特許第5979496号(P5979496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979496
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネス及び中継ハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20160817BHJP
   H01R 13/46 20060101ALI20160817BHJP
   H01R 31/06 20060101ALI20160817BHJP
   H01B 7/295 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   H01B7/00 301
   H01R13/46 301B
   H01R31/06 P
   H01B7/00 306
   H01B7/34 B
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-110189(P2013-110189)
(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公開番号】特開2014-229562(P2014-229562A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 武史
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−076972(JP,A)
【文献】 特開平08−116616(JP,A)
【文献】 特開2003−029053(JP,A)
【文献】 特開平09−284955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/295
H01R 13/46
H01R 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の導電路の端末部に第1コネクタを設けたハーネス構成体と、
回路構成体に設けた第2コネクタと、前記第1コネクタとの間に配索される中継ハーネスと、
前記中継ハーネスを構成し、導体を被覆材で包囲した形態の複数本の中継電線と、
前記中継ハーネスを構成し、前記第1コネクタと嵌合することで前記中継電線の一方の端部を前記導電路に接続させる第1ハウジングと、
前記中継ハーネスを構成し、前記第2コネクタと嵌合することで前記中継電線の他方の端部を前記回路構成体に接続させる第2ハウジングとを備え、
前記導電路の絶縁被覆の材料がポリ塩化ビニルであり、
前記中継ハーネスの前記被覆材の材料と前記第1ハウジングの材料と前記第2ハウジングの材料のうち少なくとも2つの材料が、ポリ塩化ビニルよりも引火点又は発火点の高い難燃性の合成樹脂であることを特徴とするワイヤーハーネス。
【請求項2】
前記回路構成体を含む構成とされており、
前記回路構成体が、複数本のハーネス用電線の端末部に前記第2コネクタを設けた形態であることを特徴とする請求項1記載のワイヤーハーネス。
【請求項3】
前記第1ハウジングが、前記第2コネクタと同一の形状であり、
前記第2ハウジングが、前記第1コネクタと同一の形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のワイヤーハーネス。
【請求項4】
前記回路構成体が、車両に固定して設けられる機器であることを特徴とする請求項1記載のワイヤーハーネス。
【請求項5】
複数本の導電路の端末部に第1コネクタを設けたハーネス構成体と、第2コネクタを有する回路構成体との間に配索され、前記ハーネス構成体に接続することでワイヤーハーネスを構成する中継ハーネスであって、
導体を被覆材で包囲した形態の複数本の中継電線と、
前記第1コネクタと嵌合することで前記中継電線の一方の端部を前記導電路に接続させる第1ハウジングと、
前記第2コネクタと嵌合することで前記中継電線の他方の端部を前記回路構成体に接続させる第2ハウジングとを備え、
前記導電路の絶縁被覆の材料がポリ塩化ビニルであり、
前記被覆材の材料と前記第1ハウジングの材料と前記第2ハウジングの材料のうち少なくとも2つの材料が、ポリ塩化ビニルよりも引火点又は発火点の高い難燃性の合成樹脂であることを特徴とする中継ハーネス。
【請求項6】
前記第1ハウジングが、前記第2コネクタと同一の形状であり、
前記第2ハウジングが、前記第1コネクタと同一の形状であることを特徴とする請求項5記載の中継ハーネス。
【請求項7】
