【文献】
吉澤昌純,田谷啓祐,覚醒時の擬似いびき音による閉塞型睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング手法の開発 ,日本臨床生理学会雑誌 ,日本,2012年10月 1日,Vol.42,No.5,P.73
【文献】
榎本崇宏 外7名,いびき音解析による無呼吸の兆候抽出に関する基礎的検討,電子情報通信学会技術研究報告.MBE,MEとバイオサイバネティックス,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2008年 7月,108(126),第11−14頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る判断システムの概要を示す。
【0014】
(判断システム1の概要)
本実施の形態に係る判断システム1は、ベッド300に横たわって覚醒している(すなわち、睡眠状態にない)状態の被験者200、椅子305等に腰を掛けて覚醒している状態の被験者205、又は起立した状態等で覚醒している状態の被験者が発した擬似いびき音を取得する。本実施の形態において擬似いびき音とは、被験者が覚醒している時に、被験者が擬似的に出す軟口蓋振動音である。すなわち、擬似いびき音とは、被験者が覚醒時において、自らの喉の奥を振動させるようにして発する「いびきを模した音」である。
【0015】
具体的に、判断システム1が備えるマイク等の音声取得部100が被験者の口の近傍に配置される。そして、音声取得部100は、被験者が発する擬似いびき音を取得する。判断システム1は、取得した擬似いびき音を解析することで当該擬似いびき音に含まれるフォルマント周波数(例えば、第一フォルマント周波数)を算出する。
【0016】
ここで、フォルマント周波数とは、「声道」で共鳴する周波数である。人間が発する音声は、肺に入っている空気が気道、咽喉及び口腔等を通過することにより発せられる。気道、咽喉及び口腔までの経路を「声道」と称する。そして、人間が音声を発するとき、声道の形状が変化する。声道の形状が変化するとフォルマント周波数も変化する。このフォルマント周波数の変化により、「あ」、「い」、「う」等の音声が声道から外部に発せられる。フォルマント周波数は周波数が低い方から第一フォルマント周波数、第二フォルマント周波数、第三フォルマント周波数・・・と呼ばれる。
【0017】
判断システム1は、算出したフォルマント周波数を予め定められた基準(例えば、予め定められた周波数)と比較し、当該予め定められた基準を満たすか否かを判断する。判断システム1は、当該予め定められた基準に被験者の姿勢及び/又は体格に応じた補正処理を施し、算出したフォルマント周波数が補正後の基準を満たすか否かを判断することもできる。判断システム1は、判断結果をスピーカー等の音声出力部、モニター等の画像出力部、及び/又はプリンター等の印刷部等から出力する。これにより、判断システム1は、判断システム1を利用した被験者及び/又は当該被験者を除く他のユーザーに対し、当該被験者に閉塞型無呼吸症候群の兆候があるか否かについてのスクリーニング結果を提示することができる。
【0018】
なお、判断システム1は、パーソナルコンピューター等の情報端末、スマートフォンや携帯電話等の携帯情報端末、又は被験者の手首等に取付け可能な形状を有する小型情報端末等の形態で実現される。
【0019】
図2は、本発明の実施の形態に係る判断システムの機能構成の一例を示す。
【0020】
本実施の形態に係る判断システム1は、被験者の擬似いびき音を取得する音声取得部100と、音声取得部100が取得した擬似いびき音のデータを音声データとして格納する音声データ格納部105と、音声データ格納部105に格納されている音声データを解析し、フォルマント周波数を算出する解析部110と、予め定められた基準に被験者の姿勢及び/又は体格に応じた補正処理を施す補正部140と、解析部110が算出したフォルマント周波数を予め定められた基準又は補正処理が施された基準と比較し、フォルマント周波数が当該予め定められた基準又は当該補正処理が施された基準を満たすか否かを判断する判断部120とを備える。
【0021】
また、判断システム1は、判断部120が判断に用いる予め定められた基準を格納する基準データ格納部150と、被験者の姿勢及び/又は体格に関する情報を入力する入力部160と、判断部120の判断結果を外部に出力する出力部130とを更に備える。
