(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
太陽電池ウエハや燃料電池セル、あるいは二次電池の電極又はセパレータ等の薄い平板状のワーク(薄板ワーク)を移載するために、当該ワークを非接触で保持して搬送する非接触搬送装置が利用されている。
【0003】
この種の非接触搬送装置は、空気を高速で噴出してベルヌーイ効果による負圧を発生させ、この負圧によってワークを吸引するように構成される。特許文献1に記載の非接触搬送装置は、中空円柱状に形成された旋回流形成体(吸引要素)の内部に空気を噴出し、当該旋回流形成体の内部に旋回流を形成するように構成されている。旋回流は旋回流形成体から高速流となって流出するので、当該旋回流形成体の端面と、被搬送物(ウエハ)との間は負圧になる。これにより被搬送物は旋回流形成体に吸引されるが、旋回流形成体と被搬送体の間には空気の層が形成されるので、被搬送体と旋回流形成体との間は非接触状態に保たれる。このようにして、被搬送物を非接触で吸引保持することができる。
【0004】
この種の非接触搬送装置の別の例として、本願出願人は、
図13に示すような吸引チャック80を提案している(特願2011−94215)。
図13に示すように、この吸引チャック80は平板状に構成された本体81を備えており、当該本体81の下面はワークに直接対向する対向面31となっている。対向面31には、丸穴状の噴出口41が並べて複数形成されている。また、本体81には、当該本体81を厚み方向に貫通する複数の排気孔42が形成されている。
【0005】
噴出口41のうちの1つを拡大して
図14に示す。各噴出口41の内側には、圧縮空気を噴出するためのノズル44が形成されている。ノズル44は細長いスリット状の流路として形成されている。この例において、ノズル44は、1つの噴出口41に対して2本形成されている。2本のノズル44は、互いに位相を180°異ならせるようにして、噴出口41の内壁の接線方向に形成されている。当該ノズル44の一端は噴出口41の内周壁に開口しており、他端は接続孔34に連通している。
【0006】
この吸引チャック80の本体81には、接続孔34に連通する供給路83が形成されている。この供給路83は、各ノズル44に対応して設けられている。例えば
図14の吸引チャック80では、1つの噴出口41に対して2つのノズル44が設けられているので、供給路83も2本設けられている。
【0007】
以上の構成の吸引チャック80で、供給路83に圧縮空気を供給することにより、接続孔34を介してノズル44に圧縮空気が流入し、当該ノズル44から噴出口41の内部に圧縮空気が噴出される。ノズル44から噴出した空気は、噴出口41の内壁面に沿って流れた後、当該噴出口41から高速で流出する。これにより、吸引チャック80の対向面31とワークの間に負圧を発生させ、当該ワークを吸引保持することができる。なお、噴出口41から流出した空気は、排気孔42を介して速やかに排出されるので、空気流が滞留することによる吸引力の低下を防止できる。
【0008】
図15及び
図16に示すように、吸引チャック80は、複数の金属製のプレート84〜87を積層して構成されている。表面プレート84には、噴出口41が形成されている。ノズルプレート85には、ノズル44が形成されている。接続プレート86には、接続孔34が形成されている。分配プレート87には、供給路83が形成されている。
【0009】
噴出口41、ノズル44、接続孔34、供給路83、排気孔42などは、金属製のプレート84〜87に対するエッチング、又は機械加工などの方法により形成することができ、小型化、密集化が容易である。例えば
図13の吸引チャック80では、噴出口41の直径を3mmとしている。このように噴出口41を極めて小さく形成することができるので、
図13に示すように、噴出口41を多数並べてアレイ状に形成することができる。これにより、対向面31とワークの間で負圧を均一に分散させて作用させることができるので、ワークを吸引保持したときの当該ワークの振動及び変形を防止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図13等に示した従来例の吸引チャック80は、金属製のプレートを積層した構成であるから、金属プレート同士を互いに接合する必要がある。積層した金属プレート同士を接合するためには、拡散接合を利用することができる。
【0012】
ところで、
図13等に示した吸引チャック80においては、圧縮空気の流量を十分に確保するために、供給路83の幅が十分に広くなるように形成される。金属プレート同士を拡散接合する際には、その厚み方向に圧力をかける必要があるが、供給路83のように幅が広い溝(又はスリット)が金属プレートに形成されていると、当該溝(又はスリット)を挟んで厚み方向に圧力が伝わりにくい。従って、プレート84〜87を全部重ねて一体で拡散接合しようとしても、供給路83の部分には圧力がかかりにくい。このため、当該供給路83の部分で金属プレート同士の接合が不十分になり、空気漏れ等の不具合が発生するおそれがある。
【0013】
そこで、
図13等に示した従来例の吸引チャック80を形成する際には、プレート84〜86を重ねて拡散接合し、その後で、供給路83が形成された分配プレート87を接着により一体化していた。このように、
図13等に示した吸引チャック80では、全てのプレート84〜87をまとめて拡散接合することができなかったため、製造に手間がかかり、製造コスト上昇の要因となっていた。
【0014】
また、本願発明者らの研究により、1つの噴出口41に対して3本以上のノズル44を形成することで、吸引チャック80の吸引性能を向上(吸引力の向上、吸引時のワーク変形の減少)できることが明らかになった。しかし、
図14の構成では、ノズル44それぞれに対応して供給路83が配設されていているので、ノズル44の数を増やせばそれだけ供給路83の配設経路が複雑になる。このため、ノズル44の数を増やすことが困難ないし不可能である。また、供給路83の配設経路が複雑になると、排気孔42を最適な位置に配置することが難しくなる。
