(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ブレーキレバーの操作量に応じた作動液の液圧を発生させるマスタシリンダと、連絡管路を介して供給された作動液の液圧によってブレーキを作動させるホイールシリンダとの間に配設されるブレーキ液圧制御装置において、
前記ブレーキ液圧制御装置には、単一のハウジング内に、
ノーマルモード実行時の作動液の流路、ABSモード実行時の作動液の流路、及び昇圧モード実行時の作動液の流路が切替え可能な管路と、
前記ノーマルモード実行時の作動液の流路上におけるマスタシリンダ側の上流位置に配置される切替え弁、前記ノーマルモード実行時の作動液の流路上におけるホイールシリンダ側の下流位置に配置される込め弁、前記ABSモード実行時の作動液の流路上におけるホイールシリンダ側の上流位置に配置される弛め弁、及び前記昇圧モード実行時の作動液の流路上に配置されている高圧吸入弁の4種類の電磁弁と、
前記ABSモード実行時の作動液の流路上における前記弛め弁の下流位置に配置されるリザーバと、
前記ABSモード実行時の作動液の流路上における前記リザーバの下流位置に設けられるプランジャ式の単一の液圧ポンプと、
前記液圧ポンプを駆動するモータとが一組のみ設けられており、
前記ブレーキレバーの操作量と前記管路内を流れる作動液の圧力及び車輪速度の変化のうちの少なくとも1つとに基づいて、前記4種類の電磁弁の開閉と前記モータの駆動及び停止とを制御することを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示すように単一のハウジング内に前輪用と後輪用の2系統の液圧回路を一体に収容するとハウジングが大型化し構造が複雑になる。また、一方の液圧回路の動作に伴なう振動が他方の液圧回路に伝わって液圧回路の動作を不安定にする。
また、小型の自動二輪車等ではコストや取付けスペースの関係で、前輪用のブレーキ制御システムに液圧回路を使用した液圧式のブレーキ制御システムを採用し、後輪用のブレーキ制御システムに機械的なドラムを使用したブレーキ制御システムを採用している機種が数多く存在している。そして、このようなタイプの自動二輪車等に対しては上記機能を備えた2チャンネル式のブレーキ液圧制御装置を搭載することはできない。
【0006】
そこで、本発明の課題は、単一のハウジング内に前後輪2系統の液圧回路を一体に収容していたハウジングの構成と液圧回路部品の配置構造を見直し、ハウジングの小型・軽量化と構造の単純化を図って取付け・組立てコストを削減すること、前後輪2系統のブレーキ制御システムのセパレート化を図って、ブレーキ液圧制御装置の配置や組み合わせの自由度を拡大し、液圧式と機械式のブレーキ制御システムを併用している自動二輪車等にも対応できるようにすることであり、このような課題を解決し得るブレーキ液圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様のブレーキ液圧制御装置は、車輪に加えられるブレーキ圧力を制御するためのブレーキ液圧制御装置であって、前記ブレーキ液圧制御装置は、ブレーキレバーの操作量に応じた作動液の液圧を発生させるマスタシリンダと、連絡管路を介して供給された作動液の液圧によってブレーキを作動させるホイールシリンダとの間に配設でき、前記ブレーキ液圧制御装置は、単一のハウジングと、該単一のハウジング内に作動液の液圧を手動及び自動で増圧又は減圧し得る単一の液圧ポンプを含む1系統の液圧回路とを備えたことを特徴とする。
本態様によれば、ハウジング内に形成される液圧回路の単純化を図ることができ、液圧回路部品の部品点数の減少によってハウジングの小型・軽量化と、取付け・組立てコストの削減とが図られるようになる。
【0008】
また、本発明の第2の態様のように、前記1系統の液圧回路を前輪ブレーキの液圧制御を行う前輪用の液圧回路とすることが可能である。
本態様によれば、前後輪2系統のブレーキ制御システムのセパレート化が可能になり、前輪側のブレーキ制御システムに本態様の前輪用の液圧回路を適用した液圧ユニットを使用し、後輪側のブレーキ制御システムに液圧式ないし機械式の別の液圧ユニットを使用することが可能になる。
したがって、ブレーキ液圧制御装置の配置と組み合わせの自由度が拡大する。
【0009】
