(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記スイッチ本体は、ハウジングと、このハウジングに収容され、複数の電極が形成された基板と、この基板上の各電極を水密的にシールするゴムパッキンと、上記ストローク間隔よりも狭い隙間を空けて上記各電極と対向するように上記ゴムパッキンに設けられ、上記押圧部が押圧されると上記各電極に接触して各電極間を導通させる導電面と、を有する請求項1記載の水栓装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水栓装置に適用するために要求される全ての条件を満足する電気スイッチは、市場に存在しない。
まず、水栓装置は、キッチン、浴室、洗面所等の水回りにおいて使用されるものであるため、これに使用する電気スイッチには電気接点部等に水が侵入するのを防止する防水性能が要求される。また、水栓装置において電気スイッチを配置する位置によっては、電気スイッチが完全に水没した状態で使用されることも想定されるため、電気製品において通常要求される防水性能よりも高いレベルの防水性が電気スイッチに要求される。
【0006】
さらに、キッチン、浴室等での水栓装置の使用を想定すると、洗剤や石けん等の付着した手指で操作ボタンが操作されることが多く、指先による繊細な操作は困難である。また、場合によっては、手の甲や、肘で操作ボタンが操作されることも考えられる。このため、操作ボタンには、或る程度大きなストロークを有することが必要とされると共に、操作を行ったとき使用者に適度なクリック感を与えることが必要になる。例えば、携帯電話に使用されている操作ボタンのストロークは0.3mm程度であり、この程度のストロークでは操作ボタンが操作されたことが、その感触により使用者に十分に認識されず、水栓装置としては使用感の悪いものとなる。操作ボタンに適度なストロークがあり、操作時にクリック感が与えられると、手の甲や肘で操作を行った場合でさえも、使用者は操作ボタンが操作されたことをその感触から確実に認識することができ、水栓装置は使用感の優れたものとなる。
【0007】
加えて、水栓装置に使用される電気スイッチには、極めて高度な耐久性が要求される。水栓装置がキッチンで使用された場合、1回の炊事で100回程度吐水操作が行われることが想定される。従って、操作ボタンは、吐水開始時と止水時に操作されるため、1回の炊事で200回、1日3回の炊事で合計600回操作されることになる。さらに、水栓装置に要求される耐用年数は数十年であり、この間、修理や部品交換のメンテンナンスを行うことなく水栓装置を使用できることが望ましい。従って、水栓装置に使用される電気スイッチには、一般的な電気製品において要求される耐久性よりも、極めて高度な耐久性が要求される。例えば、携帯電話に使用されている一般的な操作ボタンでは、単一のボタンだけが繰り返し操作されることはなく、また、想定される耐用年数も短いため、水栓装置に使用される電気スイッチほどの耐久性は、要求されていない。
【0008】
特開2003−263257号広報(特許文献1)には、キーボード入力装置が記載されている。このキーボード入力装置は、複数の固定接点が形成された回路基板と、これらの固定接点を取り囲むように回路基板上に取り付けられたラバースプリングと、を備えている。ラバースプリングは、内部が空洞になったカップ型に形成されており、その内側の固定接点と対向する位置には可動接点が形成されている。キーボードのキー(操作ボタン)が押圧操作されると、ラバースプリングが弾性変形され、可動接点が各固定接点と接触することにより、各固定接点間が導通される。このラバースプリングの変形ストロークにより、操作ボタンには比較的大きなストロークが与えられている。また、ラバースプリングの下端部は、基板上に水密的に接着されており、キーボードの上から水等がこぼれた場合でも、接点部に水が侵入しないようになっている。
【0009】