【0015】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、複数の金属プレートを積層してなる吸引チャックにおいて、各ノズルに対する圧縮空気の供給路をシンプルに構成するとともに、全体を拡散接合により一度で一体化できる吸引チャックを提供することにある。
【0016】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0017】
本発明の観点によれば、以下のように構成された吸引チャックが提供される。この吸引チャックは、ワークに対向する対向面を有する平板状の本体を備える。前記本体には、前記対向面から気体を噴出する複数の吸引要素と、各吸引要素に対して前記気体を供給する供給路と、前記本体を厚み方向に貫通する複数の排気孔と、が形成される。それぞれの前記吸引要素は、前記対向面に開口する円形の噴出口を有する円柱状空間と、前記円柱状空間の内周壁に開口する複数のノズルと、を備える。前記供給路は、前記複数のノズルのそれぞれに前記気体を分配する分配路と、前記分配路に前記気体を供給する共通供給路と、を備える。そして、前記吸引要素、前記分配路、及び前記共通供給路は、前記本体の厚み方向で異なる位置に形成される。
前記供給路は、供給ポートと、第1気体室を備える。前記供給ポートには、前記気体が供給される。前記第1気体室は、前記分配路に連通する。前記共通供給路は、複数の前記第1気体室にまたがって設けられ、かつ前記供給ポートに接続する。そしてこの吸引チャックは、前記供給ポートが形成された第1金属プレートと、前記共通供給路が形成された第2金属プレートと、前記第1気体室が形成された第3金属プレートと、を備える。
【0018】
即ち、共通供給路から分配路に対して気体を供給し、当該分配路から各ノズルに対して気体が分配される。各ノズルに対する気体の分配は分配路が行うので、共通供給路は分配路に対して気体を供給するだけで良い。従って、吸引要素がノズルを何本備えていたとしても、共通供給路の配設経路が複雑になることはない。これにより、共通供給路の配設経路を単純化できるので、全体のレイアウトの自由度が向上する。
また、1つの吸引ポートに対して気体を供給することにより、共通供給路を介して、複数の第1気体室に気体を供給できる。
【0021】
上記の吸引チャックは、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記共通供給路は、前記第2金属プレートを厚み方向に貫通形成した細長いスリットとして構成される。そして、前記第2金属プレートは、複数枚の金属プレートを積層して成る。
【0022】
共通供給路の流路面積を十分に確保する観点から、共通供給路の厚み方向での寸法を大きくすることが好ましい。しかし、厚みのある金属プレートに細長いスリットを形成するのは難しいので、上記のように複数の金属プレートにそれぞれスリットを形成し、これらを積層して第2金属プレートとする。金属プレートを積層して第2金属プレートとすることにより、当該第2金属プレートを厚くできるので、当該第2金属プレートに形成されたスリット(共通供給路)の厚み方向での寸法を確保できる。
【0023】
上記の吸引チャックは、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記共通供給路は、互いに区画された複数の細長いスリットとして前記第2金属プレートに形成される。前記複数の細長いスリットのうち一部は、前記供給ポートに直接連通する。一方、前記複数の細長いスリットの残りは、前記第1気体室を介して間接的に前記供給ポートに連通する。
【0024】
共通供給路を複数のスリットに分割することで、個々のスリットの開口面積を小さくできる。これにより、拡散接合の際に圧力がかかり易くなるとともに、第2金属プレートが変形しにくくなる。分割されたスリット同士は、第1気体室を介して互いに連通させることができる。これにより、それぞれのスリットに対して気体を供給できる。
【0025】
上記の吸引チャックは、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この吸引チャックは、第4金属プレートと、第5金属プレートと、を備える。前記第4金属プレートには、前記分配路が形成される。前記第5金属プレートには、第2気体室が形成される。この第2気体室は、各吸引要素が備える前記複数のノズルに対応して設けられ、当該対応するノズルと前記分配路とを連通させる。
【0026】
この構成で、分配路に供給された気体を、第2気体室を介して各ノズルに供給することができる。
【0027】
上記の吸引チャックは、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この吸引チャックは、第6金属プレートと、第7金属プレートと、を備える。前記第6金属プレートには、前記円柱状空間の一部が形成されるとともに、当該円柱状空間に連通する複数の前記ノズルが形成される。前記第7金属プレートには、前記噴出口が形成される。
【0028】
このようにして形成されたノズルから円柱状空間の内部に気体を噴出することができる。
【0029】
上記の吸引チャックは、前記第1から第7金属プレートを、この順番で積層した後に拡散接合して構成されることが好ましい。
【0030】
このように拡散接合することにより、複数の金属プレートを一度に一体化して吸引チャックを形成することができる。
【0031】
上記の吸引チャックは、以下のように構成することが好ましい。即ち、前記第1気体室は円柱状の空間である。前記第1気体室と、当該第1気体室に対応する吸引要素の前記円柱状空間と、は同一軸心上に配置される。前記分配路は、入力部と、個別供給路と、を備える。前記入力部は、前記第1気体室に連通する。前記個別供給路は、当該分配路が対応する吸引要素が備える複数の前記ノズルそれぞれに対応して設けられ、当該対応するノズルと前記入力部とを連通する。そして、各個別供給路は、前記軸心から放射状に配置される。
【0032】
上記の吸引チャックにおいて、各個別供給路は、互いに等しい長さで、かつ等しい流路断面積をもつことが好ましい。
【0033】
上記の吸引チャックにおいて、各個別供給路は、前記軸心を中心として等間隔で配置されていることが好ましい。
【0034】
分配路をこのように構成することにより、複数のノズルに対して気体を均一に分配できる。
【0035】
