特許第5979357号(P5979357)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979357
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】瓦礫選別システム及び瓦礫選別方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/167 20060101AFI20160817BHJP
   G21F 9/30 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   G01T1/167 C
   G21F9/30 531M
   G21F9/30 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-145487(P2012-145487)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-9998(P2014-9998A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】秦 和久
(72)【発明者】
【氏名】蔵成 和樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 定雄
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−263188(JP,A)
【文献】 特開平10−263521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/167
G21F 9/30
B09B 1/00 − 5/00
B09C 1/00 − 1/02
B09C 1/06 − 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
瓦礫を連続的に運搬する運搬手段と、瓦礫を破砕して生じる破砕片から選別された所定サイズ以下の破砕片を、前記運搬手段に対し連続供給する供給手段と、前記運搬手段上を流れる破砕片の層厚を調整する層厚調整手段と、前記運搬手段上を一方向に流れる破砕片の放射能を連続的に測定する放射能測定手段と、前記運搬手段の端部に配置され、前記放射能測定手段によって所定値以上の放射能が検出された破砕片を分別する分別手段とを含むことを特徴とする瓦礫選別システム。
【請求項2】
前記運搬手段としてベルトコンベヤを備え、前記層厚調整手段は、前記運搬手段上に配置された押さえローラと、前記運搬手段の前記押さえローラよりも下流側に位置する破砕片の層厚センサと、前記押さえローラの昇降手段とを含むことを特徴とする請求項1記載の瓦礫選別システム。
【請求項3】
前記分別手段は、破砕片を搬出手段へと積み込む積み込み手段を備え、該積み込み手段に、前記放射能測定手段により所定値以上の放射能が検出された破砕片を分別するダンパーを備えることを特徴とする請求項1又は2記載の瓦礫選別システム。
【請求項4】
前記各手段が移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の瓦礫選別システム。
【請求項5】
瓦礫の破砕工程と、該破砕工程にて破砕された瓦礫を、少なくとも破砕片のサイズに応じて選別する瓦礫選別工程と、該選別した破砕片を運搬手段に連続供給し、運搬手段上を流れる破砕片の層厚を調整する層厚調整工程と、該層厚調整工程の後に、破砕片の放射能を連続的に測定する放射能測定工程と、所定値以上の放射能が測定された破砕片を分別する分別工程とを含むことを特徴とする瓦礫選別方法。
【請求項6】
前記層厚調整工程において、前記運搬手段としてのベルトコンベヤ上に配置された押さえローラにより、運搬手段上を流れる破砕片の層厚を所定の厚みに押さえつけ、該押さえローラの下流位置にて破砕片の層厚を検知して、前記押さえローラの高さを調整することを特徴とする請求項5記載の瓦礫選別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瓦礫選別システム及び瓦礫選別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震や津波等の自然災害を受けて、倒壊した建築物等の瓦礫が大量に発生する事態となっている。しかしながら、この瓦礫の処理を被災地のみで短時間に行なうことは困難であり、被災地から瓦礫を搬出してさまざまな地域で処分を行なう、いわゆる広域処理を行なうことが、被災地の復興にも必要不可欠となっている。一方、瓦礫に放射能汚染の恐れがある場合には、放射能汚染されていない瓦礫のみを広域処理に回すことが、地域の受け入れ体制の観点からも現実的である。このため、被災地では、放射能汚染の基準値を超える瓦礫と基準値以下の瓦礫とを分別し、後者の瓦礫については広域処理用の瓦礫として取り扱っている。
