特許第5979446号(P5979446)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979446
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】圧力容器
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20160817BHJP
   F17C 1/02 20060101ALI20160817BHJP
   F16J 12/00 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   F17C13/00 301Z
   F17C1/02
   F16J12/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-199831(P2013-199831)
(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2014-167346(P2014-167346A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2015年9月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-19134(P2013-19134)
(32)【優先日】2013年2月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】太田 正彦
(72)【発明者】
【氏名】光田 崇
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−528473(JP,A)
【文献】 特開2011−102614(JP,A)
【文献】 特表2012−514727(JP,A)
【文献】 特開平09−222198(JP,A)
【文献】 特開2008−256151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
F17C 1/02
F16J 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を持つ中空の容器本体と、前記開口に装着されているポート部材と、を持つ圧力容器であって、
前記ポート部材は、筒状をなし前記開口に装着されている口金部と、前記口金部に装着されているバルブと、で構成される本体部を持ち、
前記容器本体の内周面は、樹脂製のライナー部で構成され、
前記本体部は、筒状をなすボス部と、前記ボス部の外周側に連続し前記ボス部の径方向外方に突出するフランジ部と、前記口金部の底面に開口するリング状の溝部と、を持ち、
前記ポート部材は、さらに、リング状をなし前記本体部とは別体であり前記溝部に挿入可能なカラー部材と、弾性体からなり前記溝部の内部に配置されるシール部材と、を持ち、
前記ライナー部は、前記フランジ部の底面の少なくとも一部を覆うフランジシール部と、前記フランジシール部に連続し前記溝部に入り込む溝シール部と、を持ち、
前記溝シール部は、前記ライナー部の末端を含み、前記溝部の内部に配置されるとともに前記カラー部材と前記本体部とに挟まれ、
前記シール部材は、前記溝部の内部において、前記溝部の壁面と前記溝シール部と前記カラー部材とに圧接し、
前記ライナー部の前記末端は、前記シール部材と前記溝部の壁面との圧接箇所と、前記シール部材と前記溝シール部との圧接箇所と、の間に配置される圧力容器。
【請求項2】
前記口金部は、前記ボス部と、前記フランジ部と、前記ボス部と前記フランジ部との間に形成されている溝部と、を持つ請求項1に記載の圧力容器。
【請求項3】
前記口金部は、前記ボス部と、前記フランジ部と、を持ち、
前記バルブは、前記ボス部の内部に装着されるとともに前記ボス部よりもさらに前記容器本体の内部側に延出し、
前記溝部は前記口金部と前記バルブとで区画され、
前記シール部材は、前記溝部の内部において、前記バルブと前記溝シール部と前記カラー部材とに圧接し、
前記ライナー部の前記末端は、前記シール部材と前記バルブとの圧接箇所と、前記シール部材と前記溝シール部との圧接箇所と、の間に配置される請求項1に記載の圧力容器。
【請求項4】
前記フランジ部は、陥没形成され前記フランジ部の前記底面に開口する凹部を持ち、前記フランジシール部は前記凹部の内部に入り込んでいる請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の圧力容器。
【請求項5】
前記シール部材は、リング状をなす第1シール体と、前記第1シール体と別体でありリング状をなす第2シール体と、を持ち、
