【発明が解決しようとする課題】
【0038】
しかしながら、たとえ錠剤およびパッチにより口腔内での活性成分の遅延化放出が確保されるとしても、この形態が口の中で8時間維持されることは患者にとっては考えられない。他方で、ペースト状の形態は唾液による粘膜の「浸出」作用に抵抗しないので、8時間もの間にわたりその場に維持されない。
【0039】
膣道の場合には、利用され得る形態は口腔道の形態と同様、すなわち、-錠剤、-ペースト形態である。
【0040】
前出のように、錠剤によりその場での遅延化放出が極めて良好に現れる。
【0041】
しかしながら、この形態の投与は患者にとって実用的でないと同時に、ある時間の後には拒絶現象が生じ得る。
【0042】
ペースト状形態の場合には、口腔道あるいは眼管向けと同じバイオ接着剤の賦形剤がある。しかしながら、口腔道向けのように、膣分泌により長い作用継続時間にわたる調製場所の維持は不可能である。
【0043】
座薬の他に、直腸領域での局部的な塗布形態は一般的に痔疾治療用のクリームあるいはゲルである。この道はまた口腔道経由で投与される活性成分の血液循環系の作用の目的にも利用され得るもので、これらの活性成分は肝臓領域で急速に分解する。直腸道によりこの問題は避けられる。
【0044】
今日まで、この方法向けの遅延化放出による形態は極めてわずかしか開発さなかった。研究はバイオ接着剤としてインドメタシンの直腸道経由による投与用のCarbopol(登録商標)が利用されてHOSNY 等(10)により実施された。
【0045】
こうして遅延化放出による形態の分野の文献が突っ込んで調査された後でも、局部分泌による粘膜の浸出現象のため2時間を越える長期間遅延化放出形態の獲得に効果的な解決法は明らかにできなかった。この実態から出発すると同時にこれを改善するため、本発明は局部塗布向けの遅延化作用による、および/または、放出によるペースト形態の実現に充てられる粘性液体組成の独自の考え方を提案するものである。これらの組成は、活性成分の持続する作用、および/または、遅延化放出が多少の粘性がありかつバイオ分解し得る強化されたバイオ粘着能力のある母体剤フイルムのその場形成により得られるという点が顕著である。強化されたバイオ接着性の前記性質は、2時間を越える間にわたり予め溶解されるかあるいは溶剤により分散された活性成分の作用、および/または、放出のある分泌物による粘膜からの絶え間のない「浸出」効果のもとで至る局部分泌物あるいは粘膜の成分との母体剤の複合反応により得られるもので、この作用および/または放出は適当な補助薬の混入により調整可能である。
【0046】
こうして、本発明は、調製塗布後にその場で強化されると同時にバイオ分解性のバイオ粘着能力のある母体剤薄膜がつくられることを目的とし、この活性成分の作用および/または放出は、可能な限りでは、pHとは関係なく、かつ/または、粘膜の分泌作用とも関係無く、前記バイオ接着性母体剤薄膜の強度が強化されるために使用される賦形剤に応じて決まるものである。
【0047】
強化バイオ接着性は粘膜上への塗布と同時のほぼ瞬間的な塗布のようなものである。
【0048】
「バイオ接着性」とは生物学的あるいは粘膜のフイルムに「貼り付く」能力を有する生物学的あるいは合成の物質の能力と理解される。
【0049】
「強化された」とは在来のバイオ接着性賦形剤と一緒に観察されるものとは別の粘膜に相当する支持体が利用される追加的な結合の創造と理解される。
【0050】
「母体剤フイルム」とは活性物質が含まれる多少とも固体の、多少とも厚く、そして多少とも多孔性の3次元網の形成と理解される。
【0051】
「生分解性の」とは酵素作用といった生物学的機構によると同時に器官分泌の「浸出」による浸食機構によっても生じる支持体の分解と理解される。
【0052】
「浸出」は同一支持体上の溶液の完全枯渇までの繰り返し通過と理解される。
【0053】
この発明は鼻、膣、直腸粘膜、そして角膜だけでなく口腔粘膜に充てられる調製にも十分適用できる。
【0054】
