(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る融雪リングの取付状態を示しており、
図2(A)は融雪リング10の平面図を示し、
図2(B)は
図2(A)を上方から見た図を示している。
図1に示すように、融雪リング10は、架空送電線(以下、送電線という)11の外周部に取り付けられる環状のリング体12を有している。このリング体12は、磁性体材料で形成されており、これによって、送電線11の電流によって生じる磁界の変化により発熱する発熱部材として機能する。このリング体12の材料には、導体であるニッケル系又はパーマロイ(Fe−Ni系)の低キュリー材が使用されている。なお、それ以外の強磁性体材料を用いても良く、発熱部材として機能する磁性体材料を広く適用可能である。
【0011】
図2(A)(B)に示すように、リング体12の内側には、リング体12と送電線11との間に環状の断熱体21が設けられており、この断熱体21によりリング体12の熱が送電線11に伝わるのを抑制している。
この断熱体21は、リング体12の径方向に沿う分割面21Aで半割(2分割)され、リング体12の後述する一対の半円リング部33,43に各々接着剤等で取り付けられている。断熱体21の材料としては、非金属材料で形成されることが望ましく、耐久性やコストの面からポリカーボネート等の樹脂製が好適である。
【0012】
前掲
図1に示すように、融雪リング10は、既設の送電線11の長手方向に比較的大きい取り付け間隔(例えば30cm)を空けて後付けされ、各リング10が送電線11の電流によって生じる磁界の変化で発熱し、送電線11に付着した雪を溶かすことによって、送電線11に付着した雪を分断することができる。
この融雪リング10を用いる方法は、送電線11全体を着氷雪対策品で覆う必要がないので、部品コストを低減できるとともに、雪対策による送電線重量の増大を抑えることができる、というメリットがある。
なお、
図2中、符号C1は、リング体12の中心軸を示し、符号C2は、リング体12の幅の中央を通って中心軸C1に直交する直交面を示している。この中心軸C1は、融雪リング10の中心軸と一致し、また、送電線11及び断熱体21の中心軸とも一致している。以下、説明を判りやすくするため、この中心軸C1が延びる方向を、リング体12及び融雪リング10の軸方向と適宜に表記し、直交面C2を、リング体12の中心軸C1に直交する直交方向と適宜に表記する。
【0013】
図3は送電線11に取り付ける前のリング体12を示している。
図3(A)はリング体12の平面図を示し、
図3(B)は
図3(A)を上方から見た図を示し、
図3(C)は
図3(A)を左上方から見た図を示し、
図3(D)は
図3(A)を右上方から見た図を示している。
リング体12は、一対の先端部31,41が開いた開環形状を有しており、その厚さD1(
図3(A)参照)及び幅W1(
図3(B)参照)が一定に形成されている。この一対の先端部31,41の離間距離L1(
図3(A)参照)は、リング体12内に入れる送電線11の直径よりも大きい値に設定されており、これによって、リング体12の装着時に、リング体12内に送電線11を容易に出し入れ自在に形成されている。
【0014】
このリング体12は、真円の円弧に沿って延びる一対の半円リング部33,43と、一対の半円リング部33,43の基端部35,45同士をつなぐ連結部51とを一体に備えている。
一対の半円リング部33,43は、半円の円弧形状に形成され、連結部51は、半円リング部33,43よりも平坦形状に形成され、リング体12を閉環する場合に、この連結部51で曲がり易くしている。より具体的には、連結部51は、一対の先端部31,41からの距離が等しい中間部52が、一対の先端部31,41の開口側に向けて緩やかに盛り上がる略平坦形状に形成され、この中間部52を基準にして一対の半円リング部33,43が曲がることによって、正面視で真円の閉環形状に容易に曲げることができる。
【0015】
一対の先端部31,41は、内側の側面31A,41A同士が嵌合自在に形成され、嵌合することによってリング体12が閉環する。各先端部31,41は、リング体12の直交面C2を略境にして一方側と他方側とに振り分けて形成され、対向する側面31A,41Aに凹凸形状の嵌合部が形成される。なお、対向する側面31A,41Aとは反対側の面31B,41Bは、直交面C2に略平行な面に形成される。
各先端部31,41の側面31A,41Aは、リング体12の軸方向C1に突出する凸部36,46と軸方向C1に凹む凹部37,47とによって凹凸形状に形成され、これら凸部36,46と凹部37,47との間に、所定の角度θ1で傾斜する段差面31D,41Dが形成されている。
【0016】
図4(A)〜(C)は、先端部31,41同士が嵌合した状態を示している。
図4(A)に示すように、一方の先端部31と他方の先端部41とは、段差面31D,41Dで係止する。また、先端部31,41の先端面31F,41F及び基端面31G,41Gは、上記段差面31D,41Dと平行な面に形成されている。これによって、同
