(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単結晶試料に細長いX線を照射し、前記単結晶試料を前記X線に対して横方向へ移動させながら当該単結晶試料で回折したX線を測定することにより、前記単結晶試料の平面形状に対応した平面形状を有する2次元回折像を求めるX線トポグラフィ装置において、
前記単結晶試料から出た回折X線の強度を検出する2次元X線検出手段と、
前記単結晶試料内の目標とする第1の結晶格子面から回折X線が発生するのと同時に、前記第1の結晶格子面以外の1つ又は複数の結晶格子面である第2の結晶格子面から副次的に発生する同時反射X線が前記2次元X線検出手段のX線受光部に入ることを防止するか、又は前記同時反射X線を生じさせ得るX線が前記単結晶試料へ入射することを防止するX線遮蔽部材と、を有しており、
前記X線遮蔽部材の長さは同時反射のブラッグ角に応じて決められる
ことを特徴とするX線トポグラフィ装置。
前記2次元X線検出手段は、半導体によって形成されたX線検出領域を複数個平面的に並べて成る半導体X線検出器を有することを特徴とする請求項1記載のX線トポグラフィ装置。
前記2次元X線検出手段のX線受光面積は前記単結晶試料の平面面積よりも小さくなっており、前記2次元X線検出手段を前記単結晶試料に対して相対的に平行移動させることにより前記単結晶試料の全体に対応した回折X線像を受光することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のX線トポグラフィ装置。
前記X線遮蔽部材の突出長さをL、一対のX線遮蔽部材の間隔をD、同時反射のブラッグ角をθとするとき、L≧D/tanθであることを特徴とする請求項4記載のX線トポグラフィ装置。
【背景技術】
【0002】
上記のX線トポグラフィ(Topography)装置は、単結晶試料の欠陥や、結晶性の良し悪しを評価する手法である。欠陥としては、線状の結晶欠陥である転位や、積層欠陥、等が考えられる。X線トポグラフィ装置は結晶の欠陥等を非破壊で測定できる。X線トポグラフィ装置は、単色X線を単結晶試料で回折させて結晶中の欠陥を観察する装置である。なお、単色X線は、封入式X線管球、回転対陰極式X線管球を用いる場合は特性X線であり、シンクロトロン放射光を用いる場合はモノクロメータ等で単色化されたX線である。
【0003】
X線トポグラフィ装置は、単結晶試料の平面形状に対応した平面形状を有する2次元のX線画像を測定によって求める装置である。この2次元のX線画像は、X線トポグラフ(Topograph)と呼ばれている。このX線トポグラフに表れた形状的な特徴は、一般に、物体の構造的な特徴を表している。例えば、単結晶中の格子欠陥や歪みはX線トポグラフにおけるX線の強度変化として表れる。このため、X線トポグラフィ装置は、現在、単結晶材料に関する「結晶の完全性評価法」を実現するための装置等として広く用いられている。
【0004】
X線トポグラフィ装置には複数種類のものがある。例えば、反射法で1結晶法であるベルクバレット法や、透過法で1結晶法であるラング法や、試料以外の結晶をモノクロメータやコリメータとして使用する2結晶法、等がX線トポグラフィ装置として知られている。
【0005】
従来、X線トポグラフィ装置の1種類であるラングカメラが、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1では、ラングカメラにおいて、X線ビームを縦方向に細長く成形するための第1スリットで散乱X線が発生し、この散乱X線がX線トポグラフに重なって、帯状の模様として現れて、観察がし難くなることが記載されている(段落[0006]〜[0009])。そして、散乱X線が写真フィルムに到達することを遮蔽部材によって遮蔽することにより、X線トポグラフィ上に上記の帯状模様が現れることを防止することが記載されている(段落[0017])。
【0006】
また、従来、特許文献2において、X線トポグラフィ装置を用いた測定の際に「同時反射」の現象が生じることが簡単に触れられている(段落[0050])。この文献では、同時反射による妨害像が生じた場合には、試料の面内回転の微調整を行うことが記載されている。
【0007】
また、従来、特許文献3の
図1において、受光スリット(符号9)の前、従ってX線検出器(符号4)の前に筒状の部材、すなわちX線遮蔽部材を配置する構成が開示されている。この筒状の部材は、主に、散乱X線がX線検出器に取り込まれることを低減するためのものである。
【0008】
