(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記貫通孔は、前記折曲状延在部における湾曲形状の頂部から前記弾性ビーム状部材の長手方向に沿って延出する長孔形状をなすように形成されていることを特徴とする請求項1記載のスイッチ付同軸コネクタ。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯電話などのような電子機器又は電気機器にスイッチ付同軸コネクタが用いられている。このスイッチ付同軸コネクタは、例えば、機器内に設けられた高周波回路等の各種電子回路の状態や性能を検査するための小型回路検査スイッチなどとして用いられるものであるが、下記の特許文献1及び2等に開示された回路検査スイッチは、機器本体の電子回路を分断するように回路基板上に実装されたスイッチ付同軸コネクタからなるものであって、当該スイッチ付同軸コネクタに設けられた相手挿入穴を通して、相手コネクタとして検査用プラグコネクタのプローブ(検査針)が、上方側から内部に挿入される構成になされている。
【0003】
このようなスイッチ付同軸コネクタでは、絶縁ハウジングの外方側に、グランド接続用の導電性シェルが取り付けられており、その導電性シェルから一体的に突出する複数の基板接続部が、図示を省略した配線基板上の導電路に半田接合されることにより実装が行われて使用される構成になされている。このときの前記絶縁ハウジングの内部には、信号伝送用の可動コンタクトと固定コンタクトとからなるコンタクト対が取り付けられていて、それら一対の可動コンタクト及び固定コンタクトが、機器本体に設けられた電子回路(図示省略)の一方側及び他方側にそれぞれ接続されている。
【0004】
そして、そのスイッチ付同軸コネクタに対して、上方側から挿入された検査用プラグコネクタのプローブ(検査針)の先端部分が、略水平面内で揺動する前記可動コンタクトの自由端部分を押し開くように圧接し、それによって可動コンタクトが揺動して固定コンタクトから離間されて本来の電子回路が分断される。また、それと同時に、可動コンタクト1がプローブの下端部分に接触し、それによって機器本体の他の電子回路にプローブが導通状態となり、当該プローブを通して、電子回路からの電気信号が外部に取り出されることにより、例えば適宜の検査が実行されるようになっている。
【0005】
しかしながら、このような従来のスイッチ付同軸コネクタにおいては、検査用プラグコネクタのプローブ(検査針)が挿入された際、特に繰り返し挿入された場合に、コンタクトに塑性(永久)変形を生じるおそれがあり、電気的な接続性に問題を生じる場合がある。このような塑性変形を防止するため、コンタクトのスパンを長くして弾性を高める手段も考えられているが、単にコンタクトを長くしただけではコネクタ全体の大型化を招来してしまい、近年の小型化や低背化の要請に反することとなる。また、使用雰囲気中に存在する微小ゴミや絶縁物等の塵埃が、検査用プラグコネクタのプローブ(検査針)の挿入穴を通して内部に侵入し、電気的な接続不良を発生させるおそれがあるという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、簡易な構成で、大型化を回避しつつコンタクトの塑性変形を良好に防止するとともに、内部に侵入した塵埃による電気的な接続不良の発生を良好に防止することができるようにしたスイッチ付同軸コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明では、絶縁ハウジングを貫通するコンタクト挿入通路の内部に収容された状態に取り付けられ
て前記コンタクト挿入通路の貫通方向に互いに対向する一対のコンタクトの端部同士が接触するように配置され、前記絶縁ハウジングに設けられた挿入穴を通して挿入された相手コネクタの当接押圧力によって、前記一対のコンタクトのうちの一方のコンタクトが前記当接押圧方向に移動して、他方のコンタクトから離間されるように構成されたものであって、前記一方のコンタクトが、前記絶縁ハウジングに係止された固定基部と、その固定基部から片持ち状をなして一体的に延出する弾性ビーム状部材と、を有するスイッチ付同軸コネクタにおいて、前記一方のコンタクトの弾性ビーム状部材
と前記固定基部との連結部分
に、側面略円弧状
