(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液体還元剤を供給する位置と前記還元触媒との間の前記排ガス通路に、前記固体還元剤の加熱により放出された流体還元剤を供給することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排ガス浄化装置。
前記内燃機関の駆動力によって走行する車両の減速時のブレーキエネルギーを回生して電力を発生させ、当該電力を前記還元剤加熱供給手段に供給する回生電力供給手段を備え、
前記還元剤加熱供給手段は、前記回生電力供給手段により供給された電力にて前記固体還元剤を加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の排ガス浄化装置。
前記回生電力供給手段は、前記ブレーキエネルギーから回生電力を発生させる回生発電機と、当該回生発電機により発生させた回生電力を蓄電する回生電力用バッテリと、を備え、
前記回生電力用バッテリから前記還元剤加熱供給手段へ給電することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の排ガス浄化装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の排ガス浄化装置では、固体還元剤加熱手段で固体還元剤を常時加熱するため、固体還元剤加熱手段を稼働させるための燃料の消費量が多くなってしまう。一般的に、固体還元剤加熱手段を稼働させるための燃料は、内燃機関に供給される燃料としても用いられているため、固体還元剤加熱手段で燃料を消費すると、燃費が低下してしまうという問題点があった。さらに、内燃機関の高負荷時等には、排ガスの量が増加するため、必要となる還元剤の量も増加する。したがって、固体還元剤の加熱温度を高くして大量の還元剤を昇華させる必要がある。そこで、固体還元剤加熱手段の加熱出力を増加させると、燃料の消費量も増加するために、燃費が大幅に低下してしまうという問題点があった。
また、特許文献3に記載の排ガス浄化装置では、固体又は液体還元剤が還元触媒よりも下流側に設けられていて排ガスの温度が低いため、気体の還元剤の発生効率が低いという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題を解決するものであって、排ガスの温度に応じて固体還元剤及び液体還元剤を使い分けて、効率良く気体の還元剤を発生させることが可能で、且つ燃料の消費を低減する内燃機関の排ガス浄化装置及び浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決する本発明に係る内燃機関の排ガス浄化装置は、内燃機関に接続された排ガス通路に設けられ、排ガスに含まれるNOxを還元する還元触媒と、
固体還元剤を加熱するとともに、当該固体還元剤の加熱により放出された流体還元剤を前記還元触媒よりも上流側の前記排ガス通路に供給する還元剤加熱供給手段と、
液体還元剤を前記還元触媒よりも上流側の前記排ガス通路に供給する液体還元剤供給手段と、
前記還元触媒より上流に設けられ、排ガス中のNOx濃度を計測する第1NOx濃度センサと、
前記排ガス通路内を通過する前記排ガスの温度を計測する温度センサと、
前記温度センサによる計測結果及び前記NOx濃度から算出された排ガス中に含まれるNOx量の還元に要する還元剤量が、前記液体還元剤の加水分解により発生させることが可能な最大還元剤量よりも多いか否かに応じて、前記還元剤加熱供給手段及び前記液体還元剤供給手段の少なくとも何れか一方からの還元剤の供給を制御する制御手段と、を備え
、
前記制御手段は、
前記温度センサによる計測結果が、前記液体還元剤が加水分解する加水分解温度未満の場合に、前記還元剤加熱供給手段を制御して前記固体還元剤を加熱して前記流体還元剤を放出させて、
前記温度センサによる計測結果が、前記加水分解温度以上であって、排ガス中に含まれるNOx量の還元に要する還元剤量が、前記最大還元剤量よりも小さい場合に、前記液体還元剤供給手段のみを制御して前記液体還元剤を排ガス中に供給させて、
前記温度センサによる計測結果が、前記加水分解温度以上であって、排ガス中に含まれるNOx量の還元に要する還元剤量が、前記最大還元剤量よりも大きい場合に、前記液体還元剤を排ガス中に供給させるとともに前記固体還元剤を加熱して前記流体還元剤を放出させることを特徴とする。
