特許第5979661号(P5979661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5979661液体噴出器用ポンプシリンダ及び液体噴出器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979661
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】液体噴出器用ポンプシリンダ及び液体噴出器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20160817BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20160817BHJP
   B05B 11/00 20060101ALI20160817BHJP
   F04B 9/14 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   B65D47/34 B
   B65D83/00 K
   B05B11/00 101H
   F04B9/14 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-44509(P2012-44509)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-180786(P2013-180786A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年8月28日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100113169
【弁理士】
【氏名又は名称】今岡 憲
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宏太郎
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 茂雄
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/013966(WO,A1)
【文献】 特開2003−095361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B05B 11/00
B65D 83/00
F04B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍔部(6)を周囲に周設した大径筒状の頭部(4)を有し、この頭部(4)の下端から中径筒状の胴部(10)を、またこの胴部(10)の内面下端部に付設した内向きフランジ(16)から小径筒状の脚筒部(18)をそれぞれ垂下してなり、胴部(10)の上部に通気孔(11)を有する合成樹脂製のポンプシリンダにおいて、
上記胴部(10)の筒壁を頭部(4)及び脚筒部(18)に比べて肉薄に形成するとともに、胴部(10)の外周面全体に、胴部(10)の上下長さほぼ全長に亘る等高の複数の剛性リブ(12)を等間隔に縦設し、
上記剛性リブ(12)が胴部(10)の径方向へ突出する高さ(h)を剛性リブ(12)同士の周方向の距離(rα)よりも小さくなるようにし、
かつ上記剛性リブ(12)の周方向の巾(t)を胴部(10)の筒壁の径方向の厚み(t)の半分以下とし
少なくとも頭部(4)の厚みをtとするときに、t+t<tという関係が成り立つように形成したことを特徴とする、液体噴出器用ポンプシリンダ。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴出器用ポンプシリンダ(2)と、このポンプシリンダ(2)の胴部(10)内面を昇降可能な筒状ピストンを下半部に有する作動部材(40)と、この作動部材(40)の下半部とポンプシリンダ(2)の下部との間に介装されたスプリング(52)とを具備する液体噴出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴出器用ポンプシリンダ及びこのポンプシリンダを組み込んだ液体噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のポンプシリンダとして、鍔部を周囲に周設した大径筒状の頭部を有し、この頭部の下端から中径筒状の胴部を、この胴部の内面下端部に付設した内向きフランジから小径筒状の脚筒部をそれぞれ垂下してなり、全体としてほぼ均一の肉厚に形成したものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−95361
