(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979427
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】導電体
(51)【国際特許分類】
H01R 35/02 20060101AFI20160817BHJP
H01R 35/00 20060101ALI20160817BHJP
H01R 4/18 20060101ALI20160817BHJP
H01R 4/02 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
H01R35/02 B
H01R35/00 A
H01R4/18 A
H01R4/02
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-158540(P2012-158540)
(22)【出願日】2012年7月17日
(65)【公開番号】特開2014-22142(P2014-22142A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 雅文
(72)【発明者】
【氏名】堀内 寛二
(72)【発明者】
【氏名】辻井 芳朋
(72)【発明者】
【氏名】逢澤 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】高田 憲作
【審査官】
片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−203585(JP,A)
【文献】
特開2010−192216(JP,A)
【文献】
特開2011−165428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 35/02
H01R 4/02
H01R 4/18
H01R 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体部の周囲が絶縁層で覆われた電線と、
前記電線の端末部において前記絶縁層から露出させた前記導体部が挿通される筒状の電線接続部を一端側に有し、他端側がコネクタに収容される端子に接続される可撓性導電部材と、を備え、
前記可撓性導電部材は、金属線を編み込んでなる編組線であり、
前記端子は、カシメ片を有し、
前記可撓性導電部材の前記他端側は、前記カシメ片により外側から巻き込むようにしてカシメ付けられた状態とされ、前記電線接続部と前記導体部とが電気的に接続されている導電体。
【請求項2】
前記電線接続部は、前記導体部側に押し付けられて電気的に接続されている請求項1に記載の導電体。
【請求項3】
前記電線接続部及び前記導体部が圧着された状態で前記電線接続部と前記導体部とが電気的に接続される請求項2に記載の導電体。
【請求項4】
前記電線接続部及び前記導体部が溶着された状態で前記電線接続部と前記導体部とが電気的に接続される請求項2に記載の導電体。
【請求項5】
前記溶着された状態は、超音波溶着された状態又は抵抗溶着された状態である請求項4に記載の導電体。
【請求項6】
前記導体部は、アルミニウム又はアルミニウム合金製である請求項2ないし請求項5のいずれか一項に記載の導電体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可撓性を有する導体を介して電気的に接続する技術が知られている。
特許文献1のコネクタ装置は、電線側コネクタに設けられ電線端末に接続された電線側端子金具と、機器側コネクタに設けられた機器側の機器側端子金具とが電気的に接続されるようになっており、機器側端子金具は、固定端子金具と変位許容端子とが可撓性導体で接続されて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−165428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、可撓性導体は、機器側コネクタに配されているが、例えば、この可撓性導体を電線側コネクタに配し、電線の端末部に接続する場合には、可撓性導体と電線との間を、仮に端子等の中継用の部材を用いて接続すると、中継用の部材の分だけ製造コストが高くなるという問題がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、製造コストを低減することが可能な導電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の導電体は、導体部の周囲が絶縁層で覆われた電線と、前記電線の端末部において前記絶縁層から露出させた前記導体部が挿通される筒状の電線接続部を
一端側に有し、他端側がコネクタに収容される端子に接続される可撓性導電部材と、を備え、
前記可撓性導電部材は、金属線を編み込んでなる編組線であり、前記端子は、カシメ片を有し、前記可撓性導電部材の前記他端側は、前記カシメ片により外側から巻き込むようにしてカシメ付けられた状態とされ、前記電線接続部と前記導体部とが電気的に接続されている。
【0007】
このようにすれば、電線と可撓性導電部材との間に中継用の部材を介さなくても電線の導体部と可撓性導電部材とを接続することができるから、中継用の部材を有さない分だけ部品点数を削減することが可能になる。よって、製造コストを低減することが可能になる。
