(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記サイドリップは、前記ハブポケットの前記外周面の前記オイルシール側の端部との間に前記環状の間隙を形成していることを特徴とする請求項1記載のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造。
前記サイドリップは、前記ハブポケットの前記外周面と対向して、前記サイドリップと前記ハブポケットの前記外周面との間に前記環状の間隙を形成していることを特徴とする請求項1記載のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造。
前記ハブポケットの前記拡径する外周面の前記軸線に対する角度である拡径角度は4°以上18°以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造。
前記ハブポケットの前記拡径する外周面の前記軸線に対する角度である拡径角度と前記サイドリップの前記軸線に対する角度である傾斜角度との差である隙間角度差は1.0°以上11.0°以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造。
前記ハブは前記ハブの前記ボス部に取り外し可能に取り付けられた環状の付属環部材を有しており、該付属環部材に前記ハブポケットの前記外周面が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造。
前記トーショナルダンパの前記ハブの前記円盤部は、該円盤部を貫通する窓部を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造。
前記トーショナルダンパの前記ハブの前記円盤部は、該円盤部を貫通する窓部を備えることを特徴とする請求項8記載のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分断面図である。本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造は、自動車のエンジンに適用されている。以下、説明の便宜上、軸線x方向において矢印a(
図1参照)方向を外側とし、軸線x方向において矢印b(
図1参照)方向を内側とする。より具体的には、外側とは、エンジンから離れる方向であり、内側とは、エンジンに近づく方向でありエンジン側である。また、軸線xに垂直な方向(以下、「径方向」ともいう。)において、軸線xから離れる方向(
図1の矢印c方向)を外周側とし、軸線xに近づく方向(
図1の矢印d方向)を内周側とする。
【0024】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1は、トーショナルダンパとしてのダンパプーリ10と、オイルシール20とを備える。ダンパプーリ10はエンジンのクランクシャフト51の一端にボルト52によって固定されており、オイルシール20は、エンジンのフロントカバー53の貫通穴54とダンパプーリ10との間を密封している。
【0025】
ダンパプーリ10は、ハブ11と、質量体としてのプーリ12と、ハブ11とプーリ12との間に配設されたダンパ弾性体13とを備える。ハブ11は、軸線xを中心とする環状の部材であり、内周側のボス部14と、外周側のリム部15と、ボス部14とリム部15とを接続する略円盤状の円盤部16とを備える。ハブ11は、例えば、金属材料から鋳造等によって製造されている。
【0026】
ハブ11において、ボス部14は、貫通穴14aが形成された軸線xを中心とする環状の部分であり、外側の部分の外周面から外周方向に円盤部16が延びている。ボス部14は、円筒状の内側の部分の外周側の面である外周面14bを備え、外周面14bは滑らかな面となっており、後述するように、オイルシール20のシール面となっている。リム部15は、軸線xを中心とする環状の、より具体的には円筒状の部分であり、ボス部14に対して同心的にボス部14よりも外周側に位置する部分である。リム部15の内周側の面である内周面15aからは円盤部16が内周方向に延びている。リム部15の外周側の面である外周面15bにはダンパ弾性体13が圧着されている。
【0027】
円盤部16は、ボス部14とリム部15との間に延びて、ボス部14とリム部15とを接続している。円盤部16は、軸線xに対して垂直な方向に延びていてもよく、軸線xに対して傾斜する方向に延びていてもよい。また、円盤部16は、軸線xに沿う断面(以下、単に「断面」ともいう。)が湾曲した形状であっても、真っ直ぐに延びる形状であってもよい。また、
図1,2に示すように、円盤部16には、円盤部16を内側と外側との間で貫通する貫通穴である窓部16aが少なくとも1つ形成されており、本実施の形態においては、4つの窓部16aが軸線xに対して同心的に周方向に等角度間隔で形成されている(
図2参照)。この窓部16aによって、ハブ11、ひいてはダンパプーリ10の軽量化が図られている。
【0028】
プーリ12は、軸線xを中心とする環状の部材であり、ハブ11を外周側において覆うような形状を呈している。具体的には、プーリ12の内周側の面である内周面12aは、ハブ11のリム部15の外周面15bに対応した形状を有しており、
図1に示すように、プーリ12は、その内周面12aがリム部15の外周面15bに径方向において間隔を空けて対向するように位置している。また、プーリ12の外周側の面である外周面12bには、環状のv溝12cが複数形成されており、図示しないタイミングベルトが巻回可能になっている。
【0029】
ダンパ弾性体13は、プーリ12とハブ11のリム部15との間に設けられている。ダンパ弾性体13は、ダンパゴムであり、耐熱性、耐寒性、及び疲労強度において優れたゴム状弾性材料から架橋(加硫)成形されて形成されている。ダンパ弾性体13は、プーリ12とハブ11のリム部15との間に圧入されており、プーリ12の内周面12aとリム部15の外周面15bとに嵌着されて固定されている。
【0030】
ダンパプーリ10において、プーリ12とダンパ弾性体13とがダンパ部を形成しており、ダンパ部の捩り方向固有振動数が、クランクシャフト51の捩れ角が最大となる所定の振動数域である、クランクシャフト51の捩り方向固有振動数と一致するように同調されている。つまり、ダンパ部の捩り方向固有振動数がクランクシャフト51の捩り方向固有振動数と一致するように、プーリ12の円周方向の慣性質量と、ダンパ弾性体13の捩り方向剪断ばね定数とが調整されている。
【0031】
また、ダンパプーリ10は、ハブ11のボス部14に沿って周方向に延びる、円盤部16方向(外側方向)に凹む軸線xを中心とする環状のハブポケット30を有する。ハブポケット30の詳細については、
図3を用いて後述する。
【0032】
上述のように、ダンパプーリ10は、エンジンにおいてクランクシャフト51の一端に取り付けられている。具体的には、
図1に示すように、クランクシャフト51の一端がハブ11のボス部14の貫通穴14aに挿通され、外側からボルト52がクランクシャフト51に螺合されて、ダンパプーリ10がクランクシャフト51に固定されている。また、クランクシャフト51とボス部14との間には、クランクシャフト51とボス部14とに係合する半月キー等のキーが設けられて、ダンパプーリ10がクランクシャフト51に対して相対回動不能になっている。
【0033】
クランクシャフト51に取り付けられた状態において、ダンパプーリ10は、ボス部14の外周面14bを有する内側の部分がフロントカバー53の貫通穴54内に挿通された状態になっており、ボス部14の外周面14bと、フロントカバー53の貫通穴54との間に環状の空間が形成されている。
【0034】
オイルシール20は、
図1に示すように、軸線xを中心とする環状の金属製の補強環21と、軸線xを中心とする環状の弾性体から成る弾性体部22とを備える。弾性体部22は、補強環21に一体的に取り付けられている。補強環21の金属材としては、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)がある。弾性体部22の弾性体としては、例えば、各種ゴム材がある。各種ゴム材としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H−NBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムである。
【0035】
補強環21は、例えば、断面略L字状の形状を呈しており、円盤部21aと、円筒部21bとを備える。円盤部21aは、軸線xに略垂直な方向に広がる中空円盤状の部分であり、円筒部21bは、円盤部21aの外周側の端部から軸線x方向において内側に延びる円筒状の部分である。
【0036】
弾性体部22は、補強環21に取り付けられており、本実施の形態においては補強環21を外側及び外周側から覆うように補強環21と一体的に成形されている。弾性体部22は、リップ腰部23と、シールリップ24と、ダストリップ25とを備える。
図1に示すように、リップ腰部23は、補強環21の円盤部21aにおける内周側の端部の近傍に位置する部分であり、シールリップ24は、リップ腰部23から内側に向かって延びる部分であり、補強環21の円筒部21bに対向して配置されている。ダストリップ25は、リップ腰部23から軸線x方向に向かって延びている。
【0037】
シールリップ24は、内側の端部に、断面形状が内周側に向かって凸の楔形状の環状のリップ先端部24aを有している。リップ先端部24aは、後述するように、ハブ11のボス部14の外周面14bが摺動可能に外周面14bに密接して接触するように形成されており、ダンパプーリ10との間を密封するようになっている。また、シールリップ24の外周部側には、シールリップ24を径方向において内側に押し付けるガータースプリング26が嵌着されている。
【0038】
ダストリップ25は、リップ腰部23から延びる部位であり、外側且つ内周側に延出している。ダストリップ25により、使用状態におけるリップ先端部24a方向への異物の侵入の防止が図られている。
【0039】
また、弾性体部22は、後方カバー27と、ガスケット部28とを備える。後方カバー27は、補強環21の円盤部21aを外側から覆い、ガスケット部28は、補強環21の円筒部21bを外周側から覆っている。
【0040】
また、オイルシール20は、外側方向に向かって延びるサイドリップ29を備える。サイドリップ29の詳細については、
図3を用いて後述する。
【0041】
補強環21は、例えばプレス加工や鍛造によって製造され、弾性体部22は成形型を用いて架橋(加硫)成型によって成形される。この架橋成型の際に、補強環21は成形型の中に配置されており、弾性体部22が架橋(加硫)接着により補強環21に接着され、弾性体部22が補強環21と一体的に成形される。
【0042】
上述のように、オイルシール20は、フロントカバー53の貫通穴54と、ダンパプーリ10のボス部14の外周面14bとの間に形成される空間を密封している。具体的には、オイルシール20は、フロントカバー53の貫通穴54に圧入されて取り付けられ、弾性体部22のガスケット部28が圧縮されて貫通穴54の内周側の面である内周面54aに液密に当接している。これにより、オイルシール20とフロントカバー53の貫通穴54との間が密閉されている。また、シールリップ24のリップ先端部24aが、ハブ11のボス部14の外周面14bに液密に当接し、オイルシール20とダンパプーリ10との間が密閉されている。
【0043】
次いで、ダンパプーリ10の有するハブポケット30と、オイルシール20のサイドリップ29とについて
図3を参照して説明する。
図3は、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1の部分拡大図である。
【0044】
