特許第5979684号(P5979684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セラム インスティチュート オブ インディア リミテッドの特許一覧

特許5979684莢膜多糖の収量向上のための細菌培養方法
<>
  • 特許5979684-莢膜多糖の収量向上のための細菌培養方法 図000006
  • 特許5979684-莢膜多糖の収量向上のための細菌培養方法 図000007
  • 特許5979684-莢膜多糖の収量向上のための細菌培養方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979684
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】莢膜多糖の収量向上のための細菌培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20160817BHJP
   C12P 19/04 20060101ALN20160817BHJP
   C12R 1/46 20060101ALN20160817BHJP
【FI】
   C12N1/20 A
   !C12P19/04 C
   C12N1/20 A
   C12R1:46
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-546735(P2014-546735)
(86)(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公表番号】特表2015-500649(P2015-500649A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】IN2011000861
(87)【国際公開番号】WO2013088448
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】514152303
【氏名又は名称】セラム インスティチュート オブ インディア プライベイト リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴィナヤック, カプレ サブハッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジャーナ, スワパン クマール
(72)【発明者】
【氏名】スリバスタバ, アマール クマール
【審査官】 原 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−507501(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/080486(WO,A1)
【文献】 特表2009−513155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00−7/08
C12P 1/00−41/00
C12M 1/00−3/10
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS/WPIX/CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
莢膜多糖(CP)の産生量をより高くするためのストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)を培養する細菌培養方法であって、以下を含む方法:
(a)前記CPを発現する細菌株の接種源を提供すること;
(b)前記細菌株を、pH6.9乃至7.3で流加培養により発酵させること、但し、流加培地の添加速度が、前記pHを維持するためのアルカリ混合物の添加の速度と同等であり、かつ、前記アルカリ混合物がそれぞれ3対1の割合で8%の水酸化ナトリウム溶液及び20%の炭酸ナトリウム溶液を含むこと;
(c)培地を35〜38℃、50〜150rpmの攪拌下、0.1〜0.5vvmの空気流量で発酵させること。
【請求項2】
前記CPの収量における容積測定上の増加率が、回分培養又は連続培養の条件と比較して150〜400%である、請求項1に記載の細菌培養方法。
【請求項3】
前記CPの収量が900mg/L〜2000mg/Lである、請求項2に記載の細菌培養方法。
【請求項4】
前記流加培地が、少なくとも一つの炭素源、少なくとも一つの窒素源、少なくとも一つの塩、及び少なくとも一つのアミノ酸を含む、請求項1に記載の細菌培養方法。
【請求項5】
前記炭素源がグルコースである、請求項4に記載の細菌培養方法。
【請求項6】
前記窒素源が、以下の組成から選択されてなる、請求項4に記載の細菌培養方法:
酵母自己分解物、イースト・ナイトロジェン・ベース(yeast nitrogen base)、ペプトン、トリプトン、カザミノ酸、大豆粕、ハイソイ(Hy-Soy)、酵母エキス、及びトリプチック・ソイ・ブロス(tryptic soy broth)。
【請求項7】
前記塩が、硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、及びそれらの混合物から選択される、請求項4に記載の細菌培養方法。
【請求項8】