この発明は、固体状態あるいは液体状態にある一定の物質には、これらの粘膜に加えられる場合、粘膜のある分子と錯形成するという特性があるという点に基づいている。こうして、3次元網のように形成される粘膜表面への母体剤の固定化があり、この作用がおよび/またはこれから活性成分が時間をかけて徐々に分散する。利用される物質は大半が、製剤、化粧品、および食餌療法の分野でとても頻繁に利用される天然起源の物質である。
【0055】
「錯形成させる」とは大半の他の剤に見られる水素結合とは別のバイオ接着剤と言われる化学結合の形成と理解される。この結合にはそのエネルギーにより共有原子価の結合エネルギーと「浸出」現象にさらに抵抗力のある構造に至らしめる水素結合エネルギーとの間が媒介されるという特徴がある。
【0056】
このように、本発明は、少なくとも1種の母体剤、母体剤の
水和化溶剤、および少なくとも1種の活性成分が含まれることを特徴とする活性成分の遅延化放出によるペースト状形態での局部塗布向けに強化されたバイオ接着性能力による粘性液体組成を対象としている。
【0057】
本発明の対象となる遅延化放出によるバイオ接着性の前記母体剤フイルムの入手には、粘膜と接触して強化バイオ接着性能力を示す母体剤といわれる物質に助けが求められる。
【0058】
これらの物質は単独でも利用可能であると同時に、これにより活性物質が中で溶解されるかあるいは分散される粘性のあるフイルムあるいは多少なりとも丈夫な構造が生まれる。
【0059】
これらの同一物質類は、前記母体剤フイルム構造とそのバイオ接着性特性の強化を目的とする別の賦形剤と会合して利用可能である。
【0060】
その他の賦形剤と会合して、これらの母体剤は「結合」の役割を果たす。
【0061】
「結合する」とは多少とも丈夫な構造に強化するという目的で、網の粒子間のセメントとして作用する物質と理解される。
【0062】
このように、これらの母体剤物質により、粘性のある不純物内あるいは粘膜の表面に形成されるスポンジ構造内へのこれらの封じ込めを通じて器官からの分泌の最中における他の賦形剤の分散が避けられる。
【0063】
このため、得られる母体剤フイルムの強度に応じて、この方式に含まれる前記フイルムの作用あるいは活性物質の放出は、前記調製の作用地点に応じて1時間から48時間の間を変動し得る。
【0064】
好ましくは、本発明によると、活性物質の放出時間は口腔、鼻、および目の道に関して2時間から12時間の間にあるとともに、活性物質の放出時間は膣道に関して12時間を越える。
【0065】
前記フイルムの入手が可能となると同時に「結合」の役割を果たす母体剤は、ポリサッカライドの天然重合体類に属する。
【0066】
この発明の範囲内に挙げられるポリサッカライドはカラジーナンである。
【0067】
カラジーナン類は医療分野で知られて600年以上になると同時に食品では特に単純加熱による牛乳のゲル化が構成されるこれらの独特な特性について知られている。
【0068】
これはポリサッカライドであり、多少とも硫化したガラクトースの重合体である。
【0069】
カラジーナン類は様々な海藻類から抽出される。すなわち、ツノマタ類クリスプス、 スギノリ類コハクダマ、スギノリ類 カリビアダカラ、 スギノリ類アツカワハナノエダ、 スギノリ類 ピスチレータ、 スギノリ類シャミッソーイ、 イリデア、 コットニー、スピノサムである。
【0070】
利用される抽出方法により基本骨格がα-(l-3) および β-(l-4) で交互に結合されるDガラクトースの残留物の鎖である様々なタイプのカラジーナン類が得られる。
【0071】
変動する品質は量および硫酸塩の集合位置ならびに1および4に結合されるガラクトース上の無水橋3,6の存在あるいは不在によって決まる。
【0072】
様々な群の硫酸塩ならびに無水ガラクトース橋3,6の割合によりカラジーナンの様々なタイプの分離が可能となった。これらは、イオタ、カッパ、ラムダ、ベータ、ニューおよびミューカラジーナンである。
【0073】
ラムダ形態によりカッパ形態と比較される硫黄処理された沢山の集合が示される。イオタ形態は中間物である。
【0074】
ミューおよびニューの形態はさらに少量であるとともにイオタおよびカッパ形態のゲル化効果を減らす不純物として考えられる。
【0075】