上記の吸引チャックにおいて、前記個別供給路の流路断面積は、前記ノズルの流路断面積と等しいか、又は大きいことが好ましい。
【0036】
これにより、各ノズルに対して供給する気体の流量を十分に確保できる。
【0037】
上記の吸引チャックにおいて、前記噴出口、前記ノズル、前記分配路、及び前記共通供給路は、対応する金属プレートにエッチングによって形成されることが好ましい。
【0038】
このようにエッチングによる加工で噴出口やノズル等を形成することにより、吸引要素を小さくかつ高精度に形成することが容易となる。
【0039】
もっとも、前記噴出口、前記ノズル、前記分配路、及び前記共通供給路は、対応する金属プレートに機械加工によって形成されても良い。
【0040】
また、本発明の別の観点によれば、上記の吸引チャックと、前記吸引チャックを所定範囲内で3次元的に移動させることが可能なパラレルメカニズムと、を備える移載装置が提供される。
【0041】
即ち、パラレルメカニズムにより、吸引チャックで吸引保持したワークを三次元的に自在に移動させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る吸引チャック10を備えた移載ロボット(移載装置)1を示す斜視図である。
【0044】
この移載ロボット1は、いわゆるパラレルメカニズムロボットとして構成されている。具体的には、この移載ロボット1は、ベース部101と、3本のアーム106と、3つの電動モータ104と、1つのエンドプレート114と、を備えている。
【0045】
ベース部101の上部には、下向きの被取付面P1が形成されている。一方、移載ロボット1を取り付けるための図略のフレーム上面は、水平な上向きの取付面とされる。この構成で、ベース部101の被取付面P1を前記フレームの取付面に固定することで、移載ロボット1を吊下げ状に設置できるようになっている。
【0046】
ベース部101の下面側には、当該ベース部101の平面視での中央部を中心として、周方向で等間隔となるように3つ並べて電動モータ104が固定されている。各電動モータ104は減速機付きであり、当該減速機の出力軸には、それぞれ前記アーム106の基端部が固定されている。
【0047】
各アーム106の途中部分にはボールジョイントからなる関節部110が設けられており、この関節部110において当該アーム106が屈曲自在となっている。3本のアーム106の先端は、ボールジョイントからなる関節部を介して屈曲自在に1つのエンドプレート114に接続されている。また、ベース部101には、モータ軸を下向きに設置された電動モータ32が固定されている。この電動モータ32のモータ軸の端部は、旋回軸33の端部に接続されている。
【0048】
旋回軸33の他方の端部は、エンドプレート114を貫通して、当該エンドプレート114の下面よりも下方に突出しているとともに、エンドプレート114によって回転可能に支持されている。これにより、前記モータ軸の回転を、エンドプレート114の下方まで伝達可能となっている。旋回軸33の下端部には、本実施形態に係る吸引チャック(ベルヌーイチャック)10が取り付けられている。
【0049】
以上のように構成されたパラレルメカニズムにより、移載ロボット1は、3つの電動モータ104を適宜制御することで、アーム106及び旋回軸33のストロークの範囲内で、エンドプレート114(及び吸引チャック10)を三次元的に自在に移動させることができる。また、電動モータ32を適宜制御することにより、吸引チャック10を、鉛直軸まわりに旋回させることができる。
【0050】
図2に示すように、吸引チャック10は、平板状に形成された本体11を備えている。本体11には、ワーク90の上面に対向する下向きの対向面31を有している。また、対向面31の反対側の面(本体11の上面)には、継手71及び配管72が接続されている。この配管72は、図略の電磁バルブを介して、適宜の圧縮空気源(例えばコンプレッサ)に接続されている。吸引チャック10は、この圧縮空気源から供給される圧縮空気を対向面31から高速で噴出することにより、ベルヌーイ効果によってワーク90と対向面31の間に負圧を発生させ、これにより当該ワーク90を非接触で吸引保持するように構成されている。
【0051】
また、本体11の縁部に、当該本体11を取り囲むように互いに間隔をあけて配置された複数のガイド部材91が固定されている。ガイド部材91は、その下端が本体11の下面(対向面31)より下方に突出するように配置されている。これらのガイド部材91は、吸引チャック10に保持されたワーク90が搬送される際に、本体11の下面(対向面31)と平行な向きにワーク90が相対移動しようとするのを規制する。
【0052】
本実施形態の移載ロボット1は、吸引チャック10に圧縮空気を供給してワーク90を吸引保持し、その状態で電動モータ104を適宜制御してエンドプレート114(及びワーク90を吸引した状態の吸引チャック10)を所望の位置まで移動させる。また、この移載ロボット1は、前記電動モータ32を適宜駆動することにより、吸引チャック10を旋回させ、当該吸引チャック10に吸引保持されたワーク90を略水平面内で回転させることができる。ついで移載ロボット1は、吸引チャック10に対する圧縮空気の供給を遮断してワーク90の吸引保持を解除することにより、当該ワーク90を所望の位置に載置する。以上のように、本実施形態の移載ロボット1は、吸引チャック10によってワーク90を吸引保持し、所望の位置まで移動させることができる。
【0053】
本実施形態の移載ロボット1が取り扱うワーク90としては、薄い平板状に形成された、特に矩形のものを想定している。ワーク90の例としては、太陽電池ウエハ、燃料電池のセル、二次電池の電極、セパレータ、シリコンウエハ等を挙げることができるが、これらに限られない。
【0054】
続いて、本実施形態の吸引チャック10の構成について詳しく説明する。
【0055】
前述のように、吸引チャック10は、平板状に構成された本体11を備えており、その下面は、ワーク90に対向する対向面31となっている。
図3に示すように、本体11の対向面31には、円形の噴出口41が複数開口している。また、吸引チャック10の本体11には、当該本体11を厚み方向で貫通する排気孔42が複数形成されている。
【0056】