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の液体噴出器を軽量化する目的で単純にポンプシリンダを肉薄・軽量化した場合、強度の低下により、ポンプシリンダの胴部が外方に膨らんだり、ピストンとの摺動で上下に伸びたりする変形を起こす可能性があった。そうするとポンプシリンダの胴部の内周面と液体噴出器の作動部材とのシール箇所や作動部材のストロークに悪影響を及ぼし、機能が損なわれる可能性がある。
【0005】
ポンプシリンダを補強する方法として剛性リブを追加する方法があるが、必要以上の大きさ及び本数を付けると軽量化の目的を達成できない。またリブの大きさによってはヒケを発生し、機能に悪影響を及ぼす。
【0006】
本発明の第1の目的は、複数の剛性リブを肉薄の胴部に付することで所要の強度を有するとともに軽量化に寄与するポンプシリンダの構成を提供することである。
本発明の第2の目的は、上記ポンプシリンダの胴部内周面にヒケを生じないように剛性リブの大きさを調整することである。
本発明の第3の目的は、上記ポンプシリンダを採用することで軽量化した液体噴出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の手段は、鍔部6を周囲に周設した大径筒状の頭部4を有し、この頭部4の下端から中径筒状の胴部10を、またこの胴部10の内面下端部に付設した内向きフランジ16から小径筒状の脚筒部18をそれぞれ垂下してなり、胴部10の上部に通気孔11を有する合成樹脂製のポンプシリンダにおいて、
上記胴部10の筒壁を頭部4及び脚筒部18に比べて肉薄に形成するとともに、胴部10の外周面全体に、胴部10の上下長さほぼ全長に亘る等高の複数の剛性リブ12を等間隔に縦設し、
上記剛性リブ12が胴部10の径方向へ突出する高さhを剛性リブ12同士の周方向の距離rαよりも小さくなるようにし、
かつ上記剛性リブ12の周方向の巾tを胴部10の筒壁の径方向の厚みtの半分以下とし、
少なくとも頭部4の厚みをtとするときに、t+t<tという関係が成り立つように形成した
【0008】
本手段は、図1に示すポンプシリンダ2の胴部10を頭部4に比べて肉薄とするとともに、胴部10の外周面全体に縦向きの複数の剛性リブ12を設けることを提案する。上記胴部10は、スプリングにより付勢される後述の作動部材40が摺接する箇所なので、強度が不足するとスプリング力により伸び変形する可能性がある。そこでその伸び変形に対して図2の如く等間隔に配置した縦方向の剛性リブ12で対抗するようにしている。
【0009】
また本手段では、剛性リブ12の高さhと剛性リブ12同士の距離rαとの関係について数式1とすることを、また剛性リブ12の巾tと剛性リブ成形箇所以外の胴部10の厚さtとの関係について数式2とすることを提案している。剛性リブ12の高さhが剛性リブ同士の距離以上であると、ポンプシリンダ2の軽量化に寄与し難いから、また剛性リブ12の巾tが剛性リブ12成形箇所以外の胴部10の厚みの半分を超えると、胴部10にヒケが発生する虞が大となるからである。
[数式1]h<rα
[数式2]t≦t/2
【0010】
第2の手段は、液体噴出器であり、
第1の手段である液体噴出器用ポンプシリンダ2と、このポンプシリンダ2の胴部10内面を昇降可能な筒状ピストンを下半部に有する作動部材40と、この作動部材40の下半部とポンプシリンダ2の下部との間に介装されたスプリング52とを具備する。
【0011】
本手段は、図4に示すように、上述のポンプシリンダ2を組み込んだ液体噴出器を提案している。
【発明の効果】
【0012】
第1の手段に係る発明によれば、ポンプシリンダの胴部10に複数の剛性リブ12を縦設したから、ポンプシリンダ2の強度を落とさずに胴部10をスリム化(肉薄化)できる。
また第1の手段に係る発明によれば、上記剛性リブ12の高さhを剛性リブ12同士の距離rαよりも小さくなるようにしたから、軽量化に寄与する。
さらに第1の手段に係る発明によれば、剛性リブ12の周方向の巾tを胴部10の筒壁の径方向の厚みtの半分以下としたから、内周面にヒケが発生する虞を低減できる。
第2の手段に係る発明によれば、上記第1の手段のポンプシリンダを採用したから、機能性を損なわずに軽量な液体噴出器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る液体噴出器用ポンプシリンダの半断面図である。