前記流加培地が、以下の成分を含む、請求項4に記載の細菌培養方法:100〜500g/Lの範囲のグルコース、1〜7.5g/Lの範囲の硫酸マグネシウム、40〜150g/Lの範囲のハイソヤ(Hy−Soya)、5〜50g/Lの範囲の酵母エキス、0.002〜0.005g/Lの範囲のチアミン塩酸塩、0.2〜0.5g/Lの範囲のシステイン、0.2〜0.5g/Lの範囲の塩化カルシウム。
【請求項9】
前記流加培地が、以下の成分を含む、請求項8に記載の細菌培養方法:100〜500g/Lの範囲のグルコース、5〜50g/Lの範囲の酵母エキス、0.002〜0.005g/Lの範囲のチアミン塩酸塩、0.2〜0.5g/Lの範囲のシステイン、0.2〜0.5g/Lの範囲の塩化カルシウム。
【請求項10】
前記流加培地が、以下の成分を含む、請求項8に記載の細菌培養方法:100〜200g/Lの範囲のグルコース、1〜3g/Lの範囲の硫酸マグネシウム、50〜150g/Lの範囲のハイソヤ(Hy−Soya)、及び15〜25g/Lの範囲の酵母エキス。
【請求項11】
前記アルカリ混合物中の水酸化ナトリウムの濃度が1.5〜3.0Mである、請求項1に記載の細菌培養方法。
【請求項12】
前記アルカリ混合物中の炭酸ナトリウムの濃度が10〜20w/v%である、請求項1に記載の細菌培養方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
莢膜多糖(以下、CPと略記する)は、各種細菌性疾患に関係する細菌の表面に見出される重要な免疫原である。この特徴により、ワクチンの設計において莢膜多糖が重要な要素となることに繋がる。莢膜多糖は、特に担体タンパク質に結合した場合に、免疫応答を誘発するのに有用であることが証明されている。
【0002】
通常、莢膜多糖は、複合培地において回分培養(batch culture)を用いて生産される(非特許文献1〜6を参照)。栄養素流加の従来型DOスタット(DO-stat)制御は、単に、栄養素の制限又は枯渇による(炭素基質の減少又は酸素消費若しくは酸素呼吸の停止に起因する)溶存酸素濃度(以下、DOと略記する)の上昇(rise)/急上昇(spike)の概念に基づくものである。DOスタット制御は、一定の制限値(DO設定値)以内の一定DOレベルで培養物を維持しようとする制御である。DOが該設定値を越えて上昇した場合には栄養素流加速度を増加させ、DOが該設定値を下回った場合には栄養流加速度を低下させることにより、前述の通り一定DOレベルで培養物を維持するものである。DOスタット法は、通常、栄養素の枯渇が急激なDO上昇に繋がる規定培地において、巧く機能する。しかしながら、DOスタット法は、しばしば、酵母エキス、トリプトン、ペプトン、カザミノ酸又はハイソイ(Hy-Soy)等の栄養価の高い複合栄養素を添加した培地では機能しない。栄養価の高い複合栄養素によれば、炭素源の制限又は枯渇の下でさえも、DOレベルが低く留まるように(つまり、明確なDO急上昇が無い)、アミノ酸異化作用を介して細胞維持及び細胞呼吸を支持することが可能である。
【0003】
培養増殖のために複合培地が用いられる場合、一旦炭素源が枯渇すると培養物pHは増加する傾向にあるため、DOスタットよりもpHスタット(pH-stat)法の方がより適当となり得る。DOスタット制御と同様に、pHスタット法は、pHが設定値を越えて上昇した場合には栄養素流加速度を増加させ、pHが設定値を下回った場合には栄養素流加速度を低下させることにより、設定値付近に培養物pHを一定維持するものである。しかしながら、栄養素枯渇による培養物pHの変化は、DOの変化よりも反応性が低いことから、pHスタットによる流加制御は、DOスタットと比較すると相対的に反応が鈍いものとなり得る。
【0004】
大抵の研究では、増殖速度、栄養素レベル及び代謝濃度が培養の際に変化する回分培養システムが用いられていた。このようなシステムでは、1つの因子が変化すると、増殖に関係したその他因子の変化を生じさせ、このようなその他因子の変化は生産量に予測し得ない影響を及ぼし得る。研究者は、連続培養(continuous culture)を用いることで、回分培養による増殖の際には相互に依存し合うパラメータ(例えば、増殖速度、栄養素濃度及び産物濃度、細胞密度等)をそれぞれ分離して定義することが可能になる。連続培養の際は、新鮮培地が固定速度で培養物に添加され、かつ細胞及び培地が一定の培養容量を維持する速度で除去される。
【0005】
灌流培養(perfusion culture)では、新鮮培地が固定速度で培養物に添加され、かつ細胞非含有使用済み培地が一定の培養容量を維持する速度で除去される。しかしながら、連続培養及び灌流培養は、安定性の問題とコンタミネーションを悪化させる傾向があり、さらに培地及び栄養素を連続流加することから幾分費用を要する。従って、前述の連続培養に伴う問題を克服することを目的として、莢膜多糖を高収量で生産するための連続培養に代わる代替法を見出す必要がある。
【0006】
連続培養の欠点を克服するための1つのアプローチが、特許文献1に例示されている。複合流加発酵プロセス(complex fed-batch fermentation process)が、莢膜多糖の生産に好ましい栄養環境及び増殖速度を維持するために開発された。このプロセスは、回分培養及び連続培養の手法の利点を組み合せたものであり、指数増殖期の拡張並びに発酵中の基質添加を制御する条件により高細胞密度を達成するものである。しかしながら、該複合流加発酵の手法は、複雑なアルゴリズムを有するソフトウェアを用いて発酵を管理するものである。