さらに、従来、2次元X線検出器であるCCD(Charge Coupled Device/電荷結合素子)を用いて単結晶試料からX線トポグラフを求める技術が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来、X線トポグラフィ測定においては「同時反射」の現象に起因してX線トポグラフの画像内に不要な模様が形成されてしまい、その模様が観察の障害になって単結晶の評価を正確に行えない場合があるという問題があった。上記の特許文献2のように試料を面内回転させることにより、同時反射による不要な模様の発生を回避することができるのであるが、このような回避手法に気付くのは、ごく限られたX線の専門家に限られ、一般的な測定者はそのような回避手法には気付かない。また、X線トポグラフィ測定を行っている間に試料の面内角度の調整を行うことは非常に面倒であった。このため、限られた専門家以外の一般利用者にはとっては、たとえ気づいたとしても、試料の面内角度の調整をすることは困難であった。
【0011】
以下、X線トポグラフィ測定において発生する同時反射の現象について説明する。
図15はX線トポグラフィ装置の代表的な一例であるラングカメラを示している。
図16はそのラングカメラを上方から見た場合の平面図を示している。これらの図に示すX線トポグラフィ装置101において、X線源Fから放射されたX線R0は、縦方向(
図15の上下方向、
図16の紙面を貫通する方向)へ発散しながら進行しつつ、細長いスリットを有した入射スリット102によって整形されて、縦長の細長いX線ビームR00として試料Sへ入射する。ω角(X線入射角)の調製とφ角(面内角)の調整とで所定の格子面で回折条件を満たすよう試料Sの方位調整が行われる。
【0012】
この方位調整により、試料Sに入射したX線R00は試料Sの上下方向の全域で回折条件を満足し、その結果、短冊状の回折X線像Zが2次元X線検出器であるX線フィルム104上に投影される。試料SとX線フィルム104との間には回折スリット103が位置不動の固定状態で配置される。試料SとX線フィルム104とは互いに同期してX線ビームR00の長さ方向(縦方向)を横切る方向であるA−A方向へ所定の移動速度で移動する。これにより、試料Sの平面全体が細長い縦長のX線ビームR00によって走査され、その結果、X線フィルム104上に、例えば
図17(a)に示すような、試料Sの平面形状に対応した平面形状を有するX線トポグラフT(換言すれば、試料Sの外形に対応した外形を有するX線像)が得られる。
【0013】
図18は、回折X線と回折X線図形との関係を模式的に示している。回折X線図形は、横軸に結晶の位置をとり、縦軸に回折X線強度(I)をとった座標上に作成される図形とした概念図である。実際にはY-Yに示すように結晶の位置に対応した位置にX線の強さに応じた濃淡として表示される。回折X線図形は、例えばX線検出器であるX線フィルム上に2次元画像として形成される。
図18において、試料Sに入射X線R00が入射したとき、入射X線R00と結晶格子面Laとの間で回折条件が満足されるように試料の位置を調整しているので、回折X線R1が発生する。試料S内に欠陥が存在しない場合は、回折X線R1の強度は均一であり、X線フィルム上には均一な濃度(すなわち、均一な黒化度)の回折X線図形が得られる。
【0014】
一方、試料S内に欠陥Deが存在すると、回折X線R1の進行方向に差異が生じ、その結果、回折X線図形上で強度表示が薄くなる部分P1や、強度表示が濃くなる部分P2が発生する。薄くなる部分P1はX線強度が低くなる部分であり、濃くなる部分P2はX線強度が高くなる部分である。従って、回折X線図形内(すなわちX線トポグラフ内)で濃淡部分を観察することにより、試料S内に欠陥があるか否かを評価することができる。
図17(a)のX線トポグラフTでは、符号P2で示す部分に濃度が濃くなる部分、すなわち回折X線強度が強くなって欠陥部分が現れている。
【0015】
ところで、単結晶試料である試料Sには目的とする結晶格子面以外にも多数の結晶格子面が存在する。そして、この面の中でたまたま同じ入射X線に対して回折条件を満足する面がある場合、X線がこの面に入射すると、X線トポグラフを形成することになる主たる回折X線に加えて、別の回折X線が同時に回折(すなわち反射)することがある。このように、たまたま同じ入射角度で主たる回折X線と同時に副次的な回折X線が発生する現象が「同時反射」である。そして、そのようにして発生した回折X線が「同時反射X線」である。
【0016】
