特許第5979605号(P5979605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979605
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】トイレ用手摺装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 17/02 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
   A47K17/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-102883(P2013-102883)
(22)【出願日】2013年5月15日
(65)【公開番号】特開2014-223118(P2014-223118A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2015年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉山 聡洋
(72)【発明者】
【氏名】山本 匡人
(72)【発明者】
【氏名】岩田 淳一
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−045147(JP,A)
【文献】 特開2004−353363(JP,A)
【文献】 実開平01−177598(JP,U)
【文献】 特開昭60−072523(JP,A)
【文献】 実開昭58−093300(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00−17/02
E04F 11/18
A61G 9/00− 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腰掛式の大便器が設けられたトイレルーム内に取り付けられ、トイレルーム内に入室した車椅子使用者の動作をサポートするトイレ用手摺装置であって、
使用者が把持する把持部と、
前記把持部の一端側に設けられ、前記把持部を大便器の前方スペースにおいて水平方向に回動させる回動軸部と、
前記把持部の回動を所定の位置でロックさせるロック機構とを備え、
前記ロック機構は、
大便器に着座した使用者が前記把持部を掴んで着座姿勢を保持するために、大便器に着座した使用者の脚部上方であって、大便器の左右方向と略平行な位置で前記把持部の回動をロックさせる第一のロック位置と、
車椅子に着座した使用者が前記把持部を掴んで車椅子から立ち上がる際に、大便器の前方に車椅子使用者が車椅子から立ち上がるための第一のスペースが形成されるよう前記第一のロック位置よりも大便器の前方側の位置で前記把持部の回動をロックさせる第二のロック位置とを有しており、
更に前記ロック機構は、
車椅子から立ち上がった使用者が前記把持部を掴みながら前記第二のロック位置から前記第一のロック位置に向けて前記把持部を回動させる際に、大便器の前方に使用者が大便器に着座するための前記第一のスペースよりも小さい第二のスペースが形成されるよう、前記第一のロック位置と前記第二のロック位置との間で前記把持部をロックさせる第三のロック位置と、
が設けられていることを特徴とするトイレ用手摺装置。
【請求項2】
前記第三のロック位置は、前記把持部の延在方向が前記大便器の左右方向に対して傾斜した状態となるよう構成されるとともに、
前記第一のロック位置から前記大便器の前方スペース側へ45度未満の間の位置で回動をロックすることを特徴とする請求項1記載のトイレ用手摺装置。
【請求項3】
前記第二のロック位置は、前記把持部の延在方向が前記大便器の左右方向に対して傾斜した状態となるよう構成されており、
前記第一のロック位置から前記第二のロック位置までの回動角度は、前記第一のロック位置から前記第三のロック位置までの回動角度よりも大きくなるよう構成されていることを特徴とする請求項2記載のトイレ用手摺装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰掛式の大便器が設けられたトイレルーム内に入室した車椅子使用者の大便器使用に伴う動作をサポートするトイレ用手摺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トイレルームには、大便器使用に伴う動作をサポートするトイレ用手摺装置が広く普及している。