【0022】
(音声取得部100)
音声取得部100は、覚醒状態(すなわち、睡眠状態ではない状態)の被験者の口近傍に設置され、被験者が発する擬似いびき音を取得する。具体的に、音声取得部100は、予め定められた間隔をおいて被験者が発する擬似いびき音を取得する。音声取得部100は、例えば、マイクである。音声取得部100は取得した擬似いびき音を音声データ格納部105に供給する。
【0023】
なお、擬似いびき音を除く他の音、例えば、被験者が存在する部屋の空調音や電源ノイズ、その他の雑音の影響を低減することを目的として、判断システム1は、複数の音声取得部100を備えることもできる。この場合、一の音声取得部100は被験者の口に向けて設置する。そして、他の音声取得部100は被験者の口とは異なる方向に向けて設置する。
【0024】
(音声データ格納部105)
音声データ格納部105は、音声取得部100が取得した擬似いびき音を音声データとして、被験者を一意に識別する被験者識別子に対応づけて格納する。音声データ格納部105は、被験者識別子に対応づけると共に、複数の音声データを各音声データが取得された時刻に対応づけて格納する。また、音声データ格納部105は、入力部160から入力される被験者の姿勢及び/又は体格を示す情報である被験者情報を、被験者識別子に対応づけて更に格納することができる。被験者の姿勢を示す情報とは、例えば、座位、立位、又は臥位等の姿勢を示す情報である。そして、体格を示す情報とは、例えば、ボディマス指数(BMI指数)である。音声データ格納部105は、解析部110に音声データと被験者情報とを供給する。
【0025】
(解析部110)
解析部110は、音声データ格納部105から受け取った音声データを解析し、擬似いびき音に含まれるフォルマント周波数を算出する。具体的に、解析部110は、線形予測法(例えば、時系列信号解析に用いられる自己回帰モデルの線形予測法)を用いて音声データを周波数解析することにより、第一フォルマント周波数を時系列に沿って算出する。なお、解析部110は、第二フォルマント周波数及び第三フォルマント周波数を算出することもできる。
【0026】
また、解析部110は差動増幅回路を有することもできる。解析部110が差動増幅回路を有する場合、差動増幅回路は、一の音声取得部100が取得した擬似いびき音の音声データと、他の音声取得部100が取得したその他の音(つまり雑音)の雑音データとの同相信号を抑制する。そして、解析部110の差動増幅回路は、音声データと雑音データとの差分を増幅する。これにより、解析部110は、被験者より遠い位置から発せられる雑音を抑制する。解析部110は算出したフォルマント周波数を判断部120に供給する。本実施の形態においては、解析部110は第一フォルマント周波数を判断部120に供給する。
【0027】
(判断部120、基準データ格納部150)
判断部120は、解析部110から受け取った第一フォルマント周波数と基準データ格納部150が格納している予め定められた基準とを比較する。そして、判断部120は、第一フォルマント周波数が当該予め定められた基準を満たすか否かを判断する。例えば、基準データ格納部150は、閉塞型無呼吸症候群の患者が発する擬似いびき音に含まれる第一フォルマント周波数の閾値として「330Hz」の値を格納する。判断部120は、解析部110から受け取った第一フォルマント周波数が「330Hz」を超えるか否かを判断する。
【0028】
第一フォルマント周波数が「330Hz」を超える場合、判断部120は、第一フォルマント周波数が閾値を超えたと判断する。閾値を超えた場合、被験者に閉塞型無呼吸症候群の兆候がある可能性がある。一方、第一フォルマント周波数が「330Hz」以下の場合、判断部120は、第一フォルマント周波数が閾値を超えていないと判断する。閾値を超えない場合、被験者に閉塞型無呼吸症候群の兆候は少ない。判断部120は判断結果を示す情報を出力部130に供給する。
【0029】
なお、閉塞型無呼吸症候群は、被験者の気道が閉塞したり、気道が細くなることが原因の一つと考えられている。本発明者は、閉塞型無呼吸症候群の患者が覚醒時に発する擬似いびき音の第一フォルマント周波数が、覚醒している健常者の擬似いびき音の第一フォルマント周波数よりも高くなることを見出し、この特定の閾値を見出したものである。
【0030】
