(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明に係る携帯機スロット装置の分解斜視図、
図2は同携帯機スロット装置の携帯機挿入前の状態を示す側断面図、
図3は同携帯機スロット装置の携帯機挿入前の状態をパネルとシャッタを外して示す平断面図、
図4は同携帯機スロット装置の携帯機挿入前の状態をパネルとシャッタを外して示す破断正面図、
図5は同携帯機スロット装置の携帯機挿入初期の状態をパネルとシャッタを外して示す平断面図、
図6は同携帯機スロット装置の携帯機挿入後の状態(ロック状態)を示す側断面図、
図7は同携帯機スロット装置の携帯機挿入後の状態(ロック状態)をパネルとシャッタを外して示す平断面図、
図8は同携帯機スロット装置の携帯機を強引に引き抜いた後の状態を示す側断面図、
図9は同携帯機スロット装置のハートカムの作動溝におけるラッチピンの移動経路を示す底面図である。
【0016】
[携帯機スロット装置の構成]
本発明に係る携帯機スロット装置1は、自動車の車室前部に幅方向に配された不図示のインストルメントパネルに設けられる装置であって、無線通信機能を有する携帯機50の挿脱が可能なケース2と、携帯機50の挿脱方向に沿ってケース2内を移動可能なスライダ3と、該スライダ3に回動可能に設けられた一対のロックレバー4と、スライダ3をロック位置に保持可能なロック機構5を備えている。
【0017】
上記ケース2は、樹脂にて矩形ボックス状に一体成形された部品であって、その開口部の外周には
図1及び
図2に示す矩形枠状のパネル6が嵌着されている。そして、このパネル6には、前記携帯機50をケース2内に挿入するための挿入孔6aが形成されており、この挿入孔6aは、パネル6の内側に回動可能に設けられたシャッタ7によって開閉される。ここで、
図1及び
図2に示すように、シャッタ7は、その下端部両側に突設された軸7aによってケース2の内部において回動可能に支持されており、これはシャッタ用スプリング8によってパネル6の挿入孔6aを閉じる方向に付勢されている。
【0018】
前記スライダ3は、ケース2と同様に樹脂にて矩形ボックス状に一体成形された部品であって、その下面(以下、「上下」は当該携帯機スロット装置1が図示状態に設置されたときの上下を言うものとする)の一側部には、
図1に示すようにリブ状のガイドレール3aが該スライダ3のスライド方向に沿って突設されており、ケース2の内底面の対応する箇所には、スライダ3のガイドレール3aが嵌合するためのレール凹部2aがスライダ3のスライド方向に沿って形成されている。
【0019】
又、
図1に示すように、スライダ3の上端部左右には、上方に向かって広がるように傾斜したガイドレール3bが該スライダ3のスライド方向に沿って形成されており、一方(
図1の左側)のガイドレール3bの近傍には垂直に起立するリブ状のガイドレール3cが該スライダ3のスライド方向に沿って突設されている。そして、ケース2内上部のガイドレール3bに対応する左右2箇所(
図1には一方のみ図示)には、ガイドレール3bが嵌合するための円孔状のスプリング収納部2b(
図1には一方のみ図示)がスライダ3のスライド方向に沿って形成されている。又、ケース2内上部のガイドレール3cに対応する箇所には、ガイドレール3cが嵌合するためのレール凹部2cが前記スプリング収納部2bと平行に形成されている。
【0020】
而して、スライダ3は、その下部に突設されたガイドレール3aをケース2のレール凹部2aに嵌合させるとともに、上部に形成されたガイドレール3b,3cをケース2のスプリング収納部2bとレール凹部2cにそれぞれ嵌合させることによって、
図2〜
図3に示すように、ケース2内において携帯機50の挿脱方向(
図2の左右方向)にスライド可能に収容保持されている。そして、スライダ3は、ケース2の左右2つの前記スプリング収納部2bにそれぞれ収納された第1スプリング9が該スライダ3の左右のガイドレール3bの端面で押圧されることによって
図2及び
図3に示す初期位置(携帯機50をケース2内に挿入する前の位置)方向に付勢されている。
【0021】
前記左右一対のロックレバー4は、板金によってL字状に屈曲成形されており、これらはスライダ3の両側部に回動可能に支持されている。即ち、各ロックレバー4は、その中間部(屈曲部)の上下に突設された軸4a(
図1には上下一方のみ図示)によって
図3に示すようにスライダ3に回動可能に支持されている。
【0022】
そして、各ロックレバー4がスライダ3に取り付けられた
図3に示す状態において、該ロックレバー4の軸4aからスライダ3の外側面に沿って延びる撓曲可能なアーム部4Aの端部には樹脂製の第1係合突部4bが取り付けられており、アーム部4Aに切り起しによって形成された別のアーム部4A1の端部には樹脂製の第2係合突部4cが取り付けられている。又、各ロックレバー4の軸4aを起点として前記アーム部4Aから略直角に屈曲する他端部には樹脂製の作用部4Bが取り付けられている。