前記回路構成体が、固定して設けられる機器であることを特徴とする請求項5記載の中継ハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス及び中継ハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電線を包囲する被覆材の材料として、ノンハロゲン難燃性樹脂を用いたワイヤーハーネスが開示されている。このワイヤーハーネスを自動車に適用すれば、車両火災が発生した際に、被覆材への引火を回避して被覆材を伝達経路とする延焼を防ぐ効果を期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−263930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両火災における延焼を防止するためには、ワイヤーハーネスを構成する被覆材の全てを、難燃性樹脂とすることが好ましい。しかし、ノンハロゲンの難燃性樹脂の価格は、汎用の被覆材として広く用いられているPVC樹脂に比べると高価である。しかも、近年、自動車に取り付けられるワイヤーハーネスの長さや、ワイヤーハーネスを構成する電線の本数は、増大する傾向にある。そのため、ワイヤーハーネスを構成する被覆材の全てを難燃性材料にすることは、コストアップに直結する。
【0005】
この対策としては、ワイヤーハーネスの配索経路の全領域において被覆材を難燃性にするのではなく、ワイヤーハーネスの配索経路における一部の領域のみに、難燃性の被覆材を適用する方法が考えられる。難燃性の被覆材が適用された難燃領域を、火災発生の可能性がある機器の近くに設定すれば、被覆材を伝達経路とする延焼を最小限に食い止めることができる。
【0006】
配索領域の一部のみを難燃領域にするための具体的な手段としては、難燃領域の電線と、難燃領域よりも引火点の低い被覆材を用いた易燃焼領域の電線とを、スリーブ型の接続端子を用いて圧着等により固着し、更に、その接続部分をテープ巻きして他の電線との間を絶縁する構造が考えられる。しかし、接続端子とテープを用いて難燃領域の電線と易燃焼領域の電線を接続する工程は、作業者による手作業によって行われるものであるため、ワイヤーハーネスを構成する電線の本数が多い場合には、作業者の負担が大きい。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、配索領域の一部を難燃領域としたワイヤーハーネスの製造において、作業者の負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のワイヤーハーネスは、
複数本の導電路の端末部に第1コネクタを設けたハーネス構成体と、
回路構成体に設けた第2コネクタと、前記第1コネクタとの間に配索される中継ハーネスと、
前記中継ハーネスを構成し、導体を被覆材で包囲した形態の複数本の中継電線と、
前記中継ハーネスを構成し、前記第1コネクタと嵌合することで前記中継電線の一方の端部を前記導電路に接続させる第1ハウジングと、
前記中継ハーネスを構成し、前記第2コネクタと嵌合することで前記中継電線の他方の端部を前記回路構成体に接続させる第2ハウジングとを備え、
前記導電路の絶縁被覆の材料がポリ塩化ビニルであり、
前記中継ハーネスの前記被覆材の材料と前記第1ハウジングの材料と前記第2ハウジングの材料のうち少なくとも2つの材料が、ポリ塩化ビニルよりも引火点又は発火点の高い難燃性の合成樹脂であるところに特徴を有する。
【0009】
また、本発明の中継ハーネスは、
複数本の導電路の端末部に第1コネクタを設けたハーネス構成体と、第2コネクタを有する回路構成体との間に配索され、前記ハーネス構成体に接続することでワイヤーハーネスを構成するものであって、
導体を被覆材で包囲した形態の複数本の中継電線と、
前記第1コネクタと嵌合することで前記中継電線の一方の端部を前記導電路に接続させる第1ハウジングと、
前記第2コネクタと嵌合することで前記中継電線の他方の端部を前記回路構成体に接続させる第2ハウジングとを備え、
前記導電路の絶縁被覆の材料がポリ塩化ビニルであり、
前記被覆材の材料と前記第1ハウジングの材料と前記第2ハウジングの材料のうち少なくとも2つの材料が、ポリ塩化ビニルよりも引火点又は発火点の高い難燃性の合成樹脂であるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
第1ハウジングを第1コネクタに嵌合すると、中継電線の一方の端部が導電路に接続され、第2ハウジングを第2コネクタに嵌合すると、中継端子の他方の端部が回路構成体に接続され、ハーネス構成体と回路構成体との間に、中継ハーネスからなる難燃領域が構成される。ワイヤーハーネスの製造において必要とされる手作業は、ハウジングとコネクタを嵌合する作業だけなので、作業者の負担が軽くて済む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1においてワイヤーハーネスを第1ハーネス、第2ハーネス及び中継ハーネスに分離した状態をあらわす概略図
