(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
巻線位置にある1又は2以上の磁極(2)の両側のスロット(1b,1b)に挿入された線材(3)を多極電機子(1)と前記多極電機子(1)の他端側1dにある第一係止爪(14)の間において押さえるシャッタ部材(51)と、
前記シャッタ部材(51)を前記線材(3)を押さえる押さえ位置と前記押さえ位置から離間する離間位置との間で移動させる部材移動手段(61)と
を更に備えた請求項1ないし3いずれか1項に記載の巻線装置。
多極電機子(1)を回転させることによって1又は2以上の磁極(2)を巻線位置に送るインデックス工程が挿入工程と線材折り返し工程の間に設けられた請求項5記載の巻線方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1〜
図4に本発明の巻線装置100を示す。この巻線装置100は、モータやレゾルバ,又は発電機を構成する多極電機子1の複数の磁極2(
図1)の周囲に線材3を巻線する装置である。この実施の形態における多極電機子1は、レゾルバに使用されるものであって、環状部1a(
図1)と、この環状部1aから径方向外側に向かって放射状に突出した複数の磁極2とを備える。この多極電機子1における各磁極2の間には線材3が挿入される真っ直ぐなスロット1bが開口してなり、このスロット1bは環状部1aの中心軸に平行に真っ直ぐなものであるので、磁極2の断面は4角形を構成し、磁極2の外周面は平滑状の4平面からなるものとする。
【0017】
この巻線装置100は、各部材が配置される基台5(
図2)と、その基台5上に方形状に組まれて取付けられた支持台6と、この支持台6に取付けられて多極電機子1を回転させることによって磁極2を順次に巻線位置に送るインデックス機構7とを備える。
図4に示すように、支持台6は間隔をあけて多極電機子1を挟むように設けられた一対の側板6a,6bと、その一対の側板6a,6bの端部を連結して方形状に組まれた端板6c,6dとを備える。各図にあっては、互いに直交するX,Y及びZの三軸を設定し、X軸が多極電機子1の軸方向である略水平横方向、Y軸が略水平前後方向、Z軸が上方に巻線が成される磁極2が位置する鉛直方向に延びるものとし、この巻線装置100の構成について説明する。
【0018】
図2に示すように、インデックス機構7は、多極電機子1をその軸方向を水平にして支持するものであり、支持台6に取付板8を介して固定されたインデックスモータ9と、そのインデックスモータ9の出力軸9aに連結され多極電機子1が取付けられるインデックス台11と、そのインデックス台11と同軸にそのインデックス台11に固定可能に構成されてそのインデックス台11と共に多極電機子1を挟む取付具12とを備える。多極電機子1は、環状部1a(
図1)がインデックス台11に同軸に配置され、このように配置された多極電機子1を、取付ねじ12aを介して取付具12がインデックス台11と共に挟むことにより、多極電機子1はインデックスモータ9の水平な出力軸9aと同軸に支持される。
【0019】
このインデックス機構7では、多極電機子1がインデックスモータ9の水平な出力軸9aと同軸に支持されるので、インデックスモータ9が駆動すると、インデックス台11に支持された多極電機子1はその軸を中心として回転することになる。ここで、この巻線装置100では、中心軸を水平にして支持された多極電機子1のZ軸方向上方に位置する磁極2に巻線を行うものとし、その上方に位置する磁極2を巻線位置にある磁極2とする。そして、その巻線位置にある磁極2への巻線作業終了後には、インデックスモータ9が駆動することによって多極電機子1が回転し、次に巻線される磁極2がZ軸方向上方の巻線位置に送られるようになっている。このように、インデックス機構7は、多極電機子1の磁極2を巻線位置に順次に送るように構成される。
【0020】
本発明の巻線装置100は、多極電機子1の巻線位置にある1又は2以上の磁極2の両側のスロット1bに線材3を同時に挿入するものであって、この実施の形態では、単一の磁極2の両側の各スロット1bに線材3を波形にして交互に挿入する場合を示す。このため、本発明の巻線装置100は、多極電機子1の一端側1cに設けられて巻線位置にある磁極2の一端側1cに線材3を繰り出すノズル13と、そのノズル13から繰り出された線材3を係止可能な第一係止爪14とを備える。この実施の形態におけるノズル13は、角筒状のものが用いられ、Y軸方向に延びる複数の線材3がZ軸方向に並んだ状態でそのノズル13に挿通可能に構成される。