【0008】
上記構成の実施態様として以下の構成を有すれば好ましい。
・前記電線接続部は、前記導体部側に押し付けられて電気的に接続されて
いる。
このようにすれば、電線接続部を導体部に電気的に接続する際に、編組線が導体部の酸化被膜を破ることが可能になる。
【0009】
・前記電線接続部及び前記導体部が圧着され
た状態で前記電線接続部と前記導体部とが電気的に接続される。
このようにすれば、簡素な構成で強固に電線の導体部と可撓性導電部材の電線接続部とを電気的に接続することが可能になる。
【0010】
・前記電線接続部及び前記導体部が溶着され
た状態で前記電線接続部と前記導体部とが電気的に接続される。
このようにすれば、電線接続部を圧着する場合と比較して圧着のための別部材が不要になるため、部品点数を削減することが可能になる。
【0011】
・前記溶着
された状態は、超音波溶着
された状態又は抵抗溶着
された状態である。
【0012】
・前記導体部は、アルミニウム又はアルミニウム合金製である。
このようにすれば、導体部がアルミニウム又はアルミニウム合金製であり、表面に酸化被膜が生じやすい場合において、編組線によって酸化被膜を破ることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、導電体の製造コストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】電線の端末部と可撓性導電部材の一端側を示す斜視図
【
図3】導体部に可撓性導電部材が挿通された状態とカシメ部材とを示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
以下、実施形態1について、
図1〜
図3を参照して説明する。
本実施形態の導電体10は、例えば、自動車等の車両において、バッテリ等の電源から負荷に至る導電路に配されたコネクタCN(
図1にて概略的形状を一点鎖線で示し、詳細は省略する)内に設けられている。
【0017】
導電体10は、
図1に示すように、電線11と、筒状で可撓性を有する可撓性導電部材14と、導体部12を覆う可撓性導電部材14の左端側(一端側)をカシメ付けて圧着するカシメ部材17と、を備えており、可撓性導電部材14の右端側(他端側)には、端子18が接続されている。
【0018】
電線11は、導体部12の周囲が絶縁層13(絶縁被覆)で覆われた被覆電線であり、その端末部は、絶縁層13が剥ぎ取られ導体部12が露出している。
導体部12は、アルミニウム又はアルミニウム合金の素線が撚り合わされた撚り線が用いられている。なお、撚り線に限らず、例えば、1本の芯線からなる単芯線を用いることも可能である。
【0019】
可撓性導電部材14は、金属細線をメッシュ状に編み込んだ編組線の全体を筒状に形成したものであり、車両の駆動電力を伝送可能な程度のやや厚肉の厚みを有するとともに、形状を変更可能な可撓性を有する。この編組線としては、例えば、裸軟銅線、無酸素軟銅線及び錫めっき軟銅線を編み込んだものを用いることができる。また、銅線に限られず、銅合金線、アルミニウム線、アルミニウム合金線や、他の金属線を編み込んだものを用いてもよい。
【0020】
この可撓性導電部材14は、左端側(一端側)が電線11の露出した導体部12に挿通されて導体部12と電気的に接続される電線接続部15とされ、右端側(他端側)が端子18に接続される端子接続部14Aとされている。
【0021】
カシメ部材17は、圧着後は円筒形状であって、凹状の底板部の両側縁から一対のカシメ片が立ち上げられており、電線接続部15の外側から導体部12側へカシメ付けることで、一対のカシメ片の先端同士か突き当てられている。
このカシメ部材17の加工前は、
図3に示すように、U字状であって、電線11の端末部において露出させた導体部12が電線接続部15に挿通された状態で電線接続部15を外側から嵌め入れることが可能な形状とされている。
【0022】
端子18は、
図1に示すように、丸形端子であって、外部と接続される外部接続部19と、可撓性導電部材14の端部に接続される可撓側接続部20とを有する。
外部接続部19は、外部の端子やボルト等を挿通可能な取付孔19Aを有する。
【0023】
可撓側接続部20は、一対のカシメ片が底板から立ち上げられており、一対のカシメ片が可撓性導電部材14を外側から巻き込むようにしてカシメ付けて圧着することで可撓性導電部材14と接続される。
【0024】
上記した導電体10は、コネクタCN内に収容されており、何らかの要因により電線11に振動等与えられても、その振動は、可撓性導電部材14の部分で吸収されて、端子18に伝わる振動を軽減することができる。これにより、振動による相手側端子との接続の不具合を防止できる。なお、これに限らず、例えば、端子18が受けた力を可撓性導電部材14が吸収して電線11側に伝えないように構成したり、また、相手側コネクタとの嵌合の際の寸法公差を可撓性導電部材14の部分で吸収して組み付けの不具合を防止することも可能である。
【0025】
また、本実施形態では、コネクタCN内における電線11の延出方向と、端子18の延出方向とが同一方向であるが、これに限らず、コネクタCN内における電線11の延出方向と、端子18の延出方向とが異なるように配置してもよく、この場合、可撓性導電部材14を(L字形等に)屈曲させた形状に撓ませればよい。
