(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979792
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20160818BHJP
【FI】
A61M25/09 510
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-85555(P2013-85555)
(22)【出願日】2013年4月16日
(65)【公開番号】特開2014-204928(P2014-204928A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2015年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134326
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 聡
(72)【発明者】
【氏名】松本 訓
(72)【発明者】
【氏名】古川 宗也
【審査官】
小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−512857(JP,A)
【文献】
特開平10−043306(JP,A)
【文献】
特開2007−089901(JP,A)
【文献】
特表2007−530130(JP,A)
【文献】
特表2010−502396(JP,A)
【文献】
特表2011−522635(JP,A)
【文献】
米国特許第5725534(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00,25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシャフトと、
前記コアシャフトの先端に設けられた先端チップ部と、
前記先端チップ部の表面から突出した複数の凸部と
を備え、
前記複数の凸部は、その平面視での形状が長方形または楕円形に形成されており、
前記複数の凸部の長軸方向は、互いに交差する方向に設定されているガイドワイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のガイドワイヤであって、
前記複数の凸部は、その長軸方向が、前記コアシャフトの軸方向に設定されている凸部と、その長軸方向が、前記コアシャフトの軸方向と直交する方向に設定されている凸部とから構成されているガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤであって、
前記複数の凸部は、前記先端チップ部の表面からの高さが、前記コアシャフトの基端側に向かって低くなることを特徴とするガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管に挿入されるガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
血管にカテーテルを挿入する際に用いるガイドワイヤが知られている。カテーテルを挿入する際には、先ずガイドワイヤを血管に挿入して病変部を通過させ、その後にガイドワイヤに沿ってカテーテルを進行させる。このように、ガイドワイヤはカテーテルを病変部に導くためのガイドとして機能する。
【0003】
また、術者は、血管の病変部にガイドワイヤを通過させる際、ガイドワイヤの先端部が病変部から受ける抵抗を感じ取りながら、適切な通過経路を探索する。このとき、ガイドワイヤの先端部が病変部から受ける抵抗が大きいと、その抵抗を術者が感じ取り易くなるので、血管走行が不明瞭な場合であっても適切な通過経路を探索し易くなり、結果として病変部にガイドワイヤを通過させ易くなる。
【0004】
ここで、ガイドワイヤの先端部が病変部から受ける抵抗を大きくする方法としては、例えば、特許文献1に記載されているように、ガイドワイヤの先端部に螺旋状の溝を設けることが考えられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−89901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来のガイドワイヤでは、ガイドワイヤを押し込んだときの病変部からの抵抗を術者が感じ取り易くなるものの、ガイドワイヤを回転させたときの病変部からの抵抗を十分に感じ取ることができないという問題があった。病変部にガイドワイヤを通過させる際には、病変部に対してガイドワイヤを回転させながら押し込んでいく。このため、ガイドワイヤを押し込んだときに病変部から受ける抵抗と、回転させたときに病変部から受ける抵抗との両方を感じ取ることができるガイドワイヤが要望されていた。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題に対応してなされたものであり、ガイドワイヤを押し込んだときに病変部から受ける抵抗と、ガイドワイヤを回転させたときに病変部から受ける抵抗との両方を、術者が良好に感ずることが可能なガイドワイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明のガイドワイヤは次の構成を採用した。すなわち、本発明のガイドワイヤは、コアシャフトと、前記コアシャフトの先端に設けられた先端チップ部と、前記先端チップ部の表面
から突出した複数の凸部とを備え、前記複数の凸部は、その平面視での形状が長方形または楕円形に形成されており、前記複数の凸部の長軸方向は、互いに交差する方向に設定されていることを特徴とする。
尚、本発明において「凸部の長軸方向」とは、凸部の平面視での形状(長方形または楕円形)の長軸方向のことを意味している。