つまり、同時反射は、(1)結晶は回折可能な結晶格子面が3次元的に色々な方位で配置されていることと、(2)入射X線が主たる結晶格子面とは別の結晶格子面に対して回折条件を満足すること、等を条件として発生する。
また、同時反射は、特性X線に限らず、回折を起こした格子面が選択する波長成分によってLaue像として形成されることもある。より具体的には、ラング法のように連続X線を使う場合は、特性X線以外の波長も結晶に入射するため、特性X線以外のX線により同じ入射角度で別の結晶格子面からの回折が起きることがあり、これも同時反射となる。
【0017】
例えば、
図15において、主たる細長いX線ビームR00によって主たる回折X線像ZがX線フィルム104上に得られる場合、主たる回折X線像Zを形成している主たる結晶格子面に対して別の結晶格子面La0が図示の位置に在り、その結晶格子面La0に対して回折条件を満足するようなX線R2がその結晶格子面La0に入射すると、同時反射の回折X線R11が回折スリット103の隙間を通ってX線フィルム104に点状の同時反射像P3として投影される。
【0018】
試料Sの平面をX線ビームR00で走査するために試料S及びX線フィルム104がA−A方向(すなわち横方向)へ平行移動すると、点状の同時反射像P3は走査方向(すなわち、横方向)に延びるスジ状の同時反射像I3となって現れる。この同時反射像I3は、主たる回折X線像であるX線トポグラフ上に重ねて形成される。
【0019】
図17(b)では、試料Sの点P10〜14の5点の所に同時反射を起こさせる結晶格子面が存在している状態を示している。そして、それらの点に入射するX線R100〜104が、それぞれ、各結晶格子面に対して回折条件を満たした場合を示している。この結果、点P10〜P14において同時反射が発生し、それらの同時反射のために、
図17(a)のX線トポグラフT上にスジ状の同時反射像I100〜I104が形成されている。
【0020】
なお、X線トポグラフTにおいて、欠陥に対応する個所及びスジ状の同時反射像が現れている個所以外の個所は図面上は図面作製上の問題で白黒の濃淡が不均一に見える場合があるが、実際のX線トポグラフでは欠陥でない領域の濃淡は均一である。
【0021】
上記の同時反射又は同時反射像は、回折現象に基づくものなので、基本的には取り除くことはできない。
図15において、主たる回折の回折条件を満たしつつ、φ回転及びχ(カイ)回転により、同時反射像が出現する場所を移動させることは可能である。しかしこの方法は高度な結晶学の知識を有している人にしか設定することはできなかった。また、回折スリット103のスリットの幅を厳密に設定する、すなわち狭く設定することにより、出現する同時反射像の数を減らすことができる。ただし、このスリット幅を狭くすることは検出器へのX線の強度を弱くしてしまい、微弱な変動を読み取れなくなり、結果として精度を落とすことにつながる。
【0022】
さらに、
図17において、試料SとX線フィルム104との間の距離であるカメラ長Kを長くすることにより、主たる回折X線像であるX線トポグラフTに同時反射像が重ならないようにすることができる。ただし、この方法では空間分解能が劣化し、結果として精度を落とすことにもなる。
【0023】
しかしながら、本発明者等は、X線トポグラフから同時反射像を除去することがユーザ、特にX線や結晶構造に関して専門的で高度な知識を有していないようなユーザにとって非常に有益であると考えた。そして、種々の実験を行うことにより、X線遮蔽部材(すなわち、X線の進行を止める部材)を同時反射の現象に関連付けて適切な位置に設置することにより、X線トポグラフから同時反射像を除去し得ることを知見した。
【0024】
本発明は、上記の知見に鑑みて成されたものであって、X線トポグラフから同時反射像を除去することにより、専門的で高度な知識を持ち合わせていない一般的なユーザであってもX線トポグラフを正確に評価できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に係るX線トポグラフィ装置は、単結晶試料に細長いX線を照射し、前記単結晶試料を前記X線に対して横方向へ移動させながら当該単結晶試料で回折したX線を測定することにより、前記単結晶試料の平面形状に対応した平面形状を有する2次元回折像を求めるX線トポグラフィ装置において、前記単結晶試料から出た回折X線の強度を検出する2次元X線検出手段と
