【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度〜平成26年度、独立行政法人科学技術振興機構、内閣府最先端研究開発支援プログラムの研究課題「再生医療産業化に向けたシステムインテグレーション―臓器ファクトリーの創生―」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
開閉可能な開口部が設けられて被培養物を収容する収容庫と、開閉可能な開口部が設けられて被培養物の培養を行うインキュベータと、上記収容庫とインキュベータとを接続するとともに上記収容庫の開口部と上記インキュベータの開口部とを無菌状態を維持したまま連通させる接続手段とを備え、
上記収容庫は、開口部を開閉する扉を有し、
上記インキュベータは、被培養物を収容する収容部と、上記収容部に収容された被培養物を外部から観察可能とする透明な観察用窓と、上記開口部を開閉する扉とを有し、
上記接続手段により、上記収容庫およびインキュベータを連通させて無菌状態を維持したまま被培養物を上記インキュベータの収容部に移送可能とするとともに、上記インキュベータ内を無菌状態に維持したまま当該インキュベータを上記収容庫から離脱可能とし、
さらに上記収容庫およびインキュベータの外に観察手段を配置し、上記収容庫から離脱されたインキュベータを上記観察手段に移動させて、該観察手段によりインキュベータの収容部に収容された被培養物を上記観察用窓を介して観察可能としたことを特徴とする培養システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、上記特許文献1や特許文献2の培養システムによれば、アイソレータやインキュベータに観察用の窓を形成しているため、外部に配置した観察手段によって被培養物を観察することができる。
しかしながら、特許文献1や特許文献2の構成では、観察できる被培養物は同一条件の空間に配置された被培養物に限られ、異なる温度や湿度の条件で培養される被培養物や、異なる種類の被培養物を同一のアイソレータやインキュベータに収容することはできなかった。さらに、細胞を培養できる空間は限られており、培養可能な培養容器の数はアイソレータやインキュベータの容積により制限されていた。
また、特許文献1や特許文献2では、被培養物を観察する位置が決まっており、例えば、アイソレータやインキュベータとは別の場所に設置された研究室に配置されているより高い解像度を有する顕微鏡によって観察することはできなかった。
しかも特許文献2では、被培養物をインキュベータに搬入する際に、インキュベータの扉を開放する必要があり、無菌状態を維持したまま培養容器を搬入することができず、再生医療等に利用するような被培養物を観察する上で好ましくなかった。
そして特許文献3の培養システムの場合、アイソレータ内で処理された被培養物を複数のインキュベータに移載して培養することが可能であり、多様な条件や多種類の被培養物を培養することが可能であるが、各インキュベータには観察手段を備えていないため、被培養物を観察することはできなかった。
仮に特許文献3の各インキュベータに観察用の窓を形成したとしても、特許文献3では各インキュベータを保管手段へ位置させる必要があることから、決まった場所で観察することになり、別の部屋に配置された観察手段で観察したいと思っても観察手段の方を移動させなければならないという問題があった。
このような問題に鑑み、本発明はインキュベータ内の被培養物の培養状態を容易にかつ安価に観察することが可能な培養システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、請求項1にかかる培養システムは、開閉可能な開口部が設けられて被培養物を収容する収容庫と、開閉可能な開口部が設けられて被培養物の培養を行うインキュベータと、上記収容庫とインキュベータとを接続するとともに上記収容庫の開口部と上記インキュベータの開口部とを無菌状態を維持したまま連通させる接続手段とを備え、
上記収容庫は、開口部を開閉する扉を有し、
上記インキュベータは、被培養物を収容する収容部と、上記収容部に収容された被培養物を外部から観察可能とする透明な観察用窓と、上記開口部を開閉する扉とを有し、
上記接続手段によ
り、上記収容庫およびインキュベータを連通させ
て無菌状態を維持したまま被培養物を上記インキュベータの収容部に移送
可能とするとともに、上記インキュベータ内を無菌状態に維持したまま当該インキュベータを上記収容庫から離脱可能とし、
さらに上記収容庫およびインキュベータの外に
観察手段を配置し、上記収容庫から離脱されたインキュベータを上記観察手段に移動させて、該観察手段によりインキュベータの収容部に収容された被培養物を上記観察用窓を介して観察可能としたことを特徴としている。
【0006】
請求項2にかかる培養システムは、請求項1に記載の培養システムにおいて、上記接続手段は、上記収容庫およびインキュベータの開口部を覆う筒状部材と、上記筒状部材の内部に除染剤を供給する除染剤供給口とを備え、
上記筒状部材により上記収容庫と上記インキュベータとを接続して、当該筒状部材の内部に上記収容庫及び上記インキュベータに備えられた上記扉とによって区画された空間を形成し、
