特許第5979408号(P5979408)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979408
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】車両用操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20160817BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/04
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-42121(P2012-42121)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-177070(P2013-177070A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2015年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100086391
【弁理士】
【氏名又は名称】香山 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100110799
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 温道
(72)【発明者】
【氏名】石原 敦
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−016316(JP,A)
【文献】 特開2003−048559(JP,A)
【文献】 特開2006−290043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/00−6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵のために多回転操作される操舵部材及び操舵角検出センサを有する操舵機構と、前記操舵機構と機械的に非連結の転舵機構と、前記転舵機構の転舵モータを制御する制御装置とを備える車両用操舵装置であって、
前記操舵部材の回転量を所定角度以下に規制する回転規制機構を備え、
前記回転規制機構は、前記操舵部材の回転軸と同軸的に一体回転可能な回転可能要素と、前記回転可能要素と前記回転軸の軸方向に対向する回転不能要素と、前記回転可能要素及び前記回転不能要素間に介在し前記回転軸によって同軸的に支持され前記回転軸に対して回転可能な少なくとも1枚の板要素と、前記回転不能要素、前記少なくとも1枚の板要素及び前記回転可能要素のうちの隣接する要素間の相対回転量を規制するように前記隣接する要素間を連結する連結要素とを含み、
前記回転可能要素又は前記回転不能要素の一方に投光部が設置され、
前記回転可能要素又は前記回転不能要素の他方に受光部が設置され、
前記少なくとも1枚の板要素は、前記投光部から出射され前記受光部に入射される光をさえぎるように配置され、当該板要素の回転角度に応じて前記投光部から出射され前記受光部に入射される光を透過させる光透過部が設けられている、車両用操舵装置。
【請求項2】
前記板要素は、前記回転可能要素及び前記回転不能要素間に複数枚介在している、請求項1に記載の車両用操舵装置。
【請求項3】
前記光透過部が設けられている板要素以外の板要素は、前記投光部から出射され前記受光部に入射される光をさえぎらないように小径にされている、請求項2に記載の車両用操舵装置。
【請求項4】
前記操舵角検出センサの故障時に、前記制御装置は、前記受光部の検出信号に基づき、転舵モータを制御する転舵モータ指令値を決定して転舵モータを制御する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用操舵装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項において、前記操舵部材と転舵輪との機械的な連結が解除されており、
前記回転軸と一体回転するロータを含み前記操舵部材に操舵反力を付与する反力モータを備え、
前記反力モータ及び前記回転規制機構が、同一のハウジング内に収容されている車両用操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵部材の操作に基づいて転舵輪を転舵させる車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ステアリングホイール等の操舵部材と転舵輪との間の機械的な連結を解き、操舵伝達系の一部を電気的な経路で構成する、いわゆるステア・バイ・ワイヤ・システム(単にSBWとも称する)を搭載した車両用操舵装置が知られている。
この種の車両用操舵装置では、操舵部材につながった操舵機構と、転舵輪を転舵させるための転舵モータを用いて実際にタイヤを転舵する転舵機構とが備えられている。転舵モータは、操舵部材の操舵角を検出するための操舵角センサにより検出される操舵角に基づいて制御される。
【0003】