図2】第1ハーネスと第2ハーネスと中継ハーネスを接続してワイヤーハーネスを構成した状態をあらわす概略図
図3】第1コネクタと第1ハウジングを分離した状態をあらわす断面図
図4】第2コネクタと第2ハウジングを分離した状態をあらわす断面図
図5】第1コネクタと第1ハウジングを接続した状態をあらわす断面図
図6】第2コネクタと第2ハウジングを接続した状態をあらわす断面図
図7】実施例2においてワイヤーハーネスを機器から外すとともに、第1ハーネスと中継ハーネスを分離した状態をあらわす概略図
図8】第1ハーネスと中継ハーネスを接続してワイヤーハーネスを構成し、そのワイヤーハーネスを機器に接続した状態をあらわす概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)本発明のワイヤーハーネスは、
前記回路構成体を含む構成とされており、
前記回路構成体が、複数本のハーネス用電線の端末部に前記第2コネクタを設けた形態であってもよい。
この発明によれば、第1ハウジングを第1コネクタに嵌合し、第2ハウジングを第2コネクタに嵌合すれば、ハーネス構成体と中継ハーネスと回路構成体とを備えたワイヤーハーネスが構成される。回路構成体がハーネス形態となっているので、ハーネス構成体の配索長と回路構成体の配索長を適宜に設定することにより、ワイヤーハーネスの配索方向における中継ハーネスによる難燃領域を、適宜に設定することができる。
【0013】
(2)本発明のワイヤーハーネス及び中継ハーネスは、
前記第1ハウジングが、前記第2コネクタと同一の形状であり、
前記第2ハウジングが、前記第1コネクタと同一の形状であってもよい。
この発明によれば、第1ハウジングと第2コネクタを同一の金型で製造できるとともに、第2ハウジングと第1コネクタを同一の金型で製造できるので、金型コストを抑えることができる。
【0014】
(3)本発明のワイヤーハーネス及び中継ハーネスは、
前記回路構成体が、固定して設けられる機器であってもよい。
この発明によれば、機器から出火した場合、ワイヤーハーネスのうち機器に最も近い位置に配索されている中継ハーネスで延焼を阻止することができる。
【0015】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図6を参照して説明する。本実施例1のワイヤーハーネスAは、図1,2に示すように、第1ハーネス10(請求項に記載のハーネス構成体)と、第2ハーネス20(請求項に記載の回路構成体)と、中継ハーネス30とを接続して構成されている。
【0016】
第1ハーネス10は、複数本の第1電線11(請求項に記載の導電路)の束と、この第1電線11の束の一方の端部(図1,2における左側の端部)に取り付けた第1コネクタ16とを備えて構成されている。図3,5に示すように、第1電線11は、第1導体12を第1絶縁被覆13で包囲した周知形態のものである。第1電線11の端末部には、第1端子金具14が接続されている。第1端子金具14は、先端部に角筒部15を有する周知形態の雌型端子である。尚、第1電線11の他方の端部(図示省略)には、後述する第2端子金具24と同じ形態の端子金具が接続されている。
【0017】
第1コネクタ16は、合成樹脂製であり、ブロック状の端子収容部17と、端子収容部17の外面に沿うように配した弾性撓み可能なロックアーム18とを一体に形成したものである。端子収容部17内においては、第1端子金具14が挿入されて抜止め状態に保持されている。ロックアーム18には、ロック孔29と係止可能なロック突起19が形成されいる。
【0018】
第2ハーネス20は、複数本の第2電線21の束と、この第2電線21の束の一方の端部(図1,2における右側の端部)に取り付けた第2コネクタ26とを備えて構成されている。図4,6に示すように、第2電線21は、第2導体22を第2絶縁被覆23で包囲した周知形態のものである。第2電線21の端末部には、第2端子金具24が接続されている。第2端子金具24は、前端部に細長いタブ25を有する周知形態の雄型端子である。尚、第2電線21の他方の端部(図示省略)には、前述の第1端子金具14と同じ形態の端子金具が接続されている。
【0019】
第2コネクタ26は、合成樹脂製であり、端子保持部27と、端子保持部27から正面側へ突出するフード部28とを一体に形成したものである。端子保持部27内においては、第2端子金具24のうちタブ25以外の領域が挿入されて抜止め状態に保持されている。そして、第2端子金具24のタブ25は、フード部28により一括して包囲されている。また、フード部28を構成する壁部には、ロック孔29が形成されている。
【0020】
