-nX
nとの付加反応によって得た化合物を還元剤によって還元して、末端-CH
2CH
2Si(R
1)
3-nX
nを有する含フッ素アルキルシラン化合物を得る方法が記載されている。
【0007】
しかしながら、この方法では最終工程でヨウ素を脱離しているため、目的化合物のヨウ素による着色が懸念される他、脱ヨウ素化反応において環境負荷の高い水素化トリブチル錫等が使用されているという問題がみられる。また、CF
2基とCF
2基との間にCH
2基を有する化合物は、塩基性条件下に弱いことが記載されており、反応条件(合成ルート)が限定されることとなる。
【0008】
特許文献2には、ビフェニルアルキル基を有するシランカップリング剤Rf(C
6H
4-C
6H
4)CH
2CH
2CH
2Si(OCH)
3は、350℃以上の高温雰囲気に曝露しても、これら化合物による改質表面の接触角の低下がみられないなどの、すぐれた耐熱性、耐久性、離型性、防汚性を有する化合物であることが記載されている。
【0009】
しかしながら、分子内にビフェニル骨格を有するため常温で固体であることもあって取扱い難い場合があり、また反応試薬としてn-ブチルリチウム等の有機リチウムを使用しており、これは反応性が高く、禁水試薬であって、反応中も反応熱の制御が必要となるなど、低温条件下でゆっくりと滴下する必要があり、ハンドリング性に欠け、大量スケールでの製造には適さない工程がとられている。
【0010】
なお、2官能性オルガノシロキサン基を有する含フッ素アルキルシラン化合物については、特許文献3に記載がみられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2014−40373号公報
【特許文献2】WO 2008/108438 A1
【特許文献3】特開2009−137842号公報
【特許文献4】特許第5292826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、環境負荷の高い金属試薬を使用せず、ヒドロシリル化反応を行う前に原料化合物由来の遊離ヨウ素を除去することが可能であり、またハンドリング性も良好な含フッ素アルキルシラン化合物およびその製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によって、一般式
CF
3(CF
2)
n(CH
2CF
2)
a(CF
2CF
2)
b(CH
2)
3SiR
3-dX
d 〔I〕
(ここで、nは
3の整数であり、aは1または2、bは
2の整数であり、Rは炭素数1〜3のアルコキシ基、含フッ素アルコキシ基またはアルケニル基であり、Xはハロゲンであり、dは0〜3の整数である)で表される含フッ素アルキルシラン化合物が提供される。
【0014】
この含フッ素アルキルシラン化合物は、一般式
CF
3(CF
2)
n(CH
2CF
2)
a(CF
2CF
2)
bCH
2CH=CH
2 〔II〕
(ここで、n、a、bは上記定義と同じである)で表されるポリフルオロアルキルアリル化合物を、遷移金属触媒の存在下で、
・アルコキシシランと反応させ、
または
・クロロシランと反応させた後、低級アルコールまたは金属アルケニルと反応させる
ことにより製造される。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、Pt系触媒等の遷移金属触媒を用い、ヒドロシリル化反応を行う前に原料化合物由来の遊離ヨウ素を除去することが可能であり、またハンドリング性も良好である含フッ素アルキルシラン化合物が提供される。
【0016】
遷移金属触媒の存在下で、適当なヒドロシリル化剤を付加させた本発明の含フッ素アルキルシラン化合物は、各種基質の表面への化学結合により、そこに撥水撥油性、防汚性などを付与することができ、したがって表面処理剤の有効成分として用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る含フッ素アルキルシラン化合物は、次のような一連の工程を経て、製造される。
(1) CF
3(CF
2)
n(CH
2CF
2)
a(CF
2CF
2)
bI 〔IV〕
に、カルボン酸アリルエステル R´COOCH
2CH=CH
2を反応させる。
(2) 生成した
CF
3(CF
2)
n(CH
2CF
2)
a(CF
2CF
2)
bCH
2CHICH
2OCOR´ 〔III〕
に、遷移金属を反応させる。
(3) 生成した
CF
3(CF
2)
n(CH
2CF
2)
a(CF
2CF
2)
bCH
2CH=CH
2 〔II〕
に、アルコキシシランを反応させ、
またはクロロシランを反応させた後、炭素数1〜3の低級アルコールまたは金属アルケニルと反応させ、
CF
3(CF
2)
n(CH
2CF
2)
a(CF
2CF
2)
b(CH
2)
3SiR
3-dX
d 〔I〕