この種のステア・バイ・ワイヤ・システムでは、操舵角センサに異常が発生した場合のフェールセーフ対策が重要である。特に操舵角センサの故障時には、転舵機構が正常でも操舵不能になってしまう。そのため、操舵角センサの故障時にも操舵が可能になるようなメカリンクの搭載や(特許文献1)、センサの多重化などの冗長化(特許文献2)が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-90784号公報
【特許文献2】特開平10-278826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしメカリンクの搭載やセンサの冗長化による部品点数の増加、コストの増大が問題となっている。
本発明は課題に鑑みてなされたものであり、安価かつ簡素な部材の追加でいわゆるステア・バイ・ワイヤ・システムにおけるセンサの故障発生時にも良好な操舵を達成することができる車両用操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用操舵装置は、操舵のために多回転操作される操舵部材及び操舵角検出センサを有する操舵機構と、前記操舵機構と機械的に非連結の転舵機構と、前記転舵機構の転舵モータを制御する制御装置とを備えている。さらに、前記操舵部材の回転量を所定角度以下に規制する回転規制機構を備え、前記回転規制機構は、前記操舵部材の回転軸と同軸的に一体回転可能な回転可能要素と、前記回転可能要素と前記回転軸の軸方向に対向する回転不能要素と、前記回転可能要素及び前記回転不能要素間に介在し前記回転軸によって同軸的に支持され前記回転軸に対して回転可能な少なくとも1枚の板要素と、前記回転不能要素、前記少なくとも1枚の板要素及び前記回転可能要素のうちの隣接する要素間の相対回転量を規制するように前記隣接する要素間を連結する連結要素とを含み、前記回転可能要素又は前記回転不能要素の一方に投光部が設置され、前記回転可能要素又は前記回転不能要素の他方に受光部が設置され、前記少なくとも1枚の板要素は、前記投光部から出射され前記受光部に入射される光をさえぎるように配置され、当該板要素の回転角度に応じて前記投光部から出射され前記受光部に入射される光を透過させる光透過部が設けられているものである。
【0007】
この構成によれば、回転規制機構を利用して、回転不能要素、板要素及び回転可能要素のうちの隣接要素間の相対回転量をそれぞれ規制することによって、回転軸の回転量、ひいては操舵部材の回転量を規制することができる。また、回転規制機構に、投光部、受光部を設けるとともに、板要素に光透過部を形成するというだけの簡易な構造で操舵部材の回転方向を検出することができる。したがって操舵角検出センサの故障発生時にも、検出した回転方向に基づいて転舵モータを制御することにより、良好な操舵を達成することができる。
【0008】
前記板要素は、前記回転可能要素及び前記回転不能要素間に複数枚介在しているものであってもよい。板要素を複数枚介在させることにより、板要素が1枚だけの場合よりも、操舵部材の回転角の規制量を比較的大きな角度に設定することができる。
前記光透過部が設けられている板要素以外の板要素は、前記投光部から出射され前記受光部に入射される光をさえぎらないように小径にされていることが好ましい。
操舵部材の回転方向を検出するために光透過部を設ける板要素は一枚のみで目的が達成されるので、他の板要素が投光部と受光部との間の光の伝搬を邪魔するのは、好ましくないからである。
【0009】
前記操舵角検出センサの故障時に、前記制御装置は、前記受光部の検出信号に基づき、転舵モータを制御する転舵モータ指令値を決定して転舵モータを制御するようにすれば、通常時は、操舵部材の操舵角に応じて、転舵機構を介して転舵輪を転舵駆動することができるが、操舵角検出センサに異常が発生したときには、前記受光部の検出信号に基づき、転舵モータを制御する転舵モータ指令値を決定して転舵モータを制御することができる。したがって、操舵角検出センサとしてフェールセーフ用のものを予備として備えなくても、最低限の転舵機能を確保することができる。また、回転規制機構に、簡単な構成を追加するだけで操舵方向が検出できるので、予備の操舵角検出センサを設けるよりも簡易な構造とすることができるので、コストダウンを図ることができる。
【0010】
また、前記操舵部材と転舵輪との機械的な連結が解除されており、前記回転軸と一体回転するロータを含み前記操舵部材に操舵反力を付与する反力モータを備え、前記反力モータ及び前記回転規制機構が、同一のハウジング内に収容されている車両用操舵装置においては、反力モータ及び回転規制機構を同一のハウジング内に収容するので、ステア・バイ・ワイヤ式の車両用操舵装置において、構造の簡素化、小型化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態にかかる車両用操舵装置1の概略構成を示す模式図である。
図2】操舵部材の回転量を規制する回転規制機構及び反力モータ等を収容したハウジングの断面図である。
図3図2の一部を拡大した、回転規制機構周辺の断面図である。
図4A】回転規制機構を構成する、回転可能要素に最も近い板要素81の分解平面図である。
図4B】回転可能要素に次に近い板要素82の分解平面図である。