前記第1シール体は前記溝部の内周壁面に装着され、前記第2シール体は前記カラー部材の外周壁面に装着されている請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の圧力容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の収容物を圧縮状態で収容するための圧力容器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力容器に収容される収容物としては、液体水素、CNG(圧縮天然ガス)等の各種圧縮ガス、LNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)等の各種液化ガス等が例示される。
【0003】
これらの各種収容物を収容するための圧力容器として、一般には、中空状をなす樹脂製の容器本体に金属製の口金部を取り付けたものが用いられている。口金部は開口を持つとともに、この開口を開閉可能なバルブが取り付けられる。以下、口金部とバルブとを総称してポート部材と呼ぶ。
【0004】
この種の圧力容器においては、容器本体の内周面をライナー部で構成し、ライナー部の外周面を繊維強化プラスチック等の高強度樹脂からなる補強部で覆うのが一般的である。ライナー部の材料としては、液体や気体の透過を抑制し得る樹脂材料を用いるのが一般的である。また、ポート部材とライナー部との境界は、弾性体からなるシール部材を用いてシールするのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。ライナー部とポート部材との隙間を通じて、圧力容器の内部から外部に収容物が漏出するのを抑制するためである。
【0005】
特許文献1においては、シール部材としてOリングを用い、Oリングの弾力によってライナー部をポート部材に向けて押圧することで、ライナー部とポート部材とを密着させ、ライナー部とポート部材との間への収容物の進入を抑制している。
【0006】
しかしこのような圧力容器においても、シール部材によってライナー部とポート部材とを十分にシールし難い場合があり、より一層シール性能の向上した圧力容器が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−50494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、シール性能に優れる圧力容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の圧力容器は、開口を持つ中空の容器本体と、前記開口に装着されているポート部材と、を持つ圧力容器であって、
前記ポート部材は、筒状をなし前記開口に装着されている口金部と、前記口金部に装着されているバルブと、で構成される本体部を持ち、
前記容器本体の内周面は、樹脂製のライナー部で構成され、
前記本体部は、筒状をなすボス部と、前記ボス部の外周側に連続し前記ボス部の径方向外方に突出するフランジ部と、前記口金部の底面に開口するリング状の溝部と、を持ち、
前記ポート部材は、さらに、リング状をなし前記本体部とは別体であり前記溝部に挿入可能なカラー部材と、弾性体からなり前記溝部の内部に配置されるシール部材と、を持ち、
前記ライナー部は、前記フランジ部の底面の少なくとも一部を覆うフランジシール部と、前記フランジシール部に連続し前記溝部に入り込む溝シール部と、を持ち、
前記溝シール部は、前記ライナー部の末端を含み、前記溝部の内部に配置されるとともに前記カラー部材と前記本体部とに挟まれ、
前記シール部材は、前記溝部の内部において、前記溝部の壁面と前記溝シール部と前記カラー部材とに圧接し、
前記ライナー部の前記末端は、前記シール部材と前記溝部の壁面との圧接箇所と、前記シール部材と前記溝シール部との圧接箇所と、の間に配置されるものである。
【0010】
本発明の圧力容器は、以下の(1)〜(4)の何れかを備えるのが好ましく、(1)〜(4)の複数を備えるのがより好ましい。
(1)前記口金部は、前記ボス部と、前記フランジ部と、前記ボス部と前記フランジ部との間に形成されている溝部と、を持つ。
(2)前記口金部は、前記ボス部と、前記フランジ部と、を持ち、
前記バルブは、前記ボス部の内部に装着されるとともに前記ボス部よりもさらに前記容器本体の内部側に延出し、
前記溝部は前記口金部と前記バルブとで区画され、
前記シール部材は、前記溝部の内部において、前記バルブと前記溝シール部と前記カラー部材とに圧接し、
前記ライナー部の前記末端は、前記シール部材と前記バルブとの圧接箇所と、前記シール部材と前記溝シール部との圧接箇所と、の間に配置される。
