【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0058】
実施例で使用する配位子の略号の意味は、以下の通りである。
Ph
2pzH:3,5−ジフェニルピラゾール
Ph
2pz:単座でPt原子に配位している、3,5−ジフェニルピラゾールから水素イオンが解離した1価のアニオン(3,5−ジフェニルピラゾラト)
μ−Ph
2pz:Pt原子間を架橋している、3,5−ジフェニルピラゾールから水素イオンが解離した1価のアニオン(3,5−ジフェニルピラゾラト)
Ph
2pz−κC,κN:3,5−ジフェニルピラゾールのピラゾール環のN原子およびベンゼン環のC原子でPt原子にキレート配位し、配位結合に関与していないN原子にC原子上にあった水素イオンが移動した、3,5−ジフェニルピラゾールから水素イオンが解離した1価のアニオン(3,5−ジフェニルピラゾラト)
Ph
2pz’−κC,κN:3,5−ジフェニルピラゾールのピラゾール環のN原子およびベンゼン環のC原子でPt原子にキレート配位し、N原子上の水素イオンとC原子上にあった水素イオンの合計二つの水素イオンが解離した2価のアニオン(3,5−ジフェニルピラゾラトジアニオン)
dppm:ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン
dppe:1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン
【0059】
参考例1:[Pt
2(Ph
2pz−κC,κN)
2(μ−Ph
2pz)
2]の合成
【0060】
【化7】
【0061】
[PtCl(Ph
2pz)(Ph
2pzH)
2](89.0mg、0.10mmol)にKOH(16.8mg、0.30mmol)のメタノール溶液(5mL)を加え、さらにアセトニトリル(50mL)を加えて、アルゴン雰囲気下で24時間、加熱還流した。白色懸濁液は反応後、黄色懸濁液に変化した。反応溶液を濃縮後、黄色固体を自然濾過し、メタノールで洗浄後、減圧乾燥した(収量50.0mg、収率79%)。得られた残留物をジクロロメタン/エタノールで再結晶して、[Pt
2(Ph
2pz−κC,κN)
2(μ−Ph
2pz)
2]を得た。この金属錯体は、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であった。
【0062】
実施例1
(1)[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppm)]の合成
【0063】
【化8】
【0064】
[Pt
2(Ph
2pz−κC,κN)
2(μ−Ph
2pz)
2](65.3mg、0.05mmol)およびビス(ジフェニルホスフィノ)メタン(38.4mg、0.10mmol)を含むアセトニトリル溶液(40mL)を、アルゴン雰囲気下で24時間、加熱還流した。黄色懸濁液は反応後、淡黄色溶液に変化した。反応溶液を濃縮し、析出した白黄色固体を濾別し、メタノールで洗浄後、減圧乾燥した(収量63.0mg、収率79%)。再結晶は、プロピオニトリルから行った。得られた[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppm)]は、M
IIがPt
IIであり、L
1が、配位子(L−1a)(式(L−1)中、R
1=フェニル基、R
2〜R
6=水素原子)であり、L
2が、配位子(L−2b)(式(L−b)中、n=1、R
7およびR
8=水素原子、Ar
1〜Ar
4=フェニル基)であるシクロメタル化錯体(1)である。このシクロメタル化錯体は、UV光(365nm)の照射下、固体状態で黄緑色に強く発光した。
【0065】
(2)[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppm)]の特性評価
溶解性:クロロホルム、ジクロロメタン、アセトン、トルエンに易溶。アセトニトリル、プロピオニトリルに可溶。
IR(KBr):3048 (m), 2986 (w), 2925 (w), 1598 (m), 1532 (w), 1508 (m), 1483 (m), 1455 (m), 1436 (s), 1355 (w), 1332 (w), 1320 (w), 1271(w), 1215 (w), 1182 (m), 1124 (m), 1102 (s), 1026 (w), 998 (w), 982 (w), 952 (w) , 729(s), 711 (s), 690(s), 546 (m), 508 (s), 461 (m)
FAB−MS:m/z:798.2 [M+H]
+
1H NMR:表1に記載(表1中の各項目は、左から、δがピークの化学シフト(ppm)を示し、shapeがピーク形状を示し、Jが結合定数(Hz)を示し、Int.がピーク強度(相対値)を示し、Assign.がピークの帰属を示す。なお、他の
1H NMRデータの各項目も同様である。)
【0066】
【表1】
【0067】
X線構造解析:[Pt(Ph
2pz’−kC,kN)(dppm)]・C
2H
5CNの結晶学的データを表2に記載する。なお、表2中の各項目は、上から、組成式、式量、測定温度、測定波長(MoKα線)、晶系、空間群、格子定数(a,b,c)、格子体積、Z値、密度、線吸収係数、独立な反射の数、最終R値、R
1値、GOF値を示す。
【0068】
【表2】
【0069】
[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppm)]は、単結晶X線構造解析により分子構造を決定している。その結晶学的データを表2に示し、その分子構造のORTEP図を
図2に示す。[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppm)]には、Pt原子、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタンおよび3,5−ジフェニルピラゾラトジアニオンが含まれている。Pt原子には、シクロメタル化したジフェニルピラゾラトがC原子およびN原子でキレート配位し、Pt原子の残りの二つの配位座にビス(ジフェニルホスフィノ)メタンが配位している。[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppm)]におけるジフェニルピラゾラトのPt−N距離は2.018(3)Å、Pt−C距離は2.072(3)Å、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタンのPt−P距離は2.2348(9)Åおよび2.2892(9)Åである。
【0070】
[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppm)]の光物理的性質について説明する。まず、[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppm)]のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトルを
図3に示す。
図3に示すように、[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppm)]は、298nmに吸収極大を持ち、紫外領域に幅広い吸収帯を示す。また、この紫外可視吸収スペクトルでは、320nm付近および360nm付近にも、吸収ショルダーが存在する。
【0071】
次に、波長355nmの光で励起した[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppm)]の固体状態の発光スペクトルを