【0009】
上記内燃機関の排ガス浄化装置によれば、還元剤加熱供給手段を備えているため、排ガスの温度にかかわらず、常時、固体還元剤の加熱により放出された流体還元剤を排ガス中に供給することができる。したがって、排ガスの温度が低い低温度領域でも流体還元剤を排ガス中に供給できる。これにより、低温の排ガス中のNOxを還元して浄化するとともに、排ガス通路内のデポジットを抑制することができる。さらに、従来、実施していたポスト噴射等の早期昇温も不要となるため、燃費が向上する。
また、液体還元剤を供給可能な液体還元剤供給手段を備えているため、排ガスの温度が高い高温度領域では、液体還元剤を排ガス中に供給することにより、液体還元剤が加水分解されて気体の還元剤となる。これにより、高温の排ガス中に気体の還元剤を供給することができる。
そして、液体還元剤供給手段を使用する際は、還元剤加熱供給手段を停止することで、還元剤加熱供給手段を駆動するための燃料の消費を低減することができる。特に、還元剤加熱供給手段を加熱させるための燃料が、内燃機関に供給される燃料としても用いられている場合に、還元剤加熱供給手段の燃料の消費量を低減させることで、燃費への影響を低減することができる。
【0010】
また、前記制御手段は、
前記温度センサによる計測結果が、前記液体還元剤が加水分解する加水分解温度未満の場合に、前記還元剤加熱供給手段を制御して前記固体還元剤を加熱して前記流体還元剤を放出させて、
前記温度センサによる計測結果が、
前記加水分解温度以上であって、排ガス中に含まれるNOx量の還元に要する還元剤量が、前記最大還元剤量よりも小さい場合に、前記液体還元剤供給手段のみを制御して前記液体還元剤を排ガス中に供給し、
前記温度センサによる計測結果が、前記加水分解温度以上であって、排ガス中に含まれるNOx量の還元に要する還元剤量が、前記最大還元剤量よりも大きい場合に、前記液体還元剤を排ガス中に供給させるとともに前記固体還元剤を加熱して前記流体還元剤を放出させる。
【0011】
このように、液体還元剤が加水分解する加水分解温度以上の場合に、排ガス中に液体還元剤を供給するため、排ガスの温度を利用して液体還元剤を気体の還元剤にすることができる。これにより、液体還元剤が気化せずに液体のまま還元触媒に流入してしまい、還元剤としての役割を果たさずに液体のまま大気に排出されることを防止できる。
【0012】
また、前記液体還元剤を供給する位置と前記還元触媒との間の前記排ガス通路に、前記固体還元剤の加熱により放出された流体還元剤を供給してもよい。
【0013】
このように、液体還元剤を供給する位置よりも下流側に、固体還元剤の加熱により放出された流体還元剤を供給するため、流体還元剤と液体還元剤とを排ガス通路内に同時に供給しても、流体還元剤を冷却することがない。
【0014】
また、前記内燃機関の駆動力によって走行する車両の減速時のブレーキエネルギーを回生して電力を発生させ、当該電力を前記還元剤加熱供給手段に供給する回生電力供給手段を備え、
前記還元剤加熱供給手段は、前記回生電力供給手段により供給された電力にて前記固体還元剤を加熱してもよい。
【0015】
このように、回生電力供給手段を備えているため、燃料を消費することなく還元剤加熱供給手段に電力を供給することができる。これにより、燃料の消費量を低減することができる。したがって、燃費への影響を低減することができる。
【0016】
また、前記回生電力供給手段は、前記ブレーキエネルギーから回生電力を発生させる回生発電機と、当該回生発電機により発生させた回生電力を蓄電する回生電力用バッテリと、を備え、
前記回生電力用バッテリから前記還元剤加熱供給手段へ給電してもよい。
【0017】
このように、回生電力供給手段は、回生発電機と、回生電力用バッテリとを備えているため、回生電力を蓄電することができる。これにより、回生電力を有効に利用することができる。具体的には、還元剤加熱供給手段で固体還元剤を加熱する際に電力を供給することができる。
【0018】
