(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記媒体押圧片が前記信号伝送媒体を押圧する部位は、前記信号伝送媒体の挿入方向において前記係止ロック部より奥側の領域で、前記絶縁ハウジングの媒体載置面と対向するように配置されていることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【背景技術】
【0002】
一般に、種々の電気機器等において、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)や、フレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等の各種信号伝送媒体を電気的に接続するための手段として種々の電気コネクタが広く用いられている。例えば、下記の特許文献1のように印刷配線基板上に実装されて使用される電気コネクタでは、FPCやFFC等からなる信号伝送媒体が、絶縁ハウジング(インシュレータ)の前端側開口部から内部に挿入され、その後にアクチュエータ(接続操作手段)が、作業者の操作力でコネクタ前方側又は後方側の接続作用位置に向かって押し倒されるように回動される。これによって、信号伝送媒体の端末部分に設けられた係合部にロック部材の一部が嵌り込んで係合状態になされ、信号伝送媒体の端末部分がロック部材により略不動状態に保持される構成になされている。
【0003】
このように、アクチュエータを備えた電気コネクタは、接続解除位置と接続作用位置との間でアクチュエータを回動操作することによってロック部材の係合・離脱を操作する構成になされているが、信号伝送媒体(FPC,FFC等)の挿入作業とは別個にアクチュエータを操作する必要があるために作業効率が問題となる場合がある。そのため、例えば、下記の特許文献2及び3のように、絶縁ハウジングの内部に挿入された信号伝送媒体に対してロック部材の一部が乗り上げるようにして弾性変位し、その後に信号伝送媒体の係合部にロック部材の一部が落ち込んで係合が行われるように構成された、いわゆるワンアクションオートロック機構を備えた電気コネクタが採用されることがある。このようなワンアクションオートロック機構を備えた電気コネクタを用いれば、電気コネクタの内部の所定位置まで信号伝送媒体を挿入するだけで、信号伝送媒体が略不動状態に保持されることとなり、作業効率の向上が図られる。
【0004】
しかしながら、従来の電気コネクタに採用されているワンアクションオートロック機構では、上述したように信号伝送媒体(FPC,FFC等)を電気コネクタに挿入するだけでロックが行われて保持される利点があるものの、信号伝送媒体の厚さには種々のものがあり、それに応じてロック部材との係合量が変動するという問題がある。特に、信号伝送媒体の厚さが薄い場合にあっては、寸法公差内の厚さになっていても、信号伝送媒体と媒体挿入通路との間に空間が発生し、その空間内において信号伝送媒体がロック部材の係止ロック部と反対の方向に移動した際に、信号伝送媒体に対するロック部材の係合量が減少することから信号伝送媒体の保持力が十分に得られなくなるおそれがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、簡易な構成で、信号伝送媒体の厚さ変動にかかわらず信号伝送媒体を良好な保持状態に維持することができるようにした電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明では、
コネクタ長手方向に延在する絶縁ハウジングの内部に挿入された信号伝送媒体に係合して当該信号伝送媒体を挿入状態に保持する係止ロック部を有するロック部材が設けられたものであって、前記係止ロック部が、前記信号伝送媒体に接触して弾性変位した後に弾性復帰することで前記信号伝送媒体に係合する構成になされた電気コネクタにおいて、前記ロック部材が、
薄肉板状の金属部材からなる一体折曲げ構造体から形成されたものであって、当該ロック部材は、前記絶縁ハウジングに固定された固定基板と、その固定基板の一端縁部分から一体的に延出する基板接続部と、前記信号伝送媒体を前記係止ロック部に向かって押圧する片持ち状の弾性可撓性部材からなる媒体押圧片
と、を有し、前記媒体押圧片
を構成している弾性可撓性部材が、前記コネクタ長手方向に板幅を有してアーム状に延出しているとともに、前記媒体押圧片の一部であって前記信号伝送媒体を押圧する部位が、前記信号伝送媒体の厚さ方向において前記係止ロック部と対向するように配置され
、かつ前記媒体押圧片は、前記固定基板の一端縁部分に設けられた前記基板接続部に対して前記コネクタ長手方向に隣接した位置から略直角上方に立ち上がる構成が採用されている。
