特許第5979349号(P5979349)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979349
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】車両のパワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/07 20060101AFI20160817BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   B62D5/07 B
   B62D6/00
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-51608(P2012-51608)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2013-184585(P2013-184585A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】303002158
【氏名又は名称】三菱ふそうトラック・バス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】田邊 圭樹
(72)【発明者】
【氏名】飯島 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 享
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−219142(JP,A)
【文献】 特開平09−095251(JP,A)
【文献】 特開2003−314440(JP,A)
【文献】 特開平05−178223(JP,A)
【文献】 特開2006−315429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/07
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプから吐出される作動油によってステアリングの操舵をアシストするパワーステアリング装置であって、
第1のモータにより駆動される第1の油圧ポンプと、
前記第1の油圧ポンプに対し並列配置されて、第2のモータにより駆動される第2の油圧ポンプと、
前記ステアリングの操舵角速度を検出する操舵角速度検出手段と、
前記操舵角速度検出手段によって検出した操作角速度に基づき、前記第1の油圧ポンプ及び第2の油圧ポンプが吐出すべき作動油の要求吐出量を推定する要求吐出量推定手段と、
前記第1の油圧ポンプの作動油の吐出特性から導かれる吐出効率が良好な第1の領域及び吐出効率が悪い第2の領域が設定される効率マップ手段と、
前記要求吐出量推定手段によって推定された作動油の要求吐出量に基づき、前記第1のモータ及び第2のモータの回転速度を制御するモータ回転速度制御手段を備え、
前記モータ回転速度制御手段は、前記要求吐出量が前記効率マップに設定された第1の領域内にある場合は前記第1のモータのみを駆動し、前記要求吐出量が前記第2の領域内にある場合は前記第1のモータ及び第2のモータを協働させることにより、前記第1の油圧ポンプ及び第2の油圧ポンプを前記第1の領域内で作動させるように制御することを特徴とする車両のパワーステアリング装置。
【請求項2】
前記第1のモータのみの作動から前記第1のモータ及び第2のモータを協働で作動させる場合、該第1のモータの作動と第2のモータの作動とをオーバーラップさせることを特徴とする請求項1記載の車両のパワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のパワーステアリング装置に係り、詳しくはモータ駆動の2つの油圧ポンプを並列配置し、それぞれの油圧ポンプから吐出される作動油によりステアリングの操舵をアシストするパワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、作動油供給用の油圧ポンプをエンジン駆動に代えてモータで駆動するようにしたパワーステアリング装置が実用化されている。一般的に、この種のモータ駆動のパワーステアリング装置では、非操舵時においても操舵応答性の確保のためにモータにより油圧ポンプをアイドル駆動している。このため非操舵時にもモータが常に待機電力を消費しているという問題がある。