の湾曲形状をなして
前記コンタクト挿入通路の内壁面に向かって突出する折曲状延在部が形成され、
前記折曲状延在部における
側面略円弧状の湾曲形状
は、前記固定基部から、前記コンタクト挿入通路の貫通方向に対して斜め方向に延出した後に、当該湾曲形状の頂点に達してから、前記弾性ビーム状部材に向かって反対の斜め方向に延出する連続的な形状をなすものであって、当該折曲状延在部の頂
点が、前記コンタクト挿入通路の内壁面に対して近接又は接触するように配置されているとともに、
前記弾性ビーム状部材には、前記折曲状延在部の少なくとも一部を含む領域に貫通孔が形成された構成が採用されている。
【0009】
このような構成を有するスイッチ付同軸コネクタによれば、弾性ビーム状部材に設けられた折曲状延在部
が、側面略円弧状をなしてコンタクト挿入通路の内壁面に向かって突出する湾曲形状
をなしている分だけ、当該弾性ビーム状部材の経路が伸びてスパン長が実質的に拡大されることとなり、コンタクトの弾性が十分に確保されてコンタクトの塑性変形の発生が防止される。また、弾性ビーム状部材の弾性変位の根本部分に折曲状延在部が設けられていることから、弾性ビーム状部材の根本部分に発生しようとする弾性変位の応力集中が、折曲状延在部に沿って拡散されることとなり、コンタクト全体の応力分布がより均一化されるように改善される。
【0010】
このとき、折曲状延在部の少なくとも一部に貫通孔が形成されていることから、応力集中の拡散が更に良好に行われ、これによってもコンタクトの塑性変形の発生が防止されるとともに、機外から内部に侵入した塵埃が貫通孔を通して落下され、電気的な導通性が良好に確保される。
【0012】
さらに、このような構成からなるスイッチ付同軸コネクタによれば、コンタクト挿入通路の内壁面とコンタクトとの隙間が、
側面略円弧状をなしてコンタクト挿入通路の内壁面に向かって突出する折曲状延在部の湾曲頂部により狭められるため、コンタクト挿入通路を通して侵入しようとするゴミ等の塵埃が、折曲状延在部で堰き止められて接点部の機能が良好に維持される。
【0013】
また、本発明において、前記貫通孔は、前記折曲状延在部における湾曲形状の頂部から前記弾性ビーム状部材の長手方向に沿って延出する長孔形状をなすように形成されていることが望ましい。
【0014】
このような構成からなるスイッチ付同軸コネクタによれば、折曲状延在部における湾曲形状の頂部から貫通孔が延出しているために、上述した集中応力の拡散が効率的に行われる。
【0015】
また、本発明において、前記固定基部には、当該固定基部の両側に延在する固定延設片が設けられ、それらの両固定延設片が、前記弾性ビーム状部材の長手方向に突出するように形成されていることが望ましい。
【0016】
このような構成からなるスイッチ付同軸コネクタによれば、固定延設片による固定力が固定基部に付加されることとなり、それによって弾性ビーム状部材の全体が、より安定的に保持され、接点部の機能が良好に維持される。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように本発明にかかるスイッチ付同軸コネクタは、絶縁ハウジング内で片持ち状に延出する一方のコンタクトの弾性ビーム状部材に、当該弾性ビーム状部材のスパン長を実質的に拡大する
ように側面略円弧状をなしてコンタクト挿入通路の内壁面に向かって突出する折曲状延在部を、固定基部との連結部分である根本部分に湾曲形状をなすように折り曲げ形成するとともに、その折曲状延在部の少なくとも一部を含む領域に貫通孔を形成し、コンタクトの弾性を高めつつ可撓性を確保してコンタクトの永久変形を防止する一方、機外から内部に侵入した塵埃を貫通穴を通して落下させることにより電気的な導通性を良好に確保し、かつ
側面略円弧状をなす折曲状延在部における湾曲形状の頂部をコンタクト挿入通路の内壁面に近接又は接触させて塵埃の侵入を低減する構成としたものであるから、簡易な構成で、大型化を回避しつつコンタクトの塑性変形を良好に防止するとともに、塵埃による電気的な接続不良の発生を良好に防止することができ、スイッチ付同軸コネクタの信頼性を安価かつ大幅に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる回路検査スイッチを構成しているスイッチ付同軸コネクタの全体構造を正面上方側から見たときの外観斜視説明図である。