図3に示すように、ハブポケット30は、ダンパプーリ10において、円盤部16より内側に形成されており、ボス部14の外周面14bを取り囲んで延びる環状の円盤部16方向に凹む凹部である。具体的には、ハブポケット30は、ボス部14の外周面14bに外周側において対向する環状の外周面31と、外周面31とボス部14の外周面14bとの間に延びる底面32とを備え、外周面31、底面32、及びボス部14の外周面14bとによって画成されている。
【0045】
ハブポケット30の外周面31は、軸線x方向において円盤部16方向(外側方向)に向かうに連れて拡径しており、軸線x方向において円盤部16方向(外側方向)に向かうに連れて外周側に広がる環状の面であり、例えば、略円錐面状のテーパ面である。
【0046】
ハブポケット30は、ハブ11の円盤部16から内側方向に延びる環状の突条部によって形成されていてもよく、また、円盤部16に外側方向に凹む凹部が形成されることにより形成されていてもよい。また、ハブポケット30は、これらの突条部と凹部との組み合わせであってもよい。円盤部16から内側方向に延びる環状の突条部によってハブポケット30が形成される場合は、この突条部の内周側の面がハブポケット30の外周面31を形成する。また、円盤部16に外側方向に凹む凹部が形成されることによりハブポケット30が形成される場合は、この凹部の外周側の面がハブポケット30の外周面31を形成する。本実施の形態においては、
図3に示すように、ハブ11の円盤部16から軸線x方向において内側方向に突出する環状の突条部33が形成されており、この突条部33によって外周面31が形成されてハブポケット30が形成されている。
【0047】
ハブポケット30の底面32は、ハブ11の円盤部16の内側の面によって形成されてもよく、ハブ11の円盤部16の内側の面よりも内側に形成されてもよく、ハブ11の円盤部16の内側の面に凹部を形成することによって形成されてもよい。
【0048】
ハブポケット30の上述のように拡径する外周面31の軸線xに対する角度である拡径角度αは所定の値となっている。拡径角度αは、具体的には、
図3に示すように、断面において、軸線x(軸線xと平行な直線)と外周面31との間の角度である。ハブポケット30の外周面31の拡径角度αは、0°よりも大きい角度であり、好ましくは、4°以上18°以下であり、より好ましくは、5°以上16°以下であり、さらに好ましくは、7°以上15°以下である。このように、ハブポケット30の外周面31は、軸線xに対して拡径角度αだけ外周側に向かって傾斜している。
【0049】
オイルシール20のサイドリップ29は、
図3に示すように、外側方向に延びており、より具体的には、軸線xに平行に、または、外側方向及び外周方向に軸線xに対して斜めに延びている。また、サイドリップ29の外側の端部である外側端29aは、径方向において、ハブポケット30の外周面31の内側の端部である内側端31aよりも内周側に位置していると共に、軸線x方向(外側方向)において、ハブポケット30の内部に進入していない。つまり、オイルシール20のサイドリップ29とハブポケット30の外周面31とは、径方向において互いに重なり合っていない。
【0050】
このようサイドリップ29とハブポケット30により、サイドリップ29の外側端29aとハブポケット30の外周面31の内側端31aとの間には、環状の間隙g1が形成されている。
【0051】
サイドリップ29の外側端29aとハブポケット30の外周面31の内側端31aとが形成する環状の間隙g1は、ラビリンスシールを形成している。このため、ダンパプーリ10とフロントカバー53との間に加えて、ハブ11の円盤部16の窓部16aを介して外部から泥水や砂、ダスト等の異物が侵入してきても、サイドリップ29とハブポケット30とが形成するラビリンスシール(間隙g1)によって、侵入してきた異物が更にシールリップ24側に侵入することが抑制されている。これにより、上述のようにダンパプーリ10から侵入する異物にオイルシール20のシールリップ24が曝されることを抑制することができる。このため、リップ先端部24aが異物を噛み込んで損傷又は劣化し、オイルシール20のシール性能が低下してオイルが漏洩してしまうことを抑制することができる。なお、ダンパプーリ10から侵入する異物とは、ダンパプーリ10とフロントカバー53との間を介して外部から侵入する異物、及びハブ11の円盤部16の窓部16aを介して外部から侵入する異物を含む。
【0052】
また、ラビリンスシール(間隙g1)を形成しているハブポケット30の外周面31が、上述のように、外側に向かうに連れて拡径する形状を呈しているので、ラビリンスシールにおいて、異物が更にシールリップ24側に侵入することをより効果的に抑制することができる。
【0053】
ラビリンスシール(間隙g1)を形成しているハブポケット30の外周面31が、上述のように、上記所定の拡径角度αで外側に向かうに連れて拡径する形状を呈しているので、ラビリンスシールにおいて、異物が更にシールリップ24側に侵入することを更に効果的に抑制することができる。
【0054】
上述のように、本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1は、ダンパプーリ10とフロントカバー53との間から侵入する異物に、ダンパプーリ10の窓部16aから侵入する異物を加えた、ダンパプーリ10から侵入する異物にオイルシール20のシールリップ24が曝されることを抑制することができる。
【0055】
なお、ハブポケット30を形成する突条部33の外周側の面である外周面33a(
図3参照)は、軸線x方向において内側に向かうに連れて外周側に広がる環状の面、例えば円錐面状のテーパ面を形成していてもよい。この場合、ダンパプーリ10から侵入する異物を突条部33の外周面33aに堆積させてオイルシール20に異物が到達することを抑制することができる。また、突条部33の外周面33aに堆積した異物は、その自重によって、または、ダンパプーリ10の回転によって、下方に排出することができる。
【0056】
次いで、本発明の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1の密封性能について説明する。
【0057】
[評価試験1:拡径角度αの評価]
本発明者は、拡径角度αが異なる上記本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1を製作し(試験例1〜4)、これらのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1の密封性能の評価試験を行った。ただし、試験例4は、上記本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1に対して拡径角度αをα=0°としたトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造である。また、密封性能の評価の便宜上、実施例1〜4においては、オイルシール20における弾性体部22のシールリップ24、ダストリップ25、及びガータースプリング26の形成を省略した(
図4参照)。
【0058】
試験例1においては、ハブポケット30の外周面31の拡径角度αをα=7.2°とし、ハブポケット30の外周面31の内側端31aにおける直径φをφ=52.0mmとした。試験例2においては、拡径角度αをα=14.4°とし、ハブポケット30の外周面31の内側端31aにおける直径φをφ=52.0mmとした。試験例3においては、拡径角度αをα=21.6°とし、ハブポケット30の外周面31の内側端31aにおける直径φをφ=52.0mmとした。試験例4においては、拡径角度αをα=0°とし、ハブポケット30の外周面31の内側端31aにおける直径φをφ=54.2mmとした。なお、試験例1〜4において、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31との軸線x方向に亘る重なり合い量(オーバーラップ量)は0mmである。また、試験例1〜4において、補強環21及び弾性体部22の材料は、夫々、EPDM及びFC250とした。
【0059】
図5は、上記密封性能の評価試験に用いる密封性能試験機70の概略構成を示すための図であり、
図5(a)は部分断面斜視図であり、
図5(b)は部分拡大断面図である。
図5に示すように、密封性能試験機70は、図示しないモータによって回動可能なダミークランクシャフト71と、モータ72によって回動可能な撹拌羽根73と、ダミーフロントカバー74とを備える。ダミーフロントカバー74には、円筒状のカバー75が取り付けられており、カバー75は、内部に、試験例1〜4に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造と撹拌羽根73を収容し、これらの周りに密封空間を形成している。また、ダミーフロントカバー74の貫通穴74aにおいて、試験例1〜4におけるオイルシールの外部側には、ダミークランクシャフト71とダミーフロントカバー74との間を外部に対して密封するシール部材76が取り付けられている。このように、密封性能試験機70において、試験例1〜4に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造の周辺空間は密封されている。そして、カバー75の内部には異物としてのダスト77が堆積されている。ダスト77としては、JIS試験用粉体1(1種及び8種)、または、JIS Z8901:2006記載の試験用粉体の1種又は3種(以下、「JIS1種」、「JIS3種」ともいう。)が用いられている。また、
図5(b)に示すように、ダミーフロントカバー74とダンパプーリ10のプーリ12との間の軸方向の間隔βはβ=2.5mmとなっている。
【0060】
図6は、評価試験に用いるトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1のハブポケット30の近傍を拡大して示す図である。
図6に示すように、評価試験においては、ダンパプーリ10のハブ11に軸線xを中心とする環状の凹部を形成し、この凹部にハブポケット30に対応する溝が形成された環状部材であるアタッチメントAを着脱可能に固定することによりハブポケット30が形成されたダンパプーリ10が用いられている。なお、
図6においては、便宜上、サイドリップ29がハブポケット30にオーバーラップしているように記載されている。
【0061】
密封性能の評価試験は、撹拌羽根73をモータ72により回転させて、カバー75内に堆積されたダストを撹拌し、サイドリップ29とハブポケット30との間の間隙g1を通過したダストの量(ダスト侵入量)を計測することにより行った。また、評価試験においては、ダミークランクシャフト71を回転させ、ダンパプーリ10とオイルシール20とを使用状態に近似させ、また、周辺温度を室温とした。評価試験は1時間行った。
【0062】
本密封性能の評価試験の結果を以下の表1に示す。
【表1】
表1に示すように、拡径角度αが0°である試験例4と拡径角度αが0°よりも大きい試験例1,2とを比較すると、拡径角度αが0°よりも大きいハブポケット30とサイドリップ29とが形成するラビリンスシール(間隙g1)の密封性能が高いことが分かる。また、拡径角度αが4°以上18°以下の範囲内にある試験例1及び試験例2は、ダスト侵入量が夫々2.1g及び1.0gであり、サイドリップ29及びハブポケット30が形成するラビリンスシール(間隙g1)の密封性能が高い。一方、拡径角度αが4°以上18°以下の範囲内にない試験例3は、ダスト侵入量が8.1gであり、試験例1,2と比較してサイドリップ29及びハブポケット30が形成するラビリンスシール(間隙g1)の密封性能が低い。このように、試験例1及び試験例2に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1は、ダンパプーリ10から侵入する異物にオイルシール20のシールリップ24が曝されることを大幅に抑制することができることが分かった。つまり、拡径角度αが4°以上18°以下の範囲内にあるトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1は、ダンパプーリ10から侵入する異物にオイルシール20のシールリップ24が曝されることを大幅に抑制することができることが分かった。