また、本発明の浄化方法は、内燃機関に接続された排ガス通路に設けられ、排ガスに含まれるNOxを還元する還元触媒と、固体還元剤を加熱するとともに、当該固体還元剤の加熱により放出された流体還元剤を前記還元触媒よりも上流側の前記排ガス通路に供給する還元剤加熱供給手段と、液体還元剤を前記還元触媒よりも上流側の前記排ガス通路に供給する液体還元剤供給手段と、前記排ガス通路内を通過する前記排ガスの温度を計測する温度センサと、前記温度センサによる計測結果に応じて、前記還元剤加熱供給手段及び前記液体還元剤供給手段の少なくとも何れか一方からの還元剤の供給を制御する制御手段と、を備える内燃機関の排ガス浄化装置を用いた浄化方法であって、
前記温度センサによる計測結果に応じて、前記還元剤加熱供給手段及び前記液体還元剤供給手段の少なくとも何れか一方から還元剤を供給することを特徴とする。
【0019】
上記浄化方法によれば、排ガスの温度にかかわらず、常時、固体還元剤の加熱により放出された流体還元剤を排ガス中に供給することができる。したがって、排ガスの温度が低い低温度領域でも流体還元剤を排ガス中に供給できる。これにより、低温の排ガス中のNOxを還元して浄化するとともに、排ガス通路内のデポジットを抑制することができる。さらに、従来、実施していたポスト噴射等の早期昇温も不要となるため、燃費が向上する。
また、排ガスの温度が高い高温度領域では、液体還元剤を排ガス中に供給することにより、液体還元剤が加水分解されて気体の還元剤となる。これにより、高温の排ガス中に気体の還元剤を供給することができる。
そして、液体還元剤供給手段を使用する際は、還元剤加熱供給手段を停止することで、還元剤加熱供給手段を駆動するための燃料の消費を低減することができる。特に、還元剤加熱供給手段を加熱させるための燃料が、内燃機関に供給される燃料としても用いられている場合に、還元剤加熱供給手段の燃料の消費量を低減させることで、燃費への影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、排ガスの温度に応じて固体還元剤及び液体還元剤を使い分けて、効率良く気体の還元剤を発生させることが可能で、且つ燃料の消費を低減する内燃機関の排ガス浄化装置及び浄化方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る内燃機関の排ガス浄化装置及び当該排ガス浄化装置を用いた浄化方法について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。また、内燃機関としてディーゼルエンジンを用いた場合について説明するが、これに限定されるものではなく、筒内直接噴射式のリーン・バーン・ガソリンエンジン等にも適用可能である。
【0023】
図1は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置の構成を示す概略図である。また、
図2は、本実施形態に係る排ガス通路に接続された機器を示す概略図である。そして、
図3は、本実施形態に係るアンモニア供給制御部とその周辺機器との関係を示す概略図である。
図1〜
図3に示すように、ディーゼルエンジン(以下、エンジン1という)の排ガス浄化装置3は、DOC(Diesel Oxidation Catalyst:酸化触媒)6と、DPF(Diesel Particulate Filter:ディーゼルパティキュレートフィルター)8と、SCR(Selective Catalyst Reduction:選択還元触媒)触媒10と、を備え、これらは排ガス通路2に配設されている。
【0024】
エンジン1は、燃料の噴射時期及び噴射量がECU(Electronic Control Unit、図示しない)によって電子制御されており、かかる噴射時期及び噴射量にてシリンダ毎に設けられた燃料噴射弁5から燃焼室7内に燃料が噴射される。ECUは、図示しないCPU、ROM及びRAMから構成されるマイクロコンピューターを備えている。また、ECUは、エンジン1の運転条件や運転者の要求に応じてエンジン1の運転状態を制御する。
【0025】
排ガス浄化装置3は、後述するアンモニアの供給等を制御するアンモニア供給制御部18と、DOC6に流入する排ガスの温度を計測する第1温度センサ20と、DOC6とDPF8との間に設けられ、DPF8に流入する排ガスの温度を計測する第2温度センサ22と、DPF8の直下流に設けられ、排ガスの温度を計測する第3温度センサ24と、を備えている。
