(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979681
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】黒ニンニク含有機能性健康キムチの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23B 7/10 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
A23B7/10 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-208192(P2014-208192)
(22)【出願日】2014年10月9日
(65)【公開番号】特開2015-204821(P2015-204821A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2014年10月27日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0048026
(32)【優先日】2014年4月22日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514257251
【氏名又は名称】デ イル カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】ホン、グムソク
【審査官】
北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0134358(KR,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0022485(KR,A)
【文献】
国際公開第2013/073733(WO,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0128362(KR,A)
【文献】
韓国登録特許第10−0774498(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B 7/00−9/34
A23L 19/00−19/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FROSTI(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
玉葱、生姜、大根おろしのうち少なくとも何れか一種を含む副材料を準備する段階と、黒ニンニクペーストを調製する段階と、液状塩辛及び薬味を混合して1次混合物を調製する段階と、前記1次混合物及び前記副材料を混合して2次混合物を調製する段階と、前記2次混合物に、海藻ペースト及び前記黒ニンニクペーストを混合して3次混合物を調製する段階と、洗浄過程、及び脱水過程を経て得られる浸漬された白菜と前記3次混合物とを混合する段階とを備える黒ニンニク含有機能性健康キムチの製造方法。
【請求項2】
前記黒ニンニクペーストの調製段階は、黒ニンニクを調製する段階と、前記黒ニンニクをすりおろすか或いは潰すことで柔らかい状態の黒ニンニクを調製する段階と、すりおろすか或いは潰して得られた柔らかい状態の黒ニンニクと精製水とを混合して前記黒ニンニクペーストを調製する段階とを備える、請求項1に記載の黒ニンニク含有機能性健康キムチの製造方法。
【請求項3】
前記黒ニンニクを調製する段階は、ヨモギの燻焼によって得られる燻煙で満たされた燻煙装置にニンニクを配置する段階と、前記ヨモギの燻焼によって得られた燻煙に露出したニンニクを50〜100℃の間の温度で維持された乾燥機中で5〜20時間熟成させる段階と、前記過程を通じて熟成されたニンニクを発酵紅参抽出液又は緑茶抽出液を希釈させて調製した浸漬液に浸漬させる段階と、浸漬されたニンニクを50〜100℃の間の温度で維持された乾燥機中で100〜300時間熟成させる段階と、浸漬された後、熟成されたニンニクを20〜50℃の間の低い温度で維持された乾燥機で30〜100時間熟成させる段階と、前記低い温度で熟成されたニンニクを冷却させて前記黒ニンニクを調製する段階とを備える、請求項2に記載の黒ニンニク含有機能性健康キムチの製造方法。
【請求項4】