【0063】
[評価試験2:隙間角度差δの評価]
本発明者は、ハブポケット30の外周面31の拡径角度αとサイドリップ29の軸線xに対する傾斜角度(傾斜角度γ)(
図6参照)との組み合わせが異なる上記本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1を製作し(試験例11〜20)、これらのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造の密封性能の評価試験を行った。ただし、試験例11は、上記本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1に対して拡径角度αをα=0°としたトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造である。本試験例11〜20に係る密封構造の密封性能の評価試験は、上述の試験例1〜4の密封装置に対する評価試験と同様に試験用の密封装置(
図4,6参照)と密封性能試験機70(
図5参照)とを用いて同様に行った。
【0064】
試験例11〜15においては、サイドリップ29の軸線xに対する傾斜角度γをγ=7.2°とし、各試験例においてハブポケット30の外周面31の拡径角度αを変え、ハブポケット30の拡径角度αとサイドリップ29の傾斜角度γとの差(隙間角度差δ=α―γ)を異なるものにした。また、試験例16〜20においては、サイドリップ29の傾斜角度γをγ=19.3°とし、各試験例においてハブポケット30の拡径角度αを変え、隙間角度差δを異なるものにした。
【0065】
具体的には、試験例11においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=0°とし、隙間角度差δをδ=−7.2°とした。なお、マイナスの隙間角度差δの値は、サイドリップ29がハブポケット30の外周面31よりも大きく傾斜していることを表す。試験例12においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=7.2°とし、隙間角度差δをδ=0°とした。試験例13においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=14.4°とし、隙間角度差δをδ=7.2°とした。試験例14においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=19.3°とし、隙間角度差δをδ=12.1°とした。また、試験例15においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=21.6°とし、隙間角度差δをδ=14.4°とした。また、試験例16においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=19.3°とし、隙間角度差δをδ=0°とした。試験例17においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=21.6°とし、隙間角度差δをδ=2.3°とした。試験例18においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=26.5°とし、隙間角度差δをδ=7.2°とした。試験例19においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=31.4°とし、隙間角度差δをδ=12.1°とした。試験例20においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=33.7°とし、隙間角度差δをδ=14.4°とした。
【0066】
本密封性能の評価試験の結果を
図7及び以下の表2に示す。
【表2】
図7及び表2に示すように、本評価試験から、隙間角度差δとダスト侵入量との間に関連性があることが分かった。そして、サイドリップ29の傾斜角度γの値がγ=7.2°であってもγ=19.3°であっても、隙間角度差δが1.0°以上11.0°以下である場合、ダスト侵入量が低減され、隙間角度差δが2.0°以上9.0°以下である場合、ダスト侵入量が更に低減され、隙間角度差δが3.0°以上8.0°以下である場合、ダスト侵入量がより低減される傾向が認められた。また、サイドリップ29の傾斜角度γの値がγ=7.2°であってもγ=19.3°であっても、隙間角度差δがδ=7.2°の場合、ダスト侵入量が最も低減される傾向が認められた。この評価結果から、サイドリップ29の傾斜角度γの値に拘らず、隙間角度差δが1.0°〜11.0°である場合にダスト侵入量を効果的に低減させることができ、隙間角度差δが2.0°〜9.0°である場合にダスト侵入量をより低減させることができ、隙間角度差δが3.0°〜8.0°である場合にダスト侵入量を更に低減させることができることが分かる。また、ダスト侵入量を低減させるためには、サイドリップ29の傾斜角度γの値に拘らず、隙間角度差δが7.2°であることが最も好ましいことが分かる。
【0067】
[評価試験3:ダンパプーリのボス部の軸径の評価]
また、本発明者は、ダンパプーリ10のボス部14の軸の直径である軸径d(
図6参照)と隙間角度差δとの組み合わせが異なる上記本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1を製作し(試験例21〜33)、これらのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造の密封性能の評価試験を行った。ただし、試験例21,25,30は、上記本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1に対して拡径角度αをα=0°としたトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造である。試験例21〜24においては、ボス部14の軸径dをd=35mmとし、試験例25〜29においては、ボス部14の軸径dをd=42mmとし、試験例30〜33においては、ボス部14の軸径dをd=50mmとした。また、本試験例21〜33に係る密封構造の密封性能の評価試験は、上述の試験例1〜4の密封装置に対する評価試験と同様に試験用の密封装置(
図4,6参照)と密封性能試験機70(
図5参照)とを用いて同様に行った。なお、本評価試験においては、夫々の軸径dの密封構造において、サイドリップ29の傾斜角度γ、間隙g1の径方向の幅である間隙幅a、サイドリップ29とハブポケット30とがオーバーラップしている量であるオーバーラップ量b、及びダンパプーリ10の円盤部16とオイルシール20との間の軸線x方向の間隔である間隔cは同じ値となっている。オーバーラップ量bはb=0であり、サイドリップ29の傾斜角度γはγ=7.2°である。
【0068】
具体的には、試験例21においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=0°とし、隙間角度差δをδ=−7.2°とした。試験例22においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=7.2°とし、隙間角度差δをδ=0°とした。試験例23においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=14.4°とし、隙間角度差δをδ=7.2°とした。試験例24においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=21.6°とし、隙間角度差δをδ=14.4°とした。また、試験例25においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=0°とし、隙間角度差δをδ=−7.2°とした。試験例26においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=7.2°とし、隙間角度差δをδ=0°とした。試験例27においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=14.4°とし、隙間角度差δをδ=7.2°とした。試験例28においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=19.3°とし、隙間角度差δをδ=12.1°とした。試験例29においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=21.6°とし、隙間角度差δをδ=14.4°とした。また、試験例30においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=0°とし、隙間角度差δをδ=−7.2°とした。試験例31においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=7.2°とし、隙間角度差δをδ=0°とした。試験例32においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=14.4°とし、隙間角度差δをδ=7.2°とした。試験例33においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=21.6°とし、隙間角度差δをδ=14.4°とした。
【0069】
本密封性能の評価試験の結果を
図8及び以下の表3に示す。
【表3】
図8及び表3に示すように、本評価試験から、軸径d=35,42,50mmの各々の密封構造においても、隙間角度差δとダスト侵入量との間に、上記評価試験2と同様の傾向が認められた。つまり、軸径d=35,42,50mmの夫々の密封構造においても、隙間角度差δが1.0°以上11.0°以下である場合、ダスト侵入量が低減され、隙間角度差δが2.0°以上9.0°以下である場合、ダスト侵入量が更に低減され、隙間角度差δが3.0°以上8.0°以下である場合、ダスト侵入量がより低減される傾向が認められた。また、軸径d=35,42,50mmの夫々の密封構造においても、隙間角度差δがδ=7.2°の場合、ダスト侵入量が最も低減されることが分かった。この評価結果から、ボス部14の軸径dの値が異なる各密封構造1において、隙間角度差δが1.0°〜11.0°である場合にダスト侵入量を低減させることができ、隙間角度差δが2.0°〜9.0°である場合にダスト侵入量をより低減させることができ、隙間角度差δが3.0°〜8.0°である場合にダスト侵入量を更に低減させることができることが分かる。また、ボス部14の軸径dの値が異なる各密封構造1において、隙間角度差δが7.2°である場合に、ダスト侵入量を最も低減させることができることが分かる。このように、ボス部14の軸径dの値に拘らず、隙間角度差δが7.2°である場合にダスト侵入量が最小となることが分かる。また、本評価試験から、間隙g1の通路面積が大きいほど、つまり軸径dが大きいほど、ダスト侵入量が大きくなることが分かった。
【0070】
[評価試験4:間隙g1の間隙幅aの評価]