また、本発明の第3の態様のように、前記ブレーキ液圧制御装置には、それぞれ1系統の液圧回路のみがハウジングに備えられた二組の液圧ユニットが設けられており、このうち一組の液圧ユニットのハウジングには、前輪ブレーキの液圧制御を行う前輪用の液圧回路が備えられ、他の一組の液圧ユニットのハウジングには、後輪ブレーキの液圧制御を行う後輪用の液圧回路が備えられるように構成することが可能である。
本態様によれば、液圧回路的には別体に構成されている二組の液圧ユニットを電気回路的に接続することで、二組の液圧ユニットに連動ブレーキシステムとしての機能を付加したり、後輪側の液圧ユニットにTCS(トラクションコントロールシステム)としての機能を追加することが可能になる。
【0010】
また、本発明の第4の態様のように、前記液圧回路は、ノーマルモード実行時の作動液の流路と、ABSモード実行時の作動液の流路と、昇圧モード実行時の作動液の流路とが切替え可能な管路と、前記ノーマルモード実行時の作動液の流路上におけるマスタシリンダ側の上流位置に配置される切替え弁と、前記ノーマルモード実行時の作動液の流路上におけるホイールシリンダ側の下流位置に配置される込め弁と、前記ABSモード実行時の作動液の流路上におけるホイールシリンダ側の上流位置に配置される弛め弁と、前記ABSモード実行時の作動液の流路上における前記弛め弁の下流位置に配置されるリザーバと、前記ABSモード実行時の作動液の流路上における前記リザーバの下流位置に設けられる液圧ポンプと、前記液圧ポンプを駆動するモータと、前記昇圧モード実行時の作動液の流路上に配置されている高圧吸入弁と、前記ブレーキレバーの操作量と前記管路内を流れる作動液の圧力及び車輪速度の変化のうちの少なくとも1つに基づいて前記4種類の弁の開閉とモータの駆動及び停止を制御する電子制御ユニットと、を備えることによって構成することが可能である。
【0011】
本態様によれば、ブレーキレバーの操作によって、その操作量に対応した制動力を車輪に直接伝えるノーマルモードと、濡れた路面等の走行時に急ブレーキを掛けた場合等に生ずる車輪のロックを防止するABSモードと、車輪に伝える制動力を補填したり、前後輪の制動力が常時、理想的なバランスによるように制御する連動ブレーキシステムに利用できる昇圧モードとを適宜切り替えて実行することができるブレーキ液圧制御装置を提供することが可能になる。
【0012】
また、本発明の第5の態様のブレーキ液圧制御装置は、ブレーキレバーの操作量に応じた作動液の液圧を発生させるマスタシリンダと、連絡管路を介して供給された作動液の液圧によってブレーキを作動させるホイールシリンダとの間に配設されるブレーキ液圧制御装置において、前記ブレーキ液圧制御装置には、単一のハウジング内に作動液の流路を形成する管路と、プランジャ式の単一の液圧ポンプと、作動液の液圧を減圧、増圧及び保持する場合に適宜切り替えて使用される切替え弁、込め弁、弛め弁、高圧吸入弁の4種類の電磁弁とが一組のみ設けられていることを特徴とする。
本態様によれば、ハウジング内に形成される液圧回路部品の単純化を図ることができ、液圧回路部品の部品点数の減少によってハウジングの小型・軽量化と、取付け・組立てコストの削減とが図られるようになる。
【0013】
また、本発明の第6の態様のように、前記ハウジングは、対向する2面の面積が大きく、残りの4面の面積が小さな偏平な矩形ブロック状の部材で、前記面積が大きなハウジングの2面の一方に前記4種類の電磁弁の一端面が臨むように整列配置されており、前記液圧ポンプを収容する収容穴を中心に挟んでその一側方に前記切替え弁と込め弁が、その他側方に前記弛め弁と高圧吸入弁が、それぞれ液圧ポンプのプランジャ駆動方向と平行な直線上に配置されるように構成することが可能である。
本態様によれば、作動液の流路を形成するためにハウジングに形成する連通穴を、液圧ポンプを跨いで斜めに形成したり、連通穴の数を余計に増やす必要がなくなる。したがって、コンパクトですっきりとしたレイアウトで連通穴をハウジングに形成でき、ハウジングの一層の小型・軽量化を図ることが可能になる。
【0014】
また、本発明の第7の態様のように、前記液圧ポンプを収容する収容穴を跨いでその一端寄りに前記込め弁と弛め弁が、その他端寄りに前記切替え弁と高圧吸入弁が、それぞれ液圧ポンプのプランジャ駆動方向と交差する直線上に配置されるように構成することが可能である。
本態様によれば、込め弁と弛め弁とを連絡する管路と、切替え弁と高圧吸入弁とを連絡する管路を短く設定でき、ハウジングに形成する連通穴のレイアウトをよりコンパクトにすっきりさせることが可能になる。したがって、ハウジングの一層の小型・軽量化を図ることが可能になる。
