(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の研磨用複合粒子について説明する。
本発明の研磨用複合粒子は、シリカ粒子の表面に金属酸化物を担持させた複合シリカ粒子からなり、粉末X線回折測定による上記金属酸化物の、線源としてCuKα線を用いたX線回折における最大ピークの半価幅が0.45〜1.0°であることを特徴とする。
【0019】
図1は、本発明の研磨用複合粒子の電子顕微鏡写真の一例であり、後述する実施例1で製造した研磨用複合粒子の電子顕微鏡写真である。
図1に示す研磨用複合粒子1は、シリカ粒子10を基材粒子とし、シリカ粒子10の表面に金属酸化物20が担持されている。
【0020】
金属酸化物はシリカ粒子の表面に均一に担持されていることが望ましい。
均一に担持されているとは、
図1に示すように金属酸化物がシリカ粒子の表面に、一部に局在化することなく一様に分布していることを意味する。
【0021】
また、金属酸化物はシリカ粒子上にアイランド状又は層状に担持されていることが望ましい。
【0022】
「アイランド状に担持」とは、金属酸化物粒子が、電子顕微鏡写真において1つ1つの粒子の輪郭が区別できる状態で担持されており、シリカ粒子の表面から金属酸化物粒子が突出している状態を意味している。具体的には、シリカ粒子の表面から2nm以上突出した金属酸化物粒子が存在することを意味する。
すなわち、シリカ粒子の表面を海とした場合に、金属酸化物粒子が海に浮かぶ島になっているように見える状態を「アイランド状」ということとする。
シリカ粒子に担持させた際にアイランド状に担持されやすい金属酸化物としては、例えば、酸化セリウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0023】
「層状に担持」とは、透過型電子顕微鏡写真において金属酸化物がシリカ粒子の表面を覆う膜のように担持されている状態をいう。
【0024】
シリカ粒子は、その製法、形状、結晶型及び粒子径において特に限定されない。非晶質シリカ粒子であってもよく、結晶質シリカ粒子であってもよいが、非晶質シリカ粒子であることが望ましい。
シリカ粒子の結晶性は、X線回折の測定により得られた回折パターンにおいて、2θ=20.00〜23.00°での正方晶SiO
2(101)のピークが出現するかによって判定することができる。
【0025】
シリカ粒子としては市販のシリカ粒子を用いることができ、シリカ粒子の製造方法は特に限定されないが、アーク法や燃焼法等で得られる乾式法シリカや沈殿法やゲル法等で得られる湿式法シリカが適用できる。
また、シリカ粒子の形状は球状、金平糖状、まゆ状、鎖状等の形状を用いることができる。
これらの中では球状のものが望ましい。
【0026】
シリカ粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)は5〜1000nmであることが望ましく、10〜500nmであることがより望ましく、30〜200nmであることがさらに望ましい。
シリカ粒子の平均粒子径が5nm以上であると研磨レートをより高くすることができる。また、シリカ粒子の平均粒子径が1000nm以下であると研磨面の品質を高くすることができる。
【0027】
ここでシリカ粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)とは、透過型電子顕微鏡(TEM)写真の2万倍の視野での一定方向径(粒子をはさむ一定方向の二本の平行線の間隔)で定義される粒子径(nm)であって、TEM写真内の重なっていない独立した粒子1000個の一定方向径を測定して平均値を求めたものである。
【0028】
金属酸化物を構成する金属としては、特に限定されるものではないが、例えばセリウム、ジルコニウム、アルミニウム、鉄、亜鉛、マンガン、スズ、チタン、クロム、ランタン、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選択された少なくとも1種の金属が挙げられる。これらの中ではセリウムが特に望ましい。
上記金属の酸化物である金属酸化物としては、酸化セリウム(セリア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マンガン、二酸化マンガン、酸化スズ、酸化チタン(チタニア)、酸化クロム、酸化ランタン、酸化ストロンチウム及び酸化バリウムが挙げられる。これらの中では酸化セリウムが望ましい。