【0021】
また、この実施の形態では、各スロット1bに線材3を波形にして交互に挿入する場合であり、
図4の拡大図に示すように、第一係止爪14の多極電機子1の周方向における幅Aが、その第一係止爪14に掛け回されて折り返された線材3が巻線位置にある1又は2以上の磁極2の両スロット1b,1bに挿入可能な幅に形成される。
【0022】
単一の磁極2の両側のスロット1b,1bに折り返された線材3を挿入する場合を具体的に説明すると、
図7に示すように、第一係止爪14は、巻線位置にある磁極2の他端側1dに位置した状態で、そのY軸方向における幅寸法Aが、その磁極2の周方向における幅Bと同じ長さか又は僅かに大きい長さに形成される。そして、第一係止爪14は、その磁極2に対向する面が平面に形成され、磁極2と反対面は中央がX軸方向の外側に膨出するように湾曲して形成される。これにより、この第一係止爪14は、その断面形状がD字状を成す棒状物から成る場合を示す。
【0023】
また、
図2に示すように、本発明の巻線装置100は、第一係止爪14を多極電機子1の一端側1cから他端側1dまで移動させ,かつ多極電機子1の他端側1dまで移動した第一係止爪14を多極電機子1の径方向と周方向の双方に移動させる第一係止爪相対移動手段16を備える。この実施の形態における第一係止爪相対移動手段16は、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ17〜19の組み合わせにより構成されて第一係止爪14を三軸方向に移動させるように構成される。
【0024】
即ち、この実施の形態における第一係止爪相対移動手段16の各伸縮アクチュエータ17〜19は、細長い箱形ハウジング17d〜19dと、そのハウジング17d〜19d内部に長手方向に伸びて設けられサーボモータ17a〜19aによって回動駆動されるボールネジ17b〜19bと、このボールネジ17b〜19bに螺合して平行移動する従動子17c〜19c等によって構成される。そして、これらの伸縮アクチュエータ17〜19は、サーボモータ17a〜19aが駆動してボールネジ17b〜19bが回転すると、このボールネジ17b〜19bに螺合する従動子17c〜19cがハウジング17d〜19dの長手方向に沿って移動可能に構成される。
【0025】
第一係止爪14は、第一移動板15を介して第一係止爪相対移動手段16に取付けられる。この実施の形態では、第一係止爪14が設けられた第一移動板15をX軸方向に移動可能にX軸方向伸縮アクチュエータ17のハウジング17dに取付け、そのX軸方向伸縮アクチュエータ17とともにその第一移動板15をZ軸方向に移動可能に、その従動子17cがL形ブラケット25を介してZ軸方向伸縮アクチュエータ18のハウジング18dに取付けられる。また、そのZ軸方向伸縮アクチュエータ18の従動子18cをY軸方向伸縮アクチュエータ19の従動子19cに取付け、そのX軸及びZ軸方向伸縮アクチュエータ17,18とともにその第一移動板15をY軸方向に移動可能に、そのY軸方向伸縮アクチュエータ19のハウジング19dが支持台6における側板6bに取付けられる。それらの各伸縮アクチュエータ17〜19におけるX軸サーボモータ17a、Y軸サーボモータ19a及びZ軸サーボモータ18aは、これらを制御する図示しないコントローラの制御出力に接続される。
【0026】
また、
図1,
図2及び
図4に示すように、本発明の巻線装置100は、多極電機子1の一端側1cに設けられてノズル13から繰り出された線材3を係止可能な第二係止爪33と、その第二係止爪33を多極電機子1の少なくとも径方向に移動させる第二係止爪相対移動手段36とを更に備える。この第二係止爪33は、第一係止爪14と同一の断面形状に形成される。即ち、この第二係止爪33にあっても、
図4に示すように、その断面形状がD字状を成す棒状物から成り、第二係止爪33の多極電機子1の周方向における幅Aが、第二係止爪33に掛け回されて折り返された線材3が巻線位置にある1又は2以上の磁極2の両側のスロット1b,1bに挿入可能な幅に形成される。この実施の形態では、単一の磁極2の両側のスロット1b,1bに折り返された線材3を挿入する場合であるので、