しかしながら、このキーボード入力装置においては、回路基板の、ラバースプリングが接着された部分に通気穴が形成されているため、キーボードの上から水がかかった場合には電気接点を保護することができるものの、キーボードが水没された場合には、到底、接点を保護することができない。このキーボード入力装置において、回路基板に設けられた通気穴は、ラバースプリングが押圧された際に、ラバースプリング内の空気を外部に逃がすためのものである。このように、押圧操作に或る程度大きなストロークを与える場合には、空気を逃がすための通気穴が必要となる。この通気穴のない状態で、スイッチに大きなストロークを与えると、ラバースプリング内の空気を大幅に圧縮させる必要があるので、押圧操作に要する操作力が大きくなり、操作感の悪いものとなる。
【0010】
また、通気穴を備えることなく、比較的大きなストロークを有する電気スイッチも市場には存在するが、このような電気スイッチでは防水性能は得られるものの、押圧操作の度にラバースプリングに内圧が作用し、この圧力がスイッチの耐久性を低下させる。このため、現在市場から入手できるストロークの大きな、防水型の電気スイッチは、何れも押圧操作の耐久性が10万回程度であり、水栓装置に適用する電気スイッチとして、十分なものではない。さらに、ラバースプリングの代わりに、金属製のダイヤフラムを備えた電気スイッチも市場には存在するが、このタイプの電気スイッチでは、一般に大きなストロークを得ることが難しく、また、耐久性もゴム製のものよりも劣っている。
【0011】
従って、本発明は、水栓装置に要求される防水性、ストローク、及び耐久性を備えた電気スイッチを有する水栓装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明は、電気スイッチの押圧操作に基づいて、吐水状態と止水状態が切り換えられる水栓装置であって、水を吐出させる吐水部と、この吐水部からの吐水・止水を切り換える電磁弁と、使用者によって押圧操作される操作ボタンと、この操作ボタンの押圧操作に基づいて、電磁弁を開閉させるためのスイッチアセンブリと、を有し、スイッチアセンブリは、電気的接点を切り換えるための押圧部を備え、電気的接点が防水されたスイッチ本体と、押圧部との間に所定のストローク間隔を形成する空間を空けて配置され、操作ボタンをストローク間隔に亘って押し込むことにより押圧部を押圧する押圧操作にクリック感を与えるクリックバネと、を有し、押圧部とクリックバネとの間のストローク間隔を形成する空間は大気と連通されていることを特徴としている。
【0013】
このように構成された本発明においては、スイッチアセンブリは、操作ボタンの押圧操作に基づいて電磁弁を開閉させ、吐水部からの吐水・止水を切り換える。スイッチアセンブリは、電気的接点が防水されたスイッチ本体と、スイッチ本体の押圧部との間にストローク間隔を空けて配置されたクリックバネを備えている。操作ボタンがストローク間隔に亘って押し込まれると、クリック感が与えられると共に、押圧部が押圧され、電気的接点が切り換えられる。また、押圧部とクリックバネとの間のストローク間隔を形成する空間は大気と連通されている。
【0014】
このように構成された本発明によれば、電気的接点を切り換えるための押圧部が、クリックバネとの間に所定のストローク間隔を空けて配置されている。このため、押圧部自体のストロークが短く耐久性の高いスイッチ本体を使用した場合においても、ストローク間隔を適切に設定しておくことにより、操作ボタンに十分大きなストロークを与えることができる。また、押圧部とクリックバネとの間のストローク間隔を形成する空間が大気と連通されているので、操作ボタンが押圧された際に、この空間内の空気が圧縮されることはない。このため、操作ボタンの十分大きなストロークを得ながら、必要な操作力が過大になることがなく、また、クリックバネに圧縮された空気の圧力が作用することによる耐久性の低下もない。さらに、スイッチアセンブリに備えられたスイッチ本体の電気的接点は防水されているので、押圧部とクリックバネとの間の空間に水が侵入した場合でも、電気的接点に水が侵入することはない。これにより、防水性、ストローク、及び耐久性を兼ね備えた電気スイッチを有する水栓装置を得ることができる。
【0015】
なお、スイッチ本体が防水されているため、ストロークの大きなクリックバネが損傷された場合でも、電気的接点は水から保護されるので、水栓装置としての基本的機能は維持される。また、スイッチ本体とは別にクリックバネが備えられているため、クリックバネが損傷された場合には、容易にこれを交換することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、スイッチ本体は、ハウジングと、このハウジングに収容され、複数の電極が形成された基板と、この基板上の各電極を水密的にシールするゴムパッキンと、ストローク間隔よりも狭い隙間を空けて各電極と対向するようにゴムパッキンに設けられ、押圧部が押圧されると各電極に接触して各電極間を導通させる導電面と、を有する。