ところで、瓦礫の放射能汚染の測定に際し、従来は、瓦礫の一部をサンプルとして抜出し、このサンプルを放射能測定装置に投入して(例えば、特許文献1参照。)、瓦礫全体の放射能汚染を把握する、抜き取りサンプル検査を実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−47544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、抜き取りサンプル検査の結果汚染なしと判断された瓦礫であっても、現状ではその受け入れに慎重となる地域も多く、全量検査でないことに危惧を抱く意見もあり、広域処理の拡大を困難としている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、瓦礫の放射能汚染の有無に基づく選別を効率的に行ない、瓦礫の選別の信頼性をより高めることにある。そして、広域処理に供される瓦礫の量を増大させることで、被災地復興に貢献する技術を提供することにある。
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項分けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)瓦礫を連続的に運搬する運搬手段と、瓦礫を破砕して生じる破砕片から選別された所定サイズ以下の破砕片を、前記運搬手段に対し連続供給する供給手段と、前記運搬手段上を流れる破砕片の層厚を調整する層厚調整手段と、前記運搬手段上を一方向に流れる破砕片の放射能を連続的に測定する放射能測定手段と、前記運搬手段の端部に配置され、前記放射能測定手段によって所定値以上の放射能が検出された破砕片を分別する分別手段とを含む瓦礫選別システム(請求項1)。
【0007】
瓦礫には、コンクリート、倒壊家屋、家具、畳、じゅうたん、布団、マットレス、衣類、家電製品、書籍などの一般ゴミ、草木類、津波堆積物といった、様々な大きさ、材質の物が混在している。そこで、瓦礫を以後の処理工程に適した大きさへと破砕し、破砕片のサイズや、必要に応じて材質毎に、破砕片の選別を行なったものを、放射能測定対象とするものである。又、以後の処理工程に適さない所望の大きさを超える瓦礫については、再度、破砕手段に投入する。必要に応じ、以後の処理工程に適さない材質の瓦礫については、以後の工程に回すことなく保管する。なお、ここで用いられる破砕手段としては、例えば、ジョー・クラッシャ、或いは、インパクト・クラッシャ(衝撃式破砕装置と称することもある)等が用いられる。
そして、本項に記載の瓦礫選別システムでは、上述のごとく選別された破砕片を供給手段によって運搬手段に連続供給し、運搬手段によって、間欠的にではなく連続的に破砕片を運搬する。そして、運搬手段上を流れる破砕片の層厚を層厚調整手段によって連続的に調整した後、放射能測定手段によって、運搬手段上を一方向に流れる破砕片の放射能を連続的に測定することで、放射能の測定精度を高精度かつ安定化させ、瓦礫の全量検査を可能とするものである。その後、運搬手段の端部に配置された分別手段により、放射能測定手段で所定値以上の放射能が検出された破砕片以外の破砕片を、広域処理用の瓦礫として分別するものである。
【0008】
(2)上記(1)項において、瓦礫を破砕する破砕手段と、該破砕手段にて破砕された瓦礫を、少なくとも破砕片のサイズに応じて選別する瓦礫選別手段とを含む瓦礫選別システム。
前述のごとく、瓦礫には、様々な大きさ、材質の物が混在している。そこで、本項に記載の瓦礫選別システムは、瓦礫を採取して破砕手段に投入することで、これらを以後の処理工程に適した大きさへと破砕する。そして、瓦礫選別手段において、破砕片のサイズや、必要に応じて材質毎に選別を行ない、供給手段へと投入するものである。
【0009】
