(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図である。この基板処理装置は、半導体ウエハ等の基板Wを処理液によって一枚ずつ処理するための枚葉型基板処理装置である。この基板処理装置は、処理チャンバ1と、処理チャンバ1内に設けられ、処理対象の基板Wを水平姿勢で保持して鉛直軸線まわりに回転可能なスピンチャック2と、スピンチャック2を鉛直軸線まわりに回転させる回転駆動機構3と、スピンチャック2に保持された基板Wに薬液を供給する薬液供給ユニット4と、スピンチャック2に保持された基板Wにリンス液(たとえば純水)を供給するリンス液供給ユニット8とを含む。基板処理装置は、さらに、薬液供給ユニット4によって供給される薬液と同種の薬液を一時的に貯留しておくための薬液バッファタンク5と、薬液バッファタンク5に加圧気体を供給して、当該薬液バッファタンク5に貯留された薬液を一気に押し出すための加圧気体供給ユニット6とを含む。スピンチャック2は、処理カップ9の内方に収容されている。処理カップ9は、上方に開口を有する有底筒状に形成されており、スピンチャック2から遠心力によって側方に飛び出す処理液を受け止めるように構成されている。基板処理装置は、さらに、回転駆動機構3、薬液供給ユニット4、加圧気体供給ユニット6などを制御するための制御ユニット7を含む。
【0028】
スピンチャック2は、処理対象の主面を上方に向けた水平姿勢で基板Wを保持する。回転駆動機構3は、スピンチャック2を回転させることによって、基板Wを鉛直軸線まわりに回転させる。このように、スピンチャック2および回転駆動機構3によって、基板保持回転機構が構成されている。スピンチャック2の回転速度、すなわち基板Wの回転速度は、制御ユニット7が回転駆動機構3を制御することによって、可変制御される。
【0029】
薬液供給ユニット4は、処理チャンバ1内に配置された薬液ノズル11と、薬液ノズル11に一端が接続され処理チャンバ1外に延びて薬液タンク12に他端が結合された薬液配管13(処理液供給路の一例)とを含む。薬液タンク12には、予め所定の濃度に調合された薬液が保持されている。薬液は、エッチング液(たとえばフッ酸)であってもよい。薬液供給ユニット4は、さらに、薬液配管13の途中に介装された薬液バルブ14(処理液バルブの一例)と、薬液バルブ14よりも上流側において薬液配管13の途中に介装された流量計15と、流量計15よりも上流側において薬液配管13の途中に介装されたポンプ16とを含む。ポンプ16および薬液タンク12は、薬液を薬液配管13に送り出す薬液供給源を構成している。流量計15の出力信号は、制御ユニット7に入力されるようになっている。また、薬液バルブ14の開閉およびポンプ16の動作は、制御ユニット7によって制御される。薬液バルブ14を開いてポンプ16を作動させると、薬液タンク12に貯留された薬液が汲み出されて、薬液配管13を通り、薬液ノズル11へと薬液が給送される。これにより、薬液ノズル11から薬液が吐出され、その薬液が基板Wの主面(上面)に供給される。ポンプ16は、予め定める流量で薬液が薬液ノズル11から吐出されるように駆動される。その流量が許容範囲内であるかどうかが、流量計15の出力信号に基づいて、制御ユニット7によって監視される。
【0030】
薬液ノズル11は、ノズル移動機構17によって、処理チャンバ1内で移動させられるように構成されている。ノズル移動機構17は、処理チャンバ1内に配置された揺動アーム18と、揺動アーム18を鉛直軸線まわりに揺動させる揺動駆動機構19とを含む。薬液ノズル11は、揺動アーム18の先端部に固定されている。揺動アーム18は、水平に延びており、揺動駆動機構19によって、スピンチャック2の側方に設定された鉛直軸まわりに揺動される。これにより、揺動アーム18の先端部は、水平面内で円弧軌道に沿って移動する。これにより、薬液ノズル11は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面に対向する処理位置(スピンチャック2の上方の位置)と、スピンチャック2の上方から退避した退避位置との間で移動できる。処理位置は、たとえば、基板Wの回転中心に向けて薬液を吐出できる位置である。
【0031】
リンス液供給ユニット8は、処理チャンバ1内に配置されたリンス液ノズル21と、リンス液ノズル21に一端が接続され処理チャンバ1外に延びてリンス液供給源22に他端が結合されたリンス液配管23とを含む。リンス液供給ユニット8は、さらに、リンス液配管23の途中に介装されたリンス液バルブ24を含む。リンス液バルブ24の開閉は、制御ユニット7によって制御される。リンス液バルブ24を開くと、リンス液供給源22からのリンス液が、リンス液配管23を通り、リンス液ノズル21へと給送される。これにより、リンス液ノズル21からリンス液が吐出され、そのリンス液が基板Wの主面(上面)に供給される。
【0032】
リンス液ノズル21は、薬液ノズル11とともにノズル移動機構17の揺動アーム18に固定されていてもよい。また、リンス液ノズル21は、ノズル移動機構とは別のノズル移動機構によって、スピンチャック2の上方の処理位置と、スピンチャック2の上方から側方に退避した退避位置との間で移動可能とされていてもよい。さらに、リンス液ノズル21は、処理チャンバ1内で固定された固定ノズルの形態を有していてもよい。
【0033】
薬液バッファタンク5は、スピンチャック2に保持された基板Wの主面(上面)の全域を覆う液膜を形成するのに十分な量の薬液を貯留できる容積を有する薬液溜まりである。薬液バッファタンク5は、密閉容器であり、下面に薬液放出路27が接続されており、上面からは気体配管31が導入されている。薬液放出路27は、薬液配管13に接続されている。より具体的には、薬液放出路27は、ポンプ16と薬液バルブ14との間において、薬液配管13に接続されている。薬液放出路27の途中には、薬液放出バルブ28が介装されている。この薬液放出バルブ28の開閉は、制御ユニット7によって制御される。
【0034】
加圧気体供給ユニット6は、薬液バッファタンク5に貯留された薬液を加圧気体で押し出すように構成されている。すなわち、加圧気体供給ユニット6は、薬液バッファタンク5に接続された気体配管31と、気体配管31の途中に介装された加圧気体バルブ32とを有している。気体配管31には、加圧気体供給源33からの加圧気体が供給されるようになっている。加圧気体は、窒素ガス等の不活性ガスであることが好ましい。加圧気体バルブ32の開閉は、制御ユニット7によって制御される。
【0035】