また、金属酸化物中の金属の価数は特に限定されるものではなく、例えば、酸化セリウム粒子中のセリウムの価数は3価でも4価でもよい。より化学研磨が進む点で、3価のセリウムを含む酸化セリウムの粒子を担持するのがより好ましい。また、金属酸化物は、上記金属のうちの2種以上を含む複合酸化物であってもよく、複合酸化物の例としては、SrZrO
3、BaTiO
3、SrTiO
3、CeLa
2O
3F
3及びLaOF等が挙げられる。
【0029】
金属酸化物が、金属酸化物前駆体の形でシリカ粒子の表面に析出され、焼成によって金属酸化物となってシリカ粒子の表面に担持される場合、金属酸化物前駆体の原料としては、金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ペルオキソ酸塩、炭酸塩、金属オキソ酸塩、金属アルコキシド等が挙げられる。これら原料の水溶液に酸又はアルカリを加えることによって、金属酸化物前駆体としての水酸化物やシュウ酸塩等の沈殿を得て、シリカ粒子の表面に析出させる。シリカ粒子の表面で析出させた金属酸化物前駆体を加熱焼成すると、金属酸化物となってシリカ粒子の表面に担持される。
【0030】
シリカ粒子の表面上における金属酸化物の平均粒子径としては、0.1〜30nmであることが望ましく、1〜25nmであることがより望ましい。
金属酸化物の平均粒子径は、
図1に示すようにシリカ粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)に比べて小さくなっており、シリカ粒子の平均粒子径が金属酸化物の平均粒子径の5〜50倍であることが望ましい。
金属酸化物の平均粒子径は、シリカ粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)と同様の方法により測定することができる。
【0031】
本発明の研磨用複合粒子における金属酸化物は結晶性が高いことが特徴であり、線源としてCuKα線を用いたX線回折における最大ピークの半価幅(以下、単に金属酸化物の半価幅ともいう)が0.45〜1.0°である。
また、上記半価幅が0.45〜0.8°であることが好ましい。
【0032】
上記半価幅が1.0°を超えると、研磨用複合粒子に含まれる金属酸化物の結晶性が低く、研磨レートが低くなる。これは金属酸化物の結晶性が低いと充分な硬度が得られず、化学研磨性が発揮されないためである。
また上記半価幅が0.45°未満であると、研磨レートは高くなる傾向にあるが、表面粗さが悪化する。これは担持されている金属酸化物の粒子が大きく成長し、露出するシリカ粒子の面が多くなることやシリカ粒子の焼結による凝集粒子の生成のためと推測される。
【0033】
本発明の研磨用複合粒子の、粉末状態での平均粒子径としては、3〜1000nmであることが望ましく、30〜250nmであることがより望ましい。
研磨用複合粒子の平均粒子径は、シリカ粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)と同様の方法により測定することができる。
【0034】
次に、本発明の研磨用複合粒子を製造する方法の一例として、本発明の研磨用複合粒子の製造方法について説明する。
本発明の研磨用複合粒子の製造方法は、シリカ粒子を分散させてなる分散液に金属酸化物の原料となる金属塩を加え、中和反応により金属酸化物前駆体をシリカ粒子の表面に析出させる工程と、加熱焼成前の粒子に含まれるフラックス成分の含有量を50〜10000ppmとして700〜950℃で加熱焼成する工程と、上記加熱焼成後の粒子を粉砕する工程とを行うことを特徴とする。
【0035】
上記方法では、まず、分散媒にシリカ粒子を分散させてなる分散液を準備する。
シリカ粒子としては上述のシリカ粒子を使用することができる。
分散媒としては特に限定されず、水やアルコールを用いることができるが、製造コストの観点から水が望ましく、イオン交換水がより望ましい。
【0036】
表面処理中の粒子の再凝集を防ぐために分散液に分散安定剤が含まれていてもよい。分散安定剤としてはポリアクリル酸塩のような有機系ポリアニオン系物質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースのようなセルロース類、ポリビニルアルコールのような水溶性高分子類、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンのような水溶性アルコール類、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダなどの界面活性剤を挙げることができる。
【0037】