本発明として挙げられるカラジーナンのタイプはラムダおよびイオタカラジーナンである。
【0076】
カッパカラジーナンと比較して、ラムダおよびイオタカラジーナンは何らのシネレシス現象も示さない。
【0077】
ラムダカラジーナンはゲル化特性を示さないが粘度を高める特性を示す。
【0078】
イオタカラジーナンの場合には、ゲル化特性は調製が熱を受ける場合にしか発展しない。
【0079】
イオタあるいはラムダカラジーナンで何であっても、これらは水に飢えたハイドロコロイド物質である。
【0080】
粘膜と接触すると、これらの物質により、決まったCarbopol(登録商標)あるいはカルボキシルメチルセルロースといった在来のバイオ接着性賦形剤のように、これらもまたさらに丈夫な3次元網が形成され得る重合体としてバイオ接着性特性が開発される可能性がでてくるようになる。
【0081】
バイオ接着剤といわれる賦形剤のバイオ接着性の在来の機構は、前記賦形剤の器官粘膜を被覆する粘液との相互反応であると定義される。この粘液は一般的に高度に水和化していると同時に糖タンパク質、粘素の存在による一定の粘性を示す。
【0082】
これらの化学的性質の部分では、分子量の大きな重合体、バイオ接着剤といわれるこれらの賦形剤は水分に飢えている。このように、粘膜に接触すると、これらの重合体は重合体の親水性集合と粘液集合間ならびにその他の粘素集合間の水素結合の発生とともに急速に膨張する。重合体/粘素の相互反応から生まれる3次元網の形成があるのはこのためである。
【0083】
しかしながら、水素結合は小さなエネルギーの結合である。従って、
溶媒の希釈あるいは支持体からの常時の「浸出」によりこれらの賦形剤のバイオ接着剤特性がこうして小さくなり、これらの結合は急速な破壊に向かう。
【0084】
これに対して、イオタおよびラムダカラジーナンの場合には、バイオ接着剤の性質は在来の賦形剤の場合に観察される水素結合の発生以外にも別の結合が支持体とともに形成されるので「強化される」と言われる。
【0085】
実際、イオタおよびラムダカラジーナンには分子の骨格関して硫酸塩集合があることが言及された。これらの化学的集合は極めて反応性があると同時に、これらの窒素および硫黄のような原子のあるものについて自由陽子を呈する一定の分子とともに錯形成反応を生む。これらの自由陽子の存在の点では、カラジーナンの硫酸塩集合SO
42-のような反イオン集合のN
2+ あるいは S
4+がこれらの分子と極めて強力的に反応する。
【0086】
こうして、窒素原子の両事例を担う粘素ならびに粘膜と接触するイオタおよびラムダカラジーナンにより、
-ポリサッカライドのOH集合と粘素ならびに粘液内に存在する水の集合間に生まれる水素結合-ポリサッカライドの硫酸塩集合と粘素および粘膜の窒素原子との間の錯形成の結合
から構成される3次元網が生まれるようになる。
【0087】
「強化された」バイオ接着剤の性質はCarbopol(登録商標) 934P NFとラムダカラジーナン(Benvisco(登録商標) LPB 2301)の比較研究により明らかとなった。
【0088】
この研究は3000 mPaで定義される粘性を有する2溶液の生成物に立脚している。
【0089】
溶液の粘性は勝手にではなく、溶液、すなわち、分散の容易な溶液(噴霧可能)の最終力学的特性に応じて選択された。
【0090】
こうして、3000 cPsの粘性に関して、バイオ接着剤濃度は、
-ラムダカラジーナンについては2.0%
-Carbopol(登録商標)については0.6%
という案配である。
【0091】
これらの値を超えると、得られる生成物は、もはや粘性のある溶液ではなくなりゲルの様相を示す。
【0092】
バイオ接着性に関して、非酸化支持体上で行われたすべての研究に反して、これらの溶液のバイオ接着性の研究はpH6.8の5%のリン酸塩緩衝粘素溶液を含ませたセルロース薄膜(浸透性薄膜)上で行われた。
【0093】
薄膜含浸は溶液の沈殿前の30秒間行われた。
【0094】
薄膜含浸は、様々な粘膜領域を通過するものすなわち粘膜の湿潤相を似せた薄膜の表面に液体フイルムが形成されるというものである。
【0095】
0.5 mlの試験液が下縁から6 cmのこの含浸膜の表面に乗せられた。