【0009】
このような本発明のガイドワイヤにおいては、先端チップ部の表面
から突出して、平面視での形状が長方形または楕円形の複数の凸部が設けられており、且つ、それらの長軸方向が、互いに交差する方向に設定されている。このため、ガイドワイヤを押し込んだときに病変部から受ける抵抗と、ガイドワイヤを回転させたときに病変部から受ける抵抗との両方を、先端チップ部の表面で受け易くすることができる。その結果、病変部からの抵抗を術者が感じ取り易くなることによって、血管走行が不明瞭な場合であっても適切な通過経路を探索し易くなり、病変部にガイドワイヤを通過させ易くすることが可能となる。
【0010】
また、本発明のガイドワイヤにおいては、複数の凸部を、長軸方向がコアシャフトの軸方向に設定された凸部と、長軸方向がコアシャフトの軸方向と直交する方向に設定された凸部とから構成することとしてもよい。
【0011】
詳細には後述するが、このように複数の凸部の長軸方向を設定することによって、ガイドワイヤを押し込んだときに病変部から受ける抵抗と、ガイドワイヤを回転させたときに病変部から受ける抵抗との両方を、先端チップ部の表面で効率よく受けることができる。その結果、これらの抵抗を術者がより確実に感じ取ることができるので、病変部に対してガイドワイヤをより通過させ易くすることが可能となる。
【0012】
また、本発明のガイドワイヤにおいては、先端チップ部の表面からの凸部の高さがコアシャフトの基端側に向かって低くなるように、凸部を形成することとしてもよい。
【0013】
こうすれば、ガイドワイヤを押し込んだときに病変部から受ける抵抗と、ガイドワイヤを回転させたときに病変部から受ける抵抗とを確保しつつ、ガイドワイヤを引き抜くときに病変部から受ける抵抗を低減させることができる。従って、ガイドワイヤを血管から容易に引き抜くことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態のガイドワイヤの構成を示した説明図である。
【
図2】本発明の第1実施形態のガイドワイヤの先端チップ部の拡大図である。
【
図3】本発明の第2実施形態のガイドワイヤの先端チップ部の拡大図である。
【
図4】本発明の第3実施形態のガイドワイヤの先端チップ部の拡大図である。
【
図5】本発明の第3実施形態のガイドワイヤを用いた手技の様子を示した説明図である。(a)には、血管の慢性完全閉塞(いわゆるCTO)にガイドワイヤを通過させるときの様子が示されており、(b)には、慢性完全閉塞を通過中のガイドワイヤの先端チップ部の拡大図が示されている。
【
図6】本発明の第4実施形態のガイドワイヤの先端チップ部を示した説明図である。(a)には、第4実施形態のガイドワイヤの先端チップ部の拡大図が示されており、(b)には、(a)のAA断面を矢印の方向から見たときの先端チップ部の断面図が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.第1実施形態 :
以下では、上述した本発明の内容を明確にするために、本発明のガイドワイヤの各種の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態のガイドワイヤ1の構成を示した説明図である。図示されているように、本実施形態のガイドワイヤ1は、コアシャフト10と、コアシャフト10の先端部を覆うように設けられたコイル体20などから構成されている。
【0016】
コアシャフト10とコイル体20とは、接合部材(本実施形態では、ロウ材)を介して互いに接合されている。本実施形態のガイドワイヤ1では、コアシャフト10とコイル体20の先端部とがロウ材で接合されるとともに、コアシャフト10とコイル体20の後端部とがロウ材で接合されている。尚、以下の説明では、コアシャフト10とコイル体20の先端部との接合部のことを先端チップ部30と呼び、コアシャフト10とコイル体20の後端部との接合部のことを後端接合部35と呼ぶこととする。
【0017】
図2は、本発明の第1実施形態のガイドワイヤ1の先端チップ部30の拡大図である。図示されているように、本実施形態のガイドワイヤ1の先端チップ部30の表面には、複数の凸部50が設けられている。また、これらの凸部50は、平面視(凸部50を上から見た場合)での形状が、楕円形となっている。更に、各々の凸部50の長軸方向は、互いに交差する方向となっている。
尚、「複数の凸部50の長軸方向が互いに交差する方向である」とは、複数の凸部50のうちの、少なくとも異なる2つの凸部50の長軸方向が、交差する方向であることを意味している。
【0018】
このように、本実施形態のガイドワイヤ1は、先端チップ30の表面に設けられた複数の凸部50の長軸方向が互いに交差する方向となっているので、病変部にガイドワイヤ1を通過させる際に、ガイドワイヤ1を押し込んだときに病変部から受ける抵抗と、ガイドワイヤを回転させたときに病変部から受ける抵抗との両方を、先端チップ部30の表面で受け易くすることができる。その結果、ガイドワイヤ1の押し込み時の抵抗、および回転操作時の抵抗の両方を術者が感じ取り易くなるので、血管走行が不明瞭な場合であっても適切な通過経路を探索し易くなり、その結果として、病変部にガイドワイヤを通過させ易くすることが可能となる。
【0019】
上述した第1実施形態には、関連する他の実施形態が存在する。以下では、他の実施形態について簡単に説明する。尚、以下の説明では、第1実施形態のガイドワイヤ1と同じ構成については同じ番号を付すこととし、その詳細な説明を省略する。
【0020】
B.第2実施形態 :
