特許第5979467号(P5979467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5979467積層ブロー成形容器及び吸気孔の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979467
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】積層ブロー成形容器及び吸気孔の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20160817BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   B65D1/02 210
   B29C49/22
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-188750(P2011-188750)
(22)【出願日】2011年8月31日
(65)【公開番号】特開2013-49470(P2013-49470A)
(43)【公開日】2013年3月14日
【審査請求日】2014年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 寿夫
(72)【発明者】
【氏名】早乙女 光裕
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−182389(JP,A)
【文献】 特開2008−207861(JP,A)
【文献】 特開平09−301372(JP,A)
【文献】 特開平10−202595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B29C 49/22
B26F 1/00 − 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定形の外殻を形成する合成樹脂製の外層(11)と、該外層(11)に剥離可能に積層する合成樹脂製の内層(12)とから成り、口筒部(2)の所定位置においてポンチカッターにより外層(11)に吸気孔(14)穿孔されているブロー成形容器であって、
前記外層(11)の内表面側端部における前記吸気孔(14)の形状ラッパ状に拡径されると共に、前記吸気孔(14)の開口周縁部にポンチカッター穿孔によるバリによって形成される凹凸(11c)を有することを特徴とするブロー成形容器。
【請求項2】
定形の外殻を形成する合成樹脂製の外層(11)と、該外層(11)に剥離可能に積層する合成樹脂製の内層(12)とから成るブロー成形容器(1)の口筒部(2)の所定位置においてポンチカッター(43)により外層(11)を穿孔して吸気孔(14)を形成する方法であって、
前記ポンチカッター(43)は先端部に筒状刃(44)を有し、該筒状刃(44)の内周面に該筒状刃(44)の外層(11)からの後退時に、該外層(11)からの抜け防止機能を発揮する係止部(45)を配設したものを使用し、前記筒状刃(44)を刃先(44p)が外層(11)の内表面の直近位置になるまで圧入前進させ、前記外層(11)を完全に切抜くことなく先端に未切抜き部(11b)を周状に残存させた状態とし、次に、筒状刃(44)の後退に伴って前記係止部(45)の抜け防止機能により、筒状刃(44)内に残留する、未切抜き部(11b)を残して切抜かれた前記切抜き片(11a)を後退させ、該後退により前記未切抜き部(11b)を破断して切抜き片(11a)を完全に切抜かれた状態として前記吸気孔(14)を穿孔することを特徴とする吸気孔の形成方法。
【請求項3】
ポンチカッター(43)の筒状刃(44)の内周面に縮径段部(45a)を周設し、該縮径段部(45a)を係止部(45)とした請求項記載の吸気孔の形成方法。
【請求項4】
筒状刃(44)の内周面を、縮径段部(45a)の内周端からテーパー状に拡径させて刃先(44p)に至る構成とした請求項記載の吸気孔の形成方法。
【請求項5】
縮径段部(45a)を周方向に間歇状に周設した請求項3または4記載の吸気孔の形成方法。
【請求項6】