【0096】
バイオ接着性の「強化された」性質が器官の様々な分泌を見せかけるpH6.8の緩衝された
溶媒を通る沈殿物の「浸出」により試験された。
【0097】
これらの沈殿物の「浸出」は欧州薬局方第4版に説明される錠剤の紛状化器具を利用して行われた。
【0098】
この器具により、1分当たりに30回の割合で、上下の往復ならびに12 cmの振幅の動作が描かれる。
【0099】
含浸膜は自身が往復動作を描くレバー上に鉛直に固定される剛な支持体(ガラス板)上に固定される。
【0100】
クロノメーターのような紛状化器具が、過剰な沈殿物が薄膜の下部部分に滴り落ち始める時に始動される。
【0101】
含浸膜についてのCarbopol(登録商標)とラムダカラジーナンの間になされた比較研究の他に、単純に加湿された薄膜について平行研究が実施された。
【0102】
「単純に加湿された」とは薄膜表面に水性フイルムが無いものと理解される。
【0103】
あらゆる期待に反して、生物学的薄膜表面の液体フイルムと接触しているラムダカラジーナンにより、同一条件で置かれるCarbopol(登録商標)より接触時間が長いことがはっきりと示された。
【0104】
単純湿潤薄膜上と含浸薄膜上の接触時間の間で、Carbopol(登録商標)の場合に、ラムダカラジーナンに関する有意差のない1分45秒(1’45”)のものに対して、2分36秒(2’36”)もの有意差が観察された。
【0105】
【表1】
【0106】
この性状の差は、カラジーナンが Carbopol(登録商標)のものとは全く異なる流動学性状を持つだけに、ますます意味がある。
【0107】
実際には、カラジーナンをベースにした液体の調製は、ニュートン生成物、つまり、カラジーナンがこれらの単独質量効果のもとで自由に流れるというCarbopol(登録商標)の場合には無いものとして特徴付けられる。
【0108】
他方、これらの同一生成物もまた、揺変性、すなわち、攪拌効果のもとにある溶液であるものとして特徴付けられ、静止固体の様相を有するこれらの前記溶液は急速に液化する。この特性はCarbopol(登録商標)の場合には観察されない。このようにカラジーナン溶液の湿潤薄膜表面に沈殿後、この流れは支持体の鉛直位置に置いて、じきに、はっきりと観察されると同時に器具の始動直後に続いた。これに対して、Carbopol(登録商標)の場合には、この流れは器具の始動後もはっきりと多いというほどではなかった。
【0109】
さらに、あらゆる期待に反して、含浸薄膜上では、鉛直位置にあるすべての流れから自由な薄膜の表面を移動する液体フイルムにより、その流れがその表面でのカラジーナンの存在により妨げられるのが観察された。湿潤薄膜で観察された結果とは逆に、沈殿物の流れは器具が始動する時には実際には存在しない。
【0110】
Carbopol(登録商標)の場合には、逆の結果が観察される。薄膜表面の液体フイルムはこうして発生する沈殿物を流れとともに押し流す流れの中では邪魔とならない。
【0111】
このバイオ接着性特性は、含浸されたあるいは粘素のない同一生物学的薄膜で覆われた45°傾斜面でのカラジーナンベースの溶液の流れ時間の記録によっても示された。非含浸薄膜上と含浸薄膜上との間の時間有意差は注目される。
【0112】
【表2】
【0113】
カラジーナンが薬学、美容術、および栄養学とは別の最も多様性のある分野でいくつかの特許の対象となるとしても、これら薬学、美容術、および栄養学は、しかしながら、遅延化放出による形態の実施にはあまり利用されていない上に、遅延化放出によるバイオ接着性方式の実施については、尚更、利用されていない。
【0114】
実は、遅延化放出形態の分野では、なかんずく、固体形態のもとで生じる遅延化放出による母体剤の生成物に関するカラジーナンに言及する国際特許申請WO 03101424が引用され得る。
【0115】
米国特許US 6,355,272の場合には、カラジーナンは、消化管の領域で時間をかけて徐々に放出される活性成分とともに錯形成される。
【0116】
同一の類の発想では、国際特許申請WO 0100177により、抗生物質の遅延化放出のためのアモキシサイクリン/カラジーナンの結合が保護されている。