図4C】回転可能要素に次に近い板要素83の分解平面図である。
図4D】回転不能要素に最も近い板要素84の分解平面図である。
図4E】回転規制機構の回転不能要素としての埋め込み固定板85の分解平面図である。
図5A】回転規制機構によるロータの回転規制を説明するための板要素81の分解平面図である。
図5B】回転規制機構によるロータの回転規制を説明するための板要素82の分解平面図である。
図5C】回転規制機構によるロータの回転規制を説明するための板要素83の分解平面図である。
図5D】回転規制機構によるロータの回転規制を説明するための板要素84主要部の分解平面図である。
図6】回転規制機構によるロータの回転規制を説明するための回転不能要素としての埋め込み固定板85の分解平面図である。
図7】受光部の検出電圧と操舵角との関係(板要素84が最初に回った場合)を示すグラフである。
図8】受光部の検出電圧との操舵角との関係(板要素84が最も遅く回った場合)を示すグラフである。
図9】制御装置により実行される操舵角センサの異常時の転舵制御処理を説明するためのフローチャートである。
図10】車速に応じて転舵モータを駆動するための転舵モータ指令値motor_reqを算出する方法を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態の車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、本車両用操舵装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2と転舵輪3との機械的な連結が解除された、いわゆるステア・バイ・ワイヤ・システムを構成している。
車両用操舵装置1では、操舵部材2の回転操作に応じて駆動される転舵アクチュエータ4の動作を、ラックハウジング5に支持された転舵軸6の車幅方向の直線運動に変換するようになっている。この転舵軸6の直線運動は、転舵用の左右の転舵輪3の転舵運動に変換され、これにより車両の転舵が達成される。車両が直進しているときの転舵輪3の位置に対応する操舵部材2の位置が、操舵中立位置として設定されている。
【0013】
転舵アクチュエータ4は、例えば、駆動回路20Aによって駆動される転舵モータMを含んでいる。この転舵モータMの駆動力(出力軸の回転力)は、転舵軸6に関連して設けられた運動変換機構(ボールねじ機構)により、転舵軸6の軸方向の直線運動に変換される。この転舵軸6の直線運動は、転舵軸6の両端に連結されたタイロッド7に伝達され、ナックルアーム8の回動を引き起こす。これにより、ナックルアーム8に支持された転舵輪3の操向が達成される。
【0014】
転舵軸6、タイロッド7及びナックルアーム8により、転舵輪3を転舵するための転舵機構Aが構成されている。転舵軸6を支持するラックハウジング5は、車体Bに固定されている。
操舵部材2は、車体Bに回転可能に支持された操舵軸9に連結されている。操舵軸9には、路面等から転舵輪3に伝わる反力を操舵反力として操舵部材2に与えるための、ブラシレスモータ等の反力モータ10が取り付けられている。この反力モータ10は、車体Bに固定されたコラムハウジング11内に収容され、駆動回路20Bによって駆動される。
【0015】
車両用操舵装置1には、操舵軸9に関連して、操舵部材2の操舵角を検出するための操舵角センサ12が設けられている。また、操舵軸9には、操舵部材2に加えられた操舵トルクTを検出するためのトルクセンサ13が設けられている。操舵部材2、操舵軸9、操舵角センサ12により、操舵機構Cが構成されている。
一方、転舵機構Aには、転舵軸6に関連して、転舵輪3の転舵角を検出するための転舵角センサ14が設けられている。
【0016】
これらのセンサの他にも、車速Vを検出する車速センサ15が設けられている。車速センサ15を特に設けず、車内LAN(CAN)から取得される車速信号を用いて車速Vを検出しても良い。
これらのセンサ類12〜15の各検出信号は、マイクロコンピュータを含む構成の電子制御ユニットである制御装置としての制御装置19に入力されるようになっている。
【0017】
制御装置19は、操舵角センサ12によって検出された操舵角及び車速センサ15によって検出された車速Vに基づいて、目標転舵角を設定する。そして、この目標転舵角と、転舵角センサ14によって検出された転舵角δwとの偏差に基づいて、駆動回路20Aを介し、転舵用アクチュエータ4の転舵モータMを駆動制御(転舵制御)する。
一方、制御装置19は、操舵部材2が操舵された方向と逆方向を向く適当な反力が操舵部材2に付与されるように、駆動回路20Bを介して、反力モータ10を駆動制御(反力制御)する。
【0018】
図2は、コラムハウジング11の周辺の断面図である。図2を参照して、コラムハウジング11は、アルミニウム合金等の金属材料を用いて形成されている。コラムハウジング11は、一端部21a及び他端部21bを有する円筒形形状に形成されたメインハウジング21と、メインハウジング21の他端部21bを塞ぐカバーハウジング22と、を含んでいる。
【0019】