【0008】
このような構成を有する本発明によれば、絶縁ハウジングの内部に挿入されて係止ロック部により保持された信号伝送媒体が、
基板接続部と隣接した位置から一定の板幅をもって上方に立ち上がって係止ロック部に対向するように配置された媒体押圧片の弾性付勢力
により係止ロック部側に向かって押圧され、それによって信号伝送媒体と係止ロック部との係合量が増大されることから、ロック部材による信号伝送媒体の保持が確実に行われる。
【0009】
このとき、本発明における前記絶縁ハウジングには、当該絶縁ハウジングの内部に挿入された前記信号伝送媒体を支持する媒体載置面が形成され、その絶縁ハウジングの媒体載置面に対して前記係止ロック部が突没する構成になされたものであって、前記媒体押圧片は、前記絶縁ハウジングの媒体載置面に対して前記信号伝送媒体の厚さ方向に対向するように配置されていることが望ましい。
【0010】
また、本発明において、前記媒体押圧片が前記信号伝送媒体を押圧する部位は、前記信号伝送媒体の挿入方向において前記係止ロック部より奥側の領域で、前記絶縁ハウジングの媒体載置面と対向するように配置されていることが望ましい。
【0011】
このような構成を有する本発明によれば、媒体押圧片の押圧力によって信号伝送媒体が絶縁ハウジングの媒体載置面に当接されることとなり、それらの媒体押圧片と絶縁ハウジングの媒体載置面との間に信号伝送媒体が挟持されることで当該信号伝送媒体の保持が更に安定的に行われる。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように本発明にかかる電気コネクタは、絶縁ハウジングの内部に挿入された信号伝送媒体に係合して当該信号伝送媒体を挿入状態に保持する係止ロック部を有するロック部材に、
基板接続部と隣接した位置から上方に立ち上がって係止ロック部に向かって信号伝送媒体を押圧する
一定幅を有する片持ち状の弾性可撓性部材からなる媒体押圧片を設け、その媒体押圧片の一部であって信号伝送媒体を押圧する部位を、信号伝送媒体の厚さ方向において係止ロック部と対向するように配置したことによって、絶縁ハウジングの内部に挿入されて係止ロック部により保持された信号伝送媒体が、係止ロック部に対向するように配置された媒体押圧片の弾性付勢力で係止ロック部側に向かって押圧され、信号伝送媒体と係止ロック部との係合量が増大されることでロック部材による信号伝送媒体の保持が確実に行われる構成としたものであるから、簡易な構成で、信号伝送媒体の厚さ変動にかかわらず信号伝送媒体を良好な保持状態に維持することができ、電気コネクタの信頼性を低廉かつ大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)やフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等からなる信号伝送媒体の接続を行うために配線基板上に実装して使用される電気コネクタに本発明を適用した実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
[電気コネクタの全体構成について]
図1〜
図13に示されている本発明の一実施形態にかかる電気コネクタ10は、いわゆるノン・ジフ(NON−ZIF)タイプのワンアクションオートロック機構を備えた電気コネクタからなるものであって、絶縁ハウジング11の内部の所定位置まで、上述した信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの端末部分を挿入した際に、当該信号伝送媒体Fのロックが自動的に行われる構成になされている。
【0016】
[絶縁ハウジングについて]
絶縁ハウジング11は、細長平板状をなすように延在する中空状の絶縁部材から形成されているが、その絶縁ハウジング11における長手の横幅方向を、以下において「コネクタ長手方向」と呼び、また信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの端末部分を挿入する方向において上手側を「コネクタ前方」、下手側を「コネクタ後方」と呼ぶこととする。さらに、それらの「コネクタ長手方向」と「コネクタ前後方向」との双方に直交する方向を「コネクタ上下方向」と呼ぶこととする。
【0017】
その絶縁ハウジング11の前端縁部分(
図9の左端縁部分)には、上述したようにフレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)やフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等からなる信号伝送媒体Fの端末部分が挿入される媒体挿入口11aが、コネクタ長手方向に沿って細長状をなすように設けられている。その媒体挿入口11aからは、信号伝送媒体Fが挿入される中空状の媒体挿入通路が、絶縁ハウジング11の内部をコネクタ後方側に向かって延びている。