を得る。ここで、炭素数1〜3の低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のフッ素非含有アルコールまたはトリフルオロエタノール、テトラフルオロプロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール等の含フッ素アルコールが挙げられる。また、金属アルケニルとしては、アリルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド等が挙げられる。
【0018】
上記工程(1)で原料化合物として用いられるポリフルオロアルキルアイオダイド〔IV〕は公知の化合物であり、例えば特許文献4に記載されている。
【0019】
具体的に用いられるポリフルオロアルキルアイオダイドとしては、次のような化合物が例示される。
CF
3(CF
2)(CH
2CF
2)I
CF
3(CF
2)(CH
2CF
2)
2I
CF
3(CF
2)
2(CH
2CF
2)I
CF
3(CF
2)
2(CH
2CF
2)
2I
CF
3(CF
2)
3(CH
2CF
2)I
CF
3(CF
2)
3(CH
2CF
2)
2I
CF
3(CF
2)(CH
2CF
2)(CF
2CF
2)I
CF
3(CF
2)(CH
2CF
2)(CF
2CF
2)
2I
CF
3(CF
2)
2(CH
2CF
2)(CF
2CF
2)I
CF
3(CF
2)
2(CH
2CF
2)(CF
2CF
2)
2I
CF
3(CF
2)
3(CH
2CF
2)
2(CF
2CF
2)I
CF
3(CF
2)
3(CH
2CF
2)
2(CF
2CF
2)
2I
【0020】
これらのポリフルオロアルキルアイオダイドと反応する少過剰モル数のカルボン酸アリルエステル R´COOCH
2CH=CH
2としては、R´が炭素数1〜3のアルキル基を有するもの、好ましくは酢酸アリルが用いられる。この反応は、約70〜120℃の温度で、ポリフルオロアルキルアイオダイドに対して約0.001〜1.0モル%のラジカル開始剤、例えばジ-n-プロピル パーオキシジカーボネート、ジイソプロピル パーオキシジカーボネート、ジ(4-第3ブチルシクロヘキシル) パーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル) パーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシヘキシル) パーオキシジカーボネート、ジ(3-メトキシブチル) パーオキシジカーボネート、ジ第2ブチル パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネートの存在下で、ラジカル付加反応として行われる。
【0021】
生成したカルボン酸アリル付加体〔III〕は、遷移金属、例えばZn、Mg、Mn、Cu等の金属単体またはその試薬、好ましくはZn単体を用い、ヨウ素の還元とオレフィン化反応として行われる。カルボン酸アリル付加体および遷移金属は、それぞれメタノール、エタノール等の溶媒と共に用いられる。また、遷移金属は、カルボン酸アリル付加体に対し少過剰のモル比で用いられる。
【0022】
生成したポリフルオロアルキルアリル化合物〔II〕
CF
3(CF
2)
n(CH
2CF
2)
a(CF
2CF
2)
bCH
2CH=CH
2
は、アルコキシシランと反応させることにより、目的化合物である
CF
3(CF
2)
n(CH
2CF
2)
a(CF
2CF
2)
b(CH
2)
3SiR
3-dX
d 〔I〕
を与える。
【0023】
アルコキシシランとしては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン等の炭素数1〜3の低級アルコキシ基を有するものが用いられる。アルコキシシランは、末端アリル化合物に対し少過剰のモル比で用いられる。
【0024】
反応は、約25〜100℃の反応温度で、遷移金属触媒の存在下で行われる。遷移金属触媒、好ましくはPt系またはRh系触媒としては、例えば塩化白金酸H
2PtCl
16・6H
2O、カルステッド触媒Pt・CH
2=CHSiMe
2OMe
2OSiCH=CH
2、ウィルキンソン触媒 RhCl〔P(C
6H
5)
3〕
3、RhH〔P(C
6H
5)
3〕
4等が用いられる。触媒は、ポリフルオロアルキルアリル化合物に対して約0.001〜10モル%程度用いられる。
【0025】
ポリフルオロアルキルアリル化合物〔II〕はまた、少過剰モル比のクロロシランと反応させた後、炭素数1〜3の低級アルコールまたは金属アルケニルと反応させることによっても、目的化合物を得ることができる。クロロシランとの反応は、約25〜100℃の反応温度で、上記の如き遷移金属触媒を、ポリフルオロアルキルアリル化合物に対して約0.001〜10モル%程度の割合で用い、末端基を-SiCl