なお、市販のコロイダルシリカスラリー(シリカゾル)は分散媒にシリカ粒子がすでに分散したものであるが、コロイダルシリカスラリーを購入して分散液として使用してもよい。
市販のコロイダルシリカスラリーを分散液として使用する場合、さらに分散媒を加えて希釈して使用することもできる。
【0038】
また、乾式法シリカやその他の粉体で得られるシリカ粒子を分散媒に分散させる際には、ビーズミル等による湿式粉砕を行うことで、シリカ粒子一つ一つに金属酸化物を担持させることができ、以後の工程での研磨用複合粒子の凝集を抑制することが可能になる。
【0039】
分散液中のシリカ粒子濃度は0.01〜40重量%の範囲にあることが望ましい。また、シリカ粒子の平均粒子径が200nm以下の場合、シリカ粒子濃度が20重量%を超えると金属酸化物前駆体をシリカ粒子の表面に析出させる際に、分散液の粘度が著しく高くなることがあるため、シリカ粒子濃度が0.01〜20重量%の範囲にあることがより望ましい。
【0040】
次に、分散液に金属酸化物の原料となる金属塩を加え、中和反応により金属酸化物前駆体をシリカ粒子の表面に析出させる。
具体的には、金属塩を含有する溶液又は金属塩を分散液に添加し、その後中和剤としての酸又はアルカリを加えて中和反応を行う方法により上記工程を行うことができる。
または、金属塩を含有する溶液又は金属塩を分散液に添加すると同時に中和剤としての酸又はアルカリを加えることにより、中和しながら金属塩の添加を行う方法によっても上記工程を行うことができる。
または、分散液に中和剤としての酸又はアルカリを添加しておき、そこに金属塩を含有する溶液又は金属塩を加えることにより、中和しながら金属塩の添加を行う方法によっても上記工程を行うことができる。
【0041】
中和剤としての酸又はアルカリを加えて中和反応を行う場合、金属酸化物前駆体が析出する範囲でpHを調整することが望ましい。金属酸化物前駆体が析出するpHは原料によって異なるが、pHが5〜11の範囲になるように調整することがより望ましい。
pHが適切な範囲から外れると金属酸化物前駆体の析出反応が不充分となったり、析出反応の反応速度が速くなってシリカ粒子表面からだけではなく溶液中からの析出が起こり、シリカ粒子に担持されない金属酸化物前駆体の量が増加することがある。シリカ粒子に担持されない金属酸化物前駆体は研磨性能に寄与しない、また得られた研磨用複合粒子の粒度分布がブロードになるなどの問題が発生するため望ましくない。
一例として、中和剤としてアルカリを加えて中和を行いセリウム水酸化物をシリカ粒子表面上に析出させる場合、pHが8〜11となるように中和を行うことが望ましい。
pHが8より小さいとセリウム水酸化物の析出反応が不充分になることがある。
また、pHが11を超えて大きいと析出反応の反応速度が速くなり、シリカ粒子表面からだけではなく溶液中からの析出が起こり、シリカ粒子に担持されないセリウム水酸化物の量が増加する。
【0042】
中和剤として酸を加えて中和を行う場合、析出させる金属酸化物前駆体の析出pHに達するまで中和を行うことが望ましい。
【0043】
金属酸化物の原料となる金属塩としては、上述した通り、金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ペルオキソ酸塩、炭酸塩、金属オキソ酸塩、金属アルコキシド等が挙げられる。
中和に用いる酸としては、硫酸、シュウ酸等の無機酸又は有機酸が挙げられる。
中和に用いるアルカリとしては、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アンモニア水、アンモニウム塩(炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム)、アミン化合物(有機アミン化合物)等が挙げられる。
これらの中ではアルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。水酸化ナトリウムを用いた中和反応は、フラックスとなる成分の存在下で行われる反応となるので、金属酸化物前駆体がシリカ粒子の表面により均一に析出する。
【0044】
金属酸化物の原料の添加量は、シリカ粒子100重量%に対し、金属酸化物に換算して、1〜100重量%が好ましい。より好ましくは5〜50重量%であり、さらに好ましくは10〜30重量%である。
金属酸化物の原料の添加量が、金属酸化物に換算して1重量%未満であると、金属酸化物の担持量が不足して、研磨レートが低くなることがある。また、金属酸化物の原料の添加量が、金属酸化物に換算して100重量%を超えたとしても、添加量の増加に見合う研磨レートが得られず、金属酸化物の消費量が多くなるため好ましくない。