ポンチカッター(43)の筒状刃(44)の内周面に、刃先(44p)に向かってテーパー状に縮径させたテーパー状縮径部(45b)を形成し、該テーパー状縮径部(45b)を係止部(45)とした請求項記載の吸気孔の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定形の外殻を形成する合成樹脂製の外層と、この外層に剥離可能に積層して内袋を形成する内層とから成り、口筒部に、外層と内層との間に外気を導入するための吸気孔を穿孔した積層ブロー成形容器と、この吸気孔の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
定形の外殻を形成する合成樹脂製の外層と、この外層に剥離可能に積層して内袋を形成する内層とから成る積層ブロー成形容器、所謂、デラミボトルが知られており、特許文献1には口筒部の外層部分に、外気導入用の吸気孔を穿孔、形成する方法及び装置に係る発明が記載されている。
【0003】
図9は、特許文献1の図2に相当するもので吸気孔の形成方法を概略的に示す説明図であり、積層ブロー成形容器1に穿孔装置30を配設した状態が示されている。
容器1は口筒部2、肩部3、胴部4を有し、外層11と内層12を積層したデラミボトルである。
また、穿孔装置30は主として受け部材31とハッチングして縦断面で示されるカッター部材40から構成されている。
【0004】
受け部材31は、支持部材32から下方に垂下する支持棒34と、この支持棒34の先端に配設されたカッター受け台36とからなっている。
カッター部材40は、支持部材32に水平状に配設される支持軸33に左右に摺動可能に支持された摺動部材41と、この摺動部材41に下方に垂下する支持棒42と、この支持棒42の先端に受け部材31のカッター受け台36に対向するよう配設されたポンチカッター43とからなっている。
【0005】
ポンチカッター43は先端部に筒状刃44を有し、その内部に切抜き片11aを導出する透孔46が設けられている。
そして、駆動手段(図示省略)により、支持軸33に沿って摺動部材41を図中、左側(X方向)に移動することによりポンチカッター43は、ボルト37の先端が支持棒34に突き当たるまで移動するが、
その際、まず筒状刃44が容器1の口筒部2の内層12をカッター受け台36の受け面36aに押圧し、次いで容器1の口筒部2の外層11に圧入され、内層12を残して外層11を切抜き、内層12と外層11の間に大気を導入する吸気孔を穿孔する。
ここで、ポンチカッター43の筒状刃44の刃先とカッター受け面36aとの間隙tを、ボルト37を調整することにより内層12の厚さに調節すると、外層11のみに吸気孔を形成することができる。
【0006】
図10は、上記のような方法により穿孔した吸気孔14の近傍における外層11と内層12の積層状態を示す縦断面図である。ブロー成形後、この種のデラミボトルでは外層11と内層12が剥離可能ではあるが密着状に積層している場合が多い。
このため、この種のデラミボトルを利用した注出容器製品では、内容液を注出した際におけるボトル内部の減圧により、吸気孔14を介して外層11と内層12の間に自然に外気をスムーズに導入することが困難な場合があり、多くの場合、吸気孔14を形成後、口筒部2を介してボトル内部を真空ポンプ等で強制的に減圧状態にして外層11と内層12をボトルの全領域に亘って剥離して外層11と内層12との密着を一端解消した状態とし、その後、口筒部から空気を吹き込んで、再び外層11と内層12を積層した状態として使用する場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−244102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、ブロー成形においてはパリソンの肉厚に屡々バラツキが生じるが、特許文献1に記載される吸気孔の形成方法によれば、図9中に示される間隙tを内層12の最小の肉厚にしておけば、肉厚のバラツキがあっても外層11のみに導入孔を穿孔することができるものの、原理的には、ポンチカッターの刃先を外層11の外周面に当接させることにより、外層11を完全に切抜く方法であり、内層12に刃痕が残って薄くなり内層12の破れに繋がる要因となる恐れがある。