【0003】
特許文献1には、使用者が把持する把持部と、把持部の一端側に設けられ、把持部を水平方向に回動させる回動軸部と、把持部の回動を所定の位置でロックさせるロック機構とを備えたトイレ用手摺装置が開示されている。この特許文献1のロック機構は、大便器に着座した使用者が把持部を掴んで着座姿勢を保持するために、大便器に着座した使用者の脚部上方であって、大便器の左右方向と略平行な位置で把持部の回動をロックできることが開示されている。また、トイレ用手摺装置の不使用時に把持部が邪魔にならないようにするために、トイレルームの側壁面に沿う位置で把持部の回動をロックできることが開示されている。
【0004】
例えば、車椅子使用者が上記特許文献1に記載されたトイレ用手摺装置を用いた場合、把持部の回動を上述したトイレルームの側壁面と沿う位置でロックさせることで、車椅子に着座した使用者が把持部を掴んで車椅子から立ち上がることができる。また、把持部の回動を上述した大便器に着座した使用者の脚部上方であって、大便器の左右方向と略平行な位置でロックさせることで、大便器に着座した使用者が把持部を掴んで着座姿勢を保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−185267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載されたトイレ用手摺装置は、上述した通り、車椅子からの立ち上がり動作と大便器に着座した状態の姿勢保持動作をサポートすることはできるが、車椅子から立ち上がってから大便器に着座するまでの移動動作をサポートすることは考えられておらず、この移動動作においては介護者の補助が必要となっていた。
【0007】
本発明者らは、車椅子からの立ち上がり動作と大便器に着座した状態の姿勢保持動作のサポートだけでなく、車椅子から立ち上がってから大便器に着座するまでの移動動作もサポートできるトイレ用手摺装置を提供することを目的として鋭意検討を行った。具体的には、車椅子から立ち上がった使用者が把持部に掴まりながら把持部を回動させ、大便器の前方まで移動できるトイレ用手摺装置を提供することを目指した。
【0008】
しかしながら、この大便器への移動動作は、後方への移動となるため大便器までの距離感が把握し難いという問題がある。特に、上述したように大便器に着座した状態の姿勢保持動作をサポートするために、便器に着座した使用者の脚部上方であって、大便器の左右方向と略平行な位置で把持部の回動がロックされるよう構成されているため、移動動作時に把持部を回動させ過ぎてしまうと、使用者が安定して立ち姿勢を維持できるためのスペースが大便器の前方に無くなった状態で把持部がロックされてしまうため、把持部に押されるようにして後方側の大便器に倒れ込んでしまうという新たな課題が生じた。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、車椅子からの立ち上がり動作と便器に着座した状態の姿勢保持動作をサポートするとともに、車椅子から立ち上がってから便器に着座するまでの移動動作も安定してサポートできるトイレ用手摺装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るトイレ用手摺装置は、腰掛式の大便器が設けられたトイレルーム内に取り付けられ、トイレルーム内に入室した車椅子使用者の動作をサポートするトイレ用手摺装置であって、使用者が把持する把持部と、前記把持部の一端側に設けられ、前記把持部を大便器の前方スペースにおいて水平方向に回動させる回動軸部と、前記把持部の回動を所定の位置でロックさせるロック機構とを備え、前記ロック機構は、大便器に着座した使用者が前記把持部を掴んで着座姿勢を保持するために、大便器に着座した使用者の脚部上方であって、大便器の左右方向と略平行な位置で前記把持部の回動をロックさせる第一のロック位置と、車椅子に着座した使用者が前記把持部を掴んで車椅子から立ち上がる際に、大便器の前方に車椅子使用者が車椅子から立ち上がるための第一のスペースが形成されるよう前記第一のロック位置よりも大便器の前方側の位置で前記把持部の回動をロックさせる第二のロック位置とを有しており、更に前記ロック機構は、車椅子から立ち上がった使用者が前記把持部を掴みながら前記第二のロック位置から前記第一のロック位置に向けて前記把持部を回動させる際に、大便器の前方に使用者が大便器に着座するための前記第一のスペースよりも小さい第二のスペースが形成されるよう、前記第一のロック位置と前記第二のロック位置との間で前記把持部をロックさせる第三のロック位置と、が設けられていることを特徴とする。
