特許第5979770号(P5979770)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979770
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】還元剤供給装置の制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20160818BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
   F01N3/08 B
   F01N3/24 L
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-522673(P2015-522673)
(86)(22)【出願日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】JP2014063197
(87)【国際公開番号】WO2014199778
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2015年9月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-122151(P2013-122151)
(32)【優先日】2013年6月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】觸澤 宣晶
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/035355(WO,A1)
【文献】 特開2008−248710(JP,A)
【文献】 特開2006−17043(JP,A)
【文献】 特開2011−241740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体還元剤の凍結時に、凍結した液体還元剤を加熱装置により解凍して内燃機関の排気通路への液体還元剤の噴射制御を可能とする還元剤供給装置の制御装置において、
前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記液体還元剤の解凍の要否を判定する解凍要否判定手段と、
前記液体還元剤の解凍に要する必要時間を演算する解凍時間演算手段と、
前記液体還元剤の噴射制御の許可指令を与える噴射許可手段と、を備え、
前記内燃機関の始動時に前記内燃機関の回転数が所定の閾値を超えたときに、前記解凍要否判定手段が前記解凍の要否を判定するとともに前記解凍時間演算手段が前記必要時間を演算し、前記解凍の不要時又は前記解凍の終了時に前記噴射許可手段が噴射制御を許可することを特徴とする還元剤供給装置の制御装置。
【請求項2】
前記解凍が必要と判定された場合において、前記噴射許可手段は、前記解凍の開始からの計測時間が、算出された前記必要時間を経過したときに前記噴射制御の許可信号を与えるように構成され、
前記噴射許可手段は、前記内燃機関の始動スイッチのオフ時に前記計測時間及び前記必要時間をリセットしない一方、前記内燃機関の回転数が前記所定の閾値を超えたときに前記計測時間及び前記必要時間をリセットしてから再び計測開始及び必要時間の演算を行うことを特徴とする請求項1に記載の還元剤供給装置の制御装置。
【請求項3】
前記解凍要否判定手段は、大気温度又は液体還元剤の貯蔵部の温度に基づいて解凍の要否を判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の還元剤供給装置の制御装置。
【請求項4】
前記加熱装置が、前記内燃機関の冷却水が循環可能な構成を有するものであり、前記解凍の開始は、前記内燃機関の始動時であることを特徴とする請求項2又は3に記載の還元剤供給装置の制御装置。
【請求項5】
前記加熱装置が、電熱ヒータを有するものであり、前記解凍が必要と判定されたときに前記電熱ヒータを作動する解凍制御手段を備え、前記解凍の開始は、前記電熱ヒータの作動開始時であることを特徴とする請求項2又は3に還元剤供給装置の制御装置。
【請求項6】
液体還元剤の凍結時に、凍結した液体還元剤を加熱装置により解凍して内燃機関の排気通路への液体還元剤の噴射制御を可能とする還元剤供給装置の制御方法において、