【0018】
この媒体挿入通路は、絶縁ハウジング11の内壁面により囲まれるようにして画成されたものであるが、その媒体挿入通路の下面を形成している媒体載置面11b上を滑動するようにして、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fが、奥側(コネクタ後方側)に向かって挿入され、または手前側(コネクタ前方側)に抜去される構成になされている。
【0019】
また、上述した媒体挿入口11aに対して反対側のコネクタ後方側端縁部分(
図9の右端縁部分)には、後述する導電コンタクト12等を装着するための部品取付口が、同じくコネクタ長手方向に沿って細長状をなすように設けられている。さらに、媒体挿入口11aに対してコネクタ長手方向の両側外方部分には、後述するロック機構及びロック解除機構を構成しているロック部材13が、コネクタ後方側から前方側(
図10の左方側)に向かって圧入されている。
【0020】
[導電コンタクトについて]
上述したようにして絶縁ハウジング11の内部に圧入された導電コンタクト12は、コネクタ長手方向において適宜の間隔をなして多極状に複数体配置されており、それらの各導電コンタクト12同士が、互いに略同一の形状をなす薄板状金属製部材により形成されている。当該各導電コンタクト12は、上述したように絶縁ハウジング11の後端側に設けられた部品取付口から媒体挿入通路の内部にコネクタ前方側に向かって挿入されるようにして装着されており、それらの各導電コンタクト12の挿入方向後端部分に設けられた固定基部12aが、絶縁ハウジング11のコネクタ後端側の内壁部分に圧入されることによって固定されている。
【0021】
これらの導電コンタクト12の各々は、信号伝送用又はグランド接続用のいずれかとして、主印刷配線基板(図示省略)上に形成された導電路に対して半田接合により実装された状態で使用される。すなわち、上述したようにして絶縁ハウジング11の内部に装着された各導電コンタクト12の配置位置は、媒体挿入口11aを通して絶縁ハウジング11内に挿入される信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fに設けられた配線パターンに対応した設定になされており、それら信号伝送媒体Fの配線パターンは、信号伝送用導電路(信号線パッド)又はシールド用導電路(シールド線パッド)を適宜のピッチ間隔で配置したものとなっている。
【0022】
各導電コンタクト12の構成を具体的に説明すると、まず、上述したように絶縁ハウジング11のコネクタ後端側壁面に対して圧入された固定基部12aの下端縁部分に、基板接続部12a1が形成されており、その基板接続部12a1が、主印刷配線基板(図示省略)上に形成された導電路に半田接続される。
【0023】
さらに、上述した固定基部12aからコネクタ前方側(
図9の左方側)に向かって、一対の可動ビーム12b,12cが上下の二股状に分割されるようにして延出している。これらの両可動ビーム12b,12cは、コネクタ後端側の固定基部12aから片持ち状をなして一体的に延出するように形成されており、当該両可動ビーム12b,12c同士が上下に離間した状態で、絶縁ハウジング11の媒体挿入通路の壁面に形成された取付溝に沿うように延在している。このような構成をなす導電コンタクト12の両可動ビーム12b,12cの延出側(
図9の左方側)部分は、当該両可動ビーム12b,12c同士の連結部分である固定基部12aとの連接部分又はその近傍を中心として、
図9の紙面内において上下の方向に揺動する構成になされている。
【0024】
さらに、これらの両可動ビーム12b,12cにおけるコネクタ前方側への延出端部分(
図9左端側部分)には、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fに形成された信号伝送用導電路又はシールド用導電路(配線パターン)のいずれかに対応して端子接触凸部12b1,12c1が、上下に対向するように各々下向き及び上向きの突形状をなすように設けられている。すなわち、これら両可動ビーム12b,12cにそれぞれ設けられた端子接触凸部12b1,12c1は、上述したように信号伝送媒体Fが絶縁ハウジング11の内部に挿入されて来た際に、当該信号伝送媒体Fの配線パターンの表面上に乗り上げて上下から挟持する配置関係になされており、その信号伝送媒体Fが所定の最終位置(係合位置)まで挿入されたときに、当該両可動ビーム12b,12cの弾性力で圧接されることにより電気的に接続された状態に維持されるようになっている。