【0017】
このように構成された本発明によれば、基板上の各電極を水密的にシールするゴムパッキンに、各電極間を導通させる導電面が設けられているので、スイッチ本体を作動させる操作力はゴムパッキンを弾性変形させる力のみであり、操作力を低減することができる。また、ストローク間隔が各電極と導電面の間の隙間よりも広く構成されているので、ゴムパッキンのストロークを小さく設定しながら、その2倍よりも長いストロークを操作ボタンに与えることができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、スイッチ本体は、更に、基板に接続され、ハウジングに設けられた貫通穴を通って外部に引き出されるリード線を有し、貫通穴には
スイッチ本体の水密性を確保する樹脂が充填されている。
このように構成された本発明によれば、ハウジングに基板を配置した後、貫通穴に樹脂を充填するだけで、確実に防水を行うことができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、クリックバネは、ゴム製である。
このように構成された本発明によれば、クリックバネがゴム製であるため、金属製のクリックバネと比較して、操作感を適切なものとすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、十分な防水性、ストローク、及び耐久性を備えた電気スイッチを有する水栓装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態による水栓装置を説明する。
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態の水栓装置の全体構成を説明する。
図1は、本発明の実施形態による水栓装置全体を示す斜視図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態による水栓装置1はキッチン用の水栓装置であって、水栓本体2と、この水栓本体2の先端部から引き出し可能に取り付けられたヘッド部4と、水栓本体2に内蔵されたシングルバルブ6と、給水用電磁弁8と、給湯用電磁弁10と、給水用電磁弁8及び給湯用電磁弁10を制御する制御部12と、を有する。
【0024】
水栓本体2は、キッチンカウンター(図示せず)に設置されるように構成されており、
図1において水栓本体2よりも下の部分はキッチンカウンターの下側に収納される。水栓本体2の先端部にはヘッド部4が支持されており、ヘッド部4は、水栓本体2から引き出してハンドシャワーヘッドのように使用することができる。ヘッド部4の先端には、操作ボタン4aが設けられており、この操作ボタン4aを押圧操作する毎に、止水状態と吐水状態が切り換えられるようになっている。また、操作ボタン4aを回転操作することにより、ヘッド部4に設けられた第1吐水部4bからの直流吐水と、第2吐水部4cからのシャワー吐水を切り換えることができるようになっている。
【0025】
さらに、水栓本体2には、給水ホース8aと、給湯ホース10aが接続されており、水及び湯を水栓本体2内に供給するようになっている。給水ホース8aは給水用電磁弁8を介して建物に配設された給水配管(図示せず)に接続されている。また、給湯ホース10aは給湯用電磁弁10を介して給湯配管(図示せず)に接続されている。給水ホース8a及び給湯ホース10aにより水栓本体2に導かれた水及び湯は、水栓本体2に内蔵されたシングルバルブ6により所望の割合で混合され、同時に所望の流量にされる。シングルバルブ6から吐出される混合水の温度および流量は、温度設定レバー6aにより設定できるようになっている。シングルバルブ6から吐出された混合水は、二次側管路14を経てキッチンカウンター(図示せず)の下側に下り、これに接続されたシャワーホース16を通って再び水栓本体2の内部に導かれる。シャワーホース16の先端はヘッド部4の基端部に接続されており、導かれた混合水はヘッド部4の第1吐水部4b又は第2吐水部4cから吐出される。