、前記単結晶試料内の目標とする第1の結晶格子面から回折X線が発生するのと同時に、前記第1の結晶格子面以外の1つ又は複数の結晶格子面である第2の結晶格子面から副次的に発生する同時反射X線が前記2次元X線検出手段のX線受光部に入ることを防止するか、又は前記同時反射X線を生じさせ得るX線が前記単結晶試料へ入射することを防止する
X線遮蔽部材と、を有しており、前記X線遮蔽部材の長さは同時反射のブラッグ角に応じて決められることを特徴とする。
【0026】
このX線トポグラフィ装置によれば、X線トポグラフィ測定において試料から発生する同時反射X線の進行をX線遮蔽部材によって止めることができ、その同時反射X線が2次元X線検出手段によって受光されることを防止できるので、X線トポグラフ上に不要な模様が形成されることを防止でき、その結果、X線トポグラフを正確に観察できる。
【0027】
本発明に係るX線トポグラフィ装置において、前記2次元X線検出手段は、半導体によって形成された画素又はセルとしてのX線検出領域を複数個平面的に並べて成る半導体X線検出器を有することができる。
【0028】
本発明に係るX線トポグラフィ装置において、前記2次元X線検出手段のX線受光面積は前記単結晶試料の平面面積よりも小さくすることができる。そして、前記2次元X線検出手段を前記単結晶試料に対して上下左右(すなわち、平面的)に相対的に平行移動させることにより、前記単結晶試料の全体に対応した回折X線像を受光することができる。
【0029】
本発明に係るX線トポグラフィ装置において、前記X線遮蔽部材は、前記X線検出手段のX線取込部分の近傍に設けられた一対の部材とすることができ、X線の進行方向に関して前記単結晶試料の下流側に設けることができ、前記細長いX線の延在方向に交差する方向に延在することができ
、且つ前記細長いX線の延在方向に沿って間隔を隔てて設けることができる。
【0030】
本発明に係るX線トポグラフィ装置において、前記X線遮蔽部材は、前記単結晶試料の近傍であってX線の進行方向に関して前記単結晶試料の下流側に設けられた一対の部材とすることができ、前記細長いX線の延在方向と平行方向に延在することができ
、且つ前記細長いX線の延在方向に沿って間隔を隔てて設けることができる。
【0031】
本発明に係るX線トポグラフィ装置において、前記X線遮蔽部材は、前記単結晶試料の近傍であってX線の進行方向に関して前記単結晶試料の上流側に設けられた一対の部材とすることができ、前記細長いX線の延在方向と平行方向に延在することができ
、且つ前記細長いX線の延在方向に沿って間隔を隔てて設けることができる。
【0032】
本発明に係るX線トポグラフィ装置において、前記X線遮蔽部材の長さは同時反射のブラッグ角に応じて決めることができる。
【0033】
本発明に係るX線トポグラフィ装置において、前記X線遮蔽部材は同時反射を遮ることができる長さを有することができる。
【0034】
本発明に係るX線トポグラフィ装置において、前記X線遮蔽部材の突出長さをL、一対のX線遮蔽部材の間隔をD、同時反射のブラッグ角をθとするとき、L≧D/tanθであることが望ましい。
【0035】
本発明に係るX線トポグラフィ装置において、前記X線遮蔽部材は前記2次元X線検出手段に対して着脱可能であることが望ましい。
【0036】
本発明に係るX線トポグラフィ装置において、前記X線遮蔽部材の長さは可変であることが望ましい。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係るX線トポグラフィ装置によれば、X線トポグラフィ測定において試料から発生する同時反射X線の進行をX線遮蔽部材によって止めることができ、その同時反射X線が2次元X線検出手段によって受光されることを防止できるので、X線トポグラフ上に不要な模様が形成されることを防止でき、その結果、X線トポグラフを正確に観察できる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(X線トポグラフィ装置の第1の実施形態)
以下、本発明に係るX線トポグラフィ装置を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、本明細書に添付した図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0040】
図1は、本発明に係るX線トポグラフィ装置の一実施形態を示している。このX線トポグラフィ装置はX線トポグラフィ装置の代表的な一例であるラング法のX線トポグラフィ装置である。このX線トポグラフィ装置1は、X線を発生するX線源Fと、X線源Fから放射されたX線を細い縦長のX線ビームR00に整形して試料Sに入射させる入射スリット2と、ダイレクトビーム及び散乱X線の進行を阻止する回折スリット3と、2次元X線検出手段としての2次元X線検出器4を内蔵した検出器ボックス5とを有している。