【0015】
また、本発明の第8の態様のように、前記4種類の電磁弁の中央には、前記管路内を流れる作動液の液圧を検出する圧力センサが配置されており、該圧力センサの一端面が前記ハウジングの面積が大きな2面の一方に臨むように設けることが可能である。
本態様によれば、4種類の電磁弁の中央にできるスペースの有効利用を図ることができ、液圧回路部品の効率的で無駄のない配置が可能になる。したがって、ハウジングの更に一層の小型・軽量化が図られるようになり、ブレーキ液圧制御装置の配置の自由度が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のブレーキ液圧制御装置によれば、ハウジングの小型・軽量化と構造の単純化を図って取付け・組立てコストを削減することができる。また、前後輪2系統のブレーキ制御システムのセパレート化を図って、ブレーキ液圧制御装置の配置と組み合わせの自由度を拡大することができる。更に、液圧式のブレーキ制御システムと機械式のブレーキ制御システムを併用している自動二輪車等にも対応できる応用範囲の広いブレーキ液圧制御装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のブレーキ液圧制御装置を以下に示す実施の形態を例にとって、図面を参照しつつ説明する。
尚、以下の説明では、最初に
図1に示す液圧回路図と
図2に示すブロック図に基づいて本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置に適用される液圧回路の構成とブレーキ液圧制御の概要について説明する。次に、
図3に示す斜視図に基づいて本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置のハウジングの管路構成と液圧回路部品の配置構成について説明する。
続いて、
図4乃至
図6に示す液圧回路図に基づいてノーマルモード実行時と、ABSモード実行時と、昇圧モード実行時とに分けて、液圧回路部品の作動態様と作動液の流れを説明する。
【0019】
(1)液圧回路の構成とブレーキ液圧制御の概要(
図1及び
図2参照)
本発明のブレーキ液圧制御装置1は、ブレーキレバー3の操作量に応じた作動液Lの液圧を発生させるマスタシリンダ5と、連絡管路7、8を介して供給された作動液Lの液圧によってブレーキ9を作動させるホイールシリンダ11との間に配設されている。
そして、本発明のブレーキ液圧制御装置1は、本発明の特徴的構成として単一のハウジング13(
図3参照)内に、作動液Lの液圧を、手動及び自動で増圧又は減圧し得る単一の液圧ポンプ29を含む1系統の液圧回路15のみが備えられている。
【0020】
また、
図1では、前輪17のブレーキ9の液圧制御に適用できる前輪用の液圧回路15が図示されている。
この液圧回路15は、ブレーキレバー3の操作によって、その操作量に対応した制動力を前輪17に直接伝えるノーマルモードと、濡れた路面等の走行時に急ブレーキを掛けた場合等に生ずる前輪17のロックを防止するABSモードと、前輪17に伝える制動力を補填(アシスト)したり、前後輪の制動力が常時、理想的なバランス(例えば7:3)になるように制御する連動ブレーキシステムに利用できる昇圧モードとを適宜切り替えて実行することができるように構成されている。
【0021】
具体的には、液圧回路15は、ノーマルモード実行時の作動液Lの流路と、ABSモード実行時の作動液Lの流路と、昇圧モード実行時の作動液Lの流路とが切替え可能な管路19と、上記ノーマルモード実行時の作動液Lの流路上におけるマスタシリンダ5側の上流位置に配置される切替え弁21と、ノーマルモード実行時の作動液Lの流路上におけるホイールシリンダ11側の下流位置に配置される込め弁(インレットバルブ)23と、上記ABSモード実行時の作動液Lの流路上におけるホイールシリンダ11側の上流位置に配置される弛め弁(アウトレットバルブ)25と、上記ABSモード実行時の作動液Lの流路上における上記弛め弁25の下流位置に配置されるリザーバ(アキュムレータ)27と、上記ABSモード実行時の作動液Lの流路上における上記リザーバ27の下流位置に設けられるプランジャ式の単一の液圧ポンプ29と、該液圧ポンプ29を駆動するモータ31と、上記昇圧モード実行時の作動液Lの流路上に配置されている高圧吸入弁33と、上記管路19内を流れる作動液Lの圧力を検出する圧力センサ35と、前輪17の速度を検出する速度センサ37と、上記ブレーキレバー3の操作量と圧力センサ35及び速度センサ37によって検出された情報とに基づいて前記4種類の弁21、23、25、33の開閉とモータ31の駆動及び停止を制御する電子制御ユニット(ECU)39とを備えている。