【0026】
また、シャワーホース16には、
図1に一点鎖線で示すように、リード線18が内蔵されており、操作ボタン4aの押圧操作に基づく電気信号が、制御部12に導かれるようになっている。制御部12は、操作ボタン4aからの電気信号に基づいて、給水用電磁弁8及び給湯用電磁弁10を開閉制御するように構成されている。本実施形態においては、制御部12は、止水状態において操作ボタン4aの操作信号が入力されると、給水用電磁弁8及び給湯用電磁弁10に電気信号を送ってこれらを開弁させるように構成されている。また、吐水状態において操作ボタン4aの操作信号が入力されると、制御部12は給水用電磁弁8及び給湯用電磁弁10に電気信号を送ってこれらを閉弁させる。
【0027】
次に、
図2乃至
図5を新たに参照して、本実施形態の水栓装置1におけるヘッド部4の構成を詳細に説明する。
図2はヘッド部4の全断面図である。
図3はヘッド部4に内蔵されているスイッチアセンブリの全断面図である。
図4はスイッチアセンブリの分解斜視図である。
図5はスイッチアセンブリを構成する部品を分解して示した断面図である。
【0028】
図2に示すように、ヘッド部4は概ね円柱形に構成され、その先端部には、概ね円柱形の操作ボタン4aが設けられ、基端部にはシャワーホース16が接続されている。また、ヘッド部4の先端部側には、直流吐水用の概ね円形の第1吐水部4bが設けられ、第1吐水部4bの基端部側に隣接して、概ね長円形のシャワー吐水用の第2吐水部4cが設けられている。
【0029】
また、ヘッド部4は、概ね円筒形のヘッド部本体20と、このヘッド部本体20の先端側に配置されたスイッチアセンブリ22と、このスイッチアセンブリ22の基端側に配置されたカム機構24と、このカム機構24により、ヘッド部4の軸線方向に移動される切換弁体26と、を有する。また、ヘッド部4には、シャワーホース16を介して供給された混合水を、第1吐水部4b又は第2吐水部4cに導く通水路形成部材28が内蔵されている。なお、本実施形態においては、通水路形成部材28は、水密的に結合された複数の部材から構成されている。
【0030】
操作ボタン4aは、概ね円柱形に構成され、ヘッド部本体20の先端部側に、ヘッド部本体20と同心円をなすように配置されている。この操作ボタン4aをヘッド部4の長手方向に押圧することにより、内蔵されたスイッチアセンブリ22の電気接点が開閉される。また、操作ボタン4aを、その中心軸線を中心に回転操作すると、カム機構24の作用により、切換弁体26が軸線方向に移動されるようになっている。
【0031】
カム機構24は、操作ボタン4aの回転を、切換弁体26の軸線方向移動に変換するように構成されている。
切換弁体26は、細長い軸部26aと、この軸部26aの一端部に設けられた円板状の弁体部26bと、を有する。切換弁体26の軸部26aは、通水路形成部材28の内部に、軸線方向に摺動可能に支持されている。切換弁体26が軸線方向に移動されることにより、弁体部26bが、通水路形成部材28に形成された第1シート面28a又は第2シート面28bに着座して流路を切り換えるようになっている。弁体部26bが第1シート面28aに着座されている場合には、シャワーホース16を介して供給された混合水は、第2シート面28bによって形成される弁穴を通って第1吐水部4bから吐出される(
図2における破線の矢印)。弁体部26bが第2シート面28bに着座されている場合には、供給された混合水は、第1シート面28aによって形成される弁穴を通って第2吐水部4cから吐出される(
図2における一点鎖線の矢印)。
【0032】
なお、本発明は、任意の流路切り換え機構を備えた水栓装置に適用することができる。また、流路切り換え機構を備えていない水栓装置に、本発明を適用することもできる。
【0033】
次に、スイッチアセンブリ22の構成を説明する。
図3乃至
図5に示すように、スイッチアセンブリ22は、第1ハウジング30と、この第1ハウジング30に収納された基板32と、この基板32を覆うように取り付けられるゴムパッキン34と、第1ハウジング30に取り付けられる第2ハウジング36と、この第2ハウジング36に取り付けられるクリックバネ38と、クリックバネ38の中心部に取り付けられるキャップ40と、を有する。なお、本実施形態において、第1ハウジング30、基板32、ゴムパッキン34、及び第2ハウジング36は、電気的接点が防水されたスイッチ本体を構成する。
