(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5979809
(24)【登録日】2016年8月5日
(45)【発行日】2016年8月31日
(54)【発明の名称】洗浄方法
(51)【国際特許分類】
C11D 7/50 20060101AFI20160818BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20160818BHJP
C11D 7/34 20060101ALI20160818BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20160818BHJP
【FI】
C11D7/50
B41J2/165 301
C11D7/34
C11D17/08
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2009-200715(P2009-200715)
(22)【出願日】2009年8月31日
(65)【公開番号】特開2011-52071(P2011-52071A)
(43)【公開日】2011年3月17日
【審査請求日】2012年8月10日
【審判番号】不服2015-11842(P2015-11842/J1)
【審判請求日】2015年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】相馬 聖一
(72)【発明者】
【氏名】栗田 勇
(72)【発明者】
【氏名】並木 崇
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 博徳
(72)【発明者】
【氏名】土方 康之
【合議体】
【審判長】
冨士 良宏
【審判官】
國島 明弘
【審判官】
岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−115553(JP,A)
【文献】
特開2005−074671(JP,A)
【文献】
特開平9−300637(JP,A)
【文献】
特開平7−089092(JP,A)
【文献】
特開平2−263654(JP,A)
【文献】
特開昭60−023048(JP,A)
【文献】
特表2008−519295(JP,A)
【文献】
特開平04−102459(JP,A)
【文献】
特開2000−241991(JP,A)
【文献】
特開平09−194892(JP,A)
【文献】
特開平08−218011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00−17/08
B41J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタのカーボンブラックを含有するインクのノズル口内周辺に析出した金属塩を除去する洗浄方法であって、
水と、5〜25質量%のジメチルスルホキシド(DMSO)と、を含有する洗浄液(ただし、染料インク脱色用の還元剤を含むものを除く)で前記ノズルを洗浄する工程を含む、洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機溶剤系のインクを用いたインクジェットプリンタのヘッドノズルを洗浄する際には、インクを凝集させにくい有機溶剤系の洗浄液が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−254550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の有機溶剤系洗浄液では、上記ノズル口内周辺に析出した金属塩を洗浄しきれず、その析出物が原因で、液滴の飛行曲がりが生じ、印刷パターンが乱れるなどの問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、インクジェットプリンタのノズル口内周辺に析出した金属塩を十分に洗浄することが可能で、且つインクを凝集させにくい、上記ノズルの洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、インクに含まれるカーボンブラックが硫酸で処理されることなどから、インクジェットプリンタのノズル口内周辺に生じる析出物が硫酸カリウム等の金属塩であることを分析により明確にし、この知見から、水と水溶性極性溶媒とを特定の比率で混合した洗浄液を用いることにより、インクの凝集によるノズル詰まりを生じることなく、上記析出物を十分に洗浄することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、インクジェットプリンタの
カーボンブラックを含有するインクのノズル
口内周辺に析出した金属塩を除去する洗浄方法であって、水と、5〜25質量%の
ジメチルスルホキシド(DMSO)と、を含有する洗浄液
(ただし、染料インク脱色用の還元剤を含むものを除く)で上記ノズルを洗浄する工程を含む、洗浄方法である。仮に上記洗浄液として水を用いると、水溶性金属塩(無機塩)からなる析出物を十分に洗浄することは可能となるが、有機溶剤系のインクと水が混じることにより、インクの分散が壊れ、インクが凝集し、凝集物によりノズル詰まりが生じやすくなる。本発明は、上記特定割合の水溶性極性溶媒を含有する洗浄液を用いることにより、上記インクの凝集による問題を起こすことなく、ノズル口内周辺に析出した金属塩(異物)を十分に洗浄し取り除くことを可能とする。