(3)上記(1)(2)項において、前記運搬手段としてベルトコンベヤを備え、前記層厚調整手段は、前記運搬手段上に配置された押さえローラと、前記運搬手段の前記押さえローラよりも下流側に位置する破砕片の層厚センサと、前記押さえローラの昇降手段とを含むことを特徴とする瓦礫選別システム(請求項2)。
本項に記載の瓦礫選別システムは、層厚調整手段において、運搬手段であるベルトコンベヤ上を流れる破砕片の層厚を連続的に調整するために、運搬手段上に配置された押さえローラを昇降手段によって昇降させて、破砕片の層厚を調整するものである。押さえローラは運搬手段の幅と同等又はそれよりも長い円筒状をなし、その回転軸が昇降手段に軸支されて、運搬手段に対して任意の高さに調整される。そして、運搬手段上を流れる破砕片の流れを受け、適宜回転しながら押さえローラよりも上方の部分を堰き止めつつ運搬手段に押し付けることで、破砕片を均すものである。なお、ここで調整される破砕片の層厚は、放射能測定手段にて放射能測定を行なうに適したものである。又、破砕片の層厚を、運搬手段の押さえローラよりも下流側に位置する破砕片の層厚センサによって適宜検知し、常に最適の層厚が得られるように、昇降手段によって押さえローラの高さ調整にフィードバックすることで、運搬手段上を流れる破砕片の層厚を連続的に調整するものである。
【0010】
(4)上記(1)(2)項において、前記運搬手段としてベルトコンベヤを備え、前記層厚調整手段は、前記運搬手段上に配置されたスクレーパと、該スクレーパの下流に位置する破砕片の層厚センサと、前記スクレーパの昇降手段とを含むことを特徴とする瓦礫選別システム。
本項に記載の瓦礫選別システムは、層厚調整手段において、運搬手段であるベルトコンベヤ上を流れる破砕片の層厚を連続的に調整するために、運搬手段上に配置されたスクレーパを昇降手段によって昇降させて、破砕片の層厚を調整するものである。スクレーパは運搬手段の幅と同等又はそれよりも幅広の板状をなし、昇降手段によって昇降自在に支持されて、運搬手段に対して任意の高さに調整される。そして、運搬手段上を流れる破砕片のうち、スクレーパの下端辺よりも上方の部分を堰き止めて、上流方向へと削り落とすことで、スクレーパを通過する破砕片を均すものである。なお、ここで調整される破砕片の層厚は、放射能測定手段にて放射能測定を行なうに適したものである。又、破砕片の層厚を、運搬手段のスクレーパよりも下流側に位置する破砕片の層厚センサによって適宜検知し、常に最適の層厚が得られるように、昇降手段によってスクレーパの高さ調整にフィードバックすることで、運搬手段上を流れる破砕片の層厚を連続的に調整するものである。
【0011】
(5)上記(1)から(4)項において、前記分別手段は、破砕片を搬出手段へと積み込む積み込み手段を備え、該積み込み手段に、前記放射能測定手段により所定値以上の放射能が検出された破砕片を分別するダンパーを備える瓦礫選別システム(請求項3)。
本項に記載の瓦礫選別システムは、運搬手段の端部に配置された分別手段に、破砕片をトラック等の搬出手段へと積み込む、積み込み手段を備えることで、広域処理対象となる瓦礫の搬送作業を、分別後直ちに行なうことを可能とするものである。しかも、この積み込み手段に設けられたダンパーで、放射能測定手段により所定値以上の放射能が検出された破砕片を分別するものである。そして、放射能測定手段で所定値以上の放射能が検出された破砕片以外の破砕片を、広域処理用の瓦礫として分別して、搬出手段へと積み込むものである。
なお、搬出手段がトラックである場合には、積載量の上限に達した時点でトラックの交換が必要となることから、積み込み手段から搬出手段への破砕片の積み込み作業が間欠的となる。このため、運搬手段および運搬手段に選別された破砕片を連続供給する供給手段の動作も、搬出手段による破砕片の積み込み作業と同期するように、間欠動作させるものとする。
【0012】
(6)上記(1)から(5)項において、前記各手段が移動可能に構成されている瓦礫選別システム(請求項4)。
本項に記載の瓦礫選別システムは、上記(1)から(5)項記載の各手段が移動可能に構成されることで、瓦礫発生地にて各手段を稼動させて、所定値以上の放射能が検出された破砕片と、それ以外の破砕片とを分別するものである。又、上記(1)から(5)項記載の各手段が移動可能となるように、例えば、各手段をトレーラの荷台に搭載し、あるいは、各手段を搭載する特殊車両を構成するものである。これらのトレーラや特殊車両には、各手段の大きさに応じて、各々別々に載置され、又は、一台の車両に複数種類(或いは全て)が載置され、瓦礫の発生地にて、上記所定の作業工程が円滑に実施されるように配置されるものである。しかも、本システムを瓦礫発生地にて展開する際に、外部電源を確保することなく、各手段の運転を可能とするものである。