このようなモータの待機電力の節減を目的として、特許文献1の技術が提案されている。この特許文献1の技術では各モータに流れる電流からポンプ負荷を推定し、ポンプ負荷が大で操舵アシストのために多量の作動油が要求されるときには、2つのモータを駆動して各油圧ポンプから吐出される作動油を油圧シリンダに供給している。そして、ポンプ負荷が低下して作動油の要求量が減少すると、片側のモータを停止させて1つのモータのみを駆動することにより待機電力の節減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−95251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、油圧ポンプが作動油を吐出するときの効率は回転速度に依存し、例えば所定の回転速度未満の領域では吐出効率が比較的良好であるのに対して、所定の回転速度を超えると吐出効率が悪化してしまう。効率悪化の領域での油圧ポンプの駆動には、モータに過大な駆動力が要求されて消費電力の増大を引き起こすため可能な限り避けるべきである。
しかしながら、このような油圧ポンプの吐出効率について上記特許文献1の技術では何ら考慮していないため、1モータ駆動と2モータ駆動とを適切に切り換えることができなかった。例えば1モータ駆動時において、油圧ポンプの回転速度が上昇して効率悪化の領域に侵入した場合でも、1モータ駆動が継続されて油圧ポンプを効率悪化の領域で駆動することになる。このため油圧ポンプを駆動するモータの消費電力が急増し、ひいてはオルタネータを駆動しているエンジンの燃費悪化の要因になるという問題があった。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、2つの油圧ポンプの駆動状態を適切に切り換えることにより各油圧ポンプを常に効率の良好な領域内で作動させることができ、もってポンプ駆動用のモータの消費電力を節減して燃費悪化を抑制することができる車両のパワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、油圧ポンプから吐出される作動油によってステアリングの操舵をアシストするパワーステアリング装置であって、第1のモータにより駆動される第1の油圧ポンプと、第1の油圧ポンプに対し並列配置されて、第2のモータにより駆動される第2の油圧ポンプと、ステアリングの操舵角速度を検出する操舵角速度検出手段と、操舵角速度検出手段によって検出した操作角速度に基づき、第1の油圧ポンプ及び第2の油圧ポンプが吐出すべき作動油の要求吐出量を推定する要求吐出量推定手段と、第1の油圧ポンプの作動油の吐出特性から導かれる吐出効率が良好な第1の領域及び吐出効率が悪い第2の領域が設定される効率マップ手段と、要求吐出量推定手段によって推定された作動油の要求吐出量に基づき、第1のモータ及び第2のモータの回転速度を制御するモータ回転速度制御手段を備え、モータ回転速度制御手段が、要求吐出量が前記効率マップに設定された第1の領域内にある場合は第1のモータのみを駆動し、要求吐出量が第2の領域内にある場合は第1のモータ及び第2のモータを協働させることにより、第1の油圧ポンプ及び第2の油圧ポンプを第1の領域内で作動させるように制御するものである。
請求項2の発明は、請求項1において、第1のモータのみの作動から第1のモータ及び第2のモータを協働で作動させる場合、第1のモータの作動と第2のモータの作動とをオーバーラップさせるものである。
【発明の効果】
【0006】
以上説明したように請求項1の発明の車両のパワーステアリング装置によれば、第1の油圧ポンプの吐出効率が良好な第1の領域及び吐出効率が悪い第2の領域を効率マップ手段に設定し、ステアリングの操作角速度に基づき作動油の要求吐出量を推定し、その要求吐出量が効率マップの第1の領域内にある場合は第1のモータのみを駆動し、要求吐出量が効率マップの第2の領域内にある場合は第1及び第2のモータを協働させて第1及び第2の油圧ポンプを第1の領域内で作動させるようにした。
従って、要求吐出量が第1の領域内にある場合は、第1のモータにより第1の油圧ポンプが駆動されることで要求吐出量が達成される。そして、要求吐出量が増加して第2の領域に突入すると、第1及び第2のモータを協働させて第1及び第2の油圧ポンプを作動させる。このため第1及び第2の油圧ポンプは共に第1の領域内で作動して第2の領域内への突入が防止される。結果として要求吐出量を確実に達成した上で、第1及び第2の油圧ポンプを常に吐出効率の良好な第1の領域内で駆動でき、各油圧ポンプを駆動するモータの消費電力を抑制して燃費悪化を抑制することができる。
【0007】