3化した後、炭素数1〜3の低級アルコールまたは金属アルケニルを約25〜120℃の反応温度で反応させる。低級アルコールとして、フッ素非含有アルコールを用いた場合にはRはアルコキシ基となり、含フッ素アルコールを用いた場合にはRは含フッ素アルコキシ基となる。この際、末端-SiCl
3基に対し3当量未満の低級アルコールまたは金属アルケニルを反応させることにより末端基中にハロゲンを残存させることができる。
【0026】
得られた含フッ素アルキルシラン化合物は、水との接触角が大きく、すなわち表面自由エネルギーが低いことを示しており、離型性や防汚性が高いことを示している。
【実施例】
【0027】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0028】
参考例1
不活性窒素ガスの存在下で、容量1000mlの三口フラスコに滴下ロートおよびジムロートを取り付け、三口フラスコ中にポリフルオロアルキルアイオダイドCF
3(CF
2)
3(CH
2CF
2)(CF
2CF
2)
2I 400g(0.66モル)を、また滴下ロートに酢酸アリルCH
2=CHCH
2OCOCH
3 74.0ml(0.69モル)およびラジカル開始剤P-16〔ジ(第3ブチルシクロヘキシル) パーオキシジカーボネート〕2.61g(6.5ミリモル)をそれぞれ入れ、三口フラスコ内を攪拌し、その温度が90℃になったところで滴下ロートからの滴下を開始し、反応を開始させた。反応後半で、発熱が弱くなってきたので、P-16 0.09gを追加して反応を継続させた。
【0029】
発熱終了2時間後室温まで冷却し、反応混合物について、NMRとガスクロマトグラフィーで反応生成物の構造と転化率の確認を行った。目的とする生成物の転化率は87%であった。減圧蒸留で未反応各原料化合物を除き、淡黄色固体状の酢酸アリル付加体391g(95%GC、収率84%)を得た。
CF
3CF
2CF
2CF
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2CHICH
2OCOCH
3
19F-NMR(d-アセトン,282.65Hz):
-80.2:C
F3CF
2CF
2CF
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2-
-110.3:CF
3CF
2CF
2C
F2CH
2C
F2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2-
-112.2:CF
3CF
2CF
2CF
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2C
F2CH
2-
-120.2:CF
3CF
2CF
2CF
2CH
2CF
2C
F2CF
2CF
2CF
2CH
2-
-121.9:CF
3CF
2CF
2CF
2CH
2CF
2CF
2C
F2CF
2CF
2CH
2-
-122.5:CF
3CF
2C
F2CF
2CH
2CF
2CF
2CF
2C
F2CF
2CH
2-
-124.9:CF
3C
F2CF
2CF
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2-
【0030】
参考例2
不活性窒素ガスの存在下で、容量500mlの三口フラスコに滴下ロートおよびジムロートを取り付けた。フラスコ中にメタノール180mlおよびZn 20.1g(0.33モル)を、また滴下ロートに参考例1で得られた酢酸アリル付加体200g(0.28モル)およびメタノール20mlをそれぞれ入れ、三口フラスコ内を攪拌し、還流し始めたところで滴下ロートからの滴下を開始し、反応を開始させた。滴下後2時間攪拌した後室温まで冷却し、反応を停止させた。
【0031】
反応混合物の分相が不明瞭であったので、メタノールを留去して分液を試みたが、エマルジョンが形成された。そこで、沈殿物をろ過後に再度分液、乾燥を行って、目的化合物である透明な液状の末端アリル化合物を123.7g(92%GC、収率77%)を得た。この反応では、出発原料の純度とは関係なく、再現性良く反応が進行していることが確認された。次に、減圧蒸留を行って、その純度を97%GCまで上げた。
CF
3CF
2CF
2CF
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2CH=CH
2
1H-NMR(d-アセトン,300.4Hz):
δ5.9〜5.7:-CF
2CH
2C
H=CH
2(m)
5.4:-CF
2CH
2CH=C
H2(m)
3.6:-CF
2C
H2CF
2-(quin)
3.0:-CF
2C
H2CH=CH
2(dt)
19F-NMR(d-アセトン,282.65Hz):
-80.2:C
F3CF
