【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、特許文献2のフロントスクリーンには、画像を視認する観客の存在するエリアに占める画像光が外光に影響されてしまうエリアの割合が高いという問題があった。この問題について
図6、
図7及び
図8を参照して説明する。
図6は、フロントプロジェクション型表示装置のプロジェクタ22のフロントプロジェクション用スクリーン2aに対する配置角度、画像光の光軸の向き、拡散角度領域等を詳細に説明するための垂直に切断して示す縦断面図、
図7は、更に入射許容角度領域が詳細に分かるようにそのスクリーン2aを垂直に切断して示す縦断面図である。
尚、
図6及び
図7において、フロントプロジェクション用スクリーン2aは、便宜上、拡散層4及び光透過層6のみを示し、他の部材(部分)の図示を省略する。
図6、7共にプロジェクタ光の光路をわかりやすくするため観察者がスクリーン2aを上から見下ろすように書いてあるが、本来観察者はスクリーン2aの正面方向に存在するのが一般的である。
以降全ての図において角度の定義は反時計回り方向を正とし、水平面が0度、鉛直下方向が−90度、鉛直上方向が90度とする。
【0014】
図において、θaは鏡形成エリア8のスクリーンの法線(一点鎖線)に対する角度(尚、引用文献2の
図4では、θ1となっている。本願明細書、図面では便宜上「θa」とした。)であり、θbは鏡非形成用エリア10のスクリーンの法線(一点鎖線)に対する角度(尚、引用文献2の
図4では、θ2となっている。本願明細書、図面では便宜上「θb」とした。)である。
θpはフロントプロジェクタ22から出射されフロントプロジェクション用スクリーン2aに入射する画像光の入射角[スクリーンの法線(一点鎖線)に対する角度]、θpbはフロントプロジェクタ22からの画像光の入射角度領域の下側境界角度、θptは入射角度領域の上側境界角度(外光に近い側の境界の角度)である。
【0015】
θp’はフロントプロジェクション用スクリーン2aに入射した画像光のその光透過層6内部におけるスクリーンの法線に対する角度である。θd’は各鏡形成用エリア8、8、・・・に入射し、
図6では図示しない鏡面反射膜14で反射された画像光の光透過層6内部におけるスクリーンの法線に対する角度、θdは光透過層6を透過し、空気中に屈折して出射した場合の画像光のスクリーンの法線に対する角度、θdbは画像光の拡散角度領域の下側境界角度、θdtは画像光の拡散角度領域の上側境界角度である。ここで画像光の拡散角度領域とは画像光(プロジェクタ光)が拡散反射して出射する領域のことである。例えば画像光が各鏡形成用エリア8で反射した後に拡散するように配置した場合、画像光の拡散角度領域と拡散板4の拡散角度領域は等しい。一方画像光が各鏡形成用エリア8で反射する前に拡散するように配置した場合、画像光の拡散角度領域は拡散板4の拡散角度領域の鏡形成用エリア8に対する鏡面対称な領域に等しい。
θoは観察者Eが存在する角度のスクリーンの法線(一点鎖線に示す)に対する角度、θobはその観察角度範囲の下側境界角度、θotは観察角度範囲の上側限界角度である
また、一つの鏡形成エリア8とその下に隣接する一つの鏡非形成エリア10との組み合わせをエリア対とし、各エリア対に12という符号を付することとする。
【0016】
ここで、拡散角度領域について考察する。
観察者が画像を観察するためには、θdt>θotで、θdb<θobでなければならない。
そして、上記入射角度領域の下側境界(下限)角度θpbで空気中から光透過層6に入射した画像光の光透過層6内におけるスクリーンの法線に対する角度をθpb’、上側境界(上限)角度θptで空気中から光透過層6に入射した画像光の光透過層6内におけるスクリーンの法線に対する角度をθpt’とし、画像光の拡散角度領域の下側境界角度θdbで空気中から光透過層6に入射した仮想光の光透過層6内におけるスクリーンの法線に対する角度をθdb’、画像光の拡散角度領域の上側境界角度θdtで空気中から光透過層6に入射した仮想光の光透過層6内におけるスクリーンの法線に対する角度をθdt’とする。
【0017】