(3)前記フランジ部は、陥没形成され前記フランジ部の前記底面に開口する凹部を持ち、前記フランジシール部は前記凹部の内部に入り込んでいる。
(4)前記シール部材は、リング状をなす第1シール体と、前記第1シール体と別体でありリング状をなす第2シール体と、を持ち、
前記第1シール体は前記溝部の内周壁面に装着され、前記第2シール体は前記カラー部材の外周壁面に装着されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の圧力容器によると、ライナー部の末端を挟んだ2箇所で、シール部材が溝部の壁面とライナー部の溝シール部とに圧接している。換言すると、本発明の圧力容器において、ライナー部の末端はシール部材によって区画された空間内に配置される。したがって、圧力容器内部の収容物はライナー部の末端に到達し難い。このため、収容物はライナー部とポート部材との隙間に進入し難く、圧力容器の内部から外部に漏出し難い。つまり、本発明の圧力容器はシール性能に優れる。
【0012】
上記(1)を備える本発明の圧力容器においては、溝部を口金部に設けたことで、溝部の内部と圧力容器の外部とを信頼性高く区画できる。換言すると、溝部を口金部に設ける場合には、圧力容器の外部から溝部に至る流体通路をなくすことができる。このため、上記(1)を備える本発明の圧力容器においては、例え圧力容器内部の収容物が溝部内部に到達したとしても、当該収容物は圧力容器の内部から外部に漏出し難い。つまり、上記(1)を備える本発明の圧力容器は、より一層シール性能に優れる。
【0013】
上記(2)を備える本発明の圧力容器においては、口金部とバルブとによって溝部を区画することで、溝部を容易に形成し得る利点がある。つまり、上記(2)を備える本発明の圧力容器は、溝部を寸法精度高く形成可能であり、かつ、製造コストを低減可能である。
【0014】
上記(3)を備える本発明の圧力容器においては、凹部の内部に入り込んだフランジシール部のアンカー効果により、フランジシール部と口金部(具体的にはフランジ部)とを強固に一体化できる利点がある。
【0015】
上記(4)を備える本発明の圧力容器においては、シール部材を第1シール体と第2シール体との2部材で構成している。このうち第1シール体は伸長状態で口金部に取り付けられ、第2シール体は伸長状態でカラー部材に取り付けられる。つまり、第1シール体および第2シール体の双方が弾力で縮径しつつ相手材に安定して取り付けられる。このため、相手材からのシール部材の脱落が抑制され、圧力容器の製造時における各部材の取り扱いが容易になる。つまり、上記(4)を備える本発明の圧力容器は容易に製造できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1の圧力容器を軸方向に切断した様子を模式的に表す要部拡大断面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3】実施例1の圧力容器における口金部、カラー部材およびシール部材を模式的に表す分解斜視図である。
図4】実施例2の圧力容器を模式的に表す要部拡大断面図である。
図5】実施例3の圧力容器を模式的に表す要部拡大断面図である。
図6】実施例4の圧力容器を模式的に表す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、具体例を挙げて本発明の圧力容器を説明する。
【0018】
(実施例1)
実施例1の圧力容器は、自動車用の燃料タンクである。実施例1の圧力容器を模式的に表す断面図を図1〜3に示す。詳しくは、図1は実施例1の圧力容器を軸方向に切断した様子を模式的に表す要部拡大断面図である。図2図1の要部拡大図であり、より詳しくは、図2図1に示す圧力容器の口金部、カラー部材、シール部材、および、これらの近傍に位置するライナー部および補強部を表す。図3は、実施例1の圧力容器における口金部、カラー部材およびシール部材を模式的に表す分解斜視図である。以下、実施例1において、上、下、前、後とは各図に示す上、下、前、後を指す。軸方向とは各図に示す前後方向と同じ方向である。なお、容器本体および口金部の軸方向は一致している。軸方向に直交する方向を径方向と呼ぶ。
【0019】
実施例1の圧力容器は、容器本体1、口金部2およびバルブ7を持つ。バルブ7は口金部2に装着され、バルブ7と口金部2とでポート部材3における本体部30が構成されている。
【0020】
容器本体1は、軸方向(図1中前後方向)の2端に開口19を持つ筒状(中空状)をなす。2つの開口19は他の部分に比べて縮径し、各開口19にはそれぞれ口金部2が一体化されている。