薬液バッファタンク5と加圧気体バルブ32との間において、気体配管31には、リリーフ配管35の一端が接続されている。このリリーフ配管35の他端は、薬液タンク12内に導入されている。リリーフ配管35の途中には、リリーフバルブ36が介装されている。リリーフバルブ36の開閉は、制御ユニット7によって制御される。
図2は、前記基板処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。基板搬送ロボットによって未処理の基板Wが処理チャンバ1に導入されてスピンチャック2に渡されると,制御ユニット7は、基板Wを第1回転速度(たとえば1000rpm程度)で回転させる(ステップS1)。すなわち、制御ユニット7は、回転駆動機構3を制御して、スピンチャック2を第1回転速度で回転させる。その後、薬液処理が開始される。
【0036】
薬液処理に先立って、制御ユニット7は、薬液バッファタンク5に薬液を注入する薬液注入動作を実行する(ステップS11)。具体的には、制御ユニット7は、薬液バルブ14および加圧気体バルブ32を閉じ、薬液放出バルブ28およびリリーフバルブ36を開いた状態でポンプ16を作動させる。これにより、ポンプ16から汲み出された薬液は、薬液配管13から薬液放出路27を通って薬液バッファタンク5内へと流れ込む。薬液バッファタンク5内の気体は、気体配管31からリリーフ配管35を通って薬液タンク12へと押し出される。薬液バッファタンク5に貯留すべき薬液の量に応じた時間だけポンプ16を作動させることによって、必要量の薬液を薬液バッファタンク5に溜めることができる。その後、制御ユニット7は、ポンプ16の作動は継続する一方で、リリーフバルブ36を閉じる。さらに、制御ユニット7は、加圧気体バルブ32を開いて、薬液バッファタンク5に加圧気体を供給させ、薬液バッファタンク5内を加圧させる(ステップS12)。
【0037】
薬液処理は、全面液膜形成工程(ステップS2)と、小流量処理工程(ステップS3)とを含む。
全面液膜形成工程(ステップS2)においては、薬液バッファタンク5に貯留された全ての薬液が一気に基板Wの主面(上面)に供給される。具体的には、制御ユニット7は、薬液バルブ14を開く。これにより、薬液バッファタンク5に貯留されていた薬液の全量が、加圧気体によって薬液配管13に押し出されて一気に放出され(ステップS13)、薬液ノズル11から基板Wの上面に向けて大流量で一気に吐出される。なお、このときまでに、制御ユニット7は、ノズル移動機構17を制御して、薬液ノズル11をスピンチャック2の上方の処理位置まで移動させている。薬液ノズル11から薬液が大流量で吐出され、かつ、基板Wが第1回転速度で回転されていることによって、基板Wの主面上では、薬液が瞬時に全域に拡がり、基板Wの主面全域を覆う液膜が形成される。より具体的には、薬液バッファタンク5には、たとえば30cc〜70ccの薬液が貯留され、その全量がたとえば約2秒間で吐出し尽くされる。これにより、基板Wの主面全域が瞬時に液膜で覆われる。
【0038】
その後、制御ユニット7は、加圧気体バルブ32を閉じて加圧を停止し、薬液放出バルブ28を閉じる(ステップS14)。これによって、ポンプ16によって薬液タンク12から汲み出された薬液が、薬液配管13から薬液ノズル11へと供給され、薬液ノズル11から小流量で薬液が吐出される。この薬液が基板Wの主面に供給される。こうして、小流量処理工程(ステップS3)が実行される。このとき、制御ユニット7は、回転駆動機構3を制御することによって、スピンチャック2の回転速度、すなわち基板Wの回転速度を第2回転速度(たとえば100rpm程度)まで減速する。すなわち、第2回転速度は、第1回転速度よりも低速な回転速度である。したがって、小流量処理工程(ステップS3)では、基板Wが低速回転されている状態で、基板Wの表面の液膜に対して小流量で薬液が補給される。このときの、薬液ノズル11からの吐出流量は、たとえば、0.25リットル/分程度であってもよい。このような小流量処理工程は、たとえば、30秒程度継続される。
【0039】
その後、制御ユニット7は、薬液バルブ14を閉じ、ポンプ16を停止させて薬液処理を終了させ、リンス工程(ステップS4)を実行する。すなわち、制御ユニット7は、リンス液バルブ24を開いて、リンス液ノズル21から基板Wの主面に向けてリンス液を吐出させる。さらに、制御ユニット7は、回転駆動機構3を制御して、スピンチャック2の回転速度、すなわち基板Wの回転速度を所定のリンス処理速度(たとえば1000rpm)に制御する。これにより、基板Wの主面に供給されたリンス液がその全域に行き渡り、基板Wの主面上の薬液がリンス液に置換される。リンス液の供給は、たとえば、30秒程度継続される。
【0040】
その後、制御ユニット7は、リンス液ノズル21を閉じてリンス液の吐出を停止させ、リンス工程(ステップS4)を終える。そして、制御ユニット7は、回転駆動機構3を制御して、スピンチャック2の回転速度、すなわち基板Wの回転速度を所定の乾燥処理速度(たとえば3000rpm程度)に制御して乾燥工程を実行する(ステップS5)。これにより、基板Wの主面に残る水分が遠心力によって振り切られ、いわゆるスピンドライ処理によって、基板Wが乾燥される。このスピンドライ処理は、たとえば、10秒程度継続される。
【0041】
こうして乾燥工程を終えると、基板搬送ロボットによって、処理済みの基板Wが処理チャンバ1外へと搬出される。その後は、未処理基板Wが搬入されるたびに、同様の動作が繰り返される。
図3は、薬液としてエッチング液を用いる場合において、基板の回転中心(センター)と周端部(エッジ)とでのエッチング処理の差を説明するためのモデル図である。横軸は、エッチング液吐出開始からの時間、縦軸はエッチング量である。
【0042】
エッチング液を基板の回転中心に吐出すると、そのエッチング液が遠心力によって基板の周端部に達するまでに時間差が生じる。そのため、周端部でのエッチングの開始は、回転中心でのエッチングの開始から遅れ時間Dだけ遅れることになる。この遅れ時間Dの間に、回転中心ではエッチング量ΔEだけのエッチングが進行し、このエッチング量ΔEはエッチング液吐出時間を長くしても解消しない。
【0043】
そこで、前述の実施形態では、薬液処理の開始に際して、薬液バッファタンク5に貯留された薬液が一気に基板Wの主面上に吐出され、基板Wの主面全域が瞬時に薬液の液膜で覆われるようにしている。これによって、遅れ時間Dを実質的に零にすることができるので、基板Wの回転中心と周端部との間においてエッチング処理開始の時間差に起因するエッチング量の差をなくすことができる。
【0044】