また、ポンチカッターによる外層11の穿孔加工により発生する抜きカスを取除くことが困難で、このカスが残って吸気孔が開口し難いと云う問題もある。
【0009】
一方、前述したように強制的に外層11と内層12をボトルの略全領域に亘って剥離して、外層11と内層12の密着を一端解消して再び積層した状態として使用する場合にも、口筒部2における内層12は、その肉厚が大きい分、剛性が高く、剥離後の弾性復帰力が大きく、剥離後に部分的に再び密着状態に復帰してしまい外層11からの内層12の再剥離がスムーズに、また確実に進行しない恐れが依然として残る。
【0010】
そこで本発明の課題は、デラミボトルに係る上記した従来技術における問題点を解消することにあり、第1にポンチカッターの刃先による刃痕を内層に残すことなく吸気孔を形成する方法を創出すること、第2に吸気孔の開口周縁部近傍で外層と内層の剥離がスムーズに、また確実に進行可能な吸気孔の形状を創出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、デラミボトルタイプの積層ブロー成形容器と吸気孔の形成方法に関し、ここではまず積層容器への吸気孔の形成方法について、次に積層ブロー成形容器について説明する。
上記技術的課題を解決する本発明の内、吸気孔の形成方法に係る主たる構成は、
定形の外殻を形成する合成樹脂製の外層と、外層に剥離可能に積層する合成樹脂製の内層とから成るブロー成形容器の口筒部の所定位置においてポンチカッターにより外層に吸気孔形成する方法であって、
ポンチカッターは先端部に筒状刃を有し、この筒状刃の内周面に筒状刃の外層からの後退時に、外層からの抜け防止機能を発揮する係止部を配設したものを使用し、
筒状刃を刃先が外層の内表面の直近位置になるまで圧入前進させ、外層を完全に切抜くことなく先端に未切抜き部を周状に残存させた状態とし、
次に、筒状刃の後退に伴って係止部の抜け防止機能により、筒状刃内に残留する、未切抜き部を残して切抜かれた切抜き片を後退させ、この後退により未切抜き部を破断して切抜き片を完全に切抜かれた状態として吸気孔を穿孔する、
と云うものである。
【0012】
上記した吸気孔の形成方法によれば、ポンチカッターの先端部に配設される筒状刃の刃先は、外層内部に留まり内層に直接当接することがないので、従来の形成方法のようにポンチカッターの刃先による刃痕を内層に残すことなく吸気孔を形成することができる。
また、係止部の抜け防止機能により、筒状刃内に残留する未切抜き部を残して切り抜かれた切抜き片を後退させ、この後退により未切抜き部を破断して切抜き片を完全に切抜かれた状態とし筒状刃内に残存させた状態とすることにより、切抜き片を吸気孔内から完全に取り除くことができ、切りカスが残って吸気孔が開口し難いと云う問題を完全に解消することができる。
【0013】
吸気孔の形成方法に係る他の構成は上記主たる構成において、ポンチカッターの筒状刃の内周面に縮径段部を周設し、この縮径段部を係止部とする、と云うものである。
【0014】
本発明の形成方法は、筒状刃の内周面に係止部を配設したポンチカッターを使用し、この係止部の抜け防止機能を利用して筒状刃内に残留する切抜き片の未切抜き部を破断する点が特徴的であるが、係止部を含めた筒状刃の形状は、筒状刃外層への圧入前進性、外層の切断性、抜け防止機能による未切抜き部の破断性等を考慮して適宜決めることができる。
上記構成は係止部の具体例の一つであり、縮径段部により抜け防止機能が十分に発揮され、筒状刃内に残留する切抜き片をこの縮径段部により引掛けるようにして未切抜き部を容易に破断することができる。
ここで、縮径段部を刃先からどの程度距離を置いて配置するか、縮径の程度どの程度にするかを含む、縮径段部の形状は上記した外層への圧入前進性、外層の切断性、抜け防止機能による未切抜き部の破断性等を考慮して適宜決めることができるものである。
【0015】
吸気孔の形成方法に係るさらに他の構成は上記係止部を縮径段部とする構成において、筒状刃の内周面を、縮径段部の内周端からテーパー状に拡径させて刃先に至る構成とすると云うものである。