【0021】
容器本体1は、ライナー部10と補強部15とを持つ。ライナー部10は、ガスバリア性に優れるEVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂)からなる。補強部15は、カーボン繊維とエポキシ樹脂とを含む繊維強化プラスチック(所謂FRP)からなり、ライナー部10の外周に巻回形成されている。すなわちライナー部10は、補強部15の内周面を覆っている。
【0022】
各口金部2は、略円筒状をなし、略円形をなす開口19の内側に装着されている。図1中後側に位置する口金部2には、バルブ7にかえて閉止栓90が装着されている。したがって、図1中後側の口金部2は、閉止栓90によって閉じられている。図1中前側の口金部2には図中二点鎖線で示すバルブ7が脱着可能に取り付けられる。各口金部2とライナー部10とは一体に成形され、補強部15は口金部2とライナー部10との一体品に巻回形成されている。各口金部2における軸方向の一端部は圧力容器の内部に位置している。この端部を口金部2の内端部2aと呼ぶ。また、口金部2における軸方向の他端部を外端部2bと呼ぶ。各口金部2の内端部2aはライナー部10に埋設されている。各口金部2の外端部2bは圧力容器の外部に露出している。なお、実施例1の圧力容器は、軸方向(図1中前後方向)に2等分された分体として形成され、軸方向の略中央部において熱板溶着されることで一体化されている。
【0023】
図3に示すように、各ポート部材3は、本体部30と、カラー部材40と、シール部材50と、固定部材60とを持つ。本体部30とカラー部材40とは別体である。上述したように、本体部30は口金部2およびバルブ7で構成されている。本体部30の大部分およびカラー部材40は金属製であり、シール部材50はゴム(EPDM)製である。なお、本体部30およびカラー部材40の金属部分は、具体的には、オーステナイト系ステンレス鋼の一種であるSUS 316Lからなる。SUS 316Lは殆ど水素脆化しないことが知られており、液体水素を収容物とする圧力容器の材料として好ましく用いられる。なお、SUS 316LはJIS規格による名称であり、ASTM規格による316Lと略同じものである。なお、本体部30およびカラー部材40の材料はこれに限定されず、圧力容器に収容すべき収容物の種類に応じて適宜選択すれば良い。例えば、アルミニウム合金の一種であるA6061(T6)等を用いることもできる。シール部材50は、弾性体からなれば良く、各種ゴム、エラストマー等を好ましく用いることができる。
【0024】
本体部30は、ボス部31と、フランジ部32と、溝部33とを持つ。実施例1の圧力容器において、ボス部31、フランジ部32および溝部33は、本体部30における口金部2を構成している。ボス部31は略円筒状をなし、軸方向に延びる。ボス部31の内部にはバルブ7が取り付けられる。ボス部31における内端部2a側の部分には、フランジ部32が一体形成されている。フランジ部32はボス部31の外周側に連続し径方向外方に突出する略円板状をなす。ボス部31とフランジ部32との間には略リング状をなす溝部33が陥没形成されている。溝部33はフランジ部32の底面32aに開口している。ボス部31とフランジ部32とは口金部2における軸方向の略中央部で一体化され、口金部2における内端部2aにおいては溝部33によって隔てられ、圧力容器の径方向に離間している。換言すると、ボス部31とフランジ部32とは口金部2の内端部2a側において同軸的に配置され、略二重筒状をなしている。ボス部31には周方向に延びる第1リング溝35が陥没形成されている。第1リング溝35はボス部31の外周壁面31x(つまり、溝部33の内周壁面33y)に開口している。
【0025】
径方向における溝部33の断面形状はリング状である。溝部33の深さは溝部33の周方向および径方向に略一定である。溝部33の内周壁面33yおよび外周壁面33xは曲面状をなす。溝部33の底壁面33zは、軸方向に略垂直な略平坦面である。溝部33の底壁面33zには、後述する固定部材60に螺合するネジ穴36が形成されている。ネジ穴36は軸方向に延びる行き止まり穴状をなす。
【0026】
フランジ部32における内端部2a側の面を底面32aと呼び、外端部2b側の面を頂面32bと呼ぶ。フランジ部32には行き止まり穴状をなす多数の凹部37が陥没形成されている。凹部37はフランジ部32の底面32aに開口している。図1および図2に示すように、フランジ部32の底面32aは上述したようにライナー部10の一部(フランジシール部11と呼ぶ)で覆われている。フランジシール部11は凹部37にも入り込んでいる。
【0027】