【0041】
本実施形態では、X線源Fから3次元の全方位へ放射されるX線を点状の断面形状のX線ビーム、すなわちポイントフォーカスのX線として取り出す方式を採用している。X線源Fは、例えば熱電子を発生するフィラメント(すなわち、陰極)と、フィラメントから出た電子が衝突してその衝突領域からX線を発生するターゲット(すなわち、対陰極又は陽極)とによって形成されている。ターゲットのうち電子が衝突する部分は所定の金属、例えばMo(モリブデン)、Cu(銅)等によって形成される。X線源Fから放射されるX線R0の波長(すなわち、X線のエネルギ)はターゲットを形成している金属の種類によって決定する。
【0042】
X線源Fからは、
図2に示すような連続X線(すなわち、白色X線)Qと、連続X線Qの上に載っている特性X線Kα1、Kα2、Kβとを含んだX線が放射される。ターゲットがMoによって形成されていれば、特性X線はMoKα1、MoKα2、MoKβの各線である。また、ターゲットがCuによって形成されていれば、特性X線はCuKα1、CuKα2、CuKβの各線である。
【0043】
図1において、入射X線R0はスリット2により成形されて縦方向に細長いX線ビームR00の形で試料Sに入射する。入射X線R00と試料S内の結晶格子面とが特定の特性X線によって回折条件を満足する状態に設定されていると、その特性X線が回折して試料Sから回折X線R1が出る。
【0044】
試料Sは単結晶試料、例えば直径300mmのシリコン半導体ウエハである。この試料Sは図示しない試料支持装置に支持されている。この試料支持装置には、φ回転装置8、ω回転装置9及び主走査移動装置10が含まれている。φ回転装置8は、試料Sを符号φで示すように面内回転させる。φ回転は、入射X線R00に対する試料Sの面法線の回りの角度を変化させるための回転である。
【0045】
ω回転装置9は、試料Sを符号ωで示すようにω回転させる。ω回転は、試料Sに入射するX線R00の試料Sに対する入射角度を変化させるための回転である。主走査移動装置10は、試料Sを矢印A−Aのように平行移動させる。この平行移動は、
図3(a)に示すように、縦方向に細長いX線R00で試料Sの平面の全域を走査するための移動である。
【0046】
図1において、2次元X線検出器4は、長方形状の蛍光板13と、光ファイバ14と、2次元CCD(Charge Coupled Device/電荷結合素子)センサ15とを有している。蛍光板13はX線を受光して光を発生する。光ファイバ14は細いファイバを束ねて成る導光素子であり、蛍光体13で発生した光を2次元CCDセンサ15の受光面へ伝送する。
【0047】
2次元CCDセンサ15は、複数のCCDピクセル(すなわち画素)を2次元的、すなわち平面的に並べて成るセンサである。個々のCCDピクセルが光(すなわち、X線)を受光するための単位領域を形成している。個々のピクセルの平面内での位置が回折X線R1の回折角を示すことになる。また、個々のCCDピクセルに蓄積される電荷によって回折X線R1の強度が示されることになる。CCDセンサ15の空間分解能は30μm程度である。CCDセンサ以外のセンサで空間分解能が30μm程度のものがあれば、そのセンサをCCDセンサに代えて用いることもできる。
【0048】
なお、2次元X線検出器としてフォトン・カウンティング型ピクセル2次元X線検出器、すなわちパルス計数型ピクセルアレイ2次元検出器が従来から知られている。このフォトン・カウンティング型ピクセル2次元X線検出器は、X線によって励起されるフォトンを直接に電気信号に変換して出力するピクセル(画素)を複数個、2次元的に配列して成るX線検出器である。
【0049】
現在のところ、このフォトン・カウンティング型ピクセル検出器の空間分解能は100μm程度であって、X線トポグラフィ測定にとって見ればあまり高精度ではないので、X線トポグラフィ測定には適していないと考えられる。しかし、今後、フォトン・カウンティング型ピクセル検出器の空間分解能が向上すれば、このフォトン・カウンティング型ピクセル検出器を2次元X線検出器として用いることも可能である。
【0050】
また、現状のX線検出の分野においては、X線を蛍光体によって光に変換してCCDで検出することに代えて、CCDでX線を直接に受けて電気信号に変換する方式のCCD検出器も知られている。空間分解能がX線トポグラフィ測定に適合するものであれば、このようなCCD検出器を用いることもできる。