【0007】
他のアプローチが、特許文献2に開示されている。細菌を培養するための方法であって、培養が、酵母エキスの2回の瞬時添加、並びにその後に続くグルコースの直線的添加を含む方法が開発された。それぞれの添加は、指定OD(光学濃度)レベルで開始される。従って、この方法では、アルゴリズムを用いずに炭素源を直線的に添加したことが、先の複合流加発酵プロセスに対する改善点である。しかしながら、この方法は、ODの連続測定を必要とする極めて面倒な方法である。さらに、この方法は、常に変化する、生物体の必要条件(微小環境)を考慮していない。
【0008】
本発明は、驚くべき発見に基づくものであり、流加発酵の際の流加培地の添加速度が、予め設定したpHを維持するためのアルカリ混合物の添加速度と同等であることにより、従来の回分発酵法と比較してCP収量が容積測定上、増加する、新規流加方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2007/052168号
【特許文献2】国際公開第2010/0272755号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Shen et al. 2001 Vaccine 19: 850-61
【非特許文献2】Palazzi et al. 2004 J. Infect. Dis. 190:558-64
【非特許文献3】Merritt et al. 2000 J. Biotech. 81:189-97
【非特許文献4】Dassy & Fournier 1996 Infect. Immunol. 64:2408-14
【非特許文献5】Suarez et al. (2001) Appl . Env. Microbiol. 67:969-71
【非特許文献6】Wicken et al. (1983) J. Bact. 153:84-92
【発明の概要】
【0011】
本発明は、回分方式発酵と比較して莢膜多糖の生産性が3〜5倍増加する新規流加発酵法を提供するものである。
【0012】
特に、本方法は、容積測定上の莢膜多糖(CP)産生量をより高くするための莢膜形成細菌を培養する方法であって、以下を含む方法に関する:(a)前記CPを発現する細菌株の接種源を提供すること;(b)前記菌株を、pH7.2で発酵させることにより培養すること、但し、流加培地の添加速度が、予め設定したpHを維持するためのアルカリ混合物添加の速度と同等である;(c)培地を35〜38℃、50〜150rpmの攪拌下、0.1〜0.5vvmの空気流量で発酵させること。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】各種流加法ごとの肺炎球菌血清型1多糖(流加発酵)の収量を示す図である。
図2】pHを維持するためのアルカリ混合物における様々な塩基比率に関する肺炎球菌血清型1多糖の収量(流加発酵)を示す図である。
図3】回分発酵と比較した、流加発酵による肺炎球菌血清型1、5、6A、6B、7F、9V、14、19A、19F及び23F多糖の収量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、細菌を培養するプロセスであって、流加発酵の際の流加添加の速度が、予め設定したpHを維持するためのアルカリ混合物添加の速度と同等である、プロセスを提供する。
【0015】
本発明のその他態様によれば、特定の比率のNaOH及びNaCOから成るアルカリ混合物が、a)予め設定したpHを維持するために、かつb)より高い莢膜多糖収量を得るために用いられ得る。NaCO単独の使用は、増殖及びpH制御に好適な培地を提供し得るが、このようなNaCOの制限条件は、莢膜多糖を産生するのには過酷な条件であり、NaCO必要量を高くしてしまう。従って、NaOHとNaCOとの混合物がpHを維持するために用いられる場合、増殖は低くなり得るが、アルカリ消費量がより少ないことに起因して、莢膜多糖の特異的生産性並びに容積測定上の生産性をより高める。
【0016】
本発明によれば、グルコースが乳酸に変化し、pHが低下し始めた際には、pHは、アルカリ混合物を添加することにより維持することができ、それと同時に培地中の枯渇したグルコースを補給するためにグルコースが添加される。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、発酵流加成分は、少なくとも1つの炭素源、少なくとも1つの窒素源、少なくとも1つのマグネシウム源を含むことができ、それら成分は、アルカリ混合物の添加速度と同等の流加速度で、特定の細胞密度の回分発酵に流加され得る。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、前記アルカリ混合物は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、及び水酸化カルシウムから成る群から選択される少なくとも2つの塩基を含有する。また、水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムとの指定比率が、容積測定上のCP産生量をより高めるように選択される。
【0019】
炭酸ナトリウムに対する水酸化ナトリウムの指定比率は、1:1〜4:1であり得る。
【0020】