【0013】
(7)瓦礫の破砕工程と、該破砕工程にて破砕された瓦礫を、少なくとも破砕片のサイズに応じて選別する瓦礫選別工程と、該選別した破砕片を運搬手段に連続供給し、運搬手段上を流れる破砕片の層厚を調整する層厚調整工程と、該層厚調整工程の後に、破砕片の放射能を連続的に測定する放射能測定工程と、所定値以上の放射能が測定された破砕片を分別する分別工程とを含む瓦礫選別方法(請求項5)。
本項に記載の瓦礫選別方法は、採取した瓦礫を、破砕工程にて以後の処理工程に適した大きさへと破砕する。そして、瓦礫選別工程において、破砕片のサイズや、必要に応じて材質毎に選別を行なう。ここで、以後の処理工程に適さない所望の大きさを超える瓦礫については、再度、破砕工程に投入する。又、必要に応じ、以後の処理工程に適さない材質の瓦礫については、以後の工程に回すことなく保管する。なお、ここで用いられる破砕手段としては、ジョー・クラッシャ等が用いられる。
【0014】
続いて、選別された破砕片を運搬手段に連続供給し、運搬手段によって連続的に運搬する。そして、層厚調整工程にて運搬手段上を流れる破砕片の層厚を連続的に調整した後、放射能測定工程において、運搬手段上を一方向に流れる破砕片の放射能を連続的に測定することで、放射能の測定精度を高精度かつ安定化させ、瓦礫の全量検査を可能とするものである。
その後、分別工程において、放射能測定工程にて所定値以上の放射能が検出された破砕片以外の破砕片を、広域処理用の瓦礫として分別するものである。
【0015】
(8)上記(7)項において、前記層厚調整工程では、前記運搬手段としてのベルトコンベヤ上に配置された押さえローラにより、運搬手段上を流れる破砕片の層厚を所定の厚みに押さえつけ、該押さえローラの下流位置にて破砕片の層厚を検知して、前記押さえローラの高さを調整する瓦礫選別方法(請求項6)。
本項に記載の瓦礫選別方法は、層厚調整工程において、運搬手段としてのベルトコンベヤ上を流れる破砕片の層厚を連続的に調整するために、運搬手段上に配置された押さえローラを昇降させて、破砕片の層厚を調整するものである。押さえローラは運搬手段の幅と同等又はそれよりも長い円筒状をなし、その回転軸が昇降手段に軸支されて、運搬手段に対して任意の高さに調整される。そして、運搬手段上を流れる破砕片の流れを受け、適宜回転しながら破砕片を均すものである。なお、ここで調整される破砕片の層厚は、放射能測定手段にて放射能測定を行なうに適したものである。又、破砕片の層厚を、押さえローラの下流位置にて適宜検知し、常に最適の層厚が得られるように、押さえローラの高さ調整にフィードバックすることで、運搬手段上を流れる破砕片の層厚を連続的に調整するものである。
【0016】
(9)上記(7)項において、前記層厚調整工程では、前記運搬手段としてのベルトコンベヤ上に配置されたスクレーパにより、運搬手段上を流れる破砕片の層厚を所定の厚みに切り取り、該スクレーパの下流位置にて破砕片の層厚を検知して、前記スクレーパの高さを調整することを特徴とする瓦礫選別方法。
本項に記載の瓦礫選別方法は、層厚調整工程において、運搬手段としてのベルトコンベヤ上を流れる破砕片の層厚を連続的に調整するために、運搬手段上に配置されたスクレーパを昇降させて、破砕片の層厚を調整するものである。スクレーパは運搬手段の幅と同等又はそれよりも幅広の板状をなし、昇降手段によって昇降自在に支持されて、運搬手段に対して任意の高さに調整される。そして、運搬手段上を流れる破砕片のうち、スクレーパの下端辺よりも上方の部分を堰き止めて、上流方向へと削り落とすことで、スクレーパを通過する破砕片を均すものである。なお、ここで調整される破砕片の層厚は、放射能測定手段にて放射能測定を行なうに適したものである。又、破砕片の層厚を、スクレーパの下流に位置する層厚センサによって適宜検知し、常に最適の層厚が得られるように、昇降手段によってスクレーパの高さ調整にフィードバックすることで、運搬手段上を流れる破砕片の層厚を連続的に調整するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明はこのように構成したので、瓦礫の放射能汚染の有無に基づく選別を効率的に行ない、瓦礫の選別の信頼性をより高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る瓦礫選別システムの、要部斜視図である。