一方、本件発明者は、エッチング液の吐出流量を少なく(たとえば0.25リットル/分)してエッチング液の消費量低減を図る場合に、基板面内におけるエッチング均一性には、基板の回転速度が関与していること発見している。具体的には、基板の回転速度が速い(たとえば1000rpm)と、
図4に示すように、基板の回転中心(センター)でのエッチング量直線と、基板の周端部(エッジ)におけるエッチング量直線とが平行にならない。換言すれば、回転中心におけるエッチングレートが、周端部におけるエッチングレートよりも大きくなる。そのため、エッチング液吐出時間が長くなるにつれて、エッチング量の差が大きくなる。
【0045】
そこで、前述の実施形態では、小流量処理工程において、基板回転速度を低速な第2回転速度としている。これにより、基板Wの回転中心と周端部とで薬液による処理がほぼ等しく進行する。その結果、基板Wの主面の全域に対して均一な薬液処理を施すことができる。
以上のように、この実施形態によれば、薬液バッファタンク5に貯留された薬液を一気に供給する構成を用いることによって、流量可変バルブのような高価な部品を用いることなく、基板Wの主面全域を覆う液膜を形成できる。そして、基板Wの主面全域に薬液を行き渡らせた後は、薬液ノズル11から小流量で薬液を供給すればよいから、基板Wの主面内における処理の均一性を犠牲にすることなく、薬液の消費量を抑制して、ランニングコストを低減できる。このようにして、基板処理装置の生産コストおよびランニングコストをいずれも低減しながら、面内均一性の高い基板処理を実現できる。
【0046】
さらに、この実施形態では、薬液バッファタンク5に貯留された薬液を基板Wの主面に一気に供給するときには、基板Wが第1回転速度で高速回転しているので、基板Wの主面全域を覆う液膜を瞬時に形成できる。これにより、基板Wの主面の至るところで薬液による処理を実質的に同時に開始させることができる。その一方で、液膜形成後に薬液ノズル11から薬液を吐出させるときには、基板回転速度が低速の第2回転速度とされる。これによって、基板Wの主面上の液膜に対して新しい薬液が供給され、供給された薬液は基板W上で回転半径外方側へと拡がっていく。その際に、基板回転速度を低速に維持することにより、基板Wの主面の回転中心付近と周端縁付近とにおいて、薬液の置換がほぼ等しく生じ、それによって、処理の進行速度がほぼ等しくなる。つまり、基板Wの主面の至るところで薬液による処理を実質的に同時に開始させることができ、かつ処理進行速度をほぼ等しくできる。その結果、基板処理の面内均一性を向上することができる。
【0047】
図5は、この発明の第2の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図である。この
図5において、前述の
図1に示された各部の対応部分には、同一参照符号を付して示す。
この実施形態では、薬液バッファタンク5が、処理チャンバ1内に設けられている。そして、薬液バッファタンク5を、スピンチャック2の上方の放出位置(処理液放出位置)と、スピンチャック2の上方から側方に退避した退避位置との間で移動させるためのバッファタンク移動機構40が設けられている。バッファタンク移動機構40は、たとえば、薬液バッファタンク5を先端部に支持する水平な揺動アームと、この揺動アームを処理カップ9外に設けた鉛直軸まわりに揺動させる揺動駆動機構と、揺動アームを上下動する昇降駆動機構とを含んでいてもよい。この場合、たとえば、退避位置は、処理カップ9の側方であってもよい。
【0048】
薬液バッファタンク5の底部に結合された薬液放出路27は、下方に開放しており、その途中に薬液放出バルブ28が介装されている。一方、薬液バッファタンク5には、薬液注入配管41の一端が結合されており、その他端は、薬液バルブ14とポンプ16との間において薬液配管13に接続されている。薬液注入配管41の途中には、薬液注入バルブ42が介装されている。バッファタンク移動機構40の動作および薬液注入バルブ42の開閉は、制御ユニット7によって制御される。
【0049】
この他の構成は、前述の第1の実施形態と同様である。
薬液バッファタンク5に対する薬液注入動作は、次のとおりである。制御ユニット7は、薬液バルブ14、加圧気体バルブ32および薬液放出バルブ28を閉じ、リリーフバルブ36および薬液注入バルブ42を開いた状態でポンプ16を作動させる。これにより、ポンプ16から汲み出された薬液は、薬液配管13から薬液注入配管41を通って薬液バッファタンク5内へと流れ込む。薬液バッファタンク5内の気体は、気体配管31からリリーフ配管35を通って薬液タンク12へと押し出される。薬液バッファタンク5に貯留すべき薬液の量に応じた時間だけポンプ16を作動させることによって、必要量の薬液を薬液バッファタンク5に溜めることができる。その後、制御ユニット7は、ポンプ16の作動は継続する一方で、リリーフバルブ36および薬液注入バルブ42を閉じる。さらに、制御ユニット7は、加圧気体バルブ32を開いて、薬液バッファタンク5に加圧気体を供給させ、薬液バッファタンク5内を加圧させる。
【0050】
処理の流れは、前述の第1の実施形態の場合と同様である(
図2参照)。すなわち、薬液処理は、全面液膜形成工程(
図2のステップS2参照)および小流量処理工程(ステップS3)を含む。
全面液膜形成工程(ステップS2)においては、薬液バッファタンク5に貯留された全ての薬液が一気に基板Wの主面(上面)に供給される。具体的には、制御ユニット7は、薬液放出バルブ28を開く。これにより、薬液バッファタンク5に貯留されていた薬液の全量が、重力および加圧気体により、薬液放出路27を通って押し出され、基板Wの上面に向けて大流量で一気に放出される。このように、この実施形態では、加圧気体供給ユニット6、薬液放出路27および薬液放出バルブ28が、薬液バッファタンク5に貯留された薬液を基板Wの主面に一気に供給して当該主面の全域を覆う液膜形成ユニットを構成している。なお、薬液放出バルブ28を開くときまでに、制御ユニット7は、バッファタンク移動機構40を制御して、薬液バッファタンク5をスピンチャック2の上方の放出位置まで移動させている。
【0051】
薬液バッファタンク5から薬液が大流量で一気に放出され、かつ、基板Wが第1回転速度で高速回転されていることによって、基板Wの主面上では、薬液が瞬時に全域に拡がり、基板Wの主面全域を覆う液膜が形成される。より具体的には、薬液バッファタンク5には、たとえば30cc〜70ccの薬液が貯留され、その全量がたとえば約2秒間で吐出し尽くされる。これにより、基板Wの主面全域が瞬時に液膜で覆われる。
【0052】