フランジ部32の頂面32bもまたライナー部10の一部で覆われている。したがってフランジ部32は、ライナー部10に埋設されているといえる。このことによっても、ライナー部10は口金部2に強固に一体化され、ライナー部10と口金部2との間には隙間が生じ難い。ライナー部10のなかでフランジシール部11に連続する部分は、さらに溝部33の内部に延びている。この部分を溝シール部12と呼ぶ。溝シール部12は、溝部33の外周壁面33xを覆っている。溝シール部12の末端、すなわち、ライナー部10の末端13は、溝部33の外周壁面33xと溝部33の底壁面33zとの境界に配置されている。
【0028】
図3に示すように、カラー部材40は、溝部33よりもやや小形な略リング状をなす。カラー部材40は溝部33の内周壁面33yに対向する内周壁面40yと、溝部33の外周壁面33xに対向する外周壁面40xとを持つ。カラー部材40の内周壁面40yおよび外周壁面40xは曲面状をなす。また、カラー部材40には周方向に延びる第2リング溝45が陥没形成されている。第2リング溝45はカラー部材40の外周壁面40xに開口している。さらに、カラー部材40には、後述する固定部材60に螺合するネジ穴46が形成されている。ネジ穴46は軸方向に延びる貫通穴状をなす。カラー部材40は溝部33に挿入可能である。カラー部材40を溝部33に挿入すると、口金部2に形成されているネジ穴36とカラー部材40に形成されているネジ穴46とが同軸的に配置される。
【0029】
シール部材50は、2つのOリング(第1シール体51、第2シール体52)からなる。第1シール体51と第2シール体52は別体であり、各々溝部33の内部に配置されている。具体的には、第1シール体51はボス部31の外周壁面31x、すなわち、溝部33の内周壁面33yに形成されている第1リング溝35に拡径状態で装着されている。一方、第2シール体52は、カラー部材40の外周壁面40xに形成されている第2リング溝45に拡径状態で装着されている。したがって、第1シール体51は自身の弾力によってボス部31に固定される。また、第2シール体52は自身の弾力によってカラー部材40に固定されている。
【0030】
固定部材60はボルトからなる。カラー部材40を溝部33に挿入し、固定部材60をカラー部材40のネジ穴46および口金部2のネジ穴36に螺合させることで、カラー部材40は本体部30に固定される。
【0031】
カラー部材40を溝部33に挿入すると、溝部33の内部に配置されている溝シール部12が、カラー部材40と、溝部33の壁面(つまり本体部30、より具体的には口金部2)とに挟まれる。このとき、第1シール体51および第2シール体52は圧縮される。したがって、このとき第1シール体51は、カラー部材40の内周壁面40y、および、溝部33の内周壁面33y(より具体的には第1リング溝35の内面)に圧接する。一方第2シール体52は、カラー部材40の外周壁面40x(より具体的には第2リング溝45の内面)、および、ライナー部10の溝シール部12に圧接する。図2に示すように、本発明の圧力容器においては、圧力容器の内部から口金部2とライナー部10との隙間に至る収容物の進入経路は、2通り形成されている。進入経路の一方は、溝部33の内周壁面33yとカラー部材40の内周壁面40yとの間に形成されている。この進入経路は、第1シール体51がカラー部材40および溝部33の内周壁面33yに圧接することによって遮られる。また、他方の進入経路は、カラー部材40の外周壁面40xとライナー部10(溝シール部12)との間に形成されている。この進入経路は、第2シール体52が溝シール部12およびカラー部材40に圧接することによって遮られる。そして、ライナー部10の末端13は、第1シール体51と溝部33の内周壁面33yとの圧接箇所と、第2シール体52と溝シール部12との圧接箇所と、の間に配置される。したがって、ライナー部10の末端13はシール部材50によってシールされた領域に配置され、圧力容器に収容されている収容物は、ライナー部10の末端13に到達し難い。よって、圧力容器に収容されている収容物は、ライナー部10の末端13と口金部2との間に進入し難く、圧力容器の外部に漏出し難い。よって、実施例1の圧力容器はシール性能に優れる。なお、ライナー部10の末端13が、第1シール体51と溝部33の内周壁面33yとの圧接箇所と第2シール体52と溝シール部12との圧接箇所と、の間に配置されれば、ライナー部10の末端13をシール部材50によってシールされた領域に配置し得る。したがって、第1シール体51とカラー部材40との圧接箇所、および、第2シール体51とカラー部材40との圧接箇所の位置は特に限定されない。
【0032】