図2図1に示される瓦礫選別システムを模式的に示す側面図であり、(a)、(b)はダンパーが切り替わった状態を示したものである。
図3図1に示される瓦礫選別システムの、運搬手段上を流れる破砕片の層厚を調整する層厚調整手段を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は要部側面図と共に、コントローラを模式的に示したものである。
図4図1に示される瓦礫選別システムの、運搬手段上を流れる破砕片の分別手段を示すものであり、(a)、(b)はダンパーが切り替わった状態を、便宜上、一部透視図として示したものである。
図5】本発明の実施の形態に係る瓦礫選別システムを用いた、瓦礫選別手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を添付図面に基づいて説明する。
図1図2に例示される、本発明の実施の形態に係る瓦礫選別システム10は、予め瓦礫を破砕する破砕手段(図示省略)と、破砕手段によって破砕された瓦礫を、破砕片100のサイズに応じて選別する瓦礫選別手段(図示省略)と、選別された破砕片100を連続的に運搬する運搬手段12と、運搬手段12に、選別された破砕片100を連続供給する供給手段14と、運搬手段12上を流れる破砕片100の層厚を調整する層厚調整手段16と、運搬手段12上を一方向に流れる破砕片100の放射能を連続的に測定する放射能測定手段18と、運搬手段12の端部に配置され、放射能測定手段18によって所定値以上の放射能が検出された破砕片100Rを分別する分別手段20とを含むものである。
【0020】
ここで、図示しない破砕手段について、破砕装置の種類は特に限定されないが、例えば、本発明に周知の破砕機であるジョー・クラッシャを用いることが可能である。また、他の破砕手段として、例えば、衝撃式破砕装置を用いることも可能である。衝撃式破砕装置の具体例としては、本出願人によって出願された、実公昭61−19802号公報記載の衝撃式破砕機を用いることが可能である。又、本実施の形態では、瓦礫の発生地にて稼動することができるように、各手段が移動可能に構成されている。このため、破砕手段及び瓦礫選別手段に移動可能なものを用いることとする。破砕手段及び瓦礫選別手段の具体例としては、本出願人によって出願された特開平5−154400号公報記載の、移動式クラッシャ等を用いることが可能である。
【0021】
この移動式クラッシャは、走行自在なクローラの上に、供給された瓦礫を受入れるホッパと、水平軸回りに傾動可能なバケットとブームならびに傾動用の油圧シリンダからなり野積した瓦礫を掬い取り該ホッパへ供給するローダと、供給瓦礫を大塊と細粒に選別しつつ移送するグリズリ付振動フィーダと、該瓦礫を破砕するクラッシャと、該クラッシャの破砕産物の輸送機とを搭載している。加えて、前記細粒から土砂分を除去して篩上産物を前記輸送機へ排出する振動篩と該土砂分を輸送する補助輸送機を備え、前記グリズリ付振動フィーダ、クラッシャ、ローダ、輸送機、振動篩、補助輸送機の駆動用動力装置としてディーゼルエンジンおよび油圧ユニットを備えたものである。
【0022】
又、本実施の形態では、運搬手段12にベルトコンベヤが用いられている。一方、供給手段14は、運搬手段12上に破砕片100を供給するためのホッパであり、運搬手段12に対して、単位時間当たり一定量の破砕片100を供給することが可能となっている。又、本実施の形態では、供給手段14は、走行用クローラ22を備える駆動用エンジンユニット24に、運搬手段12と共に搭載され、瓦礫の発生地にて稼動することができるように、移動可能に構成されている。
【0023】