ここで、判断部120は、上記とは異なる指標で判断することもできる。例えば、判断部120は、音声取得部100が擬似いびき音の取得を開始した時点から予め定められた時間(以下、「予定経過時間」という)が経過する前に「330Hz」を超える第一フォルマント周波数を解析部110が算出した場合、予定経過時間経過前に閾値を超えたと判断する。予定経過時間経過前に閾値を超えた場合、被験者に閉塞型無呼吸症候群の兆候がある可能性がある。この予定経過時間は、例えば、複数の健常者の擬似いびき音に含まれる第一フォルマント周波数を時系列に沿ってそれぞれ算出し、擬似いびき音の取得の開始から各健常者の擬似いびき音に「330Hz」を超える第一フォルマント周波数が含まれるまでの平均時間から設定される。
【0031】
また、判断部120は、解析部110が時系列に沿って算出した第一フォルマント周波数について、横軸に時刻をとり、縦軸に周波数をとったグラフを作成した場合における周波数変動の振幅幅が予め定められた振幅幅(以下、「基準振幅」という)より大きい場合、基準振幅が規定値を超えたと判断する。基準振幅が規定値を超えた場合、被験者に閉塞型無呼吸症候群の兆候がある可能性がある。この基準振幅は、例えば、複数の健常者の擬似いびき音に含まれる第一フォルマント周波数を時系列に沿ってそれぞれ算出した場合における周波数の平均値から設定される。
【0032】
その他にも判断部120は、例えば、解析部110が時系列に沿って算出した第一フォルマント周波数が、予め定められた時間内に予め定められた回数「330Hz」を超えた場合や、解析部110が時系列に沿って算出した複数の第一フォルマント周波数から算出される平均値が予め定められた値以上である場合に、予め定められた基準を超えたと判断する。これら予め定められた基準を超えた場合、被験者に閉塞型無呼吸症候群の兆候がある可能性がある。
【0033】
更に、判断部120は、解析部110が時系列に沿って算出した第一フォルマント周波数の分散度合い、偏り具合、ランダムさ、時刻の経過による第一フォルマント周波数の変化の傾き等を用いて、予め定められた基準を超えたか否かを判断することもできる。
【0034】
(補正部140)
補正部140は、被験者の体格又は姿勢に基づいて、基準データ格納部150が格納している予め定められた基準に補正処理を施す。補正部140は、音声データ格納部105が被験者識別子に対応づけて格納している被験者情報を用いる。補正部140は、被験者情報と予め定められた補正式とを用い、補正処理を実行する。
【0035】
例えば、補正部140は、BMI指数を用いて予め定められた基準に補正処理を施す。一例として、補正部140は、複数の人物それぞれのBMI指数と、当該複数の人物それぞれの擬似いびき音から求められる複数の第一フォルマント周波数の値とから求められる相関式を補正式として用いる。補正部140は、被験者のBMI指数をこの補正式に代入して算出される補正済みの基準値を新たな基準として設定する。なお、BMI指数と第一フォルマント周波数との間には正の相関がある。すなわち、BMIの値が大きくなること応じ、第一フォルマント周波数も高くなる。
【0036】
また、補正部140は、被験者の姿勢に基づいて、予め定められた基準に補正処理を施すこともできる。一例として、補正部140は、人物の複数の姿勢のそれぞれに対応する補正式を用いることができる。すなわち、補正部140は、人物の姿勢が座位、立位、又は臥位等の場合のそれぞれに対応する補正式を用い、予め定められた基準に補正処理を施すことができる。そして、判断部120は、補正部140が補正処理を施した基準を用いて被験者に閉塞型無呼吸症候群の兆候があるか否かを判断する。
【0037】
(出力部130)
出力部130は、判断部120の予め定められた基準を超えたか否かを示す判断結果を外部に出力する。出力部130は、被験者に閉塞型無呼吸症候群の兆候がある場合、被験者に閉塞型無呼吸症候群の兆候がない場合、及び被験者に閉塞型無呼吸症候群の兆候があるか否か判断が困難な場合等の複数の段階に応じ、判断結果を外部に出力する。例えば、出力部130は、判断結果をテキスト、音、及び/又は画像として外部に出力する。
【0038】
図3及び
図4は、本発明の実施の形態に係る判断システムの判断部における判断の概要を示す。
【0039】
まず、
図3を参照する。グラフ400は第一の被験者の擬似いびき音から算出された第一フォルマント周波数を時系列に沿ってプロットしたグラフである。一方、グラフ405は、第一の被験者とは異なる第二の被験者の擬似いびき音から算出された第一フォルマント周波数を時系列に沿ってプロットしたグラフである。