複数の噴出口41のそれぞれは、1つの吸引要素に対応している。本実施形態の吸引チャック10が備える吸引要素を、
図4に拡大して示す。
図4に示すように、各吸引要素は、円柱状空間45と、複数のノズル44を備えている。
【0057】
円柱状空間45は、軸心が対向面31に直交するように形成された円柱状の空間である。円柱状空間45は対向面に開口しており、当該開口部分が前述の噴出口41となっている。
【0058】
複数のノズル44は、それぞれ細長い流路として構成されており、その長手方向の一端が円柱状空間45の内周壁に開口している。また、ノズル44の他端は、圧縮空気が供給される被供給部35となっている。
【0059】
本実施形態の吸引チャック10では、1つの吸引要素に対して、ノズル44を3つ設けている。3つのノズル44は、互いに等しい長さを有し、かつ互いに等しい流路断面積を有している。また、3つのノズル44は、円柱状空間45の軸心を中心として、互いに120°位相を異ならせるように形成されている。従って、3つのノズル44は、円柱状空間45の内周壁に対して周方向で等間隔に開口している。また、各ノズル44は、その長手方向が円柱状空間45の接線方向と一致するように形成されている。
【0060】
吸引チャック10の本体11には、各ノズル44の被供給部35に対して圧縮空気を供給するための供給路が形成されている。前記供給路から被供給部35に圧縮空気を供給することにより、当該圧縮空気がノズル44を流れて円柱状空間45内に噴出し、当該円柱状空間45の内周壁に沿って流れた後、噴出口41から高速流となって噴出する。
【0061】
噴出口41から空気が噴出する様子を、
図7に太線の矢印で示す。対向面31に形成された噴出口41から空気が高速で噴出するため、ベルヌーイ効果によって対向面31とワーク90との間は負圧になる。これによりワーク90は対向面31に吸引されるが、対向面31とワーク90の間には空気の層が形成されるため、対向面31とワーク90の間は非接触状態に保たれる。以上の構成により、ワーク90を非接触で吸引保持することができる。
【0062】
なお、噴出口41から流出した空気は、
図7に示すように、対向面31とワーク90の間を所定距離流れた後、排気孔42を介して本体11の上面に向けて速やかに排出される。これにより、対向面31とワーク90の間に空気が滞留することを防ぎ、吸引力の低下、及びワーク90の変形や振動の発生を防止できる。
【0063】
本実施形態の吸引チャック10において、各吸引要素はノズル44を3つ備えているので、ノズル44を2つしか備えていなかった
図14の吸引チャック80に比べて、噴出口41からの空気をより均等に噴出させることができる。これにより、
図14の吸引チャックに比べて、吸引性能を向上(吸引力の向上、吸引時のワーク変形の減少)させることができている。
【0064】
続いて、この吸引チャックの構成について詳細に説明する。
【0065】
図5から
図9に示すように、吸引チャック10の本体11は、複数の金属製のプレートが厚み方向に積み重ねて構成されている。具体的には、本体11は、ワーク90に近い側(下側)から順に、第7金属プレート57と、第6金属プレート56と、第5金属プレート55と、第4金属プレート54と、第3金属プレート53と、第2金属プレート52と、第1金属プレート51と、を積層した構成となっている。
【0066】
各金属プレート51,52,53,54,55,56,57には、圧縮空気の流路となるスリット又は孔が形成されている。本実施形態では、前記スリット又は孔は、金属プレートに対するエッチングにより形成している。このように、圧縮空気の流路を形成するためにエッチングを利用できるので、当該流路を細く(小さく)形成することが可能となり、各吸引要素を小さくアレイ状に形成することが容易となる。
【0067】
例えば本実施形態では、噴出口41の直径を3mmとしている。また本実施形態では、
図3に示すように、多数の噴出口41をアレイ状に並べて形成している。このように、本実施形態の吸引チャック10は、本体11を複数の金属プレートから構成したことにより、空気の流路をエッチングにより形成できるので、小さな吸引要素を多数アレイ状に並べて形成することが可能となっている。これにより、対向面31とワーク90との間に均一に分散した負圧を発生させることができるので、ワーク90を吸引保持した際の、当該ワーク90の変形や振動を防止することができる。
【0068】
上記7枚の金属プレート51〜57の材料としては、ステンレス、アルミニウム合金、又はチタン合金から選択されたものを具体例として挙げることができる。そして本実施形態では、7枚のプレート51〜57を全て重ねた状態で拡散接合することにより、吸引チャック10の本体11を形成している。歪みが小さく寸法精度が良好な吸引チャック10を提供するためには、7枚の金属プレート51〜57の材料としては、全て同一のものを用いることが好ましい。これは、仮に異種金属を拡散接合する場合、接合後の残留歪みにより、たわみ等の変形が発生するおそれがあるためである。本実施形態では、7枚のプレート51〜57の材料として、何れもステンレスを用いている。
【0069】
前記吸引要素は、第7金属プレート57及び第6金属プレート56に形成されている。そこでまず、第7金属プレート57及び第6金属プレート56の構成について説明する。
【0070】
第7金属プレート57及び第6金属プレート56には、前記円柱状空間45が形成されている。この円柱状空間45は、第7金属プレート57及び第6金属56を厚み方向で貫通する丸孔として形成されている。なお、円柱状空間45は、第5金属プレート55には形成されていない。即ち、吸引チャック10の厚み方向で、円柱状空間45の一側の端部(上側の端部)は、第5金属プレート55によって封止されている。一方、円柱状空間45の他側の端部(下側の端部)は、第7金属プレート57の下面(対向面31)に開口して噴出口41を形成している。
【0071】
第6金属プレート56には、前記円柱状空間45の一部が形成されている。また、当該第6金属プレート56には、
図9に示すように、上記円柱状空間45に接続するノズル44が形成されている。
図9に示すように、各ノズル44は、細長いスリットとして第6金属プレート56に形成されている。また、各ノズル44は、第6金属プレート56を厚み方向で貫通するように形成されている。各ノズル44の端部には、被供給部35が形成されている。