第1絶縁被覆13と第2絶縁被覆23の材料として、比較的安価な軟質のポリ塩化ビニル(PVC)が用いられている。この軟質のポリ塩化ビニルは、自己消火性を有するものの、発火点が概ね454℃であるため、燃焼時の雰囲気温度が高い状態が続く場合は燃え拡がる可能性がある。また、第1コネクタ16と第2コネクタ26の合成樹脂材料として、難燃性を高めたポリブチレンテレフタレート(PBT)が用いられている。ポリブチレンテレフタレートも、自己消火性を有するものの、発火点(発火温度)が概ね300℃と比較的低いため、燃焼時の雰囲気温度が高い状態が続く場合は燃え拡がる可能性がある。
【0021】
中継ハーネス30は、複数本の中継電線31の束と、この中継電線31の束の一方の端部に取り付けた第1ハウジング36と、中継電線31の束の他方の端部に取り付けた第2ハウジング37とを備えて構成されている。中継電線31は、第3導体32(請求項に記載の導体)を第3絶縁被覆33(請求項に記載の被覆材)で包囲した周知形態のものである。中継電線31の一方の端部(図1〜3,5における右側の端部)には、第1中継端子34が接続されている。図3,5に示すように、第1中継端子34は、第2端子金具24と同一種類の端子、即ち、前端部に細長いタブ25を有する周知形態の雄型端子である。中継電線31の他方の端部には、第2中継端子35が接続されている。図4,6に示すように、第2中継端子35は、第1端子金具14と同一種類の端子、即ち、先端部に角筒部15を有する周知形態の雌型端子である。角筒部15内には、弾性接触片(図示省略)が収容されている。
【0022】
第1ハウジング36は、合成樹脂製であり、第2コネクタ26と同一形状及び寸法に設定されている。即ち、第1ハウジング36は、第2コネクタ26を成型するための金型(図示省略)と同一の金型によって成型されている。図3,5に示すように、第1ハウジング36は、端子保持部27と、端子保持部27から正面側へ突出するフード部28とを一体に形成したものである。端子保持部27内においては、第1中継端子34のうちタブ25以外の領域が挿入されて抜止め状態に保持されている。そして、第1中継端子34のタブ25は、フード部28により一括して包囲されている。また、フード部28を構成する壁部には、ロック孔29が形成されている。
【0023】
第2ハウジング37は、合成樹脂製であり、第1コネクタ16と同一形状及び寸法に設定されている。即ち、第2ハウジング37は、第1コネクタ16を成型するための金型(図示省略)と同一の金型によって成型されている。図4,6に示すように、第2ハウジング37は、ブロック状の端子収容部17と、端子収容部17の外面に沿うように配した弾性撓み可能なロックアーム18とを一体に形成したものである。端子収容部17内においては、第2中継端子35が挿入されて抜止め状態に保持されている。ロックアーム18には、ロック孔29と係止可能なロック突起19が形成されいる。
【0024】
中継電線31を構成する第3絶縁被覆33の被覆用樹脂材料、及び第1ハウジング36と第2ハウジング37を構成するハウジング用樹脂材料としては、第1絶縁被覆13、第2絶縁被覆23、第1コネクタ16及び第2コネクタ26を構成する合成樹脂材料よりも難燃性の高い合成樹脂が用いられている。中継電線31用の被覆用樹脂材料及びハウジング用樹脂材料の具体例としては、ノンハロゲンタイプであって、第1絶縁被覆13及び第2絶縁被覆23の材料である合成樹脂よりも引火点や発火点が高く、自己消火性を有する合成樹脂材料である。難燃性の高い合成樹脂材料としては、例えば、オレフィン系樹脂をベースにノンハロゲン系難燃剤や金属水酸化物を添加したもの等を用いることができる。
【0025】
ワイヤーハーネスAを組み付ける際には、第1ハーネス10の第1コネクタ16と中継ハーネス30の第1ハウジング36を嵌合することにより、第1ハーネス10と中継ハーネス30を接続するとともに、中継ハーネス30の第2ハウジング37と第2ハーネス20の第2コネクタ26を嵌合することにより、中継ハーネス30と第2ハーネス20を接続する。これにより、第1ハーネス10と第2ハーネス20が中継ハーネス30を介して接続された形態のワイヤーハーネスAが構成される。
【0026】
第1コネクタ16と第1ハウジング36の嵌合過程では、第1コネクタ16が第1ハウジング36のフード部28内に嵌入し、ロック突起19がフード部28と干渉してロックアーム18が弾性撓みする。そして、第1コネクタ16と第1ハウジング36が正規の嵌合状態になると、図5に示すように、ロックアーム18が弾性復帰してロック突起19がロック孔29に係止し、第1コネクタ16と第1ハウジング36が正規嵌合状態にロックされる。また、第1コネクタ16と第1ハウジング36が嵌合されると、第1端子金具14のタブ25が第1中継端子34の角筒部15内に進入し、角筒部15内に設けた弾性接触片(図示省略)とタブ25が弾性的に接触することで、第1端子金具14と第1中継端子34が嵌合して導通可能に接続される。