層厚調整手段16は、例えば、図3に示されるように、運搬手段12上に配置された押さえローラ26と、運搬手段12の押さえローラ26よりも下流側に位置する破砕片100の層厚を測定する層厚センサ28(図3(b))と、押さえローラ26の昇降手段30(図3(a))とを含むものである。押さえローラ26は、運搬手段12の幅と同等又はそれよりも長い円筒状をなし、その回転軸26aが昇降手段30に保持されるブラケット30aに軸支されて、運搬手段12に対して任意の高さに調整されるものである。図示の例では、昇降手段30は油圧シリンダであり、そのピストンロッドにブラケット30aが保持されている。又、層厚センサ28は、図示の例では、接触子28aが破砕片100に接触することにより層厚検知を行なうものであるが、必要に応じて、光学式センサや近接センサ等の被接触式センサを用いることとしても良い。そして、層厚センサ28の検知信号を、例えば、電子演算器からなるコントローラ32(図3(b)にのみ模式的に示す)で受けて、昇降手段30を作動させる油圧制御手段へと制御指令を出力することで、押さえローラ26の高さ調整にフィードバックする。コントローラ32は、例えば、駆動用エンジンユニット24のコントローラを共用するものとして、構成することが可能である。
なお、図示は省略するが、層厚調整手段16において、押さえローラ26に換えて、運搬手段12の幅と同等又はそれよりも幅広の板状をなした、スクレーパを用いることとしても良い。スクレーパの具体例としては、例えば、実開昭57−106631号公報記載のものが上げられる。又、層厚調整手段16は、適宜、運搬手段12の水平部分に配置しても、傾斜部分に配置しても良い。
【0024】
放射能測定手段18には、連続式放射能測定装置が用いられる。この連続式放射能測定装置は、運搬手段12上の層厚調整手段16よりも下流に配置され、運搬手段12上の破砕片100が、放射能測定手段18を通過する間に、その放射能を連続的に高速で測定するものである。連続式放射能測定装置は、具体的には、高感度ガンマ線検出器、アンプ、及び複数の波高弁別器等によって構成され、破砕片100から放射される放射線についてエネルギー別の計数を行う。なお、ガンマ線検出器の周囲は、必要に応じて所定の厚みを有するトンネル状の鉛遮蔽体で覆い、バックグランド値を低減できるものとする。
そして、コントローラ32(図3(b))において、放射能測定手段18によって測定された破砕片100の放射能、測定時刻、運搬手段12の運搬速度に基づき、後述する分別手段20のダンパー38の、切り替えのタイミングを決定する。なお、放射能測定手段18についても、適宜、運搬手段12の水平部分に配置しても、傾斜部分に配置しても良い。
【0025】
又、分別手段20は、破砕片100を、トラック等の搬出手段34へと積み込むための積み込み手段として、運搬手段12の端部に配置される、筒状のシューター36と、シューターの内部に配置されるダンパー38とを備えている。シューター36は、破砕片100の飛散を抑えて、下方へと落下させるための覆いである。又、ダンパー38は、シューター36内を落下する破砕片100の落下経路を、例えば図4に示されるように、シューター36の下方に配置した隔壁40の一面側の保管場所A(図4(a))又は他面側の保管場所B(図4(b))へと選択的に落下させるための切り替え板である。そして、ダンパー38の下辺が、シューター36に軸着されて、油圧シリンダ42によって、切り替え動作がなされるものである。そして、図1に示されるように、隔壁40の一面側の保管場所Aに搬出手段34を横付けすることで、放射能汚染の基準値以下の瓦礫のみを、搬出手段34へと直接的に積み込むことが可能となっている。
【0026】
又、油圧シリンダ42の切り替え動作に当たっては、放射能測定手段18により破砕片100から所定値以上の放射能が検出された場合に、その検知信号をコントローラ32(図3(b)参照)で受ける。そして、コントローラ32から、所定値以上の放射能が検出された破砕片100Rを、確実に隔壁40の他面側の保管場所Bへと落下させるように、適切なタイミングでダンパー38の角度を切り替えるべく、ダンパー38の油圧シリンダ42を作動させる油圧制御手段へと、制御指令を出力するものである。
【0027】
続いて、図5を参照しながら、本発明の実施の形態に係る瓦礫選別システム10を用いた、瓦礫選別手順を説明する。
S100(瓦礫採取工程):被災地にて発生した瓦礫を採取するものであり、バックホウ等適切な土木機械を用いて、瓦礫を採取する工程である。上述の移動式クラッシャを用いる場合には、バケットとブームとを用いて瓦礫を採取する。
S110(瓦礫破砕工程):汚染瓦礫採取工程(S100)で採取された瓦礫を、破砕手段を用いて、後述の放射能測定に適したサイズの破砕片へと破砕する工程である。上述の移動式クラッシャを用いる場合には、バケットによって瓦礫をホッパへと供給し、搭載するクラッシャによって、瓦礫を破砕する。
【0028】
