(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
交流電源(11)の交流電力を直流電力に整流するコンバータ回路(12)と、該コンバータ回路(12)に並列に接続され且つ該コンバータ回路(12)の出力電力を所定の周波数の交流電力に変換する複数のインバータ回路(15)とを有し、該コンバータ回路(12)と該各インバータ回路(15)との間に接続されるDCリンク(13)を備えた電力変換装置であって、
任意の電圧を出力する電圧発生回路(31)と、ボルテージフォロア回路(32)とを有するオフセット回路(30)と、
前記各インバータ回路(15)の入力電流を検出するために前記DCリンク(13)にそれぞれ接続された複数のインバータ側シャント抵抗器(18)と、
前記各インバータ側シャント抵抗器(18)の両端の電位差を増幅して出力する複数のインバータ側増幅回路(22)とを備え、
前記オフセット回路(30)は、前記複数のインバータ側増幅回路(22)の全て又は1つを除いた残り全てに接続され、
前記オフセット回路(30)が接続される前記インバータ側増幅回路(22)は、差動増幅回路であることを特徴とする電力変換装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コンバータ回路の出力電流とインバータ回路の入力電流とには、正負両極性の電流が現れる。そのため、電流検出装置とマイクロコンピュータとに共通の単極性電源を用いる場合には、検出信号の零アンペアレベルをシフトするためのオフセット回路が必要となる。
【0006】
また、単極性の電流しか現れない整流回路のようなコンバータ回路においても、部品バラツキやアンプの入力電圧オフセット等によって零アンペアレベルが変化することを考慮すると、同様にオフセット回路が必要となる。
【0007】
しかしながら、オフセット回路として、複数の抵抗器が直列に接続された抵抗分圧回路を用いる場合には、オフセット回路のインピーダンスによって差動増幅回路が不完全差動となってしまい、同相ノイズを十分に除去することができないおそれがある。このような現象は、電流検出抵抗の電圧検出の精度を低下させ、コンバータ回路やインバータ回路に流れる電流の検出精度を低下させる要因となる。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンバータ回路やインバータ回路に流れる電流を精度良く検出できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は
、交流電源(11)の交流電力を直流電力に整流するコンバータ回路(12)と、該コンバータ回路(12)に並列に接続され且つ該コンバータ回路(12)の出力電力を所定の周波数の交流電力に変換する複数のインバータ回路(15)とを有し、該コンバータ回路(12)と該各インバータ回路(15)との間に接続されるDCリンク(13)を備えた電力変換装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第
1の発明は、任意の電圧を出力する電圧発生回路(31)と、ボルテージフォロア回路(32)とを有するオフセット回路(30)と、
前記各インバータ回路(15)の入力電流を検出するために前記DCリンク(13)にそれぞれ接続された複数のインバータ側シャント抵抗器(18)と、
前記各インバータ側シャント抵抗器(18)の両端の電位差を増幅して出力する複数のインバータ側増幅回路(22)とを備え、
前記オフセット回路(30)は、前記複数のインバータ側増幅回路(22)の全て又は1つを除いた残り全てに接続され、
前記オフセット回路(30)が接続される前記インバータ側増幅回路(22)は、差動増幅回路であることを特徴とするものである。
【0011】
第
1の発明では、DCリンク(13)には、複数のインバータ回路(15)の入力電流を検出するために、複数のインバータ側シャント抵抗器(18)が接続される。各インバータ側シャント抵抗器(18)の両端の電位差は、各インバータ側増幅回路(22)によって増幅されて出力される。複数のインバータ側増幅回路(22)の全て又は1つを除いた残り全てには、それぞれオフセット回路(30)が接続される。オフセット回路(30)は、任意の電圧を出力する電圧発生回路(31)と、ボルテージフォロア回路(32)とを有している。
【0012】
このような構成とすれば、複数のインバータ回路(15)を有する電力変換装置において、コストアップを抑えた比較的簡単な回路構成で同相ノイズを除去することができ、インバータ回路(15)に流れる電流を精度良く検出することができる。