【0011】
第一の発明は、大便器に着座した使用者の脚部上方であって、大便器の左右方向と略平行な位置で把持部の回動をロックさせる第一のロック位置を設けることで、使用者は大便器に座った状態で把持部を掴んで大便器に着座した状態を保持することができる。
【0012】
また、車椅子に着座した使用者が把持部を掴んで車椅子から立ち上がる際に、大便器の前方に車椅子使用者が車椅子から立ち上がるための第一のスペースが形成されるよう第一のロック位置よりも大便器の前方側の位置で把持部の回動をロックさせる第二のロック位置を設けることで、車椅子から立ち上がる際のスペースを充分に確保することができるとともに、トイレ用手摺装置を利用して立ち上がることができるため、安定した状態で立ち上がることができる。
【0013】
さらに、車椅子から立ち上がった使用者が把持部を掴みながら第二のロック位置から第一のロック位置に向けて把持部を回動させる際に、大便器の前方に使用者が大便器に着座するための第一のスペースよりも小さい第二のスペースが形成されるよう、第一のロック位置と第二のロック位置との間で把持部をロックさせる第三のロック位置を設けることで、移動動作時に把持部を回動させ過ぎてしまうことがない。そのため、使用者が安定して立ち姿勢を維持できるためのスペースが大便器前方になくなった状態で把持部がロックされてしまうことがなく、把持部に押されるようにして後方側の大便器に倒れこんでしまうことを防止することができる。
上記のように、第一のロック位置と第二のロック位置と第三のロック位置を設けることで、車椅子使用者の車椅子からの立ち上がり動作から、大便器に着座にした状態を保持する間の全ての動作をサポートすることができる。このようなトイレ用手摺装置を提供することで、車椅子使用者は一人で全ての動作を行うことができる。
【0014】
第二の発明は、第三のロック位置を把持部の延在方向が大便器の左右方向に対して傾斜した状態となるように構成されるとともに、第一のロック位置から大便器の前方スペース側へ45度未満の間の位置で回動をロックすることで、使用者が大便器の前方に立った状態の保持や着座する際に必要となるスペースを確保することができる。さらに、把持部を掴んだ一方の腕は大便器に近い場所にあり、着座する際に腕に力が入れやすくなる。そのため、使用者は足の筋力に加えて、腕の力で体重を支えることができ、安定した状態で大便器に着座することができる。したがって、バランスを崩して勢いよく大便器に着座することや転倒することを防止することができる。
【0015】
第三の発明は、第二のロック位置を大便器の左右方向に対して傾斜させて設けるとともに、第一のロック位置から第二のロック位置までの回動角度は、第一のロック位置から第三のロック位置までの回動角度よりも大きい位置でロックすることで、第二のロック位置から第三のロック位置までの移動距離が短くなり、移動時に勢いがつくことがないため、第三のロック位置で、安定した状態で停止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車椅子からの立ち上がり動作と便器に着座した状態の姿勢保持動作をサポートするとともに、車椅子から立ち上がってから便器に着座するまでの移動動作も安定してサポートできるトイレ用手摺装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るトイレ用手摺装置が設置されたトイレルームを模式的に示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るトイレ用手摺装置が設置されたトイレルームを模式的に示す側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るトイレ用手摺装置が設置されたトイレルームを模式的に示す上面図である。
図4】トイレ用手摺装置の把持部の回動を例示する模式図である。
図5】本実施形態のトイレ用手摺装置を利用して大便器に着座した状態の保持を例示する模式図である。
図6】本実施形態のトイレ用手摺装置の第二のロック位置を例示する模式図である。
図7】本実施形態のトイレ用手摺装置を利用して車椅子からの立ち上がり動作を例示する模式図である。
図8】本実施形態のトイレ用手摺装置の第三のロック位置を例示する模式図である。