その後、制御ユニット7は、加圧気体バルブ32を閉じて加圧を停止し、薬液放出バルブ28を閉じる。さらに、制御ユニット7は、バッファタンク移動機構40を制御して、薬液バッファタンク5を、スピンチャック2の上方から退避した退避位置まで移動させる。そして、制御ユニット7は、薬液バルブ14を開いて、薬液ノズル11から基板Wの主面に向けて小流量で薬液が吐出される。こうして、小流量処理工程(ステップS2)が実行される。このときまでに、制御ユニット7は、ノズル移動機構17を制御して、薬液ノズル11をスピンチャック2の上方の処理位置まで移動させている。
【0053】
以後、第1の実施形態と同様の動作が行われる。
以上のとおり、この実施形態によれば、必要時に薬液バッファタンク5を基板Wの主面の上方の放出位置に移動させて、そこで薬液を放出させることができる。したがって、重力を利用して薬液を一気に放出できる。また、スピンチャック2への処理対象基板Wの搬入時や、スピンチャック2からの処理済み基板Wの搬出時には、薬液バッファタンク5を基板Wの主面の上方から退避させておくことができ、邪魔にならない。さらに、薬液ノズル11から薬液を吐出しているときや、リンス液ノズル21からリンス液を吐出しているときも、薬液バッファタンク5から基板Wの主面上への薬液等の落下が生じないように、薬液バッファタンク5を退避位置に退避させておくことができる。
【0054】
その他、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
図6Aおよび
図6Bは、この発明の第3の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図である。
図6Aおよび
図6Bにおいて、前述の
図5に示された各部の対応部分には同一参照符号を付すこととする。
図6Bは、
図6Aに示された処理チャンバ1内の構成の平面図である。
【0055】
この実施形態では、第2の実施形態の構成と比較すると、加圧気体供給に関する構成が省かれ、薬液注入配管41に関連する構成が省かれている。
そして、バッファタンク移動機構40によって移動される薬液バッファタンク5の退避位置が、薬液ノズル11のノズル退避位置の直下に設定されている。
図6Aにおいて、薬液バッファタンク5の放出位置を二点鎖線で示し、退避位置を実線で示す。薬液バッファタンク5が退避位置にあり、かつ薬液ノズル11がノズル退避位置にあるとき、制御ユニット7は、薬液バルブ14を開く。これにより、ポンプ16によって薬液配管13に送り出された薬液が薬液ノズル11から吐出され、その薬液が、薬液バッファタンク5の上面に形成された薬液注入口45から当該薬液バッファタンク5の内部へと注入される。こうして、薬液バッファタンク5への薬液注入動作を行うことができる。
【0056】
全面液膜形成工程(
図2のステップS2)においては、薬液バッファタンク5に貯留された全ての薬液が一気に基板Wの主面(上面)に供給される。具体的には、制御ユニット7は、薬液放出バルブ28を開く。これにより、薬液バッファタンク5に貯留されていた薬液の全量が、重力により、薬液放出路27を通って流下し、基板Wの上面に向けて大流量で一気に放出される。このように、この実施形態では、薬液放出路27および薬液放出バルブ28が、基板Wの主面の全域を覆う液膜を瞬時に形成するための液膜形成ユニットを構成している。むろん、薬液放出バルブ28を開くときまでに、制御ユニット7は、バッファタンク移動機構40を制御して、薬液バッファタンク5をスピンチャック2の上方の放出位置(
図6Aに二点鎖線で示す位置)まで移動させている。薬液バッファタンク5から薬液が大流量で放出され、かつ、基板Wが第1回転速度で高速回転されていることによって、基板Wの主面上では、薬液が瞬時に全域に拡がり、基板Wの主面全域を覆う液膜が形成される。
【0057】
これ以後の動作は、第2の実施形態の場合と同様である。
この実施形態によれば、薬液バッファタンク5が退避位置に位置しているときには、薬液ノズル11を利用して薬液バッファタンク5に薬液を注入できる。これにより、薬液バッファタンク5への薬液注入のための専用の構成を設けなくてもよいので、コストダウンを図ることができる。
【0058】
図7は、この発明の第4の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図である。この
図7において、前述の
図1に示された各部の対応部分には同一参照符号を付すこととする。
この実施形態では、スピンチャック2に保持された基板Wに供給された使用済みの薬液が、処理カップ9によって受け止められ、さらに薬液回収配管48(処理液回収手段の一例)を通って回収されて、薬液バッファタンク5に導かれるようになっている。薬液回収配管48の途中には、三方弁49が介装されている。三方弁49には、ドレン配管50が接続されている。三方弁49は、制御ユニット7によって制御される。
【0059】
三方弁49を制御して、薬液回収配管48の上流側(処理カップ9側)および下流側(薬液バッファタンク5側)を連通させると、使用済みの薬液が薬液回収配管48を通って薬液バッファタンク5へと注入される。こうして、薬液バッファタンク5への薬液注入を行うことができる。三方弁49を制御して、薬液回収配管48の上流側とドレン配管50とを連通させると、使用済みの薬液は、薬液回収配管48からドレン配管50に導かれて排液される。これにより、薬液バッファタンク5に過剰の薬液が注入されることを回避できる。また、この状態では、前述の第1の実施形態の場合と同様にして、薬液配管13からの薬液を薬液バッファタンク5へと注入することもできる。
【0060】
このように、この実施形態によれば、使用済みの薬液を回収して薬液バッファタンク5に貯留させ、この貯留された薬液を基板Wの主面全域を覆う液膜の形成に再利用できる。これによって、薬液消費量を一層低減できるので、ランニングコストを一層低減できる。
図8は、この発明の第5の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図である。この
図8において、
図1に示された各部の対応部分には同一参照符号を付すこととする。この実施形態では、
図1に示された構成に加えて、リンス液バッファタンク55と、リンス液バッファタンク55に貯留されたリンス液を押し出すための加圧気体供給ユニット60とが備えられている。
【0061】
リンス液バッファタンク55は、スピンチャック2に保持された基板Wの主面(上面)の全域を覆う液膜を形成するのに十分な量のリンス液を貯留できる容積を有するリンス液溜まりである。リンス液バッファタンク55は、密閉容器であり、下面にリンス液放出路57が接続されており、上面からは気体配管61が導入されている。リンス液放出路57は、リンス液配管23に接続されている。より具体的には、リンス液放出路57は、リンス液供給源22とリンス液バルブ24との間において、リンス液配管23に接続されている。リンス液放出路57の途中には、リンス液放出バルブ58が介装されている。このリンス液放出バルブ58の開閉は、制御ユニット7によって制御される。