すると、上記θa即ち、鏡形成エリア8のスクリーンの法線(一点鎖線)に対する角度の上限、θamax及び下限θaminは下記の式で表される条件を満たすことが好ましい。
θamax=[(θpt’+θdt’)/2]+90°
θamin=[(θpb’+θdb’)/2]+90°
さもないと、フロントプロジェクタ22からの入射角度範囲内の画像光が拡散板4の拡散角度領域に入射しないからである。ただし設計、あるいは制作の都合上、有効な反射でなく、一部のプロジェクタ光が無駄になってもやむを得ない場合がある。このような場合であっても最低でもフロントプロジェクタの入射角度範囲から入射した光の50%が、拡散角度領域に反射することが望まれる。
【0018】
また、θptよりθdbが大きいこと、即ち、
θpt<θdb
であることが好ましい。
さもないと、即ち、θpt>θdbであると、フロントプロジェクタ22から斜め上側に向けた画像光の入射角度領域と、画像光の拡散角度領域とが一部オーバーラップし、良好な表示ができないからである。
【0019】
また、上記θbはθpt’−20°より大きいこと、即ち、
θb>θpt’−20°
であることが好ましい。
というのは、先ず、θbをθpt’以上にすると、フロントプロジェクタ22からの画像光が鏡非形成用エリア10、10、・・・に入射するおそれを完全になくし、画像光の損失を完全になくすことができるからである。
次に、θpt’より小さくても20°程度であれば、画像光の損失を極めて小さくすることができるからである。
【0020】
尚、上記の好ましい条件は、水平方向における位置を異ならせても成立する。
また、これまでスクリーン下方からプロジェクタ光を入射させ正面から観察することを想定していたが、スクリーン上方からプロジェクタ光を入射させ正面から観察する場合であっても、座標を上下逆に取って同様の議論が成り立つ。更に上下逆だけでなく、左右、あるいは斜めに対して座標をとっても同様の議論が成り立つ。
ところで、従来においては、θa、即ち、鏡形成エリア8のスクリーンの法線(一点鎖線)に対する角度が、スクリーン2aの上端の鏡形成エリア8から下端の鏡形成エリア8に渡る全エリア8、8、・・・について同じであった。
そのため、スクリーン2a全体の内少なくとも一部分が外光により影響されて視認される観察位置が広くなると言う問題がある。このことを説明するためにはプロジェクタ光が入射することを許容される領域(以降プロジェクタ光入射許容角度領域とする)を定義する必要があり、
図7はその領域を示す説明図である。
図7において、角度θdt’で鏡形成エリア8に入射し反射された仮想光の光透過層6内におけるスクリーンの法線に対する角度をθcb’、角度θdb’ で鏡形成エリア8に入射し反射された仮想光の光透過層6内におけるスクリーンの法線に対する角度をθct’とする。また、角度θct’で光透過層6から空気中に屈折して出射した仮想光のスクリーンの法線に対する角度をθct、角度θcb’ で光透過層6から空気中に屈折して出射した仮想光のスクリーンの法線に対する角度をθcbとする。このときプロジェクタ光入射許容角度領域はθcb以上、θct以下で定義される。プロジェクタ光入射許容角度領域から入射した光はプロジェクタ光であっても外光であっても鏡形成エリア8により拡散板4の拡散角度領域に反射され、従って観察者方向に拡散反射される。
なお、当然プロジェクタ光はプロジェクタ光入射許容角度領域から入射しなければならず、以下の条件が存在する。
θcb<θpb、θpt<θpt
先ほどのθamaxおよびθaminに関する式は上記と同じことを鏡形成エリア8のスクリーンの法線(一点鎖線)に対する角度θaについての条件として記述した式であり、本質的に同じ条件である。
【0021】
次に、プロジェクタ光入射許容角度をもとに、画像が外光に影響されて視認される領域を
図8に示す。
図8において、3はスクリーン2aが一内壁面に設置される部屋、3aはその部屋3の天井、3bは部屋3の床面、3c、3c、・・・はその部屋3の天井3aに設置された照明、3dはスクリーン2aが設置されるスクリーン設置壁面、3eはプロジェクタの設置される水平面、具体的には床面3bからプロジェクタが設置される高さhの水平面である。Hはほぼ垂直なスクリーン2aの縦方向の長さ(高さ)であり、θct1はスクリーン2aの鏡形成エリア8、8、・・・のうち最も高い位置にある鏡形成エリア8におけるプロジェクタ光入射許容角度領域の上側境界角度(:外光に近い側の境界の角度)θctである。