【0023】
ところで、
図3及び
図4に示すように、前記スライダ3の奥側の端面の左右には矩形の貫通孔3dが形成されており、これらの貫通孔3dの間には縦方向に長い矩形の開口部3eが形成されている。そして、左右のロックレバー4は、第2スプリング10によって軸4aを中心として開き方向にそれぞれ付勢されており、スライダ3の左右の前記貫通孔3dには左右のロックレバー4の作用部4Bが貫通してスライダ3の内部に突出している。又、左右のロックレバー4のアーム部4A,4A1の端部にそれぞれ取り付けられた前記第1係合突部4bと第2係合突部4cは、
図2及び
図3に示すようにスライダ3から手前側(
図2の左側)に延びてケース2の内部に突出している。尚、本実施の形態では、各第2スプリング10の付勢力(バネ定数)は各第1スプリング9の付勢力(バネ定数)よりも小さく設定されている。
【0024】
ここで、
図3に示すように、ケース2の左右の内壁の手前側部分(
図3の下側部分)は幅広部2dとして構成され、その奥側部分は幅広部分2dよりも幅が狭い平行な保持部2eとして構成されている。そして、ケース2内に携帯機50を挿入する前の
図3に示す状態では、スライダ3は図示の初期位置にあり、このスライダ3に軸4aによって回動可能に支持された左右のロックレバー4は開位置にあって、そのアーム部4A,4A1はケース2の内壁の幅広部2dに当接した状態にある。
【0025】
前記ロック機構5は、スライダ3を
図6及び
図7に示すロック位置に保持するための機構であって、ケース2の上面に装着されたハートカム11とクランク状に屈曲したラッチピン12及び該ラッチピン12をハートカム11側(上方)に付勢するラッチピン用スプリング13によって構成されている。
【0026】
図1に示すように、ケース2の上面にはハートカム装着部2Aが形成されており、このハートカム装着部2Aの左右の内壁に形成された複数の係合リブ2f(
図1には一方側のみ図示)にハートカム11の左右両側に形成された複数の係合爪11a(
図1には一方側のみ図示)をスライドさせて係合させることによってハートカム11がケース2のハートカム装着部2Aに着脱可能に装着されている。そして、このハートカム11の底面には、
図9に示すような閉ループ状を成す略ハート状の作動溝11Aが形成されており,この作動溝11Aにはスライダ3の初期位置とロック位置に対応する係合部11A1,11A2が形成されるとともに、複数の段部11b,11c,11d,11e,11fが形成されている。又、ハートカム11の底面には、前記ラッチピン12の先端を挿入してこれを作動溝11Aへと導く挿入溝11gが形成されている。
【0027】
又、前記ラッチピン用スプリング13は、スライダ3の上面に立設された円筒状のスプリング受け3f(
図1及び
図4参照)内に収容されており、このラッチ用スプイング13によってラッチピン12がハートカム11側(上方)に付勢されており、該ラッチピン12の先端は、ハートカム11の底面に形成された
図9に示す作動溝11Aに係合している。
【0028】
ところで、
図1に示すように、ケース2の上面の前記ハートカム装着部2Aの横には基板装着部2Bが形成されており、この基板装着部2Bにはプリント基板14が
図2に示すように水平状態で装着されている。ここで、プリント基板14には検出スイッチ15とコネクタ16が取り付けられている。
【0029】
上記検出スイッチ15は、携帯機50が
図6及び
図7に示すロック位置にあることを検出するものであって、その接点15aが
図1〜
図4に示す検出部材17によって倒されてONすることによって携帯機50がロック位置にあることを検出する。
【0030】
上記検出部材17は、樹脂によって十字状に一体成形されており、前記ケース2に形成された検出部材収納部2C(
図1及び
図2参照)にスライダ3のスライド方向(
図2の左右方向)に摺動可能に収容されている。そして、この検出部材17には垂直下方に延びる作用部17aと水平な操作子17bが備えられている。
【0031】
而して、検出部材17は、ケース2に形成された円孔状のスライド溝2g内に縮装された検出部材用スプリング18によって手前側(
図2の左側)に付勢されており、携帯機50がケース2内に挿入されていない
図2に示す状態では、検出部材17は、ケース2の上部に被着されたカバー19のストッパ部19aに当接して図示の初期位置に待機している。
【0032】
ところで、ケース2に形成された前記スライド溝2gは、前記検出部材用スプリング18を収納する機能と前記検出部材17をスライド可能に保持する機能を備えているが、