また、本発明者は、サイドリップ29とハブポケット30とが形成する間隙g1の間隙幅aが異なる上記本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1を製作し(試験例41〜44)、これらのトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造の密封性能の評価試験を行った。また、本試験例41〜44に係る密封構造の密封性能の評価試験は、上述の試験例1〜4の密封装置に対する評価試験と同様に試験用の密封装置(
図4,6参照)と密封性能試験機70(
図5参照)とを用いて同様に行った。試験例41〜44の夫々においては、ハブポケット30の拡径角度α、サイドリップ29の傾斜角度γ、サイドリップ29とハブポケット30とのオーバーラップ量b、ダンパプーリ10の円盤部16とオイルシール20との間の間隔c、及びボス部14の軸径dは同じ値となっている。なお、オーバーラップ量bはb=0であり、サイドリップ29の傾斜角度γはγ=7.2°である。
【0071】
具体的には、試験例41においては、間隙g1の間隙幅aをa=2.1mmとし、試験例42においては、間隙g1の間隙幅aをa=1.6mmとし、試験例43においては、間隙g1の間隙幅aをa=1.1mmとし、試験例44においては、間隙g1の間隙幅aをa=0.6mmとした。
【0072】
本密封性能の評価試験の結果を
図9及び以下の表4に示す。
【表4】
図9及び表4に示すように、試験例41〜44において、ダスト侵入量に差はほとんど認められない。このように、本評価試験から、ボス部14の軸径dが一定であれば、間隙g1の間隙幅aが変化しても密封構造1の密封性能にほとんど影響が無いことが分かった。
【0073】
[評価試験5:試験用粉体の粒径の評価]
また、本発明者は、異物の大きさの違いが上記トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1の密封性能に与える影響について評価するために本評価試験を行った。本評価試験においては、隙間角度差δが異なる上記本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1を製作し(試験例51〜60)、JIS1種及びJIS3種の2つの異なる試験用粉体を別々に用いて、密封性能の評価試験を行った。ただし、試験例51,56は、上記本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1に対して拡径角度αをα=0°としたトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造である。JIS1種の試験用粉体の粒径は150μm以上であり、試験用粉体の量は5vol%であり、JIS3種の試験用粉体の粒径は5〜75μmであり、試験用粉体の量は5vol%である。本評価試験は、上述の試験例1〜4の密封装置に対する評価試験と同様に試験用の密封装置(
図4,6参照)と密封性能試験機70(
図5参照)とを用いて同様に行った。試験例51〜60の夫々においては、サイドリップ29の傾斜角度γ、間隙g1の間隙幅a、サイドリップ29とハブポケット30とのオーバーラップ量b、ダンパプーリ10の円盤部16とオイルシール20との間の間隔c、及びボス部14の軸径dは同じ値となっている。なお、オーバーラップ量bはb=0であり、サイドリップ29の傾斜角度γはγ=7.2°であり、軸径dはd=42mmである。
【0074】
具体的には、試験例51,56においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=0°とし、隙間角度差δをδ=−7.2°とした。試験例52,57においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=7.2°とし、隙間角度差δをδ=0°とした。試験例53,58においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=14.4°とし、隙間角度差δをδ=7.2°とした。試験例54,59においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=19.3°とし、隙間角度差δをδ=12.1°とした。また、試験例55,60においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=21.6°とし、隙間角度差δをδ=14.4°とした。
【0075】
本密封性能の評価試験の結果を
図10及び以下の表5に示す。
【表5】
図10及び表5に示すように、本評価試験から、試験用粉体として粒径の小さいJIS3種を使用した場合、JIS1種を使用する場合よりもダスト侵入量は減少したが、粒径の異なるJIS1,3種を使用した場合でも、各粒径の試験用粉体に対して、隙間角度差δとダスト侵入量との間に、上記評価試験2と同様の傾向が認められた。つまり、粒径の異なるJIS1,3種の夫々を試験用粉体として使用した密封構造においても、隙間角度差δが1.0°以上11.0°以下である場合、ダスト侵入量が低減され、隙間角度差δが2.0°以上9.0°以下である場合、ダスト侵入量が更に低減され、隙間角度差δが3.0°以上8.0°以下である場合、ダスト侵入量がより低減される傾向が認められた。また、粒径の異なるJIS1,3種の夫々を試験用粉体として夫々使用した密封構造においても、隙間角度差δがδ=7.2°の場合、ダスト侵入量が最も低減されることが分かった。この評価結果から、曝される異物の大きさに拘らず、密封構造1において、隙間角度差δが1.0°〜11.0°である場合にダスト侵入量を低減させることができ、隙間角度差δが2.0°〜9.0°である場合にダスト侵入量をより低減させることができ、隙間角度差δが3.0°〜8.0°である場合にダスト侵入量を更に低減させることができることが分かる。また、曝される異物の大きさに拘らず、密封構造1において、隙間角度差δが7.2°である場合に、ダスト侵入量を最も低減させることができることが分かる。
【0076】
次いで、本発明の第2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造について説明する。本発明の第2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造2は、上述の本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1に対して、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31とが形成する環状の間隙の形態のみが異なる。以下、上述の本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
【0077】
図11は、本発明の第2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造2の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大図である。
【0078】
図11に示すように、オイルシール20のサイドリップ29は、外側端29a側の部分が、ハブポケット30の内部に進入しており、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31とは互いに、径方向において、軸線x方向に亘って、重なり合っている。つまり、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31とは互いに径方向において対向しており、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31との間に環状の間隙g2を形成している。つまり、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31とはオーバーラップしている。
【0079】
サイドリップ29とハブポケット30の外周面31とが形成する環状の間隙g2は、ラビリンスシールを形成している。このため、上記密封構造1と同様に、ダンパプーリ10から侵入してきた異物が更にシールリップ24側に侵入することを抑制することができる。これにより、ダンパプーリ10から侵入する異物にオイルシール20のシールリップ24が曝されることを抑制することができ、リップ先端部24aが異物を噛み込んで損傷又は劣化し、オイルシール20のシール性能が低下してオイルが漏洩してしまうことを抑制することができる。
【0080】
後述するように、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31との軸線x方向に亘る重なり合い(オーバーラップ)の範囲が広いほど、間隙g2のラビリンスシールとしての密封性能は向上する。
【0081】
このように、本発明の第2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造2は、本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1と同様に、ダンパプーリ10から侵入する異物にオイルシール20のシールリップ24が曝されることを抑制することができる。
【0082】
次いで、本発明の第2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造2の密封性能について説明する。
【0083】
[評価試験6:オーバーラップ量bの評価]
本発明者は、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31とが軸線x方向に亘り重なり合う長さであるオーバーラップ量bの違いが上記トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造2の密封性能に与える影響について評価するために本評価試験を行った。本評価試験においては、各ハブポケット30の拡径角度αに対して異なるオーバーラップ量bを設定した上記本発明の第2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造2を製作し(試験例61〜77)、密封性能の評価試験を行った。ただし、試験例72〜77は、上記本発明の第2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造2に対して拡径角度αをα=0°としたトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造である。試験例61〜65においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=7.2°とし、試験例66〜71においては、ハブポケット30の拡径角度αをα=14.4°とした。本評価試験は、上述の試験例1〜4の密封装置に対する評価試験と同様に試験用の密封装置(
図4,6参照)と密封性能試験機70(
図5参照)とを用いて同様に行った。試験例61〜74の夫々においては、サイドリップ29の傾斜角度γ、及びボス部14の軸径dは同じ値となっている。なお、傾斜角度γはγ=7.2°である。また、試験例61〜70及び試験例72〜76においては、ハブポケット30が形成されたアタッチメントA(
図6参照)を軸線x方向において移動させることにより、オーバーラップ量bを下記の夫々の値に設定した。このため、試験例61〜70及び試験例72〜76においては、ダンパプーリ10の円盤部16とオイルシール20との間の間隔cが、設定されたオーバーラップ量に応じて異なる値となっている。一方、試験例71,77においては、ダンパプーリ10の円盤部16に対向するオイルシール20の弾性体部22の外側の面を切削して、間隔cの値が、試験例61,72(オーバーラップ量b=0)における間隔cの値と同一となるようにした。
【0084】