カバーハウジング22は、固定ねじ23等を用いて、メインハウジング21の他端部21bに固定されている。カバーハウジング22の外径部には、環状凸部22bが形成されている。環状凸部22bは、メインハウジング21の他端部21bの内周面に嵌合されている。環状凸部22bの外周面には、環状の溝が形成されており、この溝に、封止部材としてのOリング24が配置されている。
【0020】
このOリング24によって、カバーハウジング22とメインハウジング21との間から、雨水や埃等の異物がコラムハウジング11内に侵入することが抑制されている。また、後述するように、メインハウジング21と操舵軸9との間には、シール部材25が配置されている。このように、コラムハウジング11内への異物の侵入を抑制する構造が採用されていることにより、コラムハウジング11を、外部に開放された空間に配置することが可能となる。
【0021】
操舵軸9は、反力モータ10と操舵部材2とを連結しており、一部がコラムハウジング11から突出している。操舵軸9は、玉軸受等の転がり軸受からなる第1軸受31、第2軸受32及び第3軸受33を介して、コラムハウジング11に回転可能に支持されている。
操舵軸9は、同軸に並ぶ第1軸37及び第2軸(軸部)38と、第1軸37及び第2軸38を連結するトーションバー39と、を含んでいる。第1軸37の一端部には、操舵部材2が一体回転可能に連結されている。第1軸37の中間部とメインハウジング21の一端部21aとの間には、シール部材25が配置されている。シール部材25は、メインハウジング21の一端部21aと、第1軸37との間を液密的に封止している。
【0022】
第1軸37の中間部は、第1軸受31を介して、メインハウジング21の一端部21aの第1軸受保持孔41に回転可能に支持されている。第1軸37の他端部は、第2軸38に挿通されており、針状ころ軸受からなる第4軸受34を介して第2軸38に回転可能に支持されている。
第2軸38の一端部38a及び第1軸37の中間部には、それぞれ、操舵軸9の軸方向S1に隣接して対向する対向部38g,37bを有している。これら対向部38g,37bに、トルクセンサ13が配置されている。
【0023】
第1軸37と第2軸38との間にトルクが作用したとき、トーションバー39は、このトルクの大きさに応じて微小な角度範囲内でねじれることが可能となっている。このときの第1軸37と第2軸38との相対回転量をトルクセンサ13が検出することで、操舵軸9に付与されているトルクTを検出することが可能となっている。
第2軸38の中間部38cには、第2軸受32の内輪32aが圧入固定されている。第2軸38は、第2軸受32を介してメインハウジング21の第2軸受保持孔42に回転可能に支持されている。また、第2軸38の他端部38bは、カバーハウジング22の端壁22aに形成された第3軸受保持孔43を挿通している。第2軸38の他端部38bは、第3軸受33を介して第3軸受保持孔43に回転可能に支持されている。
【0024】
これら第2軸受32及び第3軸受33には、予圧が付与されている。具体的には、カバーハウジング22と第3軸受33との間に、予圧付与部材46及び受け部材47が配置されている。予圧付与部材46は、例えば、波板ばねを用いて形成された弾性部材である。受け部材47は、円板形形状に形成されている。受け部材47は、第3軸受33の外輪33bと軸方向S1に並び、この外輪33bに接触している。第3軸受33の外輪33bは、第3軸受保持孔43に対して、操舵軸9の軸方向S1に相対移動可能に嵌合されている。第3軸受33の内輪33aは、第2軸38の他端部38bに圧入固定されている。
【0025】
また、第2軸受32の内輪32aは、第2軸38の中間部38cに圧入固定されている。第2軸受32の外輪32bは、第2軸受保持孔42に対して、軸方向S1に相対移動可能に嵌合されている。外輪32bの一側面は、メインハウジング21に受けられている。
上記の構成により、予圧付与部材46の圧縮による弾性反発力は、受け部材47、第3軸受33の外輪33b、内輪33a、第2軸38、第2軸受32の内輪32a、及び外輪32bを介して、メインハウジング21に受けられる。これにより、第2軸受32及び第3軸受33に予圧が付与される。
【0026】
トルクセンサ13は、第1軸受31と第2軸受32との間に配置されている。トルクセンサ13は、第1軸37の対向部37bに固定された永久磁石からなる多極磁石53と、第2軸38の対向部38gに固定された第1リングユニット54と、コラムハウジング11に固定された第2リングユニット55とを含んでいる。
第1リングユニット54は、第2軸38の対向部38gに固定された環状の合成樹脂部材54aと、この合成樹脂部材54aに埋設され、且つ、多極磁石53の磁界内に配置された一対の環状の磁気ヨーク54bとを含んでいる。
【0027】
第2リングユニット55は、第1リングユニット54を取り囲む環状に形成されている。第2リングユニット55は、メインハウジング21に固定された合成樹脂部材55aと、この合成樹脂部材55aに埋設された一対の集磁リング55b及びホールIC(図示せず)と、を含んでいる。
反力モータ10、操舵角センサ12及びトルクセンサ13は、コラムハウジング11内に収容されている。
【0028】