当該空間に上記収容庫および上記インキュベータの外部に設けた除染剤供給手段が除染剤を上記除染剤供給口を介して供給してから、上記扉を開放して上記収容庫と上記インキュベータとを無菌的に接続することを特徴している。
【0007】
請求項3にかかる培養システムは、請求項1または請求項2のいずれかに記載の培養システムにおいて、上記インキュベータは除染剤を供給する除染剤供給口を備え、
上記インキュベータの外部に設けた除染剤供給手段で発生させた除染剤を、上記除染剤供給口よりインキュベータの内部に供給することを特徴としている。
【0008】
請求項4にかかる培養システムは、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の培養システムにおいて、上記収容庫は、アイソレータであることを特徴としている。
【0009】
請求項5にかかる培養システムは、請求項4に記載の培養システムにおいて、上記アイソレータは除染剤を供給する除染剤供給口を備え、
上記アイソレータの外部に設けた除染剤供給手段で発生させた除染剤を、上記除染剤供給口より上記アイソレータの内部に供給することを特徴としている。
【0010】
請求項6にかかる培養システムは、請求項4または請求項5のいずれかに記載の培養システムにおいて、上記アイソレータの内部に搬送手段を設け、
上記搬送手段により上記アイソレータから上記インキュベータの収容部に被培養物を移動させることを特徴としている。
【0011】
請求項7にかかる培養システムは、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の培養システムにおいて、上記インキュベータの収容部に外側に向けて突出する突出部を設けるとともに、当該突出部に上記観察用窓を設け、
上記被培養物を上記突出部に収容して、上記インキュベータの外に配置した観察手段により上記観察用窓を介して被培養物を観察可能としたことを特徴としている。
【0012】
請求項8にかかる培養システムは、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の培養システムにおいて、上記インキュベータの収容部の内部に被培養物の移送手段を設け、
上記移送手段は、水平方向又は上下方向に被培養物を移送する機能を有し、上記観察用窓の位置に被培養物を移送することを特徴としている。
【0013】
請求項9にかかる培養システムは、請求項8に記載の培養システムにおいて、上記移送手段は、回転テーブルであることを特徴としている。
【0014】
請求項10にかかる培養システムは、
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の培養システムにおいて、
上記インキュベータを複数設けるとともに、上記接続手段によって各インキュベータを上記収容庫に対して接続可能としたことを特徴としている。
【0015】
請求項11にかかる培養システムは、
請求項10の培養システムにおいて、
上記複数のインキュベータの各収容部に収容された被培養物は、上記観察手段によりそれぞれの観察用窓を介して観察可能であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
上記請求項1の発明によれば、インキュベータの内部空間と収容庫の内部空間とを無菌状態を維持したまま接続可能となる。これにより、該インキュベータの内部に外部空間と隔絶した密閉空間を維持することが可能となり、所望の被培養物を、無菌状態を維持しながら収納することが可能となる。
またインキュベータに観察用窓を設けることで、インキュベータや収容庫の外部に設置した観察手段によって被培養物を外部から観察することができ、その際必要に応じて任意の観察手段を用いて観察を行うことができる。
このように、観察手段をインキュベータや収容庫の外部に設置することができるため、観察手段を除染したり無菌化する必要がなく、観察手段自体が除染剤に耐え、かつ発塵を防止する構成を必要としないことから、汎用の低価格の観察手段が使用可能となり、併せてインキュベータや収容庫内に汚染源となる機器を持ち込まなくてすむため、再生医療の用途に用いられる被培養物の安全性の確保が可能となる。
そして、観察手段をインキュベータの外部に設置したことにより、複数のインキュベータを交互に上記観察手段まで移動させれば、少ない観察手段により必要に応じて被培養物の培養状態を観察することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、収納庫として、被培養物に対して所望の作業を行うアイソレータ(例えば、搬送ロボットを備えたアイソレータ、無菌的に培養可能なインキュベータ等)を使用することにより、該インキュベータを培養工程、細胞種または目的等に応じた所望のアイソレータと無菌的に接続することができ、目的に応じて培養している被培養物の状態を無菌的な状態で観察することが可能となる。
【0018】
請求項10の発明によれば、インキュベータを複数設けることで、観察が必要な被培養物のみを選別して該インキュベータへ移送し、該インキュベータに設けた観察用窓を通して、該インキュベータ外部の設けた観察手段により、被培養物を観察することも可能となる。
