特許第5979748号(P5979748)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5979748-真空冷却装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979748
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】真空冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 7/00 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
   F25D7/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-110993(P2012-110993)
(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公開番号】特開2013-238334(P2013-238334A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】明尾 伸基
(72)【発明者】
【氏名】松島 延幸
【審査官】 安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−283293(JP,A)
【文献】 特開2001−107661(JP,A)
【文献】 特開2006−105292(JP,A)
【文献】 特開2006−284147(JP,A)
【文献】 特開2009−063250(JP,A)
【文献】 実開昭61−077602(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を収容する冷却槽と、冷却槽内の空気を排出する真空発生装置を持ち、冷却槽の内部を真空化することで、冷却槽に収容した被冷却物の冷却を行う真空冷却装置であって、冷却槽は略直方体の一方の側面に開口部を持ったもので、骨格を形成する枠材と内側壁面を形成する内張板からなっており、開口部をふさぐための扉を設けている真空冷却装置において、冷却槽の開口部では内張板を枠材の扉側先端面よりも外側へ突出させておき、枠材の先端面と内張板が接する部分に開口部の外周を囲む環状のパッキンを設置し、パッキンには内張板とは逆側の側面にくぼみを設け、パッキンの断面は、長方形から一方の側面にくぼみを設けたMの文字のような形状とし、くぼみ部分にはパッキンを保持するためのパッキン保持具を設けて、パッキンの元側にある断面三角形状の部分がパッキン保持具に当たるようにしていることを特徴とする真空冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理を行った食品などの被冷却物を冷却槽内に収容し、冷却槽内を減圧することによって被冷却物内の水分を気化させ、被冷却物から気化熱を奪うことで被冷却物を急速に冷却する真空冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2009−63250号公報に記載があるように、冷却槽内を減圧することで被冷却物から水分を蒸発させ、蒸発によって発生する気化熱によって被冷却物の冷却を行う真空冷却装置が知られている。給食センターなどにおいては、加熱調理食品を冷却する際に雑菌が繁殖する温度帯をできるだけ早く通過させることが要望されており、真空冷却装置であれば短時間で被冷却物の中心部までの冷却が可能であるために広く用いられている。
【0003】
真空冷却装置では、略直方体の冷却槽内に被冷却物を収容して密閉するため、冷却槽は一方の側面を開口し、開口部には扉を設ける。被冷却物の冷却を行う場合、扉を開けて冷却槽内に被冷却物を収容し、扉を閉めて冷却槽を密閉した状態で冷却槽内を減圧する。冷却時の冷却槽内は真空度を高くする必要があり、冷却槽は密閉しておかなければならない。そのため、冷却槽開口部の扉との接触面には、開口部の外周に沿って環状のパッキンを設置しておき、扉を閉めた場合には扉でパッキンを押さえつけるようにすることで冷却槽の気密を確保するようにしている。
【0004】
特開2009−63250号公報では、「パッキンは、処理槽本体の外周面の前方開口部に近接した位置に、矩形枠状に外方へ延出するツバ部の前面に設けられる」ということが図面とともに記載されている。パッキンの取り付けは、冷却槽の扉に密接させる面に溝を設けておき、溝にパッキンの一部を差し込むことで行う。パッキンの溝に差し込む部分は断面を長方形とし、溝の幅はパッキンを強く押さえつけながら差し込むと入る程度の大きさとしておくことで、パッキンは溝から容易には外れないようにしている。パッキンの高さは溝よりも高くしておき、扉を閉じた際にはパッキンが扉と密接するようにしている。
【0005】
食品の冷却を行う真空冷却装置の場合、冷却槽は常に清潔にしておく必要があり、冷却槽内を洗浄するための洗浄水噴射ノズルを真空冷却装置に附属させることも行われている。冷却槽は、内面については清掃は容易に行えるが、パッキンを差し込んでいる溝の部分に入り込んだ汚れは、パッキンを取り外さなければ掃除をすることができない。冷却槽を気密にするパッキンは、1本の連続した大きな環状ものであって、パッキンの取り付けるために溝に差し込んでいく際には非常に手間が掛かるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−63250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、真空冷却装置で冷却槽を気密に密閉するパッキンとその取り付け形状を改良し、容易に清掃が行えるようにすることで、冷却槽を常に清潔に保つことができるようにした真空冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