図2図1のポンプシリンダの底面図である。
図3図1のポンプシリンダの要部の横断面図である。
図4図1のポンプシリンダを含む液体噴出器の縦断面図である。
図5図1のポンプシリンダの設計手法の説明図であり、同図(A)はこのポンプシリンダの横断面を、同図(B)はその横断面の一部拡大図である。
図6図5との対比例であるポンプシリンダの説明図であり、同図(A)はこのポンプシリンダの横断面を、同図(B)はその横断面の一部拡大図である。
図7】本発明の参考例であるポンプシリンダの半断面図である。
図8】従来のポンプシリンダの半断面図である。
図9】従来のポンプシリンダの横断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1から図4を用いて、本発明の実施形態に係るポンプシリンダ2を含む液体噴出器を説明する。説明の都合上、従来公知である部分から解説をする。
【0015】
上記液体噴出器は、図4に示す如く、ポンプシリンダ2と、装着部材20と、抜止め部材26と、弁機構36と、作動部材40と、スプリング52とからなる。これら各部材は、特にことわらない限り合成樹脂で成形することができる。
【0016】
ポンプシリンダ2は、大径筒状の頭部4と、中径筒状の胴部10と、小径筒状の脚筒部18とで構成されている。
【0017】
上記頭部4は、その下半部4aの外周面から鍔部6を突出しており、かつ上半部4bの外周面に抜止め用突条8を周設している。また鍔部6の下面にはパッキン7が取り付けられている。
【0018】
上記胴部10は、上記頭部4の下端部から下方へ長く垂下している。この胴部10の上部には通気孔11を開口しており、また胴部10の内周面下端には、弁座を兼ねる内向きフランジ16を付設している。この内向きフランジ16の上面内周部には環状の隆起部を設ける。
【0019】
上記脚筒部18は、上記内向きフランジ16の下面内周部から垂下している。この脚筒部18は、吸上げ用パイプP嵌合用の筒部である。
【0020】
装着部材20は、上記ポンプシリンダ2を、図示しない容器体の口頸部に装着するための部材である。この装着部材20は、上記口頸部外面へ螺着するための装着筒22の上端からフランジ状頂壁23を内方突出し、このフランジ状頂壁23と上記口頸部の上端面との間にポンプシリンダ2の鍔部6及びパッキン7を挟持することが可能に設ける。
【0021】
抜止め部材26は、リング状頂壁28の下面の内周部から2重筒状の抜止め筒部30を、その下面の外周部から外筒部32を、両者の間の下面部分から嵌合筒部34を、それぞれ垂下している。そして上記嵌合筒部34を上記ポンプシリンダ2の頭部4の上半部4b外面に嵌着させている。また抜止め筒部30はポンプシリンダ2内に挿入させている。
【0022】
弁機構36は、有頂筒形で下端部を大径とした筒体であり、ポンプシリンダ2の胴部10下部内に取り付けている。この筒体の下端部内面には弁板を昇降可能に付設しており、この弁板と前記内向きフランジ16とで吸込弁38を形成している。
【0023】
作動部材40は、上記胴部10の内面を昇降自在に嵌合させた筒状ピストン42から筒状のステム44を起立するとともに、このステム44の上端部にノズルヘッド46を付設している。図示例では、ノズルヘッドの頂壁裏面から垂下する連結管部48をステム44の上端部に嵌合させている。その連結管部48はノズル50に連通している。また上記ステム44の上部内には吐出弁45を形成する。さらにノズルヘッド46の外周壁47を、上記抜止め部材26の外筒部32に螺合させている。
【0024】
スプリング52は、弁機構36の下部と作動部材40の下部との間に介装されている。
【0025】
上記構成によれば、液体噴出器を液体容器の口頸部に装着した後にノズルヘッド46の外周壁47を抜止め部材26の外筒部32から螺脱させると、スプリング52の弾性力によりノズルヘッド46が上昇する。このノズルヘッド46を昇降させることで液体容器から吸込弁38を介してポンプシリンダ2内へ液体を吸い込み、かつ吐出弁45を介してノズル50から液体を噴出することができる。
【0026】
本発明においては、上記ポンプシリンダ2の胴部10を肉薄に形成するとともに、図2及び図3に示す如く、胴部10の外周面全体に対して、等しい距離rαを存して複数の剛性リブ12を縦設する。複数の剛性リブ12は、相互に等しい長さで、胴部10の上下方向のほぼ全体に亘るように形成する。また剛性リブの形成箇所以外の胴部10の厚さは、頭部4及び脚筒部18の厚さより小としている。