【0040】
グラフ400を参照すると、時刻t1において第一フォルマント周波数が330Hzを超えている。そして、基準データ格納部150が「330Hz」を閾値として格納している場合、判断部120は、予め定められた基準を超えたと判断する。この場合、第一の被験者について閉塞型無呼吸症候群の兆候がある。一方、グラフ405を参照すると、時刻t1より後の時刻t2において第一フォルマント周波数がピークに達しているものの「330Hz」を超えていない。この場合、判断部120は、予め定められた基準を超えていないと判断する。この場合、第二の被験者について閉塞型無呼吸症候群の兆候がない。
【0041】
また、例えば、時刻t1と時刻t2との間に、音声取得部100が擬似いびき音の取得を開始した時点から予め定められた時間である予定経過時間T1が設定されている場合、グラフ400では予定経過時間T1より早い時刻で第一フォルマント周波数が「330Hz」を超えているので、判断部120は、予め定められた基準を超えたと判断する。この場合、第一の被験者について閉塞型無呼吸症候群の兆候がある。なお、予定経過時間は、例えば、以下のようにして決定される。まず、複数の健常者について、繰り返し発せられる擬似いびき音から算出される第一フォルマント周波数を時系列に沿ってモニターし、プロットの開始から「330Hz」に最も近い第一フォルマント周波数が算出されるまでの時間をそれぞれ算出する。そして算出した複数の時間の算術平均値若しくは当該算術平均値から予め定められた時間を差し引いた値を、予定経過時間として設定できる。
【0042】
次に、
図4を参照する。まず、
図4においてグラフ420は健常者の擬似いびき音から算出された第一フォルマント周波数を時系列に沿ってプロットしたグラフである。健常者の場合、第一フォルマント周波数は低周波数で安定的に推移する。
【0043】
一方、グラフ410は、第三の被験者の擬似いびき音から算出された第一フォルマント周波数を時系列に沿ってプロットしたグラフである。第三の被験者の場合、第一フォルマント周波数は時刻t3において「330Hz」を超え、時刻t3の後に再び「330Hz」を下回り、時刻t3より後の時刻である時刻t4において再度「330Hz」を超えている。すなわち、判断部120は、第三の被験者の第一フォルマント周波数が閾値である「330Hz」を複数回超えている(つまり、第一フォルマント周波数の変動が大きい)と判断する。この場合、第三の被験者について閉塞型無呼吸症候群の兆候がある。
【0044】
また、グラフ415は、第四の被験者の擬似いびき音から算出された第一フォルマント周波数を時系列に沿ってプロットしたグラフである。第四の被験者の場合、第一フォルマント周波数は「330Hz」を超えないものの、時刻t3から時刻t3より後の時刻である時刻t5まで、「330Hz」近傍で推移している。すなわち、判断部120は、第四の被験者の第一フォルマント周波数が閾値である「330Hz」の近傍(すなわち、「330Hz」から予め定められた周波数の範囲内)で予め定められた時間推移していると判断する。この場合、第四の被験者について閉塞型無呼吸症候群の兆候がある。
【0045】
(判断方法、及び判断システム用のプログラムの処理の概要)
図5は、本実施の形態に係る判断システムの判断の処理の流れの一部の一例を示す。
【0046】
まず、音声取得部100は、被験者が予め定められた時間間隔で発する擬似いびき音を取得する(ステップ10。以下、ステップを「S」と表す。)。音声取得部100は取得した擬似いびき音の音声データを音声データ格納部105に格納する。続いて、解析部110は、音声データ格納部105に格納されている擬似いびき音の音声データを解析し、擬似いびき音に含まれるフォルマント周波数(例えば、第一フォルマント周波数)を算出する(S20)。
【0047】
次に、判断部120は、基準データ格納部150に予め格納されている予め定められた基準と、解析部110が算出したフォルマント周波数とを比較する(S30)。そして、判断部120は、解析部110が算出したフォルマント周波数が当該予め定められた基準を満たすか否か若しくは当該予め定められた基準を超えるか否かを判断する(S40)。判断部120は、判断結果を出力部130に供給する。出力部130は、判断部120から受け取った判断結果を外部に出力する(S50)。