【0013】
第
2の発明は、第
1の発明において、
前記オフセット回路(30)は複数設けられ、前記複数のインバータ側増幅回路(22)にそれぞれ接続されていることを特徴とするものである。
【0014】
第
2の発明では、複数のインバータ側増幅回路(22)にそれぞれオフセット回路(30)が接続される。このような構成とすれば、複数のインバータ回路(15)を有する電力変換装置において、それぞれの差動増幅回路に対して異なるオフセット電圧値が設定できるため、最適なオフセットの設定が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、オフセット回路(30)を電圧発生回路(31)とボルテージフォロア回路(32)とを有する回路とし、信号源インピーダンスを下げることで、コンバータ側増幅回路(21)又はインバータ側増幅回路(22)を完全差動に近づけることができる。これにより、コストアップを抑えた比較的簡単な回路構成で同相ノイズを除去することができ、コンバータ回路(12)やインバータ回路(15)に流れる電流を精度良く検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0018】
《
参考例1》
図1は、本
参考例1に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。
図1に示すように、電力変換装置(1)は、コンバータ回路(12)と、DCリンク(13)と、平滑コンデンサ(14)と、インバータ回路(15)とを備え、単相の交流電源(11)から供給された交流電力を所定の周波数の電力に変換して、モータ(16)に供給するようになっている。
【0019】
コンバータ回路(12)は、交流電源(11)に接続され、交流電源(11)が出力した交流を直流に全波整流して、直流電圧に変換する。この例では、コンバータ回路(12)は、複数のダイオードを有している。
【0020】
DCリンク(13)は、低電位側配線(13a)と、高電位側配線(13b)とを有し、コンバータ回路(12)とインバータ回路(15)との間に接続されている。DCリンク(13)には、平滑コンデンサ(14)と、コンバータ側シャント抵抗器(17)と、インバータ側シャント抵抗器(18)とが接続されている。
【0021】
平滑コンデンサ(14)は、コンバータ回路(12)の出力に並列接続され、平滑コンデンサ(14)の両端に生じた直流電圧(直流リンク電圧)がインバータ回路(15)の入力ノードに接続されている。平滑コンデンサ(14)の低電位側端は、DCリンク(13)の低電位側配線(13a)に接続されている。また、平滑コンデンサ(14)の高電位側端は、DCリンク(13)の高電位側配線(13b)に接続されている。
【0022】
コンバータ側シャント抵抗器(17)は、DCリンク(13)の低電位側配線(13a)における平滑コンデンサ(14)よりもコンバータ回路(12)側に接続され、コンバータ回路(12)の出力電流を検出するためのものである。
【0023】
インバータ側シャント抵抗器(18)は、DCリンク(13)の低電位側配線(13a)における平滑コンデンサ(14)よりもインバータ回路(15)側に接続され、インバータ回路(15)の入力電流を検出するためのものである。
【0024】
これにより、
図1におけるコンバータ側シャント抵抗器(17)の右端と、インバータ側シャント抵抗器(18)の左端とは、DCリンク(13)の低電位側配線(13a)を介して接続されている。
【0025】
インバータ回路(15)は、入力ノードがDCリンク(13)の平滑コンデンサ(14)に並列に接続され、DCリンク(13)の出力をスイッチングして三相交流に変換し、接続されたモータ(16)に供給する。
【0026】
電力変換装置(1)には、電流測定装置(2)が接続されている。電流測定装置(2)は、コンバータ側増幅回路(21)と、インバータ側増幅回路(22)と、マイクロコンピュータ(25)と、電源(26)と、オフセット回路(30)とを備えている。
【0027】
コンバータ側増幅回路(21)は、差動増幅回路で構成され、コンバータ側シャント抵抗器(17)の両端の電位差を増幅してマイクロコンピュータ(25)に出力する。インバータ側増幅回路(22)は、非反転増幅回路で構成され、インバータ側シャント抵抗器(18)の両端の電位差を増幅してマイクロコンピュータ(25)に出力する。
【0028】