【
図2】
図1に示された本発明の一実施形態にかかるスイッチ付同軸コネクタの全体構造を正面下方側から見たときの外観斜視説明図である。
【
図3】
図1及び
図2に示された本発明の一実施形態にかかるスイッチ付同軸コネクタの平面説明図である。
【
図4】
図1乃至
図3に示された本発明の一実施形態にかかるスイッチ付同軸コネクタの正面説明図である。
【
図5】
図1乃至
図4に示された本発明の一実施形態にかかるスイッチ付同軸コネクタの底面説明図である。
【
図6】
図1乃至
図5に示された本発明の一実施形態にかかるスイッチ付同軸コネクタの背面説明図である。
【
図7】
図1乃至
図6に示された本発明の一実施形態にかかるスイッチ付同軸コネクタの側面説明図である。
【
図8】
図4中の VIII−VIII 線に沿った縦断面説明図である。
【
図9】
図1乃至
図8に示された本発明の一実施形態にかかるスイッチ付同軸コネクタに用いられている双方のコンタクト同士の配置関係を正面上方側から見たときの外観斜視説明図である。
【
図10】
図9に示されたコンタクト同士の配置関係を正面下方側から見たときの外観斜視説明図である。
【
図11】
図1乃至
図8に示された本発明の一実施形態にかかるスイッチ付同軸コネクタに用いられている一方のコンタクトを後方側の上方から見たときの外観斜視説明図である。
【
図12】
図11に示された一方のコンタクトを後方側の下方から見たときの外観斜視説明図である。
【
図18】
図1乃至
図8に示された本発明の一実施形態にかかるスイッチ付同軸コネクタに用いられている他方のコンタクトを前方側の上方から見たときの外観斜視説明図である。
【
図19】
図18に示された他方のコンタクトを前方側の下方から見たときの外観斜視説明図である。
【
図25】
図8に相当する位置の断面であって、相手コネクタ(検査用プラグコネクタ)が挿入される直前の状態を表した縦断面説明図である。
【
図26】
図25の状態から相手コネクタ(検査用プラグコネクタ)が下方に挿入されて第1のコンタクトに当接した状態を表した縦断面説明図である。
【
図27】
図26の状態から相手コネクタ(検査用プラグコネクタ)の下方挿入が完了した状態を表した縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかるスイッチ付同軸コネクタを回路検査スイッチとして採用した実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
[回路検査スイッチの全体構造について]
まず、
図1〜
図8に示された本発明の第1の実施形態にかかるスイッチ付同軸コネクタ10は、図示を省略した配線基板上に実装されるものであって、当該スイッチ付同軸コネクタ10に対して、相手コネクタとしての検査用プラグコネクタ20(
図25〜
図27参照)が上方側から嵌合され、又は上方側に向かって抜出される構成になされている。すなわち、そのスイッチ付同軸コネクタ10の上方側に配置された検査用プラグコネクタ20が、作業者の手で把持されながら下方側のスイッチ付同軸コネクタ10に向かって適宜の力で押し込まれ、それによって両コネクタ同士が嵌合された装着状態になされる。また、その両コネクタの装着状態から検査用プラグコネクタ20を把持して上方側に適宜の力で引き上げれば、当該検査用プラグコネクタがスイッチ付同軸コネクタ10から上方に離脱して抜出が行われる。なお、検査用プラグコネクタ20は作業者の手で挿抜されることに限らず、機械によって自動的に挿抜されてもよい。以下、この検査用プラグコネクタの挿入方向及び抜出方向を、それぞれ「下方向」及び「上方向」とする。
【0021】
このような回路検査スイッチの組立体を構成しているスイッチ付同軸コネクタ10は、例えば携帯電話等の電子機器に設けられた電子回路基板(図示省略)上に半田付けにより実装されて使用され、その電子機器に設けられた電子回路を、例えば機器本体側とアンテナ側とを分断又は接続するように配置される。
【0022】
[絶縁ハウジングについて]
図25〜