【0048】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る判断システム1は、覚醒している状態の被験者が発する擬似いびき音を解析することで当該被験者に閉塞型無呼吸症候群の兆候があるか否かを簡易的に判断する情報を提示できるので、例えば、健康診断等において短時間で閉塞型無呼吸症候群の可能性がある被験者をスクリーニングできる。これにより、判断システム1は、被験者に対して閉塞型無呼吸症候群に対する意識を高め、精密検査への動機を高めることができる。
【0049】
また、判断システム1は、被験者の口近傍に音声取得部100を設置して被験者の擬似いびき音を取得するので、被験者に様々なセンサーを取り付ける場合に比べ、被験者に大きな負担を与えることがない。そして、判断システム1においては、被験者は覚醒状態であればよいので、睡眠中の被験者がいびきをかくまで待機する必要がなく、短時間で兆候を判断できる。
【0050】
更に、判断システム1は、被験者の姿勢や体格に応じてフォルマント周波数を補正し、補正したフォルマント周波数を用いて被験者に閉塞型無呼吸症候群の兆候があるか否かを判断するので、取得した擬似いびき音をそのまま解析する場合に比べ、精度よく兆候を判断できる。
【0051】
図6は、本発明の実施の形態に係る判断システムのハードウェア構成の一例を示す。
【0052】
本実施の形態に係る判断システム1は、CPU1500と、グラフィックコントローラ1520と、RandomAccessMemory(RAM)、Read−OnlyMemory(ROM)及び/又はフラッシュROM等のメモリ1530と、データを記憶する記憶装置1540と、記録媒体からデータを読み込み及び/又は記録媒体にデータを書き込む読込み/書込み装置1545と、データを入力する入力装置1560と、外部の通信機器とデータを送受信する通信インターフェース1550と、CPU1500とグラフィックコントローラ1520とメモリ1530と記憶装置1540と読込み/書込み装置1545と入力装置1560と通信インターフェース1550とを互いに通信可能に接続するチップセット1510とを備える。
【0053】
チップセット1510は、メモリ1530と、メモリ1530にアクセスして所定の処理を実行するCPU1500と、外部の表示装置の表示を制御するグラフィックコントローラ1520とを相互に接続することにより、各構成要素間のデータの受渡しを実行する。CPU1500は、メモリ1530に格納されたプログラムに基づいて動作して、各構成要素を制御する。グラフィックコントローラ1520は、メモリ1530内に設けられたバッファ上に一時的に蓄えられた画像データに基づいて、画像を所定の表示装置に表示させる。
【0054】
また、チップセット1510は、記憶装置1540と、読込み/書込み装置1545と、通信インターフェース1550とを接続する。記憶装置1540は、判断システム1のCPU1500が使用するプログラムとデータとを格納する。記憶装置1540は、例えば、フラッシュメモリである。読込み/書込み装置1545は、プログラム及び/又はデータを記憶している記憶媒体からプログラム及び/又はデータを読み取って、読み取ったプログラム及び/又はデータを記憶装置1540に格納する。読込み/書込み装置1545は、例えば、通信インターフェース1550を介し、インターネット上のサーバから所定のプログラムを取得して、取得したプログラムを記憶装置1540に格納する。
【0055】
通信インターフェース1550は、通信ネットワークを介して外部の装置とデータの送受信を実行する。また、通信インターフェース1550は、通信ネットワークが不通の場合、通信ネットワークを介さずに外部の装置とデータの送受信を実行することもできる。そして、タブレット、マイク等の入力装置1560は、所定のインターフェースを介してチップセット1510と接続する。
【0056】
記憶装置1540に格納される判断システム1のプログラムは、インターネット等の通信ネットワーク、又は磁気記録媒体、光学記録媒体等の記録媒体を介して記憶装置1540に提供される。そして、記憶装置1540に格納された判断システム1用のプログラムは、CPU1500により実行される。
【0057】
本実施の形態に係る判断システム1により実行される判断システム用のプログラムは、CPU1500に働きかけて、判断システム1を、
図1から