具体的には、試験例61,66,72においては、オーバーラップ量bをb=0mmとし、試験例62,67,71,73,77においては、オーバーラップ量bをb=0.6mmとし、試験例63,68,74においては、オーバーラップ量bをb=1.2mmとし、試験例64,69,75においては、オーバーラップ量bをb=1.8mmとし、試験例65,70,76においては、オーバーラップ量bをb=2.1mmとした。
【0085】
本密封性能の評価試験の結果を
図12及び以下の表6に示す。
【表6】
図12及び表6に示すように、本評価試験から、オーバーラップ量bとダスト侵入量との間に関連性があることが分かる。具体的には、各拡径角度αにおいて同様に、オーバーラップ量bが増加するに連れて、ダスト侵入量が減少していくことが分かる。また、
図12において塗り潰した○及び△は、試験例71,77の試験結果に夫々対応しており、間隔cがオーバーラップ量bの値に応じて減少された夫々同じオーバーラップ量b(b=0.6mm)を有する対応する試験例67,73と略同等の試験結果を示している。このため、本評価試験において、ダンパプーリ10の円盤部16とオイルシール20との間の間隔cは、ダスト侵入量に影響を与えないと考えることができる。
【0086】
このように、本発明の第2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造2において、オーバーラップ量bが多い程、間隙g2を超えて内部に侵入してくるダストの量を低減することができ、密封構造2の密封性能を高めることができることが分かった。本実施の形態に係る密封構造2において、具体的には、サイドリップ29の延び方向の長さを長くすることにより、オーバーラップ量bを多くすることが考えられるが、ゴム弾性体等の弾性部材から形成されているサイドリップ29は、その延び方向の長さが長くなると鉛直方向に自重で撓んでしまう。従って、オーバーラップ量bは多ければ多いほど好ましいが、オーバーラップ量bの上限値は、例えば、サイドリップ29が重力や使用状態で加えられる他の力に対して所望する形状を維持可能な範囲において設定される。また、
図12及び表6より、各拡径角度αの密封構造において、オーバーラップ量bが1.2mmから1.8mmに増加すると、ダスト侵入量は著しく減少しており、オーバーラップ量bの下限値は、1,2mm〜1.8mmの間の値、または、1.8mmが好ましいことが分かる。
【0087】
次いで、本発明の第3の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造について説明する。本発明の第3の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造3は、上述の本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1に対して、ハブポケット30を形成する構成が異なる。以下、上述の本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
【0088】
図13は、本発明の第3の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造3の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大断面図である。
図13に示すように、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造3におけるダンパプーリ10においては、ハブポケット30の外周面31及び底面32がハブ11に形成されていない。トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造3は、ダンパプーリ10に取り付けられたハブ11とは別体の付属環部材40を有しており、この付属環部材40にハブポケット30の外周面31及び底面32が形成されている。
【0089】
付属環部材40は、軸線xを中心とする中空環状の円盤状の部材であり、ダンパプーリ10のボス部14に嵌合可能に形成されており、一方の側面から凹部が形成されてハブポケット30の外周面31及び底面32が形成されている。具体的には、
図13に示すように、付属環部材40は、外周側の面である外周面40aと、ダンパプーリ10において、ボス部14に挿通された嵌合される貫通孔を形成する内周側の面である内周面40bとを有している。付属環部材40には、内側に面する側面である側面40cに外側に向かって凹む凹部が形成されて、ハブポケット30の外周面31及び底面32が形成されている。
【0090】
ダンパプーリ10のボス部14には、外周面14bに外側において続く外周面である段差面14cが形成されており、段差面14cは、外周面14bよりも大きな径を有しており、外周面14bよりも外側に突き出している。また、外周面14bと段差面14cとは滑らかに接続されている。付属環部材40は、内周面40bがボス部14の段差面14cに嵌合されてボス部14bに取り付けられている。
【0091】
付属環部材40は、固定部材41によってダンパプーリ10に相対移動不能に取り付けられている。付属環部材40はこの取り付けられた状態において、付属環部材40の外側に面する側面である側面40dが、円盤部16の側面に接触している。固定部材41は、例えば、ボルトやリベット、ピンであり、円盤部16に形成された軸線x方向に延びる貫通孔である貫通孔16bと、付属環部材40に形成された底面32と側面40dとの間を貫通する軸線x方向に延びる貫通孔40eとに係合して付属環部材40をダンパプーリ10に固定する。例えば、貫通孔16b及び貫通孔40eのいずれか一方又は両方がネジ穴となっており、ボルトである固定部材41がこのネジ穴に螺合されることにより、付属環部材40がダンパプーリ10に固定される。また、固定部材41がピン又はリベットである場合は、固定部材41は貫通孔16b及び貫通孔40eに嵌合若しくは係合されて付属環部材40がダンパプーリ10に固定される。付属環部材40の固定方法は上述のものに限られず、固定部材41としては他の公知の適用可能な固定方法を実現するものであってもよい。付属環部材40は固定部材41によってダンパプーリ10に固定されるため、強固に固定される。
【0092】
付属環部材40がダンパプーリ10に取り付けられた状態において、オイルシール20のサイドリップ29の外側端29aとハブポケット30の外周面31の内側端31aとの間には、上述のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1と同様に、環状の間隙g1が形成されている。
【0093】
付属環部材40の材料は、金属材料であっても樹脂材料であってもよく、例えば、ステンレス鋼やABS樹脂等である。付属環40の樹脂材料としては、エンジンルーム等の使用環境の雰囲気温度に耐えられる樹脂であることが好ましい。
【0094】
上述の本発明の第3の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造3は、本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1と同様な作用効果を奏することができ、ダンパプーリ10から侵入する異物にオイルシール20のシールリップ24が曝されることを抑制することができる。
【0095】
また、本発明の第3の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造3においては、付属環部材40にハブポケット30の外周面31及び底面32が形成されているので、ハブポケット30の加工を容易にすることができる。上述のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1,2においては、ハブポケット30がハブ11に形成されており、ハブポケット30は、鋳造により形成されたハブ11に対して切削加工を行うことにより形成される。ハブ11の重量は大きく、また、切削加工用の工具とボス部14とが干渉しないようにハブポケット30の加工作業を行う必要があり、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1,2においては、ハブポケット30の加工が難しい。一方、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造3においては、ハブ11とは別体の環状部材にハブポケット30の外周面31及び底面32を加工して付属環部材40を作成し、付属環部材40をダンパプーリ10に取り付けてハブポケット30を形成するので、ハブポケット30の加工を容易にすることができる。特に、ハブポケット30の傾斜面である外周面31の加工を容易にすることができる。
【0096】
また、本発明の第3の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造3においては、ダンパプーリ10のボス部14において、外周面14bの外側に外周方向に突出した段差面14cが形成されており、この段差面14cに付属環部材40が嵌合される。このため、付属環部材40の嵌合の際に、シールリップ24のリップ先端部24aの接触するリップ摺動面である外周面14bに損傷が与えられることの防止を図ることができる。
【0097】
次いで、本発明の第4の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造について説明する。本発明の第4の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造4は、上述の本発明の第3の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造3に対して、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31とが形成する環状の間隙の形態のみが異なる。また、本発明の第4の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造4は、上述の本発明の第2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造2に対して、ハブポケット30を形成する構成が異なり、付属環部材40を有している。以下、上述の本発明の第2,3の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造2,3と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
【0098】
図14は、本発明の第4の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造4の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大断面図である。
図14に示すように、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造4は、本発明の第2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造2と同様に、オイルシール20のサイドリップ29は、外側端29a側の部分が、ハブポケット30の内部に進入しており、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31とは互いに、径方向において、軸線x方向に亘って、重なり合っている(オーバーラップしている)。つまり、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31とは互いに径方向において対向しており、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31との間に環状の間隙g2を形成しており、ラビリンスシールを形成している。トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造4においては、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31とがオーバーラップするように、付属環部材40の外周面31が内側により長く延びている。若しくは、付属環部材40の取り付け位置が、本発明の第3の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造3における付属環部材40の取り付け位置よりも内側になるようになっている。若しくは、サイドリップ29が外側により長く延びている。