図4(A)に示すように、嵌合した状態で、段差面31D,41Dを含めて、先端部31,41の側面31A,41A同士を隙間無く密着可能である。
上記した段差面31D,41Dの角度θ1は、リング体12の中心軸C1に対して鋭角の角度に設定されており、本実施形態では、30°に設定している。この角度θ1の段差面31D,41Dに沿う方向α(
図4(A)参照)が、先端部31,41同士を相対移動させる方向に相当している。上記角度θ1が45°を超えると、嵌め合わせる際に距離が必要になり、リング体12に負担がかかってしまい、また、0<θ1(角度θ1が大きくなるに従って)、幅方向の衝撃に強くなる。このため、角度θは、0°〜45°の範囲内が良く、より好ましくは30°〜40°の範囲内(35°前後)とされる。
【0017】
この相対移動させる方向αは、一対の先端部31,41を、リング体12の軸方向C1及び直交方向C2に同時に移動させる方向に相当しているので、
図4(B)に示すように、リング体12の直交方向C2に沿う外力(図中、符号P1で示す)が作用しただけでは嵌合を外すことができず、また、
図4(C)に示すように、軸方向C1に沿う外力(図中、符号P2で示す)が作用した場合にも嵌合を外すことができない。
ここで、
図4(B)に示す外力P1が作用した場合には、つまり、一対の先端部31,41を、リング体12の直交方向C2に沿って離そうとする外力P1が作用した場合には、角度θ1の段差面31D,41D同士がより密着することとなる。
【0018】
図4(D)は比較例を示している。この比較例では、角度θ1をリング体12の軸方向C1に対して0°に設定している。この比較例では、リング体12の直交方向C2に沿う外力P1に対しては先端部31,41同士を嵌合状態に保持できる一方、リング体12の軸方向C1に沿う外力P2に対しては先端部31,41が外れてしまうおそれが生じる。
これに対し、本願実施形態では、リング体12の軸方向C1及び直交方向C2の両方に対して斜めの方向αに力が作用した場合にしか先端部31,41同士が相対移動しないので、上記外力P1,P2のいずれに対しても先端部31,41同士が外れることがない。
しかも、リング体12は弾性を有するため、一対の先端部31,41を嵌合させた場合に、先端部31,41には元の形状(
図3参照)に戻ろうとする弾性復元力(弾性力とも言う)が作用し、つまり、上記力P1と同方向に弾性復元力が作用するため、本実施形態では、この弾性復元力P1を利用して一対の先端部31,41同士をより確実に密着させることができる。
【0019】
本実施形態では、リング体12の先端部31,41同士を嵌合する前の状態では、前掲
図3(A)(B)に示したように、一対の先端部31,41が、リング体12の周方向に沿って離れるとともに互いの先端面31F,41Fが向き合うように所定のオフセット量K1,K2だけずれた形状に形成されている。
詳述すると、このリング体12は、
図3(A)に示すように、一対の先端部31,41の先端面31F,41Fからリング体12に沿って等距離の位置に相当する中間部52を基準にして、軸方向C1一方側に設けられる先端部31を、
図3(A)における紙面奥行き側に寝かし、且つ、軸方向C1他方側に設けられる先端部41を、
図3(A)における紙面手前側に起こすようにねじることによって形成されており、当該リング体12を型成形する際に、上記のようにねじった形状に形成されている。つまり、上記オフセット量K1,K2は、リング体12のねじれ量に相当している。
なお、
図3(B)において、符号C3は、ねじれの基準位置を示しており、符号C1は、リング体12を閉環したときの中心軸に対応する位置を示している。
【0020】
一対の先端部31,41のオフセット量K1、K2は同値に設定されている。このオフセット量K1,K2は、各先端部31,41を上記のように嵌合させるために軸方向C1に移動させる最低移動量に相当している。このため、オフセット量K1,K2が大きいほど、嵌合に要する先端部31,41の移動量(変形量)が増えることになる。
本実施形態のリング体12は、ニッケル系又はパーマロイの磁性体材料であるため、変形が元に戻る弾性域(弾性変形範囲とも言う)が相対的に狭くなっており、変形量が大きいと、変形が元に戻らない塑性域(塑性変形範囲)に入り易い。発明者らの検討によれば、上記オフセット量K1,K2をリング体12の幅W1の50%程度までの範囲に抑えることによって、塑性変形が生じても弾性変形により一対の先端部31,41が接触嵌合し、十分に結合できることを確認した。また、リング体12の直径、幅W1、厚さD1に応じてオフセット量を適宜に変更すれば良い。
【0021】
図5はリング体12の一対の先端部31,41を連結する過程を示している。
図5(A)は一対の先端部31,41を連結する直前の状態であり、この状態から、
図5(B)に示すように、一対の先端部31,41を、リング体12を閉環するようにリング体12の直交面C2に沿って近づけていく。
上記したように、一対の先端部31,41は互いの先端面31F,41Fが直交面C2上で相体するので、直交面C2に沿って近づけていくと、先端面31F,41F同士が当接する。この場合、両先端面31F,41Fは、相手の先端面31F,41Fを嵌合面側に案内する傾斜面に形成されているので、