図4に示す(測定温度:298K)。[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppm)]は、室温(298K)の固体状態で黄緑色に強く発光し、
図4に示すように、491、526および561nmに発光極大をもつ振動構造を伴った発光スペクトルを示す。絶対PL量子収率測定装置により求めた[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppm)]の固体状態の発光量子収率(Φ)は0.44であった。
【0072】
また、温度298Kにおける[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppm)]の固体状態の発光寿命を表3に示す。なお、表3に示す発光寿命は、二成分指数関数(I(t)=A
1exp(−t/τ
1)+A
2exp(−t/τ
2))を用いる解析から算出した。[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppm)]の発光寿命は、数マイクロ秒と比較的長いことから、これは、励起三重項状態からの発光(即ち、リン光)であると考えられる。
【0073】
【表3】
【0074】
実施例2
(1)[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppe)]の合成
【0075】
【化9】
【0076】
[Pt
2(Ph
2pz−κC,κN)
2(μ−Ph
2pz)
2](39.2mg、0.03mmol)および1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(23.9mg,0.06mmol)を含むアセトニトリル溶液(30mL)を、アルゴン雰囲気下で24時間、加熱還流した。黄色懸濁液は反応後、淡黄色溶液に変化した。反応溶液を濃縮し、析出した白黄色固体を濾別し、メタノールで洗浄後、減圧乾燥した(収量37.9mg、収率78%)。再結晶は、プロピオニトリルから行った。得られた[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppe)]は、M
IIがPt
IIであり、L
1が、配位子(L−1a)(式(L−1)中、R
1=フェニル基、R
2〜R
6=水素原子)であり、L
2が、配位子(L−2b)(式(L−2b)中、n=2、R
7およびR
8=水素原子、Ar
1〜Ar
4=フェニル基)であるシクロメタル化錯体(1)である。このシクロメタル化錯体は、UV光(365nm)の照射下、固体状態で黄緑色に強く発光した。
【0077】
(2)[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppe)]の特性評価
溶解性:クロロホルム、ジクロロメタンに易溶。アセトニトリル、プロピオニトリルに可溶。
IR(KBr):3051 (m), 2964 (w), 2925 (w), 1602 (m), 1538 (w), 1510 (w), 1484 (m), 1457 (w), 1436 (s), 1355 (w), 1332 (w), 1320 (w), 1271(w), 1215 (w), 1182 (m), 1124 (m), 1102 (s), 1026 (w), 998 (w), 982 (w), 952 (w) , 729(s), 711 (s), 690(s), 546 (m), 508 (s), 461 (m)
FAB−MS:m/z:812.3 [M+H]
+
1H NMR:表4に記載
【0078】
【表4】
【0079】
X線構造解析:[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppe)]の結晶学的データを表5に記載する。なお、表5中の各項目は、上から、組成式、式量、測定温度、測定波長(MoKα線)、晶系、空間群、格子定数(a,b,c,β)、格子体積、Z値、密度、線吸収係数、独立な反射の数、最終R値、R
1値、GOF値を示す。
【0080】
【表5】
【0081】
[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppe)]は、単結晶X線構造解析により分子構造を決定している。その結晶学的データを表5に示し、その分子構造のORTEP図を
図5に示す。[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppe)]には、Pt原子、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンおよび3,5−ジフェニルピラゾラトジアニオンが含まれている。Pt原子には、シクロメタル化したジフェニルピラゾラトがC原子およびN原子でキレート配位し、Pt原子の残りの二つの配位座に1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンが配位している。[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppe)]におけるジフェニルピラゾラトのPt−N距離は2.035(7)Å、Pt−C距離は2.077(8)Å、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンのPt−P距離は2.226(2)Åおよび2.305(2)Åである。
【0082】
[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppe)]の光物理的性質について説明する。まず、[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppe)]のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトルを
図6に示す。
図6に示すように、[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppe)]は、294nmに吸収極大を持ち、紫外領域に幅広い吸収帯を示す。また、この紫外可視吸収スペクトルでは、315nm付近と350nm付近にも、吸収ショルダーが存在する。
【0083】
次に、波長355nmの光で励起した[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppe)]の固体状態の発光スペクトルを
図7に示す(測定温度:298K)。[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppe)]は、室温(298K)の固体状態で黄緑色に強く発光し、
図7に示すように、489および522nmに発光極大をもつ振動構造を伴った発光スペクトルを示す。絶対PL量子収率測定装置により求めた[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppe)]の固体状態の発光量子収率(Φ)は0.61であった。
【0084】
また、温度298Kにおける[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppe)]の固体状態の発光寿命を表6に示す。なお、表6に示す発光寿命は、二成分指数関数(I(t)=A
1exp(−t/τ
1)+A
2exp(−t/τ
2))を用いる解析から算出した。[Pt(Ph
2pz’−κC,κN)(dppe)]の発光寿命は、数マイクロ秒と比較的長いことから、これは、励起三重項状態からの発光(即ち、リン光)であると考えられる。
【0085】
【表6】