【0025】
[ワンアクションオートロック機構について]
本実施形態にかかる電気コネクタ10は、前述したようにワンアクションオートロック機構を備えたものであるが、その前提として信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの端末部分には、例えば
図1に示されているように、当該信号伝送媒体Fの板幅方向(コネクタ長手方向)両側の端縁部分に、切り欠き状の凹部からなる係合位置決め部Faがそれぞれ形成されている。そして、その信号伝送媒体Fに設けられた各係合位置決め部Faに対応して電気コネクタ10側には、ロック機構及びロック解除機構を構成するロック部材13が、コネクタ長手方向の両側部分に取り付けられており、それらの各ロック部材13に設けられた係止ロック部13aの係止作用(ロック作用)によって、信号伝送媒体Fの挿入状態が保持される構成になされている。
【0026】
[ロック部材について]
上述したように絶縁ハウジング11のコネクタ長手方向における両側部分に配置された一対のロック部材13,13同士は、コネクタ長手方向において互いに対称的な構造になされていることから、以下における説明は一方のロック部材13についてのみ行い、他方については省略することとする。
【0027】
ロック部材13は、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fに対するロック機構及びロック解除機構を構成するものであるが、電気コネクタ10の内部に信号伝送媒体Fが差し込まれた際に、当該ロック部材13の一部、より具体的には後述の係止ロック部13aに対して信号伝送媒体Fの挿入側先端縁が当接し、それによって係止ロック部13aが、コネクタ下方側に退避する(
図11参照)。そのとき、係止ロック部13aを支持している後述の弾性ロックアーム部材13eが、同じくコネクタ下方側に弾性変位し、その弾性ロックアーム部材13eの弾性復元力によって係止ロック部13aがコネクタ上方側に移動して、信号伝送媒体Fの係合位置決め部Faの内部に嵌め込まれることで係合状態(ロック状態)になされる。
【0028】
ロック部材13の構造を具体的に説明すると、特に
図7及び
図8に示されているように、当該ロック部材13の全体は、薄肉板状の金属部材からなる一体折曲げ構造体から形成されているが、絶縁ハウジング11の底面の一部をなすように配置された細長平板状の固定基板13bを有している。この固定基板13bは、コネクタ後方側において主印刷配線基板(図示省略)と対面するように配置されるものであるが、コネクタ長手方向の内端縁部分には、上方段差を介して略水平に延在する固定片部13cが連設されており、その固定片部13cが、絶縁ハウジング11の内壁に圧入されることによって、当該ロック部材13の全体の固定が行われている。
【0029】
また、上述したように平板状をなす固定基板13bの後端縁部分(
図10の右端縁部分)には、コネクタ後方側に向かって一体的に延出する基板接続部13dが連設されている。この基板接続部13dは、固定基板13bの後端縁部(
図10の右端縁部)から下降段差を介して略水平に延出しており、主印刷配線基板(図示省略)に形成されたシールド用導電路(シールド線パッド)、または固定用半田領域上に載置された状態で半田接合される。
【0030】
さらに、固定基板13bは、コネクタ長手方向における外端縁部分が上方側に向かって略U字状をなすように折り返されている。当該固定基板13bの上方折り返し部分は、コネクタ長手方向の外方側に向かう方向から反対側のコネクタ内方側(コネクタ中心側)に向かって反転するようにして略水平に延出しており、その水平延出端である内端部からは、帯板状部材からなる弾性ロックアーム部材13eが、コネクタ前方側に向かって一体的に延出している。
【0031】
その弾性ロックアーム部材13eは、主印刷配線基板(図示省略)と略平行な水平状態で延在する片持ち状部材から形成されており、当該弾性ロックアーム部材13eのコネクタ前方側の端部を構成している自由端部分に、係止ロック部13a及びロック解除操作部13fが設けられている。これらの係止ロック部13a及びロック解除操作部13fは、弾性ロックアーム部材13eの板幅方向(コネクタ長手方向)における両側縁部分を、それぞれ略直角上方に折り曲げるようにして一体的に形成されており、板幅方向内側の端縁部に形成された係止ロック部13aと、板幅方向外側の端縁部に形成されたロック解除操作部13fとが、コネクタ長手方向に互いに対面する位置関係になされている。