図3は、図2の反力モータ10周辺の拡大図である。図3を参照して、反力モータ10は、メインハウジング21の他端部21b寄りに配置されており、カバーハウジング22に隣接している。これにより、カバーハウジング22をメインハウジング21から取り外したときに、反力モータ10の略全部がメインハウジング21の他端部21bの開口に露出する。したがって、反力モータ10をメインハウジング21内に装着する作業や、反力モータ10のメンテナンス作業が行い易い。
【0029】
反力モータ10は、筒状のロータ58と、ロータ58を取り囲むステータ57と、を含んでいる。ロータ58の軸方向、径方向及び周方向は、操舵軸9の軸方向S1,径方向R1及び周方向C1と一致している。ステータ57の外周面は、メインハウジング21の内周面に焼きばめ等によって固定されている。
ロータ58は、操舵軸9を介して操舵部材2に一体回転可能に連結されている。ロータ58は、軸方向S1に延びる筒状のロータコア61と、ロータコア61の外周面に固定された永久磁石62とを含んでいる。
【0030】
ロータコア61は、操舵軸9の第2軸38と単一の材料を用いて一体に形成されている。ロータコア61は、操舵軸9の径方向R1の外方に配置された筒状部63と、この筒状部63の一端部から径方向R1の内方に延びる端壁部64と、端壁部64から第2軸38の一端部38a側(トルクセンサ13側)に延びる延設部65と、を含んでいる。
延設部65は、第2軸38の中間部38cに一体的に形成されている。端壁部64は、環状の板状に形成されており、第4軸受34の一部を取り囲んでいる。
【0031】
ステータ57とロータ58との磁気作用によって反力モータ10に生じるトルクは、端壁部64を介して第2軸38に伝達される。ここで、端壁部64は、第4軸受34と軸方向S1に関して略重なるように配置されているので、端壁部64が第1軸37に対して芯ずれ(互いの中心軸線がずれる現象)が生じることを抑制できる。
筒状部63の他端部は、カバーハウジング22の端壁22aに隣接している。筒状部63は、ステータ57に取り囲まれている。また、筒状部63は、第2軸38の中間部38cを取り囲んでいる。上記の構成により、筒状部63と、端壁部64と、第2軸38とによって囲まれた収容溝部66が形成されている。収容溝部66は、円環状の溝部であり、カバーハウジング22側に開放されている。
【0032】
ロータコア61の筒状部63の外周面に永久磁石62が固定されている。収容溝部66と並ぶように操舵角センサ12が配置されている。操舵角センサ12は、レゾルバを用いて形成されており、レゾルバステータ67と、レゾルバロータ68とを含んでいる。レゾルバステータ67は、軸方向S1に関して、端壁部64と第2軸受32との間に配置されており、メインハウジング21に固定されている。レゾルバロータ68は、レゾルバステータ67に取り囲まれている。レゾルバロータ68は、ロータコア61の延設部65に固定されている。
【0033】
また、コラムハウジング11内には、回転規制機構70が収容されている。回転規制機構70は、操舵のために多回転操作される操舵部材2の回転軸としての、操舵軸9の回転角を所定角度以下に規制する機能を果たす。本実施の形態のようにステア・バイ・ワイヤ式の車両用操舵装置1では、操舵部材2が、転舵機構Aからの制約を受けない。そこで、操舵部材2が、転舵機構Aの動作限界を超えて操作されることがないように、回転規制機構70によって、操舵部材2の回転角を前記動作限界に対応する前記所定角度内に規制する。
【0034】
拡大図である図3に示すように、回転規制機構70の大部分の要素は、ロータコア61の径方向内方の空間である収容溝部66に配置されている。図3を参照して、回転規制機構70は、カバーハウジング22の端壁22aに埋め込まれた回転不能要素としての埋め込み固定板85と、操舵部材2の回転軸としての、操舵軸9の第2軸38によって同軸的に支持され、第2軸38に対して回転可能で且つ軸方向S1に移動可能な複数の板要素81〜84と、回転可能要素としての、ロータコア61の底壁64aとを備えている。回転不能要素としての埋め込み固定板85と回転可能要素としての底壁64aは、板要素81〜84の軸方向S1の両側に配置されている。
【0035】
また、回転規制機構70は、回転不能要素としての埋め込み固定板85、複数の板要素81〜84及び回転可能要素としての底壁64aのうち、それぞれ対応する隣接する要素間の相対回転量を規制するように前記隣接する要素間をそれぞれ連結する複数の連結要素(後述)を備えている。また、回転規制機構70は、前記隣接する要素間の相対回転にそれぞれ摩擦抵抗を付与する複数の摩擦付与要素としての摩擦板86を備えている。
【0036】
図3に示すように、各連結要素は、それぞれ対応する隣接要素の一方に設けられ軸方向S1に突出したピン状の突起71a〜75aと、突起71a〜75aが係合するようにそれぞれ対応する隣接要素の他方に設けられ、回転方向C1に延びる有端の係合溝71b〜75bとにより構成されている。
各突起71a〜75aが、対応する係合溝71b〜75bの両端にある規制部81d〜85d又は81e〜85e(図4A図4E参照)に当接することにより、隣接する要素間の相対回転量が規制される。
【0037】