【0045】
金属酸化物前駆体を析出させた後には、金属酸化物前駆体の析出反応によりシリカ粒子同士が凝集しているため、ビーズミル等を用いた湿式粉砕を行い、分散させておく方が望ましい。
【0046】
その後、水洗を行うことが望ましい。
水洗は、加圧濾過や真空濾過、限外濾過等の公知の方法で行うことができる。金属塩や中和剤としての酸又はアルカリが無機イオンを含んでいる場合、中和処理後に無機塩として分散液中に残留するため、充分な水洗を行うことが望ましい。
【0047】
さらに、必要に応じて乾燥及び乾式粉砕を行うことが望ましい。
【0048】
次に、シリカ粒子の表面に金属酸化物前駆体が析出してなる粒子を、加熱焼成前の粒子に含まれるフラックス成分の含有量を500〜10000ppmとして700〜950℃で加熱焼成する。より好ましくは800〜950℃である。
なお、加熱焼成時間は1〜10時間が好ましい。
焼成雰囲気は特に限定されるものでなく、大気雰囲気、窒素雰囲気、真空雰囲気等とすることができる。
また、加熱焼成に用いる加熱炉の種類も特に限定されない。抵抗に電流を流して発熱させる方式や燃料を燃焼させる方式、加熱ガスを用いる方式などが使用可能である。例えば電気マッフル炉やシャトルキルン、ロータリーキルン等が挙げられる。
この工程により、金属酸化物前駆体は金属酸化物となり、また、結晶性が充分に高まる。
焼成温度を700℃以上とすることにより金属酸化物の結晶性が高くなる。また、焼成温度を950℃を超えて高くすると、金属酸化物の結晶性は高くなるがシリカ粒子同士の焼結や粒子の変形を引き起こしやすいため望ましくない。シリカ粒子同士の焼結や変形が生じると後の工程で粉砕が難しくなり、表面粗さRaの増大やスクラッチの発生の原因となる。
また、焼成温度を950℃を超えて高くするとシリカの結晶化が起こり始める。結晶化したシリカが0.1%以上含まれるものはGHS分類対象物質に指定されており、法的に使用が制限されるため望ましくない。
【0049】
加熱焼成前の粒子がフラックス成分を50〜10000ppm含有していると、シリカ粒子の焼結を促進せずに金属酸化物の結晶性を増大させることができる。
フラックス成分としては、アルカリ金属化合物(ナトリウム化合物、カリウム化合物等)、アルカリ土類金属化合物、硫酸塩が挙げられる。
これらの中で好ましいものはナトリウム化合物、硫酸塩である。
なお、フラックス成分は中和反応時に中和剤として加えてもよく、中和反応後に水洗した後のケーキに適量を加えるようにしてもよく、乾燥後の粉体に適量加えるようにしてもよい。フラックス成分として加える化合物の具体例としては、ナトリウム化合物としての水酸化ナトリウムや硫酸塩としての硫酸アンモニウムが挙げられる。
フラックス成分の含有量の調整方法としては、水洗を繰り返すことでフラックス成分を減らすことができるので、水洗する際に濾液の比抵抗を測定し、所定の比抵抗になるまで洗浄を行う方法が挙げられる。また、フラックス成分が不足している場合は水洗後にフラックス成分を加えればよい。
また、フラックス成分の含有量は、フラックス成分の元素を酸化物換算した重量であり、ナトリウム化合物の場合はNa
2O、硫酸塩の場合はSO
3にそれぞれ換算した重量である。
【0050】
次に、加熱焼成後の粒子を粉砕する。
加熱焼成後の粒子の粉砕は、エアーミル、ジェットミル、スチームミル、ハンマーミル等で行うことができる。
粉砕を行って焼結をほぐしておくことで、研磨用複合粒子を使用する際にスラリーとする湿式での分散工程の分散時間を短縮することができる。湿式での分散工程の時間が長くなると、担持した金属酸化物がシリカ粒子から剥離することがあり、研磨速度の低下を引き起こすため望ましくない。
【0051】
上記工程により、本発明の研磨用複合粒子を製造することができる。
製造された研磨用複合粒子を研磨用途に使用する際には、分散媒に研磨用複合粒子を分散させて研磨用スラリーとする。
本発明の研磨用スラリーは、本発明の研磨用複合粒子が分散媒中に分散してなり、
上記分散媒中に分散した研磨用複合粒子のD50が3〜1000nmであることを特徴とする。
また、分散媒中に分散した研磨用複合粒子のD50が1次粒子径の1〜6倍であることが望ましい。
【0052】
研磨用スラリーの製造に使用する分散媒としては特に限定されず、水やアルコールを用いることができるが、製造コストの観点から水が望ましく、イオン交換水がより望ましい。
【0053】
分散媒中に分散した研磨用複合粒子のD50は、研磨用複合粒子の二次粒子径として測定される粒子径であり、レーザー回折・散乱式粒度分析計(例えば日機装株式会社製:型番 マイクロトラックMT3300EX)により粒度分布測定を行うことにより得られる値である。