前記海藻ペーストは、昆布、乾燥ワカメをみじん切りにして、精製水を添加し、釜に入れて加熱及び撹拌を行うことによって調製することを特徴とする、請求項1に記載の黒ニンニク含有機能性健康キムチの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キムチの製造方法に関し、特に、黒ニンニクを含有するキムチを製造する、黒ニンニク含有機能性健康キムチの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キムチは、韓国伝統の発酵食品であり、韓国人の食生活には欠かせない重要な食品である。
【0003】
ニンニクは、古代エジプト、中国、インド等の地域で有史以前から栽培されてきた食材であり、韓国の檀君神話にも登場する非常に古くからの食材である。
【0004】
ニンニクは、特に肺炎又は化膿性疾患の治療剤として用いられ、重金属中毒に対する解毒作用、坑癌作用、抗菌作用等に優れ、動脈硬化の予防のために用いられている。
【0005】
前記のような優れた性能を有するニンニクは、キムチの基本的な薬味として用いられている。
【0006】
しかしながら、ニンニクは、独特の臭気を有しており、このようなニンニクの独特の臭気を好まないヒトもいる。ニンニクの独特の臭気を好まないヒトは、キムチに含まれる薬味から生じるニンニクの臭気も敬遠し、それ故にキムチを食べることに負担を感じるヒトもいる。
【0007】
すなわち、キムチが好きなヒトの中でも、キムチの薬味から生じるニンニクの臭気を敬遠するヒトはキムチを食べることに負担を感じている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためのものであり、ニンニク独特の臭気が少ない黒ニンニクを用いてキムチを製造する、黒ニンニク含有機能性健康キムチの製造方法を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した技術的課題を解決するための本発明による黒ニンニク含有機能性健康キムチの製造方法は、玉葱、生姜、大根おろしのうち少なくとも何れか一種を含む副材料を準備する段階と、黒ニンニクペーストを調製する段階と、液状塩辛及び薬味を混合して1次混合物を調製する段階と、前記1次混合物及び前記副材料を混合して2次混合物を調製する段階と、前記2次混合物に、海藻ペースト及び前記黒ニンニクペーストを混合して3次混合物を調製する段階と、浸漬過程、洗浄過程、及び脱水過程を経て得られる浸漬された白菜と前記3次混合物とを混合する段階とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって製造される黒ニンニクキムチは、黒ニンニクを用いて製造されるため、ニンニク独特の臭気を敬遠するヒトも本発明によって製造される黒ニンニクキムチを美味しく食べることができる。すなわち、本発明によって製造される黒ニンニクキムチは、キムチが好きながらもニンニクの臭気を敬遠するヒトのための機能性健康キムチである。
【0011】
また、発酵熟成させた黒ニンニクは、生のニンニクより8倍以上の抗酸化活性を有する。すなわち、黒ニンニクの主要成分は、アリシン、ジアリルジスルフィド、S−アリルシステイン等であり、このような成分は、坑癌、抗酸化、殺菌効果、炎症治療及びスタミナ強化の効果を有する。従って、黒ニンニクをキムチに加えることで、風味のみならず健康にも有益なキムチを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による黒ニンニク含有機能性健康キムチの製造方法の一実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0014】
図1は、本発明による黒ニンニク含有機能性健康キムチの製造方法の一実施形態のフローチャートである。
【0015】
本発明による黒ニンニク含有機能性健康キムチの製造方法は、
図1に示すように、玉葱、生姜、大根おろしのうち少なくとも何れか一種を含む副材料を準備する段階S102と、黒ニンニクペーストを調製する段階S104と、液状塩辛及び薬味を混合して1次混合物を調製する段階S106と、前記1次混合物及び前記副材料を混合して2次混合物を調製する段階S108と、前記2次混合物に、海藻ペースト及び前記黒ニンニクペーストを混合して3次混合物を調製する段階S110と、浸漬過程、洗浄過程、及び脱水過程を経て得られる浸漬された白菜と前記3次混合物とを混合して黒ニンニクキムチを製造する段階S112とを備える。