また、異なる患者から採取した細胞等を培養する必要が生じた場合、別々のインキュベータで培養することが可能となる。これにより、各患者の細胞の交差汚染(クロスコンタミネーション)を防ぐことができ、また各細胞の培養状態もそれぞれのインキュベータで観察可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図示実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
図1は本発明にかかる培養システム1の構成図を示しており、この培養システム1は、被培養物に対して所要の作業を行い、インキュベータ4に被培養物を搬送する収容庫としてのアイソレータ2と、上記被培養物を観察する観察手段3と、被培養物の培養を行う複数のインキュベータ4とから構成されている。
上記被培養物は例えば患者から採取した皮膚組織などであり、上記アイソレータ2において培地入りの培養容器5に収容され、上記インキュベータ4で培養されるようになっている。
図2に示すように、上記インキュベータ4は移動手段としての台車6によって移動可能になっており、上記培養容器5を収容したインキュベータ4は、上記台車6によってアイソレータ2より離隔した位置まで移動され、その内部で被培養物の培養を行うことが可能となっている。
上記インキュベータ4は従来公知であり、ここには図示しないが、温度を調節する手段、湿度を調節する手段、炭酸ガス濃度を調節する手段等、細胞等を培養する条件を調節する手段を備えている。
またインキュベータ4は、細胞等を保管し培養する機能のみならず、外部の空間と隔絶する密閉構造となっている。そのため、インキュベータ4は外部から異物が混入せず、無菌状態を維持することができる。
なお、上記インキュベータ4は、アイソレータとしての機能を有していても良く、上述の細胞等を培養する条件を調節する機能を備えていないものであっても良い。これらは目的に応じて適宜選択することができる。
そして、各インキュベータ4とアイソレータ2とは、接続手段7によって相互に接続可能となっており、インキュベータ4とアイソレータ2との間で上記培養容器5を無菌状態を維持したまま移載することが可能となっている。
そして本実施例の培養システム1によれば、インキュベータ4内の被培養物の培養状態を観察したい場合には、インキュベータ4を上記観察手段3まで移動させれば、インキュベータ4の内部を直接上記観察手段3によって観察することが可能となっている。
【0021】
上記アイソレータ2は、2つの作業用アイソレータ11と、これら2つの作業用アイソレータ11の間に設けられ、上記インキュベータ4の接続される移載用アイソレータ12とから構成されている。なお、上記作業用アイソレータ11は1つだけでも良いし3つ以上配置してもよい。
上記作業用アイソレータ11、移載用アイソレータ12、およびインキュベータ4は、それぞれ図示しない除染剤供給口を設えており、作業用アイソレータ11、移載用アイソレータ12およびインキュベータ4の外部に設けられた図示しない除染剤供給手段に接続されている。
上記除染剤供給手段で発生させた除染剤は、上記除染剤供給口を通して作業用アイソレータ11、移載用アイソレータ12およびインキュベータ4の内部に供給されることで、これらの内部が除染されて無菌状態となる。
作業用アイソレータ11、移載用アイソレータ12およびインキュベータ4の内部を除染する方法としては特に限定されないが、作業用アイソレータ11、移載用アイソレータ12およびインキュベータ4をそれぞれ開閉扉によって区画して個別に除染してもよく、上記開閉扉を開放して内部空間を一体的に連通させた状態で一度に除染することも可能である。このような除染方法は、目的に応じて適宜選択すればよい。
また上記除染剤としては、例えば過酸化水素でも良いし、過酢酸、ホルムアルデヒド、オゾン、二酸化塩素なども用いることができ、特に限定されない。そしてこれらを上記や気体またはミスト状として供給するものが好ましい。
【0022】
上記作業用アイソレータ11には、作業者が使用する図示しないグローブや培養作業を行うための器具等が備えられ、また、図示しないが作業用アイソレータ11には作業前の被培養物や空の培養容器5等を搬入するための移送容器や、インキュベータ4とは別のインキュベータも接続可能となっている。
上記移載用アイソレータ12の中央には、無菌状態下での作動に適したロボット13が設けられており、ロボット13のハンド13aによって上記培養容器5を把持するようになっている。
本実施例のロボット13は、上記作業用アイソレータ11で作業された被培養物入りの培養容器5を取り出し、この培養容器5を上記接続手段7によって接続されたインキュベータ4に移載するようになっている。
なお、培養容器5を移送する手段としては、上記ロボット13のほか、エアシリンダやモーターアクチュエータを用いることも可能である。
【0023】
図6に示すように、上記移載用アイソレータ12には、上記培養容器5をインキュベータ4に移載するための開口部12aが形成されており、上記開口部12aはアイソレータ2の内部に設けた開閉扉14によって開閉可能となっている。
上記開口部12aの形成された壁面12bには、アイソレータ2の内側に向けてパッキン15が固定され、このパッキン15は図示しないエア供給手段によって膨張状態と収縮状態とに切り替わるようになっている。
またアイソレータ2の内部空間には、上下方向に向けて設けられた2本のレール16と、上記開閉扉14を昇降させるエアシリンダ17とが設けられ、上記開閉扉14の背面には上記レール16と係合する案内ローラ18が設けられている。