図27にも示されているように、上述したスイッチ付同軸コネクタ10の本体部を構成している絶縁ハウジング11は、プラスチック等の樹脂材を用いて例えばモールド成形されたものであって、平面略矩形状の板状部材からなるベース枠体部11aと、そのベース枠体部11aの上面中央部分に配置された挿入ガイド部11bとを一体的に有している。
【0023】
挿入ガイド部11bは、上述したベース枠体部11aの上側表面から略円筒状をなして上方に立ち上がるように形成されている。この挿入ガイド部11bの内周側表面は、略すり鉢状をなすように形成されており、当該挿入ガイド部11bの上端縁部分に形成された円環状外縁部から、中心部分に相手挿入穴として設けられたプローブ挿入穴11cの上面側開口部に向かって斜め下方に延在する傾斜ガイド面11dが形成されている。この傾斜ガイド面11dは、前述した検査用プラグコネクタ20に設けられたプローブ20aをプローブ挿入穴11cに向かって案内する機能を有するものであって、検査用プラグコネクタ20のプローブ20aがプローブ挿入穴11cの真上に配置されていない場合であっても、傾斜ガイド面11dの傾斜面上にプローブの先端部が当接されれば、プローブ20aの先端部が傾斜ガイド面11dに沿って下方に滑り落ちるように移動され、プローブ挿入穴11cまで円滑に案内されるようになっている。
【0024】
相手挿入穴として設けられたプローブ挿入穴11cは、上述したように挿入ガイド部11bの上端開口部からベース枠体部11aの中心軸に沿って下方に延出しており、絶縁ハウジング11の正面と背面との間を貫通するように設けられたコンタクト挿入通路11eに対して上方側から開口するように設けられている。このプローブ挿入穴11cは、後述する一方のコンタクト12の頂上に位置するように配置されていて、検査用プラグコネクタ20のプローブ20aを挿入可能とする内径を有する大きさの平面略円形状をなすように形成されている。また、当該プローブ挿入穴11cの上面側開口部の周囲には、上述した挿入ガイド部11bが略同心状をなすように配置されている。
【0025】
[コンタクトについて]
一方、
図9〜
図24にも示されているように、絶縁ハウジング11のベース枠体部11aに設けられたコンタクト挿入通路11eの内部には、信号伝送用の第1コンタクト(一方のコンタクト)12、及び第2コンタクト(他方のコンタクト)13が、上述した検査用プラグコネクタ(相手コネクタ)20の挿入・抜去の方向(上下方向)に対して略直交する水平方向に、互いに対向するように挿入されて取り付けられている。以下、これらの第1コンタクト12及び第2コンタクト13同士が対向する方向を、単に「コンタクト対向方向」と呼び、また、各コンタクト12,13の個々において、相手側に向かっている方向を「前方」、その反対方向を「後方」とする。
【0026】
これらの第1コンタクト12及び第2コンタクト13は、いわゆるコンタクト対を構成するものであって、絶縁ハウジング11の正面・背面の両端面側からコンタクト挿入通路11eの内部に対面するように挿入され、それら両コンタクト12,13同士が互いに弾性的に接触した状態となるように絶縁ハウジング11に取り付けられている。このときの両コンタクト12,13同士の接触状態は、後述するように検査用プラグコネクタ20の嵌合によって解除されて離間状態になされる。
【0027】
ここで、上述した第1コンタクト12は、可撓性を有する弾性ビーム状部材12aを有しているが、第2コンタクト13は、固定状態になされた固定ビーム状部材13aを有している。それらの弾性ビーム状部材12a及び固定ビーム状部材13aは、後述するように絶縁ハウジング11に、ほぼ固定状態に保持された固定基板12b,13bからコンタクト対向方向である前方に向かって片持ち状に延出している。これらの弾性ビーム状部材12a及び固定ビーム状部材13aの具体的な構造については、後段において詳細に説明する。
【0028】
[固定基板について]
固定基板12b,13bは、略水平に延在する板状部材から形成されており、当該固定基板12b,13bの両側縁部、すなわちコンタクト対向方向と直交する板幅方向の両端部からは、絶縁ハウジング11に対する固定部としての固定延設片12c,13cが、両側外方に向かって略水平に延出している。これらの固定延設片12c,13cは、固定基板12b,13bの両側外方において、後述する弾性ビーム状部材12a及び固定ビーム状部材13aに沿うようにして前後方向に略水平に突出するように形成されており、絶縁ハウジング11の壁面に溝状をなすように凹設された固定溝部に対して圧入されている。そして、これら固定延設片12c,13cの絶縁ハウジング11に対する係合力によって第1コンタクト12及び第2コンタクト13の全体の保持が行われている。
