特許第5979430号(P5979430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIの特許一覧

<>
  • 特許5979430-拡管装置 図000002
  • 特許5979430-拡管装置 図000003
  • 特許5979430-拡管装置 図000004
  • 特許5979430-拡管装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979430
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】拡管装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 39/20 20060101AFI20160817BHJP
   B21D 39/06 20060101ALI20160817BHJP
   B21D 53/08 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   B21D39/20 E
   B21D39/06 B
   B21D53/08 J
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-166521(P2012-166521)
(22)【出願日】2012年7月27日
(65)【公開番号】特開2014-24096(P2014-24096A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】新玉 晋作
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−011625(JP,U)
【文献】 実開昭60−071435(JP,U)
【文献】 米国特許第04581817(US,A)
【文献】 特開昭49−121249(JP,A)
【文献】 特開平07−108332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/02 − 39/20
B21D 53/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管板に設けられた管孔に挿入された伝熱管端部を拡管する拡管装置であって、
前記伝熱管端部を拡管可能な拡管駆動装置と、
伝熱管端面と管板表面との伝熱管の軸方向間隔が予め設定された範囲にあるときに正常信号を出力する位置検出センサと、
前記正常信号が出力されたときにのみ、前記拡管駆動装置による前記伝熱管端部の拡管を可能にするインターロック回路と、を備え
前記位置検出センサは、
前記拡管駆動装置の本体先端部に取り付けられた内側電極及び外側電極を有し、
前記内側電極と前記外側電極は、互いに電気的に絶縁され、
前記内側電極は、前記伝熱管端面に対向する第1接触面を有し、
前記外側電極は、前記管板表面に対向する第2接触面を有し、
前記伝熱管端面と前記管板表面との軸方向間隔が予め設定された範囲にあるときに、前記第1接触面と前記第2接触面がそれぞれ前記伝熱管端面と前記管板表面に接触して、前記正常信号を出力する、ことを特徴とする拡管装置。
【請求項2】
前記拡管駆動装置は、本体の一部である本体先端部と、
前記伝熱管の内径に隙間をもって嵌る頭部と、前記頭部より直径が小さく前記頭部に連結された駆動軸とを有する挿入軸と、
前記本体先端部と前記頭部との間に挟持され、前記駆動軸のまわりに位置し前記駆動軸が通る貫通孔を有する弾性体と、
前記駆動軸を軸方向に駆動する直動アクチュエータと、を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の拡管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管板に設けた管孔内に伝熱管を挿入した状態で伝熱管の端部を拡管して管孔の内面に密着させる拡管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気発生器や熱交換器の製造工程において、伝熱管の端部と管板に設けた管孔の内面との隙間をなくすため、管孔内に伝熱管を挿入した状態で伝熱管端部を拡径(拡管と呼ぶ)を行う必要がある。
この拡管工程には、拡管装置が用いられている。かかる拡管装置は、例えば特許文献1〜3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−10264号公報
【特許文献2】特開昭63−230273号公報