各温度センサ20、22、24は計測結果を電気信号として、アンモニア供給制御部18へ出力する。
【0026】
また、排ガス通路2には、DPF8の下流側に設けられ、排ガス中に含まれるNOxの濃度を計測する第1NOx濃度センサ28と、当該第1NOx濃度センサ28の下流側に設けられ、排ガス中の酸素濃度を計測する酸素濃度センサ26と、SCR触媒10よりも下流側に設けられ、排ガス中に含まれるNOxの濃度を計測する第2NOx濃度センサ30と、が配設されている。
第1NOx濃度センサ28、第2NOx濃度センサ30、酸素濃度センサ26は、それぞれ計測結果を電気信号としてアンモニア供給制御部18へ出力する。アンモニア供給制御部18は、酸素濃度センサ26による計測結果に基づいて、排ガス中に含まれるアンモニア量を推定する。
【0027】
DOC6では、排ガス中に含まれるNOが酸化されてNO
2が生成される。DOC6を通過した後のNO
2を含む排ガスは、続いてDPF8に流入する。DPF8では、排ガス中に含まれるPM(Paticulate Matter:粒子状物質)が捕捉される。DOC6とDPF8は、一つのケース9内に収納されている。DPF8に捕捉されたPM量が所定量を超えたときには、排ガス温度を上昇させてPMを燃焼する。DPF8に入る排ガスの温度は、第2温度センサ22にて計測される。
【0028】
また、排ガス通路2には、尿素水を排ガス通路2に供給する液体還元剤供給手段12と、固体還元剤38を加熱するとともに、当該加熱により放出された気体の還元剤をSCR触媒10よりも上流側の排ガス通路2に供給する還元剤加熱供給手段13と、が配設されている。
【0029】
液体還元剤供給手段12は、DPF8とSCR触媒10との間の排ガス通路2に設けられ、尿素水を噴射する噴射ノズル46と、噴射ノズル46に尿素水を供給するとともに、尿素水の供給量を調整可能な可変機構を有する尿素水供給用ポンプ47と、尿素水を貯留する尿素水タンク48と、を備えている。
【0030】
尿素水供給用ポンプ47の稼働及び停止は、アンモニア供給制御部18により制御される。アンモニア供給制御部18は、第3温度センサ24により計測された排ガスの温度が約200℃未満の場合に尿素水供給用ポンプ47を停止し、排ガスの温度が約200℃以上の場合に尿素水供給用ポンプ47を稼働させる。
一般的に、排ガスの温度が約200℃未満の場合、排ガス中に噴射した尿素水の分解反応が進み難く、アンモニアスリップが生じる場合がある。したがって、アンモニア供給制御部18は、第3温度センサ24により計測された排ガスの温度が約200℃以上の場合、尿素水供給用ポンプ47を稼働させて尿素水を噴射する。
【0031】
尿素水供給用ポンプ47から供給された尿素水は、噴射ノズル46から排ガス中に噴射される。排ガス中に吹き付けられた尿素水は、加水分解してアンモニアが生じる。このアンモニアを含む排ガスはSCR触媒10に流入する。SCR触媒10では、排ガス中に含まれるNOxがアンモニアによって還元される。そして、NOxを含まない排ガスは、排ガス通路2を通って大気中へ放出される。
【0032】
ところで、NOxを還元するために必要なアンモニア量を超えてアンモニアを供給すると、NOxの還元に利用されなかったアンモニアは、アンモニアスリップを生じてしまい、NOxの還元反応に利用されないままSCR触媒10を通過して大気に排出されてしまう場合がある。このため、アンモニア供給制御部18は、第1NOx濃度センサ28による計測結果に基づいて、排ガス中に含まれるNOxを還元するために必要なアンモニア量を算出するとともに、当該アンモニア量を発生させるために必要な尿素水の供給量を算出する。
尿素水の供給量の調整は、アンモニア供給制御部18が尿素水供給用ポンプ47の可変機構を制御することにより実施される。排ガス通路2内に噴射された尿素水は加水分解されてアンモニアになる。
【0033】
また、アンモニア供給制御部18は、酸素濃度センサ26による計測結果に基づいて排ガス中に含まれるアンモニア量を推定し、当該アンモニア量が予め設定された所定範囲内に含まれているか否かを確認する。即ち、尿素水の噴射により発生したアンモニアが所定範囲内に含まれているか否かを確認する。そして、推定したアンモニア量が所定範囲内に含まれていない場合は、アンモニア供給制御部18にて尿素水の供給量を再度、算出する。