【0099】
上述の構成を有する本発明の第4の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造4は、上記本発明の第2,3の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造2,3と同様の作用効果を奏することができる。
【0100】
このように、本発明の第4の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造4は、上記本発明の第2,3の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造2,3と同様に、ダンパプーリ10から侵入する異物にオイルシール20のシールリップ24が曝されることを抑制することができる。
【0101】
次いで、上述の本発明の第3,4の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造3,4における付属環部材40の変形例について以下に説明する。
【0102】
図15は、本発明の第3,4の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造3,4における付属環部材40の第1の変形例の概略構造を示す断面図である。第1の変形例に係る付属環部材40´は、外周面40aが、軸線x方向において内側に向かうに連れて外周側に広がる環状の面、例えば円錐面状のテーパ面を形成している。これにより、ダンパプーリ10から侵入する異物を付属環部材40´の外周面40aに堆積させてオイルシール20に異物が到達することを抑制することができる。また、付属環部材40´の外周面40aに堆積した異物は、その自重によって、または、ダンパプーリ10の回転によって、下方に排出することができる。
図15においては、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造3に第1の変形例に係る付属環部材40´が取り付けられた状態が図示されているが、第1の変形例に係る付属環部材40´は、付属環部材40と同様に、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造4において適用することができる。本変形例に係る付属環部材40´を用いた場合であっても、上記本発明の第3,4の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造3,4と同様の効果を奏することができる。
【0103】
次いで、本発明の第5の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造について説明する。本発明の第5の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造5は、上述の本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1に対して、ハブポケット30を形成する構成が異なる。以下、上述の本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
【0104】
図16は、本発明の第5の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造5の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大断面図である。
図16に示すように、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造5におけるダンパプーリ10においては、ハブポケット30がハブ11に形成されていない。トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造5は、ダンパプーリ10に取り付けられたハブ11とは別体の付属環部材42を有しており、この付属環部材42にハブポケット30が形成されている。
【0105】
付属環部材42は、軸線xを中心とする中空環状の円環状の部材であり、ダンパプーリ10のボス部14に嵌合可能に形成されており、一方の側面から凹部が形成されてハブポケット30が形成されている。具体的には、
図16に示すように、付属環部材42は、軸線xを中心とする円筒状の部分である円筒部42aと、円筒部42aの外側の端部から径方向において外周側に延びる円盤状の部分である円盤部42bと、円盤部42bの外周側の端部から内側に向かって延びる部分である外周部42cとを有している。付属環部材42は、金属材料から形成されており、一つの金属部材、例えば金属板がプレス加工等をされて付属環部材42に成形される。円筒部42a、円盤部42b、外周部42は、同一の材料から一体に形成されており、同一の又は略同一の厚さを有している。付属環部材42の金属材料としては、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)がある。
【0106】
図16に示すように、付属環部材42は、円筒部42a、円盤部42b、及び外周部42cが空間を画成して、ハブポケット30を形成している。具体的には、外周部42cの内周側の面がハブポケット30の外周面31を形成しており、外周部42cは、軸線xに対してハブポケット30の外周面31と同じ角度(傾斜角度α)で傾斜して延びている。また、円盤部42bの内側の面がハブポケット30の底面32を形成しており、円筒部42aの外周側の面である外周面42dがハブポケット30の外周面31に対向する内周側の面を形成している。
【0107】
また、付属環部材42の円筒部42aは、ダンパプーリ10のボス部14に嵌合可能に形成されており、付属環部材42がボス部14に取り付けられた状態において、円筒部42aの内周側の面である内周面42eはボス部14の外周面14bに密接している。また、付属環部材42は、円筒部42aがボス部14に嵌合されて、ダンパプーリ10のハブ11に対して相対移動不能に取り付けられる。このとき、付属環部材42の円盤部42bはハブ11の円盤部16に当接されていてもよく、所定の間隔を空けて離れていてもよい。
【0108】
また、付属環部材42の円筒部42aは、
図16に示すように、オイルシール20のリップ先端部24aまで、若しくはリップ先端部24aを超えて、内側に延びており、円筒部42aの外周面42dは、リップ先端部24aに摺動可能に接触している。このように、本実施の形態においては、上述の各実施の形態とは異なり、ボス部14の外周面14bではなく、付属環部材42の円筒部42aの外周面42dがオイルシール20のリップ摺動面を形成している。このため、円筒部42aの外周面42dは、研磨、コーティング等の処理によって形成されている。本実施の形態においては、ボス部14の外周面14bをリップ摺動面にする処理(加工等)を省略することができる。
【0109】
付属環部材42がダンパプーリ10に取り付けられた状態において、オイルシール20のサイドリップ29の外側端29aとハブポケット30の外周面31の内側端31aとの間には、上述のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1と同様に、環状の間隙g1が形成されている。
【0110】
上述の本発明の第5の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造5は、本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1と同様な作用効果を奏することができ、ダンパプーリ10から侵入する異物にオイルシール20のシールリップ24が曝されることを抑制することができる。
【0111】
また、本発明の第5の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造5においては、ハブポケット30が付属環部材42に形成されているので、上述の本発明の第3の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造3と同様に、ハブポケット30の加工を容易にすることができる。
【0112】
次いで、本発明の第6の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造について説明する。本発明の第6の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造6は、上述の本発明の第5の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造5に対して、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31とが形成する環状の間隙の形態のみが異なる。また、本発明の第6の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造6は、上述の本発明の第2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造2に対して、ハブポケット30を形成する構成が異なり、上記付属環部材42を有している。以下、上述の本発明の第2,5の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造2,5と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
【0113】
図17は、本発明の第6の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造6の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大断面図である。
図17に示すように、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造6は、本発明の第2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造2と同様に、オイルシール20のサイドリップ29は、外側端29a側の部分が、ハブポケット30の内部に進入しており、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31とは互いに、径方向において、軸線x方向に亘って、重なり合っている(オーバーラップしている)。つまり、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31とは互いに径方向において対向しており、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31との間に環状の間隙g2を形成しており、ラビリンスシールを形成している。トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造6においては、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31とがオーバーラップするように、付属環部材42の外周部42cが内側により長く延びている。若しくは、付属環部材42の取り付け位置が、本発明の第5の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造5における付属環部材42の取り付け位置よりも内側になるようになっている。若しくは、サイドリップ29が外側により長く延びている。