マイクロコンピュータ(25)は、コンバータ側増幅回路(21)及びインバータ側増幅回路(22)の出力を測定する。
【0029】
電源(26)は、基準電位(GND)と、基準電位(GND)よりも高い電源電位(Vcc)を出力する。基準電位(GND)は、例えば接地電位である。
【0030】
電源(26)が供給する一対の電位(Vcc,GND)間の電位差は、コンバータ側増幅回路(21)、インバータ側増幅回路(22)、マイクロコンピュータ(25)、オフセット回路(30)の動作電圧として、それぞれに供給される。また、電源(26)から供給される基準電位(GND)は、非反転増幅回路に接続されるインバータ側シャント抵抗器(18)の左端に与えられる。
【0031】
オフセット回路(30)は、コンバータ側増幅回路(21)に接続されている。具体的に、オフセット回路(30)は、任意の電圧を出力する電圧発生回路である抵抗分圧回路(31)と、抵抗分圧回路(31)の出力側に接続されたボルテージフォロア回路(32)とを備え、ボルテージフォロア回路(32)がコンバータ側増幅回路(21)に接続されている。なお、電圧発生回路としてレギュレータ等を用いてもよい。
【0032】
抵抗分圧回路(31)は、2つの抵抗器(R1,R2)が直列に接続されて構成され、抵抗器(R1,R2)の抵抗値を任意に設定することで、所望の電圧値の出力電圧を生成することができる。抵抗分圧回路(31)から出力された出力電圧は、ボルテージフォロア回路(32)に入力される。なお、抵抗器(R1,R2)は、それぞれ複数の抵抗器を直列接続したものであってもよい。
【0033】
ボルテージフォロア回路(32)は、入力電圧をそのまま出力電圧として取り出してインピーダンス変換を行うものである。ボルテージフォロア回路(32)から出力された出力電圧は、コンバータ側増幅回路(21)に入力される。
【0034】
このように、コンバータ側増幅回路(21)の入力側にボルテージフォロア回路(32)を接続することで、信号源インピーダンスを下げて完全差動に近づけることができる。つまり、オフセット回路(30)のインピーダンスによってコンバータ側増幅回路(21)が不完全差動となり、同相ノイズが十分に除去できないという問題を解消することができる。同相ノイズは、主にインバータ回路(15)のスイッチングによりDCリンク(13)の低電位側配線(13a)上に発生した電位差によるものである。
【0035】
このような回路構成とすれば、コンバータ側シャント抵抗器(17)及びインバータ側シャント抵抗器(18)において生じる電圧降下を精度良く測定することができる。つまり、コンバータ側シャント抵抗器(17)及びインバータ側シャント抵抗器(18)の抵抗値は既知であるので、それぞれの測定結果に基づいて、コンバータ回路(12)及びインバータ回路(15)に流れる電流を精度良く測定することができる。
【0036】
なお、インバータ側増幅回路(22)とコンバータ側増幅回路(21)の構成を入れ替えても上述した効果を得ることはできる。この場合、インバータ側増幅回路(22)が差動増幅回路で構成され、オフセット回路(30)が接続される。また、コンバータ側増幅回路(21)が非反転増幅回路で構成され、基準電位(GND)はコンバータ側シャント抵抗器(17)の右端に与えられる。
【0037】
また、非反転増幅回路については、反転増幅回路等の他の増幅回路を用いてもよい。
【0038】
《
参考例2》
図2は、本
参考例2に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。前記
参考例1との違いは、オフセット回路(30)を複数設けた点であるため、以下、
参考例1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0039】
図2に示すように、電力変換装置(1)に接続された電流測定装置(2)は、コンバータ側増幅回路(21)と、インバータ側増幅回路(22)と、マイクロコンピュータ(25)と、電源(26)と、2つのオフセット回路(30)とを備えている。電源(26)から供給される基準電位(GND)は、DCリンク(13)の低電位側配線(13a)における任意の場所に与えられる。コンバータ側増幅回路(21)及びインバータ側増幅回路(22)は、それぞれ差動増幅回路で構成されている。
【0040】