【0029】
このように、本実施形態においては、固定基部12b,13bを保持する固定延設片12c,13cが、固定基部12b,13bの両側において弾性ビーム状部材12a及び固定ビーム状部材13aの長手方向に突出するように形成されていることから、当該固定延設片12c,13cの固定力で固定基部12b,13bが強固に支持され、それによって弾性ビーム状部材12a及び固定ビーム状部材13aの後述する弾性変位及び保持性に対する支持力が高められ、弾性ビーム状部材12a及び固定ビーム状部材13aの全体が、より安定的に保持されて接点部の機能が良好に維持されるようになっている。
【0030】
また、各固定延設片12c,13cが固定基板12b,13bと連結されている両部材同士の連結境界部分には、コンタクト対向方向に沿って延在する切欠き部12d,13dが、それぞれ形成されている。それらの切欠き部12d,13dは、平面略U字形状をなす細幅の溝形状をなすように形成されていて、弾性ビーム状部材12a側の切欠き部12dは、当該弾性ビーム状部材12aの根本部分を前方側及び後方側から後方側及び前方側に向かって所定の長さだけ切り込むようにして形成されている。また、固定ビーム状部材13a側の切欠き部13dは、当該弾性ビーム状部材13aの後方側の根本部分を後方側から前方側に向かって所定の長さだけ切り込むようにして形成されている。
【0031】
このうち、弾性ビーム状部材12aに設けられた前方側の切欠き部12dは、片持ち状をなす弾性ビーム状部材12aの根本位置を決定している。すなわち、当該弾性ビーム状部材12aは、前方側に設けられた切欠き部12dの奥側(後端側)溝端P1を起点として、固定基板12bから前方側に向かって片持ち状をなして一体的に延出しており、前方側の切欠き部12dの溝端P1と、後方側の切欠き部12dの溝端P2との間部分Lが、固定基板12bの前後方向における中実肉厚領域になされている。この固定基板12bを構成している中実肉厚領域における前後方向の寸法Lは、上述した検査用プラグコネクタ(相手コネクタ)20の押圧力に抗して第1コンタクト12の全体を良好に保持可能とする剛性を備えるように決定されている。
【0032】
さらに、各固定基板12b,13bにおいては、弾性ビーム状部材12a及び固定ビーム状部材13aが突出している端縁部と反対側の端縁部分、すなわち第1コンタクト12の固定基板12b及び第2コンタクト13の固定基板13bにおける後端縁部分のそれぞれが、下方略直角に折り曲げ形成されており、その略直角下方折り曲げ部分の下端部分から、基板接続部12e,13eが、コネクタ対向方向である前方側に向かって略水平に延出している。そして、これらの基板接続部12e,13eの下面が、上述した配線基板上に設けられた信号伝送用の導電路に半田接合されることで実装が行われるようになっている。
【0033】
[弾性ビーム状部材及び固定ビーム状部材について]
一方、前述した第1コンタクト12の弾性ビーム状部材12a、及び第2コンタクト13の固定ビーム状部材13aは、互いに近接するように突出する片持ち状の帯状バネ部材から形成されている。そのうちの第2コンタクト13の固定ビーム状部材13aは、上述した固定基板13bの前端縁部から、相手側の第1コンタクト12に向かって直接的に延出する構成になされている。これに対して、第1コンタクト12の弾性ビーム状部材12aは、固定基板12bの前端縁部から折曲状延在部12a1が一体的に延出しているとともに、その折曲状延在部12a1から前方側、つまり相手側の第2コンタクト13側に向かって傾斜状延在部12a2が一体的に延出する構成になされている。
【0034】
ここで、前述したように本実施形態における第1コンタクト12の弾性ビーム状部材12aは、前方側の切欠き部12dにおける奥側(後端側)溝端P1を起点として相手側の第2コンタクト13側に片持ち状に延出する構成になされ、その片持ち状部材からなる弾性ビーム状部材12aの根本部分における延出起点である溝端P1の位置が、上述したように固定基板12bが十分な剛性を有するように決定されているが、その溝端P1の位置に対して、弾性ビーム状部材12aが十分な弾性を備える程度のスパン長を有するように構成されている。