【0016】
吸気孔の形成方法に係るさらに他の構成は上記係止部を縮径段部とする構成において、縮径段部を周方向に間歇状に周設すると云うものである。
【0017】
筒状刃の内周面に縮径段部を周設すると、筒状刃の外層への圧入前進性あるいは外層の切断性が低下する懸念があるが、上記のように縮径段部の内周端からテーパー状に拡径させて刃先に至る構成としたり、縮径段部を周方向に間歇状に周設したりすることにより、外層への圧入前進性あるいは外層の切断性の低下を抑制することが可能となる。
【0018】
吸気孔の形成方法に係るさらに他の構成は上記主たる構成において、ポンチカッターの筒状刃の内周面に、刃先に向かってテーパー状に縮径させたテーパー状縮径部を形成し、このテーパー状縮径部を係止部とする、と云うものである。
【0019】
上記構成も係止部の具体例の一つであり、係止部をテーパー状縮径部とすることにより、段部を形成することがないので、外層への筒状刃の圧入前進性や外層の切断性を良好に保持することができると共に、テーパー状縮径部のテーパー面で抜け防止機能を発揮させることができる。
【0020】
次に、本発明の積層ブロー成形容器は前述した本発明の吸気孔の形成方法により実現可能なものであるが、この積層ブロー成形容器に係る主たる構成は、
定形の外殻を形成する合成樹脂製の外層と、この外層に剥離可能に積層する合成樹脂製の内層とから成り、口筒部の所定位置においてポンチカッターにより外層に吸気孔穿孔されているブロー成形容器において、
外層の内表面側端部における吸気孔の形状ラッパ状に拡径されると共に、吸気孔の開口周縁部にポンチカッター穿孔によるバリによって形成される凹凸を有する、と云うものである。
【0021】
吸気孔の近傍では、内層は外層に積層すると共に吸気孔を橋渡し状に被覆するが、上記構成によれば外層の内表面側端部で吸気孔がラッパ状に拡径した形状となっていることにより、吸気孔の開口周縁部では、外層と内層の間にノッチ状に間隙が形成されている。
そして、このノッチ状に形成された間隙を起点として、積層する外層と内層との剥離をスムーズに開始、進展させることができ、外層と内層の間への外気の導入を、吸気孔を介して容易に達成することが可能となる。
【0023】
また、外層の内表面側端部における吸気孔の開口周縁部にバリによる凹凸が形成されていることにより、当該凹凸が形成された吸気孔の開口周縁部では外層と内層の密着を回避することができ、前述したノッチ状の間隙の作用効果と相俟って、外層と内層の剥離をスムーズに、また確実に開始、進展させることができ、外層と内層の間への外気の導入を、吸気孔を介して容易に達成することが可能となる。
【0024】
ここで、前述した係止部の抜け防止機能により、筒状刃内に残留する未切抜き部を残して切り抜かれた切抜き片を後退させ、この後退により未切抜き部を破断して切抜き片を完全に切抜かれた状態とし筒状刃内に残存させた状態とする、と云う本発明の吸気孔の形成方法によれば、吸気孔の形状を、外層の内表面側端部でラッパ状に拡径した形状とすることができる。
また、未切抜き部を強引に破断することにより、この破断に伴って吸気孔の開口周縁部にバリが発生しこのバリにより凹凸を形成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の吸気孔の形成方法にあっては、ポンチカッターの先端部に配設される筒状刃の刃先は、外層内部に留まり内層に直接当接することがないので、従来の方法のようにポンチカッターの刃先による刃痕を内層に残すことなく吸気孔を形成することができる。
また、係止部の抜け防止機能により、筒状刃内に残留する未切抜き部を残して切り抜かれた切抜き片を後退させ、この後退により未切抜き部を破断して切抜き片を完全に切抜かれた状態とし筒状刃内に残存させた状態として切抜き片を吸気孔内から完全に取り除くことができ、切りカスが残って吸気孔が開口し難いと云う問題を完全に解消することができる。
【0026】