【0034】
さらに、アンモニア供給制御部18は、第1NOx濃度センサ28及び第2NOx濃度センサ30による計測結果に基づいて、NOx浄化率を算出し、当該NOx浄化率が予め設定された目標浄化率以上か否かを確認する。そして、NOx浄化率が目標浄化率未満の場合は、アンモニア供給制御部18にて尿素水の供給量を再度、算出する。
【0035】
アンモニア供給制御部18は、排ガスの温度が約200℃以上の場合に、上述したように、尿素水供給用ポンプ47を稼働させて尿素水を排ガス中に供給する。一方、排ガスの温度が約200℃未満の場合は、尿素水供給用ポンプ47を止めて尿送水の噴射を停止し、還元剤加熱供給手段13からアンモニアを発生させる。
【0036】
還元剤加熱供給手段13は、固体還元剤38を収容するための収納容器34と、固体還元剤38を加熱するコイルヒータ36と、一端が収納容器34に接続され、他端が排ガス通路2に接続された還元剤送給管37と、当該還元剤送給管37に設けられた逆止弁42と、を備えている。
【0037】
収納容器34内には、固体還元剤38が収納されている。収納容器34の外周を囲うようにコイルヒータ36が設けられている。このコイルヒータ36で固体還元剤38を加熱することにより、アンモニアを発生させることができる。
コイルヒータ36の稼働及び停止は、アンモニア供給制御部18により制御される。アンモニア供給制御部18は、エンジン1の稼働と同時にコイルヒータ36を稼働させ、第3温度センサ24により計測された排ガスの温度が約200℃以上の場合にコイルヒータ36を停止させる。
【0038】
固体還元剤38の加熱により放出されるアンモニア量は、加熱温度によって変化する。具体的には、加熱温度が高いほどアンモニア量は増大する。コイルヒータ36の加熱出力は、アンモニア供給制御部18により制御される。アンモニア供給制御部18は、第1NOx濃度センサ28により計測された排ガス中のNOx濃度に基づいて、当該NOxの還元に必要な量のアンモニアが発生するように、コイルヒータ36の加熱出力を算出するとともに、当該加熱出力となるようにコイルヒータ36を調整する。
【0039】
固体還元剤38として、アンモニアを吸着する吸着剤あるいはアンモニアを化学的に含有する錯体を用いることができる。例えば、アンモニアが吸着剤に吸着されている場合、排ガスの熱によって吸着剤からアンモニアが脱離する。また、アンモニアを含む錯体で構成されている場合、排ガスの熱によって錯体が分解または錯体からの昇華によってアンモニアが発生する。
【0040】
逆止弁42は、還元剤送給管37の排ガス通路側端部に設けられている。逆止弁42は、発生したアンモニアを排ガス通路2へ送給し、且つ排ガス通路2から還元剤送給管37内へ排ガスが流入することを防止する機能を有する。
【0041】
固体還元剤38の加熱により放出されたアンモニアは、逆止弁42を通過して排ガス通路2に供給される。還元剤送給管37の他端は、尿素水の噴射ノズル46とSCR触媒10との間の排ガス通路2に接続されているため、アンモニアは、噴射ノズル46よりも下流側に供給される。
排ガス通路2内を流れる排ガス中に含まれるアンモニア量は、還元剤送給管37の他端とSCR触媒10との間に配設されている酸素濃度センサ26により計測された酸素濃度により推定される。
【0042】
排ガス通路2内に供給されたアンモニアは排ガスとともにSCR触媒10に流入する。SCR触媒10では、排ガス中に含まれるNOxがアンモニアによって還元される。そして、NOxを含まない排ガスは、排ガス通路2を通って大気中へ放出される。
【0043】
上述した構成からなる排ガス浄化装置3は、DPF8の直下流の排ガスの温度が約200℃未満の場合、固体還元剤38をコイルヒータ36で加熱してアンモニアを発生させ、当該アンモニアをSCR触媒10の直上流の排ガス中に供給する。係る場合に、尿素水の噴射は行わない。