図5(C)に示すように、一対の先端部31,41が、先端面31F,41Fに沿ってオフセットされた側と反対側に変形していく(撓んでいく)。その後、連結部51の中間部52(
図3(B)参照)を基準して、両先端部31,41が各々オフセット量K1,K2(
図3(A)参照)に相当する量だけ変形すると、
図5(D)に示すように、各先端部31,41が他方の先端部41,31を乗り越えて、各先端部31,41の側面31A,41A同士が嵌合し、これによって、先端部31,41が連結する。
【0022】
このようにして、一対の先端部31,41を、リング体12を閉環するようにリング体の直交面C2に沿って近づけていくだけで、両先端部31,41の連結が完了する。
上記したように、本実施形態のリング体12は、弾性域が相対的に狭いニッケル系又はパーマロイで形成されているため、上記の連結の際に弾性変形と塑性変形の両方が生じる。
この場合、一対の先端部31,41がオフセット量K1,K2の分、リング体12の軸方向C1にも変形した状態で嵌合しているので、リング体12そのものの弾性復元力を利用して嵌合力を効率よく高めることができ、且つ、先端部31,41同士を確実に密着させることができる。
【0023】
図6は、上記連結を行うためのリング体12の取付工具71の一例を示している。この取付工具71は、開閉自在に連結される一対のプレート72,74と、一対のプレート72,74を開閉する開閉機構76とを備えており、各プレート72,74の内周縁にリング体12がセットされる。
開閉機構76は、各プレート72,74の先端部に雌ねじ部材(例えば、ナット)77,78を首振り自在に設け、これら雌ねじ部材77,78に雄ねじ部材79を螺合させて構成される。そして、この雄ねじ部材79を、作業員が手動で、或いは、モータ等の駆動源を用いて回転させることにより、一対のプレート72,74を開閉させることができる。この取付工具71を用いれば、金属製のリング体12を比較的簡便に変形させて取り付けることができる。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態の融雪リング10では、リング体12は、側面31A,41A同士が嵌合自在に形成された一対の先端部31,41を有する開環形状であって、各先端部31,41が離間するとともに互いの先端面31F,41Fが向き合うようにねじられた形状を有し、一方の先端部31を他方の先端部41に対してリング体12の軸方向C1に少なくとも弾性変形させた状態で内側の側面31A,41A同士を重ねることによって、両先端部31,41を嵌合させているので、各先端部31,41が弾性変形した状態で嵌合し、嵌合力を効率よく高めるとともに先端部31,41同士を確実に密着させることができる。
このため、送電線11の振動・腐食、送電線点検時の宙乗り機通過、雷等の種々のストレスを受けた場合でも、先端部31,41のずれを防止することができ、取付状態を維持することができる。また、リング体12は、一対の先端部31,41を有する開環形状であるため、既設の送電線11へ容易に装着できる。また、先端部31,41同士を確実に密着させることができるので、送電線11の電流によってリング体12を適切に発熱させることが可能である。
【0025】
さらに、リング体12は、一対の先端部31,41から等距離の中間部52を基準にしてねじられた形状を有しているので、先端部31,41同士を嵌合させる際に、各先端部31,41のねじりを互いで相殺して、嵌合時にねじりのないリング形状にすることができる。
また、先端部31,41の先端面31F,41Fは、リング体12を閉環するように近づけて互いを当接させた際に一方の先端部31を他方の先端部41に対してリング体12の軸方向C1に相対移動させる傾斜面を有しているので、先端面31F,41Fを容易にリング体12の軸方向C1に相対移動させて嵌合させることができる。
すなわち、本実施形態では、一対の先端部31,41を近づけるようにリング体12を閉じていくだけで、自動的に軸方向C1に相対移動させて先端部31,41同士を連結させることが可能である。
【0026】
さらに、一対の先端部31,41の側面31A,41Aは、先端面31F,41Fの傾斜面と平行の段差(段差面31D,41D)で係合するので、先端面31F,41Fの傾斜に従って移動した各先端部31,41を容易に係合させることができるとともに、先端部31,41を外すには段差面31D,41Dに沿う斜めの方向α(
図4(A)参照)に引き離す必要があり、先端部31,41を外れ難くすることが可能である。
【0027】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
例えば、上述の実施形態において、一対の先端部31,41の嵌合形状は、上記の形状に限らず、他の形状を適用しても良い。また、上述の実施形態では、環状の断熱体21を半割してリング体12に固定する場合を説明したが、これに限らず、断熱体21を、先端部31,41が開いたリング体12の内周面に沿って湾曲するU字の開環形状にしてリング体12に固定し、リング体12と一体に屈曲させるようにしても良い。