図9】本実施形態のトイレ用手摺装置の第二のロック位置から第三のロック位置までの移動を例示する模式図である。
図10】本実施形態のトイレ用手摺装置を利用して大便器に着座する際の動作について例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要件に対しては、可能な限り同一の符合を付して、重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るトイレ用手摺装置が設置されたトイレルームを模式的に示す斜視図である。
また、図2は本発明の一実施形態に係るトイレ用手摺装置が設置されたトイレルームを模式的に示す側面図である。
また、図3は本発明の一実施形態に係るトイレ用手摺装置が設置されたトイレルームを模式的に示す上面図である。
【0020】
トイレルーム100には、腰掛式の大便器110が設置されている。そして、大便器110の前方に、本実施形態のトイレ用手摺装置1が設けられている。このトイレ用手摺装置1は、使用者1000が把持することができる把持部2と、把持部2の一端側にトイレルーム100の大便器110前方の空間を水平方向に回動可能とする回動軸部3を設けている。さらに、回動軸部3によって水平方向に回動される把持部2をロックするロック機構4とを備える。本実施例の一例として、具体的には図3のように、トイレ用手摺装置1の回動軸部3を使用者1000が大便器110に着座した状態の右側のトイレルーム100壁面に設け、回動軸部3を中心にして大便器110の前方のスペースを水平方向に回動させる。
【0021】
回動軸部3は、使用者1000が大便器110に着座した状態の右側のトイレルーム100壁面に設けられる必要はなく、大便器110の前方スペースを水平方向に回動できればよい。従って、大便器110の前方スペースを水平方向に回動できれば、回動軸部3の設置場所は任意に設定できる。
【0022】
図4は、トイレ用手摺装置の把持部の回動を例示する模式図である。
トイレ用手摺装置1の把持部2は、大便器110の前方空間を水平方向に回動可能な構成となっており、ロック機構4によって、水平方向に回動可能な把持部2を所定の位置で回動をロックすることができる。所定の位置の具体例は図4のように、大便器110に着座した状態を保持することができる第一のロック位置5と、車椅子からの立ち上がりをサポートする第二のロック位置6と、使用者1000の移動時に倒れ込みを防止する第三のロック位置7である。
【0023】
図5は、本実施形態のトイレ用手摺装置を利用して大便器に着座した状態の保持を例示する模式図である。
使用者1000が大便器110に着座している用便時の姿勢は、前傾の姿勢をとることが一般的である。そこで、大便器110に着座した状態を保持する第一のロック位置5を使用者1000が大便器110に着座した状態の脚部上方の位置で回動をロックするように構成する。このような構成とすることで、使用者1000はトイレ用手摺装置1の把持部2を掴んで体重を支えることができるため、大便器110に着座した姿勢を安定した状態で保持することができる。
なお、第一のロック位置5は、大便器110前端上方から大便器110前方空間側150mmの間にあることが好ましい。
【0024】
図6は、本実施形態のトイレ用手摺装置の第二のロック位置を例示する模式図である。
第二のロック位置6は、使用者1000が車椅子から立ち上がるために必要な第一のスペース8を確保しつつ、大便器110の左右方向に対して傾斜するようにして第一のロック位置5から第二のロック位置6までの角度は第一のロック位置5と第三のロック位置7までの角度より大きくなるように設けられる。
具体的には、図6のように、使用者1000が把持部2に接近した際に、車椅子から立ち上がるスペースである第一のスペース8が確保されているため、車椅子1100からの立ち上がりをスムーズに行うことができ、安定した状態で立ち上がることができる。さらに、把持部2は、大便器110の左右方向に対して傾斜するように設けられることから、使用者1000が把持部に接近した際に、把持部2の回動軸部3の逆方の端部は使用者に近い所に位置するため、使用者1000は車椅子1100に座った状態であっても把持部2を掴み易く、トイレ用手摺装置1を利用しやすい。
【0025】
第二のロック位置6は、第一のロック位置5から大便器110の前方方向へ35度から90度の間の位置が好ましい。更に好ましくは第一のロック位置5から大便器110前方側へ45度の位置である。