前記内燃機関の始動時に前記内燃機関の回転数が所定の閾値を超えたときに前記液体還元剤の解凍の要否を判定するとともに前記解凍に要する必要時間を演算し、
前記解凍の不要時又は前記解凍の終了時に前記液体還元剤の噴射制御を許可することを特徴とする還元剤供給装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路にアンモニア由来の液体還元剤を供給する還元剤供給装置を制御するための還元剤供給装置の制御装置及び制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載されたディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気中のNOXを浄化する排気浄化装置の一つとして、内燃機関の排気通路中に配置される選択還元触媒と、選択還元触媒の上流側で尿素水溶液等のアンモニア由来の液体還元剤を噴射するための還元剤供給装置とを備えた排気浄化装置が知られている。この排気浄化装置は、選択還元触媒中で、排気中のNOXとアンモニアとを効率的に還元反応させ、NOXを窒素や水等に分解するものとなっている。
【0003】
液体還元剤として尿素水溶液を使用する場合、尿素水溶液ができる限り凍結しないように、凍結温度が最も低くなる濃度の尿素水溶液が用いられる。ただし、尿素水溶液の凍結温度は低くても−11℃程度であり、寒冷地等においては還元剤供給装置による尿素水溶液の供給が停止されている期間において尿素水溶液が凍結するおそれがある。液体還元剤が凍結した場合には、噴射制御を可能とするために凍結した液体還元剤の解凍制御が実行される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−180110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この液体還元剤の解凍の要否、すなわち、液体還元剤の凍結の有無は、例えば、大気温度が液体還元剤の凍結を判定するための閾値を下回っているか否かによって判定されるが、液体還元剤の解凍の要否を内燃機関の始動スイッチがオンになった時に判断しようとすると、始動スイッチがオンにされた後、そのまま内燃機関が始動されないで長時間経過した場合には、もはや解凍制御が実施されないおそれがある。すなわち、始動スイッチがオンにされた直後には液体還元剤の解凍制御が不要と判断される場合であっても、時間の経過とともに大気温度が低下した場合には解凍を待たなければいけないにもかかわらず、解凍を待たずに噴射制御が開始されることとなる。そのため、NOXの浄化制御が適切に行われないおそれがある。
【0006】
したがって、本発明は、内燃機関の始動スイッチがオンにされたままで長時間始動されない場合であっても、液体還元剤が凍結している場合には適切に解凍を待った後、噴射制御を開始させることができる還元剤供給装置の制御装置及び制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、液体還元剤の凍結時に、凍結した液体還元剤を加熱装置により解凍して内燃機関の排気通路への液体還元剤の噴射制御を可能とする還元剤供給装置の制御装置において、前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段と、前記液体還元剤の解凍の要否を判定する解凍要否判定手段と、前記液体還元剤の解凍に要する必要時間を演算する解凍時間演算手段と、前記液体還元剤の噴射制御の許可指令を与える噴射許可手段と、を備え、前記内燃機関の始動時に前記内燃機関の回転数が所定の閾値を超えたときに、前記解凍要否判定手段が前記解凍の要否を判定するとともに前記解凍時間演算手段が前記必要時間を演算し、前記解凍の不要時又は前記解凍の終了時に前記噴射許可手段が噴射制御を許可することを特徴とする還元剤供給装置の制御装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
【0008】
また、本発明の還元剤供給装置の制御装置を構成するにあたり、前記解凍が必要と判定された場合において、前記噴射許可手段は、前記解凍の開始からの計測時間が、算出された前記必要時間を経過したときに前記噴射制御の許可信号を与えるように構成され、前記噴射許可手段は、前記内燃機関の始動スイッチのオフ時に前記計測時間及び前記必要時間をリセットしない一方、前記内燃機関の回転数が前記所定の閾値を超えたときに前記計測時間及び前記必要時間をリセットしてから再び計測開始及び必要時間の演算を行うことが好ましい。