【0016】
<1.副材料を準備する過程S102>
副材料としては、玉葱、大根おろし、生姜等を含むことができ、千切り大根も含むことができる。
【0017】
製造者は、まず、玉葱、生姜、大根等の皮を剥いた後、きれいに洗浄する。
【0018】
また、製造者は、必要に応じて、大根をすりおろして大根おろし等の液状の副材料を準備してもよく、大根を千切りして準備してもよい。
【0019】
<2.黒ニンニクペースト調製過程S104>
黒ニンニクペーストは、すりおろすか或いは潰すことによって、柔らかい状態になった黒ニンニクを精製水等と混合することで調製されるものであって、前記黒ニンニクペーストは、以下に示す様々な方法で調製することができる。
【0020】
第一に、ニンニクを薫蒸する過程を遂行する。
【0021】
薫蒸過程は、ニンニク独特の臭気を除去し、ニンニクの表皮に付着している雑菌をヨモギの燻焼によって得られた燻煙で除去する過程である。すなわち薫蒸過程ではヨモギの燻焼によって得られた燻煙で満たされた燻煙装置にニンニクを配置する。
【0022】
ヨモギの燻煙は、殺菌作用、抗菌作用、及び脱臭作用を有する。従って、ヨモギの燻煙を用いた薫蒸過程を経て、ニンニク独特の臭気が除去されると同時に、ヨモギの香りがニンニクに染み付くようにして、ニンニクの臭気を低減させ、ニンニクの表面に存在する細菌等の殺菌及び抗菌効果が得られる。
【0023】
第二に、薫蒸過程を経たニンニクを1次熟成させる過程を遂行する。
【0024】
薫蒸過程を経たニンニクは、50〜100℃の間の温度で維持された乾燥機中で5〜20時間熟成される。この場合、前記乾燥機の温度は各時間帯別に異なるように維持され得る。
【0025】
第三に、1次熟成されたニンニクを浸漬させる過程を遂行する。
【0026】
前記浸漬過程では、発酵人参抽出液、緑茶抽出液等を希釈させて調製した浸漬液に、1次熟成されたニンニクを10〜14時間程度浸漬させる。
【0027】
前記浸漬液に含まれる緑茶抽出液にはポリフェノールが非常に多く含まれる。従って、ニンニクが一定時間浸漬された場合、ポリフェノールがニンニクに吸収される。前記ポリフェノールには、カテキン、フラボノール、クロロゲン酸(chlorogenic acid)、タンニン酸等の成分が含まれる。また、前記緑茶抽出液としては、エステル型EGCg(Epigallocatechingallate)が多く含まれる。前記ポリフェノールは、体内で解毒作用、収斂作用、殺菌作用等をする有益な成分であり、前記EGCgは、発癌物質抑制、免疫力増強、抗酸化作用等の効能を有する。
【0028】
また、前記浸漬液に含まれる発酵紅参抽出液は、紅参を発酵させて機能成分を大幅に強化した発酵紅参の抽出液が用いられ得る。
【0029】
前記浸漬過程を通じて、ニンニクの有効成分の含有量を増加することができ、ニンニクの変質を防ぐことができる。
【0030】
第四に、浸漬過程を経たニンニクを2次熟成させる過程を遂行する。
【0031】
浸漬液から取り出したニンニクは、50〜100℃間の温度で維持された乾燥機中で100〜300時間熟成される。この場合、前記乾燥機の温度は、各時間帯別に異なるように維持され得る。
【0032】
2次熟成過程は、ニンニクを摂取する際の胸やけ、或いはニンニク独特の苦い臭気を低減又は除去するためのものであり、適切な温度管理が重要である。
【0033】
前記のような2次熟成過程を通じて、ニンニクに含まれるアリシン等が、体に有益な有機硫黄化合物に変化され得る。
【0034】
すなわち、前記薫蒸過程から前記2次熟成過程を経たニンニクは、様々な有機硫黄化合物を含んでいるため、抗酸化活性を示す。
【0035】
第五に、2次熟成過程を経たニンニクを3次熟成させる過程を遂行する。
【0036】
2次熟成過程を経たニンニクは、20〜50℃の間の温度で維持された乾燥機で30〜100時間熟成される。3次熟成過程は、2次熟成過程より低温で行われる。
【0037】
すなわち、2次熟成過程において高温で処理されたニンニクは、3次熟成過程を通じて低温状態で熟成される。
【0038】
3次熟成過程では、前記アリシン等のようにニンニクに含まれる独特の有効成分が有機硫黄化合物に変化され得る。
【0039】
第六に、3次熟成過程を経たニンニクを冷却させる過程を通じて黒ニンニクを製造する。