【0034】
第1ハウジング30は、概ね円柱形の部材であり、一方の端面には基板32を収納するための凹部30aが形成されている。また、第1ハウジング30には、凹部30aと他方の端面を連通させる貫通穴30bが形成されている。基板32に接続されているリード線18は、貫通穴30bを通ってスイッチアセンブリ22の外部に引き出される。貫通穴30bは、リード線18が引き出された後、樹脂により充填(ポッティング)され、貫通穴30bの水密性が確保される。さらに、第1ハウジング30の外周部には雄ねじ山30cが形成されており、この雄ねじ山30cにより第1ハウジング30と第2ハウジング36が螺合される。
【0035】
基板32は、円形に構成され、一方の面には2本のリード線18がハンダ付けされている。また、基板32の他方の表面には、導電体のパターンにより2つの電極32a(
図4)が形成されている。これら2つの電極32aは、2本のリード線18に夫々電気的に接続されている。
【0036】
ゴムパッキン34は、概ね円板状に形成されたゴム製の部材である。このゴムパッキン34は、第1ハウジング30の凹部30aに水密的に受け入れられ、第1ハウジング30内部への水の侵入を阻止するように構成されている。また、ゴムパッキン34の内周側には、基板32を受け入れるための円環状の溝34a(
図5)が形成されている。基板32は溝34aに受け入れられることにより、ゴムパッキン34の内部に固定される。
【0037】
さらに、ゴムパッキン34の中央には、円形の押圧部34bが形成されている。押圧部34bの周囲には肉薄のフランジ部34cが形成され、押圧部34bは、フランジ部34cにより、ゴムパッキン34の外周部と連結されている。また、押圧部34bの、基板32と対向している側の面には導電面34dが設けられている。押圧部34bが押圧されるとフランジ部34cが弾性変形され、これにより、押圧部34bが基板32に向けて移動される。押圧部34bに設けられた導電面34dが、基板32に形成された2つの電極32aに接触することにより、2つの電極32aの間が導通される。即ち、本実施形態においては、2つの電極32aと導電面34dにより、電気的接点が構成される。また、押圧力が除去されると、フランジ部34cがもとの形状に復帰され、押圧部34bも初期位置に復帰する。
【0038】
なお、本実施形態においては、押圧部34bが押圧されていない状態における、導電面34dと各電極32aとの間の隙間d(
図3)は、約0.3mmである。このように、ゴムパッキン34の押圧部34bは、ストロークが微少であるため、耐久性が100万回を大きく上回る長寿命のスイッチ本体を容易に構成することができる。
【0039】
第2ハウジング36は、概ね円筒形の部材であり、内部に第1ハウジング30を受け入れるように形成されている。これにより、基板32及びゴムパッキン34は、第1ハウジング30と第2ハウジング36の内部に収容される。第2ハウジング36の内周面には、雌ねじ山36a(
図5)が形成されており、この雌ねじ山36aと第1ハウジング30の雄ねじ山30cが螺合されることにより、第1ハウジング30と第2ハウジング36が一体化される。
【0040】
円筒状の第2ハウジング36の一方の端面には端壁面36bが設けられており、この端壁面36bの中央には中央開口36cが形成されている。この中央開口36cを介して、内部に収容されているゴムパッキン34の押圧部34bが露出している。また、第2ハウジング36には、その外周面から端壁面36bに延びる通気溝36dが形成されている。この通気溝36dは、中央開口36cから半径方向に端壁面36bの外周まで延び、さらに、端壁面36bの外周から第2ハウジング36の外周面上を軸線方向に延びている。
【0041】