【0054】
研磨用複合粒子を分散媒中に分散させて研磨用スラリーを作製する際には、理想的には、研磨用複合粒子を分散媒と混合した際に研磨用複合粒子の凝集が生じず、研磨用複合粒子と分散媒を混合しただけで研磨用複合粒子の粒子径(D50)が所望の値となることが好ましいが、実際には研磨用複合粒子が分散媒中で凝集するために混合直後のD50の値は所望の値よりも高くなる。そのため、研磨用複合粒子を分散媒中に分散させて粗スラリーとした後に粉砕工程を行う。
粉砕装置としては、例えば、ビーズミル、アトライター、サンドミル、ボールミル等のメディア型粉砕機を使用することができる。例えば、シンマルエンタープライゼス社製ダイノーミル、日本コークス工業社製SCミル等が挙げられる。
ビーズの材質としては、特に限定されないが、ジルコニア、ガラス、アルミナ、シリカ、チタニア等が挙げられる。
また、粉砕装置としてメディアレス粉砕機を使用することもできる。メディアレス粉砕機としては高速攪拌機や高圧分散機、超音波分散機が挙げられる。具体例としては日本コークス工業社製のスラッシャーやマツボー社製のエコジナイザーが挙げられる。
【0055】
粉砕工程により研磨用複合粒子のD50は小さくなるが、粉砕を繰り返すとD50の値は変化しなくなる(それ以上低下しなくなる)。
研磨用複合粒子のD50が変化しなくなるまでに要した時間を分散滞留時間とする。
具体的には、粉砕工程の1回ごとに研磨用スラリーの粒度分布を測定して、1回前の粉砕工程後に測定したD50との差が0.02μm以下になった時点で、D50が変化しなくなったと判断する。
粉砕工程後の研磨用複合粒子のD50が3〜1000nmの範囲で変化しなくなることが望ましい。
また、本発明の研磨用複合粒子は、研磨用スラリーを作製した際の分散滞留時間が9分以下となるものであることが望ましい。
【0056】
分散滞留時間は、粉砕工程において使用する装置や粉砕条件によって異なるが、研磨用複合粒子の分散滞留時間が9分以下であるかどうかを判定するための試験条件は以下の条件とする。下記条件において分散滞留時間が9分以下となる研磨用複合粒子が好ましい。
【0057】
研磨用複合粒子をイオン交換水に懸濁させ、30重量%の粗スラリーを得る。得られた粗スラリーを定量ポンプを用いて連続式横型ビーズミル(Dyno−mill、KDL SPECIAL、ミル容量:600mL)に供給することで粉砕する。
粉砕工程の1回ごとに研磨用スラリーの粒度分布を測定して、1回前の粉砕工程後に測定したD50との差が0.02μm以下になった時点で、D50が変化しなくなったと判断し、分散を停止する。
分散条件は以下のとおりとする。
ビーズ:ガラスビーズ
ビーズ重量:795g
定量ポンプ流速:200mL/min(1回の粉砕工程での滞留時間:1.5min)
ミル周速:14m/s
分散の停止までに要した分散時間を分散滞留時間とする。
【0058】
本発明の研磨用複合粒子の分散滞留時間が9分以下と短いものであると、研磨用スラリーを製造する際に所望の粒子径まで粉砕するのに必要な時間が短く、研磨用スラリーの製造効率が良いことを意味する。また、研磨用複合粒子として購入し、使用直前に自ら分散媒と混合して研磨用スラリーを調製して研磨工程に使用するユーザーにとって利便性が高いことを意味する。
【0059】
本発明の研磨用スラリーは、研磨用複合粒子を所望の粒子径まで粉砕した後に、必要に応じて更に分散媒により希釈して所望の濃度として、研磨工程に使用することができる。
【0060】
本発明の研磨用複合粒子及び研磨用スラリーは、各種の研磨対象に適用できる。
例えば、従来、コロイダルシリカ、酸化セリウム、酸化クロム及びベンガラ(Fe
2O
3)等が研磨材料として用いられていた研磨対象に適用できる。
本発明の研磨用複合粒子を適用する研磨対象は特に限定されず、例えばガラス基板、金属板、石材、サファイア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム、ヒ化インジウム、及びリン化インジウム等が挙げられる。
研磨対象物の用途としては、半導体基板や配線基板の半導体デバイス、アルミナ製ハードディスク、ガラス製ハードディスクまたは光学材料等が挙げられる。
【0061】
本発明の研磨用複合粒子及び研磨用スラリーは、用途に応じて、適宜他の成分と混合して使用してもよい。
他の成分としては、例えば、酸、アルカリ、キレート化剤、消泡剤、pH調整剤、分散剤、粘度調整剤、凝集防止剤、潤滑剤、還元剤、防錆剤、公知の研磨材料等が挙げられ、本発明の効果を妨げない範囲でこれらを2種以上併用してもよい。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