【0027】
剛性リブ12の高さhは、図3に示す剛性リブ12同士の距離rαよりも小さくすることが望ましい。そうしなければ、ポンプシリンダ2の重量が却って大きくなるおそれがあるからである。
【0028】
また剛性リブ12の周方向の巾tは、剛性リブ形成箇所を除く胴部10の厚みtの半分以下とすることが好適である。こうすることで胴部10の内周面にヒケを生ずるリスクを低減することができる。
【0029】
[実施例]
{従来例}
本発明によるポンプシリンダを薄肉化する手順を、具体例を挙げて説明する。図8に従来のポンプシリンダの例を挙げる。その胴部の厚さtは1.2mmであり、胴部の重量が2.6g、ポンプシリンダの全重量が5.0gであるものとする。
【0030】
{対比例}
仮に剛性リブを付さずに胴部の厚さを低減させるとする(図7参照)。例えば胴部の厚さtを0.75mmとすると、胴部の重量は1.49gであり、そしてポンプシリンダの全重量は3.46gとなる。しかしながら、これでは胴部の強度が不足し、例えば胴部が外方にふくらんだり、ピストンとの摺動で上に伸びたりするという問題を生ずる。
【0031】
{実施例}
そこで図1図4に示すように胴部10の外周面に剛性リブ12を付設することを考える。胴部10の最大厚さtmaxは、[剛性リブの付設箇所以外の胴部の厚さt]+[剛性リブの高さh]である。胴部の厚さtを上述の対比例と同じ0.75mmとし、そして胴部10の最大厚さが上記従来例の厚さ1.2mmを超えないように例えば0.4mmと設定する。また剛性リブ12の数は図示のように25個とする。ポンプシリンダ2の素材は例えばPP(ポリプロピレン)とすることができる。そうすると胴部10の重量は1.63 gであり、ポンプシリンダ2の全重量は3.59gとなった。これにより、従来品より軽量となりかつ強度も確保することができる。
【0032】
ここで厚さtの胴部を有する従来のポンプシリンダの構成から、厚さtの胴部10に巾tの剛性リブ12を付設したポンプシリンダを設計する方法について、図5図6を参照して説明する。
【0033】
図6はt+t>tとした場合のポンプシリンダの横断面図及びその一部拡大図である。同図では、剛性リブ12の高さhは数式1(h<rα)を満たす範囲で、また剛性リブ12の巾tは数式2(t≦t/2)を満たす範囲でそれぞれ上限値に近い大きさとしている。しかしこれでは、剛性リブ12の本数次第ではポンプシリンダの横断面積が過剰に大きくなってしまう。
【0034】
他方、図5の例では、剛性リブ12の巾tが、ポンプシリンダの胴部を肉薄化した巾(t−t)を超えないようにしている。換言すれば次式が成立する。
[数式3]t+t<t
【0035】
この数式3と前述の数式1(h<rα)とを用いることで、ポンプシリンダを軽量化することを確実にすることができる。そして剛性リブ12の高さhをrαよりも小さくする程度を調整することで、簡易にポンプシリンダの軽量化を実現することができる所要量の軽量化を達成することができる。
【0036】
またポンプシリンダ2の胴部10を肉薄化する前と後との肉厚の割合をa=t/tとする。図8から図1の形態へのポンプシリンダ2を肉薄化する場合には、a=0.75/1.2=0.625である。常識的に肉薄化を行う範囲を、1<a≦0.5としてaを用いて数式3を表すと、t+t<a−1×tであるから、これより次式が得られる。
[数式4]t<(a−1−1)×t (但しaは定数で1<a≦0.5)
この式の条件を満たすようにポンプシリンダCの構成を設計することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
2…ポンプシリンダ 4…頭部 4a…下半部 4b…上半部 6…鍔部 7…パッキン
8…抜止め用突条 10…胴部 11…通気孔 12…剛性リブ
16…内向きフランジ 18…脚筒部
20…装着部材 22…装着筒 23…フランジ状頂壁
26…抜止め部材 28…リング状頂壁 30…抜止め筒部 32…外筒部 34…嵌合筒部
36…弁機構 38…吸込弁
40…作動部材 42…筒状ピストン 44…ステム 45…吐出弁
46…ノズルヘッド 47…外周壁 48…連結管部 50…ノズル 52…スプリング
h…剛性リブの高さ rα…剛性リブ間の距離 P…吸上げ用パイプ
…胴部の厚さ t…剛性リブの巾
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9