各オフセット回路(30)は、コンバータ側増幅回路(21)とインバータ側増幅回路(22)とにそれぞれ接続されている。具体的に、各オフセット回路(30)は、抵抗分圧回路(31)と、抵抗分圧回路(31)の出力側に接続されたボルテージフォロア回路(32)とを備え、各ボルテージフォロア回路(32)がインバータ側増幅回路(22)及びコンバータ側増幅回路(21)にそれぞれ接続されている。各ボルテージフォロア回路(32)から出力された出力電圧は、インバータ側増幅回路(22)及びコンバータ側増幅回路(21)に入力される。
【0041】
なお、それぞれのオフセット回路(30)の出力電圧値は、異なる値に設定することが可能である。また、それぞれのオフセット回路(30)の出力電圧値が同じとなる設計を行った場合は、1つのオフセット回路(30)の出力をインバータ側増幅回路(22)及びコンバータ側増幅回路(21)に入力してもよい。
【0042】
インバータ側増幅回路(22)とコンバータ側増幅回路(21)が両方とも差動増幅回路で構成されているため、DCリンク(13)の低電位側配線(13a)における任意の場所に基準電位(GND)を与えても、インバータ回路(15)のスイッチングによる同相ノイズの影響を最小限に抑えることができる。
【0043】
《
参考例3》
図3は、本
参考例3に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。前記
参考例1との違いは、オフセット回路(30)の接続位置であるため、以下、
参考例1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0044】
図3に示すように、電力変換装置(1)は、コンバータ回路(12)と、DCリンク(13)と、平滑コンデンサ(14)と、インバータ回路(15)とを備えている。
【0045】
コンバータ回路(12)は、三相の交流電源(11)に接続され、交流電源(11)が出力した交流を直流に全波整流して、直流電圧に変換する。この例では、コンバータ回路(12)は、複数のスイッチング素子を有し、スイッチングにより交流を直流に全波整流する。
【0046】
電力変換装置(1)に接続された電流測定装置(2)は、コンバータ側増幅回路(21)と、インバータ側増幅回路(22)と、マイクロコンピュータ(25)と、電源(26)と、オフセット回路(30)とを備えている。コンバータ側増幅回路(21)は、非反転増幅回路で構成されている。インバータ側増幅回路(22)は、差動増幅回路で構成されている。また、電源(26)から供給される基準電位(GND)は、非反転増幅回路に接続されるコンバータ側シャント抵抗器(17)の右端に与えられる。
【0047】
オフセット回路(30)は、インバータ側増幅回路(22)に接続されている。具体的に、オフセット回路(30)は、抵抗分圧回路(31)と、抵抗分圧回路(31)の出力側に接続されたボルテージフォロア回路(32)とを備え、ボルテージフォロア回路(32)がインバータ側増幅回路(22)に接続されている。ボルテージフォロア回路(32)から出力された出力電圧は、インバータ側増幅回路(22)に入力される。なお、コンバータ側増幅回路(21)には、オフセット回路(30)とは別の抵抗分圧回路(31)が接続されている。
【0048】
このような構成とすれば、コンバータ回路(12)及びインバータ回路(15)のスイッチングによる同相ノイズの影響を最小限に抑えることができる。同相ノイズは、主にコンバータ回路(12)及びインバータ回路(15)のスイッチングによりDCリンク(13)の低電位側配線(13a)上に発生した電位差によるものである。
【0049】
なお、インバータ側増幅回路(22)とコンバータ側増幅回路(21)の構成を入れ替えても上述した効果を得ることはできる。この場合、コンバータ側増幅回路(21)が差動増幅回路で構成され、オフセット回路(30)が接続される。また、インバータ側増幅回路(22)が非反転増幅回路で構成され、基準電位(GND)はインバータ側シャント抵抗器(18)の左端に与えられる。
【0050】
また、非反転増幅回路については、反転増幅回路等の他の増幅回路を用いてもよい。
【0051】
《
参考例4》
図4は、本
参考例4に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。前記
参考例2との違いは、コンバータ回路(12)の回路構成のみであるため、以下、
参考例2と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0052】
図4に示すように、コンバータ回路(12)は、三相の交流電源(11)に接続され、交流電源(11)が出力した交流を直流に全波整流して、直流電圧に変換する。この例では、コンバータ回路(12)は、複数のスイッチング素子を有し、スイッチングにより交流を直流に全波整流する。