上記案内ローラ18には凹部が形成されており、この凹部に上記レール16が係合している。また、上記案内ローラ18は上記開閉扉14の四隅に回転可能に設けられており、上記エアシリンダ17によって開閉扉14が上下に移動する際には、案内ローラ18がレール16に沿って移動しながら回転するようになっている。
【0024】
このような構成により、上記移載用アイソレータ12の開閉扉14を閉鎖状態とするには、上記エアシリンダ17が開閉扉14を上記開口部12aを覆う高さまで上昇させると、上記パッキン15がエア供給手段によって膨張して開閉扉14に密着する。
膨張したパッキン15は開閉扉14をアイソレータ2の内部に向けて付勢するが、案内ローラ18の凹部と上記レール16が係合しているため、開閉扉14はアイソレータ2の内部へ向けた方向へは移動せず、パッキン15と開閉扉14とは気密を保った状態で密着する。
一方、閉鎖状態から開放状態とする際には、上記パッキン15のエアを排出して開閉扉14より離脱させ、この状態でエアシリンダ17が開閉扉14を下降させれば、開口部12aを開放することができる。
なお、このような構成を有するアイソレータ2および開閉扉14は従来公知であり、他の構成、例えば上記ロボット13によって内側から開閉扉14を開閉させる構成を有したアイソレータ2であってもよい。また、インキュベータ4にロボット等を設けて、インキュベータ4の内側から開閉扉14を開閉させるようにしてもよい。
【0025】
図3に示すように、観察手段3は載置台21の上部に固定された本体部22と、当該本体部22にアーム22aを介して連結された照明手段23と、上記本体部22の内部に設けられたカメラ24とから構成されている。
上記載置台21はインキュベータ4を移動させる上記台車6と干渉しないようになっており、詳しくは、上記台車6は上方から見て略コ字形を有しており、載置台3aがこの台車6の内部に収容されるようになっている。
上記本体部22は略直方体を有しており、その内部には上記カメラ24のほか、このカメラ24の上方に設けられたレンズ25や、上記カメラ24が撮影した画像を処理する画像処理部等が収容されている。
上記照明手段23は略筒状のハウジングに収容されるとともに、上記アーム22aによって上記本体部22のカメラ24の上方に保持され、下方に位置する被培養物に向けて光を照射するようになっている。
上記カメラ24は、上記レンズ25によって上方に位置する被培養物を任意の倍率で撮影することが可能となっており、この撮影した画像は、上記画像処理部によって図示しないモニタに表示させることが可能となっている。
なお、このような観察手段3は従来公知であり、詳細な説明は省略する。
【0026】
上記インキュベータ4は、内部が無菌状態に維持されたハウジング31と、ハウジング31に形成された開口部31aを閉鎖する開閉扉32と、当該開閉扉32を開閉する開閉機構33とを備え、上記インキュベータ4は上記台車6の上部に固定されている。
また上記インキュベータ4は図示しない温度・湿度調整手段を備え、内部が所定の温度ならびに湿度に維持されて、被培養物の培養に好適な環境が維持されるようになっている。
図4は上記ハウジング31の形状を説明する斜視図であり、以下の複数の空間から構成されている。なお以下の説明において、ハウジング31におけるアイソレータ2側を背面、観察手段3側を正面と呼ぶこととする。
上記ハウジング31は、背面側に形成されて上記開閉扉32を収容する搬出入部34と、正面側に形成されて上記培養容器5を収容する収容部35と、上記搬出入部34および収容部35の両側面に形成されて上記開閉機構33を収容する開閉機構部36とから構成されている。
【0027】
図3に示すように、上記搬出入部34は上下方向に長細く形成された空間となっており、上記開口部31aの形成された壁面31bから上記収容部35までの距離は、上記開閉扉32が収容可能な程度の長さに設定されている。
上記開口部31aはハウジング31の内部側に設けたシール部材37によって囲繞され、上記開閉扉32が密着することでインキュベータ4の内部を気密を保った状態で閉鎖可能となっている。
上記開口部31aおよび開閉扉32の下端部は、上記収容部35の下端部よりも下方に位置している。このため開閉扉32を上記壁面31bに軸支させてしまうと、開閉扉32がハウジング31の内部に向けて揺動した際に上記収容部35に干渉してしまうことから、上記開口部32aと上記収容部35との距離を長くしなければならない。
これに対し、本実施例の開閉扉32は、上記開閉機構33によって上記搬出入部34の内部を上記開口部31aに沿って上下に移動するようになっており、これにより上記開口部31aから上記収容部35までの距離を短くすることができる。
【0028】
上記収容部35は、上記搬出入部34の上端から略中央にかけて形成された空間となっており、背面側から正面側にかけて傾斜する傾斜面35aと、当該傾斜面35aの中央に形成した凹部35bとを備えている。
上記収容部35の下端部は、上述したように上記開口部31aの下端部よりも上方に位置しており、かつ
図3に示すように上記観察手段3の本体部22に対して若干上方に位置している。
そして、上記収容部35の内部底面には培養容器5を保持するための保持具38が設けられており、