【0040】
冷却過程では、3次熟成過程を経たニンニクを冷風で冷却する。
【0041】
すなわち、3次熟成過程を経たニンニクが10〜20℃に維持された日陰で70〜170時間乾燥することで黒ニンニクを製造することができる。
【0042】
第七に、黒ニンニクと精製水とを混合させる過程により黒ニンニクペーストを製造する。
【0043】
このため、前記薫蒸過程又は冷却過程を経て製造された黒ニンニクをすりおろすか或いは潰すことによって柔らかい状態にする過程を遂行する。
【0044】
すりおろすか或いは潰すことによって柔らかい状態にした黒ニンニクと精製水等とを混合することで黒ニンニクペーストを製造する。
【0045】
<3.1次混合物を製造する過程S106>
イワシの塩漬け、アミエビの塩漬け等の液状塩辛に、化学調味料、砂糖、塩、唐辛子粉等の薬味を混合して1次混合物を調製する。
【0046】
1次混合物に含まれる液状塩辛及び薬味の種類は製造者によって選択し得る。
【0047】
<4.2次混合物を製造する過程S108>
前記1次混合物に、大根おろし、玉葱、生姜のような前記副材料を混合して2次混合物を調製する。
【0048】
2次混合物に含まれる副材料もまた、製造者によって選択され得る。
【0049】
<5.3次混合物を製造する過程S110>
前記2次混合物に、海藻ペーストと前記黒ニンニクペーストとを混合して3次混合物を調製する。
【0050】
前記黒ニンニクペーストは前記のような過程を通じて調製することができる。
【0051】
前記海藻ペーストは、すりおろすか或いは潰すことによって柔らかい状態にした海藻と精製水等とを混合することで調製されるものであり、前記海藻ペーストは以下の方法により調製することができる。
【0052】
すなわち、前記海藻ペーストとして用いられる海藻は、昆布、乾燥ワカメ等が挙げられる。前記海藻をみじん切りにして、精製水を添加し、釜に入れて加熱及び撹拌を行うことで前記海藻ペーストを調製することができる。調製された海藻ペーストは深緑色の液体状であり異臭がない。
【0053】
また、前記3次混合物は千切り大根を含み得る。
【0054】
前記千切り大根は、前記副材料の準備過程S102で準備することができる。
【0055】
<6.3次混合物と浸漬された白菜とを混合して黒ニンニクキムチを製造する過程S112>
浸漬過程、洗浄過程、及び脱水過程を経て得られた浸漬された白菜と前記3次混合物とを混合することで黒ニンニクキムチの製造が完了する。
【0056】
すなわち、脱水した浸漬された白菜と前記3次混合物とを混合させて和える作業を通じて、黒ニンニクキムチを製造する。
【0057】
前記脱水過程では、浸漬過程及び洗浄過程を経て得られた白菜を2時間以上脱水する。
【0058】
<7.黒ニンニクキムチの特性分析>
前記のような本発明による黒ニンニク含有機能性健康キムチの製造方法によって製造された黒ニンニクキムチの特性は以下のとおりである。
【0059】
本発明によって製造された黒ニンニクキムチは、キムチを好きであるにも関わらずニンニクの臭気を嫌って敬遠してきた消費者のための機能性健康キムチである。本発明によって発酵熟成された黒ニンニクは生のニンニクより8倍以上の抗酸化活性を有する。
【0060】
本発明に適用される黒ニンニクの主要成分は、アリシン、ジアリルジスルフィド、S−アリルシステイン等であって、前記成分は、坑癌、抗酸化、及び殺菌効果、炎症治療、スタミナ強化の効果を有する。
【0061】
従って、黒ニンニクを含む黒ニンニクキムチは、機能性健康食品として利用され、ニンニク独特の臭気に負担を感じるヒトにも広く好まれ得る。
【0062】
本発明が属する技術分野における当業者は、本発明がその技術的思想又は必須特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施することができることを理解することができる。従って、上述の実施形態は、全ての側面における例示に過ぎず、これに限定されるものではないことを理解されたい。本発明の範囲は、前記発明の詳細な説明より後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、及びその等価概念から想到される全ての変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解析されるべきである。