【0117】
ヘラクレスによりその米国特許US 6,358,525において活性物質が器官に消費されるのを遅らせる目的でハイドロキシルプロピルセルロースおよびカラジーナンといったハイドロコロイドをベースにした様々な成分が保護されている。
【0118】
米国特許申請US2004019010は白内障のような眼科外科手術時の眼球のガラス体液の置換剤としてカラジーナンのゲルを採用している。ガラス体液は眼球内の圧力が強すぎてしまうのを避けるために、時間をかけて徐々にこれらの粘性が小さくなるのが分かるこれらのゲルにより置換される。手術後に由来するあらゆる合併症を避ける抗炎症性剤、抗生物質等といった活性物質がこれらのゲルと配合可能である。
【0119】
米国特許US 5,403,841はある活性成分の眼炎への塗布向けのカラジーナンを保護している。この場合には、カラジーナンのバイオ接着ではなく、眼球内に点滴注入されるカラジーナンをベースとした溶液に関するほぼ瞬間的な粘性の上昇が特許請求されている。
【0120】
同様に、欧州特許EP424043は眼球領域での成分の放出時間を延ばすためのカラジーナンの利用に丁寧に言及している。この成果はカラジーナンの層蛋白なかでもリゾチームとの相互反応による涙液の粘性の上昇によるものであるはずであろう。いずれの場合も相互反応の過程には全く触れられていない。
実際には、
-水素結合の創造
-錯形成反応
-その場での微小結晶形成によりバイオ利用度を増す機構でもあり得る沈殿反応
に関しては全く言及されていない。
【0121】
他方で、その外側層が脂質と粘素の混合物で被覆される角膜領域におけるこれらの調製物のバイオ接着活動にも全く言及されなかった。
【0122】
口腔領域では、活性成分の放出を遅らせるゲル化剤に限ったカラジーナンの利用にいては、米国特許US 5,672,356に言及されており、バイオ粘着はメチルビニルおよび無水マレイン酸の共重合体によりもたらされる。
【0123】
食道の領域では、米国特許6,610,667により、バイオ粘着の主要剤がアルギン酸塩ならびにキサンタンゴム、ガラクトマナン、グルコマナン、およびカラジーナンといった最小限度のその他ハイドロコロイドである組成が保護されている。申請は主に、キサンタンアルギン酸塩/ゴム、あるいはアルギン酸塩/ガラクトマナンあるいはグルコマナンの会合部周辺に集中している。他方、食道は外部への接近が容易な空洞部とは遠くにある。
【0124】
国際特許申請W02004/075920は放出を遅らせる目的で肺領域の活性成分の媒介体としてカラジーナンを採用している。ここでも、肺は、外部への接近が容易であるとはとてもいえない口、膣、直腸の空洞と同じ理由で空洞部としてはまず考えられない。他方では、肺の分泌物は唾液腺あるいは涙腺から観察されるものよりも顕著に少ない。
【0125】
その他の欧州特許EP1452168のような特許が、カラジーナンの皮膚塗布を対象にしている。米国特許申請US2002071861はカラジーナンを採用しているが、これらの調製物のバイオ接着剤はカルボキシメチルセルロース、ハイドロキシプロピルメチルセルロースならびにCarbopol(登録商標)によりもたらされる。
【0126】
それでも、米国特許US 6,159,491、US 5,069,906ならびにUS 4,983,393は膣道に充てられる遅延化放出方式によるカラジーナンの利用に言及している。
【0127】
米国特許US 6,159,491は放出を2段階にわたらせる目的でカラジーナンおよび高純度アガロースとCarbopol(登録商標) (Polycarbophil(登録商標))の化合物を利用している。この場合には、カラジーナンは活性物質の放出を遅らせるゲル化剤としてまたCarbopol(登録商標)がバイオ接着剤として採用されている。
【0128】
米国特許US 5,069,906およびUS 4,983,393は活性物の放出を遅らせる母体剤である場合に限ってカラジーナンを保護している。バイオ接着剤の性質には言及していない。
【0129】
本発明では、治療領域に応じて、特にカラジーナンの