本発明の積層ブロー成形容器にあっては、外層の内表面側端部で吸気孔がラッパ状に拡径した形状となっていることにより、吸気孔の開口周縁部では外層と内層の間にノッチ状に間隙が形成されるので、この間隙を起点として、積層する外層と内層との剥離をスムーズに開始、進展させることができ、外層と内層の間への外気の導入を、吸気孔を介して容易に達成することができる。
さらに、外層の内表面側端部における吸気孔の開口周縁部にバリによる凹凸が形成されていることにより、当該凹凸が形成された吸気孔の開口周縁部では外層と内層の密着を回避することができ、前述したノッチ状の間隙の作用効果と相俟って、積層する外層と内層との剥離をよりスムーズ、また確実に開始、進展させることができ、外層と内層の間への外気の導入を、吸気孔を介して容易に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の容器の一実施例を容器本体として利用したポンプ付き注出容器を部分的に縦断して示す側面図である。
図2図1の容器の吸気孔近傍を要部拡大して示す、(a)は縦断面図、(b)は(a)中の太矢印の方向から見た図である。
図3】本発明の吸気孔の形成方法の概略説明図である。
図4図1中の吸気孔を形成する際に使用するポンチカッターの一例を示すもので、(a)は縦断面図、(b)は筒状刃近傍の拡大図、(c)は刃先近傍のさらなる拡大図である。
図5】(a)は図4のポンチカッターの底面図、(b)は(a)中の刃先の拡大図である。
図6】吸気孔の形成過程の概略説明図である。
図7】ポンチカッターの他の例を示す、(a)は縦断面図、(b)は筒状刃近傍の拡大図である。
図8】ポンチカッターのさらに他の例を示す、(a)は縦断面図、(b)は筒状刃近傍の拡大図である。
図9】従来の吸気孔の形成方法を概略的に示す説明図である。
図10】従来の吸気孔の近傍における外層と内層の積層状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の構成及びその作用効果を実施例に沿って、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の積層ブロー成形容器の一実施例を容器本体として利用したポンプ付き注出容器を部分的に縦断して示す側面図である。
デラミボトルである容器1は、定形の外殻を形成する合成樹脂製の外層11と、この外層11に剥離自在に積層し、内袋を形成する合成樹脂製の内層12との積層壁構造を有する。そして有底筒状の胴部4の上端に、上方に縮径したテーパー筒状の肩部3を介して、外周面に螺条を突設し、この螺条の下位の外層11部分に、ポンチカッターにより吸気孔14を穿孔、形成した口筒部2を連設した構成となっている。
なお、本実施例の容器1では外層11は高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂製、内層12はナイロン樹脂である。また前後に一対(図1中では左右に一対)の吸気孔14を穿孔している。
【0029】
容器1に対する、ノズルヘッド26を有する注出ポンプ25の組付けは、注出ポンプ25の本体部を容器1内に挿入した状態で、注出ポンプ25の本体部の上端部に形成された外鍔状の組付きフランジ27を、パッキング片28を介して口筒部2の上端面上に載置し、この組付きフランジ27を、口筒部2にその螺合筒壁22で外装螺合するキャップ21の内鍔状の頂壁23で口筒部2の上端面に押付けて達成される。なお、図1中には吸気孔14の近傍で外層11と内層12が剥離して、剥離空間Sが形成されて状態が示されている。
【0030】
図2は、図1の容器の吸気孔14近傍を要部拡大したもので、(a)は縦断面図、(b)は(a)中の太矢印の方向から吸気孔14を見た図である。
図2(a)、(b)中、ラッパ状部分14aで示されるように吸気孔14は外層11の内表面側端部でラッパ状に拡径した形状となっている。
また、図2(a)、(b)中、クロスハッチングして示した外層11の内表面側端部における吸気孔14の開口周縁部には、ポンチカッターによる穿孔工程で発生するバリによる凹凸11cが形成されている。
なお、これらラッパ状部分14aやバリによる凹凸11cは後述する本発明の吸気孔の形成方法を採用することにより形成することができるものである。
【0031】