図4に示すように、ケース2にはスライド溝2gに連通してケース2の外側に向かって開口するスイッチ開口部2hが設けられており、このスイッチ開口部2hに前記検出スイッチ15が配置されている。
【0033】
前記カバー19は、
図1に示すように下方が開口する矩形ボックス状の部材であって、その両側部には下方に延びるブラケット19A(
図1には一方のみ図示)が一体に形成されており、各ブラケット19Aには矩形の係合孔19bがそれぞれ形成されている。そして、このカバー19は、これをケース2の上方から被せてケース2の上部に嵌め込み、その左右のブラケット19Aに形成された係合孔19bをケース2の左右両側部に突設された係合爪2i(
図1には一方のみ図示)に係合させることによってケース2に装着され、これに上方から挿通するネジ20をケース2の上面に立設されたボス2jにねじ込むことによってケース2に固定されている。
【0034】
[携帯機スロット装置の作用]
次に、以上のように構成された携帯機スロット装置1の作用を説明する。
【0035】
携帯機50をケース2内に挿入する前の状態では、シャッタ7はシャッタ用スプリング8の付勢力によってパネル6の挿入孔6aを
図2に示すように閉じており、スライダ3は、第1スプリング9の付勢力によって
図2及び
図3に示す初期位置にあり、左右のロックレバー4は、第2スプリング10によって開き方向に付勢されて
図3及び
図4に示すように開位置にあり、そのアーム部4A,4A1はケース2の左右の内壁の幅広部2dに当接している。
【0036】
そして、上記状態から携帯機50をパネル6の挿入孔6aからケース2内に挿入すると、シャッタ7は、携帯機50によって押されてシャッタ用スプリング8の付勢力に抗して軸7aを中心として回動し、パネル6の挿入孔6aを開いて携帯機50の挿入を許容する。ここで、
図5に示すように、携帯機50の一方の側部には、軸51を中心として回動可能なメカニカルキー52が収納されており、他方の側部には係合凹部50aが形成されている。
【0037】
而して、図
5に示すように携帯機50がケース2内に収容されてその先端部分がスライダ3内に収容された状態では、該携帯機50がスライダ3の貫通孔3dから突出する左右のロックレバー4の作用部4Bに当接してこれを押すため、各ロックレバー4は第2スプリング10の付勢力に抗して軸4aを中心として閉じ方向に回動して閉位置へと移動する。このとき、スライダ3を付勢する第1スプリング9の付勢力の方がロックレバー4を付勢する第2スプリング10の付勢力よりも大きいため、スライダ3は後退せず、左右のロックレバー4のみが開位置から閉位置へと回動する。
【0038】
次に、
図5に示す状態から携帯機50を更に奥へと挿入すると、
図7に示すように携帯機50と共にスライダ3も奥側(
図5の上方)へと移動し、該スライダ3に支持された左右のロックレバー4がケース2の左右の内壁の幅広部2dから保持部2eへと移動し、これらのロックレバー4の広がりが規制されるため、各ロックレバー4は閉位置に保持される。このとき、一方(
図7の右側)のロックレバー4の第1係合突部4bは携帯機50の係合凹部50aに係合し、他方(
図7の左側)のロックレバー4の第2係合突部4cはメカニカルキー52の段部52aに係合しており、これによって携帯機50が左右のロックレバー4によって保持される。尚、携帯機50を
図7に示す状態とは左右を逆にして挿入した場合には、左側のロックレバー4の第1係合突部4bが携帯機50の係合凹部50aに係合し、右側のロックレバー4の第2係合突部4cがメカニカルキー52の段部52aに係合する。このため、携帯機50を左右を気にすることなくケース2内に挿入することができる。
【0039】
そして、携帯機50がスライダ3と共に
図6及び
図7に示すロック位置へと移動すると、スライダ3は、ロック機構5によってロック位置にロックされ、これによって携帯機50がケース2内に保持される。ここで、ロック機構5においては、ラッチピン12の先端がハートカム11の
図9に示す作動溝11Aの係合部11A1(初期位置)から矢印にて示す経路aを経てロック位置へと移動して係合部11A2に係合するため、スライダ3がロック位置にロックされる。
【0040】
又、スライダ3がロック位置へと移動すると、該スライダ3に収容された携帯機50の先端部が検出部材17の作用部17aに当接して該検出部材17を検出部材用スプリング18の付勢力に抗して同方向へと移動させるため、該検出部材17の操作子17bが
図6に示すように検出スイッチ15の接点15aを倒して該検出スイッチ15をONさせる。すると、スライダ3と携帯機50がロック位置へと移動したことが検出スイッチ15によって検出され、不図示のインジケータが点灯する。
【0041】