請求項2の発明の車両のパワーステアリング装置によれば、請求項1に加えて、第1のモータのみの作動から第1及び第2のモータを協働で作動させる場合に、第1のモータの作動と第2のモータの作動とをオーバーラップさせるようにした。停止中の第2のモータを作動させる際には応答遅れが生じて第2の油圧ポンプの吐出量が急激に増加しないが、第2のモータの作動に対して第1のモータの作動がオーバーラップすることにより第2の油圧ポンプの吐出量の不足が補われる。このため、第1及び第2の油圧ポンプの合計吐出量の一時的な不足を解消でき、より確実に要求吐出量を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の車両のパワーステアリング装置を示す全体構成図である。
図2】油圧ポンプの回転速度と吐出効率との関係を示す特性図である。
図3】操舵角速度から第1及び第2ポンプの回転速度を算出する処理を示す制御ブロック図である。
図4】操舵角速度から第1及び第2ポンプの回転速度を算出する処理の別例を示す制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をトラックのパワーステアリング装置に具体化した一実施形態を説明する。
図1の全体構成図に示すように、トラックの左右の前輪1はそれぞれタイロッド2を介してパワーシリンダ3に連結され、このパワーシリンダ3に一体で設けられたギヤボックス4にはステアリングシャフト5を介してステアリング6が連結されている。パワーシリンダ3には油路7を介して、互いに並列関係となるように第1の油圧ポンプ8及び第2の油圧ポンプ9が接続されている。第1の油圧ポンプ8には第1のモータ10が直結され、第2の油圧ポンプ9には第2のモータ11が直結され、これらの油圧ポンプ8,9はそれぞれのモータ10,11により個別に回転駆動されて作動油を吐出するようになっている。
【0010】
第1及び第2の油圧ポンプ8,9からの作動油は油路7を経てパワーシリンダ3に供給され、このときの作動油の供給方向がステアリング6の操舵方向に応じて図示しない切換弁により切り換えられる。結果としてステアリング操舵と対応する方向にパワーシリンダ3によりアシスト力が発生し、これにより前輪1の操舵がアシストされる。
第1及び第2のモータ10,11はパワーステアリング装置を制御するためのECU13に接続され、ECU13は、図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップなどの記憶に供される記憶装置(ROM,RAMなど)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタなどから構成されている。ECU13には、ステアリングシャフト5に設けられた操舵角センサ14が接続され、この操舵角センサ14により検出されたステアリング6の操舵角θが検出情報としてECU13に入力されるようになっている。
【0011】
次に、以上のように構成した車両のパワーステアリング装置の作動状況を説明するが、それに先だち油圧ポンプ8,9の吐出特性及び容量の設定について述べる。
まず、以下に述べるように第1及び第2の油圧ポンプ8,9は、ステアリング操舵に応じて要求される作動油の吐出量(要求吐出量)を達成するように、単独で或いは互いに協働して作動油を吐出してパワーシリンダ3に供給する。このため単一の油圧ポンプを備えた一般的なパワーステアリング装置に比較すると、油圧ポンプ8,9の容量は大幅に小さく、必然的にそれを駆動するモータ10,11も小型のものが使用されている。なお、本実施形態では第1及び第2の油圧ポンプ8,9として同一容量の製品を用いているが、これに限ることはなく、油圧ポンプ8,9の容量を相違させてもよい。
一方、図2の特性図に示すように、第1及び第2の油圧ポンプ8,9は回転速度に略比例して作動油の吐出量を増減させる一方、回転速度に対して吐出効率を依存させる特性を有している。即ち、油圧ポンプ8,9の回転速度(作動油の吐出量)が所定の回転速度未満の領域では略一定の良好な吐出効率を維持し、所定の回転速度以上の領域では吐出効率を次第に低下させる。以下、油圧ポンプ8,9の回転速度が所定の回転速度未満で吐出効率が良好な領域を効率良好領域(第1の領域)と称し、回転速度が所定の回転速度以上で吐出効率が悪い領域を効率悪化領域(第2の領域)と称する。
【0012】
このように設定された図2の特性図に基づき、以下に述べるように本実施形態では、所定の回転速度よりも若干低回転側に切換判定値N0を設定し、切換判定値N0を上限として第1及び第2の油圧ポンプ8,9の回転速度(=モータ回転速度)を制御している。この点を配慮して第1及び第2の油圧ポンプ8,9は、上記のように一般的な単一の油圧ポンプよりは小さいものの、切換判定値N0未満の回転領域(効率良好領域)でも同時作動で協働させることにより最大の要求吐出量を達成可能なように設定されている。