さらに、2次元X線検出器としては、X線フィルムやIP(イメージングプレート)を用いることもできる。
【0051】
検出器ボックス5には副走査移動装置18が取付けられている。副走査移動装置18は、検出器ボックス5を細長いX線ビームR00の延在方向(すなわち縦方向、すなわち上下方向)に沿って矢印B方向へ所定の間隔で間歇的に平行移動させる。試料Sを主走査移動装置10によって矢印A方向へ平行移動させ、同時に検出器ボックス5を副走査移動装置18によって矢印B方向へ間歇的に平行移動させることにより、
図3(b)に示すように、蛍光板13によるX線受光領域E、すなわちCCDセンサ15によるX線受光領域Eによって試料Sの平面全域を走査することができる。このCCDセンサ15による走査移動及びCCDセンサ15の副走査移動により、試料Sからの回折X線R1を読み取ることができる。
【0052】
図1において、CCDセンサ15の出力端子は制御回路19に接続されている。制御回路19は、コンピュータを含む回路によって形成されている。CCDセンサ15の出力端子には、CCDセンサ15の位置分解能に対応した所定領域の画素又はセルごとの回折X線強度情報Iが出力される。このX線強度情報Iは制御回路19へ伝送される。
【0053】
制御回路19には画像情報生成回路20及び表示装置21が接続されている。表示装置21は、液晶表示装置等といったフラットパネルディスプレイや、CRTや、プリンタ等である。画像情報生成回路20は、X線強度情報Iに基づいて表示装置21に適合した画像信号を生成する回路である。画像情報生成回路20によりX線強度情報Iを画像信号に変換することにより、
図4に示すような2次元X線回折像であるX線トポグラフTを表示装置21の画面上に画像として表示することができる。
【0054】
図1において、2次元X線検出器4のX線受光面の近傍に、上下一対のX線遮蔽部材24a及び24bが設けられている。
図5に示すように、2次元X線検出器4を収容している検出器ボックス5の回折スリット3に対向する面に開口25が形成されている。2次元X線検出器4のX線受光面がこの開口25を通して外部へ姿を見せている。X線遮蔽部材24aは開口25の上辺に設けられており、X線遮蔽部材24bは開口25の下辺に設けられている。
【0055】
図6は、
図5のC−C線に従った断面図である。
図6に示すように、X線遮蔽部材24aは、開口25を形成している検出器ボックス5の上側の壁に固定されている。他方、X線遮蔽部材24bは、開口25を形成している検出器ボックス5の下側の壁に固定されている。X線遮蔽部材24a及び24bは、試料Sから出た回折X線を遮蔽できる物質、すなわちX線を止めることができる物質、すなわちX線を吸収する物質によって形成されている。具体的には、X線がMo線である場合は、Mo、Pb(鉛)、SUS(ステンレス)等によって形成される。また、X線がCu線である場合は、Cu、Pb、SUS等によって形成される。
【0056】
図17(b)を用いて説明したように、
図15のX線トポグラフィ装置101を用いてX線トポグラフT(
図17(a)参照)を撮影によって求めると、特定の結晶格子面のところに同時反射X線Xが発生し、その結果、X線トポグラフTに重なって同時反射像I100〜I104が現れる。
図1に示すX線トポグラフィ装置1で用いられるX線遮蔽部材24a及び24bの検出器ボックス5からの突出長さは、
図6に符号Lで示すように、同時回折X線Xが開口25へ入ることを阻止できる長さに設定されている。具体的には、X線遮蔽部材24aとX線遮蔽部材24bとの間隔をDとし、同時反射のブラッグ角をθとしたとき、L≧D/tanθに設定する。
【0057】
このように本実施形態では、同時反射X線Xが開口25、すなわちCCD15のX線受光部に入ることをX線遮蔽部材24a及び24bによって阻止するようにしたので、
図4に示すようにX線トポグラフTに同時反射像が現れることを防止できる。この結果、ユーザはX線トポグラフTに現れるX線強度変化P2を明確に認識でき、間違った評価を行う可能性を低減できる。
【0058】
本実施形態において、X線遮蔽部材24a,24bは堅固なネジ止め、接着剤、溶接等によって検出器ボックス5の壁面に着脱不能に固着することもできるし、あるいは、緩めることができるネジ止めや、公知の取外し可能な構造、等によって着脱可能とすることもできる。X線遮蔽部材24a,24bを検出器ボックス5に対して着脱可能にすれば、長さの異なるX線遮蔽部材24a,24bを数種類用意しておいて、試料の特性に応じてそれらを適宜に交換して使用できる。