図9に示すように、被供給部35は、第6金属プレート56を厚み方向で貫通する丸孔として形成されている。各ノズル44の端部は、対応する被供給部35に接続している。
【0072】
なお、
図6の断面図には、各吸引要素において同一断面内に2つのノズル44が対向してあるように描かれているが、これは図示の都合上このように示しているだけである。前述のように、各ノズル44は互いに120度位相を異ならせて形成されているので、実際には、ノズル44が
図6の断面図のように同一平面内に形成されているわけではない。
【0073】
続いて、各吸引要素に対して圧縮空気を供給するための構成について説明する。
【0074】
本実施形態の吸引チャック10の本体11には、各吸引要素に対して圧縮空気を供給する供給路が形成されている。この供給路は、第1〜第5金属プレート51,52,53,54,55に形成されている。
【0075】
図5及び
図10に示すように、第1金属プレート51には、複数の供給ポート73が形成されている。
図10に示すように、各供給ポート73は、第1金属プレート51を厚み方向で貫通する丸孔として形成されている。また、
図6に示すように、供給ポート73には、圧縮空気を供給するための継手71を接続することが可能となっている。具体的には、継手71の接続部におねじを、供給ポート73の丸孔にめねじを加工する等により、供給ポート73に対して継手71を適宜接続する。これにより、前述の圧縮空気源(コンプレッサなど)からの圧縮空気が、供給ポート73に供給される。
【0076】
第3金属プレート53には、第1気体室48が形成されている。
図8に示すように、この第1気体室48は、第3金属プレート53を厚み方向で貫通する丸孔として形成されている。第1気体室48は、吸引要素ごとに1つずつ設けられている。また、各第1気体室48は、対応する吸引要素の円柱状空間45と軸心を一致させて(同一軸心上に)配置されている。
【0077】
第2金属プレート52には、複数の共通供給路47が形成されている。
図10に示すように、各共通供給路47は、細長いスリットとして第2金属プレート52に形成されている。また、この共通供給路47は、第2金属プレート52を厚み方向で貫通して形成されている。各共通供給路47は、各供給ポート73に対応して設けられており、当該対応する供給ポート73に連通している。また、
図10に示すように、共通供給路47は、複数(本実施形態の場合は4つ)の第1気体室48にまたがって配置されており、当該複数の第1気体室48に連通している。以上の構成で、供給ポート73に供給された圧縮空気は、共通供給路47を介して、複数の第1気体室48に供給される。
【0078】
なお、本実施形態では、複数の第1気体室48にまたがって共通供給路47を形成しているので、当該共通供給路47はある程度の長さを有することになる。仮に、この共通供給路47を
図11(b)のように1本のスリットとして構成した場合は、第2金属プレート52に形成するスリット(共通供給路)の長さが長くなるので、当該第2金属プレート52の剛性が低下し、拡散接合の際に第2金属プレート52が変形し易くなる。
【0079】
そこで本実施形態では、
図11(a)に示すように、共通供給路47を長手方向で複数に区画する長手方向仕切り部60を設けている。これにより、共通供給路47は、長手方向に並んだ複数のスリットによって構成されている。例えば
図6及び
図11(a)に示すように、本実施形態の共通供給路47は、その長手方向に並んだ4つのスリット47a,47b,47c,47dから構成されている。このように、共通供給路47を長手方向に分割して複数のスリットとすることで、個々のスリットの長さを短くすることができる。これにより、第2金属プレート52の剛性の低下を防ぎ、拡散接合の際に第2金属プレート52が変形しにくくなるので、精度良く拡散接合を行うことができる。
【0080】
なお、共通供給路47を複数のスリットに区画する構成としたので、スリット同士の間は直接的には連通していない。従って、圧縮空気を共通供給路47の全長に行き渡らせるためには、当該共通供給路47を構成するスリット同士を連通させる経路が別途必要となる。
【0081】
そこで本実施形態では、
図6に示すように、長手方向仕切り部60を、供給ポート73又は第1気体室48に対応して設けている。具体的には、長手方向仕切り部60を、供給ポート73又は第1気体室48に対して厚み方向でオーバーラップするように配置し、かつ、長手方向仕切り部60の幅(共通供給路47の長手方向での長手方向仕切り部60の寸法)を、対応する供給ポート73又は第1気体室48の直径よりも小さくしている。以上の構成により、長手方向で隣接するスリット同士を、供給ポート73又は第1気体室48を介して間接的に連通させることができる。より具体的に
図6を例として説明すると、スリット47bとスリット47cが、供給ポート73を介して連通している。スリット47aとスリット47bが、第1気体室48を介して間接的に連通している。また、スリット47cとスリット47dが、第1気体室48を介して間接的に連通している。
【0082】
以上の構成により、供給ポート73から供給された圧縮空気を、共通供給路47の全長に行き渡らせることができる。より具体的に
図7を参照して説明する。
図7の例では、共通供給路47を構成する4つのスリット47a,47b,47c,47dのうち、スリット47b及びスリット47cが、供給ポート73に対して直接的に連通している。従って、残りのスリット47a,47dは、供給ポート73に対して直接的には連通していない。供給ポート73からの圧縮空気は、まずスリット47b及びスリット47cに供給される。スリット47bに供給された圧縮空気は、
図7に示すように、第1気体室48を介して、長手方向仕切り部60の下をくぐるようにして流れ、スリット47aに供給される。同様に、スリット47cに供給された圧縮空気は、
図7に示すように、第1気体室48を介して、長手方向仕切り部60の下をくぐるようにして流れ、スリット47dに供給される。
【0083】
以上のようにして、供給ポート73から供給された圧縮空気を、共通供給路47の全長に行き渡らせることができるので、当該共通供給路47に対応して設けられている複数(本実施形態の場合は4つ)の第1気体室48に、前記圧縮空気を供給できる。