【0022】
θctmはスクリーン2aの鏡形成エリア8、8、・・・のうち高さ方向で中央にある鏡形成エリア8におけるプロジェクタ光入射許容角度領域の上側境界角度(:外光に近い側の境界の角度)である。また、θctnはスクリーン2aの鏡形成エリア8、8、・・・のうち最も低い位置にある鏡形成エリア8におけるプロジェクタ光入射許容角度領域の上側境界角度(:外光に近い側の境界の角度)である。
つまり、スクリーンのエリア8、8、・・・に上から順番に番号を1、2、・・・と振り、エリアの最後の番号をnとし、真ん中の番号をmとし、その番号をθctに添え字として付して或る高さの鏡形成エリア8におけるプロジェクタ光入射許容角度領域の上側境界角度を示すこととしたのである。ちなみに、θcbはフロントプロジェクタ22からのプロジェクタ光入射許容角度領域の下側境界角度(:外光から遠い側の境界の角度)であることは前述の通りである。
【0023】
ところで、従来の場合、スクリーン2aの鏡形成エリア8、8、・・・(
図6、
図7を参照)は、その傾斜角度θaが高いところにあるものも、低いところにあるものも、中間の高さにあるものもすべて同じであるので、各鏡形成エリア8、8、・・・のプロジェクタ光入射許容角度領域の上側境界角度θct1 、θct2 、・・・・、θctmは、すべて同じであった。
図中のL1は、最も高い鏡形成エリア8を起点としたその鏡形成エリア8におけるプロジェクタ光入射許容角度領域の上側境界角度θct1方向に進む仮想光線のラインで、そのラインL1と部屋3のプロジェクタの設置される水平面3eとの交点がP1である。
【0024】
この交点P1よりも後の(スクリーンから離れる方向の)領域Cは、その位置に外光源が存在した場合にスクリーン2aが外光を拾わない領域となる。
そして、その交点P1からそれよりも前(スクリーンへ近づく方向)のスクリーン2aの設置位置(内壁面)に至る領域Bは、その位置に外光源が存在した場合にスクリーン2aの少なくとも画面の一部が外光を拾う領域となる。
【0025】
また、Lnは、最も低い鏡形成エリア8を起点としたその鏡形成エリア8におけるプロジェクタ光入射許容角度領域の上側境界角度θctn方向に進む仮想光線のラインで、そのラインLnと部屋3のプロジェクタの設置される水平面3eとの交点がPnである。
【0026】
尚、Lmは中央にある鏡形成エリア8を起点としたその鏡形成エリア8におけるプロジェクタ光入射許容角度領域の上側境界角度θctm方向に進む仮想光線のラインで、そのライン(仮想光線のライン)L1と部屋3のプロジェクタの設置される水平面3eとの交点がPmである。
【0027】
ところで、スクリーン2aに表示された画像を視認(観察)するには領域Bに外光源が存在しないことが好ましい。というのは、この領域は少なくともスクリーンの一部分にとってプロジェクタ光入射許容角度領域であり、そこに存在する外光源からの外光はスクリーン2aによって観察者方向に拡散反射され、表示画像が乱されるからである。
しかし、従来においては、領域Bの長さ(上記交点P1のスクリーン2a設置壁面3dからの距離)が長く、部屋3の前の部分(スクリーン2a側の部分)に、その領域に存在する外光が表示画像を乱す比較的広い領域Bができてしまうという問題があった。
【0028】
図8において、Wは上記交点Pnから上記仮想光線のラインL1へ下ろした垂線の幅であり、スクリーンの高さH×cosθct1(〜θctn)であるが、これはすべての仮想光線L1〜Lnが通る最小径の円の直径に他ならず、従来においては、この大きさが領域Bの長さを決定していたのである。
本発明はそのような問題を解決すべく為されたもので、反射型フロントスクリーンの正面側の部分に生じるところ、その領域に存在する外光が表示画像を乱す領域を狭くし、スクリーンが設置される部屋の中の、その領域に存在する外光が表示画像に悪影響を与えない領域をより広くすることを目的とする。