吸気孔14の端部を上記のようにラッパ状部分14aとすることにより、外層11の吸気孔14の開口周縁部では、外層11と内層12の間にノッチ状の間隙N(図2(a)参照)が形成される。
そして、このノッチ状の間隙Nにより剥離進行の起点としての機能が発揮され、図2(a)中二点鎖線で示すように、積層する外層11と内層12との剥離をスムーズに開始、進展させて剥離空間Sを拡大し、外気Aを、吸気孔14を介して外層11と内層12の間に容易に導入することができる。
【0032】
さらに、外層11の内表面側端部における吸気孔14の開口周縁部に形成されるバリによる凹凸11cにより、開口周縁部では外層11と内層12の密着を回避することができ、上記したノッチ状の間隙Nの作用効果と相俟って、外層11と内層12の剥離をよりスムーズに進行させることができる。
【0033】
ここで、図10に示す従来の吸気孔14では、前述したように外層11と内層12を一端剥離して外層11と内層12の密着を解消して再び積層した状態として使用する場合にも、図2にあるノッチ状の間隙Nのような剥離の起点となる部分がない、また部分的に再び密着状態となる等の要因により外層11と内層12の剥離を開始させることが困難になる場合があり、例えば、図1に示したような注出容器で内容液の注出操作性が低下する恐れがある。
【0034】
次に、本発明の吸気孔の形成方法について説明する。
図3は本発明の吸気孔の形成方法の概略説明図で、使用する穿孔装置の全体的な構成は図9に示すものと類似的であり、先端部にカッター受け台36を配設した支持棒34を容器1の口筒部2内に挿入配置し、カッター受け台36に対向するようにポンチカッター43を配設する。
なお、図1に示される容器1のように、左右に一対の吸気孔14を形成する場合は、穿孔装置も左右対称状に配置して、左右に一対のポンチカッター43を配設して穿孔を実施する。
【0035】
そして、本発明の吸気孔の形成方法の概略は、
ポンチカッター43の筒状刃44を外層11内に圧入前進させ、外層11を完全に切抜くことなく先端に未切抜き部11bを周状に残存させた状態とし、その後ポンチカッター43を後退させながら、後述する係止部45の抜け防止機能により未切抜き部11bを破断し、吸気孔14を穿孔、形成する、と云うものである。
このため本発明の吸気孔の形成方法にあっては、ポンチカッター43の先端部に配設される筒状刃44の刃先は、外層11内部に留まり内層12に直接当接することがないので、従来の形成方法のようにポンチカッターの刃先による刃痕を内層12に残すことなく吸気孔14を形成することができる。
【0036】
図4、5は本実施例で使用するポンチカッター43を示し、図4(a)は縦断面図、図4(b)は筒状刃44近傍の拡大図、図4(c)は刃先44p近傍のさらなる拡大図、また図5(a)は底面図、図5(b)は図5(a)中の刃先44pの拡大図である。
このポンチカッター43は、先端部に筒状刃44を有し、この筒状刃44の内周面に係止部45の一実施形態である縮径段部45aを間歇状に4箇所(図5(b)参照)に周設している。
【0037】
また、縮径段部45aの内周端から刃先44pまでの領域をテーパー状に拡径させたテーパー部45a1としており、上記のように間歇状に周設することと相俟って、筒状刃44の圧入前進動作と後退動作をスムーズに達成することができる。
なお、このポンチカッター43の刃先44pの径は4mmで、縮径段部45aの形成位置と刃先44pの間隔h(図4(b)参照)は0.8mmである。
【0038】
図6は、吸気孔14の形成過程の概略説明図であり、(a)は筒状刃44が圧入前進限に位置する状態、(b)は(a)中の刃先44p近傍を拡大した図、(c)は筒状刃44が圧入前進限から後退した状態を示す。
図6(a)に示されるように、筒状刃44が圧入前進限の位置で、刃先44pは外層11の内周面直前の位置に位置する。本実施例では吸気孔14を穿孔する口筒部2の下部の肉厚は2.5mmであるが、外層11の内周面から約0.02mmの位置を圧入前進限界としており、外層11を完全に切抜くことなく先端に未切抜き部11bを周状に残存した状態で、切抜き片11aが筒状刃44内に残留していることになる。
【0039】