2CF
2CF
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2-
-110.2:CF
3CF
2CF
2C
F2CH
2C
F2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2-
-111.9:CF
3CF
2CF
2CF
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2C
F2CH
2-
-120.3:CF
3CF
2CF
2CF
2CH
2CF
2C
F2CF
2CF
2CF
2CH
2-
-121.9:CF
3CF
2CF
2CF
2CH
2CF
2CF
2C
F2CF
2CF
2CH
2-
-122.1:CF
3CF
2CF
2CF
2CH
2CF
2CF
2CF
2C
F2CF
2CH
2-
-122.5:CF
3CF
2C
F2CF
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2-
-124.9:CF
3C
F2CF
2CF
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2-
【0032】
実施例1
不活性窒素ガスの存在下で、容量100mlの三口フラスコにセプタムおよびジムロートを取り付けた。三口フラスコ中に、参考例2で得られた末端アリル化合物20.0g(0.04モル)およびトリエトキシシラン5.8ml(0.05モル)を入れ、三口フラスコ内を攪拌し、80℃まで昇温させた。昇温後、塩化白金酸 H
2PtCl
16・6H
2O 20mg(末端アリル化合物に対して0.05モル%)を加えて、反応を開始させた。一昼夜攪拌した後、室温まで冷却して反応を停止させた。
【0033】
反応混合物を減圧蒸留して、目的化合物である透明な液状の末端トリエトキシシリルプロピル誘導体を10.7g(収率42%)得た。
CF
3CF
2CF
2CF
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2CH
2CH
2Si(OCH
2CH
3)
3
1H-NMR(CDCl
3,300.4Hz):
δ3.83:-Si(OC
H2CH
3)
3(q)
2.92:-CF
2C
H2CF
2-(quin)
2.13:-C
H2CH
2CH
2-(tt)
1.75:-CH
2C
H2CH
2-(m)
1.21:-Si(OCH
2C
H3)
3(t)
0.70:-CH
2CH
2C
H2-(t)
19F-NMR(CDCl
3,282.65Hz):
-82.2:C
F3CF
2CF
2CF
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2-
-113.2:CF
3CF
2CF
2C
F2CH
2C
F2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2-
-115.6:CF
3CF
2CF
2CF
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2C
F2CH
2-
-122.5:CF
3CF
2CF
2CF
2CH
2CF
2C
F2CF
2CF
2CF
2CH
2-
-124.0〜-126.0:CF
3CF
2C
F2CF
2CH
2CF
2CF
2C
F2C
F2CF
2CH
2-
-127.0:CF
3C
F2CF
2CF
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2-
【0034】
実施例2
不活性窒素ガスの存在下で、容量100mlの三口フラスコにセプタムおよびジムロートを取り付けた。三口フラスコ中に、参考例2で得られた末端アリル化合物20.0g(0.04モル)およびトリクロロシランSiHCl
3 4.8ml (0.05ミリモル)を入れ、三口フラスコ内を攪拌し、40℃まで昇温させた。昇温後、カルステッド触媒(Pt・CH
2=CHSiMe
2OMe
2SiCH=CH
2)14.5mg(末端アリル化合物に対して0.1モル%)を加えて、反応を開始させた。油浴温度を徐々に上げて行き、100℃となったところで温度を一定とし、一昼夜攪拌した。NMRによって原料の消失を確認した後、室温に冷却して反応を停止させた。
【0035】
次に、この反応で生成した末端トリクロロシリル体を、精製せずにそこにオルトギ酸メチルCH(OCH
3)
3 3.7ml(0.05モル)を加えて40℃に加熱し、反応溶液が均一になったことを確認した後、メタノール5.6ml(0.15モル)を加えて1時間攪拌し、低沸成分の留去と減圧蒸留により、目的化合物である透明な液状の末端トリメトキシシリルプロピル誘導体を10.10g(収率41%)得た。
CF
3CF
2CF