図7に示すように、第二係止爪33は、磁極2を挟んだ状態で、そのY軸方向における幅寸法Aが、その磁極2の周方向における幅Bと同じ長さ又は僅かに大きな長さに形成される。
【0027】
図1,
図2及び
図4に戻って、第二係止爪相対移動手段36にあっては、前述した第一係止爪相対移動手段16と同一構造のものが用いられる。即ち、第二係止爪相対移動手段36は、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ37〜39の組み合わせにより構成されて、第二係止爪33を三軸方向に移動させるように構成される。第二係止爪33は第二移動板35を介して第二係止爪相対移動手段36を構成するX軸方向伸縮アクチュエータ37のハウジング37dに取付けられる。そして、この第二係止爪相対移動手段36は、前述した第一係止爪相対移動手段16と対称構造を成して同一構造のものであるので、ここにおける繰返しての説明を省略する。このような構成の第一係止爪相対移動手段16及び第二係止爪相対移動手段36は、図示しないコントローラからの指令により、第一移動板15及び第二移動板35とともに、第一係止爪14及び第二係止爪33を、基台5に対して三軸方向に任意に移動可能に構成される。
【0028】
ここで、
図4に示すように、第一係止爪14が取付けられた第一移動板15と、第二係止爪33が取付けられた第二移動板35の形状は、各移動機構16,36のX軸方向伸縮アクチュエータ17,37のハウジング17d,37dに基端が取付けられる本体板15a,35aをそれぞれ備える。そして、その本体板15a,35aの先端から、多極電機子1に向かってX軸方向に延びる延長部15b,35bがそれぞれ形成される。ここで、第一係止爪14は、その延長部15bの先端にZ軸方向下方に向けて取付けられるけれども、第二係止爪33は、その延長部35bの先端にZ軸方向上方に向けて取付けられる。
【0029】
また、
図1〜
図3に示すように、本発明の巻線装置100は、ノズル13を少なくとも多極電機子1の径方向と周方向の双方に移動させるノズル相対移動手段46を備える。このノズル相対移動手段46にあっても、上述した各種移動機構16,36と同一構造であって、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ47〜49の組み合わせにより構成される。具体的に、この実施の形態では、ノズル13が設けられた鉛直板45をY軸方向に移動可能にY軸方向伸縮アクチュエータ47のハウジング47dに取付け、そのY軸方向伸縮アクチュエータ47とともにその鉛直板45をZ軸方向に移動可能に、その従動子47cがZ軸方向伸縮アクチュエータ48の従動子48cに取付けられる。
【0030】
また、そのZ軸方向伸縮アクチュエータ48のハウジング48dをX軸方向伸縮アクチュエータ49の従動子49cに取付け、そのY軸及びZ軸方向伸縮アクチュエータ47,48とともにその鉛直板45をX軸方向に移動可能に、そのX軸方向伸縮アクチュエータ49のハウジング49dが支持台6に台座43を介して取付けられる。それらの各伸縮アクチュエータ47〜49におけるZ軸サーボモータ48a、Y軸サーボモータ47a及びX軸サーボモータ49aは、これらを制御する図示しないコントローラの制御出力に接続される。そして、このノズル相対移動手段46はコントローラからの指令により、各伸縮アクチュエータ47〜49が駆動して、鉛直板44とともにノズル13を基台5に対して三軸方向に任意に移動可能に構成される。
【0031】
更に、本発明の巻線装置100は、シャッタ部材51と、そのシャッタ部材51を移動させる部材移動手段61を備える。シャッタ部材51は、巻線位置にある1又は2以上の磁極2の両側のスロット1b,1bに挿入された線材3を多極電機子1とその多極電機子1の他端側1dにある第一係止爪14との間において押さえるものであって(
図13)、その間に進入可能な板材からなる。部材移動手段61は、そのシャッタ部材51を、線材3を押さえる押さえ位置と、その押さえ位置から離間する離間位置との間で移動させるものであって、この実施の形態における部材移動手段61は、第三移動板52を介してシャッタ部材51を移動可能に構成される。具体的に、この実施の形態における部材移動手段61は、上述した各種移動機構16,36,46と同一構造のものであり、この部材移動手段61にあっても、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ62〜64の組み合わせにより構成される。