【0059】
また、本実施形態において、X線遮蔽部材24a,24bは、その長さを変化させることができる構造にすることもできる。こうすれば、X線遮蔽部材24a,24bの長さを試料の特性に応じて自由に変化させることができる。なお、X線遮蔽部材24a,24bの長さを変化させる構造は従来公知の機構を採用できる。
【0060】
(X線トポグラフィ装置の第2の実施形態)
図7は、本発明に係るX線トポグラフィ装置の他の実施形態を示している。本実施形態のX線トポグラフィ装置は
図1に示した第1の実施形態のX線トポグラフィ装置1から回折スリット3を取り除いた構成となっている。
図7は、第1の実施形態における
図6に対応した図である。
【0061】
本実施形態では、
図6における回折スリット3を除去した関係上、同時反射X線Xを止めるためのX線遮蔽部材24a,24bが試料Sに近づく所まで延びている。本実施形態では、回折スリット3を用いないので、ダイレクトビーム及び散乱X線が検出器ボックス5に到達するが、検出器ボックス5の開口25はもともと蛍光体13及びCCD15の形状に合せて狭く形成されているので、不要なX線がCCD15に取り込まれることはない。
【0062】
本実施形態においても、X線遮蔽部材24a,24bが同時反射X線Xの進行を止めるので、X線トポグラフに同時反射像が現れることが無くなり、X線トポグラフの観察を正確に行うことが可能となる。
【0063】
(X線トポグラフィ装置の第3の実施形態)
図8は、本発明に係るX線トポグラフィ装置のさらに他の実施形態を示している。この実施形態のX線トポグラフィ装置は基本的には
図1に示した第1の実施形態のX線トポグラフィ装置1と同じである。
図8は、第1の実施形態における
図6に対応した図である。
【0064】
本実施形態のX線トポグラフィ装置が
図1のX線トポグラフィ装置1と異なる点は、回折スリット3を用いないこと、及び同時反射X線Xを止めるためのX線遮蔽部材24a,24bを検出器ボックス5から分離して設けたことである。なお、X線遮蔽部材24a,24bを検出器ボックス5から分離したといっても、それらは位置的に離れているということであり、CCD15に副走査のための移動をさせるために検出器ボックス5を移動させる際には、X線遮蔽部材24a,24bも検出器ボックス5と一体になって移動する。このような一体の移動を実現するためには、X線遮蔽部材24a,24bを検出器ボックス5に機械的に一体に連結することもできるし、電気制御によってX線遮蔽部材24a,24bと検出器ボックス5とを同期して移動させることもできる。
【0065】
本実施形態においては、X線遮蔽部材24a,24bは、試料Sの近傍であってX線の進行方向(
図8の左から右へ向かう方向)に関して試料Sの下流側(
図8で試料Sの右側)に設けられている。また、X線遮蔽部材24a,24bは、細長いX線ビームR00(
図1参照)の延在方向(
図8の上下方向)と平行方向に延在している。さらにX線遮蔽部材24a,24bは、細長いX線ビームR00の延在方向に沿って間隔Dを隔てて設けられている。
【0066】
本実施形態においても、X線遮蔽部材24a,24bが同時反射X線Xの進行を止めるので、X線トポグラフに同時反射像が現れることが無くなり、X線トポグラフの観察を正確に行うことが可能となる。
【0067】
(X線トポグラフィ装置の第4の実施形態)
図9は、本発明に係るX線トポグラフィ装置のさらに他の実施形態を示している。この実施形態のX線トポグラフィ装置も基本的には
図1に示した第1の実施形態のX線トポグラフィ装置1と同じである。
図9は、第1の実施形態における
図6に対応した図である。
【0068】
本実施形態のX線トポグラフィ装置が
図1のX線トポグラフィ装置1と異なる点は、回折スリット3を用いないこと、及び同時反射の発生を防止するためのX線遮蔽部材24a,24bを検出器ボックス5から分離して設けたことである。本実施形態のX線遮蔽部材24a,24bが
図8に示した実施形態のX線遮蔽部材24a,24bと異なるのは、
図8のX線遮蔽部材24a,24bが試料Sで発生した同時反射X線の進行を止めているのに対し、
図9に示す本実施形態のX線遮蔽部材24a,24bは同時反射X線を発生させることになるX線が試料Sに入射することを未然に防止していることである。
【0069】