図3及び図4A図4Eを参照して、板要素81〜84はそれぞれ環状板からなり、筒状部63の周壁と第2軸38の中間部38c(例えばメタルブッシュ等の滑り軸受)との間に配置され、該中間部38cの外周に回転可能に装着され且つ軸方向S1に移動可能に支持されている。
回転可能要素としての底壁64aには、突起71aが突出形成されている。各板要素81〜84は、その一方の端面に突起72a〜75aを突出形成し、突起72a〜75aを避けた残りの領域に、回転方向C1に延びるように係合溝71b〜74bを形成している。回転不能要素としての埋め込み固定板85には、回転方向C1に延びるように有端の係合溝75bが形成されている。
【0038】
各突起71a〜75aは、対応する底壁64a又は板要素81〜84と別体で設けられてもよく、対応する底壁64a又は板要素81〜84の所定の固定孔に一部が挿入されて一体に固定されていてもよい。また、図示していないが、各突起71a〜75aは、対応する底壁64a又は板要素81〜84と単一の材料で一体に形成されていてもよい。板要素81〜84の少なくとも一方の端面は(本実施の形態では、突起72a〜75aが突出する側の端面)、摩擦板86を受ける環状の受け凹部87が設けられている。また、ロータコア61の底壁64aには、環状の受け凹部88(図3参照)が設けられている。各受け凹部87,88は、対応する摩擦板86を受けるとともに、各摩擦板86の外周が、対応する受け凹部87,88の周壁面によって回転可能に支持される。
【0039】
図3及び図4A図4Eに示すように、回転可能要素としての底壁64aに設けられた突起71aが、板要素81に設けられた有端の係合溝71bにスライド可能に嵌合する。また、各板要素81〜83に設けられた突起72a〜74aが、それぞれ隣接する板要素に設けられた係合溝72b〜74bにスライド可能に嵌合する。また、板要素84に設けられた突起75aが、コラムハウジング11の端壁22aに固定された回転不能要素としての埋め込み固定板85に設けられた係合溝75bにスライド可能に嵌合する。
【0040】
図4A図4Eに示すように、各係合溝71b〜75bに係合する突起71a〜75aの可動範囲(突起71a〜75aが係合溝71b〜75bの両端の規制部間を可動する範囲)が、隣接要素間の相対回転角がδ1(図4A参照;規制角という)となるように、回転方向C1に関する係合溝71b〜75bの配置範囲を設定している。
この場合、操舵軸9の左から右までの最大回転角δmax は、
δmax =δ1×4
となるので、突起71a〜75aの規制角δ1の値を設定したり、板要素の枚数を増減することにより、操舵軸9の最大回転角δmaxを所望の多回転範囲に規制することが可能となる。例えば規制角δ1が306°で板要素が4枚の場合、操舵軸9の回転量が1224°(最大回転角)内に規制される。
【0041】
また、カバーハウジング22の端壁22aには、回転不能要素としての埋め込み固定板85を摩擦板86側へ弾性的に付勢する付勢部材(本実施の形態では環状板バネ)69が設けられている。この付勢部材69により、当該埋め込み固定板85とロータ61の底壁64a(回転可能要素)との間に、板要素81〜84及び摩擦板86を含む積層ユニットを弾性的に挟持することができる。各摩擦板86は、それぞれ対応する隣接要素間の相対回転に抗する摩擦抵抗をそれぞれ対応する隣接要素に付与するように、それぞれ対応する隣接要素間に介在している。すなわち、付勢部材69は、積層ユニットの板要素81〜84、埋め込み固定板85、摩擦板86に一括して軸方向の予圧を与える。これにより、埋め込み固定板85、各摩擦板81〜84がこれに接する部材に対して、所要の大きさの摩擦抵抗を付与できるように設定されている。
【0042】
図3図4A図4Eに示すように、回転可能要素としての底壁64aには、突起71aを挟んだ両側に2つの投光部91,92が設置され、コラムハウジング11の端壁22a側の回転不能要素としての埋め込み固定板85には、投光部91,92から出射される光をそれぞれ受光する受光部101,102が設置されている(図3には投光部91、受光部101のみを図示している)。また板要素84には、図4Dに示すように、投光部91,92と受光部101,102との間を伝搬する光を透過させるための透過孔93,94が設けられている。
【0043】
板要素81〜83の半径は、板要素81〜83がいかなる回転位置にあっても、投光部91,92と受光部101,102との間の光の伝搬を遮断しないように、透過孔93,94が設けられた板要素84の半径よりも小さく設定されている。受光部101は、投光部91からの光を受光したときに検出電圧V1を出力し、受光部102は、投光部92からの光を受光したときに、検出電圧V2を出力するようにされている。検出電圧V1,V2は、それぞれ制御装置19に入力される。
【0044】
以上が車両用操舵装置1の概略構成である。次に、車両用操舵装置1の動作の一例を説明する。
図3及び図4A図4Eに示すように、操舵部材2が操舵中立位置に位置しているとき、突起71a〜75aは、それぞれ、対応する係合溝71b〜75bに、回転が規制されていない状態で係合されている。
【0045】
この状態から、例えば、車両を右旋回させて車庫に入れるなどの際に、運転者が操舵部材2を操舵中立位置から時計回りに最大角度回転させる場合を考える。なお、以下では、回転方向をいうときは、運転者から操舵部材2みたときの回転方向をいうものとする。