なお、切換判定値N0の設定は上記に限ることはなく、例えば効率良好領域と効率悪化領域との境界である所定の回転速度に切換判定値N0を一致させてもよい。
【0013】
図3は第1及び第2の油圧ポンプ8,9の回転速度を制御するためのECU13の処理を示す制御ブロック図である。
ECU13は操舵角センサ14からステアリング6の操舵角を入力すると、操舵角θに基づき操舵角速度ωaを算出する(操舵角速度検出手段)。算出した操舵角速度ωaは要求吐出量算出部21に入力され、要求吐出量算出部21では、図中のマップに従って操舵角速度ωaから要求吐出量が算出される(要求吐出量推定手段)。操舵角速度ωaが早いほど操舵アシストのために要求されるパワーシリンダ3の動作速度が高まり、必然的により大きな吐出量が要求される。このため操舵角速度ωaと要求吐出量とは略正比例の関係が成立し、その関係に基づき予め図中のマップ特性が設定されている。
【0014】
算出された要求吐出量はモータ回転速度算出部22に入力され、モータ回転速度算出部22では、図中のマップに従って要求吐出量を達成可能な第1及び第2のモータ8,9の回転速度が算出される。なお、マップ中に示した第1及び第2のモータ8,9の回転速度は実際には制御指示値であり、この制御指示値に基づきそれぞれのモータ8,9の回転速度が制御される(効率マップ手段、モータ回転速度制御手段)。
端的に表現すると、まず要求吐出量の達成のために第1の油圧ポンプ8が駆動され、吐出量が不足して要求吐出量を達成不能な場合には第1の油圧ポンプ8に加えて第2の油圧ポンプ9が協働して駆動される。
【0015】
具体的には図中のマップに示すように、ステアリング6の操舵開始などにより操舵角速度ωaと共に要求吐出量が増加すると、まず第1のモータ10により第1の油圧ポンプ8の駆動が開始され、吐出された作動油がパワーシリンダ3に供給される。以下、このように第1の油圧ポンプ8を単独で駆動する運転状態を1モータ駆動と称する。要求吐出量の増加に応じて第1のモータ10の回転速度は次第に増加し、それに伴って第1の油圧ポンプ8の吐出量が増加して要求吐出量が達成され続ける。
【0016】
第1のモータ10の回転速度が切換判定値N0に達すると、第2のモータ11による第2の油圧ポンプ9の駆動が開始され、両油圧ポンプ8,9から吐出された作動油がパワーシリンダ3に供給される。以下、このように第1及び第2の油圧ポンプ8,9を協働させながら駆動する運転状態を2モータ駆動と称する。
本実施形態では1モータ駆動から2モータ駆動への切換時に、第2のモータ11の回転速度を0からステップ的に増加させると共に、その増加分だけ第1のモータ10の回転速度をステップ的に低下させて、要求吐出量を達成しながら切換を完了している。2モータ駆動への切換の完了後には、要求吐出量の増加に応じて第1及び第2のモータ10,11の回転速度が共に増加し、それぞれの油圧ポンプ8,9の吐出量が増加することにより要求吐出量が達成され続ける。
一方、ステアリング6の操舵終了などにより操舵角速度ωaと共に要求吐出量が低下した場合も、上記と逆の手順を辿って2モータ駆動から1モータ駆動への切換が実行される。
【0017】
以上のように、ステアリング6の操舵に応じて設定される要求吐出量が効率良好領域内にある場合には1モータ駆動が選択され、第1のモータ10により第1の油圧ポンプ8が駆動されることにより要求吐出量が達成される。要求吐出量が増加して効率悪化領域に突入した場合、仮に要求吐出量を第1の油圧ポンプ8単独で達成すると、必然的に第1の油圧ポンプ8を効率悪化領域で駆動する必要が生じる。
本実施形態では、このような状況に至る直前の第1のモータ10の回転速度が切換判定値N0に達した時点で、2モータ駆動に切り換えられて第2のモータ11により第2の油圧ポンプ9の駆動が開始され、第1及び第2の油圧ポンプ8,9の協働により要求吐出量が達成される。そして、この切換に伴って第1の油圧ポンプ8の回転速度はステップ的に低下し、それに伴って吐出量が低下するため効率悪化領域への突入が未然に防止される。
【0018】
このように本実施形態の車両のパワーステアリング装置によれば、1モータ駆動と2モータ駆動とを適切に切り換えることにより、要求吐出量を確実に達成した上で、第1及び第2の油圧ポンプ8,9を常に効率良好領域内で作動させることができる。よって、各油圧ポンプ8,9を駆動するモータ10,11の消費電力を節減でき、ひいてはオルタネータを駆動するエンジンの燃費悪化を抑制することができる。