なお、X線遮蔽部材24a,24bを検出器ボックス5から分離したといっても、それらは位置的に離れているということであり、CCD15に副走査のための移動をさせるために検出器ボックス5を移動させる際には、X線遮蔽部材24a,24bも検出器ボックス5と一体になって移動する。このような一体の移動を実現するためには、X線遮蔽部材24a,24bを検出器ボックス5に機械的に一体に連結することもできるし、電気制御によってX線遮蔽部材24a,24bと検出器ボックス5とを同期して移動させることもできる。
【0070】
本実施形態においては、X線遮蔽部材24a,24bは、試料Sの近傍であってX線の進行方向(
図9の左から右へ向かう方向)に関して試料Sの上流側(
図9で試料Sの左側)に設けられている。また、X線遮蔽部材24a,24bは、細長いX線ビームR00(
図1参照)の延在方向(
図9の上下方向)と平行方向に延在している。さらにX線遮蔽部材24a,24bは、細長いX線ビームR00の延在方向に沿って間隔Dを隔てて設けられている。
【0071】
本実施形態においては、試料Sへ入射するX線であって同時反射を発生させるであろうX線の進行をX線遮蔽部材24a,24bによって止めることができるので、X線トポグラフに同時反射像が現れることが無くなり、X線トポグラフの観察を正確に行うことが可能となる。
【0072】
(実施例1)
試料としてシリコン(001面)ウエハを用意した。このウエハでオリエンテーション・フラッグの方位は<110>であった。この試料を、
図10に示すように、X線源Fから試料Sまでの距離が1050mmで、試料Sとイメージングプレート26(すなわち2次元X線検出器)までの距離が60mmであるX線トポグラフィ装置にセットした。このウエハに対してMoKα1線で220反射をとるために、
図11(a)に示すように、回折角2θ=21.3°の回折X線が出るようにX線光学系のω角及びφ角を調整した。
【0073】
調整後にX線トポグラフィ測定を行ったところ、主たる回折X線である220反射に加えて同時反射である−1 5 −1反射又は5 −1 −1反射がX線トポグラフ画像に重なって現れた。なお、上記の反射指数(面指数)において「−1」は正式には「1の上に−(バー)を付ける」表現の意味である。
【0074】
以上のように−1 5 −1反射又は5 −1 −1反射のような同時反射が発生した場合に、
図12及び
図13に示すように、受光高さがD=18mmであるCCDを用い、CCDのX線取込み部分(多くは蛍光体)の所にCCDと一体に上下一対のX線遮蔽部材24a,24bを設け、それらのX線遮蔽部材24a,24bの間隔をCCDの受光高さD=18mmと同じに設定し、さらに一対のX線遮蔽部材24a,24bの突出長さLをL=D/tanθ(θは同時反射のブラッグ角2θの1/2)とした。
【0075】
そうしたところ、同時反射のX線がX線遮蔽部材24a,24bの作用によりCCDに取り込まれることを回避できた。この結果、従来であれば
図11に示すようにX線トポグラフTの中心部分に黒い線として現れていた同時反射像を排除できた。なお、
図12及び
図13ではウエハの写真の中央部分に
図11と同様に−1 5 −1反射及び5 −1 −1反射の同時反射像が黒い線として描かれているが、これは実験の際の写真データの編集の都合上、描かれてしまったものであり、実際はX線遮蔽部材24a,24bの作用により、これらの像は現れなかった。
【0076】
(実施例2)
実施例1の場合は、
図12及び
図13に示したように、X線遮蔽部材24a,24bをCCDと一体に且つCCDから突き出るように設けた。実施例2では、
図14に示すように、X線遮蔽部材24a,24bをCCDから分離して、X線の進行方向に関して試料Sの上流側の位置に設置した。これにより、主たる回折である220反射をCCDのX線受光部へ導き、しかし同時反射である−1 5 −1反射又は5 −1 −1反射がCCDに取り込まれることを防止できた。なお、
図14においてもウエハの写真の中央部分に
図11と同様に−1 5 −1反射及び5 −1 −1反射の同時反射像が黒い線として描かれているが、これは実験の際の写真データの編集の都合上、描かれてしまったものであり、実際はX線遮蔽部材24a,24bの作用により、これらの像は現れなかった。
【0077】
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
例えば、上記実施形態では本発明をラング法のトポグラフ装置に適用したが、本発明はラング法以外のX線トポグラフィ装置にも適用できる。