被冷却物を収容する冷却槽と、冷却槽内の空気を排出する真空発生装置を持ち、冷却槽の内部を真空化することで、冷却槽に収容した被冷却物の冷却を行う真空冷却装置であって、冷却槽は略直方体の一方の側面に開口部を持ったもので、骨格を形成する枠材と内側壁面を形成する内張板からなっており、開口部をふさぐための扉を設けている真空冷却装置において、冷却槽の開口部では内張板を枠材の扉側先端面よりも外側へ突出させておき、枠材の先端面と内張板が接する部分に開口部の外周を囲む環状のパッキンを設置し、パッキンには内張板とは逆側の側面にくぼみを設け、パッキンの断面は、長方形から一方の側面にくぼみを設けたMの文字のような形状とし、くぼみ部分にはパッキンを保持するためのパッキン保持具を設けて、パッキンの元側にある断面三角形状の部分がパッキン保持具に当たるようにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明を実施することで、パッキンの取り付けが容易になるため、パッキンを取り外しての清掃を行う頻度を高めることができ、冷却槽を清潔に保つことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明を実施している真空冷却装置の冷却槽開口部を抜き出した断面斜視図
図2】本発明を実施している真空冷却装置の冷却槽開口部におけるパッキン設置状況を説明するための分解図
図3】従来の真空冷却装置の冷却槽開口部を抜き出した断面斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明を実施している真空冷却装置の冷却槽開口部を抜き出した断面斜視図、図2は本発明を実施している真空冷却装置の冷却槽開口部におけるパッキン設置状況を説明するための分解図である。真空冷却装置は、被冷却物7を収容する冷却槽2と、冷却槽2内の空気を排出する真空発生装置(図示せず)を持ち、冷却槽2の内部を真空化することで、冷却槽2に収容した被冷却物7の冷却を行う。
【0012】
冷却槽2は略直方体の前面側を開口した形状であり、開口部は扉1を閉じることで冷却槽内を密閉するようにしている。冷却槽の壁面は、骨組みを形成する枠材3と、冷却槽の内壁面を形成する内張板4で構成している。冷却槽は、減圧した場合には周囲から圧力が掛かるが、枠材3によって周囲を補強しておくことで圧力に耐えることができるようにしている。冷却槽の開口部側には、扉1を閉じた場合に扉と密接する壁面にパッキン5を設置する。冷却槽の開口部では、内張板4を枠材3よりも開口部の先側(扉側)に少し長く延ばしておき、枠材3の先端面と内張板4とで形成される直角の空間にパッキン5を入れる。
【0013】
パッキン5は、冷却槽2の開口部全体を囲む一続きの輪であり、内張板4の突出させた面の外周にパッキン5を取り付ける。パッキン5は、内張板4の突出高さよりも高さの高いものを使用することで、扉1を閉じた場合には扉1とパッキン5が接触するようにしておく。パッキン5の断面は、長方形から一方の側面にくぼみ6を設けた形状としており、Mの文字のような形となっている。パッキン5のくぼみ6は、環状であるパッキン5の外周側面に全周にわたって設けている。
【0014】
くぼみ6の部分には、パッキン5を固定するためのパッキン保持具7を設置する。本実施例でのパッキン保持具7は、丸棒に固定用の留め具8を取り付けた構造としている。留め具8は丸棒と溶接によって固定した小さな板であって、ネジ用の孔を開けたものであり、枠材3の扉側先端面に留め具8をネジでとめることでパッキン保持具7を固定する。パッキン5のくぼみ6は、枠材3の扉側先端面よりも少し外側(扉側先端面より少し高い位置)になるため、留め具8は途中で折り曲げた形状としている。留め具8の先端側では枠材3とネジ留めするために枠材3の表面に対して平行とし、留め具の丸棒に近い側では、丸棒を持ち上げて固定するように角度をつけておくことで、固定しやすくかつ位置合わせが容易な構造としている。パッキン保持具7をパッキンのくぼみ部分に設置しておくと、パッキンの元側(枠材3の扉側先端面に近い側)にある断面三角形状の部分がパッキン保持具に当たるため、パッキンが外れることはない。パッキン保持具7はパッキンの周囲すべてに設置する必要はなく、適度な間隔を開けて設置するようにしてもよい。パッキン保持具7は分割しておいた方が、着脱時に作業を行いやすいためにより好ましい。
【0015】
真空冷却装置にて冷却を行う場合、まず扉1を開いて冷却槽2内へ被冷却物を収納する。扉1は横方向にスライドさせる構造としており、被冷却物を収納した後に扉を閉じることで冷却槽2を密閉する。扉1はパッキン5を強く押さえつけることで密閉するのであるが、この時点では扉1は軽く押さえる程度でよい。次に真空発生装置を作動することで冷却槽内を減圧する。冷却槽2内の圧力が低下すると、扉1は冷却槽側に引っ張られることになり、扉1とパッキン5は強く接触することになる。そのため、パッキン5による気密性は高くなる。冷却槽内を減圧すると冷却槽内での飽和温度が低下するため、被冷却物に含まれている水分が蒸発する。水分が蒸発する際には、気化熱によって熱が奪われるために被冷却物の温度は低下していく。被冷却物が所定温度まで低下すると、真空発生装置の運転を停止し、冷却槽内へ空気を導入することで冷却槽内を復圧する。冷却槽内が大気圧まで戻ると、扉1を開いて被冷却物を取り出す。
【0016】
食品を冷却するのであれば、冷却槽は常に清潔に保つ必要がある。冷却槽の内面を清掃することはもちろんであるが、パッキン5の部分も定期的に清掃する。パッキン5はパッキン保持具7によって押さえつけているために勝手に外れることはないが、パッキン保持具7を取り外すと容易に取り外すことができる。パッキン5を取り外すと、パッキン5自体及びパッキンを取り付けていた部分を清掃することができる。パッキンの取り付けは、取り付けと逆の手順で行え、パッキンを内張板4の部分に乗せ置いた状態でパッキン保持具7をパッキン5のくぼみ部分6に設置し、パッキン保持具7を枠材3に固定する。パッキン5の取り付けは、上記で記載したような構成とすることで容易に行うことができるため、パッキンを取り外して清掃を行う頻度を多くすることができ、冷却槽を清潔に保つことができる。
【0017】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 扉
2 冷却槽
3 枠材
4 内張板
5 パッキン
6 くぼみ
7 パッキン保持具
8 留め具


図1
図2
図3