【0032】
ここで、上述したように弾性ロックアーム部材13eは、その板幅方向がコネクタ長手方向(水平方向)であり、かつ板厚方向が上下方向となるように設定されていることから、主として、薄肉状の板厚方向である上下方向に弾性変位する構成になされている。そして、この弾性ロックアーム部材13eが上下方向に弾性変位するに伴って、上述した係止ロック部13a及びロック解除操作部13fが、
図10の紙面内で上下の方向に往復移動される構成になされている。
【0033】
そのうちの係止ロック部13aは、弾性ロックアーム部材13eにおける延出側の先端部分(
図10の左端縁部分)から側面略台形状をなして上方側に突出するフック状部材から形成されており、上述した信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fが挿入される媒体挿入通路に対して下方側から突没する構成になされている。
【0034】
そのときの媒体挿入通路は、前述したように絶縁ハウジング11の内壁面で囲まれることで、媒体挿入口11aからコネクタ後方側に延びるように画成されたものであるが、その媒体挿入通路の下面である媒体載置面11bを有している絶縁ハウジング11の底板は、薄肉状の板状部材から形成されているとともに、その薄肉状をなす絶縁ハウジング11の底板の下方側に空間部分が形成されている。そして、その絶縁ハウジング11の底板の下方側空間部分に、上述した弾性ロックアーム部材13eが、略水平に延在するように配置されている。
【0035】
さらに、媒体載置面11bを有する絶縁ハウジング11の底板には、上述した係止ロック部13aに対応した位置に、ロック穴11cが上下方向に貫通するように形成されている。このロック穴11cは、係止ロック部13aを遊嵌状態で収容可能な形状及び大きさに形成されており、前述したように弾性ロックアーム部材13eの弾性変位に伴って係止ロック部13aが上下動した際に、当該係止ロック部13aがロック穴11cを通して突没することで、媒体挿入通路の内部に係止ロック部13aが突出したり(
図10参照)、媒体挿入通路から係止ロック部13aが退避してロック穴11cの内部に収容されるようになっている(
図11参照)。
【0036】
また、係止ロック部13aの前端縁部には、媒体挿入通路の内部に挿入される信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fに対面する傾斜案内辺が形成されており、媒体挿入通路の内方に挿入された信号伝送媒体Fの挿入側先端縁部が、
図10のように媒体挿入通路内に突出している係止ロック部13aの傾斜案内辺に当接する位置関係になされている。そして、信号伝送媒体Fが係止ロック部13aの傾斜案内辺に当接した際には、その係止ロック部13aの傾斜案内辺に生じる垂直方向分力によって、当該係止ロック部13aの全体が、
図11に示されているように弾性ロックアーム部材13eの弾性力に抗して下方側の待避位置に押し下げられる構成になされている。
【0037】
さらに、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fが挿入されていくと、当該信号伝送媒体Fに設けられた係合位置決め部Faが、係止ロック部13aの真上に対向する位置に到達することとなる。このとき、
図12に示されているように、弾性ロックアーム部材13eの弾性復元力によって係止ロック部13aが係合位置決め部Faの内部に向かって上方側に強制移動され、それによって両部材Fa,13a同士が係合状態(ロック状態)になされる。そして、その係合状態となった係止ロック部13aの係合力で、信号伝送媒体Fの挿入状態が抜け出すことなく保持される構成になされている。
【0038】
一方、ロック解除操作部13fは、上述した弾性ロックアーム部材13eの延出側先端部分(
図10の左端縁部分)から上方側に突出する板状部材から形成されており、その上端部分に形成された折り曲げ部分が、絶縁ハウジング11の上面から更に上方に突出するように配置されている。そして、
図13のようにロック解除操作部13fが下方に押し下げられることでロック解除操作が行われると、弾性ロックアーム部材13eが下方に向かって撓むように弾性変位し、その分、係止ロック部13aが下方に押し下げられるように移動する構成になされている。
【0039】
次に、ロック部材13には、上述した絶縁ハウジング11の媒体載置面11bに向かって信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fを押圧する媒体押圧片13gが設けられている。この媒体押圧片13gは、固定基板13bの後端縁部分(