【0019】
加えて、本実施形態のパワーステアリング装置においても、特許文献1の技術と同様に非操舵時には第1の油圧ポンプ8をアイドル駆動している。このため図3に示すように、要求吐出量が0のときでも第1のモータ10は0より若干高い回転速度に保持され、第1油圧ポンプ8から作動油が吐出されている。よって、ステアリング6の操舵開始により要求吐出量が増加すると、それに応じて迅速に第1の油圧ポンプ8の吐出量が増加し、操舵アシストの応答性を向上することができる。そして、第1の油圧ポンプ8をアイドル駆動するには第1モータ10のみを駆動すればよいため、待機電力の消費は第1のモータ8だけに発生する。従って、当然であるがモータ待機電力を節減して燃費悪化を抑制できるという特許文献1と同様の効果も得ることができる。
【0020】
一方、本実施形態では、1モータ駆動から2モータ駆動に切り換える際の操舵アシストの応答性も配慮している。即ち、図3に示すように、この切換時には第1及び第2のモータ10,11の回転速度を共にステップ的に増減させているが、第2のモータ11の回転速度の増加に比較して第1のモータ10の回転速度の低下を緩慢にしている。このため1モータ駆動から2モータ駆動への切換時には、第1モータ10の回転速度が低下し終える以前に第2モータ11の回転速度の増加が完了し、両者の間にオーバーラップした領域が形成される。
上記のようにマップ中の第1及び第2のモータ10,11の回転速度は制御指令値であり、この制御指令値に基づき両モータ10,11が制御されるのであるが、停止中の第2のモータ11を駆動する際には応答遅れが生じる。この応答遅れにより第2の油圧ポンプ9の吐出量が急激に増加せず、一時的に作動油の合計吐出量が不足して要求吐出量を達成できなくなる。第1のモータ10の回転速度の低下を緩慢にすることで第1の油圧ポンプ8の吐出量の低下が緩やかになり、第2の油圧ポンプ9側の吐出量の不足が補われる。このため一時的な合計吐出量の不足を解消でき、ひいてはより確実に要求吐出量を達成することができる。
【0021】
ところで、本実施形態では1モータ駆動から2モータ駆動への切換時に、第2のモータ11の回転速度をステップ的に増加させると共に、その増加分だけ第1のモータ10の回転速度をステップ的に低下させたが、切換時の制御はこれに限ることはない。図4はECU13の処理の別例を示す制御ブロック図であり、以下、この図に基づき説明する。
この別例では、第1のモータ10の回転速度が切換判定値N0に達した時点で、第1のモータ10の回転速度を切換判定値N0に維持すると共に、第2のモータ11の回転速度を0から次第に増加させている。このように制御した場合でも上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
加えて、上記実施形態では第2のモータ11の回転速度を0からステップ的に増加させる故に顕著な制御上の応答遅れが生じたが、この別例では回転速度を緩やかに増加させるため応答遅れを無視できる程度に抑制できる。よって、上記実施形態のように1モータ駆動から2モータ駆動への切換時に両モータ10,11間にオーバーラップの領域を形成する必要がないし、仮にその必要があったとしても僅かなオーバーラップの領域を形成するだけで作動油の合計吐出量の不足を解消することができる。
【0022】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態ではトラックのパワーステアリング装置に具体化し、その前輪1の操舵をアシストしたが、これに限ることはない。例えばバスなどの他の車両に適用してもよいし、フォークリフトなどに適用した場合には、その後輪の操舵をアシストするようにしてもよい。
また、上記実施形態では、図3に示したように、操舵角速度ωaから一旦要求吐出量を算出し、その要求吐出量に基づき第1及び第2のモータ10,11の回転速度を算出したが、これに限ることはない。例えば予め操舵角速度ωaと要求吐出量との関係は判明していることから、操舵角速度ωaに基づき第1及び第2のモータ10,11の回転速度を直接算出するようにしてもよい。この場合には、図3に示すモータ回転速度算出部22の各マップの横軸を要求吐出量に代えて操舵角速度ωaとすればよい。
【符号の説明】
【0023】
8 第1の油圧ポンプ
9 第2の油圧ポンプ
10 第1のモータ
11 第2のモータ
13 ECU
(操舵角検出手段、要求吐出量推定手段、効率マップ手段、モータ回転速度制御手段)
14 操舵角センサ(操舵角検出手段)
図1
図2
図3
図4