【0062】
リンス液バッファタンク55に貯留されたリンス液を加圧気体で押し出すために、加圧気体供給ユニット60が備えられている。加圧気体供給ユニット60は、リンス液バッファタンク55に接続された気体配管61と、気体配管61の途中に介装された加圧気体バルブ62とを有している。気体配管61には、加圧気体供給源63からの加圧気体が供給されるようになっている。加圧気体は、窒素ガス等の不活性ガスであることが好ましい。加圧気体バルブ62の開閉は、制御ユニット7によって制御される。
【0063】
リンス液バッファタンク55と加圧気体バルブ62との間において、気体配管61には、リリーフ配管65の一端が接続されている。このリリーフ配管35の他端は、大気に開放されている。リリーフ配管65の途中には、リリーフバルブ66が介装されている。リリーフバルブ66の開閉は、制御ユニット7によって制御される。
リンス液バッファタンク55に対するリンス液の注入は、次のようにして行われる。すなわち、制御ユニット7は、リンス液バルブ24および加圧気体バルブ62を閉じ、リンス液放出バルブ58およびリリーフバルブ66を開く。これにより、リンス液供給源22の元圧によって、リンス液が、リンス液配管23からリンス液放出路57を通ってリンス液バッファタンク55内へと流れ込む。リンス液バッファタンク55内の気体は、気体配管61からリリーフ配管65を通って大気中へ押し出される。その状態で、リンス液バッファタンク55に貯留すべきリンス液の量に応じた時間だけ待機することによって、必要量のリンス液をリンス液バッファタンク55に溜めることができる。その後、制御ユニット7は、リリーフバルブ66を閉じる。さらに、制御ユニット7は、加圧気体バルブ62を開いて、リンス液バッファタンク55に加圧気体を供給させ、リンス液バッファタンク55内を加圧させる。このような動作がリンス工程(
図2のステップS4)の開始まで(たとえば薬液処理期間中)に実行される。
【0064】
その後、リンス工程を開始するために、制御ユニット7がリンス液バルブ24を開くと、リンス液バッファタンク55に貯留された全てのリンス液が一気に基板Wの主面(上面)に供給される。具体的には、リンス液バッファタンク55に貯留されていたリンス液の全量が、加圧気体によってリンス液配管23に押し出され、リンス液ノズル21から基板Wの上面に向けて大流量で一気に吐出される。リンス液ノズル21からリンス液が大流量で吐出され、かつ、基板Wがリンス処理速度で高速回転されていることによって、基板Wの主面上では、リンス液が瞬時に全域に拡がり、基板Wの主面全域を覆う液膜が形成される。より具体的には、リンス液バッファタンク55には、たとえば30cc〜70ccのリンス液が貯留され、その全量がたとえば約2秒間で吐出し尽くされる。これにより、基板Wの主面全域が瞬時にリンス液の液膜で覆われ、基板Wの主面の全域において、薬液による処理を実質的に同時に停止させることができる。
【0065】
その後、制御ユニット7は、加圧気体バルブ62を閉じて加圧を停止し、リンス液放出バルブ58を閉じる。これ以後は、リンス液供給源22からのリンス液が、リンス液ノズル21から通常の流量で基板Wの主面に吐出される。
このように、この実施形態によれば、リンス工程の始めに大量のリンス液を基板Wの主面に一気に供給できるので、基板Wの主面全域において、薬液による処理を同時に停止させることができる。これによって、基板処理の面内均一性を一層向上できる。
【0066】
図9は、この発明の第6の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図である。この
図9において、前述の
図1の各部の対応部分には同一参照符号を付すこととする。
前述の第1〜第5の実施形態では、調合済みの薬液が薬液タンク12に貯留されていて、その薬液が薬液ノズル11からそのまま吐出される例を示した。これに対して、第6の実施形態では、薬液原液(調合前の薬液)が薬液タンク12に貯留されており、この薬液原液を配管途中で希釈液(この実施形態では脱イオン水(DIW))で希釈することにより、適正濃度に調整された薬液が調合されるようになっている。
【0067】
具体的に説明すると、薬液バルブ14とポンプ16との間(より正確には薬液バルブ14と流量計15との間)において薬液配管13に薬液原液バルブ74が介装されている。この薬液原液バルブ74よりも上流側の薬液配管13は、薬液原液が流通する薬液原液ラインである。この薬液原液ラインに、薬液バッファタンク5の薬液放出路27が接続されている。
【0068】
一方、薬液バルブ14と薬液原液バルブ74との間の薬液配管13には、希釈液供給ユニット81からの希釈液が供給されるようになっている。すなわち、薬液バルブ14と薬液原液バルブ74との間の薬液配管13には、希釈液配管83の一端が接続されている。この希釈液配管83の他端は希釈液供給源82に接続されている。希釈液配管83の途中には、希釈液バルブ84および流量計85が介装されている。したがって、希釈液バルブ84を開くことにより、薬液配管13および希釈液配管83の合流点80において、薬液および希釈液を、それらを流量比に応じた混合比で混合させることができ、これによって、薬液原液を所定の濃度に希釈した薬液が調合される。流量計85の出力信号は制御ユニット7に入力されるようになっており、希釈液バルブ84の開閉は制御ユニット7によって制御されるようになっている。
【0069】
この実施形態の基板処理装置は、希釈液バッファタンク75(処理液溜まりの一例)と、希釈液バッファタンク75に貯留された希釈液を押し出すための加圧気体供給ユニット90とを有している。この実施形態では、全面液膜形成工程(
図2のステップS2)において、薬液バッファタンク5内の薬液原液および希釈液バッファタンク75内の希釈液が一気に放出され、それらが混合されて調合された薬液がスピンチャック2に保持された基板Wの主面上に一気に供給されて、その全域を覆う液膜が形成される。したがって、薬液バッファタンク5および希釈液バッファタンク75は、それらに貯留された薬液および希釈液が混合されて調製される薬液がスピンチャック2に保持された基板Wの主面(上面)の全域を覆う液膜を形成するのに十分な量となるように、それぞれ所定の量の薬液および希釈液を貯留できる容積を有する処理液溜まりである。
【0070】