【特許文献3】特開2003−340534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1は、従来の拡管装置の一例を示す模式図である。
この図において、1は管板、2は管板1の管孔1aに挿入された伝熱管、3は拡管装置、4は拡管装置3の挿入軸、5は弾性体である。
挿入軸4は、伝熱管2の内径に隙間をもって嵌る頭部4aと、頭部4aより直径が小さく頭部4aに連結された駆動軸4bとからなる。弾性体5は、ウレタン等の弾性ゴムからなる中空円筒形の部材であり、その中心貫通孔の内径は駆動軸4bに隙間なく嵌り、その外径は伝熱管2の内径に隙間をもって嵌るようになっている。
拡管装置3は、油圧、空圧、又は油空圧により駆動軸4bをその軸方向に大出力で前後させるようになっている。
【0005】
図1の拡管装置3は、以下のように作動する。
(1)拡管装置3の作動前は、駆動軸4bは前方(図で右方向)に前進している。この状態において、弾性体5の中心貫通孔に駆動軸4bが通り、拡管装置3の本体先端部3aと挿入軸4の頭部4aの間に弾性体5が挟まれた状態で駆動軸4bが拡管装置3に固定されている。
この状態において、弾性体5は本体先端部3aと頭部4aの両方に密着しているが軸方向には圧縮されていない。
従って、弾性体5の外径は伝熱管2の内径に対して隙間があり、図1に示すように、頭部4a及び弾性体5を、伝熱管2の内側に軸方向に挿入することができる。
【0006】
(2)次いで、拡管装置3の本体先端部3aを管板表面1b(図で左面)に押し当てた状態で、拡管装置3を作動させる(スイッチをONする)と、駆動軸4bが後方(図で左方向)に強力な力で後退する。この後退動作により、本体先端部3aに対して頭部4aが後退するので、その間に位置する弾性体5が軸方向に圧縮され、その圧縮により弾性体5の外径が外側に膨らみ、伝熱管2の外面が管孔1aの内面に密着するまで、伝熱管2の端部を拡管する。
【0007】
(3)次に、スイッチをOFFして拡管装置3の作動をやめると、駆動軸4bが前方(図で右方向)に前進し、弾性体5は弾性力により元の直径に戻り、伝熱管2から頭部4a及び弾性体5を引き抜くことができ、拡管工程が完了する。
この際、伝熱管2は金属であり、伝熱管2の端部は拡管により塑性変形して管孔1aの内面に密着したままとなる。
【0008】
拡管工程後に、伝熱管の端部と管孔1aの内面との接合部をシール溶接により接合させる。このシール溶接により、伝熱管と管板とが強固かつ気密に接合されるためには、伝熱管の端面と管板の端面とは同一平面であることが望ましく、その許容範囲は非常に狭い。
例えば、伝熱管端部は管板表面から突出せず、かつ管板表面からの凹み深さは、例えば0.2mm以内に設定する必要があった。
【0009】
そのため、従来は拡管工程前に作業者が伝熱管端部を正確に位置決めした後、拡管装置で拡管作業を行っていた。
しかし、上述した拡管工程において、図1に示すように、挿入軸4の頭部4a及び弾性体5を、伝熱管2の内側に軸方向に挿入する際に、伝熱管2との隙間が小さいので、伝熱管2に軸方向の力が作用し、伝熱管端部が管板の奥に入ってしまうことがあった。
この場合、目視では伝熱管端部の位置が確認できないため、許容範囲を超える場合でもそのまま拡管を行ってしまう可能性があった。
また、逆に、伝熱管端部が管板表面から突出したまま拡管を行ってしまうおそれもあった。
【0010】
本発明は、かかる問題点を解消するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、伝熱管端面と管板表面とを実質的に同一平面に保持したまま伝熱管端部を拡管することができ、その許容範囲を超える場合に拡管を未然に防止することができる拡管装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、管板に設けられた管孔に挿入された伝熱管端部を拡管する拡管装置であって、
前記伝熱管端部を拡管可能な拡管駆動装置と、
伝熱管端面と管板表面との伝熱管の軸方向間隔が予め設定された範囲にあるときに正常信号を出力する位置検出センサと、
前記正常信号が出力されたときにのみ、前記拡管駆動装置による前記伝熱管端部の拡管を可能にするインターロック回路と、を備え
前記位置検出センサは、
前記拡管駆動装置の本体先端部に取り付けられた内側電極及び外側電極を有し、
前記内側電極と前記外側電極は、互いに電気的に絶縁され、
前記内側電極は、前記伝熱管端面に対向する第1接触面を有し、
前記外側電極は、前記管板表面に対向する第2接触面を有し、