S120(瓦礫選別工程):瓦礫の破砕片を、瓦礫のサイズや材質といった性状に応じて選別する工程である。上述の移動式クラッシャを用いる場合には、瓦礫破砕工程(S110)にて破砕された瓦礫の破砕片を振動篩に供給し(S112)、篩の目よりも細かい、所望サイズの破砕片のみを、供給手段14へと供給する(S124)。一方、篩を通過しない破砕片については、所望サイズ以上の大きさの瓦礫として分別し(S126)、再度、破砕機へと供給する(S128)。
S130(層厚調整工程):運搬手段12上を流れる破砕片100の層厚を調整する工程である。破砕片100は、供給手段14によって運搬手段12に定量供給され(S132)、更に、放射能測定手段18にて放射能測定を行なうに適した層厚へと、運搬手段12上の破砕片100の厚みが調整される。又、破砕片100の層厚を、層厚調整手段16の押さえローラ26よりも下流側に位置する層厚センサ28によって適宜検知し、常に最適の層厚が得られるように、昇降手段30によって押さえローラ26の高さ調整にフィードバックすることで、運搬手段12上を流れる破砕片の層厚を、連続的に調整するものである。
【0029】
S140(放射能測定工程):運搬手段12上を流れる破砕片100の放射能を測定する工程である。運搬手段12上の破砕片100の放射能が、放射能測定手段18を通過する間に、連続的に測定される。放射能測定手段18の測定結果は、コントローラ32へと出力され(S142)、コントローラ32で放射能測定結果が判断される(S144)。
S150(分別工程):所定値以上の放射能が測定された破砕片を、広域処理対象となるものと、管理地域での保管対象となるものとに分別する工程であり、以下の各工程を含むものである。
【0030】
まず、放射能測定結果の判断(S144)の結果、放射能レベルが基準値の範囲内である場合には(S151)、シューター36内を落下する破砕片100の落下経路を、隔壁40の一面側の保管場所A(図4(a))へと落下させるように、コントローラ32から、油圧シリンダ42にダンパー38を切り替える(若しくは維持する)ための、ダンパー制御指令Aを出力する。
そして、ダンパー制御工程(S153)において、コントローラ32から出力されたダンパー制御指令Aに基づき、ダンパー38により破砕片100の落下経路がA側へと切り替えられることで、破砕片100は保管場所Aに保管され、若しくは、図1のごとく保管場所Aに横付けされた搬出手段34に、直接的に積み込まれる(S155)。
【0031】
一方、放射能測定結果の判断(S144)の結果、放射能レベルが基準値を超える場合には(S152)、その放射能、測定時刻、運搬手段12の運搬速度等に基づき、コントローラ32では、後述する分別手段20のダンパー38の切り替えのタイミングを決定する。そして、放射能レベルが基準値を超える破砕片100Rが確実に他面側の保管場所B(図4(b))へと落下するタイミングを計って、シューター36内を落下する破砕片100Rの落下経路を、隔壁40の他面側の保管場所B(図4(b))へと落下させるように、コントローラ32から、油圧シリンダ42にダンパー38を切り替えるための、ダンパー制御指令Bを出力する。
そして、ダンパー制御工程(S154)において、コントローラ32から出力されたダンパー制御指令Bに基づき、ダンパー38により、所定値以上の放射能が検出された破砕片100Rの落下経路をB側へと切り替えられることで、所定値以上の放射能が検出された破砕片100Rは保管場所Bに保管され、若しくは、保管場所Bに横付けされた搬出手段34に、直接的に積み込まれて、管理地域へと搬送される(S156)。
【0032】
さて、上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を奏することが可能となる。
すなわち、本発明の実施の形態に係る瓦礫選別システム10では、様々な大きさ、材質の物が混在している瓦礫を、移動式クラッシャ等の破砕手段を用いて、以後の処理工程に適した大きさへと破砕する。そして、破砕片100のサイズや、必要に応じて材質毎に、破砕片の選別を行なったものを、全量検査の対象とするものである。又、以後の処理工程に適さない所望の大きさを超える瓦礫については、再度、破砕手段に投入すると共に、必要に応じ、以後の処理工程に適さない材質の瓦礫については、以後の工程に回すことなく保管するものである。
【0033】