図6に示すように培養容器5に当接するストッパ38aと、当該ストッパ38aに固定されて上記培養容器5を両側から保持する板ばね38bとから構成されている。
このような構成により、
図2に示す移載用アイソレータ12に設けられたロボット13は、培養容器5を水平方向に移動させるだけで、この収容部35に培養容器5を移載することが可能となっている。
その際、ロボット13は培養容器5を上記保持具38の板ばね38bを変形させながら押し込めば、培養容器5は板ばね38bの付勢力によって挟持され、その後インキュベータ4を移動させても培養容器5が移動しないように保持される。
【0029】
上記傾斜面35aの中央に形成された凹部35bは、上記観察手段3における照明手段23を収容可能な形状に形成され、当該凹部35bの底部は上記照明手段23の下端部よりも若干下方に位置している。
この凹部35bの底部と上記収容部35の底面との間隔は、上記培養容器5を収容可能であって、かつ上記観察手段3における照明手段23と本体部22との間に挿入可能な間隔となっている。
以上のことから、上記ハウジング31における上記凹部35bの形成された部分は、
図3に示すように上記搬出入部34と収容部35とによって断面略ト字形の空間を形成している。
そして上記収容部35の底面には、該収容部35に収容された培養容器5を外部から観察可能とする透明な観察用窓39が設けられており、また上記観察用窓39を挟んで上記培養容器5の反対側となる上記凹部35bの底部には照明用窓40が設けられている。
このような構成により、上記照明手段23が照明用窓40を介して収容部35に収容された被培養物に光を照射すれば、上記カメラ24がこの光によって照明された被培養物を上記観察用窓39を介して下方から撮影可能となっている。
そして、これら観察用窓39および照明用窓40は、図示しないが従来公知のヒータによって加熱されるようになっており、上記観察手段3によって培養容器5の内部を観察する際に、これらの窓がインキュベータ4内部の湿度によって結露しないようにすることができる。
【0030】
上記開閉機構部36は、上記搬出入部34および収容部35の両側に形成されており、上記収容部35の載置部の高さから上記搬出入部34の下端部にかけて形成された空間となっている。
このため、ハウジング31を正面から見ると、上記収容部35と開閉機構部36とによって、下方が開口した略コ字形の空間が形成され、この空間には
図3に示すように上記観察手段3の本体部22が収容されるようになっている。
【0031】
上記開閉機構33は、ハウジング31の外部に設けられた1対の閉鎖維持レバー41と、該閉鎖維持レバー41の基部に形成された偏心カム42と、上記開閉扉32の略中央に設けた閉鎖維持用ピン43と、ハウジング31の外部に設けられた1対の開閉レバー44と、該閉鎖維持レバー41の基部に連結された開閉アーム45と、上記開閉扉32の下方に設けた開閉用ピン46とから構成されている。
また
図5は上記開閉機構33の動作を説明する図であって、(a)は開閉扉32の閉鎖状態を、(b)は開放状態をそれぞれ示している。
上記閉鎖維持レバー41は、
図6に示すようにハウジング31の両側に設けられており、上記開閉機構部36の外側に気密を保った状態で回転可能に軸支されている。
上記偏心カム42は、上記閉鎖維持レバー41の基部に設けられており、回転中心に対して偏心した位置にキー溝42aが形成されている。このキー溝42aは開閉扉32の閉鎖状態では上記閉鎖維持レバー41によって開口部31a側を向き、開閉扉32の開放状態では下方を向くようになっている。
上記開閉扉32に形成された閉鎖維持用ピン43は、この偏心カム42のキー溝42aが開口部31a側を向いた際に、該キー溝42aによって開口部31a側に押圧されるようになっている。
つまり、開閉扉32はこの偏心カム42によって開口部31a側に付勢され、上記パッキン15に密着した状態を維持するようになっている。
この開閉扉32の閉鎖状態から、上記閉鎖維持レバー41を回転させると、上記偏心カム42のキー溝42aが下方を向き、上記閉鎖維持用ピン43が開口部31aより離隔することとなる。
その結果、開閉扉32は上記パッキン15より離脱し、上記昇降手段42によって昇降可能な状態となる。
【0032】
上記開閉レバー44は、
図6に示すようにハウジング31の両側に設けられており、上記開閉機構部36の外側に気密を保った状態で回転可能に軸支されている。
上記開閉アーム45は上記開閉レバー44によって上記ハウジング31の開閉機構部36の内部で揺動し、その先端には上記開閉用ピン46に係合する係合溝45aが形成されている。
上記開閉扉32を閉鎖状態から開放するには、予め上記閉鎖維持レバー41を操作して上記開閉扉32を上記パッキン15より離脱させておき、その状態で開閉レバー44を操作する。
開閉レバー44を操作して上記開閉アーム45の先端が下方に移動すると、上記係合溝45aに係合している開閉用ピン46に伴って開閉扉32が下方に移動し、これにより開口部31aが開放されるようになっている。
そして開放状態から開閉扉32を閉鎖状態とするには、上記動作を逆に行えばよい。
【0033】
次に、
図6を用いて上記移載用アイソレータ12とインキュベータ4とを接続する接続手段7について説明する。接続手段7は、上記移載用アイソレータ12に設けた4つの接続用シリンダ51と、各インキュベータ4に設けた4つの接続用プレート52と、上記移載用アイソレータ12およびインキュベータ4の開口部12a、31aを連通させる筒状部材53と、上記筒状部材53の内部に除染剤を供給する除染剤供給手段54とから構成されている。