【0114】
上述の構成を有する本発明の第6の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造6は、上記本発明の第2,5の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造2,5と同様の作用効果を奏することができる。
【0115】
このように、本発明の第6の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造6は、上記本発明の第2,5の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造2,5と同様に、ダンパプーリ10から侵入する異物にオイルシール20のシールリップ24が曝されることを抑制することができる。
【0116】
次いで、上述の本発明の第5,6の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造5,6における付属環部材42の変形例について以下に説明する。
【0117】
図18は、本発明の第5,6の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造5,6における付属環部材42の第1の変形例の概略構造を示す断面図である。第1の変形例に係る付属環部材43は、
図18に示すように、上記付属環部材42に対して、円筒部42aの長さが短く、円筒部42aが外周面においてリップ摺動面を形成していない。このため、本変形例に係る付属環部材43を用いる場合は、ダンパプーリ10のボス部14の外周面14bはリップ摺動面を形成しており、外周面14bのリップ摺動面への処理(加工等)を省略することはできない。
【0118】
また、本変形例に係る付属環部材43を用いる場合は、
図18に示すように、ダンパプーリ10のボス部14に、外周面14bに外側において続く外周面である段差面14cが形成されることが好ましい。段差面14cは、外周面14bよりも大きな径を有しており、外周面14bよりも外側に突き出している。付属環部材42は、円筒部42aがボス部14の段差面14cに嵌合されてボス部14に固定される。これにより、付属環部材43の嵌合の際に、シールリップ24のリップ先端部24aの接触するリップ摺動面である外周面14bに損傷が与えられることの防止を図ることができる。
図18においては、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造5に第1の変形例に係る付属環部材43が取り付けられた状態が図示されているが、第1の変形例に係る付属環部材43は、付属環部材42と同様に、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造6において適用することができる。この場合も、ダンパプーリ10のボス部14に、外周面14bに外側において続く外周面である段差面14cが形成されることが好ましい。本変形例に係る付属環部材43を用いた場合であっても、上記本発明の第5,6の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造5,6と同様の効果を奏することができる。
【0119】
図19は、本発明の第5,6の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造5,6における付属環部材42の第2の変形例の概略構造を示す断面図である。第2の変形例に係る付属環部材44は、
図19に示すように、上記付属環部材42に対して、円筒部42aを有しておらず、付属環部材44はリップ摺動面を形成していない。このため、本変形例に係る付属環部材44を用いる場合は、付属環部材43を用いる場合と同様に、ダンパプーリ10のボス部14の外周面14bはリップ摺動面を形成しており、外周面14bのリップ摺動面への処理(加工等)を省略することはできない。付属環部材44は、円盤部42bの内周側の端部である内周端42fにおいて、ボス部14に嵌合されてハブ11に固定される。
【0120】
また、本変形例に係る付属環部材44を用いる場合は、
図19に示すように、ダンパプーリ10のボス部14に、外周面14bに外側において続く外周面である段差面14cが形成されることが好ましい。段差面14cは、外周面14bよりも大きな径を有しており、外周面14bよりも外側に突き出している。付属環部材44は、円盤部42bの内周端42fにおいてボス部14の段差面14cに嵌合されてボス部14に固定される。これにより、付属環部材44の嵌合の際に、シールリップ24のリップ先端部24aの接触するリップ摺動面である外周面14bに損傷が与えられることの防止を図ることができる。また、本変形例に係る付属環部材44を用いる場合は、
図19に示すように、ダンパプーリ10のハブ11の円盤部16に、付属環部材44をボス部14との間で挟持するための環状の突出部16dを設けるようにしてもよい。これにより、付属環部材44を、ボス部14の段差面14cと突出部16dの内側の面とによって強固に固定することができるようになる。突出部16dは、上述の付属環部材43が用いられる場合に、ハブ11の円盤部16に設けるようにしてもよい。
【0121】
図19においては、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造5に第2の変形例に係る付属環部材44が取り付けられた状態が図示されているが、第2の変形例に係る付属環部材44は、付属環部材42と同様に、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造6において用いることができる。この場合も、ダンパプーリ10のボス部14に、外周面14bに外側において続く外周面である段差面14cが形成されることが好ましい。本変形例に係る付属環部材44を用いた場合であっても、上記本発明の第5,6の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造5,6と同様の効果を奏することができる。
【0122】
次いで、本発明の第7の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造について説明する。本発明の第7の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造7は、上述の本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1に対して、ハブポケット30を形成する構成が異なる。以下、上述の本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
【0123】
図20は、本発明の第7の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造7の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大断面図である。
図20に示すように、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造7におけるダンパプーリ10においては、上記第5の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造5と同様に、ハブポケット30がダンパプーリ10のハブ11に形成されていない。トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造7は、ダンパプーリ10に取り付けられたハブ11とは別体の付属環部材45を有しており、この付属環部材45にハブポケット30が形成されている。
【0124】
付属環部材45は、軸線xを中心とする中空環状の円環状の部材であり、ダンパプーリ10のボス部14に嵌合可能に形成されており、一方の側面から凹部が形成されてハブポケット30が形成されている。具体的には、
図20に示すように、付属環部材45は、弾性体から形成された軸線xを中心と環状の弾性フランジ部46と、金属材料から形成された軸線xを中心とする環状の金属環部47とを有している。
【0125】
金属環部47は、軸線xを中心とする円筒状の部分である円筒部47aと、円筒部47aの外側の端部から径方向において外周側に延びる円盤状の部分である円盤部47bと、円盤部47bの外周側の端部から屈曲して内側に向かって延びる部分である外周部47cとを有している。金属環部47は、上述のように金属材料から形成されており、一つの金属部材、例えば金属板がプレス加工等をされて成形される。円筒部47a、円盤部47b、外周部47cは、同一の材料から一体に形成されており、同一の又は略同一の厚さを有している。金属環部47の金属材料としては、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)がある。
【0126】
弾性フランジ部46は、例えばゴム材から形成されている。弾性フランジ部46のゴム材としては、上述したオイルシール20の弾性体部22のゴム弾性体がある。弾性フランジ部46は、
図20に示すように、軸線x方向に延びる環状の部材であり、金属環部47の外周側に取り付けられて、金属環部47の円盤部47bから内側に向かって延びている。具体的には、金属環部47の外周部47c及び円盤部47bの外周側の端部及びその近傍が弾性フランジ部46内に外側から埋め込まれて、弾性フランジ部46は付属環部材45において保持されている。また、弾性フランジ部46は、内周面がハブポケット30の外周面31を形成しており、外周面31は上述のように軸線xに対して傾斜角度α傾斜して延びている。弾性フランジ部46は架橋成形によって成形され、この架橋成形の際に金属環部47に架橋接着される。
【0127】
このように、付属環部材45において、金属環部47の円筒部47a、金属環部47の円盤部47b、及び弾性フランジ部46が空間を画成して、ハブポケット30を形成している。金属環部47の円盤部47bの内側の面は、ハブポケット30の底面32を形成しており、金属環部47の円筒部47aの外周側の面である外周面47dは、ハブポケット30の外周面31に対向する内周側の面を形成している。
【0128】
また、金属環部47の円筒部47aは、ダンパプーリ10のボス部14に嵌合可能に形成されており、付属環部材45がボス部14に取り付けられた状態において、円筒部47aの内周側の面である内周面47eはボス部14の外周面14bに密接している。また、付属環部材45は、金属環部47の円筒部47aがボス部14に嵌合されて、ダンパプーリ10のハブ11に対して相対移動不能に取り付けられる。このとき、金属環部47の円盤部47bはハブ11の円盤部16に当接されている、または、所定の間隔を空けて離れている。
【0129】
また、金属環部47の円筒部47aは、
図20に示すように、オイルシール20のリップ先端部24aまで、若しくはリップ先端部24aを超えて、内側に延びており、円筒部47aの外周面47dは、リップ先端部24aに摺動可能に接触している。このように、本実施の形態においては、上述の各実施の形態とは異なり、ボス部14の外周面14bではなく、付属環部材45の金属環部47の円筒部47aの外周面47dがオイルシール20のリップ摺動面を形成している。このため、上述の付属環部材42(
図16)と同様に、円筒部47aの外周面47dは、研磨、コーティング等の処理によって形成されている。本実施の形態においては、上記本発明の第5の実施の形態に係る密封構造5と同様に、ボス部14の外周面14bをリップ摺動面にする処理(加工等)を省略することができる。金属環部47の外周部47cは、少なくとも弾性フランジ部46を保持可能な長さを有している。