図10の右端縁部分)から片持ち状をなしてコネクタ前方側に延出する弾性可撓性部材から形成されている。
【0040】
より具体的には、固定基板13bの後端縁部分(
図10の右端縁部分)には、上述したように基板接続部13dが設けられているが、その基板接続部13dに対しコネクタ内方側に隣接した位置から、帯板状をなす媒体押圧片13gが、略直角上方に立ち上がるように設けられている。その帯板状の弾性可撓性部材からなる媒体押圧片13gは、上述した信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fが挿入される媒体挿入通路の上方位置まで立ち上がった後に、コネクタ前方側(
図10の左方側)に向かって略直角に折り曲げ形成されており、その上方折り曲げ部から片持ちアーム状をなすように延出している。そして、その片持ちの上方アーム状部13g1の延出端部分である自由端部分が、上下方向に往復移動する構成になされている。
【0041】
このような自由端部分を有する媒体押圧片13gの上方アーム状部13g1は、上述した弾性ロックアーム部材13eの上方側に所定の間隔をなすように配置されていて、それらの両部材13g1,13e同士の間に信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fが挿入される位置関係になされている。また、媒体押圧片13gの上方アーム状部13g1は、平面視において、弾性ロックアーム部材13eよりもややコネクタ内方側(コネクタ中心側)にずらした位置に延在しており、上述した係止ロック部13aに対して、信号伝送媒体Fの厚さ方向の上方側から対向するように配置されている。そして、その係止ロック部13aの上方部分には、媒体押圧片13gの自由端部分(先端部分)から下方に向かって突出する媒体接触突部13g2が設けられている。
【0042】
この媒体押圧片13gの媒体接触突部13g2は、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの挿入方向において奥側、すなわち係止ロック部13aよりややコネクタ後方側(
図10の右方側)の領域において、上方アーム状部13g1の一部を鈍角状に折り曲げ形成したものであって、上述した絶縁ハウジング11の媒体載置面11bに対して上方側から対向するように配置されている。そして、その媒体接触突部13g2における下方側の頂点部分が、媒体挿入通路内に挿入される信号伝送媒体Fに対して上方側から当接する配置関係になされており、媒体押圧片13gの上方アーム状部13g1が備えている下方側への弾性付勢力によって、信号伝送媒体Fが、絶縁ハウジング11の媒体載置面11bに押し付けられる構成になされている。
【0043】
このような構成を有する本実施形態によれば、絶縁ハウジング11の内部に挿入されて係止ロック部13aの係合力で保持された信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fが、係止ロック部13aの上方側に対向配置された媒体押圧片13gの弾性付勢力で、係止ロック部13a側に押圧されることとなり、それによって当該信号伝送媒体Fと係止ロック部13aとの係合量が信号伝送媒体の厚さ変動にかかわらず信号伝送媒体を良好な保持状態に維持されることから、ロック部材13による信号伝送媒体Fの保持が確実に行われる。
【0044】
特に、本実施形態においては、媒体押圧片13gの押圧力によって信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fが、絶縁ハウジング11の媒体載置面11bに当接される構成になされていることから、媒体押圧片13gと絶縁ハウジング11の媒体載置面11bとの間に信号伝送媒体Fが挟持されることとなり、それによって信号伝送媒体Fの保持が更に安定的に行われる。
【0045】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0046】
例えば、上述した各実施形態では、電気コネクタに固定される信号伝送媒体として、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)、及びフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)を採用しているが、その他の信号伝送用媒体等を用いた場合に対しても本発明は同様に適用することができる。
【0047】
さらに、上述した実施形態にかかる電気コネクタには、同一形状の導電コンタクトが用いられているが、異なる形状の導電コンタクトを交互に配置した構造であっても本発明は同様に適用することが可能である。