【0035】
すなわち、前方側切欠き部12dの溝端P1から片持ち状に延出している弾性ビーム状部材12aは、前方側の切欠き部12dの溝端P1から当該弾性ビーム状部材12aの先端部に至るまでの片持ちのスパン長が、上述した折曲状延在部12a1が設けられていることによって実質的に拡大されるように構成されている。より具体的に説明すると、第1コンタクト12の弾性ビーム状部材12aにおいては、上述した固定基板12bの前端部との連結部分、つまり切欠き部12dの奥側(後端側)溝端P1を起点として片持ち状に延出している根本部分に、折曲状延在部12a1が設けられているとともに、その折曲状延在部12a1の前方側に一体的に連設された直線状延在部12a2が、相手側の第2コンタクト13側に向かって上方に傾斜しながら直線状に延出する構成になされている。
【0036】
そのうちの折曲状延在部12a1は、側面略円弧状をなすように折り曲げ形成されており、固定基板12bの前端部から斜め上方に湾曲形状をなして前方側に延出した後に、当該湾曲形状の頂点P3に達してから、再び斜め下方に連続的な湾曲形状をなして延びており、その折曲状延在部12a1の前端部が、直線状延在部12a2に対して一体的に繋げられている。このような弾性ビーム状部材12aの全体は、固定基板12bとの連結部分である折曲状延在部12a1を根本部分、より具体的には片持ちの起点である切欠き部12dの奥側(後端側)溝端P1又はその近傍を支点とした弾性的な可撓性を有し、前記支点を中心とした上下方向に揺動可能な構成になされている。
【0037】
また、このときの第1コンタクト12は、前述したように絶縁ハウジング11に形成されたコンタクト挿入通路11eの内部に収容されるようにして取り付けられているが、上述した折曲状延在部12a1の湾曲形状の頂点P3は、コンタクト挿入通路11eの内壁面に対して近接又は接触するように配置されている。このように、コンタクト挿入通路11eの内壁面と第1コンタクト12との隙間が、折曲状延在部12a1の湾曲形状の頂点P3により狭められていれば、コンタクト挿入通路11eを通して外部から侵入しようとするゴミ等の塵埃が、折曲状延在部12a1で堰き止められることとなり、その結果、後述する接点部の機能が良好に維持される。
【0038】
また、弾性ビーム状部材12aの先端側部分を構成している直線状延在部12a2は、上述したように折曲状延在部12a1の延出端から前方側上方に向かって略直線状に斜めに延在しているが、当該直線状延在部12a2の延出側の先端部分に接点部が設けられている。この第1コンタクト12の弾性ビーム状部材12aに設けられた接点部は、後述する第2コンタクト13の固定ビーム状部材13aに設けられた接点部に対して下方側から接触されていて、これらの両接点部が、弾性ビーム状部材12aの弾性付勢力によって弾性的な接触・離間が行われるようになっている。
【0039】
このような第1コンタクト12の弾性ビーム状部材12aは、前述したプローブ挿入穴11cの直下位置に延在するように配置されており、当該プローブ挿入穴11cの下端開口部が、弾性ビーム状部材12aの途中部分に上方側から臨む位置関係になされている。そして、特に
図25に示されているように、検査用プラグコネクタ20が上方側に配置されて、当該検査用プラグコネクタ20のプローブ20aがプローブ挿入穴11cを通してコネクタ内部に挿入されると、
図26に示されているように、プローブ挿入穴11cから下方に突出したプローブ20aが、第1コンタクト12の弾性ビーム状部材12aの途中部分に上方側から当接する。さらに、
図27に示されているように、検査用プラグコネクタ20が下方に押し下げられると、第1コンタクト12の弾性ビーム状部材12aに設けられた接点部が、プローブ20aの押圧力によって、第2コンタクト13の弾性ビーム状部材13aに設けられた接点部から下方に離間されるようになっている。
【0040】