【0026】
導電体10の製造方法について説明する。
電線11の端末部において絶縁層13を剥ぎ取り導体部12を露出させるとともに、両端が開口する筒状の編組線からなる可撓性導電部材14の一端側の電線接続部15に露出させた導体部12を挿通する。
【0027】
次に、カシメ部材17の上に可撓性導電部材14の一端側の電線接続部15及び導体部12を載置して、圧着金型等を用いてカシメ部材17をかしめて電線接続部15及び導体部12を圧着するとともに、端子18の可撓側接続部20を可撓性導電部材14の他端側の端子接続部14Aに圧着する。
これにより、導電体10が形成される。
【0028】
本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏する。
(1)本実施形態によれば、電線11と可撓性導電部材14との間に中継用の部材を介さなくても電線11の導体部12と可撓性導電部材14とを接続することができるから、中継用の部材を有さない分だけ部品点数を削減することが可能になる。よって、製造コストを低減することが可能になる。また、中継用の部材をなくすことで、中継用の部材における導体部12や可撓性導電部材14との接続部分の抵抗により、導電体10の抵抗が大きくなることを防止できる。
【0029】
(2)電線接続部15は、導体部12側に押し付けられて電気的に接続されており、可撓性導電部材14は、金属線を編み込んでなる編組線である。
このようにすれば、電線接続部15を導体部12に電気的に接続する際に、編組線が導体部12の酸化被膜を破ることが可能になる。
【0030】
(3)電線接続部15及び導体部12が圧着されることで電線接続部15と導体部12とが電気的に接続される。
このようにすれば、簡素な構成で強固に電線11の導体部12と可撓性導電部材14の電線接続部15とを電気的に接続することが可能になる。
【0031】
(4)導体部12は、アルミニウム又はアルミニウム合金製である。
このようにすれば、導体部12がアルミニウム又はアルミニウム合金製であり、表面に酸化被膜が生じやすい場合において、編組線によって酸化被膜を破ることが可能になる。
【0032】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を
図4を参照して説明する。
実施形態1の導電体10は、導体部12と可撓性導電部材14とをカシメ部材17で圧着して電気的に接続したが、実施形態2の導電体21は、
図4に示すように、導体部12と可撓性導電部材14とを超音波溶着して電気的に接続する構成としたものである。以下では、実施形態1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0033】
導電体21は、電線11の端末部で露出した導体部12に可撓性導電部材14の電線接続部15が挿通された状態で、電線接続部15が超音波溶着されており、これにより、導体部12と電線接続部15とが電気的に接続されている。
【0034】
導電体21の製造方法について説明する。
電線11の端末部において絶縁層13を剥ぎ取り露出させた導体部12に可撓性導電部材14の電線接続部15が挿通された状態(
図3参照)で治具に載置する。そして、ホーンにより電線接続部15に対して加圧しつつ超音波振動を与える。
これにより、導体部12と電線接続部15とが超音波溶着され、導体部12と電線接続部15とが電気的に接続される。
【0035】
実施形態2によれば、電線接続部15及び導体部12が溶着されることで電線接続部15と導体部12とが電気的に接続されるため、電線接続部15を圧着する場合と比較して圧着のための別部材(カシメ部材17)が不要になり、部品点数を削減することが可能になる。
【0036】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態2では、電線接続部15及び導体部12を超音波溶着(超音波溶接)したが、これに限られず、他の溶着(溶接)で電線接続部15と導体部12とを電気的に接続するようにしてもよい。例えば、抵抗溶着(抵抗溶接)で電線接続部15と導体部12とを電気的に接続してもよい。
【0037】
(2)上記実施形態の可撓性導電部材14は、全体が筒状であったが、これに限らず、少なくとも電線接続部15が筒状で導体部12を挿通可能であれば、他の部分は、筒状でなくてもよい。例えば、電線接続部15以外を帯状として(1枚、又は、複数枚重ねて)、端子18と接続するようにしてもよい。
【0038】
(3)端子は、上記実施形態の端子18の形状に限らず、種々の形状を用いることができる。例えば、箱形の外部接続部を有する雌端子や、棒状の雄タブを有する雄端子としてもよい。
【0039】
(4)電線11の導体部12は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることとしたが、これに限られず、他の種類の金属を用いてもよい。例えば、銅又は銅合金を用いてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10,21…導電体
11…電線
12…導体部
13…絶縁層
14…可撓性導電部材
14A…端子接続部
15…電線接続部
17…カシメ部材
18…端子
CN…コネクタ