希釈液バッファタンク75は、密閉容器であり、下面に希釈液放出路77が接続されており、上面からは気体配管91が導入されている。希釈液放出路77は、希釈液配管83に接続されている。より具体的には、希釈液放出路77は、希釈液バルブ84と希釈液供給源82との間(より正確には、希釈液バルブ84と流量計85との間)において、希釈液配管83に接続されている。希釈液放出路77の途中には、希釈液放出バルブ78が介装されている。この希釈液放出バルブ78の開閉は、制御ユニット7によって制御される。
【0071】
加圧気体供給ユニット90は、希釈液バッファタンク75に貯留された希釈液を加圧気体で押し出すように構成されている。すなわち、加圧気体供給ユニット90は、希釈液バッファタンク75に接続された気体配管91と、気体配管91の途中に介装された加圧気体バルブ92とを有している。気体配管91は、加圧気体バルブ32の上流側で気体配管31に合流しており、加圧気体供給源33からの加圧気体が供給されるようになっている。加圧気体バルブ92の開閉は、制御ユニット7によって制御される。
【0072】
希釈液バッファタンク75と加圧気体バルブ92との間において、気体配管91には、リリーフ配管95の一端が接続されている。このリリーフ配管95の他端は、大気に開放されている。リリーフ配管95の途中には、リリーフバルブ96が介装されている。リリーフバルブ96の開閉は、制御ユニット7によって制御される。
希釈液バッファタンク75に対する希釈液の注入は、次のようにして行われる。すなわち、制御ユニット7は、希釈液バルブ84および加圧気体バルブ92を閉じ、希釈液放出バルブ78およびリリーフバルブ96を開く。これにより、希釈液供給源82の元圧によって、希釈液が、希釈液配管83から希釈液放出路77を通って希釈液バッファタンク75内へと流れ込む。希釈液バッファタンク75内の気体は、気体配管91からリリーフ配管95を通って大気中へ押し出される。その状態で、希釈液バッファタンク75に貯留すべき希釈液の量に応じた時間だけ待機することによって、必要量の希釈液を希釈液バッファタンク75に溜めることができる。その後、制御ユニット7は、リリーフバルブ96を閉じる。さらに、制御ユニット7は、加圧気体バルブ92を開いて、希釈液バッファタンク75に加圧気体を供給させ、希釈液バッファタンク75内を加圧させる。このような動作が薬液処理の開始までに実行される。そして、同様の動作が薬液バッファタンク5に関しても実行され、薬液バッファタンク5内に薬液原液が注入され、薬液バッファタンク5内が加圧される。この動作の詳細は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0073】
薬液処理は、第1の実施形態と同じく、全面液膜形成工程(
図2のステップS2)と、小流量処理工程(
図2のステップS3)とを含む。
全面液膜形成工程(ステップS2)においては、薬液バッファタンク5に貯留された全ての薬液原液と、希釈液バッファタンク75に貯留された全ての希釈液とが、合流点80で混合されて調合された薬液として、一気に基板Wの主面(上面)に供給される。具体的には、制御ユニット7は、薬液バルブ14を開くとともに、さらに薬液原液バルブ74および希釈液バルブ84を開く。これにより、薬液バッファタンク5に貯留されていた薬液原液の全量が加圧気体によって薬液配管13に押し出され、かつ希釈液バッファタンク75に貯留されていた希釈液の全量が加圧気体によって希釈液配管83に押し出される。これにより、薬液原液および希釈液が、薬液配管13の途中の合流点80で混合されて調合済み薬液となり、その調合済み薬液が、薬液ノズル11から基板Wの上面に向けて大流量で一気に吐出される。なお、このときまでに、制御ユニット7は、ノズル移動機構17を制御して、薬液ノズル11をスピンチャック2の上方の処理位置まで移動させている。薬液ノズル11から薬液が大流量で吐出され、かつ、基板Wが第1回転速度で高速回転されていることによって、基板Wの主面上では、薬液が瞬時に全域に拡がり、基板Wの主面全域を覆う液膜が形成される。
【0074】
その後、制御ユニット7は、加圧気体バルブ32,92を閉じて加圧を停止し、薬液放出バルブ28および希釈液放出バルブ78を閉じる。これによって、ポンプ16によって薬液タンク12から汲み出された薬液原液と、希釈液供給源82からの希釈液とが、合流点80へと供給されて、それらの流量比に対応する混合比で混合されることにより、薬液が調合される。より具体的には、薬液原液の流量は4cc/分程度であってもよく、希釈液の流量は200cc/分程度であってもよい。この場合の流量比(すなわち混合比)は、薬液原液:希釈液=1:50である。こうして調合された薬液が、薬液配管13から薬液ノズル11へと供給され、薬液ノズル11から小流量で薬液が吐出される。この薬液が基板Wの主面に供給される。こうして、小流量処理工程が実行される。このとき、制御ユニット7は、回転駆動機構3を制御することによって、スピンチャック2の回転速度、すなわち基板Wの回転速度を第2回転速度まで減速する。したがって、小流量処理工程では、基板Wが低速回転されている状態で、基板Wの表面の液膜に対して小流量で薬液が補給される。
【0075】
その後、制御ユニット7は、薬液バルブ14、薬液原液バルブ74および希釈液バルブ84を閉じ、ポンプ16を停止させて薬液処理を終了させ、リンス工程を実行する。これ以後の動作は、第1の実施形態と同様である。
このように、この実施形態によれば、薬液原液と希釈液とを配管途中で混合して薬液を調合する構成において、薬液処理の当初に全面液膜形成工程を実行することができる。しかも、薬液原液および希釈液にそれぞれ対応する薬液バッファタンク5および希釈液バッファタンク75を設け、それらから同時に薬液原液および希釈液を薬液配管13に流し込んで合流させるようにしているので、全面液膜形成工程においても、薬液原液と希釈液とを所定の混合比で混合でき、その混合比が不安定になったりすることがない。
【0076】
たとえば、薬液原液ラインに第1流量可変バルブを配置し、希釈液配管に第2流量可変バルブを配置して、薬液処理開始時に薬液原液および希釈液をそれぞれ大流量で合流点に供給する構成が考えられるかもしれない。しかし、このような構成は、流量可変バルブを用いるためにコスト高となる問題に加えて、流量可変時に薬液原液と希釈液との混合比が不安定になるという問題もある。すなわち、薬液流量が変化するときに薬液の濃度を一定に保つことが難しい。
【0077】
この実施形態の構成では、このような問題がなく、流量可変バルブを用いない安価な構成でありながら、全面液膜形成工程および小流量処理工程において、一定の濃度に調合された薬液を基板Wの主面に供給できる。これにより、高品質な基板処理を実現することができる。