上記接続用シリンダ51は移載用アイソレータ12の壁面12bの外部に固定され、先端に設けた接続ピン51aが図示しないエア供給手段によって進退動するようになっている。
上記接続用プレート52は、インキュベータ4におけるハウジング31の壁面31bの背面に固定されており、その先端には上記接続ピン51aが挿入される貫通穴52a(
図3参照)が形成されている。
このような構成により、上記インキュベータ4を移載用アイソレータ12に接近させ、その状態で上記接続用シリンダ51を作動させると、上記接続ピン51aが接続用プレート52の貫通穴52aに嵌合し、これによりインキュベータ4は移載用アイソレータ12に連結固定されることとなる。
【0034】
上記筒状部材53は、上記移載用アイソレータ12およびインキュベータ4の開口部12a、31aを覆うように形成され、一端が上記移載用アイソレータ12の壁面12bに固定され、他端には上記インキュベータ4の密着するパッキン55が設けられている。
上記パッキン55は、移載用アイソレータ12とインキュベータ4とが上記接続用シリンダ51および接続用プレート52によって接続されると、図示しないエア供給手段によって膨張し、インキュベータ4の壁面31bに密着するようになっている。
そして上記筒状部材53の側面には、上記除染剤供給手段54からの除染剤により当該筒状部材53の内部を除染する除染剤供給口56と、筒状部材53から除染済みの除染剤を排出させる除染剤排出口57とが設けられている。
そして、上記除染剤供給口56と除染剤供給手段54との間には供給配管58が配設されるとともに、上記除染剤排出口57には排出配管59が接続されており、この排出配管59には排出する除染剤を分解する触媒60が設けられている。また上記供給配管58および排出配管58はそれぞれ開閉バルブ61、62によって開閉可能となっている。
上記除染剤供給手段54は、除染剤としての過酸化水素水溶液を貯溜する貯液タンク63と、当該貯液タンク63から過酸化水素水溶液を所定流量ずつ送液する送液ポンプ64と、ブロア65によって送気されたエアを加熱するとともに上記過酸化水素水溶液を蒸発させて過酸化水素蒸気を発生させる蒸発器66とを備え、上記ブロア65の上流側にはHEPAフィルタ67が設けられている。
上記構成によれば、上記除染剤供給手段54が作成した過酸化水素蒸気は、上記除染剤供給口56より筒状部材53に流入すると、上記筒状部材53の内部に形成された空間を充満し、上記アイソレータ2およびインキュベータ4において外部に露出していた部分を除染する。
特に、上記開口部12a、31aの周囲が除染されるため、その後上記開口部12a、31aを開放しても、これらの間は上記筒状部材53によって除染された空間が維持されているため、除染された状態でインキュベータ4とアイソレータ12との内部空間を接続可能となり、無菌状態を維持しながら培養容器5の移載、収納を行うことが可能となっている。
【0035】
上記構成を有する培養システム1の使用方法について説明する。
使用者は培養前の被培養物を上記作業用アイソレータ11に搬送し、その後グローブを用いて作業用アイソレータ11の内部で被培養物を培養可能な状態にし、これを上記培養容器5に収容する。
次に、上記移載用アイソレータ12のロボット13が作動して、上記作業用アイソレータ11と移載用アイソレータ12とを区画する開閉扉を開放し、作業用アイソレータ11の所要の位置に載置された培養容器5を保持する。
これと並行して、使用者は空のインキュベータ4を上記移載用アイソレータ12に隣接した位置まで移動させ、上記接続手段7によってインキュベータ4を移載用アイソレータ12に接続する。
具体的には、上記台車6によってインキュベータ4を移載用アイソレータ12に隣接した位置まで移動させると、上記接続用シリンダ51が作動して上記接続ピン51aをインキュベータ4に設けた接続用プレート52の貫通孔52aに嵌合させ、これによりインキュベータ4を移載用アイソレータ12に連結固定する。
続いて、上記筒状部材53の先端に設けられた上記パッキン55が図示しないエア供給手段によって膨張すると、該パッキン55がインキュベータ4の壁面31bに密着し、これにより筒状部材53の内部が外気から区画される。
このようにインキュベータ4を移載用アイソレータ12に接続したら、上記除染剤供給手段54が作動し、除染剤供給口56を介して筒状部材53の内部に除染剤を充満させ、所定時間経過後、除染剤を上記排出配管59から排出する。
これにより、筒状部材53の内部空間に露出していたインキュベータ4および移載用アイソレータ12の開口部12a、31aの周囲が除染され、これら開口部12a、31aを開放して無菌状態下で培養容器5を移載用アイソレータ12からインキュベータ4へと移載可能な状態となる。
【0036】
上記筒状部材53の内部が除染されると、移載用アイソレータ12の開閉扉14が開放され、一方で使用者はインキュベータ4の開閉機構33の閉鎖維持用レバー43と開閉レバー44とを操作し、開閉扉32を開放する。
すると、ロボット13は保持した培養容器5を水平に移動させて、上記アイソレータ2およびインキュベータ4の開口部12a、31aを通過させた後、インキュベータ4のハウジング31に形成された収容部35に収容し、上記保持具38に保持させる。