【0009】
また、本発明の還元剤供給装置の制御装置を構成するにあたり、前記解凍要否判定手段は、大気温度又は液体還元剤の貯蔵部の温度に基づいて解凍の要否を判定することが好ましい。
【0010】
また、本発明の還元剤供給装置の制御装置を構成するにあたり、前記加熱装置が、前記内燃機関の冷却水が循環可能な構成を有するものであり、前記解凍の開始は、前記内燃機関の始動時であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の還元剤供給装置の制御装置を構成するにあたり、前記加熱装置が、電熱ヒータを有するものであり、前記解凍が必要と判定されたときに前記電熱ヒータを作動する解凍制御手段を備え、前記解凍の開始は、前記電熱ヒータの作動開始時であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の別の態様は、液体還元剤の凍結時に、凍結した液体還元剤を加熱装置により解凍して内燃機関の排気通路への液体還元剤の噴射制御を可能とする還元剤供給装置の制御方法において、前記内燃機関の始動時に前記内燃機関の回転数が所定の閾値を超えたときに前記液体還元剤の解凍の要否を判定するとともに前記解凍に要する必要時間を演算し、前記解凍の不要時又は前記解凍の終了時に前記液体還元剤の噴射制御を許可することを特徴とする還元剤供給装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液体還元剤の解凍の要否が、内燃機関の始動後、回転数が所定の閾値を超えた時点で判断されることとなる。したがって、内燃機関が実際に始動される時点での解凍の要否が判断されることになって、液体還元剤が凍結している場合には、適切に解凍を待って噴射制御を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態にかかる還元剤供給装置を備えた排気浄化装置の全体的構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態にかかる還元剤供給装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
図3】比較例にかかる制御方法を説明するためのタイムチャートである。
図4】本発明の実施の形態にかかる制御方法を説明するためのタイムチャートである。
図5】本発明の実施の形態にかかる制御方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照して、本発明の還元剤供給装置の制御装置及び制御方法に関する実施の形態について具体的に説明する。
なお、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものについては、特に説明がない限り同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
【0016】
1.排気浄化装置の全体構成
図1は、還元剤供給装置20を備える排気浄化装置10の全体構成の一例を説明するために示す図である。
この排気浄化装置10は、排気中のNOXを浄化するための装置であり、図示しないディーゼルエンジン等の内燃機関の排気通路11に設けられている。排気浄化装置10は、排気通路11の途中に介装された還元触媒13と、還元触媒13よりも上流側の排気通路11内に液体還元剤を供給するための還元剤供給装置20とを備えている。
【0017】
還元触媒13は、排気中のNOXの還元反応を促進する機能を有する触媒であり、液体還元剤から生成される還元成分を吸着するとともに、触媒に流れ込む排気中のNOXを還元成分によって選択的に還元する触媒である。還元剤供給装置20は、液体還元剤として尿素水溶液が用いられるものであり、尿素水溶液が排気通路11中で分解されることにより還元成分としてのアンモニアが生成されるようになっている。また、還元触媒13の上流側において、還元剤供給装置20のさらに上流側には排気温度センサ15が設けられている。
【0018】
2.還元剤供給装置