【0022】
管路19は、マスタシリンダ5から延びる連絡管路7の終端に一端が接続され、他端が上記ホイールシリンダ11から延びる連絡管路8の終端に接続されている管路19aと、管路19aの途中から分岐して再び上記管路19aの途中に合流する管路19bと、管路19aの途中から分岐して上記管路19bの途中に合流する管路19cを主要な管路として備えている。
そして、管路19aには、マスタシリンダ5の連絡管路7側に、常時開の切替え弁21が配置されており、ホイールシリンダ11の連絡管路8に常時開の込め弁23が配置されている。管路19bには、込め弁23の出口側に常時閉の弛め弁25が配置されており、弛め弁25の下流側に逆止弁(チェックバルブ)41と、液圧ポンプ29とが図示のように配置されている。また、管路19cには、常時閉の高圧吸入弁33が図示のように配置されている。
【0023】
また、上記管路19aには、切替え弁21の上流と下流をつなぐバイパス管19dと、込め弁23の上流と下流をつなぐバイパス管19eが設けられており、バイパス管19dには逆止弁43が、バイパス管19eには逆止弁45がそれぞれ配置されている。
また、上記管路19bには、弛め弁25と逆止弁41との間に分岐管19fが設けられており、該分岐管19fの終端にリザーバ27が設けられている。
【0024】
また、管路19cには、管路19aとの分岐点47aと高圧吸入弁33との間に分岐管19gが設けられており、該分岐管19gの終端に上述した圧力センサ35が配置されている。
また、液圧ポンプ29は、プランジャ式のポンプであり、一例として直流モータによって構成されるモータ31の出力軸に取り付けられている図示しない偏心カムの周面に摺接することによって、液圧ポンプ29のプランジャ駆動方向Aに所定ストローク移動して所定のポンプ作用を実行できるように構成されている(
図3参照)。また、リザーバ27は、上記液圧ポンプ29のポンプ作用の開始を待つことなく、速やかにホイールシリンダ11の液圧を下げるために作動液Lを逃がす一時貯留タンクとしての役割を有している。また、上記4種類の弁21、23、25、33としては、一例として周知の2位置型電磁弁が適用可能である。
【0025】
前輪17の近傍には、前輪17の回転数から前輪17の速度変化を検出している速度センサ37が設けられており、該速度センサ37によって得られた前輪17の速度情報と、圧力センサ35によって得られた管路19内の圧力情報と、ブレーキレバー3の操作量とに基づいて、
図2に示すように電子制御ユニット(ECU)39でノーマルモード、ABSモードあるいは昇圧モードに基づいたブレーキ液圧制御を行って、上述した4種類の弁21、23、25、33の開閉と、モータ31の駆動及び停止を適宜のタイミングで切り替えている。
【0026】
(2)ハウジングの管路構成と液圧回路部品の配置構成(
図3参照)
ブレーキ液圧制御装置1は、前述したように、単一のハウジング13内に、作動液Lの流路を形成する管路19と、プランジャ式の単一の液圧ポンプ29と、作動液Lの液圧を減圧、増圧及び保持する場合に適宜切り替えて使用される切替え弁21、込め弁23、弛め弁25、高圧吸入弁33の4種類の電磁弁とが一組のみ設けられている。
ハウジング13は、対向する2面49a、49bの面積が大きく、残りの4面49c、49d、49e、49fの面積が2面49a、49bより小さな偏平な矩形ブロック状の部材であり、一例としてアルミニウム等、軽量で必要な剛性を備えた金属性材料等によって形成されている。
【0027】
ハウジング13には、
図3に示すように作動液Lの流路を形成するための連通穴51が形成されており、該連通穴51によって前述した液圧回路15の管路19がハウジング13内に設けられている。
本実施の形態では、
図3に示すように面積が大きな2面49a、49bの一方の面49aに対して4種類の電磁弁21、23、25、33の一端面が臨むように整列配置されている。そして、液圧ポンプ29を収容する収容穴53を中心に挟んでその一側方に切替え弁21と込め弁23が、その他側方に弛め弁25と高圧吸収弁33が、それぞれ液圧ポンプ29のプランジャ駆動方向Aと平行な直線B、C上に配置されている。
【0028】
