【実施例】
【0013】
以下、実施例に基いて、本発明をさらに詳細に説明する。
【0014】
パイレックス(登録商標)ガラス製容器の中に金属Ba(純度99.99%、Aldrich Chemical Company, Inc.製)を数十mgとシリコン基板(大きさ約5×20×1mm
3)とを入れた後、ガス導入パイプとバルブの付いたステンレス製キャップとo−リングで容器を封じ、10
−2Torr以下に減圧した。容器の一部をドライアイス・2−プロパノール寒剤で冷却し、この容器の中にアンモニアガス(純度99.999%以上、ジャパンファインプロダクツ株式会社製)を約8ml凝結させた。アンモニアの液化と同時に容器内に入れてあったBaが液体アンモニア中に溶解した。この溶液にシリコン基板を浸した。その後、アンモニアを蒸発させることで、シリコン基板上に、極薄から厚膜のBa膜を形成した(たとえば10μm)。
【0015】
さらにこのシリコン基板を500℃〜750℃で熱処理することで、シリサイド化を促進させ、BaSi
2、BaSiなどのシリサイド膜、あるいはシリサイド層を基板上に形成させる。
【0016】
なお、Baをアンモニア溶液に溶解後、溶液の濾過や上澄みを利用することにより、金属Baに含まれる酸化物や介在物等の不純物や、アンモニア中に含まれる水等の不純物との反応で生じた酸化物を除去することができる。あるいは、Naを使ってアンモニア溶液を精製することで、育成するBa膜の純度を向上させることもできる。これは一般に行われている液体アンモニアの高純度化の方法である。Baとアンモニアの両方を高純度化する場合には、Naの代わりにBaを入れ、液体アンモニアをつくって溶解させた後、フィルターを通して、直接Si基板を入れた側に溶液を流し込めばよい。
【0017】
図2に示したセラミックフィルター付きのH型セルを使用し、Baと液体アンモニアの両方を高純度化した上でSi基板上に金属Baを被覆する例を説明する。
【0018】
図示したパイレックスガラス製のH型セルの右側に被覆用のBaを入れておき、そこへドライアイス・2−プロパノール寒剤で冷却しながらアンモニアを注入して凝結させ、この液体アンモニアにBaを溶解する(なお、
図2で右側のセルに「Ba(またはNa)」と書いてあるのは、Baの代わりにNaを使用する場合についても図示しているからである)。これにより液体アンモニア中の不純物をBaと反応させ、またBa中の不純物を液体アンモニアと反応させ、析出させた。H型セルの左側には被覆対象のSi基板を収容しておき、Baを溶解した液体アンモニアをセラミックフィルターを介して右側のセルから左側のセルに移動させる。これにより、液体アンモニア中に析出した上記不純物はセラミックスフィルターにトラップされるので、Si基板を高純度のBaアンモニア溶液に浸漬することができる。この段階では左側のセルを上記寒剤で冷却する。その後、アンモニア溶媒を全て蒸発させてSi基板上などに金属Baを析出させてから、このSi基板を取り出す。このようにして金属Baで被覆されたSi基板に対して上述した加熱を行うことによって、Baシリサイドが形成されたSi基板を得る。あるいは、Si基板を取り出してアンモニアを蒸発させた後、上述した加熱を行うことによって、Si基板上にBaシリサイドを形成してもよい。
【0019】
なお、Baシリサイドを形成したSi基板を連続的に製造する量産プロセスの概念的な構成を
図3に示す。この構成では左側からSi基板を図示しない搬送機構により連続的に装置へ供給する。これらのSi基板を右方向に搬送しながら、冷凍機により液体アンモニアの沸点より低い温度(例えば約−34℃)に冷却されているBaアンモニア溶液に浸漬し、取り出して乾燥する。乾燥後のSi基板をヒーター部に送って適切な温度、例えば500℃〜750℃に加熱することにより、その表面のBaをSiと反応させてそこにBaシリサイドを形成する。また、ヒーター部の右側からArガス流を送ることによってヒーター部内を不活性ガス雰囲気とする。このArガス流はこの装置内を基板搬送方向と逆に流れ、乾燥中の基板や基板浸漬を行う区画などからのアンモニアガスと共に装置外部のアンモニア回収装置へ送られる。
【0020】
なお、
図3は概念的な構成を示すだけであるので、実際の装置構成は必ずしもこれと同一である必要はないことに注意すべきである。たとえば、浸漬を行う区画と乾燥を行う区画とヒーター部の間には何の仕切りもないように図示されているが、特に浸漬を行う区画は他と比べて低温にする必要があるので、他の区画からの熱の流入をできるだけ阻止して液体アンモニアの過大な蒸発を防止するための遮蔽機構を設けることができる。
【0021】
図4に示すBaとSiの状態図より明らかなように、Baシリサイドにはいくつかの化合物が存在する。上述したシリサイド形成プロセスを複数回繰り返すことで、所望の化合物の膜を所望の厚さで形成できる。つまり、先ず目的に合ったシリサイド化合物(例えばBaSi
2)を優先的に成長させ、それをテンプレートとしてこのプロセスを繰り返すことによって、最初に成長したものと同じシリサイドを厚く成長させることも可能である。
【0022】
本発明では、従来シリサイド膜の育成のために用いられていた高真空プロセス(蒸着やMBEなど)を用いない。また、アンモニアを使ったBaの溶解・塗布、溶媒蒸発によるBaのSi上への析出は室温以下のプロセスであるため、電力や熱の消費が抑制できる。このため、本発明は大面積の基板を低価格で製造することが強く求められる太陽電池製造プロセスに最適の方法である。
【0023】
本方法では、一層のBa膜を育成するのに、金属バリウムのアンモニア溶液中に1度浸す、あるいは1回塗布するだけで良く、溶液中のBa濃度を制御することで、任意の厚さのBaが得られる。具体的には、従来行われてきた典型的な気相成長によるBa膜成長に比べて100倍以上早い育成速度を達成することができる。
【0024】
図5に示すように、本発明の方法により、十分な厚みのBaシリサイド薄膜が得られる。
図5は作製条件を変えて作製した二種類のBaシリサイド薄膜を示す。厚いBaシリサイド薄膜を得ることを優先させて条件設定して形成した(a)領域では、各微粒子が3次元的に重なっており、不均一であるが、均一なBaシリサイド薄膜を得ることを優先させた条件設定で形成した(b)領域では、形成されたシリサイドは薄く均一である。なお、Baシリサイド薄膜の厚さに影響を与える主要な要因は液体アンモニアに溶解した金属Baの濃度であった。条件を最適化することによって緻密なBaシリサイドの膜が得られた。
【0025】
図5の試料において、探針を落とし電流電圧曲線(I−V曲線)を測定した結果を
図6に示す。
図6からわかるように、各点での整流特性は異なっているが、金属光沢を帯びた領域で良い整流特性が得られた。理想的なシリサイド/シリコン接合は、良い整流特性を示し、太陽電池として十分応用可能なことが示された。なお、Baシリサイド薄膜の色は主にBa膜の厚さを反映している。適切な厚さのBa膜を熱処理することによって金属光沢を持つBaSi
2を形成できる。これに対して、黒色、白色等のBaシリサイド薄膜では未反応のBaが残ってしまい、これにより絶縁的な挙動を示したと考えられる。少なくとも白色のBaシリサイド膜はBaの酸化物を含んでいると考えられる。