平均一次粒子径75nmのコロイダルシリカスラリー(40重量%)にイオン交換水を添加して、シリカ粒子濃度10重量%のスラリーを得た。
このスラリー0.5Lを攪拌しながら45℃に調整し、この温度を維持しながら、シリカ粒子100重量%当たり、CeO
2換算で25重量%に相当する量の塩化セリウム水溶液(250g/L)50mLを180分間かけて添加した。このとき、pHを8に保つように水酸化ナトリウム水溶液を添加し、シリカ粒子表面上にセリウム水酸化物を析出させた。セリウム水酸化物析出後のスラリーをイオン交換水で濾過洗浄し、濾液の比抵抗が10000Ω・cmに達するまで水洗することで水洗ケーキを得た。得られたケーキを120℃の温度で8時間乾燥した。得られた乾燥品をエアーミルを用いて粉砕し、900℃の大気雰囲気で1時間加熱焼成した。その後、再びエアーミルを用いて粉砕を行って研磨用複合粒子を得た。
【0064】
(実施例2〜実施例5)
実施例1において、焼成工程における焼成温度を900℃から表1に示す温度に変更したほかは実施例1と同様にして研磨用複合粒子を得た。
【0065】
(実施例6〜実施例7)
実施例1において、コロイダルシリカスラリーに含まれるシリカ粒子の平均一次粒子径が表1に示す粒子径であるコロイダルシリカスラリーを用いたほかは実施例1と同様にして研磨用複合粒子を得た。
【0066】
(実施例8)
実施例8では、実施例1において、水洗工程における濾液の比抵抗を20000Ω・cmに変更したほかは実施例1と同様にして研磨用複合粒子を得た。
【0067】
(実施例9)
実施例9では、後述する比較例3において、水洗工程においてイオン交換水で濾過洗浄したあとのケーキに硫酸アンモニウムをケーキ中の固形分の重量に対して1重量%(SO
3として6100ppm)添加し、焼成工程における焼成温度を1000℃から900℃に変更した他は比較例3と同様にして研磨用複合粒子を得た。
【0068】
(比較例1〜比較例2)
比較例1では、焼成工程を行わなかったほかは実施例1と同様にして研磨用複合粒子を得た。
比較例2では、実施例1において、焼成工程における焼成温度を900℃から300℃に変更したほかは実施例1と同様にして研磨用複合粒子を得た。
【0069】
(比較例3)
平均一次粒子径75nmのコロイダルシリカスラリー(40重量%)にイオン交換水を添加して、シリカ粒子濃度10重量%のスラリーを得た。
このスラリー0.5Lを攪拌しながら45℃に調整し、この温度を維持しながら、シリカ粒子100重量%当たり、CeO
2換算で25重量%に相当する量の塩化セリウム水溶液(250g/L)50mLを180分間かけて添加した。このとき、pHを8に保つようにアンモニア水を添加し、シリカ粒子表面上にセリウム水酸化物を析出させた。セリウム水酸化物析出後のスラリーをイオン交換水で濾過洗浄し、120℃の温度で8時間乾燥した。得られた乾燥品をエアーミルを用いて粉砕し、1000℃の大気雰囲気で1時間加熱焼成した。その後、再びエアーミルを用いて粉砕を行って研磨用複合粒子を得た。
【0070】
(比較例4)
比較例4では、実施例1において、焼成工程における焼成温度を900℃から1000℃に変更したほかは実施例1と同様にして研磨用複合粒子を得た。
【0071】
比較例5では、実施例1において、水洗工程における濾液の比抵抗を2000Ω・cmに変更したほかは実施例1と同様にして研磨用複合粒子を得た。
【0072】
(比較例6〜8)
実施例1、6、7でそれぞれ用いた、平均一次粒子径がそれぞれ75nm、36nm、100nmコロイダルシリカスラリーである。
【0073】
(参考例)
平均一次粒子径75nmのコロイダルシリカスラリー(40重量%)にイオン交換水を添加して、シリカ粒子濃度10重量%のスラリーを得た。
このスラリー0.5Lを90℃に調整し、撹拌しながらシリカ粒子100重量%当たりCeO
2換算で25重量%に相当する量の硝酸セリウム水溶液(42g/L)298mLを添加した。このスラリーをこの温度を保ちながら撹拌しながら90℃で3時間加熱した。120℃の温度で8時間乾燥した後、900℃大気雰囲気で1時間加熱焼成した。その後、再びエアーミルを用いて粉砕を行った。
この製造方法は、中和反応を行うことなく、硝酸セリウムの加水分解(熱分解)により生じた酸化セリウムを担持させる方法である。
【0074】
(顕微鏡観察)
実施例1、実施例4、比較例1及び参考例で製造した粒子について、透過型電子顕微鏡を用いた電子顕微鏡観察を行った。