図3は、本発明の第2実施形態のガイドワイヤ2の先端チップ部32の拡大図である。図示した本実施形態のガイドワイヤ2は、上述した第1実施形態のガイドワイヤとは以下の2点で異なっている。先ず、第1実施形態のガイドワイヤ1では、先端チップ部30の凸部50の平面視での形状が楕円形であったが、第2実施形態のガイドワイヤ2では、先端チップ部32の凸部52の平面視での形状が長方形となっている。また、第1実施形態のガイドワイヤ1では、各々の凸部50の長軸方向の交差角度については特に言及しなかったが、第2実施形態のガイドワイヤ2では、各々の凸部52の長軸方向が互いに直交している。
【0021】
このような第2実施形態のガイドワイヤ2では、凸部52の平面視での形状が長方形に形成されることによって、凸部52の角が立っている。また、各々の凸部52の長軸方向が互いに直交している。このことにより、先端チップ部32の表面では、より大きな抵抗(ガイドワイヤ2の押し込み時の抵抗および回転操作時の抵抗)を病変部から受けることができるので、これらの抵抗を術者がより感じ取り易くすることが可能となる。
【0022】
C.第3実施形態 :
図4は、本発明の第3実施形態のガイドワイヤ3の先端チップ部33の拡大図である。図示した第3実施形態のガイドワイヤ3では、先端チップ部33の表面の複数の凸部が、以下の2種類の凸部から構成されている。すなわち、複数の凸部は、その長軸方向がガイドワイヤ3のコアシャフト10の軸方向と同じである凸部54aと、その長軸方向がガイドワイヤ3のコアシャフト10の軸方向と直交する方向である凸部54bとから構成されている。
【0023】
図5は、本発明の第3実施形態のガイドワイヤ3を用いた手技の様子を示した説明図である。(a)には、血管の慢性完全閉塞(いわゆるCTO)にガイドワイヤ3を通過させるときの様子が示されており、(b)には、慢性完全閉塞を通過中のガイドワイヤ3の先端チップ部33の拡大図が示されている。
【0024】
図示されているように、慢性完全閉塞(CTO)にガイドワイヤ3を通過させる際には、ガイドワイヤ3を回転させながら押し込むことによって、慢性完全閉塞(CTO)を通過させる。ここで、本実施形態のガイドワイヤ3では、凸部54aの長軸方向が、ガイドワイヤ3の回転方向と直交する方向となっている。このため、凸部54aによって、病変部内でガイドワイヤ3を回転させたときの先端チップ部33に対する抵抗を、効率よく受けることができる。また、凸部54bの長軸方向は、ガイドワイヤ3の押込方向と直交する方向となっている。このため、凸部54bによって、ガイドワイヤ3を病変部に押し込んだときの先端チップ部33に対する抵抗を、効率よく受けることができる。
【0025】
このように、本実施形態のガイドワイヤ3によれば、病変部内でガイドワイヤ3を回転させたときの抵抗と、ガイドワイヤ3を病変部に押し込んだときの抵抗との両方を、効率よく受けることができる。その結果、これらの抵抗を術者がより確実に感じ取ることができるので、病変部に対してガイドワイヤ3をより通過させ易くすることが可能となる。
【0026】
D.第4実施形態 :
図6は、本発明の第4実施形態のガイドワイヤ4の先端チップ部34を示した説明図である。(a)には、第4実施形態のガイドワイヤ4の先端チップ部34の拡大図が示されており、(b)には、(a)のAA断面を矢印の方向から見たときの先端チップ部34の断面図が示されている。
【0027】
図6(a)に示されているように、第4実施形態のガイドワイヤ4においても、第3実施形態のガイドワイヤ3(
図5を参照)と同様に、先端チップ部34の複数の凸部が、長軸方向がコアシャフト10の軸方向と同じである凸部56aと、長軸方向がコアシャフト10の軸方向と直交する方向である凸部56bとから構成されている。このため、ガイドワイヤ4を押し込んだときに病変部から受ける抵抗と、ガイドワイヤを回転させたときに病変部から受ける抵抗との両方を、術者が確実に感じことができる。
【0028】
また、
図6(b)に示されているように、第4実施形態のガイドワイヤ4では、先端チップ部34の表面からの凸部56a,56bの高さが、コアシャフト10の基端側に向かって低くなるように形成されている。従って、ガイドワイヤ4を手元側に引く際に、病変部から受ける抵抗を低減させることができる。その結果、上述したように、ガイドワイヤ4の押し込み時の抵抗と回転操作時の抵抗との両方を、術者が確実に感じことが可能でありながら、ガイドワイヤ4を血管から容易に引き抜くことが可能となる。
【0029】
以上、各種実施形態のガイドワイヤについて説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上述した各種実施形態では、コアシャフトの先端部にコイル体を備えるガイドワイヤ(いわゆるコイル式のガイドワイヤ)に対して、本発明を適用するものと説明した。しかし、本発明を、コイル体を有しないガイドワイヤに対して適用することとしてもよい。すなわち、コアシャフトを有するガイドワイヤにおいて、コアシャフトの先端部に長方形(または楕円形)に複数の凸部を設けることとし、複数の凸部の長軸方向を、互いに交差する方向に設定することとしてもよい(図示は省略)。
【0030】
このようにしても、ガイドワイヤを押し込んだときに病変部から受ける抵抗と、ガイドワイヤを回転させたときに病変部から受ける抵抗との両方を、術者が感じ取り易くすることができる。もっとも、上述した各種実施形態のようなコイル式のガイドワイヤの方が、コイル体の表面に凹凸があることで、病変部から受ける抵抗(特に、押込方向に対する抵抗)を大きくすることができるという利点がある。従って、コイル式のガイドワイヤに本発明を適用することが、より望ましい。
【符号の説明】
【0031】
1,2,3,4・・・ガイドワイヤ
10・・・コアシャフト
20・・・コイル体
30,32,33,34・・・先端チップ部
35・・・後端接合部
50,52,54a,54b,56a,56b・・・凸部