クリックバネ38は、概ね円板状のゴム製の部材である。クリックバネ38の一方の面は、第2ハウジング36の端壁面36bを受け入れるように構成されており、クリックバネ38に端壁面36bを嵌め込むことにより、クリックバネ38は第2ハウジング36に取り付けられる。クリックバネ38の中央部には、概ね円柱状の押込み部38aが設けられ、この押込み部38aの周囲に肉薄の弾性バネ部38bが形成されている。これにより、押込み部38aは弾性バネ部38bを介してクリックバネ38の外周部に接続され、押込み部38aに押圧力が作用すると弾性バネ部38bが弾性変形される。弾性バネ部38bは、押込み部38aが押し込まれる際に、クリック感を与えるように構成されている。具体的には、弾性バネ部38bは、押込み部38aに操作力を加えて最大押込位置まで押し込む途中の所定の位置で、発生する反力が一時的に大きくなるように構成されている。これにより、操作力を加えた使用者は、操作ボタン4a(押込み部38a)が所定量以上押し込まれたことを手指の感触(クリック感)で認識することができる。
【0042】
本実施形態においては、ゴムパッキン34の押圧部34bと、クリックバネ38の押込み部38aとの間のストローク間隔D(
図3)は、約0.7mmに構成されている。この押圧部34bと押込み部38aとの間のストローク間隔Dを構成する空間(第2ハウジング36とゴムパッキン34の間の空間)は、第2ハウジング36に設けられた通気溝36dを介して外気と連通されている。このため、ストローク間隔Dを構成する空間内の空気は、押込み部38aが押し込まれた際、通気溝36dを通って外部に流出する。なお、ヘッド部4が水没された場合等、通気溝36dを通って第2ハウジング36の内部に水が侵入することがあるが、ゴムパッキン34と第1ハウジング30との間で水密性が確保されているため、電気接点部への水の侵入は阻止される。
【0043】
キャップ40は、概ねカップ形の部材であり、クリックバネ38の押込み部38aに設けられた凹部に嵌め込まれるように構成されている。操作ボタン4aはキャップ40を介してクリックバネ38に取り付けられる。
【0044】
次に、
図1乃至
図3を参照して、本発明の実施形態による水栓装置1の作用を説明する。
まず、使用者が、止水状態において、ヘッド部4に設けられた操作ボタン4aを押圧操作する。操作ボタン4aが押圧されると、これに取り付けられたキャップ40及びクリックバネ38の押込み部38aが、ゴムパッキン34の押圧部34bに向けて押し込まれる。操作ボタン4aがストローク間隔Dである約0.7mm押し込まれると、押込み部38aの先端が押圧部34bに接触するが、この途中において、弾性バネ部38bの弾性により、押圧操作にクリック感が与えられる。また、ストローク間隔Dを構成する空間内の空気は通気溝36dを通って外部に流出するので、押圧操作により、この空間内の空気が圧縮されることによる操作反力の増大はない。また、弾性バネ部38bに圧縮された空気の圧力が作用することにより、弾性バネ部38bの耐久性が低下されることもない。これにより、本実施形態においては、クリックバネ38に100万回以上の耐久性が確保され、スイッチアセンブリ22全体としての耐久性も100万回以上となる。
【0045】
押込み部38aの先端が押圧部34bに接触すると、押込み部38aは押圧部34bを基板32の電極32aに向けて移動させる。押圧部34bが、押圧部34bと電極32aとの間の隙間dである約0.3mm移動されると、押圧部34bの導電面34dが2つの電極32aと同時に接触し、各電極32a間が導通する。従って、本実施形態においては、操作ボタン4aは、ストローク間隔Dと隙間dの合計、約1mmのストロークを有する。このように、本実施形態においては、スイッチアセンブリ22が大きなストロークを有すると共に、操作ボタン4aを押圧する際にクリック感が与えられるので、指先による繊細な操作でなくとも、使用者は感触により操作ボタン4aが押し込まれたことを確実に認識することができる。操作ボタン4aに対する操作力が除去されると、操作ボタン4aは、クリックバネ38の弾性バネ部38bの復元力により、元の位置に復帰される。また、押圧部34bは、フランジ部34cの復元力により、元の位置に復帰される。
【0046】