一方、DPF8の直下流の排ガスの温度が約200℃以上となった場合、コイルヒータ36を停止するとともに、尿素水供給用ポンプ47を稼働して尿素水を排ガス中に供給することにより、アンモニアを発生させ、当該アンモニアをSCR触媒10の直上流の排ガス中に供給する。即ちDPF8の直下流の排ガスの温度が約200℃以上となった場合に、液体還元剤供給手段12のみを稼働させて、コイルヒータ36を停止する。これにより、コイルヒータ36を加熱するための燃料を消費しなくなる。コイルヒータ36を加熱させるための燃料は、エンジン1に供給される燃料としても用いられているため、燃料の消費量を低減させることで、燃費への影響を大幅に低減することができる。なお、エンジン1の高負荷時等に排ガス中に含まれるNOx量が、尿素水を噴射して発生させることが可能な最大アンモニア量よりも多い場合には、コイルヒータ36を併用して固体還元剤38を加熱し、アンモニアを発生させる。
【0044】
次に、上述した構成からなる排ガス浄化装置3の排ガス浄化フローについて
図4を用いて説明する。
図4に示すように、まず、イグニッションスイッチをオンにしてエンジン1を始動させる(ステップS1)。
【0045】
次に、第3温度センサ24にてDPF8直下の排ガスの温度T
3を計測する(ステップS2)。続いて、アンモニア供給制御部18は、排ガスの温度T
3が尿素水の加水分解可能温度、例えば200℃以上か否かを判定する(ステップS4)。
アンモニア供給制御部18は、ステップS4において、排ガスの温度T
3が200℃未満の場合、固体還元剤38を加熱して(ステップS6)、アンモニアを発生させる。
一方、ステップS4において、排ガスの温度T
3が200℃以上の場合、アンモニア供給制御部18は排ガス通路2内に尿素水を噴射する(ステップS8)。排ガス中に噴射された尿素水は加水分解されてアンモニアが発生する。発生したアンモニアは排ガスとともにSCR触媒10内に流入する。
なお、エンジン1を連続して稼働させることにより、排ガスの温度T
3が200℃未満の状態から200℃以上になった場合には、稼働していたコイルヒータ36を停止し、尿素水を噴射する。
【0046】
次に、アンモニア供給制御部18は、排ガス中に含まれるNOx量が、尿素水を噴射して発生させることが可能な最大アンモニア量よりも多いか否かを判定する(ステップS10)。排ガス中に含まれるNOx量は、第1NOx濃度センサ28により計測されたNOx濃度に基づいて算出される。また、最大アンモニア量は、尿素水供給用ポンプ47の供給量を最大とした場合に、排ガス中に供給されるアンモニア量であり、予め設計等により決定されている値である。
ステップS10において、排ガス中に含まれるNOx量が、最大アンモニア量よりも多い場合、還元剤加熱供給手段13も併用する。即ち、固体還元剤38をコイルヒータ36で加熱して(ステップS6)、アンモニアを発生させる。
一方、ステップS10において、排ガス中に含まれるNOx量が、最大アンモニア量以下の場合、液体還元剤供給手段12のみ、即ち尿素水の噴射のみを実施してアンモニアを発生させる。
【0047】
次に、固体還元剤38を加熱する詳細なフローについて
図5を用いて説明する。
図5に示すように、アンモニア供給制御部18は、まず、コイルヒータ36を稼働させる(ステップS20)。
【0048】
次に、第1NOx濃度センサ28にて排ガス中に含まれるNOx濃度D
1を計測する(ステップS22)。そして、アンモニア供給制御部18は、NOx濃度D
1に基づいて、排ガス中に含まれるNOxを還元するために必要なアンモニア量を算出するとともに、当該アンモニア量を発生させるために必要な固体還元剤38の加熱温度を算出する。続いて、コイルヒータ36が当該加熱温度となるようにコイルヒータ36の加熱出力を調整する(ステップS24)。
【0049】
次に、酸素濃度センサ26にて排ガス中に含まれる酸素濃度を計測する(ステップS26)。そして、アンモニア供給制御部18は、酸素濃度センサ26による計測結果に基づいて排ガス中に含まれるアンモニア量を推定する。
また、第2NOx濃度センサ30にて排ガス中に含まれるNOx濃度D
2を計測する。そして、NOx濃度D
2及びステップS22にて計測したNOx濃度D
1に基づいて、アンモニア供給制御部18はNOx浄化率を算出する。
【0050】
次に、アンモニア供給制御部18は、排ガス中に含まれるアンモニア量が予め設定された所定範囲内に含まれ、且つ、NOx浄化率が予め設定された目標浄化率以上か否かを判定する(ステップS28)。
そして、排ガス中に含まれるアンモニア量が所定範囲内に無い場合やNOx浄化率が目標浄化率未満の場合、再び、ステップS24にてコイルヒータ36の加熱出力を調整する。