図1において、還元剤供給装置20は、液体還元剤が収容される貯蔵部としての貯蔵タンク21と、液体還元剤を圧送するためのポンプユニット22と、液体還元剤を排気通路11内に噴射するための還元剤噴射弁25とを備えている。ポンプユニット22は、ポンプ23及び流路切換弁24を備えている。還元剤噴射弁25、ポンプ23及び流路切換弁24は、電子制御装置(ECU)40によって駆動制御が行われるものとなっている。
【0019】
ポンプ23と貯蔵タンク21とは第1の供給通路31によって接続され、ポンプ23と還元剤噴射弁25とは第2の供給通路33によって接続されている。第2の供給通路33には、第2の供給通路33内の圧力、すなわち、還元剤噴射弁25に圧送される液体還元剤の圧力を検出するための圧力センサ27が設けられている。ポンプ23と、第1の供給通路31及び第2の供給通路33とは、流路切換弁24を介して接続されている。
【0020】
流路切換弁24は、ポンプ23によって圧送される液体還元剤が流れる方向を、貯蔵タンク21側から還元剤噴射弁25側に流れる方向(以下「正方向」という。)と、還元剤噴射弁25側から貯蔵タンク21側に流れる方向(以下「逆方向」という。)とに切換える機能を有している。還元剤供給装置20において、流路切換弁24は、非通電状態で第1の供給通路31をポンプ23の吸入側に連通するとともに第2の供給通路33をポンプ23の吐出側に連通する一方、通電状態で第1の供給通路31をポンプ23の吐出側に連通するとともに第2の供給通路33をポンプ23の吸入側に連通するように構成されている。
【0021】
すなわち、液体還元剤の噴射制御を行う際には、液体還元剤を還元剤噴射弁25側に供給するために、流路切換弁24への通電は行われない。このとき、液体還元剤は正方向に流れる。一方、内燃機関の停止時において、還元剤供給装置20内の液体還元剤を貯蔵タンク21に回収する場合には、流路切換弁24に対して通電される。このとき、液体還元剤は逆方向に流れる。
【0022】
なお、液体還元剤を貯蔵タンク21に回収可能とする構成は、流路切換弁24を設ける例に限られない。例えば、逆回転可能なポンプ23を用いることによって液体還元剤を回収可能に構成することもできる。
【0023】
また、第2の供給通路33の途中には、他端が貯蔵タンク21に接続されたリターン通路35が分岐して設けられている。リターン通路35の途中には、流路面積が小さくされた絞り部36が設けられ、第2の供給通路33内の圧力を保持できるようになっている。また、絞り部36よりも貯蔵タンク21側のリターン通路35には、液体還元剤が貯蔵タンク21側から第2の供給通路33側に流れないようにするための一方向弁37が設けられている。一方向弁37は省略されていても構わない。
【0024】
なお、図1に示す還元剤供給装置20においてはポンプユニット22内に圧力センサ27が設けられているが、第2の供給通路33内の圧力を検出できる位置であれば、どの位置に設けられていても構わない。
【0025】
ポンプ23は、ECU40による通電制御によって、所定の流量の液体還元剤を圧送する。図1の還元剤供給装置20において、ポンプ23は電磁式ポンプが用いられており、駆動デューティ比が大きいほどポンプ23の出力(吐出流量)が大きくなるものとなっている。このポンプ23が、液体還元剤を貯蔵タンク21に回収するための手段としての機能も有する。
【0026】
還元剤噴射弁25は、内燃機関の運転状態において、ECU40による通電制御によって開閉制御が行われ、所定量の液体還元剤を排気通路11内に噴射する。還元剤噴射弁25は、非通電状態で閉弁し、通電状態で開弁する、電磁式のオンオフ弁が用いられている。一方、還元剤噴射弁25は、内燃機関の停止時において、液体還元剤を回収する際には、還元剤噴射弁25を開弁した状態で維持される。これにより、還元剤噴射弁25の噴孔を介して空気(排ガス)が第2の供給通路33に導入され、液体還元剤が貯蔵タンク21内に回収されやすくなる。
【0027】
また、還元剤供給装置20には、凍結した液体還元剤を解凍するための加熱装置が設けられている。具体的に、第1の供給通路31及び第2の供給通路33には、それぞれ加熱装置としての電熱ヒータ19a,19bが備えられている。また、貯蔵タンク21、ポンプユニット22及び還元剤噴射弁25には、内燃機関1の冷却水が流通可能な冷却水通路17,18が設けられている。内燃機関1の運転中において、冷却水は60〜80℃程度になり、冷却水通路17,18中を冷却水が流れることで加熱装置として機能するようになっている。特に、図示しないものの、貯蔵タンク21内の冷却水通路17は、第1の供給通路31の端部近傍に配置されている。