溶媒内の母体剤濃度は、調製物の最終質量に関して0.5%から30%まで変動する。母体剤、特に、カラジーナンの水和化溶剤は、水性あるいは水和アルコールであり得る。アルコール相の割合は水和相の全容積に関する質量で10%から90%まで変動し得る。
【0130】
アルコール相は、エチルアルコールならびにイソプロピルアルコールにより代表される。
【0131】
ある一定のイオンの添加により、カラジーナンのより良好な水和化が可能となり得ると同時に、これらの
溶媒濃度の上昇が可能となる。
【0132】
この水和化に都合の良い剤は、アルカリ含有薬およびアルカリ土類に属する。これらはなかでも、
-塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、クエン酸、ならびに、これらの派生物の、ナトリウム、およびカリウムの塩、ならびに水和化物である。
【0133】
溶媒に導入され得るアルカリイオンおよびアルカリ土類の割合は、調製物の全質量に関する質量で0%と50%の間を変動する。
【0134】
採用される水性相は、活性物質の安定性だけでなく母体剤の安定にも都合のよいように緩衝される。
【0135】
実際、中性
溶媒のデキシトロースの存在するカラジーナンは熱の作用により時間とともに進行が増す加水分解を受ける。
【0136】
このようにして、中性
溶媒状態でかつ24時間にわたり、酸基性
溶媒中にカラジーナンを放出する進行的加水分解による生成物の粘性の低下が観察される。
【0137】
酸性緩衝液の環境中での組成は、
-塩酸/ナトリウムの塩化物の緩衝剤、あるいは塩酸/フタル酸のカリウム化物の緩衝剤、あるいは塩酸/グリココル酸の緩衝剤
-クエン酸/クエン酸塩あるいはクエン酸/ナトリウム水和化物の緩衝剤
-乳酸/乳酸塩緩衝剤
であり得る。
【0138】
様々な成分の割合により、pHが2から5の間にある酸の維持が可能となる。
【0139】
カラジーナンの場合には、さらに良い安定性が中性あるいは塩基性
溶媒状態で観察される。
【0140】
このように利用可能である緩衝溶液は、
-ナトリウムあるいはカリウムのリン酸塩のリン酸塩緩衝剤
-重炭酸塩/炭酸塩の炭酸塩緩衝剤、
-カリウム/塩酸のフタル酸塩緩衝剤
-ナトリウムの硼酸/硼酸塩の硼酸塩緩衝剤
の組成に応じる。
【0141】
緩衝される
溶媒のpH値は、5から12まで変動する。
【0142】
本発明は、ある一定種類数の活性物質の投与に向けられる。
【0143】
このような具体化の対象となり得る活性物質は、ある一定の製剤、すなわち、鎮痛剤、抗炎症薬、抗鎮痙剤、細胞毒素薬、抗生物質、抗菌剤、消毒薬、駆虫剤、ホルモン剤、抗ウィルス薬、頭痛薬、抗アレルギー薬、呼吸興奮剤、殺精子剤、抗痔疾薬、血管収縮薬、血管拡張薬、抗掻痒薬、子宮弛緩剤、抗緑内障薬、散瞳薬、抗喘息薬の部類に属する。
【0144】
これらの物質は本発明の対象となる調製物の水性相あるいは水和アルコール相内の溶解状態、あるいは母体フイルム中に分散された固体状態で混入される。
【0145】
これらのある一定数の物質がカラジーナンの
水和化溶剤に可溶化可能である場合には、その他のものは有機相中への可溶化が必要とされる。
【0146】
人体器官用に危険なく利用可能である有機溶剤の中には、次のものが挙げられる。すなわち、
-植物油、水素添加植物油、エトキシレト植物油、つまり、オリーブ/ヘーゼルナッツ/ココナッツの実の油、リシン油、大豆油、ゴマ油等
-鉱物油、つまり、パラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィン、シリコン油、イソヘキサデカン、イソドデカン、ならびに派生物等
-天然油、鮫油、ヘキサメチルテトラコサン、そのモノ、ジ型、およびトリグリセリド等
-合成油、つまりポリイソブタン、水素添加ポリイソブタン等
-ならびに、以下その他の溶剤
エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ポリプロピレン、プロピレン炭酸塩、ジメチルイソソルビッドエーテル、ポリオキシエチレングリコール(マクロゴル)、グリセロール、ポリエチレン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート、グリセロールカプリレート/カプレート、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレングリコール脂肪酸エステル、トリアセチン、d-イソプロピルミリステート、グリコフロール、脂肪酸液体エステル、エチルアセテート、ブタノール、プロプレングリコール酢酸塩、ブチル酢酸塩、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチルラクテート、ブチル酢酸塩、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリンモノオレアート、グリセリンリノレアート、脂肪酸およびグリセロールエステル、グリセロールおよびPEGの脂肪酸エステル等
【0147】
これらの調製に採用されるこれらの様々な溶剤の割合は活性成分の可溶性に依存するとともに水和化相の全容積に関する容積で1%から50%まで変動する。
【0148】
ある場合には、これらの溶剤は水和化相と活性有機溶液との間のすべての位相差を避けるために界面活性剤の使用を必要とする。
【0149】
本発明に採用され得る界面活性剤は次のようなものである。
-以下の非イオン界面活性剤
・ポリソーベート、スパン、トウィーン、等のソービタンエステル
・PEG 100のステアラートのある PEG 8ステアラートといったポリエトキシレト脂肪酸、
・ポリオキシエチレン鎖上の4群から23群までのオキシエチレンを有するPEGのモノラウレート のエステル混合物等のポリエトキシレト脂肪アルコール
・メチルグリコールステアラートといったグリコールエステル、
・グリセロールモノステアラート、PEG75ステアラート、グリコールおよびPEG6から32までのステアラート等のグリセロールエステル
・PEGエステル
・サッカロースエステル、
・「Brij」といった脂肪アルコールおよびPEGエーテル
・アルキルフェノールおよびPEGのエーテル
・・コプラ、ラウリン酸等の脂肪酸モノエタノールアミド等、・ミリスチン酸、ラウリン酸のジエタノールアミド等、・ラウリン酸のモノイソプロパノールアミン、といったアミド作用を示す界面活性剤
・フォスファチジルコリン、フォスファチジルセリンといったリン酸脂質
-以下のイオン性界面活性剤
・ナトリウムラウリルスルファートおよびその派生物といった硫化派生物
・ナトリウムドデシルスルフォサクシネートとその派生物といったスルホン化派生物
・セチルトリメチルアンモニウム塩化物、ラウリルピリジニウム、ジステアリルジメチルアンモニウム等の四基アンモニウム
・・コプラアルキルジメチルアンモニウムベタイン、ベタイン構造脂肪酸アミド派生物、ラウリンαイミノジプロピオン酸およびその派生物、ラウリンミリスチルαアミノプロピオンおよびその派生物等の両性物
【0150】
他方、界面活性剤の中でも、フォスファチジルコリンのような、リン脂質のバイオ接着剤特性が強化されるために利用可能である。
【0151】
前出と同じ試験によると、フォスファチジルコリンによりカラジーナンのバイオ粘着能力が増すことがはっきりと示されている。同一粘性と最低濃度について、含浸された薄膜上と非含浸薄膜上との間の流れの時間差は414秒程度である。リン脂質が無い場合は、この差は122秒でしかない。
【0152】
【表3】
【0153】
カラジーナンのバイオ粘着能力が増すような活性成分の可溶化あるいは分散の促進のために採用されるこれらの物質の量は、賦形剤の全質量に対する質量で0%から50%まで変動し得る。
【0154】
活性物質が水和化相中であるいはその他の溶剤中で可溶化可能であるという点の他に、これらはバイオ接着剤の懸濁により発生する固体状態にも混合され得る。
【0155】
従って、活性物質は粒度測定分類基準に見合うものでなくてはならない。
【0156】
このように、粉末の粒度測定分類による分布は、1μmから1000μmの間に、好ましくは1μmから250μmに含まれる梯形状に並び得る。
【0157】
ある一定数の試験時に、カラジーナンはゼラチン状外見でかつ濃度に応じて緩んだ堅さから引き締まった堅さまでの粘性の高いフイルムとなる点が明らかになった。