また、本実施の形態では、
図3に示すように前記液圧ポンプ29を収容する収容穴53を跨いでその一端D寄りに、込め弁23と弛め弁25が、その他端E寄りに切替え弁21と高圧吸入弁33が、それぞれ液圧ポンプ29のプランジャ駆動方向Aと交差する直線F、G上に配置されている。
更に、本実施の形態では、
図3に示すように、4種類の電磁弁21、23、25、33の中央に、前記管路19内を流れる作動液Lの液圧を検出する前述した圧力センサ35が配置されており、該圧力センサ35の一端面が面積が大きな一方の面49aに臨むように設けられている。
この他、ハウジング13には、前述したマスタシリンダ5から延びる連絡管路7と接続するための流入口55と、前述したホイールシリンダ11から延びる連絡管路8と接続するための流出口57と、前述したリザーバ27を収容する収容室59と、ハウジング13を取り付ける場合に使用するネジ孔61等が
図3に示すように適宜設けられている。
【0029】
(3)各モード実行時の作動液の流れ(
図4乃至
図6参照)
次に、このようにして構成される本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置1の液圧回路部品の作動態様を、(A)ノーマルモード実行時と、(B)ABSモード実行時と、(C)昇圧モード実行時とに分けて、上記各モードを実行する時の作動液Lの流れにしたがって説明する。
(A)ノーマルモード実行時(
図4参照)
ノーマルモードを実行する通常時は、管路19aに配置されている切替え弁21と込め弁23が開状態、管路19bに配置されている弛め弁25と管路19cに配置されている高圧吸入弁33は閉状態になっている。したがって、ドライバーがブレーキレバー3を操作すると、その操作量に応じた作動液Lの液圧が連絡管路7から管路19aにかかるようになり、切替え弁21と込め弁23を通り、更に連絡管路8を経由してホイールシリンダ11に達し、ブレーキレバー3の操作量に対応した制動力がブレーキ9によって前輪17にかかるようになる。
【0030】
(B)ABSモード実行時(
図5参照)
濡れた路面等の走行時に速度センサ37によって前輪17のロックが確認されると、込め弁23を閉状態にしてマスタシリンダ5からの作動液Lの供給を停止する。また、ホイールシリンダ11にかかっていた作動液Lの液圧は分岐点47cから管路19bに流れ、開状態に移行する弛め弁25を通ってリザーバ27に一時貯留される。
その後、モータ31が起動して液圧ポンプ29を作動させると、ホイールシリンダ11内の作動液Lとリザーバ27に一時貯留されていた作動液Lは、逆止弁41を通って液圧ポンプ29に至り、合流点47bから再び管路19a内に流入し、開状態の切替え弁21を通って上記連絡管路7からマスタシリンダ5に至る。
【0031】
尚、ホイールシリンダ11にかかっていた作動液Lの液圧が下がると、前輪17のロックが解除され、前輪17は再び回転を開始する。速度センサ37は前輪17の速度を再度計測し、マスタシリンダ5からの作動液Lの液圧を上げてブレーキ9によってかかる前輪17に対する制動力を強くする。
以下、同様の操作を数ミリ秒単位で断続的に繰り返し行い、車体の姿勢の安定性と操舵性を確保しながら走行停止状態へと移行して行く。
【0032】
(C)昇圧モード実行時(
図6参照)
ブレーキレバー3の操作に基づく上記ノーマルモードでの前輪17の制動力が不十分であると判断された場合や連動ブレーキシステムが作動して前後輪の制動力を理想配分にするためのアクティブ増圧が行われる場合には、切替え弁21を閉じて、閉状態であった高圧吸入弁33を開状態に切り替え、モータ31を起動して液圧ポンプ29を駆動する。
これにより、マスタシリンダ5から供給され、分岐点47aから管路19cに流入した作動液Lが高圧吸入弁33を通って合流点47dから管路19bに流入し、逆止弁41、液圧ポンプ29を通って合流点47bから管路19aに流れ込む。
【0033】
更に、作動液Lは開状態の込め弁23を通って連絡管路8を経由してホイールシリンダ11に達し、ブレーキレバー3の操作量に対応した制御力を補填するブレーキアシストとして作用したり、アクティブ増圧による制動力を前輪17にかけるようになる。
尚、アクティブ増圧実行時にブレーキレバー3を操作した時には、切替え弁21を閉状態にして、連絡管路7から直接、管路19a内に流れ込む作動液Lを規制する。