【0028】
なお、電熱ヒータや内燃機関1の冷却水の循環は加熱装置の一例であり、他の構成を採用することもできる。
【0029】
3.電子制御装置(ECU)
図2は、ECU40のうち、液体還元剤の解凍制御に関連する部分を機能的なブロックで表した構成例を示している。
このECU40は、公知のマイクロコンピュータを中心に構成されたものであり、スイッチ検知手段41と、回転数検出手段43と、解凍要否判定手段45と、解凍時間演算手段47と、解凍制御手段49と、噴射許可手段51とにより構成されている。具体的に、これらの各部はマイクロコンピュータによるプラグラムの実行によって実現されるものとなっている。
【0030】
この他、ECU40には、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等の図示しない記憶素子やタイマカウンタ、さらにポンプ23、流路切換弁24、還元剤噴射弁25への通電制御を行うための駆動回路等が備えられている。また、ECU40は、内燃機関の始動スイッチのオンオフ信号や、排気温度センサ15、大気温度センサ39等の各種のセンサの信号を読み込み可能になっている。
【0031】
スイッチ検知手段41は、内燃機関1の始動スイッチのオンオフを検知する手段となっている。また、回転数検出手段43は、内燃機関1に備えられた回転数センサ3のセンサ信号に基づき、内燃機関1の回転数(以下「機関回転数」という。)Neを検出する手段となっている。
【0032】
解凍要否判定手段45は、機関回転数Neが所定の閾値Ne_thre以上となった後、大気温度センサ39のセンサ信号に基づき、液体還元剤の解凍の要否を判定する手段となっている。本実施の形態においては、大気温度センサ39によって検出される大気温度Taが、液体還元剤の凍結判定用の閾値Ta_thre以上か否かによって、解凍の要否を判定するものとなっている。
【0033】
また、解凍時間演算手段47は、凍結している液体還元剤を解凍するために要する必要時間を算出する手段となっている。具体的には、凍結した液体還元剤の温度が、解凍要否がなされるときの大気温度Taに相当する温度となっている前提で、電熱ヒータや内燃機関の冷却水によって液体還元剤を加熱して凍結温度を超えるまでに要する時間を求めるようにされている。
【0034】
例えば、内燃機関1の冷却水の循環通路によって加熱装置が構成される貯蔵タンク21やポンプユニット22においては、内燃機関1の始動とともに冷却水の循環が開始されるため、凍結状態の液体還元剤の温度と、内燃機関1の始動時から液体還元剤の温度が凍結温度を超えるまでの時間との関係を、あらかじめ実機を用いた実験等によって求めておくことで、解凍の要否判定時の大気温度Taに基づいて解凍に要する時間を算出することができる。
【0035】
また、電熱ヒータ19a,19bによって加熱装置が構成される第1の供給通路31、第2の供給通路33及びリターン通路35においては、凍結状態の液体還元剤の温度と、電熱ヒータ19a,19bの作動開始時から液体還元剤の温度が凍結温度を超えるまでの時間との関係を、あらかじめ実機を用いた実験等によって求めておくことで、解凍の要否判定時の大気温度Taに基づいて解凍に要する時間を算出することができる。
【0036】
解凍制御手段49は、凍結した液体還元剤の解凍が必要な場合に、電熱ヒータ19a,19bに対する通電を行わせる手段として構成されている。
なお、上述したように、本実施の形態においては、内燃機関1の運転中には内燃機関1の冷却水が冷却水通路17,18を流通するようになっており、この冷却水の流通に対する制御が不要となっているが、冷却水通路17,18への冷却水の流通を制御する弁等を備える場合には、解凍制御手段49がこの弁等の動作を制御するように構成される。
【0037】
噴射許可手段51は、液体還元剤の解凍が不要な場合、あるいは、凍結した液体還元剤の解凍が終了した場合に、内燃機関1の排気通路11への液体還元剤の噴射制御を許可する手段となっている。この許可指示に伴って、ポンプ23や還元剤噴射弁25の駆動制御が開始されることとなる。
【0038】
4.制御方法
次に、ECU40によって実行される本実施の形態の還元剤供給装置20の制御方法の具体例について、図4のタイムチャート及び図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0039】