【0032】
即ち、この実施の形態における部材移動手段61は、シャッタ部材51が設けられた第三移動板52をX軸方向に移動可能にX軸方向伸縮アクチュエータ62のハウジング62dに取付ける。第三移動板52は、そのハウジング62dにX軸方向に延びて取付けられ、シャッタ部材51は、その第三移動板52の先端からY軸方向に延びて設けられる。よって、この第三移動板52とシャッタ部材51はL字状を成して形成される。このような第三移動板52が取付けられた部材移動手段61は、そのX軸方向伸縮アクチュエータ62とともにその第三移動板52をY軸方向に移動可能に、その従動子62cがL形ブラケット65を介してZ軸方向伸縮アクチュエータ63のハウジング63dに取付けられる。また、そのZ軸方向伸縮アクチュエータ63の従動子63cをY軸方向伸縮アクチュエータ64の従動子64cに取付け、そのX軸及びZ軸方向伸縮アクチュエータ62,63とともにその第三移動板52をY軸方向に移動可能に、そのY軸方向伸縮アクチュエータ64のハウジング64dが支持台6に取付けられる。
【0033】
それらの各伸縮アクチュエータ62〜64におけるX軸サーボモータ62a、Z軸サーボモータ63a及びY軸サーボモータ64aは、これらを制御する図示しないコントローラの制御出力に接続される。そして、この部材移動手段61はコントローラからの指令により、各伸縮アクチュエータ62〜64が駆動して、第三移動板52とともにシャッタ部材51を基台5に対して三軸方向に任意に移動させ、そのシャッタ部材51を線材3を押さえる押さえ位置とその押さえ位置から離間する離間位置との間で移動可能に構成される。
【0034】
次に、上記巻線装置を用いた本発明における巻線方法を説明する。
【0035】
本発明における巻線方法は、巻線位置にある磁極2の一端側1cに繰り出された線材3を多極電機子1の一端側1cから他端側1dまで案内してその線材3を折り返す線材折り返し工程と、折り返された線材3を多極電機子1の径方向に移動させて巻線位置にある1又は2以上の磁極2の両側のスロット1b,1bに挿入させる挿入工程とを繰返す方法である。そして、このような挿入工程と線材折り返し工程の間に、多極電機子1を回転させることによって1又は2以上の磁極2を新たに巻線位置に送るインデックス工程が設けられる。以下に各工程を詳説するけれども、各工程における巻線装置100の動作は、巻線装置100に搭載された図示しないコントローラによって自動制御されるものとする。
【0036】
先ず、巻線を行う前の準備として、多極電機子1をインデックス機構7により支持させる。具体的には、
図1及び
図2に示すように、多極電機子1の環状部1aをインデックス台11に同軸に配置し、取付ねじ12aを介して取付具12をインデックス台11に取付けることにより、取付具12とインデックス台11により多極電機子1を挟む。このようにして、多極電機子1をインデックスモータ9の水平な出力軸9aと同軸に支持する。
【0037】
その後、インデックス工程が行われ、このインデックス工程では、インデックス機構7におけるインデックスモータ9を駆動して、その支持された多極電機子11を回転させ、巻線すべき磁極22をZ軸方向上方の巻線位置に送る。この実施の形態におけるインデックス工程では、
図5の一点鎖線矢印で示す方向に多極電機子11を回転させるものとする。図示しないが、このような多極電機子1の巻線位置への位置合せは、磁極2近傍に設けたセンサ等の図示しない検知器を用いて磁極2の位置を検出し、その検出した情報を基に行うことができる。そして、巻線を開始するにあたり、ノズル相対移動手段47によりノズル13を移動させて、線材3が供給されるノズル13を多極電機子1の図示しない絡げピンの周囲に周回させ、そのノズル13から繰り出される線材3をその絡げピンに絡げておく。この状態から、線材折り返し工程と、挿入工程と、インデックス工程が順次繰返され、その途中の状態を
図5〜
図15に示す。
【0038】
即ち、線材折り返し工程にあっては、第二係止爪相対移動手段36により第二係止爪33を移動させて、
図5及び