また、実施例1の圧力容器においては、シール部材50の弾力を用い、ライナー部10によって本体部30(より具体的には口金部2)を軸方向にシールしている。つまり、本体部30のなかでシール部材50にシールされる部分(実施例1においては溝部33の外周壁面33x)は、軸方向に沿って配置されている。そして、ライナー部10のなかで本体部30をシールする部分(溝シール部12において溝部33の外周壁面33xを覆う部分、実施例1においては溝シール部12の全体)もまた、軸方向に沿って配置されている。そして、溝シール部12を溝部33の外周壁面33xに向けてシール部材50で押圧している。このようにライナー部10によって本体部30を軸方向にシールする場合には、本体部30、カラー部材40およびシール部材50の形状が多少ばらついていても、シール部材50による弾力を比較的均一にライナー部10および本体部30に作用させることができ、ライナー部10と本体部30とをシール性高く密着させ得る。このため、ライナー部10と本体部30との隙間への収容物の侵入を抑制しつつ、各部品の公差を比較的大きく設定できる。このため、圧力容器のシール性能を高く維持しつつ、製造ロスを低減することが可能である。
【0033】
なお、溝シール部12は、溝部33の内部に入り込めば良く、少なくとも溝部33の外周壁面33xの深さ方向の一部を覆えば良い。溝シール部12の末端、すなわち、ライナー部10の末端13の位置は特に問わないが、第1シール体51と溝部33の内周壁面33yとのシール性を考慮すると、溝部33の内周壁面33yを避けて配置するのが好ましい。つまり、末端13は溝部33の外周壁面33x、溝部33の外周壁面33xと溝部33の底壁面33zとの境界、溝部33の底壁面33z、および、溝部33の底壁面33zと溝部33の内周壁面33yとの境界の何れかに配置されるのが好ましい。
【0034】
また、実施例1の圧力容器においては、凹部37に入り込んだフランジシール部11のアンカー効果により、ライナー部10と本体部30とが強固に一体化され、ライナー部10と本体部30との間に隙間が生じ難くなっている。なお、凹部の形状はこれに限定されず、溝状等であっても良い。さらに、凹部の大きさや数もまた特に限定されない。
【0035】
実施例1の圧力容器におけるライナー部10はEVOHからなるが、本発明の圧力容器におけるライナー部10の材料は、収容物の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリエチレン、ナイロン等がライナー部10の材料として好ましく用いられる。また、実施例1の圧力容器における補強部15は、カーボン繊維とエポキシ樹脂とを含むFRPからなるが、カーボン繊維にかえてガラス繊維やアラミド繊維等を用いても良い。
【0036】
(実施例2)
実施例2の圧力容器は、シール部材50が1つのOリングのみで構成され、ボス部31の外周壁面31xおよびカラー部材40の内周壁面40yにネジ溝34、44が形成されていること以外は実施例1と同じものである。実施例2の圧力容器を模式的に表す要部拡大断面図を図4に示す。
【0037】
シール部材50は、略リング状をなす。シール部材50の内径は溝部33の内径よりもやや小さく、シール部材50の外径は溝部33の外径よりもやや大きい。シール部材50の高さ(軸方向長さ)は溝部33の深さよりも小さい。実施例2において、シール部材50は、拡径状態でボス部31の外周壁面31xに装着され、自身の弾力によってボス部31に固定される。また、シール部材50は溝部33に挿入されると圧縮する。カラー部材40は、シール部材50よりも溝部33の入口側(本体部30の底面32側、口金部2の内端部2a側)において溝部33に挿入されている。そして、カラー部材40のネジ溝44がボス部31のネジ溝34と螺合することで、カラー部材40が本体部30に固定される。ライナー部10の末端13は、実施例1と同様に、溝部33の外周壁面33xと底壁面33zとの境界に配置されている。
【0038】
溝シール部12はカラー部材40と溝部33の壁面(つまり本体部30、より具体的には口金部2)とに挟まれるとともに、シール部材50と溝部33の壁面とに挟まれる。具体的には、シール部材50は、溝シール部12における末端13側の部分(図4中前側の部分)、カラー部材40の頂面40z(図4中前側の面)、溝部33の内周壁面33yおよび溝部33の底壁面33zに圧接する。カラー部材40は、溝シール部12におけるフランジシール部11側の部分(図4中後側の部分)および溝部33の内周壁面に当接するとともに、シール部材50に圧接する。したがって、実施例2の圧力容器においても、シール部材50は溝部33の壁面と溝シール部12とカラー部材40とに圧接するといえる。そして、ライナー部10の末端13は、シール部材50と溝部33の壁面との圧接箇所と、シール部材50と溝シール部12との圧接箇所と、の間に配置される。このため、実施例2の圧力容器においても、実施例1の圧力容器と同様に、ライナー部10の末端13はシール部材50によってシールされた領域に配置される。つまり、実施例2の圧力容器は、実施例1の圧力容器と同様にシール性能に優れる。