(1)比較例
本実施の形態にかかる還元剤供給装置20の制御方法の説明に入る前に、まず比較例としての還元剤供給装置の制御方法について、図3のタイムチャートに基づいて説明する。
比較例にかかる制御方法では、t1´の時点で内燃機関1の始動スイッチがオンにされると、t2´の時点でそのときの大気温度Taを読み込み、大気温度Taに基づいて、液体還元剤の解凍の要否判定が行われるとともに、解凍が必要な場合には、解凍に要する必要時間T_threが設定される。次いで、t3´の時点で、解凍制御が開始されるとともにタイマ値Tの計測が開始される。なお、図3のタイムチャートでは、t2´の時点でクランキングが開始されて内燃機関1が始動している。
【0040】
その後、t4´の時点でタイマ値Tが必要時間T_threに到達すると解凍状態がyesとなって、t5´の時点で液体還元剤の噴射制御の許可が与えられて(噴射制御オン)、解凍制御が停止される(解凍制御オフ)。図3のタイムチャートでは、この後に大気温度Taが閾値Ta_threを超えている。
【0041】
次いで、t6´の時点で内燃機関1の始動スイッチがオフにされると、機関回転数Neがゼロになるとともに、噴射制御が終了する(噴射制御オフ)。このとき、比較例にかかる制御方法では、同時に、タイマ値T及び必要時間T_threがリセットされ、解凍状態もリセットされる(解凍状態no)。
【0042】
その後、t7´の時点で再び内燃機関1の始動スイッチがオンにされ、t8´の時点でそのときの大気温度Taを読み込むとともに、大気温度Taに基づいて解凍の要否判定が行われる。このとき、大気温度Taが閾値Ta_threを上回っているために、ECU40は、液体還元剤が解凍状態にあり、解凍制御が不要と判断することとなる。したがって、t8´の時点では、解凍状態がyesとされるとともに、解凍に要する必要時間T_threの設定はされない。
【0043】
この状態で、内燃機関1が始動されないまま維持され、t9´の時点で大気温度Taが閾値Ta_threを下回った後、t10´の時点で内燃機関1が始動された場合には、液体還元剤が凍結しているおそれがあるにもかかわらず、解凍状態がyesのままで維持されているために、t11´の時点で液体還元剤の噴射制御が許可されることとなる。その結果、排気中のNOXが効率的に浄化されないおそれがある。
【0044】
(2)実施例
これに対して、本発明の実施例にかかる制御方法では、内燃機関1の始動スイッチがオンにされた時ではなく、機関回転数Neが閾値Ne_threを超えたときに液体還元剤の解凍の要否を判定することとされている。
具体的には、図4のタイムチャートにおいて、t1の時点で内燃機関1の始動スイッチがオンにされると、機関回転数Neが閾値Ne_threを超えるt2の時点でそのときの大気温度Taを読み込み、大気温度Taに基づいて、液体還元剤の解凍の要否判定が行われるとともに、解凍が必要な場合には解凍に要する必要時間T_threが設定される。図4のタイムチャートの例では、大気温度Taが閾値Ta_threを下回っているために解凍が必要と判定され、t3の時点で解凍制御が開始されるとともにタイマ値Tの計測が開始される。
【0045】
その後、t4の時点でタイマ値Tが必要時間T_threに到達すると解凍状態がyesとなって、t5の時点で液体還元剤の噴射制御の許可が与えられ(噴射制御オン)、解凍制御が停止される(解凍制御オフ)。図4のタイムチャートでは、この後に大気温度Taが閾値Ta_threを超えている。
【0046】
次いで、t6の時点で内燃機関1の始動スイッチがオフにされると、機関回転数Neがゼロになるとともに、噴射制御が終了する(噴射制御オフ)。このとき、本実施の形態の制御方法においては、タイマ値T及び必要時間T_threはリセットされないで維持され、解凍状態もリセットされる(解凍状態no)。
【0047】
その後、t7の時点で再び内燃機関1の始動スイッチがオンにされる一方、内燃機関1が始動されないまま維持されて、t8の時点で大気温度Taが閾値Ta_threを下回るとする。ただし、本実施の形態にかかる制御方法では、その後、内燃機関1の始動処理がされて機関回転数Neが閾値Ne_threを上回ったt9の時点で、その時点の大気温度Taを読み込み、液体還元剤の解凍の要否が判定される。
【0048】