【0084】
なお、上記のように、1つの共通供給路47によって複数の第1気体室48に圧縮空気を供給する構成としたので、圧縮空気の供給流量を十分に確保するため、共通供給路47の流路断面積を十分に大きくする必要がある。そこで、共通供給路47を幅方向に広く形成することが考えられる。しかし、当該共通供給路47の幅を広くした場合、金属プレート51〜57を重ねて拡散接合する際に、共通供給路47の部分で圧力がかかりにくくなり、接合が不完全になってしまうおそれがある。
【0085】
そこで本実施形態では、
図11(a)に示すように、共通供給路47を幅方向で複数に区画する幅方向仕切り部61を設けている。これにより、共通供給路47は、幅方向に並んだ複数のスリットによって構成されている。例えば
図11(a)に示すように、本実施形態の共通供給路47は、その幅方向で平行に並んだ2本の細長いスリットから構成されている。このように、共通供給路47を幅方向に分割して複数のスリットから構成することで、共通供給路47の全体の流量を十分に確保しつつ、個々のスリットの幅を狭くできる。これにより、金属プレート51〜57を重ねて拡散接合する際に、共通供給路47の部分に圧力がかかり易くなり、接合が不完全になることを防止できる。
【0086】
ところで、圧縮空気の流量を十分に確保するためには、共通供給路47の厚み方向の寸法も大きくすることが好ましい。そこで本実施形態では、
図10に示すように、第2金属プレート52を、複数枚(本実施形態の場合は2枚)の金属プレートを積層して構成している。個々の金属プレートには、同一形状の共通供給路47を貫通形成している。このように、複数枚の金属プレートを積層して第2金属プレート52を構成することにより、当該第2金属プレート52の厚みを大きくできるので、共通供給路47の厚み方向の寸法を大きくできる。これにより、当該共通供給路47の流路断面積を十分に大きくできるので、圧縮空気の流量を十分に確保できる。
【0087】
第2金属プレート52を構成する個々の金属プレートは、重ね合わせて拡散接合することにより一体化して、1枚の第2金属プレート52として取り扱っても良い。ただしこの場合、個々の金属プレートを重ね合わせて第2金属プレート52を形成するための拡散接合と、第1〜第7金属プレート51,52,53,54,55,56,57を重ね合わせて吸引チャック10を形成するための拡散接合とで、計2回の拡散接合が必要となってしまう。そこで、1枚の第2金属プレート52として取り扱う必要が特に無ければ、第2金属プレート52を構成する複数枚の金属プレートを、第1金属プレート51及び第3〜第7金属プレート53,54,55,56,57と一緒に重ね合わせて拡散接合すれば良い。これによれば、一度の拡散接合で、吸引チャック10を形成できる。
【0088】
なお、本実施形態では、複数枚の金属プレートを重ねることで第2金属プレート52の厚みを大きくしているが、第2金属プレート52は単一の金属プレートとして、当該単一の金属プレート自体の厚みを大きくするというアプローチも考えられる。しかし、金属プレートに厚みがある場合、当該金属プレートを貫通する細長いスリット状の共通供給路47を、エッチングによって精度良く形成することが難しくなる。
【0089】
本実施形態では、複数枚の金属プレートを重ねて第2金属プレート52を構成しているので、個々の金属プレートには厚みが要求されない。従って、各金属プレートの厚みは、前記共通供給路47をエッチングによって精度良く形成できる程度の厚みとすれば良い。これにより、共通供給路47を精度良く形成することができ、しかも、複数枚の金属プレートを重ねることにより共通供給路47の厚み方向での寸法を十分に大きくすることができる。
【0090】
図9に示すように、第4金属プレート54には、分配路62が形成されている。分配路62は、各第1気体室48に対応して設けられている。
図9及び
図12に示すように、分配路62は、入力部63と、個別供給路64と、出力部65と、を備えている。
【0091】
入力部63は、第4金属プレート54を厚み方向で貫通する丸孔として構成されている。また、この入力部63は、対応する第1気体室48と軸心を一致させて配置されており、当該第1気体室48に連通している。また、丸孔状の入力部63の径と、第1気体室48の径と、を一致させている。これにより、入力部63と第1気体室48が連通して、円柱状の空間を形成している。
【0092】
図9に示すように、個別供給路64は、細長いスリット状の流路として第4金属プレート54に形成されている。また、この個別供給路64は、第4金属プレートを厚み方向で貫通して形成されている。この個別供給路64は、各吸引要素が備える複数のノズル44に対して圧縮空気を分配するためのものであり、各ノズル44に対応して設けられている。本実施形態では、1つの吸引要素が3つのノズル44を備えているので、各分配路62も個別供給路64を3つ備えている。
【0093】
図12に示すように、分配路62が備える複数の個別供給路64は、入力部63の軸心(
図12に符号Cで示す)から放射状に配置されている。各個別供給路64は、互いに等しい長さで、かつ等しい流路断面積を有している。更に、
図12に示すように、複数の個別供給路64は、入力部63の軸心Cを中心として、周方向に等間隔(等角度)で配置されている。例えば、本実施形態において各分配路62は3つの個別供給路64を備えているので、各個別供給路64は120度間隔で配置されている。
【0094】
このように、分配路62が備える複数の個別供給路64は、互いに同じ条件で形成されている。これにより、入力部63に供給された圧縮空気を、複数(本実施形態の場合は3つ)の個別供給路64に対して平等に分配することができる。
【0095】
図9及び
図12に示すように、各個別供給路64の一端側は入力部63に接続しており、他端側は、出力部65に接続している。出力部65は、第4金属プレート54を厚み方向で貫通する丸孔として構成されている。この出力部65は、各個別供給路64に対して設けられている。従って、本実施形態の分配路62は、出力部65を3つ備えている。各出力部65は互いに同じ径で形成されている。これにより、各出力部65は互いに等しい空間体積を有している。