次に、図6(a)の状態からポンチカッター43を後退させると、縮径段部45aの抜け防止機能により、図6(c)に示されるように、筒状刃44の後退に伴って、筒状刃44内に残留する、未切抜き部11bを残して切抜かれた切抜き片11aを縮径段部45aで引掛けるようにして後退させ、この後退により周状の未切抜き部11bを破断して切抜き片11aを完全に打ち抜かれた状態として吸気孔14が穿孔される。
【0040】
ここで、縮径段部45aの抜け防止機能により切抜き片11aが図6(c)中の矢印の方向に変位しようとすると、未切抜き部11bには図6(b)中Sfで示した方向に剪断応力が作用し、この剪断応力により未切抜き部11bが破断するため、吸気孔14の端部に図6(c)に示されるようにラッパ状に拡径したラッパ状部分14aが形成される。
また、未切抜き部11bの破断時には、合成樹脂(本実施例ではHDPE樹脂)が多少なりとも延伸変形するため、図6(c)中の拡大図でクロスハッチングして示されるように破断に伴うバリによる凹凸11cが形成される。
【0041】
ここで、吸気孔14の形成に使用するポンチカッター43の形状、特に係止部45の形状は、外層11に使用する合成樹脂の材質を考慮しながら筒状刃44の圧入前進性、外層11切抜き性、そして係止部45による抜け防止機能のバランスを考慮して決めることができものであるが、
図7図8には他の二つの例を示した。
図7の例は、図4のポンチカッターと同様に縮径段部45aを係止部45としたものであるが、図4のものに対しての縮径段部45aを全周に亘って形成しているのが特徴的で、その分、圧入前進性と抜け防止機能のバランスを考慮して縮径段部45aによる縮径の程度を小さくし、また縮径段部45aの形成位置と刃先44pの間隔hを0.4mmと小さくしているのが特徴的である。
【0042】
図8の例は、筒状刃44の内周面を、刃先44pに向かってテーパー状に縮径させてテーパー状縮径部45bを形成し、このテーパー状縮径部45bのテーパー面で抜け防止機能を発揮させようとしたものである。
段部がないので、特に硬質の合成樹脂で良好な圧入前進性と抜け防止機能を発揮させることができる。
【0043】
以上、実施例を用いて本願発明を説明したが、本願発明はこれら実施例に限定されるものではない。
たとえば、使用するポンチカッターについては3つの例を説明したが、さらに適宜の形状の突起を複数周状に配設して係止部を構成する等、圧入前進性と抜け防止機能を考慮してさらにさまざまなバリエーションのものを採用することができる。
また、本発明のデラミボトルタイプの積層ブロー成形容器は、ポンプ付き注出容器の容器本体の他にも、口筒部に櫛体を嵌合させた櫛体付き注出容器の容器本体や、スクイズタイプのデラミ容器としても使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように本発明の吸気孔の形成方法は、ポンチカッターの刃先による刃痕を内層に残すことなく吸気孔を形成することができ、また本発明の積層ブロー成形容器は吸気孔の開口周縁部近傍で外層と内層の剥離をスムーズに、また確実に開始、進展させることができるものであり、注出操作性に優れたデラミ容器として広い分野での利用展開が期待される。
【符号の説明】
【0045】
1 ;容器
2 ;口筒部
3 ;肩部
4 ;胴部
11;外層
11a;切抜き片
11b;未切抜き部
11c;(バリによる)凹凸
12;内層
14;吸気孔
14a;ラッパ状部分
S ;剥離空間
N ;ノッチ状の間隙
A ;外気
21;キャップ
22;螺合筒壁
23;頂壁
25;注出ポンプ
26;ノズルヘッド
27;組付きフランジ
28;パッキング片
30;穿孔装置
31;受け部材
32;支持部材
33;支持軸
34;支持棒
36;カッター受け台
36a;受け面
37;ボルト
40;カッター部材
41;摺動部材
42;支持棒
43;ポンチカッター
44;筒状刃
44p;刃先
45;係止部
45a;縮径段部
45a1;テーパー部
45b;テーパー状縮径部
46;透孔
t ;隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10