図6に示すように、その第二係止爪33が巻線位置にある磁極2、即ち、中心軸を水平にして支持された多極電機子1のZ軸方向上方に位置する磁極2の一端側1cにおいて、多極電機子1の軸方向から僅かな隙間を空けて位置させる。そして、第二係止爪相対移動手段36により、その第二係止爪33を多極電機子11の外側、即ち、Z軸方向上方にまで移動させる。その後、ノズル相対移動手段47によりノズル13を移動させて、先にスロット1bに挿入された線材3(巻初めにあっては、図示しないが、絡げピンに絡げられた線材3)をその第二係止爪33に引っ掛ける。そして、多極電機子1の一端側1cにあってその第二係止爪33からX軸方向において所定の間隔を空けてノズル13を位置させる。
【0039】
次に、第一係止爪相対移動手段16により第一係止爪14を移動させて、
図7の実線矢印で示すように、巻線位置にある磁極2の一端側1cに繰り出されて第二係止爪33とノズル13との間にある線材3をその第一係止爪14により引っ掛け、その第一係止爪14を更に多極電機子1の一端側1cから他端側1dまで移動させる。これにより、巻線位置にある磁極2の一端側1cにおけるノズル13から新たに繰り出される線材3を、多極電機子1の一端側1cから他端側1dまで案内し折り返すようにする。そして、
図8に示すように、このように線材3を折り返した後に、その第一係止爪14を、その第一係止爪14が隣接する磁極2の他端側1dの近傍におけるZ軸方向上方に位置させる。
【0040】
このように、第一係止爪14に線材3を掛け回してその線材3を折り返すと、
図7に示すように、その折り返された線材3は、第一係止爪14に掛け回される半円状の円弧部3a、その円弧部3aの一方の端部から連続して第二係止爪33間で伸びる一方の伸長部3bと、その円弧部3aの他方の端部からノズル13まで伸びる他方の伸長部3cが形成される。そして、
図7に示すように、磁極2の一端に位置する第二係止爪33のY軸方向における幅寸法Aは、その磁極2の周方向における幅Bと同じ長さ又はそれよりも僅かに広い長さに形成されているので、第二係止爪33と第一係止爪14との間の一方の伸長部3bは、第二係止爪33が隣接する磁極2と第一係止爪14が隣接する磁極2の間のスロット1bの上方に位置することになる。
【0041】
その後、ノズル相対移動手段47によりノズル13を再び移動させて、その円弧部3aからノズル13まで伸びる他方の伸長部3cを、その円弧部3aの他方の端部に対向するスロット1bと平行にさせる。すると、
図7に示すように、磁極2の他端に位置する第一係止爪14のY軸方向における幅寸法Aは、その磁極2の周方向における幅Bと同じ長さ又はそれよりも僅かに広い長さに形成されているので、円弧部3aからノズル13に向かって伸びる他方の伸長部3cは、一方の伸長部3bが上方に位置するスロット1bとともに、第一係止爪14が隣接する磁極2を挟むようなスロット1bの上方に位置することになる。
【0042】
次に、挿入工程が行われる。この挿入工程では、折り返された線材3を多極電機子1の径方向に移動させて巻線位置にある1又は2以上の磁極2の両側のスロット1b,1bに挿入させる。具体的には、
図9に示すように、第一及び第二係止爪14,33並びにノズル13をZ軸方向下方に移動させて、その第二係止爪33とノズル13の間にある線材3であって、第一係止爪14により折り返された巻線3を巻線位置にある磁極2の両側のスロット1b,1bに挿入させる。この第一及び第二係止爪14,33の移動は、第一及び第二係止爪相対移動手段16,36(
図2)により行われ、ノズル13の移動はノズル相対移動手段46により行われる。
【0043】
ここで、この挿入工程時には、第一係止爪14から第二係止爪33にまで延びる一方の伸長部3bは、巻線位置にある磁極2を挟む一方のスロット1bの上方に位置し、第一係止爪14からノズル13にまで延びる他方の伸長部3cは、巻線位置にある磁極2を挟む他方のスロット1bの上方に位置している。そして、
図10に示すように、それらの伸長部3b,3cの間隔Hは少なくとも磁極2の周方向における幅Bを空けて設けられている。このため、
図10の実線矢印で示すように、それらを多極電機子1の径方向に移動させることにより、巻線位置にある磁極2の両側におけるスロット1b,1bに、その伸長部3b,3cをそれぞれ挿入させることができる。これにより、その巻線位置にある磁極2の両側のスロット1b,1bに線材3を変形させることなく挿入することが可能になるのである。
【0044】