制御部12は、2つの電極32a間が導通されたことを、スイッチアセンブリ22から延びるリード線18を介して検知する。制御部12は、止水状態において電極32a間の導通を検知すると、給水用電磁弁8及び給湯用電磁弁10に信号を送り、これらを開弁させる。給水用電磁弁8及び給湯用電磁弁10が開弁されると、給水ホース8a及び給湯ホース10aを介して水及び湯が水栓本体2内に流入し、これらがシングルバルブ6により所定の割合で混合される。シングルバルブ6により混合された混合水は、二次側管路14及びシャワーホース16を介してヘッド部4に導かれる。ヘッド部4に流入した混合水は、通水路形成部材28を通って第1吐水部4b又は第2吐水部4cから吐出される。操作ボタン4aを回転操作することにより、カム機構24を介して切換弁体26が移動され、第1吐水部4bからの直流吐水と、第2吐水部4cからのシャワー吐水が切り換えられる。
【0047】
吐水状態において、使用者が操作ボタン4aを押圧すると、2つの電極32a間が再び導通され、これが制御部12により検知される。制御部12は、吐水状態において電極32a間の導通を検知すると、給水用電磁弁8及び給湯用電磁弁10に信号を送り、これらを閉弁させる。これにより、水栓装置1は止水状態となる。
【0048】
本発明の実施形態の水栓装置1によれば、電気的接点を切り換えるための押圧部34bが、クリックバネ38との間に所定のストローク間隔D(
図3)を空けて配置されている。このため、押圧部34b自体のストローク(隙間d)が短く耐久性の高いスイッチ本体を使用した場合においても、ストローク間隔Dを適切に設定しておくことにより、操作ボタン4aに十分大きなストローク(D+d)を与えることができる。また、押圧部34bとクリックバネ38との間のストローク間隔Dを形成する空間が、通気溝36dを介して大気と連通されているので、操作ボタン4aが押圧された際に、この空間内の空気が圧縮されることはない。このため、操作ボタン4aの十分大きなストロークを得ながら、必要な操作力が過大になることがなく、また、クリックバネ38に圧縮された空気の圧力が作用することによる耐久性の低下もない。さらに、スイッチアセンブリ22に備えられたスイッチ本体が防水されているので、押圧部34bとクリックバネ38との間の空間に水が侵入した場合でも、スイッチ本体内の電気的接点(電極32a及び導電面34d)に水が侵入することはない。これにより、防水性、ストローク、及び耐久性を兼ね備えた電気スイッチを有する水栓装置1を得ることができる。
【0049】
なお、スイッチ本体が防水されているため、ストロークの大きなクリックバネ38が損傷された場合でも、電気的接点は水から保護されるので、水栓装置1としての基本的機能は維持される。また、スイッチ本体とは別にクリックバネ38が備えられているため、クリックバネ38が損傷された場合には、容易にこれを交換することができる。
【0050】
また、本実施形態の水栓装置1によれば、基板32上の各電極32aを水密的にシールするゴムパッキン34に、各電極32a間を導通させる導電面34dが設けられているので、スイッチ本体を作動させる操作力はゴムパッキン34を弾性変形させる力のみであり、操作力を低減することができる。また、ストローク間隔Dが各電極32aと導電面34dの間の隙間dよりも広く構成されているので、ゴムパッキン34のストローク(d)を小さく設定しながら、その2倍よりも長いストローク(D+d)を操作ボタン4aに与えることができる。
【0051】
さらに、本実施形態の水栓装置1によれば、第1ハウジング30の貫通穴30bに基板32が配設された状態では、貫通穴30と基板32により円筒状の空間が形成されるため、第1ハウジング30に基板32を配置した後、貫通穴30bにポッティング加工により樹脂を充填するだけで、スイッチ本体の水密性を確保することができ、容易かつ確実に防水を行うことができる。
【0052】
また、本実施形態の水栓装置1によれば、クリックバネ38がゴム製であるため、金属製のクリックバネと比較して、スイッチ本体の操作力を軽減することができる。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、操作ボタンはヘッド部の先端に設けられていたが、任意の位置に操作ボタンを設けることができる。例えば、操作ボタンは水栓本体に設けることもでき、或いは、キッチンカウンター等、水栓本体とは別の位置に操作ボタンを設けることもできる。また、上述した実施形態においては、本発明をキッチン用の水栓装置に適用していたが、洗面用、浴室用等、任意の水栓装置に本発明を適用することができる。さらに、上述した実施形態においては、本発明を湯水混合水栓に適用していたが、水又は湯の単独の水栓装置に本発明を適用することもできる。