前記伝熱管端面と前記管板表面との軸方向間隔が予め設定された範囲にあるときに、前記第1接触面と前記第2接触面がそれぞれ前記伝熱管端面と前記管板表面に接触して、前記正常信号を出力する、ことを特徴とする拡管装置が提供される。
【0013】
また、拡管駆動装置は、本体の一部である本体先端部と、
前記伝熱管の内径に隙間をもって嵌る頭部と、前記頭部より直径が小さく前記頭部に連結された駆動軸とを有する挿入軸と、
前記本体先端部と前記頭部との間に挟持され、前記駆動軸のまわりに位置し前記駆動軸が通る貫通孔を有する弾性体と、
前記駆動軸を軸方向に駆動する直動アクチュエータと、を有する。
【発明の効果】
【0014】
上記本発明の構成によれば、位置検出センサにより、伝熱管端面と管板表面との軸方向間隔が予め設定された範囲にあるときに正常信号を出力し、インターロック回路により、前記正常信号が出力されたときにのみ、拡管駆動装置による伝熱管端部の拡管が可能になるので、伝熱管端面と管板表面とを実質的に同一平面に保持したまま伝熱管端部を拡管することができ、その許容範囲を超える場合に拡管を未然に防止することができる。
【0015】
すなわち、本発明の拡管装置により、以下の効果が得られる。
伝熱管端面と管板表面との軸方向間隔が予め設定された範囲にあること、言い換えれば正確な挿入状態を、正常信号のランプ表示等により確認できる。
位置検出センサにより、伝熱管端面と管板表面との軸方向間隔が予め設定された範囲(許容範囲)を超えるときは、インターロック回路により拡管駆動装置による伝熱管端部の拡管を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来の拡管装置の一例を示す模式図である。
図2】本発明の拡管装置を示す実施形態図である。
図3図2の主要部拡大図である。
図4図2の拡管装置の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0018】
図2は、本発明の拡管装置を示す実施形態図である。
この図において、拡管装置は、管板1に設けられた管孔1aに挿入された伝熱管2の端部2a(以下、「伝熱管端部2a」)を拡管する装置であり、拡管駆動装置10、位置検出センサ18、及びインターロック回路20を備える。
【0019】
拡管駆動装置10は、伝熱管端部2aを拡管可能な装置である。
この例において、拡管駆動装置10は、本体先端部10a、挿入軸12、弾性体14、及び直動アクチュエータ16を備える。
【0020】
本体先端部10aは、拡管駆動装置10の本体の一部であり、この例では円筒形部材である。
【0021】
挿入軸12は、伝熱管2の内径に隙間をもって嵌る頭部12aと、頭部12aより直径が小さく頭部12aに連結された駆動軸12bとを有する。
【0022】
弾性体14は、ウレタン等の弾性ゴムからなる中空円筒形の部材であり、本体先端部10aと挿入軸12の頭部12aとの間に挟持され、駆動軸12bのまわりに位置する。弾性体14の中心貫通孔の内径は駆動軸12bに隙間なく嵌り、弾性体14の外径は伝熱管2の内径に隙間をもって嵌る形状に設定されている。
【0023】
直動アクチュエータ16は、油圧、空圧、又は油空圧の直動装置であり、駆動軸12bを軸方向に駆動する。
【0024】
上述した構成により、弾性体14の中心貫通孔に駆動軸12bが通り、本体先端部10aと挿入軸12の頭部12aの間に弾性体14が軸方向に挟まれた状態で駆動軸12bを直動アクチュエータ16に固定することができる。
この状態で、直動アクチュエータ16を図で左方向に駆動(後退)することにより、本体先端部10aと挿入軸12の頭部12aとの間に弾性体14を挟持したまま、弾性体14を軸方向に圧縮することができる。
【0025】
図2において、拡管駆動装置10は、直動アクチュエータ16の作動をON/OFFする拡管スイッチ17を有している。拡管スイッチ17がOFF(切断)の場合、直動アクチュエータ16は挿入軸12を図で右方向の所定位置に前進して非作動状態になり、拡管スイッチ17をON(接続)すると、直動アクチュエータ16が図で左方向に挿入軸12を駆動(後退)する作動状態に切り替わる。
拡管スイッチ17は、作業員が手動で操作する手動スイッチでも、ロボット等の自動で操作する遠隔スイッチでもよい。
【0026】
拡管駆動装置10の非作動状態において、弾性体14は本体先端部10aと挿入軸12の頭部12aの両方に密着している。しかし、弾性体14は軸方向には圧縮されていない。
この非作動状態において、弾性体14の外径は伝熱管2の内径に対して隙間があり、図2に示すように、頭部12a及び弾性体14を、伝熱管2の内側に軸方向に挿入することができる。
【0027】