図1は、実施例1で製造した研磨用複合粒子の電子顕微鏡写真である。
図2は、実施例4で製造した研磨用複合粒子の電子顕微鏡写真である。
図3は、比較例1で製造した研磨用複合粒子の電子顕微鏡写真である。
図4は、参考例で製造した粒子の電子顕微鏡写真である。
実施例1、実施例4、比較例1で製造した研磨用複合粒子は、中和反応により金属酸化物前駆体をシリカ粒子の表面に析出させる方法を経て製造されているため金属酸化物が均一に、かつ、アイランド状に担持されている。
一方、参考例で製造した粒子は、金属酸化物が塊状となってシリカ粒子の表面の一部に局在化して付着しているのみであり、シリカ粒子の表面に金属酸化物を担持させた複合シリカ粒子とはいえないものであった。
【0075】
(粉末X線回折の測定)
実施例1〜9及び比較例1〜5で得た研磨用複合粒子について、以下の条件により粉末X線回折パターン(単にX線回折パターンともいう)を測定した。
使用機:株式会社リガク製 RINT−UltimaIII
線源:CuKα
電圧:40kV
電流:40mA
試料回転速度:回転しない
発散スリット:1.00mm
発散縦制限スリット:10mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
走査モード:FT
計数時間:2.0秒
ステップ幅:0.0200°
操作軸:2θ/θ
走査範囲:10.0000〜70.0000°
積算回数:1回
立方晶CeO
2:PDFカード 01−089−8436
正方晶SiO
2:PDFカード 01−082−0512
【0076】
(半価幅の測定)
実施例1〜9及び比較例1〜5で得た研磨用複合粒子について、X線回折の測定により得られた回折パターンから立方晶CeO
2の27.00〜31.00°での最大ピークの半価幅を測定した。実施例1では2θ=28.52°に立方晶CeO
2(111)のピークが出現し、半価幅は0.53°であった。その他の実施例2〜9、比較例1〜5の半価幅も表1に示した。
【0077】
(シリカ粒子の結晶性の判定)
実施例1〜9及び比較例1〜5で得た研磨用複合粒子について、X線回折の測定により得られた回折パターンから2θ=20.00〜23.00°での正方晶SiO
2(101)のピークが出現するかどうかで結晶質か非晶質かを判定した。
実施例1〜9及び比較例1〜5で得た研磨用複合粒子についてシリカ粒子は非晶質であった。
【0078】
(フラックス含有量の測定)
実施例1〜9及び比較例1〜5で得た研磨用複合粒子について、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製:型番 ZSX PrimusII)の含有元素スキャニング機能であるEZスキャンにより元素分析を行った。測定サンプル台にプレスしたサンプルをセットし、次の条件を選択(測定範囲:F−U、測定径:30mm、試料形態:酸化物、測定時間:長い、雰囲気:真空)し、フラックス成分の含有量を測定した。結果を表1に示した。
測定されるフラックス成分の含有量は、酸化物換算(Na
2O又はSO
3)である。
また、フラックス含有量の測定は、焼成前の乾燥品に対して行った。
【0079】
(金属酸化物含有量のばらつき)
実施例1、比較例1及び参考例に係る研磨用複合粒子について、TEM−EDX(TEM:日本電子社製JEM−2100F、EDX:EX−24063JGT)を用いて金属酸化物含有量のばらつきを測定した。具体的には研磨用複合粒子について10×10nmの範囲で元素分析を10点行い、このときの金属酸化物含有量の平均値を求め、この平均値からのばらつきを以下の式に従って計算した。
(最大値−平均値)/平均値 × 100(%)・・・(1)
(平均値−最小値)/平均値 × 100(%)・・・(2)
(1)または(2)式で求めた値のうち大きい方を評価値とした。結果を表1に示した。
含有量のばらつきが±250%以下であると、金属酸化物がシリカ粒子の表面に均一に担持されているといえる。参考例における金属酸化物含有量のばらつきは±280%であった。
【0080】
(粒子の分散)
実施例1〜9及び比較例1〜5で得た研磨用複合粒子について、以下の手順により分散媒中に分散させたのちに粉砕工程を行った。
研磨用複合粒子をイオン交換水に懸濁させ、30重量%の粗スラリーを得た。得られた粗スラリーを定量ポンプを用いて連続式横型ビーズミル(Dyno−mill、KDL SPECIAL、ミル容量:600mL)に供給することで粉砕した。粉砕工程の1回ごとに研磨用スラリーの粒度分布を測定して、1回前の粉砕工程後に測定したD50との差が0.02μm以下になった時点で分散を停止した。