このとき、第1コンタクト12の弾性ビーム状部材12aの途中位置、すなわち検査用プラグコネクタ20のプローブ20aが当接する位置には、当該検査用プラグコネクタ20のプローブ20aが上方側から接触する貫通穴12a3がスリット状をなすように形成されている。この貫通穴12a3は、弾性ビーム状部材12aの長手方向に沿って細長状に延在する長穴から形成されており、上述したプローブ挿入穴11cの直下位置から前後方向に延在するように設けられている。
【0041】
このように第1コンタクト12の弾性ビーム状部材12aに貫通穴12a3を設けておけば、検査用プラグコネクタ20が嵌合されていないときに開放状態にあるプローブ挿入穴(相手挿入穴)11cを通して内部に進入するゴミ等の塵埃が、特に弾性ビーム状部材12aの傾斜面に沿って下方に案内されていき、貫通穴12a3を通して下方に落下することにより排出される。その結果、第1コンタクト12や第2コンタクト13の上に塵埃が蓄積することがなくなり、第1コンタクト12と第2コンタクト13との電気的な導通性が塵埃により妨げられるおそれが低減される。
【0042】
また、上述した貫通穴12a3の開口縁部には、検査用プラグコネクタ20のプローブ20aに接触する傾斜面が設けられており、当該貫通穴12a3の開口縁部が、検査用プラグコネクタ20のプローブ20aの先端側部分に形成された湾曲面に対して略接線方向に接触して、当該貫通穴12a3の対角線方向の両側からプローブ20aと多点的に当接されるようになっている。
【0043】
このとき、本実施形態における第1コンタクト12の弾性ビーム状部材12aに設けられた貫通穴12a3は、上述したプローブ挿入穴(相手挿入穴)11cの直下位置から後方側に延びて、上述した折曲状延在部12a1の少なくとも一部を含む領域まで延出している。より具体的には、本実施形態における貫通穴12a3の後端側(
図8の左端側)部分は、直線状延在部12a2が有する湾曲形状の頂点P3に至るまで延びている。このように本実施形態における第1コンタクト12に設けられた貫通穴12a3は、折曲状延在部12a1における頂部P3から弾性ビーム状部材12aの長手方向に沿って延出する長穴形状をなすように形成されている。
【0044】
このような構成を有する第1コンタクト12に対して、第2のコンタクト13の固定ビーム状部材13aは、固定基板13bの前端縁部から相手側の第1コンタクト12に向かって直接的に延出する構成になされているため、剛性を有する部材となっている。すなわち、当該第2コンタクト13の固定ビーム状部材13aは、特に
図18〜
図24に示されているように、固定基板13bの前端縁部から相手側の第1コンタクト12に向かうコネクタ対向方向の前方側に略水平に延在しているが、当該固定ビーム状部材13aの全体は、幅広かつ短長に形成されていることによって揺動しない構成になされている。
【0045】
この第2コンタクト13における固定ビーム状部材13aの前端部分には、下方に向かって突出する接点部13fが設けられており、当該第2コンタクト13の接点部13fが、前述したように第1コンタクト12の固定ビーム状部材12aに設けられた接点部に対して上方側から接触する配置関係になされている。これらの両接点部は、弾性ビーム状部材12aの弾性付勢力によって弾性的な接触が行われ、第1のコンタクト12を構成している弾性ビーム状部材12aの接点部が、第2のコンタクト13を構成している固定ビーム状部材13aの接点部13fに対して下方側から掬い上げるように接触する構成になされている。
【0046】
以上のように本実施形態においては、第1コンタクト12の弾性ビーム状部材12aに折曲状延在部12a1が設けられているため、その折曲状延在部12a1の湾曲形状分だけ弾性ビーム状部材12aの経路が伸びてスパン長が実質的に拡大されており、それによって第1コンタクト12の弾性が十分に確保され、第1コンタクト12の塑性変形の発生が防止される。その結果、コネクタの小型化・低背化が行われた場合であっても、両コンタクト12,13の永久変形が防止される。
【0047】
また、折曲状延在部12a1が、弾性ビーム状部材12aの根本部分に設けられていることから、当該弾性ビーム状部材12aの根本部分に発生しようとする応力集中が、折曲状延在部12a1に向かって拡散されることとなり、第1コンタクト12の応力分布がより均一な方向に改善される。特に、相手コネクタである検査用コネクタ20のプローブ20aが第1コンタクト12の弾性ビーム状部材12aに接触した際の応力が、第1コンタクト12の固定延設片12cの一部に集中することなく分散されるため、第1コンタクト12の塑性変形が良好に防止される。