拡管スイッチ17をONし、拡管駆動装置10を作動状態に切り替えると、駆動軸12bが後方(図で左方向)に強力な力で駆動されて後退する。この後退動作により、本体先端部10aに対して挿入軸12の頭部12aが後退するので、その間に位置する弾性体14が軸方向に圧縮され、その圧縮により弾性体14の外径が外側に膨らみ、伝熱管2の外面が管孔1aの内面に密着するまで、伝熱管端部2aを拡管するようになっている。
【0028】
位置検出センサ18は、伝熱管2の端面2b(以下、「伝熱管端面2b」)と管板1の表面1b(以下、「管板表面1b」)との伝熱管2の軸方向間隔が予め設定された範囲にあるときに正常信号Aを出力する。
この「予め設定された範囲」すなわち許容範囲は、例えば、伝熱管端面2bが管板表面1bから突出せず、かつ管板表面1bからの凹み深さが0.1mm以内である。なお、本発明は、この範囲に限定されず、許容範囲を任意に設定することができる。
【0029】
インターロック回路20は、位置検出センサ18から正常信号Aが出力されたときにのみ、拡管駆動装置10による伝熱管端部2aの拡管を可能にする。
この例で、インターロック回路20は、拡管駆動装置10の拡管スイッチ17と直列に接続された電気接点21a、21bを有する。この電気接点21a、21bは、正常信号Aが出力されたときにのみ、OFF(切断)からON(接続)に切り替わる接点である。
電気接点21aは、拡管スイッチ17と直列に接続されており、正常信号Aが出力され、電気接点21aがON(接続)に切り替わったときのみ、拡管スイッチ17をON(接続)することで、拡管駆動装置10を作動状態に切り替えるリレーMがON(接続)し、拡管駆動装置10を作動状態に切り替えることができるようになっている。
電気接点21bは、正常位置を示す表示ランプLと直列に接続されており、正常信号Aが出力され、正常な状態を表示するようになっている。
【0030】
図3は、図2の主要部拡大図である。
この図において、位置検出センサ18は、本体先端部10aの前方端(図で右端)に取り付けられた内側電極19a及び外側電極19bを有する。
【0031】
内側電極19aと外側電極19bは、互いに電気的に絶縁されている。この例において、内側電極19aと外側電極19bの一方又は両方の外表面に絶縁膜がコーティングされている。なお、絶縁膜の代わりに、絶縁材を介在させてもよい。
【0032】
図3において、内側電極19aは、伝熱管端面2bに対向する第1接触面22aを有し、外側電極19bは、管板表面1bに対向する第2接触面22bを有する。管板1と伝熱管端部2aの隙間は小さくその一部で接触しているので、伝熱管端面2bと管板表面1bは、常時電気的に導通している。
位置検出センサ18は、伝熱管端面2bと管板表面1bとの軸方向間隔が予め設定された範囲にあるときに、第1接触面22aと第2接触面22bがそれぞれ伝熱管端面2bと管板表面1bに接触すると、内側電極19aと外側電極19bが伝熱管端面2bと管板表面1bを介して導通し、正常信号Aを出力するようになっている。
【0033】
図2において、拡管装置は、さらに、本体先端部10aの後方端部に取り付けられ、内側電極19a及び外側電極19bの外側を囲む絶縁カバー24を有する。
絶縁カバー24は、電気的絶縁性を有する材料、例えばナイロン又はプラスチックで構成され、内側電極19a及び外側電極19bが外部の導電体と接触しないようになっている。
【0034】
図4は、図2の拡管装置の作動説明図である。この図において、(A)は作動前、(B)は作動中、(C)は作動後である。
【0035】
図2の拡管装置は、以下のように作動する。
(1)拡管駆動装置10の作動前(非作動状態)は、駆動軸12bは前方(図で右方向)の所定位置に前進している。この状態において、弾性体14の中心貫通孔に駆動軸12bが通り、本体先端部10aと挿入軸12の頭部12aの間に弾性体14が挟まれた状態で駆動軸12bが拡管駆動装置10に固定されている。
この状態において、弾性体14は本体先端部10aと頭部12aの両方に密着しているが軸方向には圧縮されていない。
従って、弾性体14の外径は伝熱管2の内径に対して隙間があり、図4(A)に示すように、頭部12a及び弾性体14を、伝熱管2の内側に軸方向に挿入することができる。
【0036】
(2)次いで、本体先端部10aを管板表面1b(図で左面)に押し当てると、本体先端部10aに取り付けられた内側電極19a及び外側電極19bがそれぞれ対向する伝熱管端面2bと管板表面1bに向かって移動する。
【0037】
伝熱管端面2bと管板表面1bとの軸方向間隔が予め設定された範囲(許容範囲)にあるときには、この移動により、内側電極19a及び外側電極19bがそれぞれ対向する伝熱管端面2bと管板表面1bに当接し、第1接触面22aと第2接触面22bがそれぞれ伝熱管端面2bと管板表面1bに接触して正常信号Aを出力する。