この場合、運転者は、操舵部材2を操舵中立位置から時計回りに回転させる。これにより、操舵軸9及び反力モータ10のロータ58が、操舵部材2と連動して時計回りに回転する。
【0046】
これに応じて、図5A図5Dに示すように、次の(a)〜(e)の動作が、同時に又は時間的に前後して起こる。(a)突起71aは、板要素81の係合溝71bの一端部81dに当接する。(b)板要素81が時計回りに回転し、板要素81の突起72aが板要素82の係合溝72bの一端部82dに接触する。(c)板要素82が時計回りに回転し、突起73aが板要素83の係合溝73bの一端部83dに接触する。(d)板要素83が時計回りに回転し、突起74aが板要素84の係合溝74bの一端部84dに接触する。(e)板要素84が時計回りに回転し、突起75aが回転不能要素としての埋め込み固定板85の係合溝75bの一端部85dに接触する。回転不能要素としての埋め込み固定板85は回転が規制されている。上記の動作により、板要素81〜84の規制された回転角以上の時計回り方向への回転が機械的に規制される。ただし、板要素81〜84の回転動作(a)〜(e)の時間的順番は不特定である。
【0047】
上記(e)のように板要素84が時計回り方向への回転し、機械的に規制される位置まで回転した状態で、図6に示すように、投光部91から出射される光の光軸方向から見て、透過孔93が受光部101に重なる。これにより投光部91から出射される光は、板要素81〜83にも、板要素84にもさえぎられることなく、透過孔93を通して、受光部101よって受光される。
【0048】
なお、車両を左旋回させるために操舵部材2を反時計回りに回転させたときも、上記と同様にして、操舵部材2の回転が規制される。すなわち、突起71a〜75aが係合溝71b〜75bの対応する他端部81e〜85eに接触することにより、操舵部材2の反時計回りの回転が規制される。このとき、板要素84が反時計回り方向への回転し、機械的に規制される位置まで回転した状態で、投光部92から出射される光の光軸方向から見て、透過孔94が受光部102に重なる。これにより投光部92から出射される光は、板要素81〜83にも、板要素84にもさえぎられることなく、透過孔94を通して、受光部102よって受光される。
【0049】
図7及び図8は、受光部101,102の検出電圧V1,V2と、操舵部材2の操舵角との関係を示すグラフである。図7は板要素84が、他の板要素81〜83よりも時間的に最も早く、時計回り又は反時計回り方向へ規制位置まで回転したときの操舵部材2の操舵角と検出電圧V1,V2との関係を示すグラフである。操舵部材2を中立位置から右回転させて角度a1に到達した時点で検出電圧V1がローレベルからハイレベルになり、操舵部材2を中立位置から左回転させて角度−a1に到達した時点で検出電圧V2がローレベルからハイレベルになる。中立位置又はその近傍の角度−a1〜0〜a1の間では検出電圧V1,V2ともにローレベルのままである。角度a1の値は、規制角δ1の半分に等しい(例えば規制角δ1が306°の場合、角度a1は153°)。
【0050】
図8は板要素84が、他の板要素81〜83よりも時間的に最も遅く、時計回り又は反時計回り方向へ規制位置まで回転したときの操舵部材2の操舵角を示すグラフであり、板要素84が規制位置まで回転したときの操舵部材2の操舵角をa2,−a2で示している。この場合、板要素84が時計回り又は反時計回り方向へ規制位置まで回転した時点で、板要素84のみならず、他の板要素81〜83もそれぞれ規制角δ1に達しているから、この操舵角a2,−a2が、回転規制機構70によって規制される操舵部材2の回転角の動作限界に対応する。すなわち角度a1の値は、最大回転角δmaxの半分になる(例えば規制角δ1が306°の場合、角度a2は612°)。
【0051】
このように、センサの検出電圧V1,V2を監視することにより、操舵部材2の少なくとも操舵方向を検出することができる。
図9は、操舵角センサ12の異常時に、制御装置19により実行される転舵制御処理について説明するためのフローチャートである。
まず操舵角センサ12の正常時の制御装置19の処理を簡単に説明すると、制御装置19は、操舵角センサ12により検出された操舵部材2の操舵角及び車速センサ15によって検出された車速Vに基づいて、転舵モータMの電流指令値又は回転速度指令値を設定する。そして、この電流指令値又は回転速度指令値に基づいて、転舵モータMを駆動制御する。これにより、転舵モータMから、操舵部材2の操作方向及び操作量に応じた方向に転舵軸6を移動させるためのトルクが出力され、車両の走行状況や操舵部材2の操作態様に応じた良好な操舵が達成される。またこれと同時に、制御装置19は、センサ類12〜15が出力する検出信号に基づいて、操舵部材2が操舵された方向と逆方向を向く適当な反力が操舵部材2に付与されるように、駆動回路20Bを介して、反力モータ10を駆動制御(反力制御)する。
【0052】
転舵モータMを駆動制御している間に、操舵角センサ12に異常が発生すると、車速センサ15あるいは車内LANを通して車速を検出する(ステップS1)。検出される車速には後退時の車速も含まれる。