また、折り返された線材3の伸長部3b,3cは、少なくとも磁極2の周方向における幅Bを空けるものであり、その伸長部3b,3cは、少なくとも磁極2の周方向における幅Bを空けた状態で、多極電機子1の径方向に移動してスロット1bに挿入されるので、その線材11がそのスロット1bや磁極2に過度に擦れるようなことはない。このため、線材3にダメージが与えられるようなこともない。そして、この実施の形態では、その線材3が挿入されるスロット1bの幅w(
図10)が狭いものであるけれども、ノズル13が複数本の線材3をZ軸方向に隣接させつつ繰り出すものであれば、この挿入工程において、その複数本の線材3を、そのスロット1bの幅方向に重なることなく挿入することが可能になる。
【0045】
その後、
図11に示すように、第二係止爪33をそこに掛け回された線材3から引き抜く。第二係止爪33は第二移動板35から上方に突出するように設けられているので、
図11の実線矢印で示すように、この引き抜きは、第二係止爪相対移動手段36(
図2)により、その第二係止爪33を多極電機子1の中心方向であるZ軸方向下方に移動させることにより行われる。ここで、その第二係止爪33に掛け回された線材3はスロット1bに挿入された状態であるので、多極電機子1の中心方向であるZ軸方向下方にその線材3が更に移動することはない。よって、第二係止爪33を下方に移動することによって、第二係止爪33をそこに掛け回された線材3から引き抜くことができる。
【0046】
第二係止爪33が引き抜かれた後の線材3は、多極電機子1の一端側1cから円弧状に突出することになるので、
図12に示すように、その後、第一係止爪14及びノズル13の双方を、多極電機子1の他端側1d、即ち、X軸方向に若干移動させて、多極電機子1の一端側1cから円弧状に突出する線材3をスロット1bに引き込んで、多極電機子1の一端側1cから突出する線材3の突出量Lを減少させる。この第一係止爪14の移動は、第一係止爪相対移動手段16(
図2及び
図3)により行われ、ノズル13の移動はノズル相対移動手段46(
図2及び
図3)により行われる。
【0047】
そして、その後、
図13に示すように、第一係止爪14をそこに掛け回された線材3から引き抜く。第一係止爪14は第一移動板15から下方に突出するように設けられているので、
図13の実線矢印で示すように、この引き抜きは、第一係止爪相対移動手段16(
図2及び
図3)により、その第一係止爪14を多極電機子1の径方向外側であるZ軸方向上方に移動させることにより行われる。ここで、その第一係止爪14に掛け回された線材3はスロット1bに上方から挿入された状態である。このため、その線材3が第一係止爪14とともに上方に移動することを防止するために、多極電機子1の他端側1dと第一係止爪14との間の線材3をシャッタ部材51により上方から押さえる。上述したインデックス工程や線材折り返し工程時に、このシャッタ部材51は、その線材3を押さえる位置から離間して、上述したインデックス工程や線材折り返し工程に支障を生じさせないような位置に待機しており、第一係止爪14の引き抜き時に、部材移動手段61(
図2及び
図3)により移動して、その線材3を押さえる押さえ位置まで移動させるものである。
【0048】
図14に示すように、多極電機子1の他端側1dにある第一係止爪14の間における線材3をシャッタ部材51により押さえた状態で、多極電機子1の外側であるZ軸方向上方に第一係止爪14を移動させると、そこに掛け回された線材3はシャッタ部材51により上方に移動することはないので、第一係止爪14のみが上方に移動することになる。よって、これにより、第一係止爪14をそこに掛け回された線材3から引き抜くことができる。そして、第一係止爪14を引き抜いた後に、シャッタ部材51は、部材移動手段61(
図2及び
図3)により、再びその線材3を押さえる押さえ位置から離間する離間位置にまで移動して待機することになる。
【0049】
第一係止爪14が引き抜かれた後の線材3は、多極電機子1の他端側1dから円弧状に突出することになるので、
図15に示すように、その後、ノズル13を、多極電機子1の一端側1c、即ち、X軸方向に若干移動させて、多極電機子1の他端側1dから円弧状に突出する線材3をスロット1bに引き込んで、多極電機子1の他端側1dから突出する線材3の突出量Lを減少させる。このノズル13の移動はノズル相対移動手段46(
図2及び
図3)により行うことができる。そして、その後インデックス工程が再び繰返されることになる。