以上、この発明の実施形態について説明してきたが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、
図7の構成に示した処理液回収手段を
図6Aおよび
図6Bに示した構成に適用して、退避位置にある薬液バッファタンク5内に使用済みの薬液を注入するようにしてもよい。また、
図8に示したリンス液バッファタンク55およびそれに関連する構成は、その他の実施形態においても備えることができる。また、
図9には、薬液原液を希釈液で希釈する構成を示したが、この構成は、2種類の処理液を配管内で混合して調合済み処理液を生成する場合に広く適用できる。むろん、3種類以上の処理液の配管内混合も同様にして行うことができる
。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
この明細書および添付図面の記載から導き出される特徴の例を以下に記す。
1.基板を保持して回転させる基板保持回転機構(2,3)と、前記基板保持回転機構に保持された基板の主面に向けて処理液(とくに薬液)を吐出する処理液ノズル(11,21)を有する処理液供給機構(4,8)と、前記基板の主面の全域を覆う液膜を形成するのに十分な量の処理液(処理液ノズルから供給される処理液と同種の処理液が好ましい)を貯留する処理液溜まり(5,55,75)と、前記処理液溜まりに貯留された処理液を一気に前記基板の主面に供給することにより、前記基板の主面の全域を覆う液膜を形成する液膜形成手段(6,27,28,40,57,58,60,77,78,90)と、前記液膜形成手段および前記処理液供給機構を制御して、前記液膜形成手段によって前記基板の主面の全域を覆う液膜を形成させた後に、前記処理液ノズルから前記基板(当該液膜が主面に形成されている状態の基板)の主面に向けて処理液を吐出させる制御手段(7)とを含む、基板処理装置。なお、括弧内の英数字は前述の実施形態における対応構成要素等を表す。
この構成によれば、基板保持回転機構によって基板を回転させておく一方で、処理液溜まりに貯留された処理液を一気に基板の主面に供給することによって、基板主面の全域を覆う液膜を瞬時に形成でき、基板主面の全域に処理液を行き渡らせることができる。これにより、基板主面の至るところで、処理液による処理を同時に開始させることができる。その後は、処理液ノズルから、基板の主面に向けて処理液を吐出(液膜形成時よりもはるかに少ない流量で吐出)し、基板保持回転機構によって基板を回転させることにより、基板の主面の全域において処理液を新液に置換することができる。この場合の処理液供給流量は小流量で足りるので、処理液の消費量を抑制できる。
また、前述の構成では、処理液溜まりに貯留された処理液を一気に供給する構成を用いることによって、流量可変バルブのような高価な部品を用いることなく、基板主面の全域を覆う液膜を形成できる。そして、基板主面の全域に処理液を行き渡らせた後は、処理液ノズルから小流量で処理液を供給すればよいから、基板主面内における処理の均一性を犠牲にすることなく、処理液の消費量を抑制して、ランニングコストを低減できる。このようにして、基板処理装置の生産コストおよびランニングコストをいずれも低減しながら、面内均一性の高い基板処理を実現できる。
2.前記制御手段が、前記基板保持回転機構を制御し、前記液膜形成手段によって前記基板の主面の全域を覆う液膜を形成するときは、第1回転速度で前記基板を回転させ、前記基板の主面の全域を覆う液膜が形成された後に前記処理液ノズルから前記基板の主面に向けて処理液が吐出されるときは、前記第1回転速度よりも低速の第2回転速度で前記基板を回転させる、項1に記載の基板処理装置。
この構成によれば、処理液溜まりに貯留された処理液を基板の主面に一気に供給するときには、基板が第1回転速度で高速回転しているので、基板の主面に達した処理液は遠心力を受けて瞬時に当該主面の全域に拡がる。したがって、基板の主面全域を覆う液膜を瞬時に形成できる。これにより、基板主面の至るところで処理液による処理を実質的に同時に開始させることができる。その一方で、液膜形成後に処理液ノズルから処理液を吐出させるときには、基板回転速度が低速の第2回転速度とされる。これによって、基板主面上の液膜に対して新しい処理液が供給され、供給された処理液は基板上で回転半径外方へと拡がっていく。その際に、基板回転速度を低速に維持することにより、基板主面の回転中心付近と周端縁付近とにおいて、処理液の置換がほぼ等しく生じ、それによって、処理の進行速度がほぼ等しくなる。つまり、基板主面の至るところで処理液による処理を実質的に同時に開始させることができ、かつ処理進行速度をほぼ等しくできる。その結果、基板処理の面内均一性を一層向上することができる。
3.前記処理液供給機構が、処理液を送り出す処理液供給源(12,16,22,82)と前記処理液ノズルとの間を接続する処理液供給路(13,23,83)を含み、前記処理液溜まりが、前記処理液供給路に接続されている、項1または2に記載の基板処理装置。
この構成により、処理液供給源からの処理液を、処理液供給路を利用して処理液溜まりに導いて、当該処理液溜まりに貯留させることができる。また、処理液溜まりに貯留された処理液を、処理液供給路を利用して基板主面に供給することができる。
4.前記液膜形成手段が、前記処理液溜まりに貯留された処理液を加圧気体で押し出す加圧気体供給機構(6,60,90)を含む、項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。この構成により、加圧気体を利用した安価な構成で、処理液溜まりに貯留された処理液を一気に放出させて基板主面へと供給できる。
5.前記加圧気体供給機構が、前記処理液溜まりに接続された気体配管(31,61,91)と、前記気体配管に介装された加圧気体バルブ(32,62,92)とを含み、前記処理液供給機構が、前記処理液供給路に介装された処理液バルブ(14,24,84)を含み、前記処理液溜まりが、前記処理液供給源と前記処理液バルブとの間において前記処理液供給路に接続されており、前記気体配管に接続されたリリーフ配管(35,65,95)と、前記リリーフ配管に介装されたリリーフバルブ(36,66,96)とをさらに含む、項4に記載の基板処理装置。
この構成によれば、処理液バルブ、加圧気体バルブおよびリリーフバルブを閉じた状態でポンプを作動させると、処理液供給源からの処理液を処理液溜まりに導いて、この処理液溜まりに処理液を貯留できる。また、処理液バルブを開き、リリーフバルブを閉じ、加圧気体バルブを開くと、処理液溜まり内が加圧されることにより、処理液溜まりに貯留された処理液が、処理液供給路へと押し出され、処理液ノズルから基板主面へと一気に放出される。