【0130】
付属環部材45がダンパプーリ10に取り付けられた状態において、オイルシール20のサイドリップ29の外側端29aとハブポケット30の外周面31の内側端31aとの間には、上述のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1と同様に、環状の間隙g1が形成されている。
【0131】
上述の本発明の第7の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造7は、本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1と同様な作用効果を奏することができ、ダンパプーリ10から侵入する異物にオイルシール20のシールリップ24が曝されることを抑制することができる。
【0132】
また、本発明の第7の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造7においては、ハブポケット30が形成される付属環部材45において、弾性体から形成された弾性体フランジ部46によってハブポケット30の外周面31が形成されている。このため、ハブポケット30の外周面31の拡径角度αが所望の値となるように、外周面31を精度よく形成することができる。これは、金属材料をプレス加工するよりもゴム材による成形の方が成形品の寸法精度を高めることができるからである。また、ダンパプーリ10のボス部14の偏心等により、サイドリップ29が弾性体フランジ部46に接触したとしても、弾性体フランジ部46はゴム材等の弾性体から形成されているので衝撃を吸収し、サイドリップ29が損傷しにくくすることができる。また、金属部材のプレス成形において、金属部材の形状が複雑になると金属部材に残留応力が発生し、金属部材全体が歪やすくなるが、付属環部材45においては、金属材から形成されている金属環部47の形状をシンプルにすることができ、金属環部47の成形精度(寸法精度)を高めることができる。
【0133】
また、本発明の第7の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造7においては、ハブポケット30が付属環部材45に形成されているので、上述の本発明の第3の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造3と同様に、ハブポケット30の加工を容易にすることができる。
【0134】
上述のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造7においては、オイルシール20のサイドリップ29は、ハブポケット30の内部に進入していないが、サイドリップ29の外側端29a側の部分が、ハブポケット30の内部に進入して、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31とは互いに、径方向において、軸線x方向に亘って、重なり合っていてもよい。つまり、上述の密封構造2,6(
図11,17)と同様に、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31とは互いに径方向において対向して、サイドリップ29とハブポケット30の外周面31との間に環状の間隙g2を形成していてもよい。
【0135】
また、上述のトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造7において、付属環部材45の金属環部47の形状は上述の形状に限らず、例えば、上述の
図18に示す付属環部材43のように、円筒部47aがシールリップ24aまで延びておらず、ダンパプーリ10のボス部14がリップ摺動面を形成するようにしてもよい。この場合も、
図18に示すように、ダンパプーリ10のボス部14に、外周面14bに外側において続く外周面である段差面14cが形成され、付属環部材45が段差面14cに嵌合されることが好ましい。
【0136】
また、付属環状部材45の金属環部47の形状は、上述の
図19に示す付属環部材44のように、円筒部47aを有していない形状であってもよい。この場合、ダンパプーリ10のハブ11の形状は、上記
図11に示すように、突出部16d及び段差面14cを有する形状であることが好ましい。
【0137】
次いで、本発明の第8の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造について説明する。本発明の第8の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造8は、上述の本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1に対して、間隙g1の構成が異なる。以下、上述の本発明の第1の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1と同一の又は類似する機能を有する構成についてはその説明を省略して同一の符号を付し、異なる構成についてのみ説明する。
【0138】
図21は、本発明の第8の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造8の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における部分拡大断面図である。
図21に示すように、トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造8は、上述の密封構造1におけるオイルシール20に代えて、オイルシール60を備えており、また、間隙g1を形成する環部材61を備えている。オイルシール60は、サイドリップ29を有していない点及びフロントカバー53の貫通穴54に直接取り付けられない点においてオイルシール20と異なる。
【0139】
環部材61は、軸線xを中心とする中空環状の円環状の部材であり、上述のオイルシール20の有するサイドリップ29の外周面と同じ傾斜角度γ(
図6参照)で傾く外周面を形成するサイドリップとしての突起部62を有しており、フロントカバー53の貫通穴54に嵌合可能になっている。具体的には、環部材61は、軸線xを中心とする円筒状の嵌合部63と、嵌合部63の外側の端部から内周側に延びる円盤状の支持部64とを有しており、支持部64の内周側の端部から突起部62が嵌合部63とは反対側に延びておりハブポケット30に向かって延びている。
【0140】
嵌合部63は、フロントカバー53の貫通穴54に嵌合可能に形成されており、嵌合部63がフロントカバー53の貫通穴54に嵌合された際に、外周側の周面において、貫通穴54の内周面54aに密接するように形成されている。突起部62は、軸線xを中心とする環状の部分であり、外側の端部である外側端62aにおいて、ハブポケット30の外周面31の内側端31aとの間に間隙g1を形成している。
【0141】
環部材61は、金属材料や樹脂材料から形成されており、金属材料としては例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)等がある。錆が発生しやすい環境で密封構造8が用いられる場合、環部材61の金属材料としてはステンレス鋼が好ましい。環部材61は、プレス加工や樹脂成形によってオイルシール60とは別体で形成され、
図21に示すように、環部材61にオイルシール60が内嵌され状態で、環部材61の支持部64を押圧することにより、フロントカバー53の貫通穴54に嵌合部63が嵌合されて、フロントカバー53に環部材61が嵌着される。これにより、オイルシール60及び環部材61がフロントカバー53に取り付けられ、間隙g1が形成される。
【0142】
環部材61の突起部62は、ハブポケット30の内部に進入していない形状に限らず、上記密封構造2のサイドリップ29のように、突起部62の外側端62a側の部分が、ハブポケット30の内部に進入して、突起部62とハブポケット30の外周面31とは互いに、径方向において、軸線x方向に亘って、重なり合っていてもよい。つまり、上述の密封構造2(
図11)と同様に、突起部62とハブポケット30の外周面31とは互いに径方向において対向して、突起部62とハブポケット30の外周面31との間に環状の間隙g2を形成していてもよい。
【0143】
本発明の第8の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造8は、上述の本発明の第1,2の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1,2と同様の効果を奏することができる。また、環部材61は金属材料又は樹脂材料から形成されており、ゴム材から形成された部材よりも剛性が高く、突起部62が自重で変形しにくい。このため、突起部62がハブポケット30との間に間隙g2を形成する場合に、自重によって撓むことなる突起部62を長くすることができる。このため、突起部62とハブポケット30との間のオーバーラップ量bをより多くすることができ、間隙g2を通過して侵入する異物の量を低減することができる。
【0144】
本実施の形態におけるオイルシール60及び環部材61は、上述の本発明の第3〜7の実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造3〜7において、オイルシール20に代えて適用することができる。
【0145】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0146】
具体的には、上述のような間隙g1,g2を形成するハブポケット30及びサイドリップ29又は突起部62を夫々有しているものであれば、ダンパプーリ10、オイルシール20,60、及び環部材61の形態は他の形態であってもよい。
【0147】
また、本実施の形態に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造1〜8は、自動車のエンジンに適用されるものとしたが、本発明に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造の適用対象はこれに限られるものではなく、他の車両や汎用機械、産業機械等の回転軸等、本発明の奏する効果を利用し得るすべての構成に対して、本発明は適用可能である。更に、本実施の形態におけるトーショナルダンパ(ダンパプーリ10)は、円盤部16を内側と外側との間で貫通する貫通穴である窓部16aが形成されているものとしたが、本発明に係るトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造の適用対象はこれに限られるものではなく、窓部16aが形成されていないものに対しても本発明は適用可能である。
トーショナルダンパから侵入する異物にオイルシールのシールリップが曝されることを抑制することができるトーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造を提供する。
トーショナルダンパとオイルシールとを用いた密封構造(1)は、トーショナルダンパとしてのダンパプーリ(10)と、オイルシール(20)とを備える。ダンパプーリ(10)は、ハブ(11)のボス部(14)に沿って周方向に延びる外側方向に凹む環状のハブポケット(30)を有する。オイルシール(20)は、外側方向に向かって延びるサイドリップ(29)を備える。ハブポケット(30)の外周面(31)は、外側方向に向かうに連れて拡径しており、オイルシール(20)のサイドリップ(29)は、ハブポケット(30)の内部に進入しておらず、サイドリップ(29)の外側端(29a)とハブポケット(30)の外周面(31)の内側端(31a)との間には、環状の間隙(g1)が形成されている。