2CF
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3
1H-NMR(CDCl
3,300.4Hz):
δ3.58:-Si(OC
H3)
3(s)
2.92:-CF
2C
H2CF
2-(quin)
2.12:-C
H2CH
2CH
2-(tt)
1.74:-CH
2C
H2CH
2-(m)
0.72:-CH
2CH
2C
H2-(t)
19F-NMR(CDCl
3,282.65Hz):
-82.1:C
F3CF
2CF
2CF
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2-
-113.2:CF
3CF
2CF
2C
F2CH
2C
F2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2-
-115.6:CF
3CF
2CF
2CF
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2C
F2CH
2-
-122.5:CF
3CF
2CF
2CF
2CH
2CF
2C
F2CF
2CF
2CF
2CH
2-
-124.0〜-126.0:CF
3CF
2C
F2CF
2CH
2CF
2CF
2C
F2C
F2CF
2CH
2-
-127.0:CF
3C
F2CF
2CF
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2-
【0036】
比較例
実施例2において、末端アリル化合物の代りにC
6F
13CH
2CH=CH
2 30g(0.08モル)を用い、またカルステッド触媒量を31.6g(末端アリル化合物に対して0.1モル%)に、トリクロロシラン量を10.1ml(0.105モル)に、メタノール量を12ml(0.30モル)に、オルトギ酸メチル量を7.7ml(0.1モル)に、トリクロロシランとの反応温度を60℃にそれぞれ変更して用い、透明な液状の末端トリメトキシシリルプロピル誘導体を31.66g(収率79%)を得た。
CF
3CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2CH
2CH
2-Si(OCH
3)
3
1H-NMR(CDCl
3,300.4Hz):
δ3.63:-Si(OC
H3)
3(s)
2.10:-C
H2CH
2CH
2-(quin)
1.81:-CH
2C
H2CH
2-(m)
1.74:-CH
2CH
2C
H2-(t)
19F-NMR(CDCl
3,282.65Hz):
-82.0:C
F3CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2-
-115.6:CF
3CF
2CF
2CF
2CF
2C
F2CH
2-
-123.1:CF
3CF
2CF
2CF
2C
F2CF
2CH
2-
-124.0:CF
3CF
2C
F2CF
2CF
2CF
2CH
2-
-124.8:CF
3CF
2CF
2C
F2CF
2CF
2CH
2-
-127.3:CF
3C
F2CF
2CF
2CF
2CF
2CH
2-
【0037】
参考例3
基材:松浪硝子(プレクリン水縁磨きS7213)
溶液:バートレル100g、試料0.1g、0.05M塩酸40mg、メタノール5ml
塗布条件:スピンコート、0.5g、1000rpm、30秒間
乾燥条件:23℃、50%RH
上記条件下での各試料の接触角測定結果は、次の表に示される。
表
接触角(°)
No. 試料 H2O ヘキサデカン
1 実施例1 108 69
2 〃 2 108 69
3 C
6F
13CH
2CH
2Si(OEt)
3 106 63
4 比較例 106 73
5 C
8F
17CH
2CH
2Si(OEt)
3 109 69
【要約】
一般式 CF
3(CF
2)
n(CH
2CF
2)
a(CF
2CF
2)
b(CH
2)
3SiR
3-dX
d 〔I〕(n:0〜5の整数、a:1または2、b:0〜3の整数、R:炭素数1〜3のアルコキシ基、含フッ素アルコキシ基またはアルケニル基、X:ハロゲン、d:0〜3の整数)で表される含フッ素アルキルシラン化合物。この含フッ素アルキルシラン化合物は、一般式 CF
3(CF
2)
n(CH
2CF
2)
a(CF
2CF
2)
bCH
2CH=CH
2 〔II〕(n、a、bは上記定義と同じ)で表されるポリフルオロアルキルアリル化合物を、遷移金属触媒の存在下で、アルコキシシランと反応させ、またはクロロシランと反応させた後低級アルコールまたは金属アルケニルと反応させることにより製造される。この製造法では、環境負荷の高い金属試薬を使用せず、ヒドロシリル化反応を行う前に原料化合物由来の遊離ヨウ素を除去することが可能であり、またハンドリング性も良好な含フッ素アルキルシラン化合物を与える。