【0048】
また、本実施形態においては、折曲状延在部12a1の少なくとも一部に至るように貫通穴12a3が形成されていることから、応力集中の拡散が貫通穴12a3に沿うようにして更に良好に行われ、これによっても第1コンタクト12の塑性変形の発生が確実に防止される。
【0049】
一方、機外から内部に侵入した塵埃は、貫通穴12a3を通して下方に落下されることから、電気的な導通性を良好に確保することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態においては、第1及び第2のコンタクト12,13の双方に設けられた固定延設片12c,13cが、略水平方向に延在した状態で絶縁ハウジング11に固定されているため、検査用プラグコネクタ20に設けられたプローブ20aの挿入方向における第1及び第2のコンタクト12,13の支持性が向上されており、電気的接触部における位置精度が向上し、両コンタクト12,13の振れ安定性が改善されるとともに、検査用プラグコネクタ20及び両コンタクト12,13同士の押圧力に対して、第1及び第2のコンタクト12,13の位置ズレが防止される。
【0051】
[導電性シェルについて]
一方、上述した絶縁ハウジング11の上面側表面には、薄板状の導電性部材からなる導電性シェル14が上方側から覆うようにして装着されている。この導電性シェル14は、絶縁ハウジング11の上面側から挿入ガイド部11bの外周面の一部を覆うように装着されているが、この導電性シェル14が絶縁ハウジング11の上面側表面を覆っている上面基板14aが平面略矩形状をなすように形成されている。
【0052】
その導電性シェル14における略矩形状をなす上面基板14aの中央部分には、上述した絶縁ハウジング11の挿入ガイド部11bを外方側から覆うグランド端子部14bが略中空円筒状をなすようにして一体に設けられている。このグランド端子部14bの外周表面には、円環状をなす固定係止溝14cが凹設されており、その固定係止溝14cに対して、前述した検査用プラグコネクタ20の導電性シェルに設けられた係合突部20bが嵌め込まれ、それによってスイッチ付同軸コネクタ10に検査用プラグコネクタ20が適宜の嵌合力で連結された状態に維持されるようになっている。
【0053】
また、上述した導電性シェル14の上面基板14aにおける略矩形状の四隅部分には、下方に向かって垂れ下がるように延在する基板接続部14dがそれぞれ連設されている。それらの各基板接続部14dは、上述した上面基板14aの端縁から下方に向かって、外方側にやや開くように傾斜して延在しており、上述した上面基板14aの端縁からコネクタ外方側に向かって斜め下方に張り出すように延出するテーパ状の傾斜壁面を有しているとともに、その傾斜壁面の下端部から、コネクタ内方に向かって略水平に突出する水平壁面からなる基板接続部14fが連設されている。
【0054】
それら4体の基板接続部14dの先端部分を形成している半田接合片14fのうち、上述したコンタクト対向方向に隣接する2体の半田接合片14f,14f同士は、一体的に連結されており、各基板接続部14dが、図示を省略した配線基板上のグランド用導電路に半田接合されることによって、グランド接続が行われるとともに、スイッチ付同軸コネクタ10の全体の保持が行われるようになっている。
【0055】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0056】
例えば、上述した実施形態においては、弾性ビーム状部材12aに設けられた貫通穴12a3が、直線状延在部12aの湾曲形状の頂点P3まで延びているが、弾性ビーム状部材12aに必要とされる弾性を考慮して、直線状延在部12aの湾曲形状の頂点P3の手前又は越えた位置まで延びるように形成することも可能である。
【0057】
また、上述した実施形態においては、第1コンタクトに貫通穴を設けているが、全体の配置関係に応じて第2コンタクトに貫通穴を設けるようにしても良い。
【0058】
さらに、本発明は、上述した実施形態のような回路検査スイッチ以外の用途に用いられるスイッチ付同軸コネクタに対しても同様に適用可能である。