本発明によれば、NaOHは、pHを維持するための混合物としてNaCOと共に用いられた場合に、CPの生産性をさらに増強した。pHを維持するためにNaCOを単独で用いた場合、増殖に好適な培地を提供した。しかしながら、NaCOの同制限条件では、莢膜多糖を産生するのには過酷な条件を提供するものであった。pHを維持するためにNaOHとNaCOとの混合物を使用した場合、増殖は低かったが、CPの生産性は増加した。
【0021】
好ましくは、本発明によれば、流加培養においてストレプトコッカス属(Streptococcus)を培養する方法であって、高収量のCPが生産される、方法が提供される。好ましくは、培養培地からのCPの収量が、900〜2000mg/L、或いはそれ以上である。従って、本流加培養法によれば、容積測定上の収量におけるCPの生産が回分培養と比較して150〜350%増加することが可能になる。場合によっては、収量が、回分培養を用いて生産した量の少なくとも2倍、より好ましくは4倍になり得る。
【0022】
本発明の他の実施形態によれば、前記流加培地は、少なくとも1つの炭素源、少なくとも1つの窒素源、少なくとも1つの塩、及び少なくとも1つのアミノ酸を含み得る。
好ましくは、前記炭素源はグルコースである。窒素源は、酵母自己分解物、イースト・ナイトロジェン・ベース(yeast nitrogen base)、ペプトン、トリプトン、カザミノ酸、大豆粕、ハイソイ(Hy-Soy)、酵母エキス、及びトリプチック・ソイ・ブロス(tryptic soy broth)から選択され得る。塩は、硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、及びそれらの混合物から選択され得る。
【0023】
本発明によれば、流加培地は、以下の成分を含み得る:100〜500g/Lの範囲のグルコース、1〜7.5g/Lの範囲の硫酸マグネシウム、40〜150g/Lの範囲のハイソヤ(Hy-Soya)、5〜50g/Lの範囲の酵母エキス、0.002〜0.005g/Lの範囲のチアミン塩酸塩、0.2〜0.5g/Lの範囲のシステイン、0.2〜0.5g/Lの範囲の塩化カルシウム。
【0024】
また、流加培地は、以下の成分を含み得る:100〜500g/Lの範囲のグルコース、5〜50g/Lの範囲の酵母エキス、0.002〜0.005g/Lの範囲のチアミン塩酸塩、0.2〜0.5g/Lの範囲のシステイン、0.2〜0.5g/Lの範囲の塩化カルシウム。
【0025】
或いは、前記流加培地は、以下の成分を含み得る:100〜500g/Lの範囲のグルコース、0.5〜7.5g/Lの範囲の硫酸マグネシウム、40〜150g/Lの範囲のハイソヤ(Hy-Soya)、及び5〜50g/Lの範囲の酵母エキス。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、流加培地は、以下の成分を含み得る:100〜200g/Lの範囲のグルコース、1〜3g/Lの範囲の硫酸マグネシウム、50〜150g/Lの範囲のハイソヤ(Hy-Soya)、及び15〜25g/Lの範囲の酵母エキス。
【0027】
本発明によれば、前記新規流加培養プロセスが、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)、ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)、クレブシエラ属(Klebsiella)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)血清型A、C、W135、Y及びX、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、サルモネラ・パラチフィ(Salmonella paratyphi)、シゲラ・ディゼンテリエ(Shigella dysenteriae)、シゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri)、シゲラ・ソネイ(Shigella sonnei)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholera)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、A群連鎖球菌(Group A Streptococcus)、B群連鎖球菌(Group B streptococcus)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)及びストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)から成る群から選択されるものの莢膜多糖を調製するために利用され得る。
【実施例】
【0028】
<実施例1>ストレプトコッカス・ニューモニエ血清型1に関する流加培養開発の最適化のための流加法評価:
各種流加法を、流加について評価した。DOスタット法は、ストレプトコッカス・ニューモニエの発酵には適用可能ではなかった。ストレプトコッカス・ニューモニエは、微好気性細菌であるので、発酵プロセスの際は、表面のみの曝気(エアレーション)が必要であった。回分方式発酵の際、発酵槽におけるストレプトコッカス・ニューモニエの部分的な増殖の後、溶存酸素は0付近であった。
【0029】