次に転舵モータMを駆動するための転舵モータ指令値motor_reqを演算する(ステップS2)。ここで、転舵モータ指令値motor_reqは符号を有し、右旋回させる場合を「正」、左旋回させる場合を「負」とする。転舵モータ指令値motor_reqは、転舵モータMを駆動するのに電流指令値を設定するのか又は回転速度指令値を設定するのかに応じて異なり、前者が選択される場合は、転舵モータ指令値motor_reqは電流指令値motor_currentとなり、後者が選択される場合は、転舵モータ指令値motor_reqは回転速度指令値motor_speedとなる。この指令値の算出方法は図10を用いて後に説明する。
【0053】
回転規制機構70の受光部101,102の検出電圧V1,V2を判定し(ステップS3)、センサ電圧V1,V2の何れかがハイレベルである場合にはステップS4に進み、操舵部材2の操舵方向を検出する。検出される操舵方向は図7の場合は左(−a2〜−a1)、中立又はその近傍(−a1〜0〜a1)、右(a1〜a2)の3つの方向である。図8の場合は左(−a2)、中立又はその近傍(−a2〜0〜a2)、右(a2)の3つの方向である。
【0054】
センサ電圧V1がハイレベルであれば右操舵と判定し、ステップS6に進む。センサ電圧V2がハイレベルであれば左操舵と判定し、転舵モータ指令値motor_reqの符号を反転し(ステップS5)、ステップS6に進む。
ステップS6においては、転舵モータ指令値motor_reqを用いて転舵モータMを駆動制御する。
【0055】
なお、ステップS3において、方向検出機構40のセンサ電圧V1,V2がいずれもローレベルであれば、操舵位置は中立又はその近傍と判定し、転舵モータMの駆動制御はしない。
図10は、車速に応じて転舵モータMを駆動するための転舵モータ指令値motor_reqを算出する方法を説明するためのグラフである。転舵モータ指令値motor_reqは、前進時であって車速が0であれば最大値をとり、車速が増大するほど低下し、車速がある値以上になれば、最低値を維持する。これは低速時ほどタイヤを転回させるのに力が必要なので、転舵モータ指令値motor_reqを増大させて転舵をスムーズにするためである。また、速い転舵を行っても危険の少ない低速時に指令値を大きくし、反対に高速時に指令値を小さくすることで、安全性と取り回し性を両立させることができる。
【0056】
後退時の場合は、車速が0であれば最大値をとり、車速が増大するほど低下し、車速がある値以上であれば、最低値を維持する。ただし、転舵モータ指令値motor_reqの絶対値は前進の場合よりも小さく設定されている。これは、後退時に前進時と同じ転舵モータ指令値motor_reqとすると、後退時に旋回し過ぎてしまい、取り回し性が低下するためである。また、後退時は、前進時より視認性が良くないため、急激な転舵とならないようにすることで安全性を高めることができる。
【0057】
以上のようにこの転舵モータ指令値motor_reqの算出方法によれば、通常時は、操舵部材2の操舵角に応じて、転舵機構Aを介して転舵輪を転舵駆動することができる。また、操舵角センサ12に異常が発生したときには、操舵方向を検出する回転規制機構70からの検出信号に基づき、転舵モータMを制御する転舵モータ指令値motor_reqを決定して転舵モータMを制御することができる。したがって、操舵角センサとしてフェールセーフ用のものを予備として備えなくても、転舵を継続することができる。
【0058】
以上のように、回転規制機構70は、車両用操舵装置1で、操舵部材2が、転舵機構Aの動作限界を超えて操作されることがないように操舵部材2の回転角を、動作限界に対応する所定角度内に規制するために設けられた機構であるが、本発明の実施の形態では、この回転規制機構70に、投光部91,92、受光部101,102を設けるとともに、板要素84に透過孔93,94を形成するという簡易な構造で、操舵部材2の回転方向を検出することができる。
【0059】
以上で本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更を施すことができる。例えば、板要素84に設けた透過孔93,94は孔でなくて、光を透過させる形状であれば任意に形状でよい。例えば板要素84に設けた切り込みでも良い。また、光透過部が設けられている板要素は回転不能要素に最も近い板要素84であるとは限らず、回転可能要素と回転不能要素との間に存在する板要素であればよく、板要素81,82,83であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…車両用操舵装置、2…操舵部材、12…操舵角センサ、14…転舵角センサ、19…制御装置、61…ロータコア、64a…回転可能要素としての回転可能要素としての底壁、70…回転規制機構、71a〜75a…連結要素としての突起、71b〜75b…連結要素としての係合溝、84…少なくとも1枚の板要素、85…回転不能要素としての埋め込み固定板、93,94…透過孔、A…転舵機構、C…操舵機構、M…転舵モータ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10