【0039】
また、実施例2の圧力容器においては、カラー部材40自体が本体部30に螺合するため、ボルト等の固定部材60を必要としない。このため実施例1の圧力容器は部品点数が低減され、製造工数が低減する利点がある。
【0040】
なお、実施例1および実施例2の圧力容器においては、カラー部材40を本体部30に螺合させたり、カラー部材40を本体部30にボルト締結したりすることでカラー部材40を本体部30に固定したが、カラー部材40を本体部30に固定する方法はこれに限定されない。例えば、接着、係合、嵌合等に代表される既知の方法を用いることができる。
【0041】
(実施例3)
実施例3の圧力容器は、ボス部31の外周壁面31xおよびカラー部材40の内周壁面40yにネジ溝34、44が形成されていること、および、ライナー部10の末端13が溝部33の底壁面33zに配置されていること以外は実施例1の圧力容器と同じものである。実施例3の圧力容器を模式的に表す要部拡大断面図を図5に示す。
【0042】
カラー部材40の内周壁面40yには、ネジ溝44が形成されている。詳しくは、ネジ溝44は、内周壁面40yにおける前側の部分(溝部33内において口金部2の外端部2b側に配置される部分)に形成されている。また内周壁面40yにおけるネジ溝44よりも前側の部分には、実施例1の圧力容器と同様に第1リング溝35が開口している。この第1リング溝35には第1シール体51が装着されている。したがって、カラー部材40は本体部30(より具体的には口金部2)に螺合し、かつ、この螺合した部分よりも前側すなわち溝部33の奥側において第1シール体51がカラー部材40の内周壁面40yおよび溝部33の内周壁面33yに圧接している。第2シール体52は、実施例1の圧力容器と同様に、カラー部材40の外周壁面40x、および、ライナー部10の溝シール部12に圧接している。実施例3の圧力容器において、ライナー部10の末端13は溝部33の底壁面33zに配置されている。しかし実施例3の圧力容器においても、第1シール体51と溝部33の内周壁面33yとの圧接箇所と、第2シール体52と溝シール部12との圧接箇所と、の間にライナー部10の末端13が配置されている。つまり、実施例3の圧力容器においても、シール部材50と溝部33の壁面との圧接箇所と、シール部材50と溝シール部12との圧接箇所と、の間にライナー部10の末端13が配置されている点は実施例1および実施例2の圧力容器とかわらない。このため、実施例3の圧力容器においても、実施例1および実施例2の圧力容器と同様に、ライナー部10の末端13はシール部材50によってシールされた領域に配置される。したがって、実施例3の圧力容器は、実施例1および実施例2の圧力容器と同様にシール性能に優れる。
【0043】
(実施例4)
実施例4の圧力容器は、溝部をバルブと口金部とで区画したこと以外は、実施例3の圧力容器と略同じものである。実施例4の圧力容器を模式的に表す要部拡大断面図を図6に示す。
【0044】
図6に示すように、実施例4の圧力容器におけるボス部31の軸方向長さは、実施例1〜実施例3の圧力容器におけるボス部31の軸方向長さに比べて短い。そして、フランジ部32の底面32aにおける径方向内側部分からボス部31の内周壁面31yにかけては、階段状の内周底壁面32cが設けられている。具体的には、内周底壁面32cは、第1内周壁面32y、第2内周壁面32z、第1連絡壁面32vおよび第2連絡壁面32wで構成されている。第1内周壁面32yは略軸方向に延びる壁面であり、内周底壁面32cにおける径方向の最外側に位置する。第1内周壁面32yは溝シール部12に覆われる。第2内周壁面32zは、第1内周壁面32yよりも径方向内側に位置し、略軸方向に延びる。第1連絡壁面32vは、第1内周壁面32yおよび第2内周壁面32zに対して交叉する方向(より具体的には略径方向)に延び、第1内周壁面32yと第2内周壁面32zとを階段状に連絡する。第2連絡壁面32wは、第1連絡壁面32vと同様に略径方向に延び、第2内周壁面32zとボス部31の内周壁面31yとを連絡する。換言すると、第2連絡壁面32wはボス部31の底壁面を構成している。第2内周壁面32zにはネジ溝34が形成されている。実施例4の圧力容器においては、第1内周壁面32y、第1連絡壁面32v、第2内周壁面32z、第2連絡壁面32wおよび後述するバルブ7の外周壁面7xによって溝部33が区画されている。