このように培養容器5がインキュベータ4内に収容されたら、使用者は再びインキュベータ4の開閉機構33により開閉扉32を閉鎖するとともに、移載用アイソレータ12の開閉扉14を閉鎖し、さらに上記接続手段7を解除してアイソレータ2とインキュベータ4とを分離し、インキュベータ4を所要の位置まで移動させて被培養物の培養を行う。
【0037】
その後、インキュベータ4内で培養された被培養物の培養状態を確認したい場合には、使用者はこのインキュベータ4を上記観察手段3まで移動させることができる。
使用者は、インキュベータ4を台車6によって移動させ、
図3に示すように観察手段3における照明手段23と本体部22との間に、上記ハウジング31を構成する上記収容部35を挿入し、これにより上記観察手段3による観察可能位置に上記培養容器5が位置するようになっている。
そして上記証明手段23の光は収容部35の上部に設けた照明用窓40を通過して上記培養容器5内の被培養物を照明し、上記カメラ24はこの被培養物を上記観察用窓39を介して撮影するようになっている。
このとき、これら照明用窓40および観察用窓39はヒータによって結露が除去されており、カメラ24によって鮮明な被培養物の画像を得ることが可能となっている。
一方、照明用窓40および観察用窓39の設けられた収容部35はインキュベータ4のハウジング31より突出しているため、ハウジング31の内部に比べて冷やされやすく、被培養物にとって最適な培養条件より逸脱する可能性がある。
そのため、照明用窓40および観察用窓39が有するヒータにより、観察用窓39の上に載せた被培養物の周囲の温度を培養に最適な温度に維持するようになっている。
そして観察が終了した後には、使用者は再びインキュベータ4を所定の位置まで移動させて、被培養物の培養を続行することができる。
【0038】
上記実施例によれば、無菌状態に維持されたアイソレータ2内で処理された培養容器5を無菌状態を維持したまま、インキュベータ4内に移送することができ、インキュベータ4の外部に配置されている観察手段3よって観察することができるので、被培養物への汚染の恐れがない観察を行うことができる。
また、観察用窓39を備えたインキュベータ4は移動可能となっているため、培養容器5を収容したインキュベータ4を、例えば異なる実験室などに移動させて、当該実験室に配置されている別の観察手段3によって被培養物の観察を行うことも可能であるし、車などの移動手段を用いれば、遠く離れた研究施設に持ち込んで被培養物を観察することも可能である。
さらに、1つの観察手段3によって複数のインキュベータ4内の被培養物を観察することが可能であるので、観察手段3を各インキュベータ4に配置する必要がなく、観察手段を用意するコストを抑えることができる。
なお、上記実施例では観察手段3は移動しないようになっているが、観察手段3に台車などの移動手段を設けて移動可能としてもよく、台数も1台に限るものではない。
【0039】
図7、
図8は第2実施例にかかるインキュベータ104を示しており、以下の説明において、上記第1実施例のインキュベータ4と共通する構成については説明を省略するものとし、第1実施例で使用した符号に100を加算した符号を使用するものとする。
本実施例のインキュベータ104も、内部が無菌状態に維持されたハウジング131と、当該ハウジング131の開口部131aを閉鎖する開閉扉132と、当該開閉扉132を開閉する開閉機構133とを備えている。
そして本実施例のインキュベータ104は、上記ハウジング131の内部で複数の培養容器105を保持可能となっており、所望の培養容器105を照明用窓139と観察用窓140の間に位置させることが可能となっている。
具体的には、上記ハウジング131の内部に設けられて複数の培養容器105を保持する2枚の第1、第2回転テーブル171A、171Bと、これら第1、第2回転テーブル171A、171Bを移動させる移動機構172とを備えており、また本実施例の開閉扉132および開閉機構133は上記第1実施例とは異なる構成を有している。
また上記ハウジング131における上下およびアイソレータ側に隣接する位置には、上記移動機構172や開閉機構133を収容する機器室173が設けられており、当該機器室173は上記ハウジング131の開口部131aを囲繞する開口部173aを備え、接続手段107を構成する筒状部材153のパッキン155はこの開口部173aを囲繞するように密着するようになっている。
【0040】
図7、
図8に示すように、上記2枚の第1、第2回転テーブル171A、171Bはそれぞれ半円状を有しており、その外周側に沿ってそれぞれ5つの培養容器105を載置するとともに、第1回転テーブル171Aは第2回転テーブル171Bに対して上方に設けられている。
上記第1回転テーブル171Aと上記第2回転テーブル171Bとの間隔は、上記ロボット113のハンド113aが第2回転テーブル171Bに培養容器105を載置可能な程度の間隔に設定され、またこれら第1回転テーブル171Aおよび上記第2回転テーブル171Bは上記移動機構172によって円弧の中心を中心にそれぞれ個別に回転可能となっている。