【0026】
図7は、本実施形態のトイレ用手摺装置を利用して車椅子からの立ち上がり動作を例示する模式図である。
使用者1000が車椅子1100から立ち上がる動作は、トイレ用手摺装置1の把持部2に接近し、車椅子1100から立ち上がるために、第一のスペース8に足を下ろす。その後、立ち上がるために把持部2を掴み、トイレ用手摺装置1を利用しながら車椅子から立ち上がる。その際に、第一のスペース8を取りすぎると、トイレ用手摺装置1までの距離が遠くなってしまい、使用者1000が把持部2を掴むと腕が伸びた状態となり、腕に力が入れづらくなってしまうが、把持部2の回動軸部3の逆方の端部が、使用者1000に近い所に位置するため、使用者1000の腕は曲がった状態で把持部2を掴むことができる。さらに、第一のスペース8は十分に確保することができる。そのため、使用者1000は腕に力を入れやすく、足の筋力に加えて腕の力で立ち上がることができる。
【0027】
図8は、本実施形態のトイレ用手摺装置の第三のロック位置を例示する模式図である。
第三のロック位置7は、第一のロック位置5と第二のロック位置6との間にあり、大便器110の左右方向に対して傾斜させるとともに、使用者1000が着座に必要なスペースである第二のスペース9を確保するような位置である。
【0028】
第二のスペース9は、使用者1000が大便器110の前方に立った状態を維持できるとともに、大便器110への着座に必要な動作を行うことができるスペースである。
なお、第三のロック位置7は第一のロック位置5から大便器110から前方側に15度から30度の間にあることが好ましい。更に好ましくは第一のロック位置5から大便器110の前方側に22.5度の位置が望ましい。
【0029】
図9は、本実施形態のトイレ用手摺装置の第二のロック位置から第三のロック位置までの移動を例示する模式図である。
使用者1000は、第二のロック位置6で立ち上がり、大便器110へ向って移動を行う。車椅子使用者1000は、第二のロック位置6から第三のロック位置7までトイレ用手摺装置1の把持部2を掴んで、トイレ用手摺装置1にサポートされるようにして移動する。使用者1000は、大便器110までの距離感が把握しづらい後方への移動であっても、第二のスペース9が確保されて第三のロック位置7でロックされることで、把持部2が回動し過ぎることがないため、第二のスペース9が無くなり、トイレ用手摺装置1に押されるようにして後方側の大便器110に倒れ込むことがない。
【0030】
また、第二のロック位置6を大便器110の左右方向に対して傾斜させて設けると共に、第三のロック位置7を設けることで、第二のロック位置6から第三のロック位置7までの移動距離が短くなり、移動時に勢いがつくことがなく、使用者1000は安定した状態で第三のロック位置7で停止することができる。
【0031】
図10は、本実施形態のトイレ用手摺装置を利用して大便器に着座する際の動作について例示する模式図である。
使用者1000がトイレ用手摺装置1を利用して大便器110に着座する際は、トイレ用手摺装置1の把持部2に掴まりながら、徐々に後方へ移動して大便器110に着座する。その際に、使用者1000は後方へ移動するため、トイレ用手摺装置1の把持部2までの距離が長くなり、使用者1000の腕が伸びた状態となり力が入れづらくなってしまうが、第三のロック位置7を大便器110の左右方向に対して傾斜して設けることで、把持部2の回動軸部3周辺は使用者1000の近くに位置するため、使用者1000が着座するために後方へ移動したとしても、腕が伸びきることがない。そのため、使用者1000は足の筋力に加えて、腕の力で体重を支えつつ大便器110に着座することができる。したがって、使用者1000はゆっくりと安定した状態で大便器110に着座することができる。
【0032】
以上のような構成とすることで、車椅子からの立ち上がり動作と便器に着座した状態の姿勢保持動作をサポートするとともに、車椅子から立ち上がってから便器に着座するまでの移動動作も安定してサポートできる。
【符号の説明】
【0033】
1:トイレ用手摺装置
2:把持部
3:回動軸部
4:ロック機構
5:第一のロック位置
6:第二のロック位置
7:第三のロック位置
8:第一のスペース
9:第二のスペース
100:トイレルーム
110:大便器
1000:使用者

1100:車椅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10