一方、排ガス中に含まれるアンモニア量が所定範囲内で、且つNOx浄化率が目標浄化率以上の場合、再び、ステップ2にて排ガス温度T
3を計測する。
【0051】
次に、尿素水を噴射する詳細なフローについて
図6を用いて説明する。
図6に示すように、第1NOx濃度センサ28にて排ガス中に含まれるNOx濃度D
1を計測する(ステップS30)。そして、アンモニア供給制御部18は、NOx濃度D
1に基づいて、排ガス中に含まれるNOxを還元するために必要な尿素水の供給量を決定する(ステップS32)。
【0052】
次に、アンモニア供給制御部18は、尿素水供給用ポンプ47を稼働させて尿素水を排ガス通路2内に噴射する(ステップS34)。尿素水の供給量の調整は、尿素水供給用ポンプ47の可変機構を制御することにより実施される。排ガス通路2内に噴射された尿素水は加水分解されてアンモニアになる。
【0053】
次に、酸素濃度センサ26及び第2NOx濃度センサ30にて排ガス中に含まれる酸素濃度及びNOx濃度D
2をそれぞれ計測する(ステップS36)。そして、アンモニア供給制御部18は、NOx濃度D
2に基づいて排ガス中に含まれるアンモニア量を推定する。また、アンモニア供給制御部18は、NOx濃度D
1及びNOx濃度D
2に基づいて、NOx浄化率を算出する。
【0054】
次に、アンモニア供給制御部18は、排ガス中に含まれるアンモニア量が予め設定された所定範囲内に含まれ、且つ、NOx浄化率が予め設定された目標浄化率以上か否かを判定する(ステップS38)。
そして、排ガス中に含まれるアンモニア量が所定範囲内に無い場合やNOx浄化率が目標浄化率未満の場合、ステップS32にて尿素水の供給量を算出して決定する。
一方、排ガス中に含まれるアンモニア量が所定範囲内で、且つNOx浄化率が目標浄化率以上の場合、ステップS10にてNOx量と最大アンモニア量とを比較する。
【0055】
エンジン1が稼働している間、上述したステップS2からステップS38までを繰り返し実施して、排ガス中にアンモニアを供給し続ける。
【0056】
上述したように、本実施形態に係る排ガス浄化装置3によれば、還元剤加熱供給手段13及び液体還元剤供給手段12を備えているため、排ガスの温度にかかわらず、常時、アンモニアを排ガス中に供給することができる。具体的には、還元剤加熱供給手段13を備えているため、排ガスの温度が低い低温度領域、例えば尿素水が加水分解できない約200℃未満でもアンモニアを排ガス中に供給できる。これにより、低温の排ガス中のNOxを還元して浄化するとともに、排ガス通路2内のデポジットを抑制することができる。従って、SCR触媒10によるNOx浄化効率を向上させることができる。さらに、従来、実施していたポスト噴射等の早期昇温も不要となるため、燃費が向上する。
また、液体還元剤供給手段12を備えているため、排ガスの温度が高い高温度領域、例えば尿素水が加水分解可能な約200℃以上では、尿素水を排ガス中に供給することでアンモニアを発生させることができる。そして、液体還元剤供給手段12を使用する際は、還元剤加熱供給手段13を停止することにより、還元剤加熱供給手段13を駆動するための燃料の消費を低減することができる。特に、コイルヒータ36を加熱させるための燃料が、エンジン1に供給される燃料としても用いられている場合に、還元剤加熱供給手段13の燃料の消費量を低減させることで、燃費への影響を低減することができる。
【0057】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。以下の説明において、上記の実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。第二実施形態の排ガス浄化装置は、回生電力を用いてコイルヒータ36を加熱する機能を有している。
【0058】
図7は、本発明の第二実施形態に係る排ガス浄化装置の構成を示す概略図である。また、
図8は、本実施形態に係る還元剤制御手段とその周辺機器との関係を示す概略図である。
図7及び