【0096】
第5金属プレート55には、第2気体室46が形成されている。
図8に示すように、第2気体室46は、第5金属プレート55を厚み方向で貫通する丸孔として形成されている。第2気体室46は、各吸引要素のノズル44の端部(被供給部35)と、これに対応する分配路62の出力部65と、を連通するように配置されている。第2気体室46は、対応する出力部65と軸線を一致させて配置されている。また、各第2気体室46は、互いに同じ径で形成されている。これにより、各第2気体室46は互いに等しい空間体積を有している。なお、第2気体室46と出力部65は、同じ径で形成されている。これにより、出力部65と第2気体室46が連通することで、円柱上の空間を形成している。
【0097】
前述のように、各ノズル44の端部に形成された被供給部35は、丸孔として構成されている。この各被供給部35は、対応する第2気体室46及び出力部65と軸線を一致させて配置されている。また、各被供給部35は、互いに同じ径で形成されている。これにより、各被供給部35は互いに同じ空間体積を有している。なお、被供給部35の径は、第2気体室46及び出力部65の径よりも若干小さく形成されている。
【0098】
以上のように、各個別供給路64からノズル44までの空気の流路が、出力部65、第2気体室46、及び被供給部35によって形成されている。3つのノズル44に対応して形成された3つの出力部65、3つの第2気体室46、及び3つの被供給部35は、それぞれ互いに同じ条件(同じ空間体積)で形成されている。つまり、分配路62から各ノズル44までの空気の流路は、互いに同じ条件で形成されている。これにより、吸引要素が備える3つのノズル44に対して、圧縮空気を平等に供給することができる。これにより、複数のノズル44から均等に圧縮空気を噴出することができるので、噴出口41の中心付近に偏りなく負圧を発生させるとともに、当該噴出口41からその周辺に向けて均等に圧縮空気を排出させることができる。
【0099】
また、各個別供給路64の流路断面積は、各ノズル44の流路断面積よりも大きくなるように形成されている。これによれば、各ノズル44に対して、十分な流量の圧縮空気を供給できる。
【0100】
以上のように構成された吸引チャック10における圧縮空気の流れについて、
図7を参照して簡単に説明すると以下の通りである。
【0101】
図略の圧縮空気源(コンプレッサなど)で生成された圧縮空気は、配管72及び継手71を介して、本体11の供給ポート73に供給される。
【0102】
供給ポート73に供給された圧縮空気は、共通供給路47を通って、複数(本実施形態の場合は4つ)の第1気体室48に供給される。
【0103】
第1気体室48に供給された圧縮空気は、分配路62の入力部63に供給される。この圧縮空気は、複数(本実施形態の場合は3つ)の個別供給路64に分配される。各個別供給路64に分配された圧縮空気は、それぞれの個別供給路64の端部に形成されている出力部65を介して、対応する第2気体室46に供給される。
【0104】
各第2気体室46に供給された圧縮空気は、それぞれの第2気体室46に対応するノズル44の端部(被供給部35)に供給される。ノズル44に供給された圧縮空気は、円柱状空間45の内部に噴出する。
【0105】
以上のように、第1気体室48に供給された圧縮空気を、分配路62によって複数(本実施形態の場合は3つ)に分岐させることにより、対応する複数のノズル44に対して圧縮空気を供給できる。各ノズル44への圧縮空気の分配は分配路62が行うので、共通供給路47にはノズル44への分配構造が不要となる。これにより、共通供給路47の配設経路を単純化できる。
【0106】
また、このように共通供給路47の配設経路をシンプルに構成できるので、排気孔42の配置自由度を向上させることができる。即ち、排気孔42は、本体11を厚み方向に貫通して形成するので、各金属プレートに形成されている空気の流路を避けるように形成しなければならない。このため、仮に共通供給路47が複雑に張り巡らされていると、排気孔42を形成できる位置が限られてしまい、当該排気孔42の配置自由度が低くなる。この点、本実施形態の構成によれば共通供給路47をシンプルに構成できるので、排気孔42のレイアウトの自由度が向上する。これにより、排気孔42を最適な位置に配置することが可能となるので、対向面31とワーク90の間の空気を効率良く排出させることができる。これにより、吸引力の低下を防ぎ、吸引チャック10の吸引効率を向上させることができる。
【0107】
以上で説明したように、本実施形態の吸引チャック10は、ワーク90に対向する対向面31を有する平板状の本体11を備えている。本体11には、対向面31から空気を噴出する複数の吸引要素と、各吸引要素に対して圧縮空気を供給する供給路と、本体11を厚み方向に貫通する複数の排気孔42と、が形成される。それぞれの吸引要素は、対向面31に開口する円形の噴出口41を有する円柱状空間45と、円柱状空間45の内周壁に開口する複数のノズル44と、を備える。供給路は、複数のノズル44のそれぞれに圧縮空気を分配する分配路62と、分配路62に圧縮空気を供給する共通供給路47と、を備える。そして、吸引要素、分配路62、及び共通供給路47は、互いに異なる金属プレートに形成される。
【0108】
即ち、共通供給路47から分配路62に対して圧縮空気を供給し、当該分配路62から各ノズル44に対して圧縮空気が分配される。各ノズルに対する圧縮空気の分配は分配路62が行うので、共通供給路47は分配路62に対して圧縮空気を供給するだけで良い。従って、吸引要素がノズル44を何本備えていたとしても、共通供給路47の配設経路が複雑になることはない。これにより、共通供給路47の配設経路を単純化できるので、全体のレイアウトの自由度が向上する。
【0109】
また、本実施形態の吸引チャック10において、供給路は、供給ポート73と、第1気体室48を備えている。供給ポート73には、圧縮空気が供給される。第1気体室48は、分配路62に連通する。共通供給路47は、複数の第1気体室48にまたがって設けられ、かつ供給ポート73に接続する。そしてこの吸引チャック10は、供給ポート73が形成された第1金属プレート51と、共通供給路47が形成された第2金属プレート52と、第1気体室48が形成された第3金属プレート53と、を備える。