【0053】
電流測定装置(2)は、コンバータ側増幅回路(21)と、インバータ側増幅回路(22)と、マイクロコンピュータ(25)と、電源(26)と、2つのオフセット回路(30)とを備えている。コンバータ側増幅回路(21)及びインバータ側増幅回路(22)は、それぞれ差動増幅回路で構成されている。各オフセット回路(30)は、インバータ側増幅回路(22)とコンバータ側増幅回路(21)とにそれぞれ接続されている。
【0054】
なお、それぞれのオフセット回路(30)の出力電圧値は、異なる値に設定することが可能である。また、それぞれのオフセット回路(30)の出力電圧値が同じとなる設計を行った場合は、1つのオフセット回路(30)の出力をインバータ側増幅回路(22)及びコンバータ側増幅回路(21)に入力してもよい。
【0055】
インバータ側増幅回路(22)とコンバータ側増幅回路(21)が両方とも差動増幅回路で構成されているため、DCリンク(13)の低電位側配線(13a)における任意の場所に基準電位(GND)を与えても、コンバータ回路(12)及びインバータ回路(15)のスイッチングによる同相ノイズの影響を最小限に抑えることができる。
【0056】
《実施形態
1》
図5は、本実施形態
1に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。
図5に示すように、電力変換装置(1)は、コンバータ回路(12)と、DCリンク(13)と、平滑コンデンサ(14)と、2つのインバータ回路(15)とを備え、単相の交流電源(11)から供給された交流電力を所定の周波数の電力に変換して、2つのモータ(16)にそれぞれ供給するようになっている。
【0057】
コンバータ回路(12)は、交流電源(11)に接続され、交流電源(11)が出力した交流を直流に全波整流して、直流電圧に変換する。この例では、コンバータ回路(12)は、複数のダイオードを有している。
【0058】
DCリンク(13)は、低電位側配線(13a)と、高電位側配線(13b)とを有し、コンバータ回路(12)と、2つのインバータ回路(15)との間に接続されている。DCリンク(13)には、平滑コンデンサ(14)と、2つのインバータ側シャント抵抗器(18)とが接続されている。
【0059】
平滑コンデンサ(14)は、コンバータ回路(12)の出力に並列接続され、平滑コンデンサ(14)の両端に生じた直流電圧(直流リンク電圧)がインバータ回路(15)の入力ノードに接続されている。平滑コンデンサ(14)の低電位側端は、DCリンク(13)の低電位側配線(13a)に接続されている。また、平滑コンデンサ(14)の高電位側端は、DCリンク(13)の高電位側配線(13b)に接続されている。DCリンク(13)は、平滑コンデンサ(14)との接続点で分岐して、2つのインバータ回路(15)を並列に接続している。
【0060】
各インバータ側シャント抵抗器(18)は、DCリンク(13)の低電位側配線(13a)における平滑コンデンサ(14)よりもインバータ回路(15)側に接続され、各インバータ回路(15)の入力電流を検出するためのものである。
【0061】
各インバータ回路(15)は、入力ノードがDCリンク(13)の平滑コンデンサ(14)に並列に接続され、DCリンク(13)の出力をスイッチングして三相交流に変換し、接続された各モータ(16)に供給する。
【0062】
電力変換装置(1)には、電流測定装置(2)が接続されている。電流測定装置(2)は、2つのインバータ側増幅回路(22)と、マイクロコンピュータ(25)と、電源(26)と、オフセット回路(30)とを備えている。
【0063】
各インバータ側増幅回路(22)は、各インバータ側シャント抵抗器(18)の両端の電位差を増幅してマイクロコンピュータ(25)に出力する。マイクロコンピュータ(25)は、各インバータ側増幅回路(22)の出力を測定する。
図5で上側のインバータ側増幅回路(22)は、非反転増幅回路で構成され、下側のインバータ側増幅回路(22)は、差動増幅回路で構成されている。
【0064】
電源(26)は、基準電位(GND)と、基準電位(GND)よりも高い電源電位(Vcc)を出力する。基準電位(GND)は、例えば接地電位である。
【0065】
電源(26)が供給する一対の電位(Vcc,GND)間の電位差は、各インバータ側増幅回路(22)、マイクロコンピュータ(25)、オフセット回路(30)の動作電圧として、それぞれに供給される。また、電源(26)から供給される基準電位(GND)は、非反転増幅回路に接続される