又、上述のごとく選別された破砕片100を供給手段14によって運搬手段12に連続供給し、運搬手段12によって、間欠的にではなく連続的に破砕片100を運搬するものである。そして、運搬手段12上を流れる破砕片100の層厚を、層厚調整手段16によって連続的に調整した後、放射能測定手段18によって、運搬手段12上を一方向に流れる破砕片100の放射能を連続的に測定することで、放射能の測定精度を高精度かつ安定化させ、瓦礫の全量検査を可能とするものである。その後、運搬手段12の端部に配置された分別手段20により、放射能測定手段18で所定値以上の放射能が検出された破砕片100R以外の破砕片100を、広域処理用の瓦礫として分別するものである。
【0034】
又、本発明の実施の形態に係る瓦礫選別システム10は、層厚調整手段16において、運搬手段12であるベルトコンベヤ上を流れる破砕片100の層厚を連続的に調整するために、運搬手段12上に配置された押さえローラ26を昇降手段30によって昇降させて、破砕片100の層厚を調整するものである。押さえローラ26は運搬手段12の幅と同等又はそれよりも長い円筒状をなし、その回転軸26aが昇降手段30に軸支されて、運搬手段12に対して任意の高さに調整される。そして、運搬手段12上を流れる破砕片100の流れを受け、適宜回転しながら、図3(b)に示されるように、押さえローラ26よりも上方の部分を堰き止めつつ運搬手段12に押し付けることで、破砕片100を均すものである。なお、ここで調整される破砕片100の層厚は、放射能測定手段18にて放射能測定を行なうに適したものである。又、破砕片100の層厚を、運搬手段12の、押さえローラ26よりも下流側に位置する破砕片100の層厚センサ28によって適宜検知する。そして、常に最適の層厚が得られるように、昇降手段30によって押さえローラ26の高さ調整にフィードバックすることで、運搬手段12上を流れる破砕片100の層厚を連続的に調整するものである。
【0035】
又、本発明の実施の形態に係る瓦礫選別システム10は、運搬手段12の端部に配置された分別手段20に、破砕片100をトラック等の搬出手段34へと積み込む、積み込み手段としてのシューター36を備えることで、広域処理対象となる瓦礫の搬送作業を、分別後直ちに行ない、瓦礫の搬出作業の効率化を図ることが可能となる。しかも、シューター36に設けられたダンパー38で、放射能測定手段18により所定値以上の放射能が検出された破砕片100Rを分別するものである。そして、放射能測定手段18で所定値以上の放射能が検出された破砕片100R以外の破砕片100を、広域処理用の瓦礫として分別して、搬出手段34へと積み込むものである。
なお、図1に示されるように、搬出手段34としてトラックを用いる場合には、積載量の上限に達した時点でトラックの交換が必要となることから、シューター36から搬出手段34への破砕片の積み込み作業が間欠的となる。このため、瓦礫選別システム10のコントローラ32(図3(b)参照)は、運搬手段12および運搬手段12に選別された破砕片100を連続供給する供給手段14の動作も、搬出手段34による破砕片の積み込み作業と同期するように、適宜、間欠動作させるものである。
【0036】
しかも、本発明の実施の形態に係る瓦礫選別システム10を構成する各手段が、移動可能となっていることから、瓦礫発生地にて各手段を稼動させて、所定値以上の放射能が検出された破砕片100Rと、それ以外の破砕片100とを、全量検査によって分別することが可能となる。そして、上記各手段が移動可能となるように、例えば、各手段をトレーラの荷台に搭載し、あるいは、各手段を搭載する特殊車両を構成するものである。これらのトレーラや特殊車両には、各手段の大きさに応じて、各々別々に載置され、又は、一台の車両に複数種類(或いは全て)が載置され、瓦礫の発生地にて、上記所定の作業工程が円滑に実施されるように配置されるものである。しかも、本システムを瓦礫発生地にて展開する際に、外部電源を確保することなく、各手段の運転が可能となる。
以上のごとく、本発明の実施の形態によれば、広域処理に供される瓦礫の量を増大させ、被災地復興に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
10:瓦礫選別システム、12:運搬手段、14:供給手段、16:層厚調整手段、18:放射能測定手段、20:分別手段、26:押さえローラ、28:層厚センサ、30:昇降手段、34:搬出手段、36:シューター、38:ダンパー、100:破砕片、100R:所定値以上の放射能が検出された破砕片
図1
図2
図3
図4
図5