【0158】
この構造の補強は分泌物と接触してこの網目の堅固さが増えることになる物質の
溶媒への導入により行われ得る。
【0159】
数多くの物質によりこの役目が果され得る。しかし、澱粉だけは、水と接触して粘性の高い網目が形成される性向により、カラジーナンの母体構造が補強される
水和化溶剤の中では多少とも溶解性のある生成物であるので、特にこれらの派生物が取上げられた。
【0160】
このように、天然の澱粉は以下のものから派生するこれらの生成物同様、前記発明における構造化剤として取り上げられている。
すなわち、
-ゼラチン化以前の物理的変化
-化学的変化
・化学的あるいは酵素的デキストリン化反応
・酸加水分解
・酸化反応
・リン酸、アジピン酸、ハイドロキシプロピルあるいはハイドロキシエチル群による置換反応である。
これらの様々な構造化剤は小麦、米、とうもろこし、キャッサバ、じゃがいもの澱粉をもとに入手可能である。
【0161】
2時間と48時間の間の活性物質の作用および/または放出が得られる目的で採用される量は、調製剤全質量に関する質量で0%から50%まで変動し得る。
【0162】
密度が高くかつサイクルの早い構造が得られるために重要な係数は、これら前記物質の粒子のサイズである。実際は、粒子が細かいほどより高い膨張能力が大きくしかも、形成網はさらに密度が高い(粒子間の間隙より小さい)。
【0163】
こうして、このような結果が得られるための澱粉および組換え澱粉の粒子のサイズは、1μmと1000μmの間に含まれなくてはならず、好ましくは1μmと100μmの間にある。
【0164】
保存補助薬および着色剤が組成中に導入可能である。保存剤の割合は調製剤の全質量に関する質量で0%から10%まで変動し得る。
【0165】
着色剤は水和溶解可能であるかまたはアルミナラッカーあるいはその他支持剤に固定される。
【0166】
必要とされる着色剤の最適割合は調製剤の全質量に関する質量で0.01%と5%の間にある。
【0167】
口腔に充てられる調製剤の場合には、湿った生成物がバイオ粘着
溶媒に添加可能である。
【0168】
「湿った」とは固有の吸湿特性、すなわち、環境大気中での湿気の固定のおかげで存在する
溶媒にある一定の湿度をもたらす物質と理解される。
【0169】
これらの生成物はカラジーナンのバイオ接着性の増大により実現されるカラジーナンの水和化を促進する特徴を有する。
【0170】
このように前出と同じ試験に基づくと、粘素含浸薄膜上の流れ時間につながる、同一カラジーナン濃度に関して、グリセリンはカラジーナンの単純水性調製よりも明らかに長いようである。
【0171】
実際、10 cmの流れ距離について、この調製物は支持剤との強い反応のため置いてから60分後でもこの距離に到達しなかった。
【0172】
【表4】
【0173】
7.5 cmの距離について、2種の調製物間の流れの差は明らかである。粘素の無い流れ時間に対する粘素を伴う流れ時間の間の関係以外の何ものでもないバイオ接着性係数は、同一カラジーナン濃度に関する限りあるいは同一粘性に関する限り、カラジーナンだけのものよりさらに長いことがはっきりしている。
【0174】
【表5】
【0175】
これらの物質の中にはグリセリン、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、マンニトール等といった多価アルコールがある。
【0176】
これらの生成物は、液体相の全質量に関する質量で1%から30%の間にある濃度で利用可能である。
【0177】
中でもこれらの口腔粘膜に塗布されるのに充てられる調製物は、甘味料のような芳香剤がバイオ接着剤
溶媒に添加可能である。
【0178】
芳香剤は甘味料と同様に天然あるいは合成のもとになり得る。
【0179】
甘味料として利用される従来のサッカロースの他に、アスパルテーム、 アセスルファーム 、ナトリウムサッカリネート、およびナトリウムシクラメートが甘味剤として挙げられ得る。
【0180】
採用される甘味料に応じて、
溶媒中濃度は調製剤の全質量に関する質量で0.1%から30%まで変動し得る。