上記移動機構172は、上記第1回転テーブル171Aに連結された第1回転軸174Aと、当該第1回転軸174Aと同心状に設けられて上記第2回転テーブル171Bに連結された第2回転軸174Bと、これら第1回転軸174Aおよび第2回転軸174Bを回転させる第1、第2モータ175A、175Bおよび第1、第2ギア176A、176Bと、第1、第2回転軸174A、174Bを昇降させる第1、第2エアシリンダ177A、177Bとから構成されている。
このような構成により、第1、第2回転テーブル171A、171Bは個別に回転可能となっており、また第1、第2エアシリンダ、またはモーター等を利用したアクチュエーターによって昇降可能となっている。
【0041】
そして、上記開閉扉132を開閉させる上記開閉機構133は上記機器室173に設けられたエアシリンダ133aとなっており、開閉扉132を昇降させてハウジング131の開口部を開閉するようになっている。
また開閉扉132が開口部131aを閉鎖すると、機器室173の内部に設けられたエアによって膨張するパッキン179が密着して、当該開口部131aが密閉されるようになっている。
【0042】
上記構成を有するインキュベータ104において、最初に上記インキュベータ104に培養容器105を供給する場合について説明する。
まず、上記接続手段107を介してインキュベータ104をアイソレータ102に接続し、その際、第1、第2回転テーブル171A、171Bは上記移動機構172によってアイソレータ102側に回転している。
この状態で上記開閉機構133を構成するエアシリンダ133aによって開閉扉132が開放されると、アイソレータ102に設けられたロボット113のハンド113aが培養容器105をインキュベータ104の内部に移動させる。
上記移動機構172は、例えば最初に第1回転テーブル171Aをハンド113aによる供給高さに位置させ、さらに第1回転テーブル171Aを順次回転させて複数の培養容器105を載置させる。
続いて、上記移動機構172は第2回転テーブル171Bをハンド113aによる供給高さに位置させ、さらに第2回転テーブル171Bを順次回転させて複数の培養容器105を載置させる。
【0043】
そして、培養中に培養状態を確認したくなった場合には、インキュベータ104を観察手段103まで移動させ、上記移動機構172は
図7に示すように例えば第2回転テーブル171Bを上記観察用窓139と照明用窓140との間の高さに位置させる。
その後、移動機構172は当該第2回転テーブル171Bを回転させ、所要の培養容器105を観察用窓139と照明用窓140との間に位置させ、上記観察手段103によって観察する。
このように、第1、第2回転テーブル171A、171Bによって複数の培養容器105を保持可能としたことにより、複数の被培養物を同時に培養し、また所要の培養容器105の観察も行うことが可能となっている。
なお、上記回転テーブルについては2枚に限らず3枚以上設けても良く、もしくは1枚の円盤状の回転テーブルとしてもよい。また、上記ロボット113のハンド113aについては、保持した培養容器105を昇降させて、第1、第2回転テーブル171A、171Bの高さを変えずに、培養容器105を載置させるようにしても良い。
【0044】
図9は第3実施例にかかるインキュベータ204を示しており、以下の説明において、上記第1実施例および上記第2実施例のインキュベータ4、104と共通する構成については説明を省略するものとし、第1、第2実施例で使用した符号に200または100を加算した符号を使用するものとする。
本実施例のインキュベータ204には、内部が無菌状態に維持された収容庫としての袋状の無菌袋281が、接続手段207を介して接続されるようになっている。
上記無菌袋281は、開閉可能に設けられた開閉扉282と、少なくともひとつの手袋283とを備えており、作業者は当該手袋283の導入口283aより手を入れ、手袋283により無菌袋281の内側に収納された被培養物205を保持または操作することが可能となっている。
また、上記開閉扉282における無菌袋281の内部側には把手282aが設けられており、作業者は上記手袋283により上記把手282aを把持することで、開閉扉282を開閉することが可能となっている。
【0045】
上記接続手段207は、従来公知のリピッドトランスファーポート(RTP:Rapid Transfer Port)となっており、例えば特許第3445813号に記載されるような、アルファフランジとベータフランジを接続してこれらを一体的に開閉する無菌接続方式となっている。
具体的には、アルファフランジとしてのインキュベータ204の開閉扉232と、ベータフランジとしての上記無菌袋281の開閉扉282とを密着させ、これら2つの開閉扉232、282の密着部分によって、それまで外部に露出していた非無菌空間を閉鎖するようになっている。
これにより、作業者は無菌袋281の内部から上記把手282aを操作することで、開閉扉232、282を一体的に開放することができ、上記インキュベータ204と無菌袋281とを無菌状態を維持したまま連通させることが可能となっている。
なお、上記インキュベータ204と無菌袋281とを接続する接続手段としては、第1実施例と同様、インキュベータ204の開閉扉232と、無菌袋281の開閉扉282を、筒状部材によって囲繞し、これによって形成された空間に除染剤供給手段で発生させた除染剤を除染剤供給口を介して供給するようにしてもよい。