【0050】
上述したようなインデックス工程、線材折り返し工程及び線材挿入工程をこの順序で順次繰返すことにより、多極電機子1の各スロット1bに、線材3を波形に挿入することができる。そして、上述した各工程を順次繰返し、多極電機子1における全ての磁極2を挟むスロット1bに折り返された線材3が挿入された状態で巻線作業は終了することになる。
【0051】
このように、本発明では、第一及び第二係止爪14,33の多極電機子1の周方向における幅Aを、それらの係止爪14,33に掛け回されて折り返された線材3が巻線位置にある1又は2以上の磁極2の両側のスロット1b,1bに挿入可能な幅に形成したので、その第一及び第二係止爪14,33により折り返された線材3を多極電機子1の径方向に移動させるだけの動作で磁極2の両側のスロット1b,1bにその線材3挿入させることが可能になる。このため、本発明では、その線材3を周方向に引き回すことを不要にすることができる。よって、本発明では、周方向に線材3を案内する時間が不要になるので、線材3の巻線作業を迅速に行うことが可能になるのである。
【0052】
なお、上述した実施の形態では、単一の磁極2の周方向にあって、その単一の磁極2を挟む両側に形成されるスロット1bに折り返された線材3が挿入される場合を示した。そのために、第一係止爪14及び第二係止爪33のY軸方向における幅寸法Aが、単一の磁極2の周方向における幅Bと同じ又はそれよりも僅かに広い長さであるとした。けれども、折り返された線材3は、単一の磁極2の両側のスロット1b,1bに挿入されるものに限定されるものではなく、複数の磁極2の両側のスロット1b,1bに挿入する、いわゆる分布巻きであっても良い。このように、複数の磁極2を挟む両側のスロット1b,1bに線材3を挿入させる、いわゆる分布巻きの場合は、線材3が折り返される第一係止爪14及び第二係止爪33のY軸方向における幅寸法Aを、その複数の磁極2の周方向における全体の幅と同じ長さ又はそれよりも僅かに長い長さに形成する。これにより、折り返された線材3を、複数の磁極2を挟む両側のスロット1b,1bに挿入する、いわゆる分布巻きが可能となる。
【0053】
また、上述した実施の形態では、レゾルバに使用される多極電機子1であって、環状部1aから径方向外側に向かって複数の磁極2が放射状に突出したものを用いて説明したけれども、本発明における巻線の対象である多極電機子は、レゾルバのものに限られず、モータ用のものであっても良い。また、その多極電機子1は、図示しないが、環状部から径方向内側に向かって複数の磁極が中心に向かって突出したようなものであっても良い。
【0054】
また、上述した実施の形態では、Y軸方向に延びる複数の線材3がZ軸方向に並んだ状態でそのノズル13に挿通可能な角筒状のノズル13を用い、そのノズル13から繰出された複数の線材3が同時に巻線される場合を説明したけれども、ノズル13は単一の線材3を繰り出すものであっても良く、円筒状を成すようなものであっても良い。
【0055】
また、上述した実施の形態では、インデックス工程において、
図5の一点鎖線矢印で示す方向に多極電機子11を回転させる場合を説明したけれども、インデックス工程にあっては、
図5の一点鎖線矢印で示す方向と逆方向に多極電機子11を回転させても良く、
図5の一点鎖線矢印で示す方向に回転させて順次巻線を行った後に、その一点鎖線矢印で示す方向と逆方向に多極電機子11を回転させて、巻線を継続させても良い。
【0056】
また、上述した実施の形態では、延長部15bの先端にZ軸方向下方に向けて第一係止爪14が取付けられ、延長部35bの先端にZ軸方向上方に向けて第二係止爪33が取付けられる場合を説明したけれども、延長部15bの先端に第一係止爪14をZ軸方向上方に向けて取付けても良く、延長部35bの先端に第二係止爪33をZ軸方向下方に向けて取付けても良い。
【0057】
更に、上述した実施の形態では、環状部1aの中心軸に平行に真っ直ぐなスロット1bを有する多極電機子1を用いて説明したけれども、そのスロット1bが真っ直ぐである限り、その多極電機子1を捩ってスロット1bを互いに平行にしつつ傾斜させた、いわゆるスキューされた多極電機子1であっても良い。このようにスキューされた多極電機子1であっても、そのスロット1bが真っ直ぐであれば、線材にダメージを与えることなく、折り返された線材を磁極を挟む両側のスロットに挿入することができる。