【0110】
これによれば、1つの供給ポート73に対して圧縮空気を供給することにより、共通供給路47を介して、複数の第1気体室48に圧縮空気を供給できる。
【0111】
また、本実施形態の吸引チャック10において、共通供給路47は、第2金属プレート52を厚み方向に貫通形成した細長いスリットとして構成されている。そして、第2金属プレート52は、複数枚の金属プレートを積層して成っている。
【0112】
共通供給路47の流路面積を十分に確保する観点から、共通供給路47の厚み方向での寸法を大きくすることが好ましい。しかし、厚みのある金属プレートに細長いスリットを形成するのは難しいので、上記のように複数の金属プレートにそれぞれスリットを形成し、これらを積層して第2金属プレート52とする。金属プレートを積層して第2金属プレート52とすることにより、当該第2金属プレートを厚くできるので、当該第2金属プレートに形成されたスリット(共通供給路)の厚み方向での寸法を確保できる。
【0113】
また、本実施形態の吸引チャック10は、以下のように構成されている。即ち、共通供給路47は、互いに区画された複数の細長いスリットとして第2金属プレート52に形成される。複数の細長いスリットのうち一部は、供給ポート73に直接連通する。一方、複数の細長いスリットの残りは、第1気体室48を介して間接的に供給ポート73に連通する。
【0114】
共通供給路47を複数のスリットに分割することで、個々のスリットの開口面積を小さくできる。これにより、拡散接合の際に圧力がかかり易くなるとともに、第2金属プレート52が変形しにくくなる。分割されたスリット同士は、第1気体室48を介して互いに連通させることができる。これにより、それぞれのスリットに対して圧縮空気を供給できる。
【0115】
また、本実施形態の吸引チャック10は、第4金属プレート54と、第5金属プレート55と、を備えている。第4金属プレート54には、分配路62が形成される。第5金属プレート55には、第2気体室46が形成される。この第2気体室46は、各吸引要素が備える複数のノズル44に対応して設けられ、当該対応するノズル44と分配路62とを連通させる。
【0116】
この構成で、分配路62に供給された圧縮空気を、第2気体室46を介して各ノズル44に供給することができる。
【0117】
また、本実施形態の吸引チャックは、第6金属プレート56と、第7金属プレート57と、を備えている。第6金属プレート56には、円柱状空間45の一部が形成されるとともに、当該円柱状空間45に連通する複数の前記ノズル44が形成される。第7金属プレート57には、噴出口41が形成される。
【0118】
このようにして形成されたノズル44から円柱状空間45の内部に圧縮空気を噴出することができる。
【0119】
また、本実施形態の吸引チャック10は、第1から第7金属プレート51,52,53,54,55,56,57を、この順番で積層した後に拡散接合して構成されている。
【0120】
このように拡散接合することにより、複数の金属プレートを一度に一体化して吸引チャック10を形成することができる。
【0121】
また、本実施形態の吸引チャック10において、第1気体室48は円柱状の空間である。第1気体室48と、当該第1気体室48に対応する吸引要素の円柱状空間45と、は同一軸心上に配置される。分配路62は、入力部63と、個別供給路64とを備える。前記入力部63は、第1気体室48に連通する。前記個別供給路64は、当該分配路62が対応する吸引要素が備える複数のノズル44それぞれに対応して設けられ、当該対応するノズル44と入力部63とを連通する。前記入力部63は、第1気体室48と同一の軸心C上に配置される。そして、各個別供給路64は、軸心Cから放射状に配置される。各個別供給路64は、互いに等しい長さで、かつ等しい流路断面積をもつ。更に、各個別供給路64は、軸心Cを中心として等間隔で配置されている。
【0122】
分配路62をこのように構成することにより、複数のノズル44に対して圧縮空気を均一に分配できる。
【0123】
また、本実施形態の吸引チャック10において、個別供給路64の流路断面積は、ノズル44の流路断面積よりも大きい。
【0124】
これにより、各ノズル44に対して供給する気体の流量を十分に確保できる。
【0125】
また、本実施形態の吸引チャック10において、噴出口41、ノズル44、分配路62、及び共通供給路47は、対応する金属プレートにエッチングによって形成されている。
【0126】
このようにエッチングによる加工で噴出口やノズル等を形成することにより、吸引要素を小さくかつ高精度に形成することが容易となる。
【0127】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0128】
吸引チャック10は、上記のようなパラレルメカニズム式の移載ロボット1に搭載することもできるが、これに限らず、例えばスカラアーム式の移載ロボットに適用することもできる。
【0129】
上記の実施形態では、吸引チャック10の対向面31の形状は矩形状であるが、これに限らず適宜の形状とすることができる。ただし、吸引チャック10の対向面31の形状は、取り扱うワーク90の形状と略合同形状とし、かつワークよりも若干大きいように構成すれば、ワーク90の表面に対して吸引力を無駄なく均一に作用させることができるので好適である。
【0130】
対向面31に形成される噴出口41の数及び配置についても、ワーク90の重量及び大きさ等に応じて適宜変更することができる。
【0131】
上記実施形態において、吸引要素に供給する気体は圧縮空気としたが、例えば窒素などの他の気体を供給しても良い。
【0132】
各吸引要素が備えるノズル44の数は、3つに限らず、4つ以上とすることができる。もっとも、各吸引要素が2つのノズル44を備える構成の吸引チャック(例えば
図14)であっても、本願発明の構成を適用することができる。
【0133】
上記実施形態において、金属プレートに形成されるスリット及び孔は、当該金属プレートを貫通して形成するものとした。しかしこれに限らず、ノズル44、共通供給路47、分配路62等は、その一部を、例えば
図15に示す供給路83のように金属プレートを貫通しない溝状の流路として構成しても良い。