図8に示すように、本実施形態に係る排ガス浄化装置23は、エンジン1のクランクシャフトの回転がベルトを介して伝達されるオルタネータ4と、当該オルタネータ4により発電された電力を蓄電する第1バッテリ43と、第1バッテリ43の電圧を計測する第1電圧計44と、後述する還元剤制御手段16と、を備えている。オルタネータ4の発電により、第1バッテリ43を充電する。第1電圧計44により計測された第1バッテリ43の電圧は、還元剤制御手段16に出力される。
還元剤制御手段16は、アンモニア供給用制御部18と、加熱装置用電力制御部45と、を備えている。加熱装置用電力制御部45は、後述する回生電力供給手段14を制御する。
【0059】
図9は、回生電力供給手段14及び車両の走行系統の一部を抜粋して示す図である。
図9に示すように、排ガス浄化装置23は、エンジン1の駆動力によって走行する車両の減速時のブレーキエネルギーを回生して電力を発生させ、当該電力をコイルヒータ36に供給する回生電力供給手段14を備えている。
回生電力供給手段14は、ブレーキエネルギーから回生電力を発生させるリターダ32と、当該リターダ32により発生させた回生電力を蓄電する第2バッテリ40と、第2バッテリ40の電圧を計測する第2電圧計41と、を備えている。
リターダ32は、プロペラシャフト11と一体で回転するロータ(図示しない)と、変速機15に固定された電磁石(図示しない)とを備えており、プロペラシャフト11の回転により電力を発生させることができる。加熱装置用電力制御部45は、ブレーキペダルの踏み込みを検知すると、車両の減速時のブレーキエネルギーを回生してリターダ32により電力を発生させる。発生した回生電力は第2バッテリ40に蓄電される。また、第2電圧計41により計測された第2バッテリ40の電圧は、還元剤制御手段16に出力される。
【0060】
図10は、コイルヒータ36を加熱する加熱機構を説明する図である。
図10に示すように、第2電圧計41にて計測された第2バッテリ40の電圧が所定電圧よりも大きい場合(通常時)は、バッテリ切替スイッチ50を第2バッテリ40側に接続して、第2バッテリ40からの電力をコイルヒータ36に供給する。
一方、第2電圧計41にて計測された第2バッテリ40の電圧が所定電圧よりも低くてコイルヒータ36を加熱することができない場合には、バッテリ切替スイッチ50を第1バッテリ43側に接続して、第1バッテリ43からコイルヒータ36に電力を供給する。バッテリ切替スイッチ50の切り替えは、加熱装置用電力制御部45にて制御される。
【0061】
第1バッテリ43から電力を供給しているとき、加熱装置用電力制御部45は、第2バッテリ40の電圧を定期的に計測しており、第2バッテリ40が車両の減速時に得られる回生電力により充電されて、第2バッテリ40の電圧が所定電圧よりも大きくなった場合、バッテリ切替スイッチ50を操作して第2バッテリ40からの電力をコイルヒータ36に供給する。
【0062】
次に、上述した構成からなる排ガス浄化装置23で固体還元剤38を加熱する詳細なフローについて
図11を用いて説明する。
図11に示すように、まず、第一実施形態と同様に、ステップS20からステップS28までを実施する。
次に、第2電圧計41にて第2バッテリ40の電圧V
2を計測する(ステップS42)。
続いて、加熱装置用電力制御部45は、第2バッテリ40の電圧V
2が所定電圧よりも大きいか否かを判定する(ステップS44)。
そして、第2バッテリ40の電圧V
2が所定電圧よりも大きい場合、バッテリ切替スイッチ50を操作して第2バッテリ40側に接続する(ステップS46)。そして、第2バッテリ40からの電力をコイルヒータ36に供給する(ステップS48)。
一方、第2バッテリ40の電圧V
2が所定電圧以下の場合、バッテリ切替スイッチ50を操作して第1バッテリ43側に接続する(ステップS50)。そして、第1バッテリ43からの電力をコイルヒータ36に供給する(ステップS52)。
【0063】
上述したように、本実施形態に係る排ガス浄化装置23によれば、回生電力供給手段14を備えているため、燃料を消費することなくコイルヒータ36に電力を供給することができる。これにより、燃料の消費量を低減することができる。したがって、燃費への影響を低減することができる。
また、回生電力供給手段14は、リターダ32と、第2バッテリ40とを備えることで、回生電力を蓄電することができる。これにより、回生電力を有効に利用することができる。さらに、排ガス浄化装置23によれば、第一実施形態で説明した効果も得ることができる。