5つの異なる流加法を流加発酵に試した。
1.pHスタット法(pH stat method):pHスタット流加を、設定pHポイントによって制御するものであり、培養物のpHが設定pHを越えて上昇した場合には炭素源を培地に添加し、培養物のpHが設定pHを下回った場合には、炭素流加を停止した。
2.定速流加法:本方法では、1Lの濃縮フィードが1.6Lのブロス培養物に4時間、4.2mL/分で与えた。
3.指数的流加法:流加速度は、1mL/分から開始し、ODに伴って増加させた。流加速度は、ODにおける1ユニット増分当たり0.5mL/分ずつ増加させた。
4.一定グルコース濃度:残留グルコース濃度を、流加発酵の際、0.5g/L付近に維持するようにした。
5.pH依存流加法:本方法では、pHは、NaCOを用いて維持した。培地中のグルコース枯渇に対して、pHを維持するために培地に流加したNaCOと同じ速度で、グルコースを添加した。
【0030】
エヌ・ビー・エス・バイオフロ115(NBS Bioflo 115)及びバイオエンジニアリング・エー・ジー発酵槽(Bioengineering AG fermenter)を、これら全ての実験に使用した。本試験は、3L型のエヌ・ビー・エス・バイオフロ115発酵槽モデルで実施し、30L型のバイオエンジニアリング・エー・ジー発酵槽にスケールアップした。さらなるスケールアップは、450L型のバイオエンジニアリング発酵槽で実施できた。200g/Lのグルコース及び5g/LのMgSOを、全ての流加発酵に流加培地として用いた。発酵条件は、全ての流加実験において同一とした。pHは、発酵プロセスの間、20%NaCO溶液で維持した。
流加発酵の際、以下のパラメータを維持した。
温度(36.5±0.5)、pH(7.1±0.2)、RPM:100、気流(表面曝気):0.5vvm
【0031】
表1:各種流加法に関する血清型1のCP収量
【表1】
【0032】
<実施例2>ストレプトコッカス・ニューモニエ血清型1のCPの流加発酵のための流加培地の最適化:
以下の各種培地を発酵の際、流加に用いた。
1.グルコース:200g/L
2.グルコース(200g/L)、MgSO(2.5g/L)
3.グルコース:200g/L、MgSO:2.5g/L、酵母エキス:25g/L
4.グルコース:100g/L、MgSO:5g/L、酵母エキス:15g/L、ハイソヤ(Hy−soya):50g/L
5.グルコース:200g/L、MgSO:2.5g/L、酵母エキス:25g/L、ハイソヤ(Hy−soya):100g/L
6.グルコース:200g/L、MgSO:2.5g/L、酵母エキス:25g/L、ハイソヤ(Hy−soya):100g/L、チアミン塩酸塩:0.02g/L、CaCl・2HO:0.0.02g/L、システイン:0.2g/L
7.グルコース:100g/L、MgSO:1g/L、酵母エキス:10g/L、ハイソヤ(Hy−soya):40g/L、チアミン塩酸塩:0.04g/L、CaCl・2HO:0.04g/L、システイン:0.4g/L
全ての発酵条件を上述の通り維持した。pH依存流加法が、全てのバッチに対して流加発酵の流加のために用いられた。第4番目の流加培地をさらなる流加実験のために利用した。
【0033】
表2:各種流加培地組成物に対する血清型1のCP収量
【表2】
【0034】
<実施例3>pHを維持するために用いたアルカリ混合物:
NaOHは、pHを維持するための混合物としてNaCOと共に用いた場合に、CPの生産性をさらに増強した。NaCO単独では、pHを維持するために用いた場合、増殖に好適な培地を提供した。このようなNaCOの制限条件ではCPを産生するのには過酷な条件が提供された。NaOHとNaCOとの混合物をpHを維持するために用いた場合、増殖は低かったが、CP生産性は増加した。8%NaOHと20%NaCOを、1:1、2:1、3:1、及び4:1の比率で用いた。実施例2の流加培地組成物3を以下の流加培養に流加物として用いた。
【0035】
表3:ストレプトコッカス・ニューモニエ血清型1の流加発酵に関しpH維持のために用いたアルカリ混合物
【表3】
【0036】
<実施例4>
各種血清型のストレプトコッカス・ニューモニエを最適化した流加培養条件で試した。
【0037】
血清型1のための流加培養条件を、その他血清型についても用いた。流加発酵を実施する上で、以下の条件を考慮した。
1.pH依存流加法
2.用いたアルカリ混合物
3.最適化流加培地
4.その他発酵は、上記と同様であった。
【0038】
流加培養プロセスの新規に最適化した条件を利用し、血清型1、5、6A、6B、7F、9V、14、19A、19F及び23Fを用いた。
【0039】
表4:各種血清型に関する流加発酵におけるCP収量
【表4】
【0040】
このように、本発明の流加培養法は、150〜350%に渡りCP収率の容積測定上の増加をもたらし、最終CP収量は900〜2000mg/Lに渡る。
【0041】
本発明が前述の説明のための実施例の詳細に限定されるものではなく、かつ本発明が、その本質的な属性から逸脱することなくその他特定の形態に具体化され得ることは、当業者に明らかである。従って、本実施形態及び実施例は、あらゆる点で説明のためのものであって、前述の説明よりも添付の特許請求の範囲を参照すべきことが要求されており、特許請求の範囲と同等の意味ないし範囲内に入るあらゆる変更は包含され、或いはそれ故に包含されることが意図されている。
図1
図2
図3