ジメチルスルホキシド(DMSO)によって、上記洗浄効果がより向上する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクジェットプリンタのノズル口内周辺に析出した金属塩を十分に洗浄することが可能で、且つインクを凝集させにくい、上記ノズルの洗浄方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明の洗浄方法は、水と、5〜25質量%の水溶性極性溶媒と、を含有する洗浄液を用いてノズルを洗浄する工程を備える。
【0012】
上記水溶性極性溶媒としては、特に限定されないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒を用いることが好ましい。中でも、ノズル口内に溜まった析出物の洗浄効果がより向上することから、ジメチルスルホキシド(DMSO)を用いることがより好ましい。
【0013】
水の含有量は、75〜95質量%が好ましい。
【0014】
上記洗浄液を用いてノズルを洗浄する方法としては、特に限定されず、例えば、インクノズル口内に直接洗浄液を注入してノズル界面に洗浄液を満たし、ノズル口内の析出物を洗浄後、クリーニングシーケンスで洗浄する方法が挙げられる。また、容器(キャップ)の中に本発明の洗浄液を入れ、プリンタのヘッドを下ろしてノズルの先端を上記洗浄液に浸し、常温で約30分間浸漬又は約3分間超音波洗浄する方法も挙げられる。さらに、事前にグリコールエーテル系等の溶剤で非水溶性溶剤を除去した後、本発明の洗浄液で洗浄してもよい。
【0015】
例えば、本発明の洗浄方法は、以下の工程(1)〜(6)を備えるものであってもよい。なお、工程(3)は省略することができる。
(1)ヘッドノズルからインクを排出する。
(2)MS(Mild Solvent)洗浄液でヘッドノズルを洗浄する。MS洗浄液としては、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等を主溶剤としたものが用いられる。
(3)置換液(例えば、テトラエチレングリコール)で洗浄する。
(4)本発明の洗浄液で洗浄する。
(5)再びMS洗浄液で洗浄する
(6)インクを充填する。
【実施例】
【0016】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0017】
以下、インクジェットプリンタとしては、ミマキエンジニアリング製「JV5−160」(商品名)を用いた。洗浄前のインクジェットプリンタのヘッドノズル口内には析出物が溜まっており、テストパターン印刷ではパターンの乱れが生じていた。
【0018】
[実施例1]
以下の工程(1)〜(6)により、インクジェットプリンタのヘッドノズルの洗浄を行った。
(1)ヘッドノズルからインクを排出した。
(2)MS(Mild Solvent)洗浄液10mLをシリンジでノズル口内に直接注入し、ノズルを洗浄した。MS洗浄液としては、主溶剤としてジプロピレングリコールモノメチルエーテルを40〜50質量%含有するもの(商品名「MS洗浄液ボトルキット」)を用いた。
(3)置換液としてテトラエチレングリコール10mLをシリンジでノズル口内に注入し、ノズルを洗浄した。
(4)ジメチルスルホキシド(DMSO)を20質量%含有する水溶液(DMSO:水=2:8)50mLを洗浄液として、シリンジでノズル口内に注入し、ノズルを洗浄した。
(5)再び上記MS洗浄液10mLをシリンジでノズル口内に注入し、ノズルを洗浄した。
(6)インクを充填した。
【0019】
[実施例2]
以下の工程(1)〜(4)により、インクジェットプリンタのヘッドノズルの洗浄を行った。
(1)MS(Mild Solvent)洗浄液50mLでヘッドノズルの排路を洗浄した。MS洗浄液としては、主溶剤としてジプロピレングリコールモノメチルエーテルを40〜50質量%含有するもの(商品名「MS洗浄液ボトルキット」)を用いた。
(2)ジメチルスルホキシド(DMSO)を20質量%含有する水溶液(DMSO:水=2:8)を洗浄液として、容器(キャップ)の中に上記洗浄液を入れ、プリンタのヘッドを下ろしてノズルの先端を上記洗浄液に浸し、常温で約30分間浸漬することにより、ノズルを洗浄した。
(3)同様にしてノズルを上記MS洗浄液に30分間浸漬することにより洗浄した。
(4)インクを充填した。
【0020】
[比較例1]
実施例1の洗浄方法のうち、工程(4)を省いてノズルの洗浄を行った。
【0021】
[比較例2]
実施例2の洗浄方法のうち、工程(2)を省いてノズルの洗浄を行った。
【0022】
[比較例3]
実施例1の洗浄方法において、工程(4)で用いる洗浄液の代わりに、ジメチルスルホキシド(DMSO)を50質量%含有する水溶液(DMSO:水=5:5)を用いて、ノズルの洗浄を行った。
【0023】
[比較例4]
実施例1の洗浄方法において、工程(4)で用いる洗浄液の代わりに、ジメチルスルホキシド(DMSO)を80質量%含有する水溶液(DMSO:水=8:2)を用いて、ノズルの洗浄を行った。
【0024】
(結果)
実施例1及び2の洗浄方法により洗浄した場合は、洗浄後、SEMにてノズル面(裏面)を観察したところ、ノズル口内の析出物は十分に洗浄され、ほぼ全ての析出物が除去されていた。また、インクの凝集によるノズル詰まりも見られず、テストパターンを印刷したところ、パターンの乱れは解消されていた。一方、比較例1〜4の洗浄方法により洗浄した場合には、ノズル口内の析出物は洗浄前と比べてほとんど除去されておらず、パターンの乱れも解消されていなかった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の洗浄方法によれば、ユーザーによる簡単なメンテナンスで、インクの凝集によるノズル詰まりを生じることもなく、ノズル口内周辺に析出した金属塩を洗浄除去することにより、ヘッドの飛行曲がりなどのトラブルを解消することができる。