【0027】
また、第2コネクタ26と第2ハウジング37の嵌合過程では、第2ハウジング37が第2コネクタ26のフード部28内に嵌入し、ロック突起19がフード部28と干渉してロックアーム18が弾性撓みする。そして、第2コネクタ26と第2ハウジング37が正規の嵌合状態になると、図6に示すように、ロックアーム18が弾性復帰してロック突起19がロック孔29に係止し、第2コネクタ26と第2ハウジング37が正規嵌合状態にロックされる。また、第2コネクタ26と第2ハウジング37が嵌合されると、第2中継端子35のタブ25が第2端子金具24の角筒部15内に進入し、角筒部15内に設けた弾性接触片(図示省略)とタブ25が弾性的に接触することで、第2端子金具24と第2中継端子35が嵌合して導通可能に接続される。
【0028】
尚、第1コネクタ16と第2ハウジング37は、形状と寸法が同一の部品であり、第2コネクタ26と第1ハウジング36は、形状と寸法が同一の部品である。また、第1端子金具14と第2中継端子35は、形状と寸法が同一の部品であり、第2端子金具24と第1中継端子34は、形状と寸法が同一の部品である。したがって、第1コネクタ16と第2コネクタ26を互いに嵌合することができ、両コネクタ16,26を嵌合すると、第1端子金具14と第2端子金具24が接続され、第1ハーネス10と第2ハーネス20が直接、接続されるようになっている。また、第1ハウジング36と第2ハウジング37も互いに嵌合することができ、両ハウジング39,37を嵌合すると、第1中継端子34と第2中継端子35が互いに接続されるようになっている。
【0029】
上述のように本実施例1のワイヤーハーネスAは、複数本の第1電線11の端末部に第1コネクタ16を設けた第1ハーネス10と、複数本の第2電線21の端末部に第2コネクタ26を設けた第2ハーネス20と、第1コネクタ16と第2コネクタ26との間に配索される中継ハーネス30とを備える。中継ハーネス30は、第3導体32を第3絶縁被覆33で被覆した中継電線31と、中継電線31の一方の端部に配した第1ハウジング36と、中継電線31の他方の端部に配した第2ハウジング37とを備え、第3絶縁被覆33を構成する被覆用樹脂材料と、第1ハウジング36及び第2ハウジング37を構成するハウジング用樹脂材料は、いずれも、難燃性の合成樹脂製となっている。このようにワイヤーハーネスAは、第1ハーネス10と第2ハーネス20との間に、中継ハーネス30からなる難燃領域が構成されているので、第1ハーネス10又は第2ハーネス20の被覆材を伝達する経路で延焼しても、中継ハーネス30のハウジング36,37において、延焼を食い止めることができる。
【0030】
そして、中継ハーネス30を構成する第1ハウジング36は、第1コネクタ16と嵌合することで中継電線31の一方の端部(第1中継端子34)を第1電線11の第1端子金具14に接続させるようになっており、中継ハーネス30を構成する第2ハウジング37は、第2コネクタ26と嵌合することで中継電線31の他方の端部(第2中継端子35)を第2電線21の第2端子金具24に接続させるようになっている。したがって、本実施例1のワイヤーハーネスAの製造において必要とされる手作業は、第1ハウジング36と第1コネクタ16を嵌合する作業と、第2ハウジング37と第2コネクタ26を嵌合する作業だけなので、作業者の負担が軽くて済む。
【0031】
また、本実施例1のワイヤーハーネスAは、難燃領域である中継ハーネス30を、第1ハーネス10と第2ハーネス20の間に介在するように配索しているので、第1ハーネス10の配索長と第2ハーネス20の配索長を適宜に設定することにより、ワイヤーハーネスAの配索方向における中継ハーネス30による難燃領域を、適宜に設定することができる。
【0032】
また、第1ハウジング36と第2コネクタ26は、同一の形状なので、同一の金型で製造することができる。したがって、第1ハウジング36と第2コネクタ26を異なる形状にする場合に比べると、金型コストを抑えることができる。同様に、第2ハウジング37と第1コネクタ16も、同一の形状なので、同一の金型で製造することができる。したがって、第2ハウジング37と第1コネクタ16を異なる形状にする場合に比べると、金型コストを抑えることができる。
【0033】
<実施例2>
次に、本発明を具体化した実施例2を図7図8を参照して説明する。上記実施例1のワイヤーハーネスAが、中継ハーネス30を第1ハーネス10と第2ハーネス20との間に配索して構成されていたのに対し、本実施例2のワイヤーハーネスBは、中継ハーネス30を第1ハーネス10と機器40(請求項に記載の回路構成体)との間に配索して構成されている。本実施例2のワイヤーハーネスBを構成するのは、第1ハーネス10と中継ハーネス30であり、機器40は、本実施例2のワイヤーハーネスBを構成するものではない。