分散条件は以下のとおりである。
ビーズ:ガラスビーズ
ビーズ重量:795g
定量ポンプ流速:200mL/min(1回の粉砕工程での滞留時間:1.5min)
ミル周速:14m/s
分散の停止までに要した分散時間を分散滞留時間とし、表1に示した。
【0081】
(粒度分布の測定)
レーザー回折・散乱式粒度分析計(日機装株式会社製:型番 マイクロトラックMT3300EX)により粒度分布測定を行った。まず、サンプル(粗スラリー又は粉砕後のスラリー)0.1gにイオン交換水60mLを加え、ガラス棒を用いて室温にてよく撹拌することにより、測定用の懸濁液を準備した。なお、超音波を用いた分散操作は行わなかった。この後、イオン交換水180mLを試料循環器に準備し、透過率が0.71〜0.94になるように上記懸濁液を滴下して、流速50%にて、超音波分散をさせずに循環させながら測定を行った。
表1には、粒度分布測定により算出されたD50を、粗スラリーのD50について「分散前」、粉砕後のスラリーのD50について「分散後」として示した。
【0082】
(研磨用スラリーの作製)
粉砕後のスラリー(実施例1〜9及び比較例1〜5)又はコロイダルシリカスラリー(比較例6〜8)について、イオン交換水を用いて希釈して研磨用複合粒子(又はシリカ粒子)の固形分濃度が3重量%の研磨用スラリーを作製した。
【0083】
(ガラス板研磨試験)
以下の条件により、各研磨用スラリーを用いてガラス板の研磨を行った。
使用ガラス板:ソーダライムガラス(松浪硝子工業株式会社製 サイズ36×36×1.3mm 比重2.5g/cm
3、Ra=0.2〜0.3nm)
研磨機:卓上型研磨機(株式会社エム・エー・ティ製、MAT BC−15C 研磨定盤径300mmφ)
研磨パッド:発泡ポリウレタンパッド(ニッタ・ハース株式会社製:MHN−15A、セリア含浸なし)
研磨圧力:101g/cm
2
定盤回転数:70rpm
研磨用スラリーの供給量:100mL/min
【0084】
(研磨レート評価)
ガラス板研磨試験前後のガラス板の重量を電子天秤で測定した。重量減少量、ガラス板の面積、ガラス板の比重からガラス板の厚さ減少量を算出し、研磨レート(μm/分)を算出した。
3枚のガラス板を同時に研磨し、30分研磨後にガラスを取り外して重量を測定した。
各実施例及び比較例における研磨レートを表1に示した。
【0085】
(表面粗さRa測定)
非接触表面性状測定装置(New View 7100、Zygo Corp.、測定原理:走査型白色干渉法、対物レンズ:50倍、測定視野186×139μm)を用いて算術平均粗さ(Ra)を測定した。
研磨レート評価で得られたガラスの表面粗さを測定し、表1に示した。
(Ra=0.5nm以下到達時間の評価)
上記試験とは別に、研磨用複合粒子が2次研磨(または最終研磨)で使用されることを想定して、一部の実施例及び比較例について以下の試験を行った。
1次研磨としてガラスを酸化セリウムを用いて事前に研磨して、表面粗さRaが0.7〜0.8nmの範囲にあるガラスを準備した。その他の条件は(ガラス板研磨試験)と同様の条件にて試験を行いガラスを10分おきに取り外して、その都度表面粗さを測定した。そして、研磨後のガラスのRaが0.5nm以下となるまでに要した研磨時間を記録した。表1には「Ra=0.5nm以下到達時間」として示した。
【0086】
【表1】
【0087】
実施例1〜9で製造した研磨用複合粒子は、結晶性の高い金属酸化物がシリカ粒子の表面に担持されているため、研磨レートが高く、また、30分研磨後の表面粗さも低い範囲に入っている。つまり、研磨レートが高く、平滑な研磨面を得ることのできる研磨用複合粒子といえる。
また、分散媒への分散性に優れており、研磨用スラリーとした際に分散媒中に分散した研磨用複合粒子のD50が好ましい値(0.20〜0.27μm)を示す。さらに、分散滞留時間も最大でも9分であり、研磨用スラリーの製造効率に優れている。
【0088】
一方、比較例1〜5で製造した研磨用複合粒子では、いずれも30分研磨後の表面粗さが粗くなっており、比較例1〜3、5で製造した研磨用複合粒子では研磨レートが低くなっている。
また、シリカ粒子のみを研磨粒子とする比較例6〜8では研磨レートがかなり低くなっており、Ra=0.5nm以下到達時間を比較しても分かるように研磨に時間がかかることが明らかである。
シリカ粒子の表面に金属酸化物を担持させた複合シリカ粒子からなり、粉末X線回折測定による上記金属酸化物の、線源としてCuKα線を用いたX線回折における最大ピークの半価幅が0.45〜1.0°であることを特徴とする研磨用複合粒子。