図5にかけて説明した音声取得部100、音声データ格納部105、解析部110、判断部120、出力部130、補正部140、基準データ格納部150、及び入力部160として機能させる。
【0058】
図7は、4人の被験者の擬似いびき音に含まれる第一フォルマント周波数の時間による変化を示す。
【0059】
まず、起立した状態の各被験者に擬似いびき音を発せさせ、起立した状態における第一フォルマント周波数を算出した。
図7においては「立っている状態」の軸上(すなわち、横軸で−5分の軸上)にプロットしている。次に、各被験者に仰向けで横になってもらい、予め定められた間隔(すなわち、5分ごと)で擬似いびき音を発せさせ、発せられた擬似いびき音を取得した。擬似いびき音の取得は30分間継続した(ただし、被験者Aについては25分間継続した)。そして、取得した擬似いびき音を解析することで、当該擬似いびき音に含まれる第一フォルマント周波数を算出し、
図7に示すように横軸に時間、縦軸に第一フォルマント周波数の軸を設けてプロットした。
【0061】
被験者A:体格が標準(BMI値で標準の範囲)、無呼吸の兆候なし。
被験者B:体格が肥満(BMI値で肥満の範囲)、睡眠時にいびきをかかない。
被験者C:体格が肥満(BMI値で肥満の範囲)、首回りが太い。
被験者D:体格が標準(BMI値で標準の範囲)、仰向け就寝時に無呼吸の兆候あり。
【0062】
なお、各被験者の擬似いびき音の第一フォルマント周波数の時間毎の値を表1に示す。
【0064】
被験者Aのプロット500を参照すると、「立っている状態」での擬似いびき音の第一フォルマント周波数は194Hzであり、仰向けで寝た状態における擬似いびき音の第一フォルマント周波数は173Hz以下で略一定の周波数で推移した。すなわち、全ての第一フォルマント周波数が330Hz以下であり、かつ、仰向けで寝た状態における第一フォルマント周波数も「立っている状態」での第一フォルマント周波数より低い周波数で安定的に推移した。したがって、被験者Aが閉塞型無呼吸症候群である可能性は低く、判断システム1は被験者Aについて閉塞型無呼吸症候群である可能性が低い旨を判断結果として出力できる。
【0065】
被験者Bのプロット505を参照すると、「立っている状態」での擬似いびき音の第一フォルマント周波数は177Hzであり、仰向けで寝た状態における擬似いびき音の第一フォルマント周波数は189Hz以下で略一定の周波数で推移した。すなわち、全ての第一フォルマント周波数が330Hz以下であり、かつ、仰向けで寝た状態における第一フォルマント周波数も測定開始から20分後の1点(189Hz)を除き、「立っている状態」での第一フォルマント周波数より低い周波数で安定的に推移した。したがって、被験者Bが閉塞型無呼吸症候群である可能性は低く、判断システム1は被験者Bについて閉塞型無呼吸症候群である可能性が低い旨を判断結果として出力できる。
【0066】
被験者Cのプロット510を参照すると、「立っている状態」での擬似いびき音の第一フォルマント周波数は302Hzであり、仰向けで寝た状態における擬似いびき音の第一フォルマント周波数は測定開始から10分後で347Hz、20分後で341Hz、30分後で338Hzであり、330Hzを超える場合があった。また、被験者Cの場合、第一フォルマント周波数が330Hzを超える場合と超えない場合とが交互に観測され、第一フォルマント周波数が大きく変動した。したがって、被験者Cは閉塞型無呼吸症候群である可能性があり、判断システム1は被験者Cについて閉塞型無呼吸症候群である可能性がある旨を判断結果として出力できる。
【0067】
被験者Dのプロット515を参照すると、「立っている状態」での擬似いびき音の第一フォルマント周波数は194Hzであり、仰向けで寝た状態における擬似いびき音の第一フォルマント周波数は221Hz以上で略一定の周波数で推移した。すなわち、全ての第一フォルマント周波数が330Hz以下であるものの、仰向けで寝た状態における第一フォルマント周波数が「立っている状態」での第一フォルマント周波数より高い周波数で推移した。したがって、被験者Dが閉塞型無呼吸症候群である可能性があり、判断システム1は被験者Dについて閉塞型無呼吸症候群である可能性がある程度ある旨を判断結果として出力できる。
【0068】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せのすべてが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。