図5で上側のインバータ側シャント抵抗器(18)の左端に与えられる。
【0066】
オフセット回路(30)は、
図5で下側のインバータ側増幅回路(22)に接続されている。具体的に、オフセット回路(30)は、抵抗分圧回路(31)と、抵抗分圧回路(31)の出力側に接続されたボルテージフォロア回路(32)とを備え、ボルテージフォロア回路(32)がインバータ側増幅回路(22)に接続されている。
【0067】
抵抗分圧回路(31)は、2つの抵抗器(R1,R2)が直列に接続されて構成され、抵抗器(R1,R2)の抵抗値を任意に設定することで、所望の電圧値の出力電圧を生成することができる。抵抗分圧回路(31)から出力された出力電圧は、ボルテージフォロア回路(32)に入力される。なお、抵抗器(R1,R2)は、それぞれ複数の抵抗器を直列接続したものであってもよい。
【0068】
ボルテージフォロア回路(32)は、入力電圧をそのまま出力電圧として取り出してインピーダンス変換を行うものである。ボルテージフォロア回路(32)から出力された出力電圧は、インバータ側増幅回路(22)に入力される。
【0069】
このように、インバータ側増幅回路(22)の入力側にボルテージフォロア回路(32)を接続することで、信号源インピーダンスを下げて完全差動に近づけることができる。つまり、オフセット回路(30)のインピーダンスによってインバータ側増幅回路(22)が不完全差動となり、同相ノイズが十分に除去できないという問題を解消することができる。同相ノイズは、主にインバータ回路(15)のスイッチングにより各インバータ側シャント抵抗器(18)間の配線上に発生した電位差によるものである。
【0070】
このような回路構成とすれば、各インバータ側シャント抵抗器(18)において生じる電圧降下が測定される。各インバータ側シャント抵抗器(18)の抵抗値は既知であるので、それぞれの測定結果に基づいて、各インバータ回路(15)に流れる電流を精度良く測定することができる。
【0071】
なお、上側のインバータ側増幅回路(22)と下側のインバータ側増幅回路(22)の構成を入れ替えても上述した効果を得ることはできる。この場合、上側のインバータ側増幅回路(22)が差動増幅回路で構成され、オフセット回路(30)が接続される。また、下側のインバータ側増幅回路(22)が非反転増幅回路で構成され、基準電位(GND)は下側のインバータ側シャント抵抗器(18)の左端に与えられる。
【0072】
また、非反転増幅回路については、反転増幅回路等の他の増幅回路を用いてもよい。
【0073】
また、複数のオフセット回路(30)の中に出力電圧値が同じとなる回路がある場合は、それらのオフセット回路(30)を1つのオフセット回路(30)で実現し、複数のインバータ側増幅回路(22)に入力してもよい。
【0074】
《実施形態
2》
図6は、本実施形態
2に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。前記実施形態
1との違いは、オフセット回路(30)を複数設けた点であるため、以下、実施形態
1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0075】
図6に示すように、電力変換装置(1)に接続された電流測定装置(2)は、2つのインバータ側増幅回路(22)と、マイクロコンピュータ(25)と、電源(26)と、2つのオフセット回路(30)とを備えている。各インバータ側増幅回路(22)は、差動増幅回路で構成されている。
【0076】
各オフセット回路(30)は、各インバータ側増幅回路(22)とにそれぞれ接続されている。具体的に、各オフセット回路(30)は、抵抗分圧回路(31)と、抵抗分圧回路(31)の出力側に接続されたボルテージフォロア回路(32)とを備え、各ボルテージフォロア回路(32)が各インバータ側増幅回路(22)にそれぞれ接続されている。各ボルテージフォロア回路(32)から出力された出力電圧は、各インバータ側増幅回路(22)に入力される。
【0077】
また、電源(26)から供給される基準電位(GND)は、
図6で各インバータ側シャント抵抗器(18)間の配線上の任意の場所に接続される。
【0078】
なお、それぞれのオフセット回路(30)の出力電圧値は、異なる値に設定することが可能である。また、それぞれのオフセット回路(30)の出力電圧値が同じとなる設計を行った場合は、1つのオフセット回路(30)の出力を各インバータ側増幅回路(22)に入力してもよい。