【0045】
カラー部材40は、溝部33に相補的な断面略階段状をなす。カラー部材40は2つの外周壁面(第1外周壁面40x、第2外周壁面40z)を持つ。第1外周壁面40xは第1内周壁面32yに対面する。第1外周壁面40xには第2リング溝45が設けられている。第2リング溝45には第2シール体52が拡径状態で装着されている。したがって、第2シール体52はカラー部材40、および、第1内周壁面32yを覆う溝シール部12に圧接する。
【0046】
カラー部材40の第2外周壁面40zにはネジ溝44が設けられている。第2外周壁面40zは第2内周壁面32zに対面し、第2外周壁面40zのネジ溝44は第2内周壁面32zのネジ溝34に噛合する。
【0047】
バルブ7の外周壁面7xはカラー部材40の内周壁面40yに対面する。実施例4の圧力容器においては、バルブ7の外周壁面7xに第1リング溝35が設けられている。第1リング溝35は実施例3と同様に、溝部33の内部に開口している。第1リング溝35には第1シール体51が拡径状態で装着されている。したがって、第1シール体51はバルブ7とカラー部材40の内周壁面40yとに圧接する。つまり、第1シール体51は溝部33の内部において、バルブ7に圧接する。また、上述したように、第2シール体52は溝部33の内部において、溝シール部12に圧接する。したがって、実施例4の圧力容器におけるシール部材50は、バルブ7と溝シール部12とカラー部材40とに圧接する。そして、ライナー部10の末端13は、シール部材50(第1シール体51)とバルブ7との圧接箇所と、シール部材50(第2シール部52)と溝シール部12との圧接箇所と、の間に配置される。したがって、実施例4の圧力容器においても、実施例1〜実施例3の圧力容器と同様に、ライナー部10の末端13はシール部材50によってシールされた領域に配置される。したがって、実施例4の圧力容器もまたシール性能に優れる。
【0048】
なお、実施例4の圧力容器においては、カラー部材40のネジ溝44を口金部2のネジ溝34に螺合させる際に、ネジ溝44にねじ緩み止め剤(ヘンケル社製、ロックタイト(R))を塗布した。このネジ緩み止め剤が塗布されたネジ溝44およびネジ溝34は錆び付き、互いに固着した。このためカラー部材40と口金部2とは強固に固定された。
【0049】
さらに、カラー部材40の底部には行き止まり穴状の治具穴49が複数に設けられている。この治具穴49には、螺合用治具9に設けられている突起部95が挿入され係合する。螺合用治具9は、略板状をなす基部90と、基部90に突設された複数の突起部95と、基部90に一体化されているハンドル部92とで構成されている。各突起部95は各治具穴49に対応する位置に設けられている。螺合用治具9は、各突起部95の重心を中心軸として回転可能であり、ハンドル部92はこの中心軸に対して離間している。したがって、ハンドル部92に力を加えると螺合用治具9が回転し、突起部95に係合する治具穴49を持つカラー部材40もまた回転する。このため、カラー部材40と口金部2とは容易に螺合する。
【0050】
なお、上記したネジ緩み止め剤は、実施例2の圧力容器および実施例3の圧力容器にも適用できる。さらに、上記した治具穴49を実施例2の圧力容器および実施例3の圧力容器のカラー部材40に設ければ、螺合用治具9を用いて実施例2の圧力容器および実施例3の圧力容器におけるカラー部材40を容易に回転させ得る。
【0051】
ところで、バルブ7には、一般に、口金部2との隙間をシールするバルブ用シール体が必要である。しかし実施例4の圧力容器においては、バルブ用シール体を第1シール体51で兼用できる。したがって、バルブ7に必要なバルブ用シール体は不要になり、一般的なバルブ7を持つ圧力容器に比べてOリング等のシール体を一つ削減することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の圧力容器は、例えば水素ガス、CNG、LNG、LPG等の各種液化ガスを充填するための圧力容器として好ましく使用できる。また、本発明の圧力容器は車載用の圧力容器として特に好ましく使用できる。
【符号の説明】
【0053】
1:容器本体 2:口金部 3:ポート部材
7:バルブ 10:ライナー部 11:フランジシール部
12:溝シール部 13:ライナー部の末端 19:開口
30:本体部 31:ボス部 32:フランジ部
32a:フランジ部の底面 33:溝部 33y:溝部の内周壁面
37:凹部 40:カラー部材 40x:カラー部材の外周壁面
50:シール部材 51:第1シール体 52:第2シール体
図1
図2
図3
図4
図5
図6