このとき、作動液Lは、マスタシリンダ5から、分岐点47aを通って管路19cに流入し、管路19cから合流点47dで管路19bに流入し、更に合流点47bで管路19aに流れ込む流路のみを使用してホイールシリンダ11に作動液Lを供給するようにする。
【0034】
そして、このようにして構成される本実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置1によれば、ハウジング13の小型・軽量化と構造の単純化を図ることができるからブレーキ液圧制御装置1の取付け・組立てコストを削減することができる。また、前後輪2系統のブレーキ制御システムのセパレート化を図って、ブレーキ液圧制御装置1の配置と組み合わせの自由度を拡大し、前後輪2系統の液圧回路15間の干渉(例えば振動の伝達)を防止することができる。
更に、液圧式のブレーキ制御システムと機械式のブレーキ制御システムを併用している自動二輪車等にも対応でき、種々のタイプの自動二輪車等に対応できる応用範囲の広いブレーキ液圧制御装置1を提供することが可能になる。
【0035】
以上が本発明の基本的な実施の形態であるが、本発明のブレーキ液圧制御装置1は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略、あるいは当業者において周知、慣用の技術を追加することが可能である。
例えば、前述した構成のブレーキ液圧制御装置1を後輪用のブレーキ液圧制御システムに適用することが可能である。そして、この場合には、ブレーキレバー3に代えてブレーキペダルが適用でき、液圧回路15中に発進・加速時の後輪の空転を防止するTCS(トラクションコントロールシステム)としての機能を付加することが可能である。
【0036】
また、本発明のブレーキ液圧制御装置1は、それぞれ1系統の液圧回路15のみがハウジング13に備えられた二組の液圧ユニットによって構成することが可能である。この場合には、一組の液圧ユニットのハウジング13に前輪17のブレーキ液圧制御を行う前輪17用の液圧回路15を設け、他の一組の液圧ユニットのハウジング13に後輪のブレーキ液圧制御を行う後輪用の液圧回路15を設けるようにする。
そして、前述した構成を有する二組の液圧ユニットを備えたブレーキ液圧制御装置1を採用した場合には、個々の液圧ユニットが有する前述した作用、効果に加えて、二組の液圧ユニットを連携させて動作させる前述した連動ブレーキシステム等の機能をブレーキ液圧制御装置1に付加することが可能になる。また、前輪用と後輪用にセパレート化された二組の液圧ユニットの配置は自由であり、一個所にまとめて配置させてもよいし、両者を離間させて別々の位置に配置することが可能である。
【0037】
また、前述した切替え弁21と込め弁23の配置と、前述した弛め弁25と高圧吸入弁33の配置は、液圧ポンプ29のプランジャ駆動方向Aと完全に平行な直線B、C上に設定する他、ハウジング13の小型化と管路19の複雑化を招かない範囲で幾分傾けたり、上記直線B、Cから幾分ずらした位置に設定することが可能である。
同様に、前述した込め弁23と弛め弁25の配置と、前述した切替え弁21と高圧吸入弁33の配置は、液圧ポンプ29のプランジャ駆動方向Aと直交する直線F、G上に設定する他、ハウジング13の小型化と管路19の複雑化を招かない範囲で幾分傾けたり、上記直線F、Gから幾分ずらした位置に設定することが可能である。
【0038】
また、前述した切替え弁21と込め弁23の配置と、前述した弛め弁25と高圧吸入弁33の配置を左右入れ替えて前述した一側方に弛め弁25と高圧吸入弁33を配置し、前述した他側方に切替え弁21と込め弁23を配置することが可能である。
同様に、前述した込め弁23と弛め弁25の配置と、前述した切替え弁21と高圧吸収弁33の配置を前後入れ替えて前述した一端D側に切替え弁21と高圧吸収弁33を配置し、前述した他端E側に込め弁23と弛め弁25を配置する構成を採用することも可能である。
また、前述した連動ブレーキシステムにおいて前輪用及び後輪用液圧制御装置間で通信を行うことを可能とするため、両液圧制御装置を直接ハーネスにより接続しても良いし、CAN(Car Area Network)等の車内LANを介して接続しても良い。
【0039】
以上のように、本実施形態のブレーキ液圧制御装置は、自動二輪車の生産現場やその使用分野等で利用でき、ハウジングの小型・軽量化と構造の単純化を図り、前後輪2系統のブレーキ制御システムのセパレート化を達成してブレーキ液圧制御装置の配置や組み合わせの自由度を拡大できる。