【0034】
本実施例2の第1ハーネス10は実施例1の第1ハーネス10と同一の構成であり、本実施例2の中継ハーネス30は実施例1の中継ハーネス30と同一の構成である。したがって、同じ構成については、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0035】
機器40は、電力分配装置、ジャンクションボックス、バッテリー等のように自動車に固定して設けられたものである。機器40のケーシング41には、第2コネクタ42が一体に形成されている。第2コネクタ42は、中継ハーネス30の第2ハウジング37が嵌合するようになっている。第2コネクタ42のうち第2ハウジング37と嵌合する部分(フード状の部分)は、実施例1の第2コネクタ26と同一の構成となっている。また、実施例2の第2コネクタ42には、機器40の回路(図示省略)に接続された第2端子金具(図示省略)が保持されている。本実施例2の第2端子金具は、実施例1の第2端子金具24と同一種類のものである。
【0036】
本実施例2のワイヤーハーネスBは、難燃領域である中継ハーネス30を、機器40の第2コネクタ42に、直接、嵌合して接続している。したがって、万一、機器40から出火した場合、ワイヤーハーネスBのうち機器40に最も近い位置に配索されている中継ハーネス30の難燃領域において、延焼を阻止することができる。つまり、ワイヤーハーネスBのうち第1ハーネス10への延焼を防止できる。
【0037】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1では、第1ハウジングと第2コネクタを同一形状としたが、第1ハウジングと第2コネクタは異なる形状であってもよい。
(2)上記実施例1,2では、第2ハウジングと第1コネクタを同一形状としたが、第2ハウジングと第1コネクタは異なる形状であってもよい。
(3)上記実施例1,2では、第1コネクタと第2コネクタを互いに嵌合可能な形状としたが、第1コネクタと第2コネクタは互いに嵌合不能な形状であってもよい。
(4)上記実施例1,2では、第1ハウジングと第2ハウジングを互いに嵌合可能な形状としたが、第1ハウジングと第2ハウジングは互いに嵌合不能な形状であってもよい。
(5)上記実施例1,2では、第1ハウジングと第2ハウジングを異なる形状としたが、第1ハウジングと第2ハウジングは同一の形状であってもよい。
(6)上記実施例1では、第1コネクタと第2コネクタを異なる形状としたが、第1コネクタと第2コネクタは同一の形状であってもよい。
(7)上記実施例1,2では、被覆用樹脂材料とハウジング用樹脂材料の両方を難燃性の合成樹脂としたが、被覆用樹脂材料を難燃性の合成樹脂としハウジング用樹脂材料を可燃性の合成樹脂としてもよく、被覆用樹脂材料を可燃性の合成樹脂としハウジング用樹脂材料を難燃性の合成樹脂としてもよい。
(8)上記実施例1,2では、被覆用樹脂材料を難燃性の合成樹脂とした上で、更にハウジング用樹脂材料も難燃性の合成樹脂としたが、被覆用樹脂材料を難燃性の合成樹脂とした場合には、第1ハウジングと第2ハウジングのうちいずれか一方のハウジングのハウジング用樹脂材料を可燃性の合成樹脂とし、他方のハウジングのハウジング用樹脂材料を難燃性の合成樹脂としてもよい。
(9)上記実施例1,2では、中継ハーネスを構成する複数本の中継電線を1つの束に纏め、第1ハウジングの数と第2ハウジングの数を、夫々、1つずつとしたが、中継ハーネスは、中継電線の束を途中で分岐させ、第1ハウジングと第2ハウジングのうち少なくとも一方のハウジングの数を複数個としたものであってもよい。
(10)上記実施例1では、第1電線と中継電線と第2電線が、非シールドタイプの電線であったが、本発明は、第1電線と中継電線と第2電線が、シールド電線である場合にも適用できる。
(11)上記実施例2では、第1電線と中継電線が、非シールドタイプの電線であったが、本発明は、第1電線と中継電線が、シールド電線である場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0038】
A…ワイヤーハーネス
10…第1ハーネス(ハーネス構成体)
11…第1電線(導電路)
16…第1コネクタ
20…第2ハーネス(回路構成体)
26…第2コネクタ
30…中継ハーネス
31…中継電線
32…第3導体(導体)
33…第3絶縁被覆(被覆材)
36…第1ハウジング
37…第2ハウジング
B…ワイヤーハーネス
42…第2コネクタ
40…機器(回路構成体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8