正常信号Aが出力されると、正常位置を示す表示ランプLが点灯すると共に、拡管駆動装置10が作動可能となる。
【0038】
この状態で、拡管駆動装置10を作動させる(拡管スイッチ17をONする)と、図4(B)に示すように、駆動軸12bが後方(図で左方向)に強力な力で駆動して後退する。この後退動作により、本体先端部10aに対して頭部12aが後退するので、その間に位置する弾性体14が軸方向に圧縮され、その圧縮により弾性体14の外径が外側に膨らみ、伝熱管2の外面が管孔1aの内面に密着するまで、伝熱管端部2aを拡管する。
【0039】
伝熱管端面2bと管板表面1bとの軸方向間隔が予め設定された範囲(許容範囲)にないときには、本体先端部10aを管板表面1b(図で左面)に押し当てても、第1接触面22a又は第2接触面22bがそれぞれ伝熱管端面2b又は管板表面1bに接触しないため正常信号Aは出力されない。
この場合、正常位置を示す表示ランプLは点灯せず、拡管駆動装置10は作動可能とならない。
従って、この状態で、拡管駆動装置10の拡管スイッチ17をONしても、拡管駆動装置10は作動せず、伝熱管端部2aを誤って拡管することを未然に防止することができる。
【0040】
(3)伝熱管端部2aを拡管後に、拡管スイッチ17をOFFして拡管駆動装置10の作動をやめると、駆動軸12bが前方(図で右方向)に前進し、弾性体14が弾性力により元の直径に戻り、伝熱管2から頭部12a及び弾性体14を引き抜くことができ、拡管工程が完了する。
この際、伝熱管2は金属であり、伝熱管端部2aは拡管により塑性変形して管孔1aの内面に密着したままとなる。
【0041】
伝熱管端面2bと管板表面1bとの軸方向間隔が予め設定された範囲(許容範囲)にないときには、拡管駆動装置10の拡管スイッチ17をONしても、拡管駆動装置10は作動しないので、そのまま伝熱管2から頭部12a及び弾性体14を引き抜くことができる。
この場合は、伝熱管端部2aは拡管されていないので、伝熱管端部2aを再度正確に位置決めした後、拡管することができる。
【0042】
正常な拡管工程後に、伝熱管端部2aと管孔1aの内面との接合部は、シール溶接により接合される。このシール溶接により、伝熱管2と管板1とが強固かつ気密に接合される。
【0043】
上述した本発明の構成によれば、位置検出センサ18により、伝熱管端面2bと管板表面1bとの軸方向間隔が予め設定された範囲にあるときに正常信号Aを出力し、インターロック回路20により、正常信号Aが出力されたときにのみ、拡管駆動装置10による伝熱管端部2aの拡管が可能になる。従って、伝熱管端面2bと管板表面1bとを実質的に同一平面に保持したまま伝熱管端部2aを拡管することができ、その許容範囲を超える場合に伝熱管端部2aの拡管を未然に防止することができる。
【0044】
すなわち、本発明の拡管装置により、以下の効果が得られる。
伝熱管端面2bと管板表面1bとの軸方向間隔が予め設定された範囲にあること、言い換えれば正確な挿入状態を、正常信号Aのランプ表示等により確認できる。
位置検出センサ18により、伝熱管端面2bと管板表面1bとの軸方向間隔が予め設定された範囲(許容範囲)を超えるときは、インターロック回路20により拡管駆動装置10による伝熱管端部2aの拡管を未然に防止することができる。
【0045】
なお、拡管駆動装置10は、上述した実施形態に限定されず、伝熱管端部2aを拡管可能なその他の拡管装置であってもよい。
また、本発明の拡管装置は、ロボット等で用いる自動ツールであっても、作業者が手動で用いる手動ツールであってもよい。
自動ツールの場合、上述した拡管駆動装置10の伝熱管2への挿入動作、伝熱管2からの引抜動作、及び拡管スイッチ17のON/OFFは、ロボット等の自動装置により実施することができる。
【0046】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0047】
1 管板、1a 管孔、1b 管板表面、
2 伝熱管、2a 伝熱管端部、2b 伝熱管端面、
3 拡管装置、3a 本体先端部、
4 挿入軸、4a 頭部、4b 駆動軸、
5 弾性体、10 拡管駆動装置、
12 挿入軸、12a 頭部、12b 駆動軸、
14 弾性体、16 直動アクチュエータ、
17 拡管スイッチ、18 位置検出センサ、
19a 内側電極、19b 外側電極、
20 インターロック回路、21a、21b 電気接点、
22a 第1接触面点、22b 第2接触面、
24 絶縁カバー
図1
図2
図3
図4