むろん、処理液溜まりへの処理液の供給は、処理液供給路を介して行う必要はなく、別の経路で行われてもよい。また、処理液溜まりから基板主面への処理液の放出に関しても、処理液供給路を利用する必要はなく、別途設けた放出経路から行ってもよい。
6.前記処理液溜まりが、第1種類の処理液を貯留する第1処理液溜まり(5)と、第2種類の処理液を貯留する第2処理液溜まり(75)とを含み、前記液膜形成手段が、前記第1処理液溜まりから第1種類の処理液を一気に放出させ、前記第2処理液溜まりから第2種類の処理液を一気に放出させ、これらを混合させながら前記基板の主面に供給するように構成されている、項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
この構成によれば、第1種類の処理液および第2種類の処理液をそれぞれ第1処理液溜まりおよび第2処理液溜まりに貯留しておき、それらを供給直前に混合(たとえば配管内で混合)して、基板主面に供給することにより、調合済みの処理液によって基板の主面全域を瞬時に覆うことができる。
たとえば、第1処理液ラインに第1流量可変バルブを配置し、第2処理液ラインに第2流量可変バルブを配置して、処理開始時に第1処理液および第2処理液をそれぞれ大流量で、第1および第2処理液ラインの合流点に供給する構成が考えられるかもしれない。しかし、このような構成は、流量可変バルブを用いるためにコスト高となる問題に加えて、流量可変時に第1および第2処理液の混合比が不安定になるという問題もある。すなわち、処理液流量が変化するときに処理液の混合比を一定に保つことが難しい。項6の構成は、このような課題に対する解決手段を提供する。
7.前記液膜形成手段が、前記基板保持回転機構に保持された基板の主面の上方の処理液放出位置と当該処理液放出位置から離れた退避位置との間で前記処理液溜まりを移動させる移動機構(40)と、前記処理液溜まりに貯留された処理液を前記処理液放出位置で放出させる処理液放出機構(27,28)とを含む、項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
この構成によれば、必要時に処理液溜まりを基板主面の上方の処理液放出位置に移動させて、そこで処理液を放出させることができる。したがって、重力を利用して処理液を一気に放出できる。また、基板保持回転機構への処理対象基板の搬入時や、基板保持回転機構からの処理済み基板の搬出時には、処理液溜まりを基板主面付近から退避させておくことができ、邪魔にならない。さらに、処理液ノズルから処理液を吐出しているときも、処理液溜まりから基板主面上への処理液等の落下が生じないように、処理液溜まりを退避位置に退避させておくことができる。
8.前記処理液溜まりが前記退避位置に位置しているときに、前記処理液ノズルから吐出された処理液が前記処理液溜まりに供給されるように構成されている、項1または2に係る項7に記載の基板処理装置。
この構成によれば、処理液溜まりが退避位置に位置しているときに、処理液ノズルを利用して処理液溜まりに処理液を供給できる。これにより、処理液溜まりへの処理液供給のための専用の構成を設けなくてもよいので、コストダウンを図ることができる。
たとえば、処理液ノズルを基板の主面に対向する処理位置と当該処理位置から退避したノズル退避位置との間で移動させるノズル移動機構(17)が備えられている場合には、ノズル退避位置が、退避位置にある処理液溜まりの処理液注入口(45)に向けて処理液を吐出できる位置であることが好ましい。より具体的には、ノズル退避位置が処理液溜まりの退避位置の直上であってもよい。このような構成により、基板主面への処理液の供給のために処理液ノズルが用いられていない期間を利用して、処理液溜まりに処理液を供給することができる。
9.前記処理液ノズルから前記基板保持回転機構に保持された基板に対して供給されて処理に用いられた処理液を回収して前記処理液溜まりに導く処理液回収機構(48,49)をさらに含む、項1〜8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
この構成によれば、使用済みの処理液を回収して処理液溜まりに貯留させ、この貯留された処理液を再利用して、基板主面全域を覆う液膜を形成できる。これによって、処理液消費量を一層低減できるので、ランニングコストを一層低減できる。
10.基板を回転させる基板回転工程と、前記基板の主面の全域を覆う液膜を形成するのに十分な量の処理液を処理液溜まりに貯留する工程と、前記処理液溜まりに貯留された処理液を前記回転されている基板の主面に一気に供給することにより、前記基板の主面の全域を覆う液膜を形成する液膜形成工程と、この液膜形成工程の後に、前記回転されている基板の主面に処理液ノズルから処理液を吐出する工程とを含む、基板処理方法。
11.前記基板回転工程が、前記液膜形成工程と並行して前記基板を第1回転速度で回転させる工程と、前記液膜形成工程後に前記処理液ノズルから処理液を吐出する工程と並行して前記基板を前記第1回転速度よりも低速の第2回転速度で回転させる工程とを含む、項10に記載の基板処理方法。
12.前記液膜形成工程が、前記処理液溜まりに貯留された処理液を加圧気体で押し出す加圧気体供給工程を含む、項10または11に記載の基板処理方法。
13.前記処理液溜まりが、第1種類の処理液を貯留する第1処理液溜まりと、第2種類の処理液を貯留する第2処理液溜まりとを含み、前記液膜形成工程が、前記第1処理液溜まりから第1種類の処理液を一気に放出させ、前記第2処理液溜まりから第2種類の処理液を一気に放出させ、これらを混合させながら前記基板の主面に供給する工程を含む、項10〜12のいずれか一項に記載の基板処理方法。
14.前記液膜形成工程が、前記処理液溜まりに貯留された処理液を、前記回転されている基板の主面の上方の処理液放出位置で放出させる処理液放出工程を含む、項10〜12のいずれか一項に記載の基板処理方法。
15.前記処理液溜まりに処理液を貯留する工程が、前記処理液溜まりを前記基板の主面の上方から退避した退避位置に配置して、前記処理液ノズルから吐出された処理液を前記処理液溜まりに供給する工程を含む、項14に記載の基板処理方法。
16.前記処理液ノズルから前記基板に対して供給されて処理に用いられた処理液を回収して前記処理液溜まりに導く処理液回収工程をさらに含む、項10〜15のいずれか一項に記載の基板処理方法。
処理液の種類としては、エッチング液、ポリマー除去液、レジスト剥離液、シリル化液、現像液などを例示できる。