そして、上記状態から運転者が不図示のエンジンスタートスイッチを操作すると、車体側の不図示の制御部と携帯機50との間で通信が行われ、携帯機50から送信されたIDコードと制御部に予め割り当てられたIDコードとが一致したことを条件としてエンジンの始動が許可される。
【0042】
次に、
図6及び
図7に示すようにロック位置にある携帯機50を抜き取る場合には、該携帯機50をロック位置から更に押し込む。すると、ロック機構5によるスライダ3のロックが解除される。即ち、ハートカム11の
図9に示す作動溝11Aのロック位置にあったラッチピン12は、作動溝11Aの係合部11A2との係合が解除されて係合部11A2から抜け出るため、ロック機構5によるスライダ3のロックが解除される。
【0043】
そして、上述のように携帯機50をロック位置から更に押し込んだ後に該携帯機50から手を離すと、スライダ3と携帯機50は、第1スプリング9の付勢力によって
図5に示す初期位置まで移動する。尚、このとき、ロック機構5のハートカム11においては、ラッチピン12はロック位置から作動溝11Aを図示矢印にて示す経路bを経て初期位置へと移動する。
【0044】
上述のようにスライダ3と携帯機50が初期位置まで移動すると、左右のロックレバー4は
図5に示すようにケース2の左右内壁の保持部2eから幅広部2dへと移動するため、該ロックレバー4の閉位置での保持が解除され、各ロックレバー4は第2スプリング10の付勢力によって閉位置から開位置へと移動する。すると、左右のロックレバー4の第1係合突部4bと第2係合突部4cの携帯機50の係合凹部50aとメカニカルキー52の段部52aとの係合も解除されるため、携帯機50をそのまま抜き取ることができる。
【0045】
又、同時に携帯機50の初期位置への移動によって該携帯機50による検出部材17の押圧が解除されるため、検出部材17は検出部材用スプリング18の付勢力によって
図2に示す初期位置へと移動して検出スイッチ15がOFFされ、これによって携帯機50がケース2から抜き取られたことが検出され、不図示のインジケータが消灯される。
【0046】
ところで、
図7に示すようにロック位置にある携帯機50が強引に手前側(
図7の下方)に引っ張られた場合、該携帯機50の係合凹部50aとロックレバー4の第1係合突部4bの傾斜形状によって第1係合突部4bが外側に移動してアーム部4Aが撓むため、携帯機50の係合凹部50aとロックレバー4の第1係合突部4bとの係合が解除され、携帯機50の引き抜きが可能となる。尚、このとき、スライダ3は不動であって、ロック機構5を構成するハートカム11等には負荷が掛からないため、ハートカム11やケース2等の破損が防がれる。
【0047】
そして、上述のように携帯機50が引き抜かれると、
図8に示すように、スライダ3はロック位置にあるが、検出部材17はスライダ3の開口部3eを通過して初期位置方向に移動可能であるため、携帯機50による押圧が解除された検出部材17は、検出部材用スプリング18の付勢力によって初期位置まで移動する。このため、検出スイッチ15がOFFされ、携帯機50が抜き取られたことが検出される。つまり、本実施の形態では、検出部材17に携帯機50を直接当接させる構成を採用したため、携帯機50のみが引き抜かれた場合であっても、携帯機50の抜き取りを検出スイッチ15によって検出することができる。
【0048】
以上において、本発明に係る携帯機スロット装置1によれば、携帯機50をケース2内に挿入すると、該携帯機50がロックレバー4の作用部4Bを押圧して該ロックレバー4を回動させるため、ロックレバー4の第1係合突部4bと第2係合突部4cが閉位置に移動して携帯機50の係合凹部50aに係合する。そして、その状態から携帯機50をケース2内に更に押し込むと、ケース2の内部に形成された保持部2eによってロックレバー4が閉位置での状態に保持されるため、携帯機50はケース2内に保持される。即ち、ロックレバー4の開位置から閉位置への移動は、携帯機50のケース2内への押し込み操作によって直接行われるため、ロックレバー4とケース2の内側面との摺動抵抗が減少し、携帯機50の操作荷重に占める摺動抵抗の割合を小さく抑えることができ、これによって携帯機50の操作荷重を容易に調整することができる。
【0049】
又、本発明に係る携帯機スロット装置1によれば、ロックレバー4を開位置側に付勢する第2スプリング10の付勢力をスライダ3を初期位置側に付勢する第1スプリング9の付勢力よりも小さく設定したため、ロックレバー4の作用部4Bが携帯機50に押されて該ロックレバー4の第1及び第2係合突部4b,4cが開位置から閉位置に移動する間はスライダ3が移動せず、スライダ3はロックレバー4が閉位置に移動した後に携帯機50と共に移動する。このため、携帯機50をケース2内へ押し込む操作荷重の調整を第1スプリング9のみによって容易に行うことができるという効果も得られる。