すなわち、t9の時点でのタイマ値Tや必要時間T_threが一旦リセットされ、同時に、そのときの大気温度Taを読み込み、大気温度Taに基づいて液体還元剤の解凍の要否判定が行われるとともに大気温度Taに基づいて解凍に要する必要時間T_threが設定される。図4のタイムチャートの例では、大気温度Taが閾値Ta_threを下回っているために解凍制御が必要と判定され、t10の時点で解凍制御が開始される(解凍制御オン)とともにタイマ値Tの計測が開始される。
【0049】
その後、t11の時点でタイマ値Tが必要時間T_threに到達すると解凍状態がyesとなって、t12の時点で液体還元剤の噴射制御の許可が与えられて(噴射制御オン)、解凍制御が停止される(解凍制御オフ)。
【0050】
次に、図4のタイムチャートに示す本実施の形態の制御方法を図5に示すフローチャートに沿って説明する。
まず、ECU40は、ステップS10において、内燃機関1の始動スイッチのオンを検出すると、ステップS11において、解凍状態のステータスをリセットする。すなわち、解凍状態がnoの状態とされる。
【0051】
次いで、ECU40は、ステップS12において、機関回転数Neが閾値Ne_threを超えたか否かの判別を繰り返し、機関回転数Neが閾値Ne_threを超えたとき(Yes判定)にステップS13に進む。ECU40は、ステップS13では、現在設定されている解凍に要する必要時間T_threやタイマ値Tをリセットするとともに、新たに大気温度Taに基づいて解凍に要する必要時間Ta_threを算出し設定する。また、同時に、大気温度Taに基づいて、液体還元剤の解凍の要否を判別する。
【0052】
次いで、ECU40は、ステップS14に進み、液体還元剤の解凍が要とされている場合にはステップS15に進んでタイマカウントを開始し、ステップS16においてタイマ値Tが閾値T_threに到達するまで待機する。タイマ値Tが閾値T_threに到達すると、ECU40はステップS17に進み、液体還元剤の解凍が終了したと判断し、解凍状態をyesとする。
【0053】
次いで、ECU40は、ステップS18に進み、液体還元剤の噴射制御を許可する。上述のステップS14で解凍が不要とされている場合には、ステップS15〜S17はスキップされて、ステップS18に進んで液体還元剤の噴射制御の許可がなされる。その後は、詳述しないが、液体還元剤の噴射制御が実行される。
【0054】
その後、ECU40は、ステップS19において、内燃機関1の始動スイッチのオフが検知されるまで待機し、始動スイッチがオフにされると(Yes判定)、ステップS20に進んで解凍状態をクリアして、本ルーチンを終了する。
【0055】
以上説明した本実施の形態にかかる還元剤供給装置20の制御装置40及び制御方法では、液体還元剤の解凍の要否が、内燃機関1の始動後、機関回転数Neが所定の閾値Ne_threを超えた時点で判断されることとなる。したがって、内燃機関1が実際に始動される時点での解凍の要否が判断されることになって、液体還元剤が凍結している場合には、適切に解凍を待って噴射制御を開始することができる。
【0056】
なお、これまで説明した本実施の形態にかかる還元剤供給装置20の制御装置40及び制御方法は、本発明の一態様を示すものであって本発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。
【0057】
例えば、上述の実施の形態においては、大気温度センサ39によって検出される大気温度Taに基づいて液体還元剤の解凍の要否が判定されているが、解凍の要否の判定方法はこれに限られるものではない。例えば、貯蔵タンク21に貯蔵された液体還元剤の温度を検出するための還元剤温度センサ38が設けられている場合には、当該還元剤温度センサ38によって検出される還元剤温度に基づいて解凍の要否を判定するように構成することもできる。
【0058】
また、上述の実施の形態においては、図3及び図4に示すように、液体還元剤の解凍の要否判定を実行した後、電熱ヒータ19a,19bの作動開始時からタイマカウントを開始しているが、内燃機関1の始動とともに冷却水が循環する加熱装置が適用される場合には、機関回転数Neが閾値Ne_threを超えたときに実行される液体還元剤の解凍の要否判定と同時にタイマカウントを開始するように構成することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5